(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557588
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ドライエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-237091(P2015-237091)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-103403(P2017-103403A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】桑原 謙一
(72)【発明者】
【氏名】榎田 修治
【審査官】
鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−092376(JP,A)
【文献】
特開2011−238935(JP,A)
【文献】
特開2015−023157(JP,A)
【文献】
特開2005−347585(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0056817(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料台に載置された試料に成膜された被エッチング膜をマスクを用いて所定の深さまでプラズマエッチングするドライエッチング方法において、
反応性ガスを用いて前記被エッチング膜をプラズマエッチングすることにより前記被エッチング膜のエッチング形状を裾引き形状とする第一の工程と、
前記第一の工程後、前記第一の工程にてエッチングされた被エッチング膜を不活性ガスのみを用いてスパッタエッチングする第二の工程とを有し、
前記所定の深さに到達するまで前記第一の工程と前記第二の工程を繰り返し、
前記第二の工程の前記試料台に供給する高周波バイアス電力を前記第一の工程の前記試料台に供給する高周波バイアス電力より高くし、
前記被エッチング膜は、シリコン基板、ポリシリコン膜、シリコンゲルマニウム膜(SiGe)、アモルファスシリコン膜、タングステンシリサイド膜(WSi)、酸化シリコン膜(SiO2)、窒化シリコン膜(SiN)、炭化シリコン膜(SiC)または炭素添加酸化シリコン膜(SiOC)であることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項2】
試料台に載置された試料に成膜された被エッチング膜をマスクを用いて所定の深さまでプラズマエッチングするドライエッチング方法において、
反応性ガスを用いて前記被エッチング膜をプラズマエッチングすることにより前記被エッチング膜のエッチング形状を裾引き形状とする第一の工程と、
前記第一の工程後、前記第一の工程にてエッチングされた被エッチング膜を不活性ガスのみを用いてスパッタエッチングする第二の工程とを有し、
前記所定の深さに到達するまで前記第一の工程と前記第二の工程を繰り返し、
前記第一の工程の時間は、前記マスクのパターン間のスペース幅を半分にした値を前記第一の工程のエッチング速度により除した値以下の時間であり、
前記被エッチング膜は、シリコン基板、ポリシリコン膜、シリコンゲルマニウム膜(SiGe)、アモルファスシリコン膜、タングステンシリサイド膜(WSi)、酸化シリコン膜(SiO2)、窒化シリコン膜(SiN)、炭化シリコン膜(SiC)または炭素添加酸化シリコン膜(SiOC)であることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のドライエッチング方法において、
前記不活性ガスは、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、N2ガスの中の少なくともいずれか一つのガスであることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項4】
請求項2に記載のドライエッチング方法において、
前記第二の工程の前記試料台に供給する高周波バイアス電力を前記第一の工程の前記試料台に供給する高周波バイアス電力より高くすることを特徴とするドライエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に被エッチング材料のプラズマエッチング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では半導体デバイスの高集積化、高速化を達成させるため、マスク形成方法においてもSelf Align Double Patterning(SADP)やSelf−Aligned Quadruple Patterning(SAQP)などの技術を用いたパターンの縮小化が加速度的に進んでいる。また、トランジスタの構造は従来のPlanar型から3D構造であるFin Field Effect Transistor(Fin FET、以下、Fin FETと称する)構造へと複雑な構造へと変化している。
