(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
トンネルの内周面にコンクリートを打設する場合、例えば、NATM工法で実施されるように、まず、横坑の内周に薄層の一次覆工コンクリートを吹付け、次いで、一次覆工コンクリートの表面に防水シートを取り付け、その後、厚層の二次覆工コンクリートを防水シートの内側に打設している。防水シートは、地山からの湧水が一次覆工コンクリート側から二次覆工コンクリート側に浸水することを防止している。
【0003】
一般に、防水シートは、透水性層と不透水性層とから構成されている。こうした防水性シートは、透水性層が一次覆工コンクリート側に向けられ、不透水性層が二次覆工コンクリート側に向けられて一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に取り付けられる。透水性層は、地山からの湧水をトンネルの外に導いている。一方、不透水性層は、湧水が二次覆工コンクリート側に浸水することを防止している。
【0004】
そのため、防水シートを一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に介在させてトンネルを建造する施工方法では、防水シートが一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間で地山からの湧水を確実に遮断しなければならない。地山からの湧水を遮断するために、トンネルを建造する施工方法では、一次覆工コンクリートの内周部に防水シートを取り付けることが必要である。
【0005】
本特許出願人は、これまでに、上記の施工方法に適した防水シートの取付方法及びこの取付方法に用いる防水シートについて種々提案してきた。特許文献1及び特許文献2で提案した防水シートの取付方法及びこの取付方法に用いる防水シートは、その一例である。
【0006】
特許文献1で提案されている防水シートの取付方法は、張り装置を用いて、シートロールから防水シートを巻き戻してトンネル内周に張設する施工方法である。張り装置は、トンネル内周に沿い、且つ作業用台車上に設けられた略アーチ状のレール材と、レール材に移動可能に設けられる少なくとも一対の車輪部材と、これら車輪部材に取り付けられると共に、上記シートロールを回転可能に支持する軸部材とを備えている。
【0007】
この防水シートの取付方法は、3m〜4m程度の幅を有する防水シートが巻かれてなるシートロールを用いて施工する取付方法である。この取付法では、取付作業を行う所定位置に停車された作業用台車の作業面に、複数のシートロールを載せ、(1)防水シートの幅方向をトンネルが延びる方向に一致させて、シートロールから防水シートを延ばしてトンネル内周に取り付け、(2)次いで、新しいシートロールから防水シートを延ばし、この防水シートの後端部を、先に取り付けられた防水シートの先端部に接合させて、防水シートをトンネルの内周に取り付ける。この作業を停車された作業用台車上で繰り返し行って数ロール分の防水シートをトンネルの内周に取り付ける。(3)その後、進行に合わせて作業用台車を前方に移動させ、上記の(1)の工程及び(2)の工程を行うことによってトンネルの全長にわたって防水シートを取り付ける。
【0008】
なお、この取付方法では、軸部材をシートロールに挿入すると共に、軸部材を車輪部材に取り付けている。そして、略アーチ状に形成されたレール材の頂点付近に車輪部材を載置することによって、シートロールを防水シート張り装置に取り付けた後、車輪部材をレール材に沿って転がして、シートロールから繰り出された上記防水シートを張設している。その際、防水シートの幅方向はトンネルが延びる方向に向けられる。
【0009】
特許文献2で提案されている防水シートの取付方法は、トンネル内周面に固着させた止着部材に、防水シートを止着させ、トンネル内に防水シートを展張する方法である。この取付方法は、次のようにして防水シートを取り付けている。まず、トンネル内に移動自在に設けられた基台の上部にて昇降自在な上部シート押圧部材上に、長さ方向の両端から中央に向けて内側に巻回させた防水シートを載置させる。次に、この防水シートを、巻揚機構によってテンションを付与させて上部シート押圧部材上から下方へ展開させる。次いで、上部シート押圧部材上の防水シートの展開部を、上部シート押圧部材を上昇させ、この上部シート押圧部材の押圧力により、止着部材に止着させる。また、防水シートの下方展開部を、基台の両側に、トンネルの周方向に伸縮自在かつ回動自在に設けられた複数の側部および下部シート押圧部材の伸縮、回動により、止着部材に順次止着させることにより、トンネ内に防水シートを展張している。
