【課題を解決するための手段】
【0024】
前述の目標の1つ又は複数は、少なくとも1つのナノ構造化表面を含む工作物であって、
− 前記ナノ構造化表面は、25mJ/m
2未満、好ましくは20mJ/m
2未満の表面エネルギーを有する材料製であり、空洞を画定する連続したセルのアレイを含み、
セルの空洞は、中間の固体材料壁によって互いに分離されており、環境に開放されており、
− 空洞は、条件:
R≧5nm、好ましくはR≧10nm;
R≦250nm、好ましくはR≦200nm、より良好には、R≦150nm、より好ましくはR≦100nm;且つ
H≦3R、より良好にはH<3R、好ましくはH≦1.5R、好ましくはH<1.5R、より好ましくはH≦0.5R
を満たす平均高さ(H)及び平均半径(R)を有する、工作物を提供することによって得られる。
【0025】
空洞の説明
ナノ構造化表面は、空洞を画定する並置されたセルのアレイを含み、セルの空洞は、中間の固体壁によって互いに分離されており、環境に開放されている。
【0026】
空洞のトップビューのジオメトリー、2つの連続した空洞構造間の側壁形状、上壁プロファイル、及び基板上の構造の空間的な配列は、変更することができる。異なる構造化表面は、すべてのこれらの特徴の組合せに基づいて形成することができる。
【0027】
空洞のジオメトリー及び空間的配列のいくつかの例を
図1に示す。
【0028】
空洞構造の上側のジオメトリーは、規則正しく、不規則に、又はランダムに成形されうる。このような形状の例としては、それだけに限らないが、正方形(4つの同一の壁によって区切られる)、矩形(4つの壁によって区切られ、それぞれ2つの反対の壁が同一である)、三角形(すなわち、3つの壁によって区切られる)、六角形(すなわち、6つの壁によって区切られる)、円形又は楕円(すなわち、1つの壁によって区切られる)、ランダム形状の空洞、及びこれらの組合せがある。
【0029】
パターンの配列は、対称的に、非対称的に配列された、又はランダムに配置された同じ又は異なるサイズを有する様々なランダム又は周期的な空洞形状の組合せでありうる。これはまた、対称的若しくはランダムな空間的な機構を有する、又はこれらの組合せで配列されたランダム及び周期的な形状の空洞構造の交互でありうる。対称的な空間的な配列の例としては、それだけに限らないが、正方形、六角形、八角形、及びジグザグがある。
【0030】
2つの隣接する空洞間の壁の幅は、その高さに沿って一定であり得、又はそれは、変動しうる。したがって、壁のプロファイルは、まっすぐ(基板に対して垂直に配向した)、斜位、曲がりくねった、リエントラント、又はオーバーハングのものでありうる。例えば、形状は、柱状、円錐形、ピラミッド型、角柱、曲線状、逆台形、又は柱状と円形との組合せでありうる。水平面と壁側との間に形成される角度は、βによって規定され、入口角と呼ばれる。βは、0°から最大で110°まで変動しうる。空洞の上壁は、平らな、丸みを帯びた、又は鋭いものでありうる。
【0031】
空洞の底部は、平底であり得、又は丸底等の角度のない表面を有し得、又は90°以下であるいくつかの角度でカットされうる。
【0032】
空洞の平均の幅、高さ、及び半径の定義
空洞の壁幅は、空洞の入口開口部を画定する断面平面の壁上の最高位置における2つの隣接する空洞間の距離に対応する(より詳細については
図1を参照)。
【0033】
平均幅(d)は、構造表面の10μm×10μmの範囲内に配列された一連の空洞パターンについての壁幅(上記に定義した)の平均値である。
【0034】
空洞の高さは、空洞の入口開口部を画定する断面平面中の一点と空洞構造のベース面上のその標準投影との間の最高距離を指す。
【0035】
平均高さ(H)は、構造表面の10μm×10μmのエリア内に配列された一連の空洞パターンについての空洞の高さ(上記に定義した)の平均値である。
【0036】
空洞の半径は、ベース面上の空洞「入口」開口部の正射影の2つの直径方向に対向する点間の空洞中の半分の距離の最大を指す。
