(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂環式構造含有重合体、若しくは芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物を含むか、又はこれらの組み合わせを含む基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に設けられた導電層とを備え、
前記導電層が、ポリチオフェン系化合物、ポリスチレンスルホン酸化合物、導電性向上剤、及びポリアミド化合物を含む、透明導電性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
〔1.透明導電性フィルム:概要〕
本発明の透明導電性フィルムは、基材フィルムと、その面上に設けられた導電層とを備える。
【0013】
〔2.基材フィルム〕
透明導電性フィルムを、オンセル型又はミッドセル型のタッチパネルの構成要素として用いる場合、基材フィルムの材料は、複屈折性が小さいフィルムを得やすい材料であることが好ましい。そのような材料を構成する重合体としては、脂環式構造含有重合体、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
〔2.1.脂環式構造含有重合体〕
脂環式構造含有重合体とは、その重合体の構造単位が脂環式構造を有する重合体である。脂環式構造含有重合体は、例えば、主鎖に脂環式構造を有する重合体、側鎖に脂環式構造を有する重合体、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有する重合体、並びに、これらの2以上の任意の比率の混合物としうる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を有する重合体が好ましい。
【0015】
脂環式構造の例としては、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、及び不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造が挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0016】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲であると、基材フィルムの機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0017】
脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、基材フィルムの透明性及び耐熱性が良好となる。
【0018】
脂環式構造含有重合体の中でも好ましいものとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体は、透明性及び成形性が良好なため、特に好適である。
【0019】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002−321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0020】
ノルボルネン構造を有する単量体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)を挙げることができる。ここで、置換基の例としては、アルキル基、アルキレン基、及び極性基を挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0021】
極性基の例としては、ヘテロ原子、及びヘテロ原子を有する原子団が挙げられる。ヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、及びハロゲン原子が挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、アミド基、イミド基、ニトリル基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0022】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体の例としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体が挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0024】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;並びに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0026】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、これらの開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0027】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、基材フィルムを、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0028】
脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。脂環式構造含有重合体の重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度および成型加工性が高度にバランスされ好適である。ここで、前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0030】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0031】
〔2.2.芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物〕
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物の例としては、以下に述べる特定のブロック共重合体[1]の不飽和結合を水素化した水素化物[2]、及び水素化物[2]をアルコキシシリル変性して得られるアルコキシシリル基変性物[3]が挙げられる。
【0032】
〔2.2.1.ブロック共重合体[1]〕
ブロック共重合体[1]は、ブロック共重合体[1]1分子あたり1個以上の重合体ブロック[A]と、ブロック共重合体[1]1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有するブロック共重合体である。
【0033】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする重合体ブロックである。ここで、芳香族ビニル化合物単位とは、芳香族ビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。
【0034】
重合体ブロック[A]が有する芳香族ビニル化合物単位に対応する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類;4−クロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、吸湿性の面から、スチレン、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的入手のし易さから、スチレンが特に好ましい。
【0035】
重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]において芳香族ビニル化合物単位の量を前記のように多くすることにより、基材フィルムの耐熱性を高めることができる。
【0036】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[A]は、任意の構造単位を、1種類で単独でも含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0037】
重合体ブロック[A]が含みうる任意の構造単位としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物単位が挙げられる。ここで、鎖状共役ジエン化合物単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物の例として挙げるものと同様の例が挙げられる。
【0038】
また、重合体ブロック[A]が含みうる任意の構造単位としては、例えば、芳香族ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物以外の任意の不飽和化合物を重合して形成される構造を有する構造単位が挙げられる。任意の不飽和化合物としては、例えば、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物等のビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物;等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の炭素数2〜20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の炭素数5〜20の環状オレフィン;等の、極性基を有しないビニル化合物が好ましく、炭素数2〜20の鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0039】
