(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プラズマを用いて被エッチング膜がエッチングされる処理室と、前記プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記プラズマの発光をモニタするモニタ部とを備えるプラズマ処理装置において、
前記被エッチング膜のプラズマエッチングにより堆積した堆積膜をプラズマにより除去する時に取得された発光強度と、前記被エッチング膜のエッチング量と前記発光強度との相関関係と、に基づいて前記プラズマエッチング時のエッチング量が推定される演算部とをさらに備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したエッチングストッパ膜を用いないエッチングの場合の経時変化において、処理室内壁への反応生成物の堆積量に応じてエッチング深さが変動する現象が発生することがある。このような現象のエッチングの状態について
図7を用いて説明する。
【0007】
図7(a)は、エッチング深さが深くエッチングされる場合のウェハの断面形状を示している。また、
図7(b)は、エッチング深さが浅くエッチングされる場合のウェハの断面形状を示している。このような膜構造のエッチングを実施する場合、エッチング対象膜72の下に下地膜(エッチング対象膜72のストッパ膜)が存在しないため、プラズマの発光を用いた終点判定を実施することは困難である。そのため、エッチング対象膜72のエッチング処理は、予め求められた時間で処理を行なう。このようなエッチング処理では、処理室の内壁の温度、消耗度合、付着物の種類、付着物の量等の状態によって、エッチング深さが変動してしまう可能性がある。
【0008】
このような状態は、例えば、マスク膜71が窒化シリコン膜(Si
3N
4)等、エッチング対象膜72がシリコン酸化膜(SiO
2)等という膜構造において、エッチング対象膜72をフルオロカーボンガス(CF4ガス等)を用いてエッチング処理を実施する場合や、フッ素含有ガス(SF
6ガス、NF
3ガス等)にハイドロカーボン系のガス(CH
4ガス等)を添加したガス系にてエッチング処理を実施する場合に発生する。エッチング対象膜72(SiO
2)は、フッ素含有ガスと反応してSiF
4が生成されてエッチングが進行する。
【0009】
但し、前述のような膜構造とガス系では、
図7に示すようにエッチング対象膜72をエッチング処理した後、ウェハ上にカーボン系の付着物73が付着する。その後、酸素系のガス(O
2等)を含むガス系で付着物73を除去し、エッチング処理が終了する。この付着膜73は、処理室の内壁にも同時に堆積する。処理室の内壁に付着物73が多く堆積した場合、ウェハに堆積する付着膜73の量は少なくなり、逆に処理室の内壁への堆積量が少ない場合は、ウェハに堆積する付着物73の量は多くなる。このように、付着物73がウェハ上に堆積する厚さは、処理室の内壁の状態によって時々刻々変化する。
【0010】
ウェハ上に堆積する付着物73は、エッチング対象膜73のエッチング反応を阻害する働きを持つ。そのため、
図7(a)に示すように付着物73の堆積量が少ない場合は、エッチング対象膜72の深さが深くなり、
図7(b)に示すように付着物73の堆積量が多い場合にはエッチング対象膜72の深さが浅くなる。
図8は、プラズマエッチング装置が
図7に示す半導体ウェハを処理した際のエッチング深さの変動を表すグラフである。
図8に示すようにウェハの処理枚数を重ねるごとにエッチング深さが変動してしまう。
【0011】
しかし、従来技術は、試料毎のエッチング深さの安定化の点について十分に配慮されていなかった。すなわち、複数枚の試料処理において、試料毎のエッチング深さがばらつく場合、情報センサからどのような検出データを取得し、処理条件を補正すれば良いか示唆されていない。また、従来技術は、ロット処理前のロット前安定化処理のデータを用いているため、1枚毎の試料におけるエッチング深さの条件を求めるデータとしては適さない。
【0012】
また、特許文献1に開示された従来技術は、エッチング処理の安定化の点について配慮されていなかった。すなわち、エッチング時間を変更してエッチング深さのバラツキを低減しているが、言い換えるとエッチング状態が変化していることとなる。このため、エッチング処理の安定化は不十分と考えられる。
