(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材を含む溶解型微小突起を有する製剤であって、
前記イオン性高分子が多糖類を含み、該多糖類が、コンドロイチン硫酸又はキトサングルタメートであり、
前記ワクチン抗原が、破傷風トキソイド又はノロウイルスVLPであり、前記溶解型微小突起に含まれている、
製剤。
溶解型微小突起が、非還元性の糖、糖アルコール及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材を含む、請求項1に記載の製剤。
非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の量が溶解型微小突起全体の0.01〜94.99重量%である、請求項1に記載の製剤。
非還元性の糖及び糖アルコールが、トレハロース、スクロース、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製剤。
ワクチン抗原を含有する溶解型微小突起に、非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種とイオン性高分子基材を配合させることを特徴とする、溶解型微小突起を有する製剤を安定化する方法であって、
前記イオン性高分子が多糖類を含み、該多糖類が、コンドロイチン硫酸又はキトサングルタメートであり、
前記ワクチン抗原が、破傷風トキソイド又はノロウイルスVLPであり、前記溶解型微小突起に含まれている、
方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材を含む溶解型微小突起を有する製剤を提供するものである。
【0017】
本明細書において、製剤とは、皮膚などの体表面を刺す部分である突起部が、シート状、テープ状、プレート状又はブロック状あるいはその他の形状の支持体に保持された製品を指す。突起部は、基盤と一体化した支持体に直接保持される場合もある。あるいは、突起部は、基盤を介して支持体に保持される、すなわち突起部が基盤に保持されて、当該基盤が同基盤とは別個の部材である支持体に保持される場合もある。後者の場合は、突起部を保持した基盤を突起保持部材と呼ぶことがある。溶解型微小突起(本願明細書中、「微小突起」と記す場合もある)とは、突起部の全体又は一部を構成する、ワクチン抗原を含有する部分を指す。微小突起が突起部の先端部を構成し、突起部の根元部分がワクチン抗原を含有しない場合、ワクチン抗原を含有しない突起部の根元部分を特に、突起根部と呼ぶことがある。
【0018】
本発明における糖とは、単糖類、並びに二糖類、三糖類及び四糖類などのオリゴ糖である。本発明において、非還元性の糖としては、好ましくはオリゴ糖であり、その例としては、トレハロース、スクロース、ガラクトスクロース、トレハロサミン、マルチトール、セロビオン酸、ラクトビオン酸、ラクチトール及びスクラロースが挙げられるがこれらに限定されない。非還元性の糖の好ましい例としては、トレハロース及びスクロースが挙げられる。
本発明において、糖アルコールの例としては、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、エリトリトール、トレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、グルシトール、イジトール、ガラクチトール及びタリトールが挙げられるがこれらに限定されない。糖アルコールの好ましい例としては、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、キシリトール、エリスリトールが挙げられ、さらに好ましくはマンニトール、ソルビトール及びグリセロールが挙げられる。
本明細書において、用語「シクロデキストリン」は、シクロデキストリンに加えてシクロデキストリンの誘導体、並びにシクロデキストリン及びその誘導体の塩も包含する。シクロデキストリンの誘導体の例としては、ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン、マルトシル−シクロデキストリン、カルボキシメチル-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル シクロデキストリン、ジメチル-シクロデキストリン、メチル-シクロデキストリンが挙げられる。
本発明において、シクロデキストリンの例としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにこれらの誘導体及びそれらの塩が挙げられるがこれらに限定されない。シクロデキストリンの好ましい例としては、β−シクロデキストリン並びにその誘導体及びそれらの塩が挙げられ、より好ましくは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びマルトシル−β−シクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリン及びその誘導体の塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩が挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸との塩が挙げられる。
有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンとの塩が挙げられる。
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸との塩が挙げられる。
【0019】
本発明における界面活性剤は、特に限定されないところ、好ましい例として非イオン性界面活性剤及びレシチンが挙げられる。非イオン性界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(Triton(商標)X100)、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188及びN−ドデシル−B−D−マルトシド、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが挙げられ、より好ましくはTriton(商標)X100、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188及びN−ドデシル−B−D−マルトシドが挙げられる。レシチンの好ましい例としては、大豆レシチン、卵黄レシチン、より好ましくは卵黄レシチンが挙げられる。
【0020】
本発明において、非還元性の糖の含有量は、微小突起全体の0.1〜94.99重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜94.99重量%でありであり、より好ましくは、30〜94.99重量%である。本発明において、糖アルコールの含有量は微小突起全体の0.1〜94.99重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜94.99重量%でありであり、より好ましくは、30〜94.99重量%である。本発明において、シクロデキストリンの含有量は、微小突起全体の0.1〜94.99重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜94.99重量%でありであり、より好ましくは、30〜94.99重量%である。本発明において、界面活性剤の含有量は、微小突起全体の0.01〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜30重量%でありであり、より好ましくは、0.01〜15重量%である。また、非還元性の糖、糖アルコール及び界面活性剤の組み合わせの場合の含有量は微小突起全体の0.01〜94.99重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜94.99重量%でありであり、より好ましくは、30〜94.99重量%である。また、非還元性の糖及び糖アルコールの組み合わせの場合の含有量は微小突起全体の0.1〜94.99重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜94.99重量%でありであり、より好ましくは、30〜94.99重量%である。
非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の量が溶解型微小突起全体の0.01〜94.99重量%であり、より好ましくは、10〜94.99重量%であり、さらに好ましくは30〜94.99重量%である。