重合体ブロック[A]における任意の構造単位の含有率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0040】
ブロック共重合体[1]1分子における重合体ブロック[A]の数は、好ましくは2個以上であり、好ましくは5個以下、より好ましくは4個以下、特に好ましくは3個以下である。1分子中に複数個ある重合体ブロック[A]は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
1分子のブロック共重合体[1]に、異なる重合体ブロック[A]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A1)とし、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A2)とする。このとき、Mw(A1)とMw(A2)との比「Mw(A1)/Mw(A2)」は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。
【0042】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする重合体ブロックである。前述のように、鎖状共役ジエン化合物単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して形成される構造を有する構造単位のことをいう。
【0043】
この重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で、極性基を含有しない鎖状共役ジエン化合物が好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0044】
重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。重合体ブロック[B]において鎖状共役ジエン化合物単位の量を前記のように多くすることにより、基材フィルムの柔軟性を向上させることができる。
【0045】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位以外に、任意の構造単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[B]は、任意の構造単位を、1種類で単独でも含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0046】
重合体ブロック[B]が含みうる任意の構造単位としては、例えば、芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物以外の任意の不飽和化合物を重合して形成される構造を有する構造単位が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物単位、並びに、任意の不飽和化合物を重合して形成される構造を有する構造単位としては、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものと同様の例が挙げられる。
【0047】
重合体ブロック[B]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。重合体ブロック[B]における任意の構造単位の含有率を低くすることにより、基材フィルムの柔軟性を向上させることができる。
【0048】
ブロック共重合体[1]1分子における重合体ブロック[B]の数は、通常1個以上であるが、2個以上であってもよい。ブロック共重合体[1]における重合体ブロック[B]の数が2個以上である場合、重合体ブロック[B]は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0049】
1分子のブロック共重合体[1]に、異なる重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[B]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B1)とし、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B2)とする。このとき、Mw(B1)とMw(B2)との比「Mw(B1)/Mw(B2)」は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。
【0050】
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもよく、ラジアル型ブロックでもよい。中でも、鎖状型ブロックが、機械的強度に優れ、好ましい。ブロック共重合体[1]が鎖状型ブロックの形態を有する場合、ブロック共重合体[1]の分子鎖の両端が重合体ブロック[A]であることが、基材フィルムを構成する樹脂のベタツキを所望の低い値に抑えることができるので、好ましい。
【0051】
ブロック共重合体[1]の特に好ましいブロックの形態は、[A]−[B]−[A]で表されるように、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;[A]−[B]−[A]−[B]−[A]で表されるように、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体;である。特に、[A]−[B]−[A]のトリブロック共重合体であることが、製造が容易であり且つ物性を所望の範囲に容易に収めることができるため、特に好ましい。
【0052】
ブロック共重合体[1]において、ブロック共重合体[1]の全体に占める重合体ブロック[A]の重量分率wAと、ブロック共重合体[1]の全体に占める重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA/wB)は、所定範囲に収まる。具体的には、前記の比(wA/wB)は、通常20/80以上、好ましくは25/75以上、より好ましくは30/70以上、特に好ましくは40/60以上であり、通常60/40以下、好ましくは55/45以下である。前記の比wA/wBを前記範囲の下限値以上にすることにより、基材フィルムの耐熱性を向上させたり複屈折を小さくしたりすることができる。また、上限値以下にすることにより、基材フィルムの柔軟性を向上させることができる。ここで、重合体ブロック[A]の重量分率wAは、重合体ブロック[A]全体の重量分率を示し、重合体ブロック[B]の重量分率wBは、重合体ブロック[B]全体の重量分率を示す。
【0053】
前記のブロック共重合体[1]の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。
また、ブロック共重合体[1]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
前記ブロック共重合体[1]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
【0054】
ブロック共重合体[1]の製造方法としては、例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;が挙げられる。
【0055】
モノマー混合物(a)中の芳香族ビニル化合物の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。また、モノマー混合物(a)は、芳香族ビニル化合物以外の任意のモノマー成分を含有していてもよい。任意のモノマー成分としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物、任意の不飽和化合物が挙げられる。任意のモノマー成分の量は、モノマー混合物(a)に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0056】
モノマー混合物(b)中の鎖状共役ジエン化合物の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。また、モノマー混合物(b)は、鎖状共役ジエン化合物以外の任意のモノマー成分を含有していてもよい。任意のモノマー成分としては、芳香族ビニル化合物、任意の不飽和化合物が挙げられる。任意のモノマー成分の量は、モノマー混合物(b)に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0057】
モノマー組成物を重合してそれぞれの重合体ブロックを得る方法としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などを用いうる。重合操作及び後工程での水素化反応を容易にする観点では、ラジカル重合、アニオン重合及びカチオン重合などを、リビング重合により行う方法が好ましく、リビングアニオン重合により行う方法が特に好ましい。
【0058】
重合は、重合開始剤の存在下で行いうる。例えばリビングアニオン重合では、重合開始剤として、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物;などを用いうる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
重合温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは20℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、特に好ましくは70℃以下である。
【0060】
重合反応の形態は、例えば溶液重合及びスラリー重合などを用いうる。中でも、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。