【0013】
このため、本発明は、所定の深さを形成するエッチング処理を複数枚試料に対して安定に行うと共にエッチング深さのバラツキを抑制することができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、プラズマを用いて被エッチング膜がエッチングされる処理室と、前記プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記プラズマの発光をモニタするモニタ部とを備えるプラズマ処理装置において、前記被エッチング膜のプラズマエッチングにより堆積した堆積膜をプラズマにより除去する時に取得された発光強度と、前記被エッチング膜のエッチング量と前記発光強度との相関関係と、に基づいて前記プラズマエッチング時のエッチング量が推定される演算部とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、プラズマを用いて被エッチング膜をエッチングするプラズマ処理方法において、前記被エッチング膜のプラズマエッチングにより堆積した堆積膜をプラズマにより除去する時に発光強度をモニタし、前記モニタされた発光強度と、前記被エッチング膜のエッチング量と前記発光強度との相関関係と、に基づいて前記プラズマエッチング時のエッチング量を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、所定の深さを形成するエッチング処理を複数枚試料に対して安定に行うと共にエッチング深さのバラツキを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、後述する
図4に示すような、エッチングステップを繰り返しながら行われるサイクルエッチングにおいて、前記サイクルエッチングの各サイクルエッチング中に堆積した堆積膜を除去する際の発光強度を用いて推定されたエッチング深さに基づいてサイクルエッチング処理を終了することによってエッチング深さのばらつきを抑制するプラズマ処理装置に関するものである。以下、この一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係るプラズマエッチング装置1の構成の概略を説明する模式図である。本実施例のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理が行われる処理室2と、この処理室2内に供給される処理ガスの供給量及び速度を調節するマスフローコントローラ3と、処理室2に供給された処理ガスを励起してプラズマを生成するための高周波電力を供給するプラズマ生成用高周波電源4と、処理室2内のガスを排気する真空ポンプを含む排気装置5とを備える。また、処理室2内のプラズマが生成される空間の下方には処理対象の試料であるウェハ6がその上面に載せられて保持される試料台7が配置されている。
【0020】
エッチング処理に使用される処理ガスは、マスフローコントローラ3を介して処理室2内に供給される。さらに処理室2上方に配置された導波管等の伝播手段によって処理室上方から導入され、プラズマ発生用高周波電源4により供給された所定の周波数(例えば2.45GHz)の高周波電力と処理室2の上方及び側方の外周で処理室2を囲んで配置された磁場形成手段16から処理室2内に形成された磁場との相互作用により、ガスの粒子が励起されプラズマ8が生成される。
【0021】
試料台7内部に配置された導電体製の電極に接続されたバイアス用高周波電源9から供給される高周波電力により試料台7またはこれの上面の載置面上に保持されたウェハ6の上面上方にバイアス電界が形成される。この形成されたバイアス電界によりプラズマ8内の荷電粒子(イオン)は誘引され、ウェハ6表面に予め形成されて配置されている薄膜と衝突する。これによりウェハ6の表面が活性化されプラズマ8中の反応性粒子と膜を構成する材料との化学的、物理的相互作用が促進されて対象膜のエッチング処理が進行する。
【0022】
尚、処理室2内の圧力は、圧力計10からの測定値を基準値と比較し、前記比較した結果をもとに可変コンダクタンスバルブ11の回転角度の位置を調整して排気量速度を調整することによって処理に適切な圧力に保持される。また、可変コンダクタンスバルブ11は、水平方向に配置された軸周りに回転して処理室2内と排気装置5との間を連通する通路の開口の面積を可変に調節する複数枚の板を備えるバルブのことである。