【0021】
本発明におけるイオン性高分子基材は、特に限定されないところ、好ましい例として多糖類、これらの共重合体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ここでいう共重合体とは、下記する多糖類の共重合体であり、2種類の多糖類を用いた重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)を示し、例えば、キチン・キトサン共重合体を示す。多糖類、これらの共重合体及びこれらの塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、前記シクロデキストリンにおいて記載した範囲を示す。
イオン性高分子基材としては、好ましくは多糖類であり、多糖類の好ましい例としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キトサン及びキチン並びにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましい多糖類としては、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサングルタメート、キトサン塩酸塩、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンアルギン酸塩、キトサンアスコルビン酸塩が挙げられる。更に好ましくは、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサングルタメートが挙げられる。本発明では、イオン性高分子基材の含有量は、微小突起全体の1〜99.98重量%であることが好ましく、より好ましくは、1〜70重量%であり、より好ましくは、1〜50重量%である。
イオン性高分子基材の配合量(重量)を1とした場合、非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン又は界面活性剤の配合量(重量)は0.1〜99が好ましく、より好ましくは0.1〜70、更に好ましくは0.1〜50である。
【0022】
本発明において、ワクチン抗原としては、例えばトキソイド及び粒子状の構造を有するワクチン抗原を使用することができ、これらの単独使用又は混合使用のいずれの使用も含む。トキソイドの例としては、破傷風トキソイド及びジフテリアトキソイドが挙げられるがこれらに限定されない。粒子状の構造を有するワクチン抗原の例としては、ウイルスワクチンが挙げられ、ノロウイルスワクチン、デング熱ワクチン、HPVワクチン、インフルエンザワクチン、ロタウイルスワクチンが挙げられるがこれらに限定されない。ウイルスワクチンとして好ましくは、ノロウイルスワクチン、ロタウイルスワクチンが挙げられ、より好ましくはノロウイルスワクチンである。本発明では、ワクチン抗原の含有量が、微小突起全体の0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜8重量%であり、より好ましくは、0.01〜6重量%である。
【0023】
本発明において、微小突起は、アジュバントをさらに含んでいてもよい。アジュバントとしては、例えば、一般にワクチン製剤を製造する場合に使用されるアジュバントが挙げられ、難水溶性アジュバント、親水性ゲルアジュバント又は水溶性アジュバント等を挙げることができる。
難水溶性アジュバントとしては、例えばレチノイン酸などのレチイミド、4-amino-1-(2-methylpropyl)-1H-imidazo[4,5-c]quinoline(イミキミド)、及び1-[4-amino-2-(ethoxymethyl)imidazo[4,5-c]quinolin-1-yl]-2-methylpropan-2-ol(Resquimod(R−848))、4-amino-α,α,2-dimethyl-1H-imidazo[4,5-c]quinoline-1-ethanol(R−842(3M Pharmaceuticals製等);Journal of Leukocyte Biology(1995) 58: 365-372参照)、4-amino-α,α,2-trimethyl-1H-imidazo[4,5-c]quinoline-1-ethanol(S−27609(3M Pharmaceuticals製等);Journal of Leukocyte Biology(1995) 58: 365-372参照)、及び4-amino-2-ethoxymethyl-α,α-dimethyl-1H-imidazo[4,5-c]quinoline-1-ethanol(S−28463(3M Pharmaceuticals製等);Antivirul Research (1995) 28: 253-264参照)などのイミダゾキノリン類、Loxoribine、Bropirimine、オレイン酸、流動パラフィン、フロイントがある。親水性ゲルアジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムが挙げられる。水溶性アジュバントとしては、例えば、α―ディフェンシン、β−ディフェンシン、カテリシジン、アルギン酸ナトリウム、poly[di(carboxylatophenoxy)phosphazene]、サポニン抽出物(Quil A)、ポリエチレンイミンが挙げられる。
アジュバンドの含有量としては、ワクチン抗原に対して0〜1500重量%であることが挙げられ、より好ましくは、0〜1000重量%であり、より好ましくは、0〜500重量%である。
本発明の好ましい態様の組み合わせを以下に挙げる。
(1) 非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン及び界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材の組み合わせ。
(2) 非還元性の糖、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材である組み合わせ。
(3) 糖アルコール、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材である組み合わせ。
(4) シクロデキストリン、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材である組み合わせ。
(5) 界面活性剤、ワクチン抗原及びイオン性高分子基材である組み合わせ。
(6) 非還元性の糖がオリゴ糖であり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ノロウイルス又はロタウイルスであり、及び多糖類である組み合わせ。
(7) 非還元性の糖がトレハロース又はスクロースであり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド又はノロウイルスであり、及び多糖類がコンドロイチン硫酸ナトリウム又はキトサングルタメートである組み合わせ。
(8) 糖アルコールがマンニトール、ソルビトール、グリセロール、キシリトール又はエリスリトールであり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ノロウイルス又はロタウイルスであり、及びイオン性高分子基材が多糖類である組み合わせ。
(9) 糖アルコールがマンニトール、ソルビトール又はグリセロールであり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド又はノロウイルスであり、及びイオン性高分子基材がコンドロイチン硫酸ナトリウム又はキトサングルタメートである組み合わせ。
(10) シクロデキストリンがβ−シクロデキストリン並びにその誘導体及びそれらの塩であり、ワクチン抗が原破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ノロウイルス又はロタウイルスであり、及びイオン性高分子基材が多糖類である組み合わせ。
(11) シクロデキストリンがヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン又はマルトシル−β−シクロデキストリンであり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド又はノロウイルスであり、及びイオン性高分子基材がコンドロイチン硫酸ナトリウム又はキトサングルタメートである組み合わせ。
(12) 界面活性剤が非イオン性界面活性剤又はレシチンであり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、ノロウイルス又はロタウイルスであり、及びイオン性高分子基材が多糖類である組み合わせ。
