特許第6557243号(P6557243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジミインコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557243
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20190729BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190729BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20190729BHJP
【FI】
   C09K3/14 550Z
   H01L21/304 622C
   B24B37/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-550372(P2016-550372)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2015076987
(87)【国際公開番号】WO2016047714
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-197453(P2014-197453)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章太
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−540850(JP,A)
【文献】 特表2009−530848(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0090109(US,A1)
【文献】 特開2001−342454(JP,A)
【文献】 特開平10−012584(JP,A)
【文献】 特開2000−299320(JP,A)
【文献】 特開2002−050595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si含有材料を含む層を有する研磨対象物を研磨する用途で使用される、研磨用組成物であって、
前記研磨用組成物が、pH調整剤と、有機化合物と、砥粒とを含有し、
前記有機化合物が、下記式(1):
【化1】

ただし、Aは、電子求引基である、で表され、前記電子求引基は、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−CF、−CCl、−CBr、−CN、−COR、−CON(R)、−P(=O)(OR)、−COR、−C(O)Rまたは−COSRであり、Rは、それぞれ独立して、−H、−OH、−CHまたは−Cであり、
前記砥粒が、シリカであり、
前記Si含有材料が、シリコンおよび多結晶シリコンの少なくとも一方であり、
pHが7.5超であ酸化剤を含まない、研磨用組成物。
【請求項2】
前記電子求引基が、−OH、−COR、または−P(=O)(OR)である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記有機化合物が、ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、またはニトロフェニルホスホン酸である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
Si含有材料を含む層を有する研磨対象物を研磨する用途で使用される、研磨用組成物の製造方法であって、
pH調整剤と、有機化合物と、砥粒とを混合することを有し、ただし、酸化剤は混合せず、
前記有機化合物が、下記式(1):
【化2】

ただし、Aは、電子求引基である、で表され、前記電子求引基は、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−CF、−CCl、−CBr、−CN、−COR、−CON(R)、−P(=O)(OR)、−COR、−C(O)Rまたは−COSRであり、Rは、それぞれ独立して、−H、−OH、−CHまたは−Cであり、
前記砥粒が、シリカであり、
前記Si含有材料が、シリコンおよび多結晶シリコンの少なくとも一方であり、
pHが7.5超とする、研磨用組成物の製造方法。
【請求項5】
Si含有材料を含む層を有する研磨対象物を、請求項1〜のいずれか1項に記載の研磨用組成物または請求項に記載の製造方法によって得た研磨用組成物で研磨する、前記Si含有材料が、シリコンおよび多結晶シリコンの少なくとも一方である、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造プロセスにおいて使用される研磨用組成物およびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(Large Scale Integration)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(chemical mechanical polishing;CMP)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線(ダマシン配線)形成において頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
近年、CMPは、半導体製造における各工程に適用されてきており、その一態様として、例えばトランジスタ作製におけるゲート形成工程への適用が挙げられる。トランジスタ作製の際には、シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)やシリコン窒化物(窒化ケイ素)といったSi含有材料を研磨することがあり、トランジスタの構造によっては、各Si含有材料の研磨レートをある程度制御することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献2によると、酸、砥粒等を含み酸性の研磨剤でポリシリコンを研磨する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4944836号明細書
【特許文献2】特表2006−035771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の研磨用組成物を以てしても、Si含有材料の研磨レートを十分に制御することができず、さらなる改良が望まれていた。
【0007】
そこで本発明は、Si含有材料の研磨レートを十分に制御することができる研磨用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を積み重ねた。その結果、pH調整剤と、有機化合物とを含有し、前記有機化合物が、下記式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
ただし、Aは、電子求引基である、で表され、pHが7.5超である、研磨用組成物を提供することによって、上記課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Si含有材料の研磨レートを十分に制御することができる研磨用組成物が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
【0013】
<研磨用組成物>
本発明は、pH調整剤と、有機化合物とを含有し、前記有機化合物が、下記式(1):
【0014】
【化2】
【0015】
ただし、Aは、電子求引基である、で表され、pHが7.5超である、研磨用組成物である。
【0016】