溶液重合を行う場合、溶媒としては、各工程で得られる重合体が溶解しうる不活性溶媒を用いうる。不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン等の脂環式炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒として脂環式炭化水素溶媒を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、ブロック共重合体[1]の溶解性も良好であるため、好ましい。溶媒の使用量は、全使用モノマー100重量部に対して、好ましくは200重量部〜2000重量部である。
【0061】
それぞれのモノマー組成物が2種以上のモノマーを含む場合、ある1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、ランダマイザーを使用しうる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、例えばルイス塩基化合物等をランダマイザーとして使用することが好ましい。ルイス塩基化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0062】
〔2.2.2.水素化物[2]〕
水素化物[2]は、ブロック共重合体[1]の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られる重合体である。ここで、水素化されるブロック共重合体[1]の不飽和結合には、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の、芳香族性及び非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合をいずれも含む。
【0063】
水素化率は、ブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合の、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、基材フィルムの透明性、耐熱性及び耐候性を良好にでき、更には基材フィルムの複屈折を小さくし易い。ここで、水素化物[2]の水素化率は、
1H−NMRによる測定により求めうる。
【0064】
特に、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、基材フィルムの耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。
【0065】
また、芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、重合体ブロック[A]を水素化して得られる重合体ブロックのガラス転移温度が高くなるので、基材フィルムの耐熱性を効果的に高めることができる。さらに、基材フィルムの光弾性係数を下げることができる。
【0066】
水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)を前記の範囲に収めることにより、基材フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させることができ、更には基材フィルムの複屈折を小さくし易い。
水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下であり、好ましくは1.0以上である。水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)を前記の範囲に収めることにより、基材フィルムの機械強度及び耐熱性を向上させることができ、更には基材フィルムの複屈折を小さくし易い。
水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
【0067】
前述した水素化物[2]は、ブロック共重合体[1]を水素化することにより、製造しうる。水素化方法としては、水素化率を高くでき、ブロック共重合体[1]の鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号に記載された方法が挙げられる。
【0068】
具体的な水素化方法の例としては、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む水素化触媒を用いて水素化を行う方法が挙げられる。水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。また、水素化反応は、有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0069】
不均一系触媒は、例えば、金属又は金属化合物のままで用いてもよく、適切な担体に担持して用いてもよい。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化ケイ素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒及び担体の合計量に対して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。また、担持型触媒の比表面積は、好ましくは100m
2/g〜500m
2/gである。さらに、担持型触媒の平均細孔径は、好ましくは100Å以上、より好ましくは200Å以上であり、好ましくは1000Å以下、より好ましくは500Å以下である。ここで、比表面積は、窒素吸着量を測定しBET式を用いて求めうる。また、平均細孔径は、水銀圧入法により測定しうる。
【0070】
均一系触媒としては、例えば、ニッケル、コバルト又は鉄の化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等を含む有機金属錯体触媒;などを用いることができる。
【0071】
ニッケル、コバルト又は鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物等が用いられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム;等が挙げられる。
【0072】
有機金属錯体触媒としては、例えば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等の遷移金属錯体が挙げられる。
【0073】
水素化触媒の使用量は、ブロック共重合体[1]100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。
【0074】
水素化反応の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは50℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは180℃以下である。このような温度範囲で水素化反応を行なうことにより、水素化率を高くでき、また、ブロック共重合体[1]の分子切断を少なくできる。
【0075】
水素化反応時の水素圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上、特に好ましくは2MPa以上であり、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。このような水素圧力で水素化反応を行なうことにより、水素化率を高くでき、ブロック共重合体[1]の分子鎖切断を少なくでき、操作性が良好となる。
【0076】
上述した方法で得られる水素化物[2]は、通常、水素化物[2]、水素化触媒及び重合触媒を含む反応液として得られる。そこで、水素化物[2]は、この反応液から例えば濾過及び遠心分離等の方法によって、水素化触媒及び重合触媒を除去した後に、反応液から回収してもよい。反応液から水素化物[2]を回収する方法としては、例えば、水素化物[2]を含む反応液からスチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法;減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法;水素化物[2]の貧溶媒中に反応液を注いで析出又は凝固させる凝固法;などを方法が挙げられる。
【0077】
回収された水素化物[2]を、さらにシリル化変性反応(アルコキシシリル基を導入する反応)に供する場合は、その形態は、その取扱いの容易さの観点から、ペレット形状とすることが好ましい。例えば、溶融状態の水素化物[2]をダイスからストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカッティングしてペレット状にして、各種の成形に供してもよい。また、凝固法を用いる場合は、例えば、得られた凝固物を乾燥した後、押出機により溶融状態で押し出し、上記と同様にペレット状にして各種の成形に供してもよい。
【0078】
〔2.2.3.アルコキシシリル基変性物[3]〕
アルコキシシリル基変性物[3]は、上述したブロック共重合体[1]の水素化物[2]に、アルコキシシリル基を導入して得られる重合体である。この際、アルコキシシリル基は、上述した水素化物[2]に直接結合していてもよく、例えばアルキレン基などの2価の有機基を介して間接的に結合していてもよい。アルコキシシリル基変性物[3]は、ガラス、金属等の無機材料との接着性に特に優れる。そのため、基材フィルムは、通常、前記の無機材料との接着性に優れる。したがって、基材フィルムは、高温高湿環境に長時間暴露された後も、無機材料に対する高い接着力を維持することができる。
【0079】