【0010】
この取付方法に用いる防水シートの幅は、4m〜10mである。防水シートは、その幅方向をトンネルが延びる方向に向けて、取り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の特許文献1によって提案されている防水シートの取付方法は、張り装置を用いて防水シートをトンネルの内周に取り付けるため、人手を掛けずに防水シートを効率よく取り付けることができる点で優れている。また、上記の特許文献2によって提案されている取付方法は、止着部材を用いて防水シートをトンネルに取り付けるため、防水シートを正確な位置に取り付けることができる点で優れている。
【0013】
ところが、特許文献1で提案されている防水シートの取付方法では、防水シートの幅が3m〜4mであり、相対的に幅が狭い防水シートが用いられる。そのため、上記の(1)の工程及び(2)の工程を繰り返し行うことが必要であり、これらの工程を終了させるために、かなりの時間を要する。また、上記の(1)の工程及び(2)の工程が、トンネルを建造する工事全体の工期を律する工程となる。その結果、この工程が終了しない限り、次の防水シートの接合工程、及び作業用台車の移動工程に進むことができないという作業性の問題がある。
【0014】
他方、この取付方法は、上記のように、張り装置を用いた施工方法である。そのため、防水シートを取り付けるために必要な装置のコストが高くなるという問題も存在する。
【0015】
特許文献2で提案されている防水シートの取付方法についても、特許文献1により提案されている防水シートの取付方法と同様に、作業用台車上で防水シートを取り付ける一連の作業が終了しない限り、次の防水シートの接合工程、及び作業用台車の移動工程に進むことができないという作業性の問題がある。ただし、この防水シートの取付方法においては、4m〜10m程度の幅を有する防水シートを使用するため、1ロールごとの取付工程で、掘削方向に防水シートが取り付けられる距離を稼ぐことができる。ところが、使用する防水シートの面積が大きいため、この防水シートの取付方法では、大型の作業用台車をトンネル内に搬入することが必要になるという問題がある。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、防水シートを横坑の内周に取り付ける際の作業性を高めることができると共に、コストを低廉に抑えることができる防水シート及びこの防水シートの取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
掘削された横坑の内周に取り付ける
際に、作業面を備えた作業用台車を前記横坑内に搬入し、前記作業用台車の近傍に置いて取り付け作業を行うための防水シートであって、前記防水シートは矩形状をなし、前記防水シートが延びる2方向のうち一方の方向をなす第1の方向が前記横坑の掘削方向に対応し、前記防水シートは、前記第1の方向に直交し、且つ相互に平行をなす複数の第1折り線が前記第1の方向の一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置されると共に、前記防水シート自体の一面と他面とが交互に現れる形態で折り畳まれ、折り畳まれた前記防水シートは、前記第1の方向の端部が前記第1の方向に引っ張られることによって展開可能であ