かような構成の研磨用組成物によると、Si含有材料の研磨レートを十分に制御することができる。このような効果が奏される詳細な理由は不明であるが、以下のメカニズムによると推測される。
【0017】
すなわち、本発明の研磨用組成物は、有機化合物を含有し、前記有機化合物が、下記式(1):
【0018】
【化3】
【0019】
ただし、Aは、電子求引基である、で表される。
【0020】
かような有機化合物が、研磨用組成物に含有されると、かかる有機化合物のベンゼン環内の電子の非局在化が抑えられているため、電子求引基と材料表面との化学的な作用によって、シリコン、ポリシリコンを代表とするSi含有材料の研磨レートを適切な程度に抑制することができると考えられる。また、本発明の有機化合物は、ニトロ基(−NO)を必須に有する。ニトロ基(−NO)も同様に、通常、電子求引基として機能するが、本発明の有機化合物における「A」は、かかるニトロ基(−NO)と、Si含有材料表面とが電子を共有することで、相互作用し、相乗効果を奏し、シリコン、ポリシリコンを代表とするSi含有材料の研磨レートを適切な程度に抑制することができると考えられる。
【0021】
また、本発明の研磨用組成物は、pH調整剤を含有し、pHが7.5超となるように設定されている。pHが7.5以下であると、Si含有材料の表面が疎水性になるため、表面欠陥が発生してしまう。また、低い研磨レートになり過ぎ、スループットが悪化する虞がある。
【0022】
ただし、上記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0023】
[有機化合物]
上記のとおり、本発明の有機化合物は、下記式(1):
【0024】
【化4】
【0025】
ただし、Aは、電子求引基である、で表される。
【0026】
Aとしては、電子求引性を有する一価の基であれば特に制限されないが、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−CF、−CCl、−CBr、−CN、−COR、−CON(R)、−SOR、−P(=O)(OR)、−COR、−C(O)R、−COSR、などが挙げられ、ここで「R」は、それぞれ独立して、−H、−OH、−CHまたは−Cである。
【0027】
また、電子求引基は、ナトリウム塩や、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩の形態になっていてもよい。
【0028】
Siとの反応性の観点から、−OH、−COR、−SOR、−P(=O)(OR)がより好ましい。
【0029】
また、Aの置換位置にも特に制限はない。ニトロ基から見て、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
【0030】
よって、本発明の好ましい実施形態によると、前記有機化合物は、ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロベンゼンスルホン酸またはニトロフェニルホスホン酸である。かような形態であると、前記有機化合物は、Si含有材料と結合し、Si含有材料の研磨レートをより効果的に制御する技術的効果がある。
【0031】
本発明の研磨用組成物における有機化合物の含有量にも特に制限はないが、溶解性の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましく、0.03質量%以上がよりさらに好ましい。
【0032】
また、一方で、Si表面との反応性の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
[pH調整剤]
本発明の研磨用組成物のpHは、7.5超である。pHが7.5以下であると、Si含有材料の表面が疎水化し、有機物の付着などの表面欠陥が発生する虞がある。また、低い研磨レートになり過ぎ、スループットが悪化する虞がある。
【0034】
本発明の研磨用組成物のpHは、7.5超であればよいが、好ましくは8以上であり、より好ましくは9以上である。このような比較的高いpHの環境では、研磨対象物の溶解が進み、高い研磨速度(本明細書中、「研磨レート」とも称する)を実現できるが、研磨速度が速くなり過ぎる虞がある。特に2000Å/min以上であると、デバイス不良に繋がる虞がある。しかし、本発明の研磨用組成物には、特定の有機化合物が含有されているため、このような高い研磨速度を維持している領域・環境で、研磨速度を抑制することができる利点がある。
【0035】
なお、pHの上限は、特に限定されないが、14未満、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。かような上限とすることで、研磨用組成物の取扱いが容易になる。
【0036】
pH調整剤として使用できる具体例としては、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよいが、アルカリ系(塩基)であることが好ましく、アルカリ金属の水酸化物またはその塩、アルカリ土類金属の水酸化物またはその塩、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0037】
水酸化第四級アンモニウム化合物としては、水酸化第四級アンモニウムまたはその塩を含み、具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0038】
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン等が挙げられる。これらの塩基は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの塩基の中でも、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属塩、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びアミンが好ましい。より好ましくは、アンモニア、カリウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化第四級アンモニウム化合物、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが適用される。また、研磨用組成物には、塩基として、金属汚染防止の観点からカリウム化合物を含むことがさらに好ましい。カリウム化合物としては、カリウムの水酸化物または塩が挙げられ、具体的には水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0040】
また、適宜、酸のpH調整剤を使用してもよく、酸の具体例としては、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等の有機硫酸等の有機酸等が挙げられる。なお、本発明において、酸のpH調整剤を使用する場合は、通常、塩基のpH調整剤と併用して用いられる。
【0041】
[砥粒]
本発明の研磨用組成物は、砥粒を含むことが好ましい。
【0042】
使用される砥粒は、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。該砥粒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該砥粒は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0043】
これら砥粒の中でも、シリカが好ましく、研磨傷の発生を抑制する観点から、特に好ましいのはコロイダルシリカである。
【0044】