(13) 界面活性剤がTriton(商標)X100、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188及びN−ドデシル−B−D−マルトシド又は卵黄レシチンであり、ワクチン抗原が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド又はノロウイルスであり、及びイオン性高分子基材がコンドロイチン硫酸ナトリウム又はキトサングルタメートである組み合わせ。
(14) 非還元性の糖がトレハロース又はスクロースであり、ワクチン抗原がノロウイルスであり、及び多糖類がコンドロイチン硫酸ナトリウム又はキトサングルタメートである組み合わせ。
(15) 糖アルコールがマンニトール又はソルビトールであり、ワクチン抗原がノロウイルスであり、及び多糖類がコンドロイチン硫酸ナトリウム又はキトサングルタメートである組み合わせ。
【0024】
本発明の一態様としては、製剤は、突起部が、基盤と一体化した支持体に直接保持されたものであってもよい。支持体は、シート状又はプレート状であってもよく、粘着性シートであってもなくてもよい。支持体としては、例えば、市販の両面粘着テープを利用することが可能である。両面粘着テープの材料としては、ポリエステルフィルムもしくは不織布などの支持体の両面にアクリル系粘着剤あるいはシリコーン系粘着剤などの医療用テープに採用されている粘着性物質が塗布されたものが適用可能である。
本発明の製剤の別の態様においては、基盤が突起部を保持する突起保持部材を形成し、突起保持部材が、支持体に保持されることにより製剤を形成していてもよい。
【0025】
突起部は、体表面を刺すために適した形状を有しておれば良く、円柱状も含むが根元が太く先端が細い形状を有していることが好ましく、針状又は錐状であってもよく、円錐状であってもよく、3角錐、4角錐、5角錐、6角錐、7角錐、8角錐、9角錐、10角錐、11角錐、12角錐、その他の多角錐状であってもよい。
突起部の長さ(高さ)は、好ましくは、10〜1000μmであり、好ましくは、100〜800μmであり、好ましくは、100〜600μmである。突起部が円柱の場合の根元直径は、好ましくは、10〜500μmであり、好ましくは、100〜500μmであり、好ましくは、100〜400μmであり、突起部の先端直径は、好ましくは、0.1〜20μmであり、好ましくは、0.1〜10μmであり、好ましくは、0.1〜5μmである。突起部が角錐の場合の根元の1辺の長さは、好ましくは、10〜500μmであり、好ましくは、100〜500μmであり、好ましくは、100〜400μmであり、突起部の先端の1辺の長さは、好ましくは、0.1〜20μmであり、好ましくは、0.1〜10μmであり、好ましくは、0.1〜5μmである。突起部の全体がワクチン抗原を含む微小突起であってもよい。
突起部はワクチン抗原を含む微小突起からなる層とワクチン抗原を含まない層からなる複数の層を基盤と平行又は垂直のどちらの方向に有していてもよく、好ましくは基盤と平行である。複数層が基盤と平行である場合は、微小突起が突起部の先端層であってもよく、中間層であってもよい。また、各層が異なる構成成分を有していてもよい。微小突起が突起部の先端層である場合には、微小突起の先端からの長さは、好ましくは、0.01〜800μmであり、好ましくは、0.01〜500μmであり、好ましくは、0.01〜300μmである。微小突起が突起部の中間層である場合には、微小突起の根元からの距離は、好ましくは、50〜999μmであり、好ましくは、50〜500μmであり、好ましくは、50〜300μmである。
【0026】
本発明製剤の形状としては、四角形や円形が適切であるが、本発明の目的を達成しうる限り、これ以外の形状であってもよい。
本発明製剤の大きさとしては、例えば、四角形の場合は一辺を約1mm〜約50mm、好ましくは約5mm〜30mm、より好ましくは約10mm〜20mmに、円形の場合は直径を約1mm〜約50mm、好ましくは約5mm〜30mm、より好ましくは約10mm〜20mmにすると、取り扱いが有利である。
【0027】
本発明の製剤の例の概念図を、
図13A及びBに示す。
製剤1において、突起部の全体がワクチン抗原を含む微小突起であってもよく、微小突起2が突起部全体を構成している場合の製剤1の例の概念図が、
図13Aに示される。該例においては、微小突起2は、基盤と一体化した支持体3から突出した形状を有する。微小突起2は、基盤と一体化した支持体3と直接結合している。
突起部がワクチン抗原を含む微小突起からなる層とワクチン抗原を含まない層を基盤と平行方向に有し、微小突起2が突起部の先端層である場合の製剤1の例の概念図が、
図13Bに示される。該例においても、ワクチン抗原を含む微小突起2は、基盤と一体化した支持体3から突出した形状を有する。一方、微小突起2は、ワクチン抗原を含まない突起根部4を介して基盤と一体化した支持体3と結合している。
本発明の製剤の別の例の概念図を、
図14に示す。該例においては、微小突起2は、突起保持部材となる基盤5と直接結合して基盤5から突出した形状を有する。基盤5は、支持体6に保持される。すなわち、製剤1は、微小突起2が基盤5を介して支持体6に保持されることにより構成される。
【0028】
本発明の製剤は、成形型又はその他の公知の技術を使用して成形することができる。成形型には、突起部を形成するための穴又は凹部が設けられる。成形型は、限定されないが例えば、金属、セラミック、又はゴム、樹脂、シリコン樹脂若しくはフッ素樹脂などのポリマーで形成されていてもよい。成形型は、可塑性の材質を、突起部の形状を有する凸部が設けられた型に押し当てて、次いで型から解離させることによって形成することもできる。この場合は、可塑性の材質は、限定されないが例えば熱可塑性のゴム、樹脂、シリコン樹脂若しくはフッ素樹脂などの熱可塑性ポリマーであってもよく、スチレン系エラストマーもこれに包含される。また、凸部が設けられた型としては、限定されないが例えば、金型を使用することができる。限定されない一例として、熱可塑性ポリマーを加熱した型上に被せてプレスし、熱可塑性ポリマーと型を冷却後、熱可塑性ポリマーを型から解離させて、成形型を得ることができる。この場合は、熱可塑性ポリマーはシートであってもなくてもよい。
【0029】
成形型を使用する場合は、本発明の製剤を、下記の工程により製造してもよい。
微小突起の各成分を水、その他の溶媒又は水とその他の溶媒の混液に混合して混合物を形成して、当該混合物を成形型の穴又は凹部に注入する。注入された混合物は、穴又は凹部に充填されることが好ましい。充填させる手段としては、限定されないが例えば、エアプレス及び遠心が挙げられる。ここで用いれる溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルムが挙げられる。
基盤と一体化した支持体を有する本発明の製剤(例えば
図13A及びBに示される製剤)の製造は特に限定されないが、例えば以下に示す方法によって製造してもよい。すなわち、微小突起の各成分を含有する混合物を成形型の穴又は凹部に充填させた後に、成形型に基盤と一体化した支持体をかぶせて、そして成形型から解離して突起部を保持させて回収する。基盤と一体化した支持体とは、シート状、テープ状、プレート状又はブロック状あるいはその他の形状であってもよく、粘着性であってもなくてもよい。基盤と一体化した支持体には、前記した支持体に用いれる範囲のものが使用できる突起部を保持した基盤と一体化した支持体は、そのまま製剤とすることができる。
支持体が基盤とは別個の部材であり、基盤が突起保持部材となる場合の本発明の製剤(例えば
図14に示される製剤)の製造は特に限定されないが、例えば以下に示す方法によって製造してもよい。すなわち、微小突起の各成分を含有する混合物を成形型の穴又は凹部に充填させた後に、成形型に突起保持部材となる基盤をかぶせて、そして成形型から解離して突起部を保持させて回収する。この場合、基盤は、限定されないが例えばシート状、テープ状、プレート状又はブロック状あるいはその他の形状であってもよく、粘着性であってもなくてもよく、両面接着テープもこれに包含される。突起部を保持した基盤である突起保持部材を支持体に接着させることにより、製剤が形成される。突起保持部材となる基盤の基材としては、固化性材質であってもよく、限定されないが例えば、本発明のイオン性高分子基材、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン等の樹脂シートや柔軟性のある紙類、不織布、布、発泡体、金属が適用可能である。
