特許第6556743号(P6556743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6556743-液晶シーリング用の硬化性樹脂組成物 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556743
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】液晶シーリング用の硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20190729BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20190729BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20190729BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08F2/50
   C09K3/10 B
   C09K3/10 L
   C09K3/10 Z
   G02F1/1339 505
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-552994(P2016-552994)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公表番号】特表2017-508839(P2017-508839A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】CN2014072251
(87)【国際公開番号】WO2015123824
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年1月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・テンファン
(72)【発明者】
【氏名】リー・チン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ダウェイ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/038571(WO,A1)
【文献】 特開2010−020286(JP,A)
【文献】 特表2008−536968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C08K
C09K
G02F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
【化1】
およびそれらの混合物
からなる群から選択されるマレイミド樹脂;
b)有機過酸化物および有機アゾ化合物からなる群から選択される熱フリーラジカル開始剤;
c)40℃以上の融点を有する固形エポキシ樹脂;および
d)潜伏性エポキシ硬化剤
を含み、前記マレイミド樹脂の0.01重量%〜5重量%の前記熱フリーラジカル開始剤を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記組成物は、該組成物全体の10重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%、より好ましくは30重量%〜60重量%のマレイミド樹脂を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱フリーラジカル開始剤は、30-80℃の温度に10時間の半減期(10h T1/2)、より好ましくは40-70℃の温度に10h T1/2を有し、ここで、10h T1/2の温度は、熱フリーラジカル開始剤が、10時間後に本来存在する熱フリーラジカル開始剤の半分まで分解する温度として定義される、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記組成物は、マレイミド樹脂の0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.5重量%〜2重量%の熱フリーラジカル開始剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記固形エポキシ樹脂は、ポリスチレン標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定して500〜3000g/molの数平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記組成物はさらに液状エポキシ樹脂を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記潜伏性エポキシ硬化剤は、好ましくは50℃〜110℃、最も好ましくは60℃〜80℃の融点を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記組成物は、組成物全体の1重量%〜40重量%、好ましくは3重量%〜30重量%、最も好ましくは5重量%〜20重量%の潜伏性エポキシ硬化剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
ニルエーテル化合物または(メタ)アクリレート化合物を含む樹脂成分、並びに、有機または無機充填剤、チキソトロピー剤、シランカップリング剤、希釈剤、変性剤、着色剤、界面活性剤、防腐安定剤、可塑剤、潤滑油、消泡剤およびレベリング剤から選択される添加剤からなる群から選択される原料をさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
有機または無機充填剤、チキソトロピー剤、およびシランカップリング剤を好ましくは含む、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記組成物は、レオメーターTA、AR2000 exを用いて本明細書に記載の方法に従い、25℃、15s-1で測定して、150〜450Pas、好ましくは25℃、15s-1で200〜400Pas、最も好ましくは25℃、15s-1で250〜350Pasの粘度を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