【0023】
プラズマ処理中に生成されるプラズマ8の発光は、処理室2の側壁の壁部材に配置された透光性部材によって構成された観察窓12を介してモニタである受光器13により観測されてその強度が検出される。受光器13によって検出されたプラズマ8の発光強度に関する信号は、これと通信可能に配置された演算部14に送信され、演算部14において受信した信号から所定の量を算出または検出する。演算部14では、検出したプラズマ8の発光強度を使用してエッチング処理を継続するか否かを判定し、また、次のエッチング時間を演算して前記判定結果および演算結果を制御部15へ送信する。
【0024】
制御部15は、プラズマ処理装置1の上記のマスフローコントローラ3、排気装置5、プラズマ生成用高周波電源4、磁場形成手段16、バイアス用高周波電源9、圧力計10、可変コンダクタンスバルブ11の回転駆動装置等と通信手段を介して接続され、これらから送信される信号を受信し、必要な動作を指令する信号をこれらに発信してその動作を制御する装置である。
【0025】
本実施例での制御部15は、
図4に示すようにマスク膜71をマスクとして下方に配置されたエッチング対象膜72をエッチングし、エッチング対象膜72が所定の深さとなるまでエッチング処理を行なう場合のプラズマ処理に係る制御を行う。より具体的には、制御部15は、エッチングステップと付着物除去ステップを1つのサイクルとして、1枚のウェハ6を数サイクルで処理し、サイクル毎にエッチング深さを推定し、プラズマ処理条件を変更することによりエッチング深さの変動を抑制させる制御を行う。次に演算部14の構成について説明する。
【0026】
図2は、演算部14の構成を説明する模式図である。本実施例において、所定のサンプリング時間毎に受光器13より演算部14内の発光強度面積演算部21にプラズマ8の発光強度に関する信号が送られる。発光強度面積演算部21では、受光器13より送られた発光強度の値に基づいて堆積膜である付着物73を除去するエッチングステップにおいて、付着物73の除去を表わす波長のトレンド(CO(298nm)とAr(419nm)の比等)を抽出し、その際の発光強度面積53を演算する。演算された発光強度面積53は、発光強度面積積算部22へ送られる。尚、発光強度面積53は、後述する
図4に示された発光強度面積53のことである。
【0027】
発光強度面積積算部22では、発光強度面積演算部21より送られた発光強度面積53の値と、後述する発光強度面積保持部23より送られた発光強度面積積算値を基に当該ウェハ6処理中に演算された発光強度面積53の値を積算する。積算された発光強度面積積算値は、発光強度面積保持部23と、エッチング深さ推定値演算部24へ送られる。
【0028】
発光強度面積保持部23では、発光強度面積積算部22から送られた発光強度面積積算値を保持する。保持された発光強度面積積算値は、発光強度面積積算部22へ送られ、次のエッチングサイクルにおける発光強度面積積算値の演算に利用される。また、エッチング処理開始時に発光強度面積保持部23内の値は初期化される。
【0029】
エッチング深さ推定値演算部24は、発光強度面積積算部22から送られた発光強度面積積算値と、発光強度面積―エッチング深さデータベース29に格納された情報を用いて、エッチング深さ推定値を算出し、算出したエッチング深さ推定値をエッチング深さ推定値保持部25へ送信する。尚、発光強度面積―エッチング深さデータベース29には、発光強度面積とエッチング深さとの相関関係データが格納されている。次に発光強度面積―エッチング深さデータベース29について具体的に説明する。
【0031】
表1に示す発光強度面積―エッチング深さデータベース29は、少なくともレシピNo.、ウェハ製品情報、発光強度面積、エッチング深さの4項目から成る。各レシピNo.に複数のウェハ製品情報が関連付けられている。尚、ここでの発光強度面積は、各エッチングサイクル毎に積算された積算値としての発光強度面積である。また、各ウェハ製品情報に複数の発光強度面積とエッチング深さが関連付けられている。
【0032】
各ウェハ製品情報の発光強度面積とエッチング深さには、
図6に示す発光強度面積とエッチング深さの値を格納する。これらの値は、予め実験等で取得しておく必要がある。これらの値をウェハ製品毎に格納することにより、各ウェハ製品の発光強度面積とエッチング深さの関係が明らかになり、受光部13で取得した発光強度の値からエッチング深さの推定値を演算することが可能となる。
