【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例と、比較例とについてそれぞれ説明する。
[実施例1]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。TMInはIn原料であり、TDMASbはSb原料である。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層の膜厚は、蛍光X線分析装置(XRF)による測定(以下、XRF測定)によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から20nmであった。
【0040】
この第1のInSb層上に、表面温度を360℃に保ちながら、InSbの原料としてTMIn、TDMASbを用いて、InとSbとを交互に供給し、第2のInSb層を形成した。この第2のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。TMInの供給量は2.43×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は3秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。TMInとTDMASbとをそれぞれ1回ずつ供給することを、交互供給の1サイクルとしたとき、実施例1ではこの交互供給を180サイクル行った。TMInの供給とTDMASbの供給との切り替え時には、1秒間のインターバルをとった。このようにして形成された化合物半導体層のXRF測定を行い、FP法から算出したInSb層全体の膜厚は55nmであった。
【0041】
[実施例2]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を215回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は49nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2350cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、520arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
【0042】
[実施例3]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は0.40×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は0.40×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を1160サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は58nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2100cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、570arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
【0043】
[実施例4]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は4.05×10
−6mol/回、供給時間は5秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を445サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は138nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、6300cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、495arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0044】
[実施例5]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は11.60×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は5.68×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を392サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は290nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、17000cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、530arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.5nmであった。
【0045】
[実施例6]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を500回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は116nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、5100cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、510arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0046】
[実施例7]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を1650回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は380nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、26500cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、490arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.4nmであった。
【0047】
[実施例8]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、交互供給回数を2520回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は580nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、36000cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、420arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.4nmであった。
【0048】
[実施例9]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、交互供給回数を490回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は98nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、3700cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、530arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
【0049】
[実施例10]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、TMInの供給量は0.81×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした、またTDMASbの供給量は0.82×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を930サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は56nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2200cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、570arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが1.0nmであった。
【0050】
[実施例11]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、TMInの供給量は11.60×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は5.68×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を220サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は77nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2400cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、495arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
【0051】
[実施例12]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を300℃にし、TMInの供給量は8.10×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は4.16×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を382サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は111nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、3700cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、550arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.7nmであった。
【0052】
[実施例13]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を260℃にし、交互供給回数を1080回にした以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定から、InSb層全体の膜厚は54nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2400cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、500arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.8nmであった。
【0053】
[比較例1]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が20nmであった。
【0054】
この第1のInSb層上に、表面温度を400℃に保ちながら、InSbの原料としてTMIn、TDMASbを用いて、InとSbとを交互に供給し、第2のInSb層を形成した。この第2のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。TMInの供給量は2.43×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は3秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を166サイクル行った。InとSbの切り替え時には1秒間のインターバルをとった。このようにして形成された化合物半導体層のXRF測定を行い、FP法から算出したInSb層全体の膜厚は70nmであった。
試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、1330cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、850arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが3.4nmであった。
【0055】
[比較例2]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を240℃にし、交互供給回数を1200回にした以外は比較例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。XRF測定を実施したが、InSbの膜厚は測定できず、膜が成長しなかった。
[比較例3]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は7.41×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は40秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を150サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが20.5nmであった。
【0056】
[比較例4]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は11.6×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は2秒とした。この交互供給を180サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが50.4nmであった。
【0057】
[比較例5]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は13.00×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は3秒とした、またTDMASbの供給量は2.95×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を230サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが34.3nmであった。
【0058】
[比較例6]
第2のInSb層を形成する際に表面温度を340℃にし、TMInの供給量は2.43×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は10秒とした、またTDMASbの供給量は9.00×10
−6mol/回、1回あたりの供給時間は1秒とした。この交互供給を215サイクル行った以外は実施例1と同様の方法で化合物半導体基板を作製した。このようにして形成された試料は完全に白濁しており、各種測定の実施が困難であった。AFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが44.1nmであった。
【0059】
[比較例7]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が125nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、8400cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、940arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが8.5nmであった。
【0060】
[比較例8]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が232nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、11600cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、730arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが6.9nmであった。
【0061】
[比較例9]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が318nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、18500cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.3の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ640arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが6.5nmであった。
【0062】
[比較例10]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を340℃に保ちながらInSbの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)、トリスジメチルアミノアンチモン(TDMASb)を用いて、第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が20nmであった。
【0063】
この第1のInSb層上に、表面温度を500℃に保ちながら、InSbの原料として、TMIn、TDMASbを用いて第2のInSb層を形成した。この第2のInSb層の形成には、MOCVD装置を用いた。このようにして形成された化合物半導体層のXRF測定を行い、FP法から算出したInSb層全体の膜厚は121nmであった。試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、5000cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=2.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ、410arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.4nmであった。
【0064】
[比較例11]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が34nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、1200cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.2の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ1500arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0065】
[比較例12]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が58nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、2100cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ1300arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.5nmであった。
【0066】
[比較例13]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が115nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、4700cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.1の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ1040arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0067】
[比較例14]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が234nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、12350cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ840arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0068】
[比較例15]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が466nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、29600cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ590arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0069】
[比較例16]
4インチの半絶縁GaAs基板を用意した。この半絶縁GaAs基板の電気抵抗率は8×10
7Ωcmである。この半絶縁GaAs基板上に、表面温度を350℃に保ちながら第1のInSb層を形成した。この第1のInSb層の形成には、MBE装置を用いた。この第1のInSb層は、XRF測定によるファンダメンタルパラメーター法(FP法)から膜厚が702nmであった。このようにして形成された試料に対してVan der Pauw法によるホール測定を行った結果、41150cm
2/Vsの電子移動度、V1/V2=1.0の面内異方性が得られた。同様にX線回折測定を行い、結晶性を算出したところ440arcsecが得られた。またAFMによる表面測定を行った結果、表面二乗粗さが0.6nmであった。
【0070】
[結果]
表1に、実施例1〜13におけるInSb膜の成膜条件と、測定された物性値を示す。
【表1】
【0071】
表2に、比較例1〜16におけるInSb膜の成膜条件と、測定された物性値を示す。なお、表2の比較例7〜16における空欄は、InSb層の成膜条件が比較例1と異なることにより、該当する数値がないことを意味する。
【表2】
【0072】
図5は、実施例1〜13及び比較例1〜16における、InSb層の膜厚と結晶性(FWHM)との関係を示す図である。
図5の横軸は、InSb層の膜厚を示し、縦軸は結晶性(FWHM)を示す。ここで、InSb層の膜厚とは、InSb層として第1のInSb層と第2のInSb層とを形成した場合はその総厚を意味し、InSb層として第1のInSb層を形成しかつ第2のInSb層を形成しなかった場合(すなわち、単膜の場合)は、第1のInSb層の厚さを意味する。
図5からわかるように、実施例1〜13におけるInSb層の膜厚と結晶性(FWHM)との関係は、上述の式(1)を満たしている。
【0073】
<その他の実施形態>
本発明は、以上に記載した実施形態と実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて実施形態と実施例に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様も本発明に含まれる。