液晶をシーリングするための、請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の使用。
【請求項13】
以下のステップを含む、第1基材および第2基材の間の液晶層を有する液晶ディスプレイの製造方法:
1)請求項1〜11のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を第1基材の表面の周縁のシーリング領域に適用するステップ;
2)第1基材の表面の該シーリング領域で取り囲まれた中央領域に液晶を滴下するステップ;
3)第1基材上に第2基材を重ねるステップ;
4)UV硬化ステップ;および
5)熱硬化ステップ。
【請求項14】
硬化は80℃〜130℃、好ましくは100℃〜120℃の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シーリング用の硬化性樹脂組成物、および、液晶ディスプレイの製造方法における硬化性樹脂組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量かつ高解像度の特徴を有する液晶ディスプレイ(LCD)パネルは、携帯電話およびテレビを含む種々の装置の表示パネルとして広く使用されてきた。通常、LCDパネルの製造方法はいわゆる真空注型法であり、この方法は、電極を備えたガラス基材上に熱硬化性シーラント組成物を塗付し、向かい合って対向するガラス基材を互いに接合し、熱プレスし、得られたものを硬化させてセルを形成させ、該セル内に真空下で液晶を注入し、注入後に入口をシールすることを含む。
【0003】
上記通常の方法は、熱硬化の際の加熱ひずみのためにセルギャップが変化するという問題を有する。さらに近年、携帯電話用の小型サイズおよびTV用の大型サイズを含むLCDパネルに対する要求が増加するに伴い、真空注型法は非常に時間がかかり、大量生産には不都合であることが注目されている。
【0004】
上記の問題を解決するために、滴下注入工法(ODF法)が提案されている。ODFは、電極パターンを有する基材および配向フィルム上に、真空条件下でシーラントを塗付し、塗布されたシーラントを有する基材上に液晶を滴下し、真空下で向かい合って対向する基材を互いに接合し、次いで、真空を開放し、紫外線(UV)照射を行うかまたはUV+熱を与えてシーラントを硬化させ、それによってLCDセルを製造することを含む。
【0005】
ODF法において使用されるシーラントは、通常、UV硬化性であるか、または、UVおよび熱硬化性である。UV硬化性シーラントは、UV硬化性アクリル系樹脂を主原料として用いるが、UVおよび熱硬化性シーラントは部分的にアクリル化されたエポキシ樹脂を主原料として用いる。UVおよび熱硬化性シーラントを用いるが、UV照射が第1ステップにおいて行われ、基材の迅速な固定が可能となり、続いてシーラントの硬化を完了するために熱硬化が行われる。このタイプのシーラントは、UV硬化性シーラントよりも高い信頼性を与えると考えられるため、この方法は近年、LCDパネルを製造するための主な方法となっている。
【0006】
通常、ガラス基材は電極パターンを有し、電極パターンは複雑な金属配線であり、シーラントパターンと重なるため、部分的に光が遮断された領域または影領域をもたらす。光遮断領域に配置されたシーラントを完全に硬化させることができない場合、続く後熱硬化プロセスにおいて、液晶がシーラント内に容易に浸透するか、または、未硬化の樹脂組成物が加熱条件下で液晶を汚染し得る。上記のシナリオはいずれも、LCDパネルのディスプレー品質の大きな低下をもたらす。ディスプレーの高解像度に対する要求が高まるにつれて、金属配線はますます複雑になっており、そのため、光遮断領域も大きくなりつつあり、光遮断領域下での良好な硬化性能に対する強い要求が生じている。
【0007】
さらにLCDの開発は、「狭額縁化(slim border)」または「狭額縁(narrow bezel)」設計の方向に、より向けられている。この目的を達成するためのいくつかの方法のうちの1つは、狭い幅のシールを用いることである。しかし、シーラントのラインを細くすると、LCDパネルの品質を確保するためには、光で覆われた領域のみならず光遮断領域においても、硬化したシーラントが非常に高い接着強度および信頼性を有する必要があるという理由で、より課題が生じる。
【0008】
エポキシ−アクリレートハイブリッド硬化性組成物についての光遮断領域における硬化性の問題を解決すべく、様々な試みがなされてきた。例えば、US 20070096056には、チオール化合物を連鎖移動剤として使用し、エポキシ−アクリレートハイブリッド硬化性組成物の影での硬化性を改善することが提案されている。しかし、チオール化合物とエポキシ硬化剤(例えばイミダゾールまたはアミン)との組合せは、エポキシとチオールとの反応性を促進し得り、そのため、室温での粘度安定性の問題をもたらす。
【0009】
CN 101617267には、エポキシ−アクリレート ハイブリッド硬化性組成物中での熱ラジカル重合開始剤およびチオール連鎖移動剤の両方の使用が開示されており、これは光遮断領域に増大された硬化性をもたらし得り、その結果、良好なシーリング品質がもたらされ得る。しかし、シーラントのライン幅が小さくなるにつれて、硬化したシーラントの接着強度および信頼性が、液晶ディスプレイパネルの信頼性を十分に確保することができない。
【0010】
他方でビスマレイミド樹脂は、その高い性能(例えば低吸湿性、高架橋構造、高い耐化学薬品性および高い機械的安定性)から、1960年代より知られている。これらの利点のために、ビスマレイミドは接着剤用途に広く応用されている。
【0011】
マレイミド化合物を含有する接着剤は、光開始剤なしで硬化し得ることが知られている。JP 2002338946には、(メタ)アクリレートオリゴマーおよびマレイミド誘導体を有するシーラント組成物が開示されており、一方、JP 200334708には、マレイミド変性エポキシ化合物を含む樹脂組成物が開示されている。これらの特許出願はいずれも、液晶シーラントまたは有機成分シーラントの接着性および耐湿性に取り組むことを意図しており、ODF LCD組立工程における用途を意図するものではない。JP 20052015には、ビスフェノールS構造から誘導された特定のマレイミド化合物を有するシーラント組成物が提案されており、低い液晶汚染と高い接着強度を有することが述べられている。