【0003】
そのため、デバイスの世代が進む度に高アスペクト化が進み、より高度なエッチング技術が要求されるようになって来ている。特にFin FETゲートを形成するシリコンのトレンチのエッチング工程や、Fin FETゲートを跨いで形成するPoly−Siのダミーゲート配線エッチング工程では、高アスペクト構造のため垂直エッチングを達成することが難しい。
【0004】
高アスペクト構造の狭いパターン間には、化学反応を起こすエッチャントが入り難く、エッチングが進み難いためテーパ形状、あるいは裾引き形状となり、エッチングストップを引き起こす問題が発生する。そのため、例えば、プロセスガス流量を増やしたり、より揮発性の高い反応を起こすガスとして少量のフッ素含有ガス等を添加してエッチングが止まらないようにエッチング条件を調整する。
【0005】
しかしながら、狭いパターン間では、同時に反応性生物量も少ないため、反応性生物の付着によって十分な側壁保護膜を形成できない。このため、エッチングが進むにつれてマスク直下の部分にサイドエッチ形状が発生する。この対策として、例えば、特許文献1に示すようにエッチングの途中に酸素プラズマのステップを挿入して側壁を保護とエッチングを繰り返してエッチングする方法が考案されている。
【0006】
または、ウェハに印加するRFバイアスを高くしてイオンスパッタ作用を強める事により、狭いパターン間のエッチングの進行を促し、反応生成物を増やす事で側壁を保護する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−65214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法では、エッチングにより加工された底面角部の裾引き形状を維持したまま次の酸素ステップへ移行し、エッチング表面を酸化させて固めてしまうため、これを繰り返すことにより、エッチング側壁がスカロップ形状と呼ばれる段々形状となる問題がある。
【0009】
また、RFバイアスの出力を増加させて側壁保護膜を形成する方法の場合、スパッタ効果によりマスクとの選択性が低下し、マスクの肩落ちが発生しやすくなる問題がある。
【0010】
これらの問題を鑑みて本発明は、マスク選択比を維持しながら垂直形状にプラズマエッチングするドライエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、試料台に載置された試料に成膜された被エッチング膜をマスクを用いて所定の深さまでプラズマエッチングするドライエッチング方法において、反応性ガスを用いて前記被エッチング膜をプラズマエッチングすることにより前記被エッチング膜のエッチング形状を裾引き形状とする第一の工程と、前記第一の工程後、前記第一の工程にてエッチングされた被エッチング膜を不活性ガスのみを用いてスパッタエッチングする第二の工程とを有し、前記所定の深さに到達するまで前記第一の工程と前記第二の工程を繰り返し、前記第二の工程の前記試料台に供給する高周波バイアス電力を前記第一の工程の前記試料台に供給する高周波バイアス電力より高く
し、前記被エッチング膜は、シリコン基板、ポリシリコン膜、シリコンゲルマニウム膜(SiGe)、アモルファスシリコン膜、タングステンシリサイド膜(WSi)、酸化シリコン膜(SiO2)、窒化シリコン膜(SiN)、炭化シリコン膜(SiC)または炭素添加酸化シリコン膜(SiOC)であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、試料台に載置された試料に成膜された被エッチング膜をマスクを用いて所定の深さまでプラズマエッチングするドライエッチング方法において、反応性ガスを用いて前記被エッチング膜をプラズマエッチングすることにより前記被エッチング膜のエッチング形状を裾引き形状とする第一の工程と、前記第一の工程後、前記第一の工程にてエッチングされた被エッチング膜を不活性ガスのみを用いてスパッタエッチングする第二の工程とを有し、前記所定の深さに到達するまで前記第一の工程と前記第二の工程を繰り返し、前記第一の工程の時間は、前記マスクのパターン間のスペース幅を半分にした値を前記第一の工程のエッチング速度により除した値以下の時間であ