いずれの態様においても、突起部を形成するために乾燥及び固化が行われるが、乾燥及び固化は、突起部を成形型から取り出す前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0030】
本発明の製剤の製造方法の他の態様では、ワクチン抗原を含まない基材を先に成形型の穴又は凹部に注入し、その後にワクチン抗原を含む微小突起の各成分を成形型の穴又は凹部に注入してもよい。この態様では、突起部が複数の層を有し、先端層がワクチン抗原を含まず、中間層がワクチン抗原を含む突起部を形成することができる。本発明の製剤の製造方法の他の態様では、突起部に成分濃度の異なる複数の層を備えさせるために、成分濃度に応じた混合物を順次成形型の穴又は凹部に注入してもよい。
該ワクチン抗原を含まない基材としては、本発明のイオン性高分子基材、非イオン性高分子、アクリル酸系ポリマー、及びメタクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、好ましくは本発明のイオン性高分子基材、アクリル酸系ポリマー又はメタクリル酸系ポリマーが挙げられる。より好ましくは、本発明のイオン性高分子基材であり、多糖類、これらの共重合体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましい例としては多糖類であり、多糖類の例としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キトサン及びキチン並びにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましい多糖類としては、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサングルタメート、キトサン塩酸塩、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンアルギン酸塩、キトサンアスコルビン酸塩が挙げられる。更に好ましくは、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサングルタメートが挙げられる。
非イオン性高分子とはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、デキストラン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体を示す。
アクリル酸系ポリマーとは、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムアクリル酸・アクリル酸ナトリウムの共重合体を示す。
メタクリル酸系ポリマーとは、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを示す。
【0031】
他の態様として突起根部を有す製剤の場合において、その突起根部の基材としては、本発明のイオン性高分子基材、非イオン性高分子基材、アクリル酸系ポリマー、及びメタクリル酸系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ここで、非イオン性高分子基材、アクリル酸系ポリマー、及びメタクリル酸系ポリマーとは、前記の範囲を示す。突起根部の基材として、好ましくは本発明のイオン性高分子基材、アクリル酸系ポリマー又はメタクリル酸系ポリマーが挙げられる。より好ましくは本発明のイオン性高分子基材であり、多糖類、これらの共重合体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましい例としては多糖類であり、多糖類の好ましい例としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、キトサン及びキチン並びにこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましい多糖類としては、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサングルタメート、キトサン塩酸塩、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンアルギン酸塩、キトサンアスコルビン酸塩が挙げられる。更に好ましくは、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キトサングルタメートが挙げられる。
【0032】
本発明の製剤は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなど)において、前記薬物による治療及び予防等を目的として適用できる。
本発明の製剤の使用方法としては、皮膚であればいずれの場所にも適用することができ、凹凸を有す部位にも使用することができる。
また、本発明の製剤による薬物の投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、投与の時期、間隔、有効成分の種類などによって異なるが、医薬活性成分としての投与量が有効量となる範囲から選択すればよい。また、本発明製剤は、1日1回または2〜3回に分けて投与してもよい。
本発明の製剤は、前記薬物による治療及び予防等に有用である。
【0033】
本発明の製剤は、治療及び予防に必要な量のワクチン抗原を本発明の製剤に含ませることができる。
対象疾患とその場合に必要な薬物量は、日本であれば厚生労働省より公示されている生物学的製剤基準に記載されており、日本国外では各国のそれに順ずる公定書などに記載されている。投与する薬物量は、ワクチン接種目的(初回、追加接種など)、混合ワクチンであるかないか、接種患者の年齢、製造業者、ウイルス株、型などによって一律には定義できないため、一般的に使用されている薬物量を一例として記載するが、本発明への適用はこの記載量に限るものではない。一般的に使用されている薬物量としては、例えば、破傷風;2.5〜5Lf、ジフテリア;15〜25Lf、ヒトパピローマウイルス;各型20〜40マイクログラム、ロタウイルス;10
6CCID
50以上、ノロウイルス;5〜500マイクログラム、デング熱;10
3PFU以上10
10PFU以下、インフルエンザ;15マイクログラム以上100マイクログラム以下(HA含量)が挙げられる。
本発明の製剤は、他の製剤、例えば経口投与製剤や注射剤と併用することもできる。
【0034】
本発明では、基材としてイオン性高分子を使用することにより、マイクロニードルの針として必要な強度を保持させる、又は向上させる効果が奏される。また、本発明のイオン性高分子基材と非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン又は界面活性剤との配合比によって、乾燥又は保存中に起こる抗原の分解あるいは凝集等を抑制し、生物学的安定性を向上させる効果を奏する。通常、ワクチン抗原を室温環境下で自然乾燥する、又は風乾させた場合、その活性残存性を保つことは難しいため、ワクチン抗原の乾燥方法としては一般に凍結乾燥やスプレードライなどが用いられる。しかし本発明でいう「乾燥」とは室温減圧環境下で18時間かけて自然乾燥させるといった環境、あるいは室温常圧環境下で18時間かけて自然乾燥させる、又は室温常圧環境下で数分から数時間(例えば、1分から2時間、1分から1時間が挙げられる。)かけて風乾させるといった厳しい環境下を示し、このような環境下でも本願発明は抗原の分解を抑制できる。ここで室温とは、15℃から35℃の範囲を示す。
また、通常ワクチン抗原は室温もしくはそれ以上の温度環境下での保存中に、その活性残存性を保つことは難しいため、一般に冷蔵もしくは冷凍環境下で保存される。しかし本発明でいう「保存中」とは25℃65%RHといった環境下、あるいは40℃75%RHといった厳しい環境下を示し、このような環境下でも本願発明は抗原の分解を抑制できる。さらに、本発明のイオン性高分子基材及び非還元性の糖、糖アルコール、シクロデキストリン又は界面活性剤の配合によって、微小突起に体表に挿入して使用するのに充分な強度を与え、なおかつ固体状態でワクチン抗原を生物学的に安定化させる効果が奏される。例えば、溶解型微小突起の強度は、微小圧縮試験機、針先強度試験機、微小強度評価試験機などによりで測定でき、固体状態における抗原の安定化はサイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、電気泳動、粒子径測定、CDスペクトルなどによりで測定することができる。本願発明の強度に関しては、たとえば、針先強度試験機(ASTI株式会社製)にて測定した場合には、0.1mm移動距離に対する圧が5〜300gfの測定値が得られる範囲を指し、更に10〜200gf、また、更には20〜100gfの範囲である強度を有す製剤を製造することができる。本願発明は、皮内投与するために、薬剤等に合わせ、適切な且つ必要な範囲(前記した弱い範囲から強い範囲:5〜300gf)の製剤の作製を可能とする。本願発明による安定性に関しては、たとえば、逆相クロマトグラフィーにて測定した場合には、抗原の分解もしくは凝集が抗原全体に対して0〜30%に抑えられている範囲を指し、更に0〜15%、また、更には0〜10%の範囲である場合も含まれる。また、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーにて測定した場合には、抗原の分解もしくは凝集が抗原全体に対して0〜35%に抑えられている範囲を指し、更に0〜20%、また、更には0〜10%の範囲である場合も含まれる。さらにまた、本発明の微小突起の成分構成により、微小突起が生体内で溶解性となる効果が奏される。すなわち、本発明では、化学的変化に対する安定化及び物理的変化に対する安定化の意味としての「安定化」をもたらすことができ、特に、ワクチン抗原が抗原性活性を保持するための安定化及び製剤の突起としての強度を有するための安定化の効果をもたらすことができる。