砥粒は表面修飾されていてもよい。このような表面修飾砥粒は、例えば、アルミニウム、チタンまたはジルコニウムなどの金属あるいはそれらの酸化物を砥粒と混合して砥粒の表面にドープすることや有機酸を固定化することにより得ることができる。中でも、特に好ましいのは、有機酸を固定化したコロイダルシリカである。研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、例えばコロイダルシリカの表面に有機酸の官能基が化学的に結合することにより行われている。コロイダルシリカと有機酸とを単に共存させただけではコロイダルシリカへの有機酸の固定化は果たされない。有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid−functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246−247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。あるいは、カルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2−Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228−229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2−ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0045】
研磨用組成物中の砥粒は、真球に限られず、ある程度のアスペクト比を有していることが好ましい。かかるアスペクト比の上限は、好ましくは、1.4未満であり、1.3以下であることがより好ましく、1.25以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、砥粒の形状が原因の表面粗さを良好なものとすることができる。また、Si含有材料の研磨レートをより適度に制御することができるとの技術的効果もある。
【0046】
なお、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡による砥粒粒子の画像に外接する最小の長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均であり、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。なお、実施例では、マウンテック社製のMac−viewを用いて求めた。
【0047】
研磨用組成物中の砥粒の平均一次粒子径の下限は、5nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、よりさらに好ましくは20nm以上であり、特に好ましくは25nm以上である。また、砥粒の平均一次粒子径の上限は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、70nm以下がよりさらに好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。
【0048】
このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度をより適度に制御でき、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にディッシングが生じるのをより抑えることができる。
【0049】
なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて算出される。
【0050】
研磨用組成物中の砥粒の平均二次粒子径の下限は、25nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、35nm以上であることがさらに好ましく、40nm以上であることがよりさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましい。また、砥粒の平均二次粒子径の上限は、300nm以下であることが好ましく、260nm以下であることがより好ましく、220nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下がよりさらに好ましく、100nm以下が特に好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度をより適度に制御でき、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じるのをより抑えることができる。
【0051】
なお、ここでいう二次粒子とは、砥粒が研磨用組成物中で会合して形成する粒子をいい、この二次粒子の平均二次粒子径は、例えば動的光散乱法により測定することができる。
【0052】
研磨用組成物中の砥粒における、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において微粒子側から積算粒子重量が全粒子重量の90%に達するときの粒子の直径D90と全粒子の全粒子重量の10%に達するときの粒子の直径D10との比D90/D10の下限は、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.5以上であることがよりさらに好ましい。
【0053】
また、研磨用組成物中の砥粒における、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において微粒子側から積算粒子重量が全粒子重量の90%に達するときの粒子の直径D90と全粒子の全粒子重量の10%に達するときの粒子の直径D10との比D90/D10の上限は特に制限はないが、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.2以下がよりさらに好ましい。
【0054】
このような範囲であれば、研磨対象物の研磨速度をより適度に制御でき、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じるのをより抑えることができる。
【0055】
研磨用組成物中の砥粒の含有量の下限は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることがよりさらに好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。下限がこのようであると、研磨速度が向上する。
【0056】
また、研磨用組成物中の砥粒の含有量の上限は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることがよりさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。上限がこのようであると、研磨用組成物のコストを抑えることができ、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じるのをより抑えることができる。
【0057】
[他の成分]
本発明の研磨用組成物は、必要に応じて、酸化剤、錯化剤、界面活性剤、水溶性高分子、金属防食剤、防カビ剤、防腐剤等の他の成分をさらに含んでもよい。ただし、本発明の有機化合物の範囲に含まれるものであって、以下の機能をも有するものがある場合は、そのものは、上記の有機化合物に分類するものとする。
【0058】
以下、酸化剤、錯化剤、界面活性剤、水溶性高分子、防腐剤および防カビ剤について説明する。
【0059】
(酸化剤)
酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などが挙げられる。これら酸化剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。中でも、過硫酸塩および過酸化水素が好ましく、特に好ましいのは過酸化水素である。