【0033】
また、この発光強度面積とエッチング深さの値を直接、発光強度面積―エッチング深さデータベース29へ格納しても良いが、発光強度面積やエッチング深さの値には測定誤差が含まれる可能性があるため、ノイズ除去を目的としてエッチング深さと発光強度面積との相関グラフ(
図6)に対して近似式の直線61または曲線を算出し、この近似式の直線61または曲線における発光強度面積とエッチング深さの値を格納しても良い。
【0035】
表2に示すエッチング深さ目標値データベース30は、少なくともレシピNo.、ウェハ製品情報、エッチング深さ目標値から成る。また、目的に応じてエッチング深さ目標下限値、エッチング深さ目標上限値を追加しても良い。各レシピNo.に複数のウェハ製品情報が関連付けられている。また、各ウェハ製品情報に少なくとも1つのエッチング深さ目標値が関連付けられており、各製品デバイス用のウェハ6に対して最適なエッチング深さをエッチング深さ目標値に対応付けて格納する。
【0036】
これらにより、エッチング深さ推定値とエッチング深さ目標値の比較が可能となり、エッチングサイクルの継続可否の判定や、次サイクルのエッチング時間を演算することが可能となる。また、エッチング深さ目標下限値、エッチング深さ目標上限値に基づいてエッチングサイクルの継続可否の判定を実施したり、エッチング深さ推定値が上限値、下限値を超えた場合にエラーを発生させる機能を追加しても良い。
【0037】
エッチング深さ推定値保持部25では、エッチング深さ推定値演算部24より送られたエッチング深さ推定値を当該ウェハ6処理中の間、保持する。1枚のウェハ6の処理中には、複数回のエッチング深さ推定値が演算され、その1枚のウェハ6処理中の複数のエッチング深さ推定値を保持する。保持したエッチング深さ推定値をサイクル継続判定部26と次サイクルのエッチング深さ予測値演算部27へ送信する。
【0038】
サイクル継続判定部26では、エッチング深さ推定値保持部25より送られた複数のエッチング深さ推定値と、エッチング深さ目標値データベース30に格納された情報を用いてエッチングサイクル(エッチングステップと付着物除去ステップ)を継続するか否かを判定し、判定結果を制御部15へ送信する。サイクル継続判定部26がサイクル継続と判定した場合、制御部15は、エッチングサイクルを継続する。また、サイクル継続判定部26がサイクル停止と判定した場合、制御部15はエッチング処理を終了する。
【0039】
次サイクルのエッチング深さ予測値演算部27では、エッチング深さ推定値保持部25より送られた複数のエッチング深さ推定値に対し、一次の近似式や対数の近似式を適用して次のサイクルでのエッチング深さを予測する。予測した次のサイクルでのエッチング深さを次サイクルのエッチング時間演算部28へ送信する。
【0040】
次サイクルのエッチング時間演算部28では、次サイクルのエッチング深さ予測値演算部27から送られた次のサイクルでのエッチング深さ予測値と、エッチング深さ目標値データベース30に格納された情報を用いて次のサイクルでのエッチング時間を演算し、演算したエッチング時間を制御部15へ送信する。制御部15では、送信されたエッチング時間に基づいて次のエッチングサイクルのエッチング時間を求める。次に本発明に係るプラズマ処理について
図3に示すフローチャートを用いながら説明する。
【0041】
図3は、ステップ1からステップ7の7ステップの処理で構成されている。ステップ1からステップ7、ステップ1からステップ6、またはステップ1からステップ5を1つのエッチングサイクルと呼ぶ。1枚のウェハ6を複数回のエッチングサイクルを用いてエッチング処理を実行する。以下に
図3のフローチャートを用いて1回目のエッチングサイクルの処理の流れを説明する。
【0042】
ウェハ6が搬送用のロボット(図示せず)により搬送されて試料台7の上に載せられた後、試料台7に保持される。この後、処理室2内が気密に封止されてマスフローコントローラ3より処理用ガスが供給される。そして処理室2内にプラズマが生成されてウェハ6上の
図7に示す膜構造を対象としてエッチング処理が開始される。エッチング処理の開始後、ステップ1において、制御部15から指令と情報が発信され、エッチング対象膜72を対象とした所定の処理条件を用いてエッチング処理が開始される。エッチング処理は、所定の時間だけ継続された後、終了する。