なお、微細化された針の表面に薬物がコーティングされた形態を有するマイクロニードル、すなわち薬物コーティング型マイクロニードルは、本発明の製剤には含まれない。すなわち、薬物コーティング型マイクロニードルの針の表面にコーティングされた薬物層において当該薬物が溶解性を有していても、当該微細化された針は本発明の溶解型微小突起には包含されない。
【0035】
本発明の製剤は、ワクチン抗原を投与することによって疾患を予防又は治療するために使用することができる。疾患としては、破傷風、ジフテリア、ノロウイルス、デング熱、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザ及びロタウイルスなどの感染性疾患、並びにワクチン抗原によって予防又は治療されるその他の疾患が挙げられる。
本発明の製剤は前記したように安定化されており、安全で毒性もなく治療及び予防等に有用である。
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。使用する試薬等に関しては、適宜薬局方適合品・医薬品添加物規格適合品を用いた。
【実施例】
【0037】
マイクロニードルの製造
(実施例1)
30mgのオブアルブミン(和光純薬工業製)、90mgのキトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213、FMC BioPolymer社製)及び180mgのスクロース(和光純薬工業製)を精製水5700μLに加えて溶解した後、真空下で溶液中に存在する気泡を除去し、薬物充填用溶液を得た。
マイクロニードル金型(ニードル材質:SUS316L、ニードル形状:四角錐形、一辺長さ:300μm、高さ:500μm、配置:1mmピッチ×10列×10行=100本、正方形、東海アヅミテクノ製)を型作成冶具の加熱プレート上で179℃に加熱した。スチレン系熱可塑性エラストマーのシート(RABARON(登録商標)、厚さ1mm、三菱化学製)を約2.5cm×2.5cmのサイズに切断し、加熱した金型上に被せ、30秒間プレス圧約25Nでプレスした。シートと金型を室温で約1分冷却後、シートを金型から剥がし、四角錐形の凹部を有するマイクロニードル成形型を得た。
当該成形型をマイクロニードル製造装置のXYステージにセットし、当該製造装置付属のディスペンサー(ノズル径:0.075mmφ)を使用して、薬物充填用溶液を成形型(凹部配置:1mmピッチ×10列×10行=100個)の各凹部に吐出した。吐出後、空圧プレスで60秒エアプレスを行い、薬物充填用溶液を凹部の奥まで充填した。その後、成形型を室温で約18時間乾燥後、成形型表面に両面接着テープ(No.5302A、日東電工製)のアクリル面を貼付、剥離することによりテープ接着面にマイクロニードルを回収した。回収したマイクロニードルを18mm、厚さ0.3mmの軟質ポリエチレン製シートの表面に両面接着テープを介して接着し、100個のマイクロニードルを保持したマイクロニードルパッチを得た。
得られたマイクロニードルパッチの顕微鏡写真を
図1に示す。各マイクロニードルは底辺の長さ300μm、高さ500μmの四角錐形であり、使用した金型と同じ形状であった。マイクロニードルパッチ1枚あたりのオブアルブミン含有量は35μgであった。
【0038】
(実施例2)
30mgのオブアルブミン(和光純薬工業製)、30mgのキトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213、FMC BioPolymer社製)及び240mgのスクロース(和光純薬工業製)を精製水1700μLに加えて溶解した後、真空下で溶液中に存在する気泡を除去し、薬物充填用溶液を得た。
実施例1と同じ方法で得られたマイクロニードル成形型を使用して、実施例1と同様の方法によりマイクロニードルパッチを得た。
得られたマイクロニードルパッチの顕微鏡写真を
図2に示す。各マイクロニードルは底辺の長さ300μm、高さ500μmの四角錐形であり、使用した金型と同じ形状であった。マイクロニードルパッチ1枚あたりのオブアルブミン含有量は172μgであった。
【0039】
(実施例3)
15mgのオブアルブミン(和光純薬工業製)、15mgのキトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213、FMC BioPolymer社製)、270mgのスクロース(和光純薬工業製)及び0.1mgのアシッドレッド52(和光純薬工業製)を精製水700μLに加えて溶解した後、真空下で溶液中に存在する気泡を除去し、薬物充填用溶液を得た。
実施例1と同じ方法で得られたマイクロニードル成形型を使用して、実施例1と同様の方法によりマイクロニードルパッチを得た。
得られたマイクロニードルパッチの顕微鏡写真を
図3に示す。各マイクロニードルは底辺の長さ300μm、高さ500μmの四角錐形であり、使用した金型と同じ形状であった。マイクロニードルパッチ1枚あたりのオブアルブミン含有量は103μgであった。
【0040】
(比較例1)
90mgのオブアルブミン(和光純薬工業製)、810mgのスクロース(和光純薬工業製)及び0.3mgのエバンスブルー(和光純薬工業製)を精製水600μLに加えて溶解した後、真空下で溶液中に存在する気泡を除去し、薬物充填用溶液を得た。
実施例1と同じ方法で得られたマイクロニードル成形型を使用して、実施例1と同様の方法を実施して、テープ接着面に固形分を回収した。回収した固形分を18mm、厚さ0.3mmの軟質ポリエチレン製シートの表面に両面接着テープを介して接着し、100個の固形分を保持したパッチを得た。
得られたパッチの顕微鏡写真を
図4に示す。パッチ表面には固形分が認められるものの、ニードルは形成されなかった。
【0041】
実施例1乃至3及び比較例におけるマイクロニードルの組成ならびに成形性を表1に示す。基剤としてスクロース以外に5重量%以上のキトサングルタメートを含む処方では金型と同じ形状のニードルが形成されるのに対して、キトサングルタメートを含まない処方ではニードルは形成されなかった。
【表1】
【0042】
ワクチン抗原の安定性試験
(実施例4)
サンプル調製:
破傷風トキソイド溶液(9.7mg/ml)(T)1ml、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)97mgを混合し溶解させた溶液を調製した。この破傷風トキソイド−CSの混合溶液に、トリトンX100を0.97mg加えてよく混合し、2.1μlずつ2本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャルのサンプルとし、1本を風乾後アルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存した。同様に、その他の添加剤(ポリリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188、N−ドデシル−B−D−マルトシド、レシチン)を含む溶液についても表2の配合量になるよう調製し、イニシャルと40℃保存品のサンプルを調製した。
評価:
(1) イニシャルのプラスチックチューブに対してNUPAGE LDS Sample buffer(4×)(Life technology)を5μl、NUPAGE Reducing Agent(10×)(Life technology)を2μl、水を10.9μl加えて混合し、90℃で5分間加熱処理を行った。