り、複数の前記第1折り線で折り畳まれた前記防水シートは、前記第1折り線に直交し、且つ相互に平行をなす複数の第2折り線が前記第1の方向に直交する第2の方向の一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置されると共に、複数の前記第1折り線で折り畳まれた前記防水シートの一面側と他面側とが交互に現れる形態で折り畳まれ、折り畳まれた前記防水シートは、前記第2の方向の端部が前記第2の方向に引っ張られることによって展開可能である、ことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、上記のように防水シートが折り畳まれているので、作業用台車を利用して横坑の内周に防水シートを取り付ける際に、折り畳まれた防水シートを第1の方向に引っ張るだけで、作業用台車の作業面上で、防水シートを横坑の掘削方向に展開することができる。そのため、第1の方向の長さが長い防水シートを用いることができる。第1の方向の長さが長い防水シートを用いることによって、一枚の防水シートが取り付けられる横坑の掘削方向の長さを長くすることができる。その結果、作業用台車を横坑の一定の位置に停車させて防水シートを取り付ける際の工数と時間を大幅に削減し、作業性を向上させることができる。また、防水シートは、第1の方向の端部が第1の方向に引っ張られることによって展開可能に構成されているので、防水シートを展開する際に特殊な装置を用いる必要がない。そのため、低廉なコストで防水シートを横坑の内周に取り付けることができる。
また、防水シートが上記のように折り畳まれているので、作業用台車を利用して横坑の内周に防水シートを取り付ける際に、折り畳まれた防水シートを第2の方向に引っ張るだけで、作業用台車の作業面上で作業面の幅方向に展開することができる。そのため、防水シートを短時間で作業面上に載せることができる。
【0019】
本発明に係る防水シートにおいて、前記第1の方向の一方の端部側の第1折り線と他方の端部側の第1折り線と間の長さは200mm以上2300mm以下である。
【0020】
この発明によれば、第1折り線同士の間の長さが上記の範囲内なので、防水シートの折り畳みの作業や折り畳まれた防水シートの展開作業等の防水シートの取り扱いを容易にすることができる。
【0023】
参考例として、複数の前記第1折り線で折り畳まれた前記防水シートが前記第1の方向に直交する第2の方向に巻かれている
形態を挙げることができる。
【0024】
この
参考例によれば、防水シートが上記のように巻かれているので、作業用台車を利用して横坑の内周に防水シートを取り付ける際に、巻かれた防水シートを第2の方向に防水シートを引っ張ったり、防水シートの自重を利用したりすることで容易に展開することができる。そのため、防水シートを短時間で作業面上に載せることができる。
【0025】
本発明に係る防水シートにおいて、前記第1の方向の端部には、ロープを取り付けるための取付部材が着脱可能に設けられることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、第1の方向の端部には、ロープを取り付けるための取付部材が着脱可能に設けられるので、防水シートを第1の方向に展開する際に、ロープを取付部材に取り付けることにより、ロープを引っ張ることによって防水シートを展開することができる。そのため、展開作業の効率を向上させることができる。また、取付部材は防水シートに対して着脱可能なので、展開した後に、取付部材を取り外すことによって、防水シートを円滑に横坑の内周に取り付けることができる。
【0027】
掘削された横坑の内周に矩形状の防水シートを取り付けるため
に、作業面を備えた作業用台車を前記横坑内に搬入し、前記作業用台車の近傍に前記防水シートを置いて取り付け作業を行う防水シートの取付方法であって、前記横坑内に搬入された作業用台車のアーチ状の作業面に、前記防水シートを展開する展開工程と、前記作業面上に展開された前記防水シートを前記横坑の内周部に取り付けるシート取付工程と、を備え、前記展開工程は、前記防水シートが延びる2方向のうち一方の方向をなす第1の方向を前記横坑の掘削方向に対応させ、且つ所定の形態に折り畳まれた前記防水シートの前記作業面の幅方向に沿わせて配置する第1展開工程と、所定の形態に折り畳まれた前記防水シートの前記第1の方向の一端を前記第1の方向に引っ張ることによって所定の形態に折り畳まれた前記防水シートを展開する第2展開工程と、を有し、前記所定の形態は、前記第1の方向に直交し、且つ相互に平行をなす複数の第1折り線が前記第1の方向の一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置されると共に、前記防水シート自体の一面と他面とが交互に現れる形態で折り畳まれ
