(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記熱回収部は、上記低温側ラインと上記高温側ラインとの間に設けられた熱交換器を含み、当該熱交換器において、前記燃焼装置からの冷却水と前記低温側ラインを流れる上記液体熱媒との間で熱交換を行わせるように構成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の液化燃料ガス気化システム。
上記第1温度調節部は、上記燃料ガスの目標温度から±5℃である15〜50℃に収まるように、上記第1バイパスラインを通過して上記高温側ラインに供給される上記液体熱媒の流量を調節し、
上記第2温度調節部は、上記熱媒温度検出部で検出される上記液体熱媒の温度が25〜60℃の範囲内の略一定温度に維持されるように、上記第2バイパスラインを通過して上記高温側ラインに混合される上記液体熱媒の流量を調節する、請求項7または8に記載の液体熱媒温度制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、強制的に加熱や冷却をする手段を用いずに燃焼装置の排熱のみを利用し、気化器から排出されて燃焼装置に供給されるガス燃料(天然ガス)を所定の温度範囲で供給するのに適した液化天然ガス気化システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される液化天然ガス気化システムは、液化燃料ガスを気化して燃焼装置に供給するためのものであり、液化燃料ガスを液体熱媒で加熱して気化させる気化器と、上記燃焼装置の排熱を上記液体熱媒により回収する熱回収部と、上記熱回収部と上記気化器の間で上記液体熱媒を循環させるための熱媒循環ラインと、を備え、上記熱媒循環ラインには、上記気化器から排出され、かつ上記熱回収部を通過していない上記液体熱媒を、上記熱回収部を通過した上記液体熱媒に混合する混合部が設けられている。
【0008】
好ましくは、上記熱媒循環ラインは、上記気化器から排出された、相対的に低温である上記液体熱媒を上記熱回収部まで送る低温側ラインと、上記熱回収部を通過した、相対的に高温である上記液体熱媒を上記気化器まで送る高温側ラインと、を含み、上記混合部は、一端が上記低温側ラインに接続され、かつ他端が上記高温側ラインに接続された第1バイパスラインを含む。
【0009】
好ましくは、上記気化器から排出される燃料ガスの温度を検出するガス温度検出部と、上記ガス温度検出部で検出される燃料ガスの温度が目標温度からの所定範囲内に収まるように、上記第1バイパスラインを通過して上記高温側ラインに供給される上記液体熱媒の流量を調節する第1温度調節部と、を更に備える。
【0010】
好ましくは、上記混合部は、一端が上記低温側ラインにおいて上記第1バイパスラインの接続箇所よりも上記熱回収部寄りに接続され、かつ他端が上記高温側ラインにおいて上記第1バイパスラインの接続箇所よりも上記熱回収部寄りに接続された、第2バイパスラインを含み、上記高温側ラインにおいて上記第1バイパスラインと上記第2バイパスラインとの間に設けられて、上記液体熱媒の温度を検出する熱媒温度検出部と、上記熱媒温度検出部で検出される上記液体熱媒の温度が所定範囲内の略一定温度に維持されるように、上記第2バイパスラインを通過して上記高温側ラインに混合される上記液体熱媒の流量を調節する第2温度調節部と、を更に備える。
【0011】
好ましくは、上記燃焼装置は、船舶用のデュアルフューエルエンジンである。
【0012】
好ましくは、上記高温側ラインにおいて上記第1バイパスラインと上記第2バイパスラインとの間に設けられた温度維持チャンバを更に含んでおり、上記熱媒温度検出部は、上記温度維持チャンバに設けられている。
【0013】
好ましくは、上記熱回収部は、上記低温側ラインと上記高温側ラインとの間に設けられた熱交換器を含み、当該熱交換器において、前記燃焼装置からの冷却水と前記低温側ラインを流れる熱媒との間で熱交換を行わせるように構成されている。
【0014】
典型的には、上記燃料ガスは天然ガスであり、上記熱媒は水である。
【0015】
本発明の第2の側面によれば、液体熱媒温度制御方法液化燃料ガスを気化して燃焼装置に供給するための液化燃料ガス気化システムに用いられる液体熱媒温度制御方法が提供される。当該方法は、液化燃料ガスを液体熱媒で加熱して気化させる気化器と、上記燃焼装置の排熱を回収する熱回収部と、の間で上記液体熱媒を循環させ、上記気化器から排出され、かつ上記熱回収部を通過していない上記液体熱媒を、上記熱回収部を通過した上記液体熱媒に混合し、混合後の上記液体熱媒の温度が所定範囲となるように制御する。
【0016】
典型的には、上記燃料ガスは天然ガスであり、上記熱媒は水である。