【0012】
さらに、CN 101676315には、マレイミド化合物を含有するシーラントが、光開始剤を除去するという利点を有することが提案されている。通常の光開始剤を有するエポキシ−アクリレートハイブリット組成物と比較して、かかる光開始剤不含系は、残留光開始剤による液晶への悪影響を低減することができるため、ディスプレイの品質を確保し得る。しかし、かかる光開始剤不含系は光遮断領域において完全には硬化され得ないため、液晶汚染などの潜在的問題または信頼性の問題を生じることに注意すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 20070096056
【特許文献2】CN 101617267
【特許文献3】JP 2002338946
【特許文献4】JP 200334708
【特許文献5】JP 20052015
【特許文献6】CN 101676315
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、光遮断領域の硬化性問題を解決するための熱フリーラジカル開始剤およびマレイミド樹脂の組合せを提供する。結果として、本発明の硬化性樹脂組成物は、マレイミド樹脂、熱フリーラジカル開始剤、エポキシ樹脂、および潜伏性エポキシ硬化剤を含み、これはUVおよび熱の組合せにより硬化性であり、その結果、光遮断領域における良好な硬化性、優れた接着強度および高い信頼性を有する硬化生成物が得られ、これはODF LCD組立工程に特に適当である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、接着強度および信頼性試験のために、酸化インジウム錫ガラス上に試料をどのように配置するかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下:
a)
【化1】
およびそれらの混合物
からなる群から選択されるマレイミド樹脂;
b)有機過酸化物および有機アゾ化合物からなる群から選択される熱フリーラジカル開始剤;
c)エポキシ樹脂;および
d)潜伏性エポキシ硬化剤
を含む硬化性樹脂組成物を提供する。
【0017】
本発明はまた、本発明の硬化性樹脂組成物の液晶用シーリング剤としての使用も提供する。
【0018】
さらに、本発明は、以下のステップを含む第1基材および第2基材の間に液晶を有する液晶ディスプレイを製造するための方法を包含する:
1)第1基材の表面の周縁のシーリング領域に本発明の硬化性樹脂組成物を適用するステップ;2)第1基材の表面の該シーリング領域で取り囲まれた中央領域に液晶を滴下するステップ;3)第1基材上に第2基材を重ねるステップ;4)UV硬化ステップ;および5)熱硬化ステップ。
【0019】
以下において、本発明をより詳細に記載する。記載される各態様は、その逆が明記されない限り、いずれの他の態様と組合せてもよい。特に、好ましいまたは有利であるとされる任意の特徴を、好ましいまたは有利であるとされる別の任意の特徴と組み合わせてよい。
【0020】
本発明に関し、使用される用語は、文脈においてそうでないことが規定されない限り、以下の定義に従うと理解される。
【0021】
本明細書に記載されるように、単数形の形態「a」、「an」および「the」は、文脈において明確にそうでないことが規定されない限り、単数および複数の指示物の両方を含む。
【0022】
本明細書で使用される用語「含む(「comprising」、「comprises」)」および「含んでなる(「comprised of」)」は、「含む(「including」、「includes」)」または「含有する(「containing」、「contains」)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、言及されていない部材、要素または方法ステップを除外するものではない。
【0023】
数値的終点の記載は、それぞれの範囲内に包含される全ての数および分数を含み、同様に、記載される終点も含む。
【0024】
本明細書に引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれるものとする。
【0025】
そうでないことを定義しない限り、本発明の開示において使用される全ての用語は、技術的および科学的用語を含み、本発明が属する分野の当業者に通常理解されるような意味を有する。さらなるガイダンスを用いることにより、用語の定義が本発明の教示をより深く理解させる。
【0026】
本発明の液晶シーリング用硬化性樹脂組成物は、マレイミド樹脂、熱フリーラジカル開始剤、エポキシ樹脂、潜伏性エポキシ硬化剤、および任意に他の原料を含む。
【0027】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光遮断領域における良好な硬化性、優れた接着強度および高い信頼性を有する生成物へと硬化させることができ、これらは特に滴下注入工法の液晶ディスプレイ組立プロセスのための、光遮断領域の硬化性および信頼性に対する要求に取り組むものである。
【0028】
マレイミド樹脂
本発明の液晶シーリング用硬化性樹脂組成物は、特定のマレイミド樹脂を含む。
【0029】
良好な加工性を得るために、マレイミド樹脂は室温(25℃)で好ましくは液状である。しかし、該マレイミド樹脂は、樹脂組成物中で他の成分と混合されて液体状態となり得る場合、固形であってもよい。
【0030】
包括的なマレイミド樹脂は、次の構造:
【化2】
[式中、
nは1〜3であり、Xは脂肪族または芳香族基である。]
を有する。Xの群の例としては、ポリ(ブタジエン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(エーテル)、ポリ(エステル)、単純な炭化水素、および、カルボニル、カルボキシル、アミド、カーバメート、尿素、エステル、またはエーテルなどの官能基を含有する単純な炭化水素が挙げられる。
【0031】