アルコキシシリル基変性物[3]におけるアルコキシシリル基の導入量は、アルコキシシリル基の導入前の水素化物[2]100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。アルコキシシリル基の導入量を前記範囲に収めると、水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が過剰に高くなることを防止できるので、基材フィルムの無機材料に対する接着性を高く維持することができる。
アルコキシシリル基の導入量は、
1H−NMRスペクトルにて計測しうる。また、アルコキシシリル基の導入量の計測の際、導入量が少ない場合は、積算回数を増やして計測しうる。
【0080】
アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、通常は、アルコキシシリル基を導入する前の水素化物[2]の重量平均分子量(Mw)から大きく変化しない。ただし、アルコキシシリル基を導入する際には過酸化物の存在下で水素化物[2]を変性反応させるので、その水素化物[2]の架橋反応及び切断反応が進行し、分子量分布は大きく変化する傾向がある。アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、特に好ましくは60,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。また、アルコキシシリル基変性物[3]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上である。アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)がこの範囲であると、基材フィルムの良好な機械強度及び引張り伸びが維持できる。
アルコキシシリル基変性物[3]の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
【0081】
アルコキシシリル基変性物[3]は、前述したブロック共重合体[1]の水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入することにより、製造し得る。水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入する方法としては、例えば、水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0082】
エチレン性不飽和シラン化合物としては、水素化物[2]とグラフト重合でき、水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入できるものを用いうる。このようなエチレン性不飽和シラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリル基を有するアルコキシシラン;p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等のp−スチリル基を有するアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の3−メタクリロキシプロピル基を有するアルコキシシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の3−アクリロキシプロピル基を有するアルコキシシラン;2−ノルボルネン−5−イルトリメトキシシラン等の2−ノルボルネン−5−イル基を有するアルコキシシラン;などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより得られやすいことから、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好ましい。また、エチレン性不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0083】
エチレン性不飽和シラン化合物の量は、アルコキシシリル基を導入する前の水素化物[2]100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。
【0084】
過酸化物としては、ラジカル反応開始剤として機能するものを用いうる。このような過酸化物としては、通常、有機過酸化物を用いる。有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、1分間半減期温度が170℃〜190℃のものが好ましく、具体的には、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド等が好ましい。また、過酸化物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
過酸化物の量は、アルコキシシリル基を導入する前の水素化物[2]100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、特に好ましくは2重量部以下である。
【0086】
ブロック共重合体[1]の水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は、例えば、加熱混練機及び反応器を用いて行いうる。具体例を挙げると、水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物と過酸化物との混合物を、二軸混練機にて、水素化物[2]の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより、アルコキシシリル基変性物[3]を得ることができる。混練時の具体的な温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下、特に好ましくは220℃以下である。また、混練時間は、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.2分以上、特に好ましくは0.3分以上であり、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、特に好ましくは5分以下である。二軸混練機、単軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練及び押出しを行いうる。
【0087】
基材フィルムを構成する樹脂におけるアルコキシシリル基変性物[3]の量は、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。アルコキシシリル基変性物[3]の量を前記の範囲に収めることにより、本発明の所望の効果を安定して発揮することができる。
【0088】
〔2.3.重合体以外の任意成分〕
基材フィルムの材料となる樹脂は、上に挙げた各種の重合体に加えて、任意の配合剤を含みうる。配合剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、及び抗菌剤が挙げられる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。任意の配合剤の割合は、樹脂における重合体の割合が好ましい割合となる範囲内で適宜調整しうる。樹脂における重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。重合体の割合を前記範囲にすることにより、基材フィルムが十分な耐熱性及び透明性を得ることができる。
【0089】
〔2.4.基材フィルムの構造、性質等〕
基材フィルムは、単一の層からなる単層フィルムであってもよく、複数の層からなる多層フィルムであってもよい、多層の場合、複数の層を構成する材料は同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
基材フィルムの厚みは、特に制限されず、透明導電性フィルムの用途に応じた厚みに適宜調節しうる。例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。基材フィルムの厚みを、前記範囲の下限値以上にすることにより、基材フィルムの機械的強度を十分に高めることができ、また、前記範囲の上限値以下にすることにより、基材フィルムの厚みを薄くできる。
【0091】
基材フィルムは、導電層の形成に先立ち、その表面に表面処理が施されたものであってもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、薬品処理等が挙げられる。これにより、基材フィルムと導電性層との結着性を高めることができる。
【0092】
基材フィルムは、本発明の透明導電性フィルムを表示装置内において導電性の構成要素として用いる場合の寸法安定性等の観点から、吸水率が低く、湿度変化による寸法の変化が小さい樹脂のフィルムであることが好ましい。具体的には、樹脂の吸水率は、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下としうる。この吸水率はASTM D570に従って測定しうる。
【0093】
基材フィルムは、面内レターデーションReが小さく光学的に実質的に等方性のフィルムであってもよく、面内レターデーションReを有する光学的に異方性のフィルムであってもよい。透明導電性フィルムを、オンセル型又はミッドセル型のタッチパネルの構成要素として用いる場合、基材フィルムは、複屈折性が小さいフィルムであることが好ましい。その場合にReの値の上限は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下であり、Reの値の下限は理想的には0nmである。
【0094】