【0017】
上記液化燃料ガス気化システムは、上記気化器から排出された、相対的に低温である上記液体熱媒を上記熱回収部まで送る低温側ライン、及び、上記熱回収部を通過した、相対的に高温である上記液体熱媒を上記気化器まで送る高温側ライン、を含む熱媒循環ラインと、一端が上記低温側ラインに接続され、かつ他端が上記高温側ラインに接続された第1バイパスラインと、上記気化器から排出される燃料ガスの温度を検出するガス温度検出部と、上記第1バイパスラインを通過して上記高温側ラインに供給される上記液体熱媒の流量を調節する第1温度調節部と、一端が上記低温側ラインにおいて上記第1バイパスラインの接続箇所よりも上記熱回収部寄りに接続され、かつ他端が上記高温側ラインにおいて上記第1バイパスラインの接続箇所よりも上記熱回収部寄りに接続された、第2バイパスラインと、上記高温側ラインにおいて上記第1バイパスラインと上記第2バイパスラインとの間に設けられて、上記液体熱媒の温度を検出する熱媒温度検出部と、上記第2バイパスラインを通過して上記高温側ラインに混合される上記液体熱媒の流量を調節する第2温度調節部と、を更に含んでおり、上記第1温度調節部は、上記ガス温度検出部で検出される燃料ガスの温度が目標温度からの所定範囲内に収まるように、上記第1バイパスラインを通過して上記高温側ラインに供給される上記液体熱媒の流量を調節し、上記第2温度調節部は、上記熱媒温度検出部で検出される上記液体熱媒の温度が所定範囲内の略一定温度に維持されるように、上記第2バイパスラインを通過して上記高温側ラインに混合される上記液体熱媒の流量を調節する。
【0018】
上記液化燃料ガス気化システムは、上記高温側ラインにおいて上記第1バイパスラインと上記第2バイパスラインとの間に設けられた温度維持チャンバを更に含んでおり、上記熱媒温度検出部は、上記温度維持チャンバに設けられて、当該温度維持チャンバにある上記液体熱媒の温度が所定範囲内の略一定温度に維持されるように、上記第2バイパスラインを通過して上記高温側ラインに混合される上記液体熱媒の流量を調節する。
【0019】
上記第1温度調節部は、上記燃料ガスの目標温度から±5℃である15〜50℃に収まるように、上記第1バイパスラインを通過して上記高温側ラインに供給される上記液体熱媒の流量を調節し、上記第2温度調節部は、上記熱媒温度検出部で検出される上記液体熱媒の温度が25〜60℃の範囲内の略一定温度に維持されるように、上記第2バイパスラインを通過して上記高温側ラインに混合される上記液体熱媒の流量を調節する。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る液化天然ガス気化システムの一実施形態を示している。本実施形態の液化天然ガス気化システムX1は、燃料貯槽1と、気化器2と、バッファタンク3と、熱回収部4(熱交換器)と、これらに接続される各ラインとを含んでいる。液化天然ガス気化システムX1は、燃焼装置5に燃料ガスを供給する。燃焼装置5は、例えば船舶用エンジンであってよく、船舶内の船底部分に搭載されている。また、燃料ガスは、例えば天然ガスであってよい。なお、以下においては、単純化のために、燃焼装置5が船舶用エンジンであり、燃料ガスが天然ガスであるものとして、説明を進める。
【0024】
燃料貯槽1は、燃料となる液化天然ガス(LNG)を貯蔵するためのものである。燃料貯槽1は、周囲壁が2重とされており、当該2つの周囲壁の間には断熱材が充填されるとともに真空に減圧されて、外気からの侵入熱を遮断する構造になっている。燃料貯槽1には、LNGが−160℃以下の温度で貯蔵されている。詳細は後述するが、燃料貯槽1は、気化器2においてLNGが気化して生じた天然ガスを、ガスライン67を通じて0.7MPaG程度に加圧された状態で受け入れている。
【0025】
燃料貯槽1の下部には、燃料供給ライン61が接続されている。燃料供給ライン61は、燃料貯槽1から送り出されるLNGを気化器2に移送するための流路である。燃料供給ライン61には、遮断弁611が設けられている。
【0026】
燃料貯槽1の上部には、ガス抜き出しライン612が接続されている。ガス抜き出しライン612は、燃料貯槽1へLNGを補充する際、燃料貯槽1内の空間部のガスを抜き出して燃料供給ライン61に流すものである。ガス抜き出しライン612には、遮断弁613が設けられている。
【0027】
気化器2は、液体熱媒(以下、単に「熱媒」という)を加熱源として、LNGを蒸発気化するためのものである。気化器2は、熱媒容器21と、熱媒容器21の内部に配置された伝熱管22,23とを含んでいる。
【0028】
熱媒容器21は、伝熱管22内のLNGを加熱気化するための熱媒を収容するための密閉状容器である。熱媒は補充可能である。当該熱媒としては、例えば水が挙げられる。