しかし、単純な炭化水素鎖を有するマレイミド樹脂は、本発明の硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の一部との相溶性の問題を有し得り、そのため、より高い相溶性を有する好ましいマレイミド樹脂として、次の一般構造が挙げられる:
【化3】
[式中、C36は、36個の炭素原子の直鎖状または分枝状炭化水素鎖(環状部分を有するかまたは有さない)を表す]。
【0032】
本発明において使用される適当なマレイミド樹脂は、以下の構造からなる群から選択される:
【化4】
およびそれらの混合物。
【0033】
本発明の硬化性樹脂組成物は、式III、IV、V、VIおよびそれらの混合物からなる群から選択されるマレイミド樹脂を含む。
【0034】
マレイミド樹脂III−VIは、より極性であるため、他の原料、特に本発明に使用されるエポキシ樹脂と、より相溶性である。さらに、極性の増加は、基材に対する接着性を向上させる。
【0035】
好ましくは、本発明の硬化性樹脂組成物は、マレイミド樹脂IIIを含む。
【0036】
本発明によれば、該選択されたマレイミド樹脂は、UV照射に際しUV硬化性の部分の機能を付与すると共に、高温および高湿度下での良好な接着性および高い信頼性を与える。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物全体の好ましくは10%〜90重量%、好ましくは20%〜80%、最も好ましくは30%〜60%のマレイミド樹脂を含む。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるマレイミド樹脂の量が理想的であると、組成物のコストが高くなりすぎることなく、UV硬化中に十分な固定が得られる。
【0039】
熱フリーラジカル開始剤
本発明の液晶シーリング用硬化性樹脂組成物は熱フリーラジカル開始剤を含む。
【0040】
熱フリーラジカル開始剤は、熱活性化される際に分解し、フリーラジカルを放出し得る化合物であり、それによって、光遮断領域においてマレイミド樹脂の架橋反応が開始される。
【0041】
本発明の液晶シーリング用硬化性樹脂組成物は、有機過酸化物および有機アゾ化合物からなる群から選択される熱フリーラジカル開始剤を含む。
【0042】
適当な熱フリーラジカル開始剤としては、例えば当技術分野で既知の有機過酸化物およびアゾ化合物が挙げられる。例としては、以下が挙げられる:アゾフリーラジカル開始剤、例えばAIBN(アゾジイソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-エチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,11-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス[N−(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド];ジアルキルペルオキシドフリーラジカル開始剤、例えば1,1-ジ-(ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン);アルキルペルエステルフリーラジカル開始剤、例えばTBPEH(t-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート);ジアシルペルオキシドフリーラジカル開始剤、例えばベンゾイルペルオキシド;ペルオキシジカーボネートラジカル開始剤、例えばエチルヘキシルペルカーボネート;ケトンペルオキシド開始剤、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、ビス (t-ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、およびそれらの組合せ。
【0043】
有機過酸化物フリーラジカル開始剤のさらなる例としては以下が挙げられる:ジラウロイルペルオキシド、2,2-ジ(4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルモノペルオキシマレエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン 2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサプ(hexpe)-3、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、ジイソブチリルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(Trigonox 21S)、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオキシアセテート、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、およびtert-ブチルクミルペルオキシド。
【0044】
本発明において使用される、適当な市販され入手可能な熱フリーラジカル開始剤は、例えばAkzoNobel Polymer Chemicals製のPerkadox 16、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0045】
より高い分解速度を有する熱フリーラジカル開始剤は、フリーラジカルを通常の硬化温度(80‐130℃)でより簡単に生じ、より速い硬化速度をもたらし、液状樹脂と液晶との接触時間を減らすことができ、それによって液晶の汚染を低減できるため好ましい。他方で、開始剤の分解速度が高すぎる場合、室温での粘度安定性に影響を及ぼし得り、それによって、シーラントの可使時間が減少する。
【0046】
特定の温度における開始剤の分解速度を表すための簡便法は、その半減期、すなわち、もともと存在していたペルオキシドの半分が分解するに必要な時間に関する。異なる開始剤の反応性を比較するために、それぞれの開始剤が10時間の半減期(T1/2)を有する温度を用いる。10h T1/2温度は、10時間後にもともと存在していた熱フリーラジカル開始剤の半分まで熱フリーラジカル開始剤が分解する温度として定義される。最も反応性の(最も早い)開始剤は、最も低い10h T1/2温度を有するものである。
【0047】