40℃1W保存後のサンプルを10μlの水に溶解した後、NANODROP 2000C(Thermo Scientific社製)にてタンパク濃度を定量した。タンパク含量が4μgとなるようサンプルを採取し、NUPAGE LDS Sample buffer(4×)5μl、NUPAGE Reducing Agent(10×)2μlを加えた後、全量が20μlとなるよう水を加えた。これらのサンプルを全て90℃で5分間加熱処理を行った。
(2) NUPAGE Bis−Tris MiniGels(Life technology)に(1)で調製したサンプル、分子量マーカーHiMark
TM Pre−Stained Protein Standard(Life technology)を添加し、PowderPac HC(BioRad社製)を用いて200V50分の電気泳動を行った。泳動後のゲルはSimply Blue
TM Safestain(Life technology)で染色した。
結果:以下
図5(イニシャル)及び
図6(40℃1W保存後)に記す。
【0043】
(実施例5)
サンプル調製:
破傷風トキソイド溶液(9.7mg/ml)(T)1ml、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)97mgを混合し溶解させた溶液を調製した。この破傷風トキソイド−CSの混合溶液に、トレハロースを48.5mg加えてよく混合し、2.1μlずつ2本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャルのサンプルとし、1本を風乾後アルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存した。同様に、その他の添加剤(スクロース、マンニトール、ソルビトール)を含む溶液についても表2の配合量になるよう調製し、イニシャルと40℃保存品のサンプルを調製した。
評価:実施例4と同様にSDS−PAGEでの評価を行った。
結果:以下
図5(イニシャル)及び
図6(40℃1W保存後)に記す。
【0044】
(実施例6)
サンプル調製:
破傷風トキソイド溶液(9.7mg/ml)(T)1ml、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)97mgを混合し溶解させた溶液を調製した。この破傷風トキソイド−CSの混合溶液に、G2−β−シクロデキストリンを48.5mg加えてよく混合し、2.1μlずつ2本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャルのサンプルとし、1本を風乾後アルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存した。同様に、その他の添加剤(HP−β−シクロデキストリン)を含む溶液についても表2の配合量になるよう調製し、イニシャルと40℃保存品のサンプルを調製した。
評価:実施例4と同様にSDS−PAGEでの評価を行った。
結果:以下
図5(イニシャル)及び
図6(40℃1W保存後)に記す。
【0045】
(比較例2)
サンプル調製:
破傷風トキソイド溶液(9.7mg/ml)1mlから2.1μlずつ2本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャルのサンプルとし、1本を風乾後アルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存した。
評価:
(1) イニシャルのプラスチックチューブに対してNUPAGE LDS Sample buffer(4×)(Life technology)を5μl、NUPAGE Reducing Agent(10×)(Life technology)を2μl、水を10.9μl加えて混合し、90℃で5分間加熱処理を行った。
40℃1W保存後のサンプルを10μlの水に溶解した後、NANODROP 2000C(Thermo Scientific社製)にてタンパク濃度を定量した。タンパク含量が検出限界以下であったため、サンプルの溶解液全量に対して、NUPAGE LDS Sample buffer(4×)5μl、NUPAGE Reducing Agent(10×)2μlを加えた後、全量が20μlとなるよう水を加えた。その後、90℃で5分間加熱処理を行った。
(2) NUPAGE Bis−Tris MiniGels(Life technology)に(1)で調製したサンプル、分子量マーカーHiMark
TM Pre−Stained Protein Standard(Life technology)を添加し、PowderPac HC(BioRad社製)を用いて200V50分の電気泳動を行った。泳動後のゲルはSimply Blue
TM Safestain(Life technology)で染色した。
結果:以下
図5(イニシャル)及び
図6(40℃1W保存後)に記す。
【0046】
図5及び
図6に示すとおり、実施例4〜6のサンプルにおいては、比較例2のサンプル(T)を上回る破傷風トキソイドタンパク質の安定性が見られた。
【表2】
【0047】
(実施例7)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)100μl、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)5mgを混合し溶解させた溶液を調製した。このノロウイルスVLP−CSの混合溶液に、トレハロースを10mg加えてよく混合し、25μlずつ3本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後、イニシャル固体のサンプルとした。残りの一本は風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:
イニシャル溶液サンプルに対して175μl、イニシャル固体サンプル、40℃1W保存固体サンプルに対して200μlの水を加えてよく混合した。
サイズ排除クロマトグラフィーにて評価を行った。ピーク面積より、VLP含量を評価した。
結果:表3に記す。
【表3】
【0048】
(実施例8)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)100μl、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)5mgを混合し溶解させた溶液を調製した。このノロウイルスVLP−CSの混合溶液に、スクロースを10mg加えてよく混合し、25μlずつ3本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後、イニシャル固体のサンプルとした。残りの一本は風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:実施例7と同様にサイズ排除クロマトグラフィーにて評価を行った。
結果:表4に記す。
【表4】
【0049】
(実施例9)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)100μl、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)5mgを混合し溶解させた溶液を調製した。このノロウイルスVLP−CSの混合溶液に、ソルビトールを10mg加えてよく混合し、25μlずつ3本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後、イニシャル固体のサンプルとした。残りの一本は風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:実施例7と同様にサイズ排除クロマトグラフィーにて評価を行った。
結果:表5に記す。
【表5】
【0050】
(比較例3)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)100μl、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)5mgを混合し溶解させた溶液を調製した。このノロウイルスVLP−CSの混合溶液を25μlずつ3本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後、イニシャル固体のサンプルとした。残りの一本は風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:実施例7と同様に実施した。
結果:表6に記す。
【表6】
【0051】