り、前記被エッチング膜は、シリコン基板、ポリシリコン膜、シリコンゲルマニウム膜(SiGe)、アモルファスシリコン膜、タングステンシリサイド膜(WSi)、酸化シリコン膜(SiO2)、窒化シリコン膜(SiN)、炭化シリコン膜(SiC)または炭素添加酸化シリコン膜(SiOC)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、マスク選択比を維持しながら垂直形状にプラズマエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のドライエッチング方法におけるエッチングフローを示す図である。
【
図2】シリコンエッチングにおけるイオンエッチングの原理図である。
【
図3】シリコンエッチングにおける化学的エッチングの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる実施の形態を図面を用いて説明する。本実施例は、従来の電子サイクロトロン共鳴を利用してエッチングを行うElectron Cyclotron Resonance(ECR)エッチング装置を用いて実施したものである。
【0016】
図1(a)は、本実施例に係る半導体素子の断面図である。半導体シリコン基板101上に薄いSiO
2膜102を形成し、ハードマスクとしてSiN膜103を形成する。SiO
2膜102とSiN膜103は適切なプロセス処理により、予めパターン間のスペース幅が40nmのデバイスパターンが転写されており、エッチング深さの目標としては200nmとする。
【0017】
先ず始めに第一の工程である反応性イオンアシストエッチステップの条件として、例えば、マイクロ波電力を600W、RFバイアス電力を40Wとし、エッチングガスは20ml/minのCl
2ガスと5ml/minのO
2ガスと60ml/minのHBrガスとの混合ガスを使用し、処理室内圧力を0.4Paに保ちウェハ温度は40℃を維持した条件とする。
【0018】
また、予めこの条件のエッチング速度を測定しておき、この条件においては、1.0nm/秒のエッチング速度である事を確認した。本実施例では、この条件にて20秒、エッチング処理を行い、20nm程エッチングした。この時のエッチング形状は、
図1(b)に示すように反応性イオンアシストエッチングによる加工のため、エッチング底面の角部に裾引き形状が発生する。
【0019】
次に被エッチング膜と化学反応を起こさない不活性ガスのプラズマに高いRFバイアスを印加した第二の工程であるイオンスパッタエッチステップの処理を行った。このエッチング条件は、例えば、マイクロ波電力を600W、RFバイアスは100Wとし、不活性ガスとして100ml/minのArガスを使用し、処理室内圧力を0.4Paに保ちウェハ温度は40℃を維持して10秒間の処理を行った。
【0020】
このイオンスパッタエッチステップの処理により、
図1(c)で示すようにイオンスパッタステップによりエッチング底面の角部にイオンによるスパッタが集中し、
図1(b)で発生した裾形状部分だけを選択的にエッチングされて裾形状を除去することができる。
【0021】
この時のエッチング底面の角部にスパッタが集中する理由としては、
図2に示すようにシリコン基板101の側壁をガイドとしてイオンがエッチング底面に導かれることにより、パターン側壁底面の角部分にイオンスパッタのエネルギーが集中するためであると考えられる。この現象により、底面の角部分に形成された裾引き形状にイオンスパッタ効果が集中し、高いエネルギーを集めるため、局部的にエッチングが進行して全体の深さは変わらずに裾引き形状だけが除去されるものと考えられる。
【0022】
また、裾部分のスパッタエッチングには、不活性ガスのプラズマであるため、化学反応によるエッチングが行われないことから高いイオンスパッタエネルギーを必要とする。イオンスパッタステップのRFバイアスの設定は、下記に示す理由により決定される。
【0023】
一般的に反応性イオンアシストエッチングで裾形状を除去するためには、RFバイアスを増加させてイオンスパッタ効果を向上させる方法が考えられるが、その場合、化学反応も伴うため、マスクの選択比が低下したり、化学反応により生成された反応生成物によって側壁がテーパ形状となる問題が発生する。
【0024】
一方、本発明では、反応性ガスは使わずに不活性ガスによりイオンスパッタを行なうことによってマスク選択比の低下や反応生成物による問題が発生し難い。このため、反応性イオンスパッタエッチステップよりも高いRFバイアスを印加する事ができる。すなわち、イオンスパッタエッチステップのRFバイアスは、第一の工程である反応性イオンアシストエッチステップよりも高いRFバイアスを印加することができるため裾形状を効率よく除去することができると考えられる。
【0025】
引続き、
図1(b)の反応性イオンアシストエッチステップと
図1(c)による不活性ガスのみのプラズマによるイオンスパッタエッチステップを合計10回、繰り返して