【0060】
研磨用組成物中の酸化剤の含有量(濃度)の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。下限をこのようにすることで、研磨用組成物による研磨速度が向上する利点がある。また、研磨用組成物中の酸化剤の含有量(濃度)の上限は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。上限をこのようにすることで、研磨用組成物の材料コストを抑えることができるのに加え、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる利点を有する。また、酸化剤による研磨対象物表面の過剰な酸化が起こりにくくなる利点も有する。
【0061】
(錯化剤)
錯化剤は、研磨対象物の表面を化学的にエッチングする作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を向上させる。
【0062】
使用可能な錯化剤の例としては、例えば、無機酸またはその塩、有機酸またはその塩、ニトリル化合物、アミノ酸、およびキレート剤等が挙げられる。これら錯化剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該錯化剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0063】
無機酸の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸等が挙げられる。
【0064】
有機酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、安息香酸、サリチル酸等の一価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸:等のカルボン酸が挙げられる。また、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等のスルホン酸も使用可能である。
【0065】
錯化剤として、前記無機酸または前記有機酸の塩を用いてもよい。特に、弱酸と強塩基との塩、強酸と弱塩基との塩、または弱酸と弱塩基との塩を用いた場合には、pHの緩衝作用を期待することができる。このような塩の例としては、例えば、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ピロリン酸カリウム、シュウ酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、(+)−酒石酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等が挙げられる。
【0066】
ニトリル化合物の具体例としては、例えば、アセトニトリル、アミノアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル等が挙げられる。
【0067】
アミノ酸の具体例としては、グリシン、α−アラニン、β−アラニン、N−メチルグリシン、N,N−ジメチルグリシン、2−アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、オルニチン、リシン、タウリン、セリン、トレオニン、ホモセリン、チロシン、ビシン、トリシン、3,5−ジヨード−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アラニン、チロキシン、4−ヒドロキシ−プロリン、システイン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−システイン、4−アミノ酪酸、アスパラギン、グルタミン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ−ヒドロキシ−リシン、クレアチン、ヒスチジン、1−メチル−ヒスチジン、3−メチル−ヒスチジンおよびトリプトファンが挙げられる。
【0068】
キレート剤の具体例としては、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンスルホン酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、無機酸またはその塩、カルボン酸またはその塩、およびニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、研磨対象物に含まれる金属化合物との錯体構造の安定性の観点から、無機酸またはその塩がより好ましい。また、上述した各種の錯化剤として、pH調整機能を有するもの(例えば、各種の酸など)を用いる場合には、当該錯化剤をpH調整剤の少なくとも一部として利用してもよい。
【0070】
研磨用組成物中の錯化剤の含有量(濃度)の下限は、少量でも効果を発揮するため特に限定されるものではないが、0.001g/L以上であることが好ましく、より好ましくは1g/L以上である。このような下限とすることによって、研磨速度を向上させる。また、本発明の研磨用組成物中の錯化剤の含有量(濃度)の上限は、20g/L以下であることが好ましく、より好ましくは15g/L以下であることがさらに好ましい。このような上限とすることによって、溶解を防ぎ、段差解消性を向上させる。
【0071】
(界面活性剤)
研磨用組成物中には界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤は、研磨後の研磨表面に親水性を付与することにより研磨後の洗浄効率を良くし、汚れの付着等を防ぐことが出来る。界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0072】
陰イオン性界面活性剤の具体例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、それらの塩等が含まれる。
【0073】
陽イオン性界面活性剤の具体例には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が含まれる。
【0074】
両性界面活性剤の具体例には、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が含まれる。非イオン性界面活性剤の具体例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が含まれる。これらの界面活性剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
研磨用組成物中の界面活性剤の含有量は、0.0001g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.001g/L以上である。このような下限とすることによって、研磨後の洗浄効率がより向上する。研磨用組成物中の界面活性剤の含有量は、10g/L以下であることが好ましく、より好ましくは1g/L以下である。このような下限とすることによって、研磨面への界面活性剤の残存量が低減され洗浄効率がより向上する。
【0076】
(水溶性高分子)