、前記第1展開工程では、前記第1折り線に直交し、且つ相互に平行をなす複数の第2折り線が前記第1の方向に直交する第2の方向の一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置されると共に、複数の前記第1折り線で折り畳まれた前記防水シートの一面側と他面側とが交互に現れる形態で折り畳まれた前記防水シートの前記第2の方向の端部を、前記作業面の幅方向の一端側から前記作業面上に沿わせて他端側に引っ張ることによって、前記作業面上に展開する、ことを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、上記のように折り畳まれた防水シートを利用するので、作業用台車を利用して横坑の内周に防水シートを取り付ける際に、折り畳まれた防水シートを第1の方向に引っ張るだけで、作業用台車の作業面上で、防水シートを横坑の掘削方向に展開することができる。そのため、第1の方向の長さが長い防水シートを用いることができる。第1の方向の長さが長い防水シートを用いることによって、一枚の防水シートが取り付けられる横坑の掘削方向の長さを長くすることができる。その結果、作業用台車を横坑の一定の位置に停車させて防水シートを取り付ける際の工数と時間を大幅に削減し、作業性を向上させることができる。また、防水シートは、第1の方向の端部が第1の方向に引っ張られることによって展開可能に構成されているので、防水シートを展開する際に特殊な装置を用いる必要がない。そのため、低廉なコストで防水シートを横坑の内周に取り付けることができる。
また、上記のように折り畳まれた防水シートを用いるので、作業用台車を利用して横坑の内周に防水シートを取り付ける際に、折り畳まれた防水シートを第2の方向に引っ張るだけで、作業用台車の作業面上で作業面の幅方向に展開することができる。そのため、防水シートを短時間で作業面上に載せることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、防水シートを横坑の内周に取り付ける際の作業性を高めることができると共に、施工に要するコストを低廉に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面にのみ限定されるものではない。
【0034】
[防水シートの基本構成]
本発明に係る防水シート1は、掘削された横坑の内周に取り付けるための防水シートである。特に、この防水シート1は、トンネルの内周面にコンクリートを打設する際に、横坑の内周に吹き付けられた一次覆工コンクリートと厚層の二次覆工コンクリートとの間に配置され、一次覆工コンクリート側から二次覆工コンクリート側に浸水することを防止するために用いられる。
【0035】
この防水シート1は、
図1に示すように、矩形状をなし、防水シート1が延びる2方向のうち一方の方向をなす第1の方向Xが横坑の掘削方向に対応している。防水シート1は、
図2に示すように、横坑の掘削方向に対応する第1の方向Xに直交し、且つ相互に平行をなす複数の第1の折り線11,12が第1の方向Xの一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置される態様で折り畳まれている。その際、防水シート1は、防水シート1自体の一面と他面とが交互に現れる形態で折り畳まれる。折り畳まれた防水シート1は、第1の方向Xの端部20が第1の方向Xに引っ張られることによって展開可能になっている。
【0036】
上記の基本構成を有する防水シート1は、防水シート1を横坑の内周に取り付ける際の作業性を高めることができると共に、施工に要するコストを低廉に抑えることができるという特有の効果を奏する。
【0037】
以下、防水シート1の具体的な構成について図面を適宜に参照しながら説明する。
【0038】
この防水シート1は、
図1に示すように、矩形状をなしている。防水シート1において、横坑の掘削方向に対応する第1の方向Xの長さL1は5m以上、15m以下であり、第1の方向Xに直交する第2の方向Yの長さL2は20m以上、30m以下である。なお、
図1において、符号Xで示した方向が横坑の掘削方向に対応する第1の方向Xであり、符号Yで示した方向が第1の方向Xに直交する第2の方向Yである。この防水シート1は、掘削された横坑の内周に取り付けられて、横坑の周囲をなす地山から漏れ出た水等の液体又は水蒸気等の気体が透過することを防止する。