図1(d)に示すように目標の深さである200nmまでエッチング処理を行った。このように1サイクル毎に裾形状を除去しながらエッチングを進める事ができ、最終形状は裾形状のない垂直エッチングを達成することができた。
【0026】
本発明のイオンスパッタエッチステップの実施タイミングとしては、反応性イオンアシストエッチステップで形成される裾引き形状が小さい段階で実施する必要がある。裾引き形状は、通常、化学反応によりエッチングが等方性に進む事により発生する。そのため、
図3に示すようなパターンがある場合、エッチャントがエッチング面に到達する時にはパターン側壁がガイドとなるため、ある程度方向性が揃った状態となる。
【0027】
また、側壁で反射しながら底面に到達するため、底面での到達確率は中央部が高くなり、必然的に底面中央部のエッチングが選択的に進行するため、パターン幅を直径とした半円状の形状を形成する。そのため、裾引き形状が最大となる場合のエッチ量は、パターン間の寸法の半分の深さに到達した量となる。つまり、裾引き形状が最大となるエッチング時間は、下記の(1)式で求められる。
【0028】
(数1)
T=(W/2)/S (1)
T=エッチング時間(秒)
W=パターン間のスペース幅(nm)
S=エッチング速度(nm/秒)
(1)式より本実施例では、パターン間のスペース幅が40nm、エッチング速度が1.0nm/秒であったことから、反応性イオンアシストエッチステップの処理時間を20秒と設定した。よって、より裾引き形状を効率よく除去するためには、(1)式で求められる処理時間以下の時間によりイオンアシストエッチステップを挿入する必要がある。言い換えると、反応性イオンアシストエッチステップの処理時間は、(1)式で求められる時間以下の時間とすれば良い。
【0029】
本発明は、反応性イオンアシストエッチステップのエッチング速度から、パターン間のスペース幅の半分以下の量をエッチングする時間を算出し、算出された時間のエッチング処理する毎に不活性ガスのみによるプラズマを用いて、反応性イオンアシストエッチステップよりも高いRFバイアスを印加したイオンスパッタエッチ条件で処理し、反応性イオンアシストエッチステップとイオンスパッタエッチを繰り返して規定のエッチング量まで加工することによってマスク選択比を高く保ちながら、裾引き形状の無い、垂直エッチング加工を達成することができる。
【0030】
また、マスク選択比を維持しながら垂直形状を得るためには、本発明は、必ずしも反応性イオンアシストエッチステップとイオンスパッタエッチステップを繰り返す必要はない。つまり、本発明は、反応性イオンアシストエッチステップとイオンスパッタエッチステップをそれぞれ少なくとも1回ずつ行うことにより、マスク選択比を維持しながら垂直形状を得ることができる。
【0031】
本実施例では、反応性イオンアシストエッチ条件で裾引き形状が最大となる深さからエッチング時間を算出したが、この最大深さになる時間以下で
図1(c)の処理を実施することによって、より小さな裾形状の段階でイオンスパッタによる垂直化が行なえるため、垂直化の効果が高くなる。
【0032】
本実施例では、不活性ガスによるプラズマ処理で100WのRFバイアスを使用したが、不活性ガスによるイオンスパッタエッチステップのRFバイアスは、反応性イオンアシストエッチステップよりも高いRFバイアスを印加した場合でも本実施例と同様の効果が得られる。
【0033】
また、本実施例でのエッチング条件は、シリコン基板101をエッチングするためのエッチング条件の一例であり、本発明に係るエッチング条件は、本実施例でのエッチング条件に限定されるものではない。
【0034】
また、本実施例では、シリコン基板のエッチングを例に示したが、ダミーゲートで使用されるポリシリコンのエッチング工程や、その他のシリコン元素を含有する材料のエッチング工程及びSiGe、アモルファスシリコン、WSi、SiO
2、SiN、SiC、SiOCなどのシリコン元素を含有する材料を含んだ材料のエッチング工程でも本実施例と同様の効果が得られる。
【0035】
さらに本実施例では、
図1(c)の処理において、不活性ガスとしてArガスを使用したが、この他にHeガス、Neガス、Krガス、Xeガス、N
2ガス、または、これらのうち2種類以上を混合した混合ガスを使用しても良い。また、本実施例においてシリコン基板のマスクにはSiN膜によるハードマスクを用いたが、SiO
2膜、レジストマスクまたは他のマスク構造を用いても本発明は適用可能である。
【0036】
また、本実施例ではプラズマ源にマイクロ波ECRプラズマを用いたが、誘導結合型プラズマ、容量結合型プラズマ、ヘリコン波プラズマ等のプラズマ源を使ったエッチングにおいても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
101 シリコン基板
102 SiO
2膜
103 SiN膜