図4の(a−1)は、ステップ1が終了した後のウェハ6の断面膜構造を示した図である。エッチング対象膜72がエッチングされ、付着物73がマスク膜71およびエッチング対象膜72の上を覆っている。
【0043】
ここで、
図4は、SiO
2のエッチング、付着物除去、発光強度測定、エッチング深さ推定のそれぞれを示す図である。
図3のステップ1が
図4のSiO
2のエッチングと対応しており、
図3のステップ2が
図4の付着物除去と対応しており、
図3のステップ3が
図4の発光強度測定と対応しており、
図3のステップ4からステップ7までが
図4のエッチング深さ推定と対応している。また、前述したとおり、1枚のウェハ6を複数回のエッチングサイクルを用いてエッチング処理を実行するが、
図4では、3回のエッチングサイクルを用いてエッチング処理を実行したときの例を示している。
【0044】
次にステップ2において、制御部15から指令と情報が発信され、付着物73を除去するための所定の処理条件を用いて付着物除去処理が開始される。付着物除去処理は、所定の時間だけ継続された後、終了する。
図4の(a−2)は、ステップ2が終了した後のウェハ6の断面膜構造を示した図である。マスク膜71およびエッチング対象膜72の上を覆っていた付着物73が除去されている。
【0045】
次にステップ3において、ステップ2で実施した付着物除去処理の際の発光強度測定を実施する。発光強度面積演算部21において、受光器13より送られた発光強度の中で、ステップ2の付着物除去処理の際の、付着物73の除去を表わす波長の強度トレンド(CO(298nm)とAr(419nm)の比)を抽出する。
図4の(a−3)は、抽出した波長の強度トレンドを示した図である。抽出した波長の強度トレンドを基に発光強度面積53を算出する。算出した発光強度面積53は、発光強度面積積算部22へ送られる。尚、このステップ3は、便宜上、ステップ3としたが、実際は、上記のステップ2の後にステップ3が行われるわけではなく、ステップ2と共にステップ3が行われる。
【0046】
発光強度面積積算部22では、今回のエッチングサイクルの発光強度面積53と前回までのエッチングサイクルの発光強度面積積算値を積算するが、1回目のエッチングサイクルでは前回までのエッチングサイクルの発光強度面積は存在しないため、1回目のエッチングサイクルの発光強度面積53がそのまま発光強度面積積算値として利用される。発光強度面積積算値は、発光強度面積保持部23と、エッチング深さ推定値演算部24へ送られる。
【0047】
次にステップ4において、エッチング深さの推定処理を実施する。ステップ4では、エッチング深さ推定値演算部24において、発光強度面積積算部22から送られた発光強度面積積算値と、発光強度面積―エッチング深さデータベース29に格納された情報を用いてエッチング深さ推定値を算出し、算出したエッチング深さ推定値をエッチング深さ推定値保持部25へ送信する。
【0048】
算出したエッチング深さ推定値は、エッチング深さ推定値保持部25に保持される。
図4の(a−4)は、エッチング深さ推定値を保持した時の模式図である。プロット点44は、エッチング処理前のエッチング深さであるため、0の値がプロットされており、プロット点44に今回ステップ4にて算出されたエッチング深さ推定値がプロットされる。前記の保持したエッチング深さ推定値をサイクル継続判定部26と次サイクルのエッチング深さ予測値演算部27へ送信する。
【0049】
次にステップ5において、エッチング深さ推定値と、エッチング深さ目標下限値の比較を行なう。サイクル継続判定部26において、エッチング深さ推定値保持部25より送られたエッチング深さ推定値と、エッチング深さ目標値データベース30に格納されたエッチング深さ目標下限値の比較を行い、エッチング深さ推定値がエッチング深さ目標下限値以上であれば、エッチングサイクルを終了し、エッチング深さ推定値がエッチング深さ目標下限値未満であれば、エッチングサイクルを継続する。1回目のエッチングサイクルでは、
図4の(a−4)に示すようにエッチング深さ推定値45がエッチング深さ目標下限値43を下回っているため、エッチングサイクル継続信号が制御部15へ送信され、エッチングサイクルが継続される。
【0050】