基材フィルムの導電性層が形成される側の表面の算術表面粗さRaは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。基材フィルムの表面の算術平均粗さRaを前記のように小さくすることにより、その面に形成される導電性層の厚みを均一にできる。そのため、導電性層に局所的に薄い部分が発生することを抑制できるので、前記の薄い部分による抵抗の増大を抑制できる。したがって、例えば透明導電性フィルムをタッチパネルに用いた場合、タッチパネルの使用時における静電容量の変化の検知感度を高めることができる。前記の算術平均粗さRaの下限に特に制限は無いが、通常は1nm以上である。基材フィルムの面の算術平均粗さRaは、非接触表面形状測定機(例えばZYGO社製NewViewシリーズ)を用いて測定しうる。
【0095】
〔2.5.基材フィルムの製造方法〕
基材フィルムの製造方法は、特に限定されず、上に述べた材料を任意の成形方法により成形することにより製造しうる。成形方法の例としては、溶融成形法及び溶液流延法が挙げられる。溶融成形法の例としては、溶融押し出しにより成形する溶融押出法、並びに、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度及び表面精度に優れた基材フィルムを得る観点から、溶融押出法、インフレーション成形法及びプレス成形法が好ましい。その中でも特に、残留溶媒の量を減らせること、並びに、効率良く簡単な製造が可能なことから、溶融押出法が特に好ましい。また特に、溶融押出法を用いて製造された基材フィルムは、導電性層の形成のためにスパッタリング法等の成膜方法を行う際に、基材フィルムからのアウトガスを少なくできるので、導電性層の良好な成膜が可能である。好適な成形方法としては、例えば、特開平3−223328号公報、特開2000−280315号公報等に開示されている方法が挙げられる。
【0096】
透明導電性フィルムの用途によっては、基材フィルムは、成形後に延伸処理をしたものであってもよい。但し、透明導電性フィルムを、オンセル型又はミッドセル型のタッチパネルの構成要素として用いる場合、基材フィルムは複屈折性が小さいことが好ましい。基材フィルムの製造の工程でフィルムに応力が負荷されても位相差の発現する程度が小さいという観点からは、基材フィルムの材料としては、重合体として上に述べた芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物を含むものが好ましい。
【0097】
基材フィルムの製造方法は、前記の工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、長尺の基材フィルムを矩形等の適切な形状に切り出す工程を含んでいてもよい。
【0098】
〔3.導電層〕
本発明の透明導電性フィルムにおける導電層は、ポリチオフェン系化合物、ポリスチレンスルホン酸化合物、導電性向上剤、及びポリアミド化合物を含む。
本願において、ポリチオフェン系化合物及びポリスチレンスルホン酸化合物を、合わせて「導電性重合体」と呼ぶ場合がある。
【0099】
〔3.1.ポリチオフェン系化合物〕
ポリチオフェン系化合物とは、チオフェン又はその誘導体が重合して得られる構造を有する重合単位(以下において、「チオフェン単位」という場合がある)を含む重合体である。チオフェン誘導体の例としては、チオフェン環の3位及び4位において置換基を有する誘導体が挙げられる。より具体的な例としては、エチレンジオキシチオフェンが挙げられる。
【0100】
ポリチオフェン系化合物におけるチオフェン又はその誘導体の重合の態様としては、典型的には、チオフェン環の2位及び5位において他の環と結合した態様が挙げられ、より具体的には、エチレンジオキシチオフェンが、そのチオフェン環の2位及び5位において、他の環と結合した態様が挙げられる。本願では、そのようなポリエチレンジオキシチオフェンを、「PEDOT」という場合がある。
【0101】
ポリチオフェン系化合物は、チオフェン単位以外の重合単位を有していてもよい。
【0102】
ポリチオフェン系化合物の分子量は、特に限定されず、所望の導電性が得られる分子量のものを適宜選択しうる。
【0103】
〔3.2.ポリスチレンスルホン酸化合物〕
ポリスチレンスルホン酸化合物とは、スチレンスルホン酸又はその誘導体が重合して得られる構造を有する重合単位(以下において、「スチレンスルホン酸単位」という場合がある)を含む重合体である。本願では、スチレンスルホン酸が重合して得られる構造を有する重合単位を含む重合体を「PSS」という場合がある。また、PEDOT及びPSSの組み合わせを「PEDOT/PSS」という場合がある。
【0104】
ポリスチレンスルホン酸化合物は、スチレンスルホン酸単位以外の重合単位を有していてもよい。
【0105】
特定の理論に拘束されるものではないが、ポリチオフェン系化合物及びポリスチレンスルホン酸化合物は、導電層内において電荷を持ちイオン対を形成し、それにより導電性を発現しうると考えられる。具体的には、ポリチオフェン系化合物内に非局在化した電荷と、ポリスチレンスルホン酸化合物内のスルホ基の電荷とが対を形成しうる。例えば、PEDOT及びPSSは、下記式(X)に模式的に示される対を形成しうる。
【0107】
導電層における導電性重合体の割合、及び導電性重合体におけるポリチオフェン系化合物及びポリスチレンスルホン酸化合物の割合は、所望の導電性等の性質が得られるよう適宜調整しうる。
PEDOT/PSSとしては、市販の製品を用いうる。市販の製品の例としては、ヘレウス社製の「Clevios(登録商標)PH500、PH510、PH1000」が挙げられる。
【0108】
〔3.3.導電性向上剤〕
導電性向上剤は、導電層の表面抵抗をより低減する成分である。
導電性向上剤は、目的に応じて適宜選択することができる。導電性向上剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びフェノール誘導体が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、及びフェノール誘導体が好ましく用いられる。フェノール誘導体が最も好ましい。
【0109】
フェノール誘導体の具体例としては、2,6−ジヒドロキシメチル−4−メチルフェノール(以下において「26DMPC」という場合がある)、2,4−ジヒドロキシメチル−6−メチルフェノール、ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシ−メチルフェニル)プロパン、及びビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メタンが挙げられる。
導電性向上剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0110】
通常、導電性向上剤としては、他の成分(ポリチオフェン系化合物、ポリスチレンスルホン酸化合物、及びポリアミド化合物)に比べて低分子量の化合物が用いられ、それにより導電性の向上に寄与しうる。
【0111】
導電層における導電性向上剤の割合は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、一方好ましくは55重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。導電性向上剤の割合が前記範囲内であることにより、良好な導電性を得ることができる。
【0112】
〔3.4.ポリアミド化合物〕
本発明の透明導電性フィルムにおいては、導電層がポリアミド化合物を含む。導電層がポリアミド化合物を含むことにより、表面抵抗が低く、透明性が高く、且つ、基材フィルムとの密着性が高い導電層を形成することができる。特に、繰り返し剥離負荷がかけられた場合の耐久性が高い導電層を形成することができる。
【0113】
ポリアミド化合物としては、既知の各種のポリアミド及び変性ポリアミドから適切な効果が得られるものを適宜選択しうる。ポリアミド化合物としては、脂肪族のポリアミド又は脂肪族の変性ポリアミドを好ましく用いうる。
【0114】
ポリアミドの例としては、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等のナイロン、前記ナイロンの重合単位の2種以上を共重合させた所謂共重合ナイロン、並びにその他の脂肪酸系ポリアミド、及び脂肪酸系ブロック共重合体(ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)が挙げられる。
【0115】
変性ポリアミドの例としては、上に例示したもの等のポリアミドを化学的に変性させたものが挙げられる。具体的には、ポリアミドの末端基、鎖内のアミド基、又はこれらの両方を変性させたものが挙げられる。かかる変性の態様の例としては、アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性、アルキルアミノ化変性、アルコキシアルキル化変性が挙げられる。導電層上に粘着剤層など任意の層を積層させる場合は、これらの変性ポリアミドを使用することが密着性の観点から好ましい。
【0116】
変性ポリアミドのより具体的な例としては、以下のものが挙げられる。
変性ポリアミド(a):上に例示したもの等のナイロン又は共重合ナイロンのアミド基の一部又は全部を、N−アルコキシアルキル変性させたもの。かかるN−アルコキシアルキル変性の態様の例としては、N−アルコキシメチル変性、N−アルコキシエチル変性、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
変性ポリアミド(b):脂肪族ポリアミドの末端基の一部又は全部を変性させたもの。かかる変性の態様の例としては、アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
変性ポリアミド(c):脂肪族ポリアミドのアミド基の一部又は全部をアルキルアミノ化又はアルコキシアルキル化したもの。