【0037】
平均半径(R)は、構造表面の10μm×10μmのエリア内に配列された一連の空洞パターンについての空洞の半径(上記に定義した)の平均値である。
【0038】
ベース面は、空洞の主軸に直交し、空洞の最低点を含む平面として定義される。
【0039】
本発明は、空洞の平均半径(R)及び平均高さ(H)の関数として、ナノ構造化表面上に圧力下で塗布された油性液体の沈降率(α)を計算するための理論モデルも対象とする。上記目標は、本発明によれば、少なくとも1つのナノ構造化表面を含む工作物を提供することによって実現され、ここで、
− 前記ナノ構造化表面は、25mJ/m
2未満、好ましくは20mJ/m
2未満の表面エネルギーを有する材料製であり、空洞を画定する並置されたセルのアレイを含み、セルの空洞は、中間の固体壁によって互いに分離されており、
空洞は、以下の条件:R≧5nm、好ましくはR≧10nm;
R≦250nm、好ましくはR≦200nm、より良好にはR≦150nm、より好ましくはR≦100nm;且つ
H≦3R、より良好にはH<3R、好ましくはH≦1.5R、好ましくはH<1.5R、より好ましくはH≦0.5R
を満たす平均高さ(H)及び平均半径(R)を有する。
【0040】
別の実施形態では、2R<H<3Rである。
【0041】
本発明の好適な実施形態では、沈降率(α)は、50%以下であり、ここで
【0042】
【数1】
【0043】
であり、式中、hは、空洞中間壁の液体によるぬれの高さであり、Hは、空洞の平均高さである(
図4に規定した通り)。
【0044】
別の実施形態では、沈降率(α)は、30%以下である。
【0045】
より好ましくは、沈降率(α)は、10%〜30%未満の範囲であり、空洞の平均高さHは、条件H≦1.5Rを満たす。
【0046】
更に好適な実施形態では、空洞の平均高さHは、条件H≦0.5Rを満たし、沈降率(α)は、10%未満である。
【0047】
沈降率(α)は、実際には、以下に開示する理論モデルを使用して測定又は判定されうる。
【0048】
平面(ナノ構造化表面と同じ材料製)上への液体の入口角(β)及び静的接触角(θ
stat)の相対値に応じて、空洞上の液体メニスカスの形状は、異なる(静的接触角θ
statの意味は、
図2に説明されている)。
【0049】
β≦θ
statであるとき(
図5A及び
図6Aを参照)、液体メニスカスは、凸面であり、沈降がほとんどなく、その場合において、メニスカスが空洞構造の底部に触れる場合、主要なリスクは、液滴上の圧力の印加下での液滴のブレークスルーである。
【0050】
β>θ
statであるとき(
図5B及び
図6Bを参照)、液体メニスカスは、凹面であり、沈降率は、一般に重要であり、液滴上に印加される圧力とともに増大する。
【0051】
それでもやはり、ブレークスルーも回避されるべきであると言う価値はある。
【0052】
本発明者らは、一般に、空洞内部の液体の全体的な浸潤は、空洞の平均高さHが要件:
【0053】
【数2】
【0054】
(式中、θ
advは、ナノ構造化表面と同じ表面材料製の平面上への液体の前進角である)を満たす場合、回避することができると判定した。
【0055】
同じ材料製とは、平面の材料がナノ構造化表面と同じ材料で構成されており、必要であれば、ナノ構造化表面と同じ処理を付され、又は同じ材料で被覆されていることを意味する。
【0056】
典型的には、セル空洞の最小平均高さは、H>0.20R、好ましくはH≧0.25R、更により良好にはH≧0.3Rである。
【0057】
好ましくは、本発明によるセルアレイの幾何学的固相率(ψ)は、0.7以下、好ましくは0.5以下、更により良好には0.3以下となる。
【0058】
幾何学的固相率(ψ)は、ナノ構造化表面の固体表面積のナノ構造化表面の総表面積(固体及び空気の面積)に対する比として、構造のトップビュー視点から規定される。
【0059】
セルアレイは、好ましくは周期的なアレイである。