本発明において、30〜80℃の10h T1/2を有する熱フリーラジカル開始剤が好ましく、40〜70℃の温度の10h T1/2を有する熱フリーラジカル開始剤がより好ましい。
【0048】
組成物の反応性と粘度安定性とのバランスを取るために、硬化性樹脂組成物中の熱フリーラジカル開始剤のレベルは、組成物全体中のマレイミド樹脂の好ましくは0.01%〜5重量%であり、好ましくは0.1%〜3%であり、最も好ましくは0.5%〜2%である。
【0049】
組成物が多すぎる量の熱フリーラジカル開始剤を含む場合、液晶に悪影響を及ぼし得る。
【0050】
エポキシ樹脂
接着強度および信頼性を含むシーリング性能をさらに高めるために、硬化性樹脂組成物中でエポキシ樹脂を使用する。本発明のエポキシ樹脂成分は、任意の通常のエポキシ樹脂、以下に限定はされないが、芳香族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエステル、環状脂肪族グリシジルエーテル、環状脂肪族グリシジルエステル、環状脂肪族エポキシ樹脂およびそれらの混合物を含んでよい。
【0051】
40℃以上の融点を有する少なくとも1種の固形エポキシ樹脂が好ましい。固形エポキシ樹脂の導入は、本発明の硬化性樹脂組成物の粘度を、選択された固形エポキシ樹脂に応じて、改善されたシーラント性能、例えばより高いガラス転移温度またはより高い柔軟性またはより高い接着強度を有する150〜450Pa・s(25℃、15s-1にて測定、詳細な方法は、以下の実施例の項に記載する)の滴下注入LCDシーラントに必要なレベルに調整するに重要である。滴下注入LCDシーラントの粘度が150Pa・sよりも低い場合、シーラントが真空条件下で液晶と接触する際のシーラントの湿潤強度が十分でなく、そのためライン形状の変形や液晶浸透が引き起こされる。他方で、粘度がPa・sよりも高い場合、シーラントの分配性に影響し、分配速度に影響を及ぼす。
【0052】
さらに、固形エポキシ樹脂は好ましくは500〜3000g/molの範囲の数平均分子量である。数平均分子量が上記範囲内であると、固形エポキシ樹脂が液晶中で低い溶解性および拡散性を示し、得られる液晶ディスプレイパネルが優れたディスプレイ特性を示すようになり、また、マレイミド樹脂との良好な相溶性を有する。エポキシ樹脂の数平均分子量は、ポリスチレン標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定することができる。
【0053】
40℃以上の融点を有する固形エポキシ樹脂の具体例としては、以下が挙げられる:芳香族ジオール(例えばビスフェノールA、ビスフェノールSおよびビスフェノールF)、または、上記ジオールをエチレングリコール、プロピレングリコールおよびアルキレングリコールで変性させて得た変性ジオールと、エピクロロヒドリンとを反応させて得られる芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノールまたはクレゾールおよびホルムアルデヒドから誘導されたノボラック樹脂と、または、ポリフェノール(例えばポリアルケニルフェノールおよびそのコポリマー)と、エピクロロヒドリンとを反応させて得られる、ノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;および、キシレンフェノール性樹脂のグリシジルエーテル化合物。
【0054】
より好ましくは、本発明において、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA エポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、トリフェノールメタンエポキシ樹脂、トリフェノールエタンエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂およびビフェニルエポキシ樹脂を使用してよく、但し、その融点は40℃以上である。
【0055】
本発明において使用される適当な市販され入手可能な固形エポキシ樹脂は、例えばEpikote 1007であり、これはビスフェノールAとエピクロロヒドリンとから製造され、103−115℃の融点および2870g/molの分子量を有し、Momentive Specialty Chemicals Inc.より製造されている、および、DER661であり、これは、ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから製造され、75−85℃の融点および1050g/molの分子量を有し、Dow Chemicalより製造されている。
【0056】
本発明の方法に関し、まず固形エポキシ樹脂を液状エポキシ樹脂中に溶解させてエポキシ樹脂混合物を得て、次いで、該混合物を硬化性組成物中の他の成分と混合することが好ましい。固形エポキシ樹脂をマレイミド樹脂中に直接溶解させることは簡単でない場合があるため、この方法が好ましい。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物全体の好ましくは1%〜40重量%、好ましくは2%〜30%、最も好ましくは5%〜20%の固形エポキシ樹脂を含む。
【0058】
固形エポキシ樹脂レベルが理想的であると、本発明の硬化性樹脂組成物の粘度制御が得られる。硬化性樹脂組成物が高すぎるレベルの固形エポキシ樹脂を有する場合、組成物を液晶のシーリングにうまく使用するには粘度が高すぎる。
【0059】
1種より多くのエポキシ樹脂を使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物は組成物全体の好ましくは10%〜80重量%、好ましくは20%〜80%、最も好ましくは30%〜60%のエポキシ樹脂を含む。理想的なエポキシ樹脂レベルは、本発明の硬化性樹脂組成物の接着強度および信頼性の向上をもたらす。
【0060】
潜伏性エポキシ硬化剤
潜伏性エポキシ硬化剤は、熱を与える際にエポキシ樹脂部分を硬化させるために使用される。適当な潜伏性エポキシ硬化剤は、市販され入手可能な潜伏性エポキシ硬化剤から得ることができ、単独で、または、2種以上の潜伏性エポキシ硬化剤を組み合わせて使用することができる。
【0061】