【0039】
防水シート1は、
図1に示すように、透水性層2と不透水性層3とが積層されたシートである。こうした防水シートは、透水性層2が外側に向けられ、不透水性層3が内側に向けられる。透水性層2は、地山から横坑に漏れ出した液体や気体を吸い込んで横坑の外に導いている。一方、不透水性層3は、地山から漏れ出た液体や気体が横坑の内部に透過することを防止している。
【0040】
(透水性層)
透水性層2は、不織布、織布又は編物等で構成されている。このうち、不織布、織布又は編物等は、それ自体で透水性と被係止部を備えた透水性層2とすることができるので、好ましく適用される。透水性層2の厚さは、3mm以上、5mm以下の範囲内が好ましい。
【0041】
(不透水性層)
不透水性層3は、透水性が無いか、又は極めて少ない層である。この不透水性層3の材質としては、例えは、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリルニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等の熱可塑性有機材料;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性有機材料等を挙げることができる。こうした不透水性層3の厚さは、0.6mm以上、2mm以下の範囲内が好ましい。
【0042】
なお、不透水性層3は、これらの熱可塑性有機材料及び熱硬化性有機材料等のうち単一材料で構成されていてもよいし、2以上の同種の材料若しくは異種の材料を複合又は積層して構成してもよい。
【0043】
[折り畳まれた防水シートの具体的な形態]
こうした防水シート1は、
図2及び
図4に示すように、折り畳まれている。防水シート1は、第1の方向Xの一定の間隔ごとに折り込まれ、
図2に示す形態に折り畳まれる。具体的には、防水シート1は、第1の方向Xに直交し、且つ相互に平行をなす複数の第1の折り線11,12で折り畳まれ、複数の第1の折り線11,12が第1の方向Xの一方の端部側と他方の端部側とに繰り返して位置されている。また、防水シート1は、防水シート1自体の一面と他面とが交互に現れる形態で折り畳まれている。なお、
図2において、符号Xで示した方向が横坑の掘削方向に対応する第1の方向Xであり、符号Yで示した方向が第1の方向Xに直交する第2の方向Yである。
【0044】
防水シート1は、
図2に示すように、複数の第1の折り線11,12で折り込まれることによって、第1の方向Xの一方の端部側の第1の折り線11と他方の端部側の第1の折り線12と間の長さL3が200mm以上、2300mm以下に折り畳まれる。
【0045】
長さL3が200mmよりも短い場合、折り線11,12で折り畳まれた防水シート1が厚くなり、第2の折り線21,22で折り畳むことが困難になる。また、端部10を第1の方向Xに引っ張ることにより防水シート1展開する際、迅速且つ正確に展開することが困難になる。また、折り線11,12で折り畳む作業に多大な時間を要してしまう。一方、長さL3が2300mmよりも長い場合、折り畳まれた防水シート1の取り扱いが煩わしくなる。
【0046】
第1の方向Xの両端に位置する第1の折り線11,12同士の間の長さL3は、防水シート1自体の第1の方向Xの長さ、折り畳まれた防水シート1を事前に保管しておくための保管スペースの大きさ、及び保管する防水シート1の数等に応じて適宜に設定される。なお、防水シート1を折り畳む際、防水シート1は、第1の方向Xの一端側から順番に第1の折り線11,12で込まれ、折り込まれた部分が順番に重ねられることによって折り畳まれる。
【0047】
折り畳まれた防水シート1は、最も上側に位置する第1の方向Xの端部10が第1の方向Xに引っ張られることによって展開されるように構成されている。展開された防水シート1は、
図1に示した矩形状に広げられる。
【0048】
なお、防水シート1における第1の方向Xの端部10には、端部10を第1の方向Xに引っ張るためのロープを取り付けるための取付部材が着脱可能に取り付けられる。例えば、
図3に示すように、ワイヤーロープ50がロープを取り付けるための取付部材として用いられる。このワイヤーロープ50は、端部10に沿って配置され、防水シート1の端部10がワイヤーロープ50の外周に巻かれることによって、防水シート1に対して着脱可能に取り付けられる。