【0117】
変性ポリアミド(b)のより具体的な例としては、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0119】
式(1)中、X及びYは、下記表1に示すもののいずれかを表す。
【0121】
ここで、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は置換もしくは無置換のアルキレン基を表している。また、l、mは重合比を表しており、l+m=100であることが好ましい。lが2以上の場合にそれぞれのR
1は同一であっても異なっていてもよく、mが2以上の場合にもそれぞれのR
2は同一であっても異なっていてもよい。また、一般式(1)中の*と*の間は、R
1を含む左側の単位とR
2を含む右側の単位が直接結合していてもよいし、任意のポリアミド単位を挟んで結合していてもよい。末端アミノ基濃度は少なくとも10ミリ当量/kgであることが好ましく、さらに好ましくは30ミリ当量/kg以上である。
また、末端にアミノ基及びカルボキシル基を有している場合、これらの好ましい比はアミノ基/カルボキシル基濃度比で1.1〜10である。末端基の調整方法としては、公知の方法を用いうる。例えば、重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン類、モノアミン類、ジカルボン酸類、及びモノカルボン酸類を適宜選択して添加する方法が挙げられる。変性ポリアミドが末端にヒドロキシル基を有している場合、末端ヒドロキシル基濃度は5ミリ当量/kg以上であることが好ましく、10ミリ当量/kg以上であることがより好ましい。末端にヒドロキシル基を導入する方法としては、重合後に所定の末端濃度となるように、反応系にヒドロキシルアミン類又はエポキシ類を添加する方法が挙げられる。
【0122】
変性ポリアミド(c)のより具体的な例としては、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0124】
ここで、R
15、R
16、R
17、R
18は置換もしくは無置換のアルキレン基を表しており、R
19は置換もしくは無置換のアルキル基を表している。p、qは重合比を表しており、pは50以上90以下であり、p+q=100である。
変性方法としては従来公知の方法を用いることができ、例えばアミド基の一部をアルコキシアルキル化する場合、ナイロン6等をホルムアルデヒド、アルコールと反応させてアミド結合の水素原子をアルコキシアルキル基で置換することによって得ることができる。
これらの中で、脂肪族ポリアミドの末端基の一部又は全部をアミノ変性したもの、及びN−アルコキシアルキル化ナイロンが好ましく用いられる。
【0125】
変性ポリアミドの重量平均分子量は、一般には5,000〜500,000、好ましくは10,000〜200,000である。重量平均分子量を5,000以上とすることにより、導電層の耐久性を向上することができる。重量平均分子量を500,000以下とすることにより、溶媒への溶解性を向上することができ、良好な正常の導電性組成物を得ることができる。
【0126】
ポリアミド化合物の具体的な商品の例としては、「CM4000」及び「CM8000」(以上、東レ製)、「F−30」、「MF−30」及び「EF−30T」(以上、帝国化学産業製)、並びに「FR105」及び「FR104」(以上、鉛市製)が挙げられる。
ポリアミド化合物としては、1種類のポリアミド化合物を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の割合で併用してもよい。
【0127】
導電層を形成するための導電性組成物において、導電性重合体(PEDOT/PSS等)は有機酸であるため、ポリアミド化合物、特にメトキシメチル変性ポリアミドの架橋反応を促進する触媒として機能しうる。したがって、導電性組成物がポリアミド化合物、特にメトキシメチル変性ポリアミドを含有することにより、強度の高い導電層を得ることができる。
【0128】
導電層におけるポリアミド化合物の割合は、好ましくは8重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、一方好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。ポリアミド化合物の割合を前記下限以上とすることにより、基材フィルムと導電層との良好な密着性を得ることができる。ポリアミド化合物の割合を前記上限以下とすることにより、良好な導電性を得ることができる。
【0129】
〔3.5.導電層の任意成分〕
導電層は、ポリチオフェン系化合物、ポリスチレンスルホン酸化合物、導電性向上剤、及びポリアミド化合物に加えて、任意の成分を含みうる。例えば、導電層は、レベリング剤を含みうる。
【0130】
レベリング剤とは、導電層の膜厚の均一性及び表面の平滑性を向上させる添加剤である。レベリング剤としては、界面活性剤を用いうる。界面活性剤の好適な例としては、フッ素系界面活性剤、アセチレン基を分子中に有するグリコール系界面活性剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらを用いることにより、良好なレベリングの効果を得ることができる。
【0131】
フッ素系界面活性剤の例としては、市販のアニオン系、カチオン系、両性、非イオン系のものが挙げられる。具体的な商品の例としては、サーフロンS−111n、サーフロンS−113、サーフロンS−121、サーフロンS−131、サーフロンS−132、サーフロンS−141、サーフロンS−145、サーフロンS−381、サーフロンS−383、サーフロンS−393、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40、サーフロンSA−100(以上、AGCセイケミカル社製)、メガファックF−114、メガファックF−410、メガファックF−493、メガファックF−494、メガファックF−443、メガファックF−444、メガファックF−445、メガファックF−470、メガファックF−471、メガファックF−472SF、メガファックF−474、メガファックF−475、メガファックR−30、メガファックF−477、メガファックF−478、メガファックF−479、メガファックF−480SF、メガファックF−482、メガファックF−483、メガファックF−484、メガファックF−486、メガファックF−487,メガファックF−172D、メガファックF−178K、メガファックF−178RM、メガファックESM−1、メガファックMCF−350SF、メガファックBL−20、メガファックR−61、及びメガファックR−90(以上、大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0132】
アセチレン基を分子中にもつグリコール系界面活性剤の、具体的な商品の例としては、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノール61、サーフィノール2502、サーフィノール82、及びダイノール604(以上、日信化学工業社製)が挙げられる。
【0133】
レベリング剤としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の割合で併用してもよい。
【0134】
導電性組成物におけるレベリング剤の割合は、好ましくは50ppm以上、より好ましくは100ppm以上であり、一方好ましくは50000ppm以下、より好ましくは30000ppm以下である。レベリング剤の割合を前記下限以上とすることにより、十分なレベリング効果を得て、良好な導電層の面上を得ることができる。レベリング剤の割合を前記上限以下とすることにより、泡の発生による面状の悪化を回避することができ、且つ良好な導電性を得ることができる。
【0135】
〔3.6.導電層の形成方法〕
基材フィルムの面状に導電層を形成する方法は特に限定されず、任意の方法を採用しうる。通常、導電層は、上に述べた導電層の成分を含む組成物(当該組成物を、以下において「導電性組成物」という場合がある)を基材フィルムの面上に塗布して導電性組成物の層を形成し、これを乾燥することにより得られる。
【0136】
導電性組成物は、上に述べた導電層の成分に加えて溶媒を含みうる。溶媒の例としては、水、有機溶媒、及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶媒は、特に、水及び水と相溶しうる有機溶媒の混合物であることが好ましい。水と相溶しうる有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、及び2−プロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)が挙げられ、2−プロパノールが好ましい。
【0137】
溶媒が、水及び水と相溶しうる有機溶媒の混合物である場合、溶媒における有機溶媒の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、一方好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。溶媒における有機溶媒の割合が前記範囲内であることにより、全ての成分を良好に溶解若しくは分散させることができ、高い品質の導電層を容易に得ることができる。
【0138】
ポリチオフェン系化合物、ポリスチレンスルホン酸化合物、導電性向上剤、ポリアミド化合物、及びその他の導電層の任意成分は、溶媒に溶解又は分散した状態の商品として入手しうる場合がある。その場合は、かかる商品の溶媒を、導電性組成物を構成する溶媒の一部または全部として使用しうる。
【0139】