本発明において使用される好ましい潜伏性エポキシ硬化剤としては、以下が挙げられる:アミン系化合物、微粉末型変性アミンおよび変性イミダゾール系化合物。アミン系潜伏性硬化剤の例としては、以下が挙げられる:ジシアンジアミド、ヒドラジド、例えばアジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジド。変性アミンおよび変性イミダゾール系化合物としては、以下が挙げられる:アミン化合物(またはアミン付加物)コアの表面が、is coated with the shell of a 変性アミン生成物(表面付加など)のシェルでコートされたコアシェル型、および、コアシェル型硬化剤とエポキシ樹脂とのブレンドとしてのマスターバッチ型硬化剤。この種の潜伏性エポキシ硬化剤は、良好な粘度安定性を有するブレンドを与えることができ、比較的低温(80−130℃)で硬化され得る。
【0062】
市販され入手可能な潜伏性エポキシ硬化剤の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:Adeka Hardener EH-4357S(変性アミン型)、Adeka Hardener EH- 4357PK(変性アミン型)、Adeka Hardener EH-4380S(特殊ハイブリッド型)、Fujicure FXR-1081(変性アミン型)、Fujicure FXR-1020(変性アミン型)、Sunmide LH-210(変性イミダゾール型)、Sunmide LH-2102(変性イミダゾール型)、Sunmide LH-2100(変性イミダゾール型)、Ajicure PN−23(変性イミダゾール型)、Ajicure PN−F(変性イミダゾール型)、Ajicure PN−23J(変性イミダゾール型)、Ajicure PN−31(変性イミダゾール型)、Ajicure PN−31J(変性イミダゾール型)、Novacure HX-3722(マスターバッチ型)、Novacure HX-3742(マスターバッチ型)、Novacure HX-3613(マスターバッチ型)など。
【0063】
本発明において使用される適当な市販され入手可能な潜伏性エポキシ硬化剤は、例えばADEKA社製のEH-4357S(変性アミン型)、および、旭化成株式会社製のHX3932HP(マイクロカプセル型イミダゾール)である。
【0064】
50℃〜110℃の融点を有する潜伏性エポキシ硬化剤、特に60℃〜80℃の融点を有する潜伏性エポキシ硬化剤が好ましい。40℃より低い融点を有するものは、粘度安定性が低いという問題を有するが、120℃よりも高い融点を有するものは、より長い熱硬化時間を必要とするため、より高い液晶汚染傾向がもたらされる。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物中で使用する潜伏性エポキシ硬化剤の量は、潜伏性硬化剤の種類、および、硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ量に応じて適宜選択してよい。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、潜伏性エポキシ硬化剤を、組成物全体の好ましくは1%〜40重量%、好ましくは3%〜30%、最も好ましくは5%〜20%含む。
【0067】
任意の原料
本発明の硬化性樹脂組成物は任意に、必要に応じて、光重合反応を可能にするさらなる成分、例えばビニルエーテル化合物または(メタ)アクリレート化合物を含有し得る。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、流動性、分配または印刷特性、貯蔵特性、硬化特性および硬化後の物理的特性などの特性を改善または変更するために、添加剤、樹脂成分などをさらに含んでよい。
【0068】
本発明に必要に応じて含有させてよい成分としては、例えば以下が挙げられる:有機または無機充填剤、チキソトロピー剤、シランカップリング剤、希釈剤、変性剤、着色剤(例えば顔料および染料)、界面活性剤、防腐安定剤、可塑剤、潤滑油、消泡剤、レべリング剤など;しかし、これらに限定されるものではない。特に、本発明の組成物は、有機または無機充填剤、チキソトロピー剤、およびシランカップリング剤からなる群から選択される添加剤を好ましくは含む。
【0069】
充填剤としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:無機充填剤、例えばシリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、石こう、ケイ酸カルシウム、滑石、ガラスビーズ、白土活性化絹雲母、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素など;一方、有機充填剤、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル-メタクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリペンタジエン、ポリイソプレン、ポリイソプロピレンなど。これらを単独で使用してもよいし、これらの組み合わせを用いてもよい。
【0070】
チキソトロピー剤としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:滑石、ヒュームシリカ、微細表面処理炭酸カルシウム、微粒子アルミナ、プレート様アルミナ;層状化合物、例えばモンモリロナイト、針状化合物、例えばホウ酸アルミニウムウィスカーなど。これらの中で、滑石、ヒュームシリカおよび微細アルミナが好ましい。
【0071】
シランカップリング剤としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシルシランなど。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば攪拌ブレードを有する攪拌機および3本ロールミルなどの混合機を用いて、上記の各成分を混合することにより得てよい。本発明の組成物は、周囲環境下で液体であり、1.5s-1剪断速度で、150〜450Pa.s(25℃)の粘度を有し(試験方法は以下の実施例の項により詳細に記載する)、そのため、その容易分配特性がもたらされる。
【0073】