【0049】
防水シート1は、
図2に示した形態から、さらに、
図4に示す形態に折り畳まれている。具体的に、第1の折り線11,12で折り畳まれた防水シート1は、第1の折り線11,12に直交し、且つ相互に平行をなす複数の第2の折り線21,22が第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置される形態に折り畳まれる。その際、複数の第1の折り線11,12で折り畳まれた防水シート1の一面側と他面側とが交互に現れる形態で折り畳まれる。
【0050】
防水シート1は、
図4に示すように、複数の第2の折り線21,22で折り込まれることによって、第2の方向Yの一方の端部側の第2の折り線21と他方の端部側の第2の折り線22と間の長さL4が500mm以上、3000mm以下に折り畳まれる。第2の方向Yの両端に位置する第2の折り線21,22同士の間の長さは、防水シート1それ自体の第2の方向Yの長さ、折り畳まれた防水シート1を事前に保管しておくための保管スペースの大きさ、及び保管する防水シート1の数等応じて適宜に設定される。また、第2の折り線21,22同士の間の長さは、折り畳む作業を行う際に用いる台車100の大きさ、あるいは、折り畳まれた防水シートを載せるパレット110等の台の大きさに応じて設定される。
【0051】
防水シート1を第2の折り線21,22で折り込む際、例えば、
図5に示すように、台車100が利用される。防水シート1は、第2の方向Yの一端側から第2の折り線21,22の位置で順番に折り込まれ、折り込まれた部分が重ね合わされる。折り込まれた部分の重ね合わせは、台車100の上で行われる。台車100は、防水シート1が第2の折り線21,22で折り込まれ、折り込まれた部分が台車100に順次に乗せられるごとに第2の方向Yの端部20側に移動される。このように、防水シート1を第2の折り線21,22で折り畳む際に台車100を用いることによって、効率よく折り畳むことができる。
【0052】
第2の折り線21,22で折り畳まれた防水シート1は、最も上側に位置する第2の方向Yの端部20が第2の方向Yに引っ張られることによって展開されるように構成されている。防水シート1は、展開されることによって、
図2に示した形態に広げられる。
【0053】
[巻かれた防水シートの具体的な形態]
なお、防水シート1は、
図4に示す折り畳まれた形態に代えて、
図6又は
図7に示すように、第1の折り線11,12で折り畳まれた防水シート1が第1の方向Xに直交する第2の方向Yに巻かれ形態にすることもできる。
【0054】
図6に示す防水シート1は、第1の折り線11,12で折り畳まれた防水シート1(
図2に示した形態)が第2の方向Yの一端側から他端側に向けて巻かれることによって構成されている。この防水シート1は、径方向の中心に位置する、第2の方向Yの一端側の端縁15から他端側の端縁16に向かうにしたがって、防水シート1が径方向の外側に徐々に位置されるように渦巻き状に巻かれている。そして、防水シート1は、最も外側に位置する端縁16を第2の方向Yに引っ張ることによって、
図2に示した形態に展開することができるように構成されている。
【0055】
図7に示す防水シート1は、
図2に示した形態において、第2の方向Yの両端から中央に向けて巻かれた形態をなしている。この防水シート1は、径方向の中心に位置する第2の方向Yの両端縁15,16から、第2の方向Yの中央側に向かうにしたがって防水シートが径方向の外側に叙情に位置されるように渦巻き状に巻かれている。そのため、折り畳まれた防水シート1のロールが2つ並列に並んで形成されている。
【0056】
この防水シートを展開させる場合、例えば、まず、第2の方向Yの一方の端部側の端縁15が中心に位置するロールを展開させ、次いで、他方の端部側の端縁16を第2の方向Yに引っ張ることによって第2の方向Yの他方の端部側の端縁が中心に位置するロールを展開する。
【0057】
ただし、この防水シートは、次のように展開してもよい。まず、
図7に示す形態に巻かれた形態の防水シート1を、アーチ状の作業面の最も上側に位置する頂点に置く。作業面の頂点に置かれる防水シート1の第1の方向Xは、作業用台車が延びる方向、すなわち、横坑が延びる方向に一致される。換言すれば、作業面の頂点に置かれる防水シート1の第2の方向Yは、作業面の周方向に一致される。次いで、防水シート1のシートロールを、巻かれた防水シート1の自重で展開させる。