次にステップ6において、次のエッチングサイクルのエッチング深さを予測し、予測したエッチング深さとエッチング深さ目標値の比較を行なう。次サイクルのエッチング深さ予測値演算部27において、エッチング深さ推定値保持部25より送られた複数のエッチング深さ推定値に対し、一次の近似式や対数の近似式を適用し、次のサイクルでのエッチング深さを予測する。1回目のエッチングサイクルでは、
図4の(a−4)に示すようにエッチング深さ推定値44および45の二点を用いて近似直線を作成し、2回目のエッチングサイクルを実行した場合のエッチング深さ予測値46を算出する。予測した次のサイクルでのエッチング深さ46を次サイクルのエッチング時間演算部28へ送信する。
【0051】
次サイクルのエッチング時間演算部28では、次サイクルのエッチング深さ予測値演算部27から送られた次のサイクルでのエッチング深さ予測値と、エッチング深さ目標値データベース30に格納されたエッチング深さ目標値の比較を行う。そして次のサイクルでのエッチング深さ予測値がエッチング深さ目標値よりも大きな値であった場合は、次のサイクルでのエッチング時間を変更し、次のサイクルでのエッチング深さ予測値がエッチング深さ目標値以下であった場合は、所定のエッチング時間でエッチング処理を実施する。1回目のエッチングサイクルでは、
図4の(a−4)に示すように次のサイクルでのエッチング深さ予測値46がエッチング深さ目標値42以下であるため、エッチング時間の変更は行なわれず、所定のエッチング時間が制御部15へ送信される。
【0052】
以上で1回目のエッチングサイクルが終了し、2回目のエッチングサイクル処理が開始される。以下に、
図3のフローチャートおよび
図4(b)を用いて2回目のエッチングサイクルの処理の流れを説明する。
【0053】
1回目のエッチングサイクルが終了した後、ステップ1およびステップ2において、1回目のエッチングサイクルと同様にエッチング対象膜72のエッチング処理および付着物73の除去処理が実行され、
図4の(b−1)および
図4(b−2)のような結果となる。次にステップ3において、1回目のエッチングサイクルと同様に発光強度面積53を算出する。発光強度面積積算部22では、今回発光強度面積演算部21で算出した発光強度面積53と(
図4の(b−3))、1回目のエッチングサイクルで発光強度面積保持部23が保持した発光強度面積積算値(
図4の(a−3))を積算し、新たな発光強度面積積算値を算出する。算出した発光強度面積積算値は発光強度面積保持部23と、エッチング深さ推定値演算部24へ送られる。
【0054】
次にステップ4において、1回目のエッチングサイクルと同様にエッチング深さ推定値を算出し、算出したエッチング深さ推定値をエッチング深さ推定値保持部25へ送信する。次にステップ5において、1回目のエッチングサイクルと同様にエッチング深さ推定値と、エッチング深さ目標下限値の比較を行なう。2回目のエッチングサイクルでは、
図4の(b−4)に示すようにエッチング深さ推定値47が、エッチング深さ目標下限値43を下回っているため、エッチングサイクル継続信号が制御部15へ送信され、エッチングサイクルが継続される。
【0055】
次にステップ6において、1回目のエッチングサイクルと同様に次のエッチングサイクルのエッチング深さを予測し、予測したエッチング深さとエッチング深さ目標値の比較を行なう。2回目のエッチングサイクルでは、
図4の(b−4)に示すようにエッチング深さ推定値44、45、47の三点を用いて近似式(一次関数や対数関数)を作成し、3回目のエッチングサイクルを実行した場合のエッチング深さ予測値48を算出する。予測した次のサイクルでのエッチング深さ48を次サイクルのエッチング時間演算部28へ送信する。
【0056】
次にステップ7において、次のエッチングサイクルのエッチング時間を算出する。次サイクルのエッチング時間演算部28では、1回目のエッチングサイクルと同様に次のサイクルのエッチング時間を算出する。2回目のエッチングサイクルでは、
図4の(b−4)に示すように次のサイクルでのエッチング深さ予測値48がエッチング深さ目標値42より大きいため、エッチング時間の変更を実施する。変更後のエッチング時間T2は、式1により算出され、変更されたエッチング時間T2が制御部15へ送信される。尚、T1は、変更前のエッチング時間であり、D1は、今回のエッチングサイクル終了時のエッチング深さ推定値であり、D2は、次回のエッチングサイクル終了時のエッチング深さ予測値であり、Dtは、エッチング深さ目標値である。