いずれの光開始剤をも含有しない場合でさえ、硬化性樹脂組成物中のマレイミド樹脂成分は、1,000-5,000mJ/cmの照射エネルギー、好ましくは2,000-3,000 mJ/cmの照射エネルギーを有するUV照射に際してその硬化性がもたらされる。一方、本発明の硬化性樹脂組成物中の熱フリーラジカル開始剤、エポキシ樹脂、および潜伏性硬化剤成分は、80〜130℃、好ましくは100〜120℃の温度の範囲で、30分〜3時間、通常1時間の加熱時間を伴う加熱に際して硬化性をもたらす。
【0074】
この場合、本発明の硬化性樹脂組成物を位置固定を可能にするためにUV照射により一時的に硬化させることができ、次いで、加熱により光遮断領域を含めて最終的に硬化させる。そのため、本発明の硬化性樹脂組成物は、液晶滴下注入工法を用いる液晶のシーリングに適当である。
【0075】
さらに、本発明は、液晶滴下注入工法を用いる、第1基材および第2基材の間に液晶層を有する液晶ディスプレイの製造方法にも関する。
【0076】
本発明の方法は、以下のステップを含む:
(a)第1基材の表面の周縁のシーリング領域に、本発明の硬化性樹脂組成物を適用するステップ;
(b)第1基材の表面の該シーリング領域で取り囲まれた中央領域に液晶を滴下するステップ;
(c)第1基材上に第2基材を重ねるステップ;
(d)該硬化性組成物のUV照射による一時的固定を行うステップ、および
(e)該硬化性組成物の加熱による最終固定を行うステップ。
【0077】
本発明において使用される第1基材および第2基材は、通常、透明なガラス基材である。一般に、透明電極、アクティブマトリクス素子(例えば薄層フィルムトランジスタTFT)、配向膜、カラーフィルタなどが、2つの基材の対向する面の少なくとも1つに形成される。これらの構成は、LCDのタイプに応じて変更してよい。本発明の製造方法は、LCDのいずれのタイプにも適用できると考えられる。
【0078】
ステップ(a)において、本発明の硬化性樹脂組成物を第1基材の表面の周縁部に、フレーム形状で基材周囲の周りを取り囲むように適用する。硬化性樹脂組成物がフレーム形状で適用された該部分をシール領域と称する。硬化性樹脂組成物は、例えばスクリーン印刷や分注(dispensing)などの既知の方法を用いて適用することができる。
【0079】
ステップ(b)において、次いで、第1基材の表面においてフレーム形状の該シール領域で取り囲まれた中央領域に液晶を滴下する。このステップは減圧下で行うことが好ましい。
【0080】
ステップ(c)において、次いで、該第2基材を該第1基材上に配置し、ステップ(d)においてUV照射がなされる。UV照射により、本発明の硬化性樹脂組成物は一時的に硬化し、これは、取扱いにおいて転移が生じないようなレベルの強度を示し、これによって2つの基材が一時的に固定される。一般に、照射時間は短いことが好ましく、例えば5分未満、好ましくは3分未満、より好ましくは1分未満である。
【0081】
ステップ(e)において、加熱により本発明の硬化性樹脂組成物の最終的な硬化強度が達成され、これによって2つの基材は最終的に固定される。ステップ(e)における熱硬化は、通常、80〜130℃の温度、好ましくは100〜120℃の温度で、30分〜3時間、通常1時間の加熱時間で加熱される。
【0082】
上記方法により、LCDパネルの主な部分が完成する。
【0083】
本発明において使用される硬化性樹脂組成物は、液晶滴下注入工法以外の、転移のない精密な組立てが必要な他の用途に使用してもよい。例えばイメージセンサ接続の用途である。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物は、光遮断領域における良好な硬化性、ならびに、優れた接着強度および信頼性を提供する。
【実施例】
【0085】
【表1】
【0086】
BMI-4、ヘンケルコーポレーション製。
【化5】
【0087】
X−BMI、ヘンケルコーポレーション製。
【化6】
【0088】
Perkadox 16、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、10時間-T1/2=40.8℃、AkzoNobel Polymer Chemicals製。
EPICLON 850S、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、Dainippon Ink & Chemicals、Inc.製。
Epikote1007、ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから製造、融点=103-115℃、分子量2870、Momentive Specialty Chemicals Inc.製。
DER661、ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから製造、融点=75-85℃;分子量1050、Dow Chemical製。
EH-4357S、変性アミン、ADEKA社製、さらに粉砕された微細粉末。
HX3932HP、マイクロカプセル型イミダゾール、旭化成株式会社製。
Ebecryl 3700、ビスフェノールA系エポキシのアクリレートエステル、Cytec Industries Inc.製。
Irgacure 651、BASF製。
SO-E2、シリカ、平均粒子サイズ0.5μm、Admatechs Co. Ltd.製。
ZEFIAC F351、アクリル酸ブチル-メタクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマー、平均粒子サイズ0.3μm、Ganz Chemical Co.,Ltd.製。
Aerosil R805、Evonik Industries製。
【0089】
表1に記載した物質を撹拌機および次いで3本ロールミルにより十分に混合し、本発明の硬化性樹脂組成物を得た。試料を以下に記載する試験方法で試験した。
【0090】
試験方法
粘度および粘度安定性
樹脂組成物の25℃での初期粘度をレオメーター(TA、AR2000 ex)を15s-1の剪断速度で用いて測定した。不透明なポリエチレン容器に10gの樹脂組成物を入れて、しっかりと密閉し、25℃で7日間の貯蔵後に、15s-1の剪断速度での粘度値を再測定した。該初期粘度および7日後の粘度増加(対初期粘度)を表2に示す。25%未満の粘度増加割合は貯蔵安定性が良好であることを表すが、25%以上の場合は貯蔵安定性が乏しいことを表す。