(比較例4)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)を25μlずつ3本のプラスチックチューブに分注した。そのうち、1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後、イニシャル固体のサンプルとした。残りの一本は風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:実施例7と同様に実施した。
結果:表7に記す。
【表7】
【0052】
実施例7〜9のサンプルにおいては、比較例3及び4のサンプルを上回るノロウイルスVLP(G1)の安定性が見られた。
【表8】
【0053】
(実施例10)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)541.8μl、キトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213)15.5mg、水158.2μlを混合し溶解させた溶液を調製した。このノロウイルスVLP−キトサングルタメートの混合溶液に、スクロースを58mg加えてよく混合し、10μlずつプラスチックチューブに分注した。1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:実施例7と同様にサイズ排除クロマトグラフィーにて評価を行った。
結果:表9に記す。
【表9】
【0054】
(比較例5)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液(4.4mg/ml)541.8μl、キトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213)15.5mg、水158.2μlを混合し溶解させた溶液を調製した。このノロウイルスVLP−キトサングルタメートの混合溶液を10μlずつプラスチックチューブに分注した。1本をイニシャル溶液サンプルとし、1本を風乾後にアルミパウチで密封し40℃75%RH条件下で1週間保存し、40℃1W保存固体サンプルとした。
評価:実施例7と同様にサイズ排除クロマトグラフィーにて評価を行った。
結果:表10に記す。
【表10】
【0055】
実施例10のサンプルにおいては、比較例5のサンプルを上回るノロウイルスVLP(G1)の安定性が見られた。
【表11】
【0056】
(実施例11)
サンプル調製:
破傷風トキソイド抗原15mg、コンドロイチン硫酸ナトリウム(CS)134.9mg、エバンスブルー0.1mgを水に混合し合計1mlとなるように溶解させた後、真空下で溶液中に存在する気泡を除去し、薬物充填用溶液を得た。
マイクロニードル金型(ニードル材質:SUS316L、ニードル形状:四角錐形、一辺長さ:300μm、高さ:500μm、配置:1mmピッチ×10列×10行=100本、正方形、東海アヅミテクノ製)を型作成冶具の加熱プレート上で179℃に加熱した。スチレン系熱可塑性エラストマーのシート(RABARON(登録商標)、厚さ1mm、三菱化学製)を約2.5cm×2.5cmのサイズに切断し、加熱した金型上に被せ、30秒間プレス圧約25Nでプレスした。シートと金型を室温で約1分冷却後、シートを金型から剥がし、四角錐形の凹部を有するマイクロニードル成形型を得た。
当該成形型をマイクロニードル製造装置のXYステージにセットし、当該製造装置付属のディスペンサー(ノズル径:0.075mmφ)を使用して、薬物充填用溶液を成形型(凹部配置:1mmピッチ×10列×10行=100個)の各凹部に吐出した。吐出後、空圧プレスで60秒エアプレスを行い、薬物充填用溶液を凹部の奥まで充填した。その後、成形型を室温で約18時間乾燥後、成形型表面に両面接着テープ(No.5302A、日東電工製)のアクリル面を貼付、剥離することによりテープ接着面にマイクロニードルを回収した。回収したマイクロニードルをポリエチレン製シートの表面に両面接着テープを介して接着し、100個のマイクロニードルを保持したマイクロニードルパッチを得た。得られたマイクロニードルをアルミパウチで密封し、25℃60%RHおよび40℃75%RH条件下で1ヶ月保存した。
評価:イニシャル品および保存品のマイクロニードル中破傷風トキソイド含量をサイズ排除クロマトグラフィーにて評価した。
結果:表12に記す。
【表12】
評価:マイクロニードル外観を顕微鏡にて撮像した。
結果:
図7に記す。
【0057】
(比較例6)
サンプル調製:
破傷風トキソイド抗原15mg、ポリビニルピロリドン K−30(PVP K−30)134.9mg、エバンスブルー0.1mgを水に混合し合計0.85mlとなるように溶解させた後、真空下で溶液中に存在する気泡を除去し、薬物充填用溶液を得た。
マイクロニードル金型(ニードル材質:SUS316L、ニードル形状:四角錐形、一辺長さ:300μm、高さ:500μm、配置:1mmピッチ×10列×10行=100本、正方形、東海アヅミテクノ製)を型作成冶具の加熱プレート上で179℃に加熱した。スチレン系熱可塑性エラストマーのシート(RABARON(登録商標)、厚さ1mm、三菱化学製)を約2.5cm×2.5cmのサイズに切断し、加熱した金型上に被せ、30秒間プレス圧約25Nでプレスした。シートと金型を室温で約1分冷却後、シートを金型から剥がし、四角錐形の凹部を有するマイクロニードル成形型を得た。
当該成形型をマイクロニードル製造装置のXYステージにセットし、当該製造装置付属のディスペンサー(ノズル径:0.075mmφ)を使用して、薬物充填用溶液を成形型(凹部配置:1mmピッチ×10列×10行=100個)の各凹部に吐出した。吐出後、空圧プレスで60秒エアプレスを行い、薬物充填用溶液を凹部の奥まで充填した。その後、成形型を室温で約18時間乾燥後、成形型表面に両面接着テープ(No.5302A、日東電工製)のアクリル面を貼付、剥離することによりテープ接着面にマイクロニードルを回収した。回収したマイクロニードルをポリエチレン製シートの表面に両面接着テープを介して接着し、100個のマイクロニードルを保持したマイクロニードルパッチを得た。得られたマイクロニードルをアルミパウチで密封し25℃60%RHおよび40℃75%RH条件下で1ヶ月保存した。
評価:イニシャル品および保存品のマイクロニードル中破傷風トキソイド含量をサイズ排除クロマトグラフィーにて評価した。
結果:表13に記す。
【表13】
評価:マイクロニードル外観を顕微鏡にて撮像した。
結果:
図8に記す。
【0058】
実施例11のサンプルにおいては、比較例6のサンプルを上回る破傷風トキソイドの安定性が見られた。また、
図7及び
図8に示される顕微鏡写真から、実施例11のサンプルにおいては、比較例6のサンプルを上回る保存後のマイクロニードル形状における物理的安定性が観察された。
【表14】
【0059】
(実施例12)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液564μl(VLP:2.5mg、NaCl:0.033mg、ヒスチジン:1.8mg)およびノロウイルスVLP(G2)溶液484μl(VLP:2.5mg、スクロース:97mg、NaCl:5.7mg、ヒスチジン:1.5mg)を混合し、これに25mgのキトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213)を添加して攪拌溶解した後、真空下で気泡を除去し充填用液剤とした。固形分中の主成分の重量比はノロウイルスVLP(G1):1.8%、ノロウイルスVLP(G2):1.8%、スクロース:71.3%およびキトサングルタメート:18.4%であり、充填用液剤の固形分濃度は11.5%(重量比)とした。
マイクロニードル金型(ニードル材質:SUS316L、ニードル形状:四角錐形、一辺長さ:300μm、高さ:500μm、配置:1mmピッチ×10列×10行=100本、正方形、東海アヅミテクノ製)を型作成冶具(旭光精工製)の加熱プレート上で179℃に加熱した。スチレン系熱可塑性エラストマーのシート(RABARON(登録商標)、厚さ1mm、三菱化学製)を約2.5cm×2.5cmのサイズに切断し、加熱した金型上に被せ、30秒間プレス圧約25Nでプレスした。シートと金型を室温で約1分冷却後、シートを金型から剥がし、四角錐形の凹部を有するマイクロニードル成形型を得た。成形型をマイクロニードル製造装置(旭光精工製)のXYステージにセットし、ディスペンサー1(ノズル径:0.075mmφ)で抗原含有液剤を100個のニードル穴にニードル基底部まで充填した(送液圧力:0.017MPa、塗布回数:40回)。充填後、空圧プレスで60秒エアプレスを行い、ポリマーを穴の奥まで充填し、型穴先端部の残留気泡を除去した。その後、成形型を室温で約18時間乾燥後、軟質ポリエチレン製支持体シート(直径:18mm、厚さ:0.3mm)表面に貼り付けた両面接着テープ(No.5302A、日東電工製)のアクリル面をポリマー表面に貼付、剥離することによりテープ接着面にマイクロニードルを回収した。得られたマイクロニードルを合成ゼオライト乾燥剤(合成ゼオライト4A, 10g, 60×40×4mm)1枚とともに200×150mmのアルミ袋に入れ、ヒートシールした。製剤を封入したアルミ袋をそれぞれ5℃の冷蔵庫ならびに25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの恒温恒湿器内に保管した。3ヵ月後にアルミ袋からマイクロニードルパッチを回収した。