【0060】
セル空洞は、円形、長円形、又は多角形の形状、例えば、正方形、矩形、及び六角形の形状等を有しうる。好ましくは、空洞は、六角形配列中の円筒形のものである(
図3及び
図5)。
【0061】
物品のナノ構造化表面の表面材料は、25mJ/m
2未満、好ましくは20mJ/m
2未満、より良好には14mJ/m
2未満、更には12mJ/m
2未満の表面自由エネルギーを呈する。ナノ構造表面は、フッ素化樹脂若しくはフッ素化ポリマー等の低表面エネルギー材料で作製することができ、又はそれは、低表面エネルギー被膜で被覆することができる。一般に、このような低表面エネルギー被膜は、フッ素ポリマー又はフルオロシランの少なくとも1種を含む。このようなフッ素ポリマー又はフルオロシランとしては、それだけに限らないが、Teflon(登録商標)、並びに市販のフルオロシラン、例えば、Dow Corning 2604、2624、及び2634;Daikin Optool DSX(登録商標)、Shinetsu OPTRON(登録商標)、ヘプタデカフルオロシラン(例えば、GELEST社によって製造された)、FLUOROSYL(登録商標)(例えば、CYTONIX社によって製造された)等がある。このような被膜は、浸漬、蒸気被覆、吹き付け、ローラーを用いた塗布、及び当技術分野で公知の他の適当な方法によって物品のナノ構造化表面に塗布することができる。
【0062】
疎水性及び/又は疎油性トップコートの調製に推奨されるフルオロシランを含有する組成物は、米国特許第6,183,872号明細書に記載されている。これらは、以下の一般式によって表され、5.10
2〜1.10
5の分子量を有するケイ素系基を担持する有機基を有するフッ素ポリマーを含有する:
【0063】
【化1】
【0064】
式中、R
Fは、ペルフルオロアルキル基を表し;Zは、フルオロ基又はトリフルオロメチル基を表し;a、b、c、d、及びeはそれぞれ互いに独立して、0、又は1以上の整数を表し、但し、和a+b+c+d+eは、1未満ではなく、a、b、c、d、及びeで指し示されたブラケット間の繰り返し単位の順序は、示したものに限定されず;Yは、H又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を表し;Xは、水素、臭素、又はヨウ素の原子を表し;
R
1は、水酸基又は加水分解性基を表し;R
2は、水素の原子又は一価の炭化水素基を表し;mは、0、1、又は2を表し;nは、1、2、又は3を表し;pは、少なくとも1に等しい、好ましくは少なくとも2に等しい整数を表す。
【0065】
式:
【0066】
【化2】
【0067】
のペルフルオロポリエーテルが特に好適であり、式中、Y、R
1、m及びpは、上記に定義した通りであり、aは、1〜50の整数である。
【0068】
先の式(1)によって与えられるフルオロシランを含有する配合物は、名称OPTOOL DSX(登録商標)でDAIKIN INDUSTRIES社によって販売されている。
【0069】
文献特開2005−187936には、防汚被膜を形成するのに適したシランのフッ素化化合物、特に式:
【0070】
【化3】
【0071】
によって与えられる化合物が記載されており、式中、
R’
Fは、直鎖二価のペルフルオロポリエーテルラジカルであり、
R’は、C
1〜C
4でのアルキル基、又はフェニルラジカルであり、
X’は、加水分解性基であり、
a’は、0〜2の整数であり、
b’は、1〜5の整数であり、
m’及びn’は、2又は3に等しい整数である。
【0072】
上記式(2)によって与えられるフルオロシラン化合物は、名称KY−130(登録商標)でSHIN−ETSU CHEMICAL CO, Ltd社によって販売されている。
【0073】
式(2)によって与えられるフルオロシラン化合物、及びこれらを調製するための方法は、欧州特許出願公開第1300433号明細書にも記載されている。
【0074】
好ましくは、本発明の物品は、曲線状の表面を有する。