【0058】
[防水シートの取付方法]
次に、
図8から
図10を参照して、掘削された横坑Tの内周に矩形状の防水シート1を取り付けるための防水シートの取付方法について説明する。
【0059】
掘削した横坑Tの内周にコンクリートを打設してトンネルを建造する場合、例えば、NATM工法で実施されるように、まず、横坑Tの内周に薄層の一次覆工コンクリートを吹付ける。次いで、一次覆工コンクリートの内容面に防水シート1を取り付け、その後、厚層の二次覆工コンクリートを防水シート1の内側に打設する。その場合、本発明に係る防水シート1の取付方法は、一次覆工コンクリート内表面に防水シート1を取り付ける際に実施される。
【0060】
この防水シート1の取付方法では、
図8に示すように、掘削した横坑Tに作業用台車200を搬入して施工が行われる。横坑Tには、レール210が横坑Tの掘削方向に延びる方向に敷設されている。作業用台車200は、このレール210の上に置かれる。この作業用台車200は、上部に横断面の形状がアーチ状の作業面201を備えている。作業面201は、レール210が延びる方向、すなわち、横坑Tが掘削される方向に延びている。
【0061】
この防水シート1の取付方法は、横坑T内に搬入された作業用台車200のアーチ状の作業面201に、防水シート1を展開する展開工程と、作業面201上に展開された防水シート1を横坑Tの内周部に取り付けるシート取付工程と、を備えている。展開工程は、以下に説明する第1展開工程と、第2展開工程とを含んでいる。
【0062】
第1展開工程は、作業用台車200の作業面201上で、
図4に示された形態に折り畳まれた防水シート1を
図2に示された形態に折り畳まれた形態に展開する工程である。第2展開工程は、作業用台車200の作業面201上で、
図2に示された形態に折り畳まれた防水シート1を、
図1に示すように、完全に広げられた形態に展開する工程である。
【0063】
(第1展開工程)
第1展開工程は、
図4に示した形態に折り畳まれた防水シート1を展開する。具体的に、防水シート1は、第1の折り線11,12に直交し、且つ相互に平行をなす複数の第2の折り線21,22が第1の方向Xに直交する第2の方向Yの一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置される形態に折り畳まれている。また、防水シート1は、複数の第1の折り線11,12で折り畳まれた防水シート1の一面側と他面側とが交互に現れる形態で折り畳まれている。折り畳まれた防水シート1は、例えば、パレット110の上に載せられている。
【0064】
折り畳まれた防水シート1は、
図9に示すように、この防水シート1の第2の方向Yの端部20を、作業面201の幅方向の一端202側から作業面201上に沿わせて他端203側に引っ張ることによって、作業面201上に展開される。防水シート1を第2の方向Yに引っ張る際、防水シート1には、ロープ120が取り付けられる。
【0065】
ロープ120は、作業面201の周方向に延びるようにして外周面上に配置される。そして、ロープ120の長手方向の一端122が、作業面201の幅方向の一端202側で、防水シート1の第2の方向Yの端部20に取り付けられる。また、ロープ120の長手方向の他端123が、作業面201の幅方向の他端203側で、巻き取り装置130に巻き付けられる。なお、ロープ120としては、ワイヤーロープやナイロン製のロープ又は麻のロープ等が用いられる。
【0066】
この第1展開工程では、巻き取り装置130がロープ120を巻き取ることによって、防水シート1が、作業面201の幅方向の一端202側から他端203側に向けて引っ張られて、周方向に展開される。防水シート1が展開される際、パレット110上で折り畳まれている防水シート1は、折り畳まれた上側の部分から順番に展開され、展開された部分が作業面201の上面を周方向に移動する。
【0067】
第1展開工程によって展開された防止シートは、