水溶性高分子の具体例としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリイソプレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸との共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン、及びキトサン塩類が挙げられる。研磨用組成物中に水溶性高分子を加えた場合には、研磨用組成物を用いた研磨した後の研磨対象物の表面粗さがより低減する。これらの水溶性高分子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、0.0001g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.001g/L以上である。このような下限とすることで、研磨用組成物による研磨面の表面粗さがより低減する。研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、10g/L以下であることが好ましく、より好ましくは1g/L以下である。このような上限とすることによって、研磨面への水溶性高分子の残存量が低減され洗浄効率がより向上する。
【0078】
(防腐剤および防カビ剤)
本発明に係る研磨用組成物に添加し得る防腐剤および防カビ剤としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、及びフェノキシエタノール等が挙げられる。これら防腐剤および防カビ剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0079】
[分散媒または溶媒]
本発明の研磨用組成物は、通常、各成分の分散または溶解のための分散媒または溶媒が用いられうる。分散媒または溶媒としては有機溶媒、水が考えられるが、その中でも水を含むことが好ましい。他の成分の作用を阻害するという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後フィルタを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水が好ましい。
【0080】
<研磨用組成物の製造方法>
本発明においては、研磨用組成物の製造方法であって、pH調整剤と、有機化合物とを混合することを有し、前記有機化合物が、下記式(1):
【0081】
【化5】
【0082】
ただし、Aは、電子求引基である、で表され、pHを7.5超とする、研磨用組成物の製造方法も提供される。
【0083】
例えば、上記の研磨用組成物の製造方法は、本発明の研磨用組成物を構成する各成分、および必要に応じて他の成分を、分散媒または溶媒中で攪拌混合することにより得ることができる。
【0084】
各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10〜40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0085】
<研磨対象物>
本発明の研磨用組成物は、Si含有材料を含む層を有する研磨対象物を研磨するのに好適である。Si含有材料としては、例えばシリコン、単体シリコン、シリコン化合物が挙げられる。
【0086】
単体シリコンとしては、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、アモルファスシリコン等が挙げられる。
【0087】
シリコン化合物としては、例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素、シリコン酸化物、炭化ケイ素、シリコン窒化物等が挙げられる。シリコン化合物膜には、比誘電率が3以下の低誘電率膜が含まれる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態においては、シリコン、多結晶シリコン、シリコン酸化物およびシリコン窒化物からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0089】
好ましくは単結晶シリコン、多結晶シリコンである。
【0090】
<研磨方法>
本発明においては、研磨対象物を、上記の研磨用組成物または上記の製造方法によって得た研磨用組成物で研磨する、研磨方法が提供される。
【0091】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0092】
前記研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨用組成物が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0093】
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転速度、キャリア回転数は、それぞれ独立して、10〜500rpmが好ましく、研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.1〜10psiが好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0094】
研磨終了後、基板を流水中で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、Si材料を含む層を有する基板が得られる。
【0095】
なお、本発明の研磨用組成物で研磨する場合の好ましい研磨レートは、好ましくは、1000Å/min以上2000Å/min未満であり、より好ましくは1500〜1980Å/minであり、さらに好ましくは1850〜1950Å/minである。
【実施例】
【0096】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0097】
(研磨用組成物の調製)
研磨用組成物を、下記表1に示す組成で、砥粒、pH調整剤、有機化合物を超純水中で混合することにより調製した(混合温度:約25℃、混合時間:約10分)。研磨用組成物(液温:25℃)のpHは、pHメータ(堀場製作所社製 型番:LAQUA)により確認した。表1中の「−」は未添加であることを示す。
【0098】
(研磨性能評価)
得られた研磨用組成物を用い、シリコン基板を以下の研磨条件で研磨した際の研磨レートを測定した。
【0099】
・研磨条件
研磨機:片面CMP研磨機(ENGIS;日本エンギス株式会社製)
研磨パッド:ポリウレタン製パッド
圧力:3.0psi(20.7kPa)
定盤回転数:60rpm
キャリア回転数:60rpm
研磨用組成物の流量:100ml/min
研磨時間:120sec
研磨レートは、以下の式により計算した。
【0100】
【数1】
【0101】
膜厚は、光干渉式膜厚測定装置(大日本スクリーン製造株式会社(SCREENホールディングス)製 型番:ラムダエース)によって求めて、その差を研磨時間で除することにより評価した。
【0102】
研磨レートの測定結果を下記表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
<考察>
実施例1および2では、研磨用組成物のpHが、7.5超であり、また、特定の有機化合物を含有している。かような構成をしているので、高い研磨レートを維持しながら、かつ、研磨レートを2000Å/min以下に抑えることができている。
【0105】
一方、pHは7.5超であるが、特定の有機化合物を含有しない研磨用組成物を使用した比較例1では、研磨レートが2000Å/min以上となっている。このような高い研磨レートでは、デバイス不良となる虞がある。他方、特定の有機化合物を含有しているが、pHが、7.5以下である研磨用組成物を使用した比較例2では、研磨レートが1000Å/minにも満たない。このような低い研磨レートでは、スループットが悪化する虞がある。
【0106】
なお、本出願は、2014年 9月26日に出願された日本国特許出願第2014−197453号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。