【0091】
高温および高湿下での貯蔵後の接着強度および接着信頼性
組成物全体の1重量%の5μmスペーサーを樹脂組成物中に添加し、50mm×50mm×0.7mmのITO(酸化インジウム錫)ガラス上に(Asymtekを用いて)分注し、長さ20mm、直径約0.7mmをそれぞれ有する2つの交差線(図1参照)を形成させた。同様の対ITOガラスを逆に重ねてこれらに接合させ、荷重下にて固定させ、光硬化を紫外線(UV)照射装置(Fusion UV、Dランプを備える)を用いて3000mJ/cmの照射エネルギーで行い固定させ、次いで、該試験片を、120℃のオーブン中、60分の熱処理に付した。得られた試験片を型内のトップガラスに固定し、金属カラム(図1に示すように、2mmの直径を有する)でガラスの下を1.27mm/sの加圧速度(Instron試験機を用いる)でプレスすることにより試験した。最も高いプレス強度値を記録し、ライン幅をプレス強度で割ったものを接着強度(N/mm)と称した。
【0092】
接着強度用の試験片
接着試験片を上記と同様の方法で製造し、60℃の温度および90%の湿度の高温高質チャンバーに5日(120時間)貯蔵し、次いで、上記と同様の試験方法を用いて接着強度を試験した。50%より高い、高温高質貯蔵前の接着強度に対する接着強度の維持割合は、高温高質貯蔵後の接着信頼性が良好であることを表し、50%未満の維持率は、高温高質貯蔵後の接着信頼性に乏しいことを表す。
【0093】
C=Cの反応割合
樹脂組成物1グラムを1mm厚のガラスプレートに適用し、約4mmの直径を有するドーム形状を形成し、試験片を作製した。該試験片に、3000mJ/cmのUVライト(Fusion UVによる、Dランプを備える)を照射し、次いで120℃のオーブンで60分間熱処理した(UVおよび熱サンプルとして記録)。比較として、同様の樹脂組成物を有する該試験片を120℃で60分間の熱によってのみ硬化させた(熱サンプルとして記録)。硬化プロセスの前後において、該試験片をFT-IR分光法により解析した。マレイド樹脂またはアクリレート樹脂(比較例1においてのみ)中のC=Cの反応割合を、マレイミド(690cm-1)またはアクリル基(1405cm-1)に帰属されるピーク面積および参照ピーク面積(2950cm-1)から計算した。
【0094】
液晶シーリング性能評価
組成物全体の1重量%の5μmスペーサーを樹脂組成物に添加した。次いで、得られた組成物の2mgを(Asymtekを用いて)ガラス基材(20mm×70mm)の表面の周縁に長方形に分注させた。その後、7mgの液晶をシーリング領域で取り囲まれた中央領域に滴下し、真空下で脱気し、続いて該第1基材上に第2ガラス基材を重ねた。2つのガラス基材を付着後、真空を解除して試験片を得た。次いで、該試験片に3000mJ/cmのUVライトを照射した(Dランプを備えるFusion UVによる)。UV照射後、UV照射による一時的な固定品質を手動で評価した。ガラス基材を手動でずらすことができない場合、UV固定性を「良好」として記録し、ガラス基材を手動で簡単にずらすことができる場合を「不良」として記録した。
【0095】
UV照射後の試験片を120℃のオーブン中60分間で次いで熱処理し、滴下注入工法を擬したLCDセルを完成させた。得られた擬似LCDセルをマイクロスコープで検査し、シーリング性能、例えばシーリング形状維持および液晶漏れを確認した。シーリング形状が良好に維持され液晶漏れがない場合、シーリング性能が「良好」であると記録した。一方、液晶漏れがある場合には「不良」として記録した。
【0096】
試験結果を表2に示す。
【表2】
【0097】
表2の結果から見られるように、実施例の全て(1-3)が、150-450Pa.sの範囲の粘度、ならびに、良好な粘度安定性を示した。熱フリーラジカル開始剤を使用したが、開始剤タイプおよび割合を適切に選択する限り、粘度安定性を確保することができることが確認された。しかし、比較例3において、X-BMIが液状エポキシおよび固形エポキシ樹脂混合物と相溶性でなかったことに注意すべきであり、これはおそらくX−BMIの長い炭化水素鎖および低極性のためである。
【0098】
実施例(1-3)のC=C反応割合は全て、UV+熱条件下、または、熱のみの条件下でさえ、C=Cが完全に硬化し得ることを示した。これにより、UV照射が行われない光遮断領域においてさえ、加熱に際しマレイミド樹脂のC=Cをさらに架橋させることができると推測され、そのため、液晶汚染のリスクが低減される。他方では、比較例1および2は、熱のみの条件下でずっと低いC=C反応割合を示し、このことは、基材上の光遮断領域に未硬化樹脂が存在する可能性が高いことを意味する。
【0099】
通常のエポキシアクリレートハイブリッド混合組成物である比較例1との比較において、マレイミドエポキシハイブリッド組成物を用いる実施例1〜3の全てが、ずっと高い接着強度を示し、ならびに、高温高湿下での貯蔵後に、良好な接着信頼性を示したことがわかる。本発明に開示される組成物は、LCDパネルの品質を確保するために、より細いラインを有するシーラントについて高い接着強度および信頼性が要求される、「額縁狭化」(または狭額物)LCDの新規設計により有利であると推測され得る。
【0100】
実施例1を比較例2と比較すると、組成物の違いは開始剤タイプのみである。熱開始剤を用いる実施例1は、比較例2よりもずっと高い接着強度を示し(25.6対16.4)、このことから、熱開始剤により生じるフリーラジカルは熱硬化プロセスにおいてより良好な架橋構造を与え得ると考えられ得る。そのため本発明において、熱開始剤は高い接着強度、ならびに光遮断領域硬化性を確保するために供される。一方、比較例3は、X-BMIとエポキシ樹脂との不相溶性のために、非常に低い接着強度を示した。したがって、樹脂の組合せを選択する際に、相溶性が非常に重要である。
【0101】
液晶シーリング性能に関し、表2に示されるように、全ての試料(実施例1-3を含む)がUV照射後の十分な固定性、熱による最終固定後の良好なシーリング状態を示した。これによりまた、従来技術に開示されるようないずれの光開始剤を用いなくとも、マレイミド-エポキシ組成物による熱固定が達成され得ることが確認された。
図1