評価:保存品のマイクロニードルの外観をデジタル顕微鏡で観察した。
結果:
図9に示す。
評価:製剤中のVLP含量をサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。
結果:表15に記す。
【表15】
評価:製剤中G1およびG2タンパク含量を逆相クロマトグラフィーにより測定した。
結果:表16に記す。
【表16】
【0060】
(実施例13)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液1693μl(VLP:7.5mg、NaCl:0.099mg、ヒスチジン:5.3mg)およびノロウイルスVLP(G2)溶液1453μl(VLP:7.5mg、スクロース:291mg、NaCl:17mg、ヒスチジン:4.5mg)を混合し、これに75mgのキトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213)を添加して攪拌溶解した後、真空下で気泡を除去し抗原充填用液剤とした。固形分中の主成分の重量比はノロウイルスVLP(G1):1.8%、ノロウイルスVLP(G2):1.8%、スクロース:71.3%およびキトサングルタメート:18.4%であり、充填用液剤の固形分濃度は11.5%(重量比)とした。また、80mgのキトサングルタメートおよび320mgのスクロースを3200μlの蒸留水に溶解し、基底部充填用液剤とした。
マイクロニードル金型(ニードル材質:SUS316L, ニードル形状:四角錐形, 一辺長さ:300μm、高さ:500μm、配置:1mmピッチ×10列×10行=100本、 正方形、東海アヅミテクノ製)を型作成冶具(旭光精工製)の加熱プレート上で179℃に加熱した。スチレン系熱可塑性エラストマーのシート(RABARON(登録商標)、厚さ1mm、三菱化学製)を約2.5cm×2.5cmのサイズに切断し、過熱した金型上に被せ、30秒間プレス圧約25Nでプレスした。約1分後、シートを金型から剥がし、マイクロニードル成形型を得た。
成形型をマイクロニードル製造装置(旭光精工製)のXYステージにセットし、ディスペンサー1(ノズル径:0.075mmφ)で抗原含有液剤を100個のニードル穴に24回連続して充填した(送液圧力:0.017MPa)。充填後、空圧プレスで60秒エアプレスを行い、ポリマーを穴の奥まで充填し、型穴先端部の残留気泡を除去した。続いて基底部に基底部充填用液剤をそれぞれ18回充填し、同様にエアプレスを実施した。その後、成形型を室温で約18時間乾燥後、軟質ポリエチレン製支持体シート(直径:18mm、厚さ:0.3mm)表面に貼り付けた両面接着テープ(No.5302A、日東電工製)のアクリル面をポリマー表面に貼付、剥離することによりテープ接着面にマイクロニードルを回収した。得られたマイクロニードルを合成ゼオライト乾燥剤(合成ゼオライト4A, 10g, 60×40×4mm)1枚とともに200×150mmのアルミ袋に入れ、ヒートシールした。製剤を封入したアルミ袋をそれぞれ5℃の冷蔵庫ならびに25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの恒温恒湿器内に保管した。1ヵ月後にアルミ袋からマイクロニードルパッチを回収した。
評価:保存品のマイクロニードルの外観をデジタル顕微鏡で観察した。
結果:
図10に示す。
評価:製剤中のVLP含量をサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。
結果:表17に記す。
【表17】
評価:ウサギ(kbl:NZWN、雌、8週齢)にマイクロニードルパッチ1枚又は2枚(G1およびG2タンパク各 20 μg/パッチ)を投与した。第1回投与の21日後に第1回と同用量で第2回の追加投与を実施した。第2回投与日の投与後21日に、血液を採取し、血清中のG1およびG2特異的IgGおよびIgAをELISAにより測定した。
結果:
図12に記す。
【0061】
(実施例14)
サンプル調製:
ノロウイルスVLP(G1)溶液1693μl(VLP:7.5mg、NaCl:0.099mg、ヒスチジン:5.3mg)およびノロウイルスVLP(G2)溶液1453μl(VLP:7.5mg、スクロース:291mg、NaCl:17mg、ヒスチジン:4.5mg)を混合し、これに75mgのキトサングルタメート(PROTASAN(登録商標)UP G213)を添加して攪拌溶解した後、真空下で気泡を除去し抗原充填用液剤とした。固形分中の主成分の重量比はノロウイルスVLP(G1):1.8%、ノロウイルスVLP(G2):1.8%、スクロース:71.3%およびキトサングルタメート:18.4%であり、充填用液剤の固形分濃度は11.5%(重量比)とした。また、80mgのキトサングルタメートおよび320mgのスクロースを3200μlの蒸留水に溶解し、基底部充填用液剤とした。
マイクロニードル金型(ニードル材質:SUS316L, ニードル形状:四角錐形, 一辺長さ:300μm、高さ:500μm、配置:1mmピッチ×10列×10行=100本、 正方形、東海アヅミテクノ製)を型作成冶具(旭光精工製)の加熱プレート上で179℃に加熱した。スチレン系熱可塑性エラストマーのシート(RABARON(登録商標)、厚さ1mm、三菱化学製)を約2.5cm×2.5cmのサイズに切断し、過熱した金型上に被せ、30秒間プレス圧約25Nでプレスした。約1分後、シートを金型から剥がし、マイクロニードル成形型を得た。
成形型をマイクロニードル製造装置(旭光精工製)のXYステージにセットし、ディスペンサー1(ノズル径:0.075mmφ)で抗原含有液剤を100個のニードル穴に6回連続して充填した(送液圧力:0.017MPa)。充填後、空圧プレスで60秒エアプレスを行い、ポリマーを穴の奥まで充填し、型穴先端部の残留気泡を除去した。続いて基底部に基底部充填用液剤をそれぞれ36回充填し、同様にエアプレスを実施した。その後、成形型を室温で約18時間乾燥後、軟質ポリエチレン製支持体シート(直径:18mm、厚さ:0.3mm)表面に貼り付けた両面接着テープ(No.5302A、日東電工製)のアクリル面をポリマー表面に貼付、剥離することによりテープ接着面にマイクロニードルを回収した。得られたマイクロニードルを合成ゼオライト乾燥剤(合成ゼオライト4A, 10g, 60×40×4mm)1枚とともに200×150mmのアルミ袋に入れ、ヒートシールした。製剤を封入したアルミ袋をそれぞれ5℃の冷蔵庫ならびに25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの恒温恒湿器内に保管した。1ヵ月後にアルミ袋からマイクロニードルパッチを回収した。
評価:保存品のマイクロニードルの外観をデジタル顕微鏡で観察した。
結果:
図11に示す。
評価:製剤中のVLP含量をサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。
結果:表18に記す。
【表18】
評価:ウサギ(kbl:NZWN、雌、8週齢)にマイクロニードルパッチ1枚(G1およびG2タンパク各 5 μg/パッチ)を投与した。第1回投与の21日後に第1回と同用量で第2回の追加投与を実施した。第2回投与日の投与後21日に、血液を採取し、血清中のG1およびG2特異的IgGおよびIgAをELISAにより測定した。
結果:
図12に記す。
【0062】
実施例12においてはノロウイルスタンパク(G1及びG2)について安定性を有することが示された。実施例12〜14のサンプルにおいては、ノロウイルスVLP(G1及びG2)についても安定性を有することが示された。また、
図9〜11に示される顕微鏡写真から、実施例12〜14のサンプルにおいても、保存後のマイクロニードル形状における物理的安定性が観察された。
実施例13及び14において、マイクロニードル中のノロウイルスタンパク(G1及びG2)のパッチ当たりの抗原量及び投与したパッチの枚数に応じて、抗体力価が測定された。この結果から、実施例13及び14のマイクロニードルが皮内投与により免疫応答を誘導する能力を有することが示された。