図2に示す折り畳まれた形態に展開される。展開された防水シート1は、第1の方向Xと作業面201が延びる方向、すなわち、横坑Tの掘削方向とが一致される。換言すると、防水シート1の第2の方向Yが作業面201の周方向に一致される。展開された防水シート1は、作業面201の端部にて、作業面201の周方向に延ばされた形態で作業面201上に配置される。
【0068】
なお、防水シート1の展開は、巻き取り装置130でロープ120を巻き取ることには限定されない。ロープ120の長手方向の他端側を作業者が引っ張ることによって、防水シート1を展開してもよい。
【0069】
(第2展開工程)
第2展開工程は、所定の形態に折り畳まれた防水シート1の第1の方向Xの端部10を第1の方向Xに引っ張ることによって、防水シート1を展開する工程である。ここでいう、所定の形態とは、
図2に示すように、第1の方向Xに直交し、且つ相互に平行をなす複数の第1の折り線11,12が第1の方向Xの一方の端部側と他方の端部側とに繰り返し位置されると共に、防水シート1自体の一面と他面とが交互に現れるように折り畳まれた形態である。防水シート1は、この第2展開工程において、その第1の方向Xの端部を横坑Tが延びる方向に引っ張ることによって、作業面201上に展開される。
【0070】
防水シート1を第1の方向Xに引っ張る際、
図10に示すように、ロープ140が取り付けられる。なお、このロープ140も、ロープ120と同様に、ワイヤーロープやナイロン製のロープ又は麻のロープ等が用いられる。ロープ140を防水シート1の端部10に取り付ける場合、
図3を参照して説明したように、防水シート1における第1の方向Xの端部10には、ロープ140を取り付けるための取付部材が着脱可能に取り付けられる。
図3に示すように、ロープ140を取り付けるための取付部材としては、例えば、ワイヤーロープ50が用いられる。このワイヤーロープ50は、端部10に沿って配置され、防水シート1の端部10がワイヤーロープ50の外周に巻かれることによって、防水シート1に対して着脱可能に取り付けられる。
【0071】
ロープ140は、作業面201上で第1の方向Xに延ばされ、長手方向の一端142が防水シート1における第1の方向Xの端部10に取り付けられる。また、ロープ140の長手方向の他端143は、作業用台車200の前部に設けられた巻き取り装置150に巻き付けられている。
図10(A)に示すように、作業面201の後部側にて
図2に示す状態に折り畳まれた防水シート1は、ロープ140が巻き取り装置150によって巻き取られることによって、作業面201の前方に引っ張られる。ロープ140によって引っ張られた防水シート1は、
図10(B)に示すように、折り畳まれた部分の上側の層から順番に展開され、折り畳まれた部分が作業面201の後部に留まった状態で、展開された部分だけが作業面201の前部側に移動する。防水シート1の第1方向における端部10をロープ140によってさらに作業面201の前部側に引っ張ることによって、防水シート1の折り畳まれた部分はすべて展開される。防水シート1が展開されると、
図10(C)に示すように、アーチ状の作業面201に沿って広げられ、作業面201を覆う形態になる。その結果、防水シート1における、横坑Tの掘削方向の約5m〜15mの範囲が、横坑Tの内周に対向される。
【0072】
この防水シート1の取付方法では、防水シート1における、横坑Tの掘削方向の約5m〜15mの範囲を横坑Tの内周に対向させることができるため、従来の施工方法よりも、一回の工程で横坑Tの掘削方向の長い範囲に防水シート1を取り付けることができる。そのため、作業用台車200を横坑Tの一定の位置に停車させて防水シートを取り付ける際の工数と時間を大幅に削減することができる。また、この防水シート1の取付方法では、防水シート1を展開する際に特殊な装置を用いる必要がないので、低廉なコストで防水シート1を横坑Tの内周に取り付けることができる。
【0073】
以上、防水シート1における第1の方向Xの端部の1箇所にだけロープ140を取り付けて、防水シート1を展開する場合を例に説明した。しかし、ロープ140を複数用意し、防水シート1における第1の方向Xの端部の複数の箇所にロープ140を取り付けて防水シート1を展開してもよい。また、防水シート1の展開は、巻き取り装置150でロープ140を巻き取ることには限定されない。ロープ140の長手方向の他端側を作業者が引っ張ることによって、防水シート1を展開してもよい。