導電性組成物中の固形分(導電性組成物の成分のうち、乾燥の条件で揮発しない成分)の割合は、導電層の形成が容易となる範囲に適宜調整しうる。
【0140】
導電層中の各成分の割合は、通常、導電性組成物の固形分中の各成分の割合と一致する。したがって、導電性組成物中の溶媒以外の各成分の割合は、導電層中の各成分の割合が所望の割合となるよう適宜調整しうる。
【0141】
導電性組成物の塗布は、バーコーター等の塗布装置を用いて行いうる。塗布は、基材フィルムの表面の全面に対して行ってもよく、基材フィルムの表面の一部の領域のみに行ってもよい。
【0142】
導電性組成物の層の乾燥の条件は、所望の導電層が得られるよう適宜調整しうる。乾燥温度は、例えば70〜200℃としうる。乾燥時間は、例えば0.5分〜20分としうる。
【0143】
乾燥の工程により導電層を形成した後、必要に応じて、導電層を所望の形状に成形しうる。成形は、エッチング、フォトリソグラフィー等の膜除去法によって行いうる。
【0144】
〔3.7.導電層の形状等〕
導電層の厚みは、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上であり、一方好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下である。導電層の厚みを前記下限以上とすることにより、導電性を向上させることができる。導電層の厚みを前記上限以下とすることにより、全光線透過率を向上させることができる。
【0145】
導電層は、通常基材フィルムの一方の面上のみに設けうるが、本発明はこれに限られず、導電層を基材フィルムの両面に設けてもよい。
【0146】
〔4.任意の層〕
本発明の透明導電性フィルムは、基材フィルム及び導電層に加えて、任意の層を備えうる。例えば、基材フィルムと導電層との間に、これらの剥離強度を向上させるためのプライマー層を備えうる。ただし、本発明の透明導電性フィルムは、プライマーを備えず、上に例示した材料で形成された基材フィルム上に、導電層が直接形成されたものが好ましい。かかる態様の透明導電性フィルムは、少ない工程数で効率的に製造することができ、且つ、プライマー形成工程でプライマー表面に生じる凸凹形状により導電層の膜厚が不均一になり導電性が損なわれることを回避しうる。本発明の透明導電性フィルムは、導電層の成分を上に述べた特定のものとすることにより、プライマー層を備えない態様とすることにより、上に述べた利点を享受しながら、且つ良好な基材フィルムと導電層との密着性を得ることができる。また、本発明の透明導電性フィルムは、導電層上に粘着剤層を備えうる。本発明の透明導電性フィルムは、導電層の成分を上に述べた特定のものとすることにより、導電層と導電層上に積層される粘着剤層との間に良好な密着性を得ることができる。
【0147】
〔5.透明導電性フィルムの性質〕
透明導電性フィルムは、その導電層側の表面で測定した表面抵抗が低いことが好ましい。表面抵抗は、好ましくは200Ω/□以下であり、さらに好ましくは150Ω/□以下である。表面抵抗の下限は特に限定されず、理想的には0Ω/□である。本発明の透明導電性フィルムは、導電層の成分を上に述べた特定のものとすることにより、かかる低い表面抵抗を実現しながら、且つ高い透明性及び良好な基材フィルムと導電層との密着性を得ることができる。表面抵抗は、例えば三菱化学社製ロレスタ−AP MCP−T400を用いて測定しうる。
【0148】
透明導電性フィルムは、その透明性が高いことが好ましい。具体的には、高い全光線透過率を有することが好ましい。透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。全光線透過率の上限は特に限定されず、理想的には100%である。導電層の成分を上に述べた特定のものとすることにより、かかる高い全光線透過率を実現しながら、且つ低い表面抵抗及び良好な基材フィルムと導電層との密着性を得ることができる。
【0149】
透明導電性フィルムのヘイズは、特に限定されず用途に応じた値としうる。透明導電性フィルムを、タッチパネルの構成要素として用いる場合、透明導電性フィルムのヘイズは、通常は低いことが好ましく、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。
【0150】
透明導電性フィルムの全光線透過率及びヘイズは、例えば日本電色社製ヘイズメーターNDH−2000を用いて全光線透過率はJIS K7136ヘイズはJIS K7136に従って測定しうる。
【0151】
〔6.用途〕
本発明の透明導電性フィルムの用途は任意である。用途の例としては、表示装置における導電性の構成要素としての用途が挙げられる。かかる導電性の構成要素としては、帯電防止フィルム、及びタッチパネルにおける接触を検出するための構成要素が挙げられる。
【0152】
〔7.タッチパネル〕
本発明のタッチパネルは、前記本発明の透明導電性フィルムを備える。
本発明においてタッチパネルとは、画像を表示する機能と、当該画像の表示面における使用者の操作を検出する機能とを組み合わせて備える電子部品である。本発明のタッチパネルの操作検出方式の例としては、抵抗膜方式、電磁誘導様式及び静電容量方式等の方式が挙げられ、特に静電容量方式のタッチパネルにおいて、本発明を好ましく適用しうる。本発明のタッチパネルの画像表示方式は特に限定されず、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の任意の表示装置の方式を採用しうる。
【0153】
本発明のタッチパネルが、液晶表示装置を含むものである場合、かかる液晶表示装置は、一対の基板と、その間に封入された液晶性化合物とを含む液晶セル、及び液晶セルのおもて面側及び裏面側に設けられた一対の偏光板を含む装置としうる。かかる装置において本発明の透明導電性フィルムを設ける位置は、特に限定されず、一対の偏光板の外側の位置(アウトセル)、一対の偏光板の内側であって液晶セルの外側の位置(オンセル)、液晶セルの内側の位置(インセル)等の、所望の位置としうる。
【0154】
本発明の透明導電性フィルムは、表面抵抗が低く、透明性が高く、且つ耐久性が高いフィルムとすることができ、さらに基材フィルムを適宜選択することにより複屈折性が小さいフィルムとすることができるため、オンセル及びインセルの位置において好ましく使用することができる。したがって、本発明のタッチパネルは、オンセル型又はインセル型の操作検出装置を含むタッチパネルとして好ましく構成しうる。
【実施例】
【0155】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0156】
〔評価方法〕
(碁盤目剥離試験)
JIS K5600に従って1mm角100マスにて実施した。
【0157】
(繰り返しセロテープ(登録商標)剥離試験)
実施例及び比較例で得られた透明導電性フィルムの、導電層側の層に、粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープCT405AP−24」)を貼合し、剥離する操作を繰り返し、下記の評価基準に従って評価した。
優:10回貼合及び剥離の操作を行っても導電層が剥離せず残る。
良:貼合及び剥離の操作を5〜9回行った時点で導電層が剥離する。
不良:貼合及び剥離の操作を1〜4回行った時点で導電層が剥離する。
【0158】
(粘着剤密着性試験)
実施例及び比較例で得られた透明導電性フィルム2枚の導電層側同士を、粘着剤(日東電工社製、商品名「LUCIACS(登録商標)CS9621T」)を用いて貼合した。貼合したサンプルを50mm角に切り出し、恒温恒湿槽(60℃、90%)の環境下にて500時間静置した後、下記の基準に従って密着性を評価した。
優:貼合したフィルムの剥離が見られない。
良:貼合したフィルムの縁から2mm以内の剥離が見られる。
可:貼合したフィルムの縁から5mm以内の剥離が見られる。
不良:貼合したフィルムの縁から5mmを超える剥離が見られる。
【0159】
(全光線透過率及びヘイズの測定)
日本電色社製ヘイズメーターNDH−2000を用いてJIS K7361およびJIS K7136に従って測定した。
【0160】
(表面抵抗の測定)
三菱化学社製ロレスタ−AP MCP−T400を用いて測定した。
【0161】
〔実施例1〕
(1−1.基材フィルム)
脂環式構造重合体フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノアフィルムZF16−100」、厚さ100μm)を用意した。このフィルムに、春日電機社製コロナ処理装置を用い、大気中で放電量150W/m
2/分でコロナ処理を施し、基材フィルムを得た。
【0162】
(1−2.導電性組成物)
下記の成分を、下記の通りの配合量で混合し、導電性組成物を得た。
PEDOT/PSS分散液(商品名「Clevios PH1000」、ヘレウス社製、固形分割合1.1%の水分散液):0.45g
フェノール誘導体溶液(26DMPC/IPA=1/99の溶液):0.45g
ポリアミド化合物樹脂溶液(部分メトキシメチル化6−ナイロン、メトキシメチル化率30%、商品名「FR105」、株式会社鉛市社製、部分メトキシメチル化6−ナイロン/IPA/水=1/29/70の溶液):0.1g
IPA:1.0g
【0163】
(1−3.透明導電性フィルムの製造及び評価)
(1−1)で得た基材フィルムのコロナ処理をした面に、(1−2)で得た導電性組成物を、#26のバーコーターで塗布し、120℃で5分間乾燥した。これにより、基材フィルムの表面に導電層を形成し、透明導電性フィルムを得た。
得られた透明導電性フィルムについて、碁盤目剥離試験、繰り返しセロテープ剥離試験、粘着剤密着性試験、全光線透過率測定、ヘイズ測定及び表面抵抗測定を行った。結果を表2に示す。
【0164】
〔実施例2〕