T2=T1×(Dt−D1)/(D2−D1) (式1)
以上で2回目のエッチングサイクルは終了し、3回目のエッチングサイクル処理が開始される。以下に、
図3のフローチャートおよび
図4(c)を用いて3回目のエッチングサイクルの処理の流れを説明する。
【0057】
2回目のエッチングサイクルが終了した後、ステップ1において、変更されたエッチング時間を用いてエッチング処理が実施され、
図4の(c−1)のような結果となる。次にステップ2からステップ5において、2回目のエッチングサイクルと同様に付着物除去、発光強度面積算出、エッチング深さ推定値の算出が実施される。3回目のエッチングサイクルでは、
図4の(c−4)に示すようにエッチング深さ推定値49がエッチング深さ目標下限値43以上の値であるため、エッチングサイクル停止信号が制御部15へ送信され、エッチング処理が終了する。
【0058】
以上の流れの動作を行なうことにより、エッチング処理の結果、得られるエッチング深さの変動が低減され、エッチング処理の安定性または再現性を向上できる。また、本実施例によりエッチング深さの変動を低減できる理由は以下のように考えられる。
【0059】
図5は、
図1に示すプラズマエッチング装置1が
図7に示すウェハを処理した際の発光強度と付着物除去ステップの時間との関係を説明する模式図である。また、
図5(a)、(b)、(c)は、付着物73を除去するエッチングステップにおいて、受光器13にて検出した発光強度(CO(298nm)とAr(419nm)の比)の推移を示したグラフである。前記発光強度は、主に処理室2内壁に付着した付着物73を除去する様子を表わすのに適した波長である。
【0060】
カーボン系の付着物73は、酸素系ガスと反応し、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO
2)となり、付着物73が除去される。そのため、カーボン系の付着物73が多く除去された場合、
図5(a)の発光強度トレンド52のように高い強度が見られたり、発光強度トレンド52が低下するまでに時間がかかる様子が見られる。一方、カーボン系の付着物73が除去される量が少ない場合、
図5(c)の発光強度トレンド52のように強度が低くなったり、発光強度トレンド52が低下するまでの時間が短くなる様子が見られる。
【0061】
また、
図5(a)の状態のように処理室2の内壁に多く付着物73が付着していた場合、ウェハ6に付着する付着物73の量が少なくなり、その結果、エッチング対象膜72の深さが深くなる。一方、
図5(c)の状態のように処理室2の内壁に付着する付着物73の量が少ない場合、ウェハ6に付着する付着物23の量が多くなり、その結果、エッチング対象膜72の深さが浅くなる。
図5(b)は、
図5(a)と
図5(c)の中間の状態である。
【0062】
次に
図6は、エッチング対象膜72の深さと、CO(298nm)の発光強度とAr(419nm)の発光強度との比から算出された発光強度面積53の相関を表わしたグラフである。
図6に示すようにエッチング対象膜72の深さと発光強度面積53には正の相関が見られており、発光強度面積53を用いてエッチング対象膜72の深さを推定することが可能になる。このように発光強度面積53を用いてエッチング対象膜72の深さを推定することができるようになったことにより、エッチング深さの変動を低減できた。
【0063】
また、本実施例では、
図6に示すように「エッチング対象膜72の深さ」と「発光強度面積」との関係を用いて「エッチング対象膜72の深さ」を推定できることを説明したが、「エッチング対象膜72の深さ」は、エッチング対象膜72のエッチングレート、エッチング寸法等のエッチング対象膜72のエッチング量を表すものでも良い。
【0064】
さらに本実施例では、推定されたエッチング対象膜72の深さに基づいてエッチングサイクルの回数を決めたが、フィードバック制御またはフィードフォワード制御によりプラズマ処理の変動を抑制する制御(Advanced Process Control:APC)のように推定されたエッチング対象膜72の深さに基づいて次のウェハのプラズマエッチング条件に反映または次のウェハのプラズマエッチング条件を補正しても良い。