【0075】
より好ましくは、本発明の物品は、光学物品等の透明物品、特に、眼科用レンズである。
【0076】
このような透明物品について、空洞の半径及び高さは、R≦100nm及びH≦200nmであるようなものとし、幾何学的固相率は、ψ≦0.5、好ましくはψ≦0.3であるものとする。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、本発明による物品のナノ構造化表面は、130°以上の水との見かけ上の静的接触角、及び110°以上のリノール酸との見かけ上の静的接触角を有する。
【0078】
本発明の別の実施形態によれば、本発明による物品は、135°以上の水との見かけ上の静的接触角、及び115°以上のリノール酸との見かけ上の静的接触角を有する。
【0079】
本発明の物品のナノ構造化表面は、公知の慣例的なプロセス、例えば、ナノインプリントリソグラフィー又はe−ビームリソグラフィー技法等によって作製することができる。
【0080】
沈降率(α)は、一測定法を使用して判定し、又は理論モデルを使用して計算することができる。
【0081】
測定法として、液体を凍結させ、又は液体と同じ表面張力を有する流体を硬化させて(例えば、UV光開始剤又はUV硬化性樹脂を使用して)、SEM(走査電子顕微鏡法)によって固化した液体の形状を確かめることによって沈降率をプローブ及び測定することを挙げることができる。
【0082】
沈降率(α)を計算するための理論モデルは、
【0083】
【数3】
【0084】
(式中、
Pa:静水圧→Pa=P
0+ρgz+ΔP
P
0:大気圧
ρgz:液滴の重力によって引き起こされる圧力
ΔP:滴上に印加される外圧
γ:液体の表面張力
R:空洞の平均半径
H:空洞の平均高さ
d:2つの空洞間の平均距離(壁幅)
θ
adv:平面(同じ材料及び被膜であるが、いずれの構造も伴わない)上への液体の前進角
V
0:1つの空洞の幾何学的体積→V
0=πR
2H
Vi:液体が表面と接触するときに液体によって捕捉される空気の体積を含む空洞の全体積
【0085】
【数4】
【0086】
e:液体によって捕捉される空気層の厚さ(
図7の概略図でこの現象を説明した)
f(θ):係数→円筒状の空洞について:
【0087】
【数5】
【0088】
)である。
【0089】
空洞のパラメータR、H、及びdは、以前に記載したように得られる。
【0090】
空洞がナノ構造化表面の水平面と角度β(90°と異なる)を形成する壁の側面プロファイルを有する場合では、θ
advは、(θ
adv+π/2−β)によって置き換えられる。
【0091】
本発明はまた、固体中間壁によって互いに分離された空洞を画定する並置されたセルのアレイを含むナノ構造化表面を設計するための方法であって、
− 理論モデル:
【0092】
【数6】
【0093】
(式中、
Pa:静水圧→Pa=P
0+ρgz+ΔP
P
0:大気圧
ρgz:液滴の重力によって引き起こされる圧力
ΔP:滴上に印加される外圧
γ:液体の表面張力
R:空洞の半径
H:空洞の高さ
d:2つの空洞間の距離(壁の幅)
θ
adv:平面(同じ材料及び被膜であるが、いずれの構造も伴わない)上への液体の前進角
V
0:1つの空洞の幾何学的体積→V
0=πR
2H
Vi:液体が表面と接触するときに液体によって捕捉される空気の体積を含む空洞の全体積
【0094】
【数7】
【0095】
e:液体によって捕捉される空気層の厚さ(
図7の概略図でこの現象を説明した)
f(θ):係数→円筒状の空洞について:
【0096】
【数8】
【0097】
)によって計算される、空洞の半径(R)及び高さ(H)の関数において沈降率(α)の異なる値のエリアのマップを得る工程と、
− 所望の沈降率値によって空洞についての半径(R)及び高さ(H)の値を選択する工程と、
− 空洞の半径(R)及び高さ(H)について選択された値を有するセルアレイを形成する工程と
を含む、方法に関係する。