(1−2)における導電性組成物の成分の配合割合を変更し、下記の通りとした他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表2に示す。
PEDOT/PSS分散液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
フェノール誘導体溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
ポリアミド化合物樹脂溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.2g
IPA:1.0g
【0165】
〔実施例3〕
(1−2)における導電性組成物の成分の種類及び配合割合を変更し、下記の通りとした他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表2に示す。
PEDOT/PSS分散液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
フェノール誘導体溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
ポリアミド化合物樹脂溶液(部分アルキルアミノ化ポリアミド、商品名「AQナイロン A90」、東レ株式会社製、部分アルキルアミノ化ポリアミド/IPA/水=1/29/70の溶液):0.2g
IPA:1.0g
【0166】
〔実施例4〕
(1−2)における導電性組成物の成分の種類及び配合割合を変更し、下記の通りとした他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表2に示す。
PEDOT/PSS分散液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
フェノール誘導体溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
ポリアミド化合物樹脂溶液(共重合ナイロン、6−ナイロン、66−ナイロン及び610−ナイロンの重合単位を含む、商品名「アミランCM8000」、東レ株式会社製、共重合ナイロン/IPA/水=1/29/70の溶液):0.2g
IPA:1.0g
【0167】
〔実施例5〕
(5−1.樹脂ペレットの製造)
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン45.0部、及び、ジn−ブチルエーテル0.475部を入れた。全容を60℃で攪拌しながら、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.83部を加えて重合を開始させ、60℃で攪拌しながら、さらに60分反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、反応液に脱水イソプレン10.0部を加え、そのまま60℃で30分攪拌を続けた。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、この時点で重合転化率は99%であった。
その後さらに、反応液に脱水スチレンを45.0部加え、全容を60℃で60分攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は50,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、スチレンブロックとイソブチレンブロックの割合は重量比で90:10であった。
【0168】
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(日揮触媒化成社製「E22U」、ニッケル担持量60%)4.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、更に溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応により得られたブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は53,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0169】
水素化反応終了後、反応液を濾過して水素化触媒を除去した。その後、濾液にフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](コーヨ化学研究所社製「Songnox1010」)0.05重量部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。次いで、上記溶液を、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノ社製、孔径0.5μm〜1μm)にて濾過し、更に別の金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて順次濾過して、微小な固形分を除去した。その後、円筒型の濃縮乾燥器(日立製作所社製、コントロ)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。残った固形分を、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカットして、ブロック共重合体水素化物を含むペレット95部を得た。得られたペレットのブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は52,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、水素化率はほぼ100%であった。
【0170】
(5−2.フィルムの製造)
(5−1)で得られたペレットを、溶融押出法にて成形し、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物のフィルム(厚さ100μm)を得た。
【0171】
(5−3.透明導電性フィルムの製造及び評価)
下記の事項を変更した他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表2に示す。
・(1−1)において、脂環式構造重合体フィルムに代えて、(5−2)で得たフィルムを用いた。
・(1−2)における導電性組成物の成分の配合割合を変更し、実施例2における配向割合と同じ割合とした。
【0172】
〔実施例6〕
(1−2)における導電性組成物の成分の種類及び配合割合を変更し、下記の通りとした他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表2に示す。
PEDOT/PSS分散液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
フェノール誘導体溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.4g
ポリアミド化合物樹脂溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.2g
レベリング剤(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの、エチレンオキサイド付加物、商品名「サーフィノール440」、日信化学工業株式会社製):0.0002g
IPA:1.0g
【0173】
〔比較例1〕
ノルボルネン系樹脂フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTONフィルム」、厚さ100μm、吸水率:0.17%、光弾性係数3×10
−13cm
2/dyne)を用意した。このフィルムに、大気中で、コロナ放電電子の照射量を100W/m
2/分としてコロナ処理を施し、基材フィルムを得た。
【0174】
この基材フィルムのコロナ処理をした面に、導電性組成物(商品名「OrgaconS-300」、(日本アグフア・ゲバルト(株)製))を、水分散体重量が25g/m
2になるように塗布し、120℃で3分間加熱して水分を蒸発させた。これにより、基材フィルムの表面に導電層を形成し、透明導電性フィルムを得た。
得られた透明導電性フィルムについて、碁盤目剥離試験、繰り返しセロテープ剥離試験、粘着剤密着性試験、全光線透過率測定、ヘイズ測定及び表面抵抗測定を行った。結果を表3に示す。
【0175】
〔比較例2〕
(1−2)における導電性組成物の成分の配合割合を変更し、下記の通りとした他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表3に示す。
PEDOT/PSS分散液(実施例1で用いたものと同じ):1.0g
IPA:1.0g
【0176】
〔比較例3〕
(1−2)における導電性組成物の成分の配合割合を変更し、下記の通りとした他は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得て評価した。結果を表3に示す。
PEDOT/PSS分散液(実施例1で用いたものと同じ):0.5g
ポリアミド化合物樹脂溶液(実施例1で用いたものと同じ):0.5g
IPA:1.0g
【0177】
【表2】
【0178】
【表3】
【0179】
※1 HSIS 芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物のブロック共重合体の水素化物。
※2 ポリアミド/導電層 導電層中のポリアミド化合物の割合(単位重量%)。
【0180】
表2〜表3の結果から明らかな通り、導電層が本願発明の所定の成分を含む実施例においては、比較例に比べて、高い全光線透過率、低いヘイズ及び表面抵抗を実現しながら、剥離強度が高く、且つ繰り返しの剥離負荷に対しても耐久性が高いことが分かる。