【0029】
本実施形態において、熱媒容器21は、ディスク状の底板211の上に略釣鐘状の容器体212が載った構造をしており、容器体212と底板211とはシール用ガスケットを挟んでボルトで一体化固定されている。このような構成によれば、高圧ガスや船舶に関する法律や規則などで要求されている定期的な検査を行う場合、熱媒を抜き出してボルトを外せば釣鐘状の容器体212はLNGの配管(燃料供給ライン61)や熱媒の配管(後述の熱媒循環ライン62,63等)を外すことなく上部に単純に引き上げるだけで、伝熱管22,23を直接検査できるようになる。
【0030】
熱媒容器21には、熱媒循環ライン62,63が接続されている。熱媒循環ライン62,63は、気化器2と熱回収部4との間で熱媒を循環させる。熱媒循環ライン62は、熱媒容器21の底板211に接続されており、熱回収部4を通過した熱媒を熱媒容器21(気化器2)まで送る流路である。熱媒循環ライン63は、熱媒容器21の底板211に接続されており、かつ底板211をシールされた状態で貫通するオーバーフロー管24につながっている。熱媒循環ライン62を介して供給されることにより熱媒容器21の内部を通過した熱媒は、オーバーフロー管24を介して熱媒循環ライン63に排出される。詳細は後述するが、熱媒容器21から排出される熱媒は、熱回収部4において再加熱され、再び熱媒容器21(気化器2)に供給されて循環利用される。なお、熱媒循環ライン62には循環用ポンプ621が設けられている。
【0031】
熱回収部4を通過し、熱媒循環ライン62を流れる熱媒は、相対的に高温である。熱媒容器21(気化器2)を通過し、熱媒循環ライン63を流れる熱媒は、相対的に低温である。従って、熱媒循環ライン62は、高温側ラインと呼ぶこともでき、熱媒循環ライン63は、低温側ラインと呼ぶこともできる。
【0032】
本実施形態において、熱媒循環ライン62,63には、2本のバイパスライン71,72が接続されている。各バイパスライン71,72は、一端が熱媒循環ライン63(低温側ライン)に接続されており、他端が熱媒循環ライン62(高温側ライン)に接続されている。各バイパスライン71,72は、熱回収部4を通過した熱媒に、気化器2から排出され、かつ熱回収部4を通過していない熱媒を混合するための流路である。ここで、バイパスライン71,72を流れる熱媒の温度は、熱媒循環ライン62を流れる熱媒の温度よりも低い。バイパスライン72の熱媒循環ライン63に対する接続箇所は、バイパスライン71の熱媒循環ライン63に対する接続箇所よりも熱回収部4寄りである。また、バイパスライン72の熱媒循環ライン62に対する接続箇所は、バイパスライン71の熱媒循環ライン62に対する接続箇所よりも熱回収部4寄りである。
【0033】
本実施形態において、熱媒循環ライン62に対するバイパスライン71の接続箇所には、温度調節部73が設けられている。温度調節部73は、バイパスライン71を通過して熱媒循環ライン62に混合される熱媒の流量を調整するものであり、例えば三方弁を含む。温度調節部73は、後述するガス温度検出部641で検出される天然ガスの温度に基づいて、バイパスライン71を通過して熱媒循環ライン62(高温側ライン)に混合される熱媒の流量を調節する。
【0034】
また、本実施形態において、熱媒循環ライン62に対するバイパスライン72の接続箇所には、温度調節部74が設けられている。温度調節部74は、バイパスライン72を通過して熱媒循環ライン62に混合される熱媒の流量を調整するものであり、例えば三方弁を含む。本実施形態において、温度調節部74は、熱媒温度検出部622で検出される熱媒温度が所定の範囲に収まるようにバイパスライン72を通過して熱媒循環ライン62(高温側ライン)に混合される熱媒の流量を調節する。熱媒温度検出部622は、熱媒循環ライン62においてバイパスライン72(追加のバイパスライン)との接続箇所およびバイパスライン71との接続箇所の間に設けられている。本実施形態において、熱媒循環ライン62におけるバイパスライン72との接続箇所およびバイパスライン71との接続箇所の間には、温度維持チャンバ623が設けられている。当該温度維持チャンバ623内には所定量の熱媒が収容されており、熱媒温度検出部622は、温度維持チャンバ623内の熱媒の温度を検出する。
【0035】
伝熱管22は、熱媒容器21内に導入されるLNGが流れる流路であり、例えばコイル状に巻かれている。伝熱管22の上流側端は、熱媒容器21の底板211を貫通して燃料供給ライン61につながっている。熱媒容器21の底板211にはまた、ガスライン64が接続されている。伝熱管22の下流側端は、底板211を貫通してガスライン64につながっている。
【0036】
伝熱管22内のLNGは、周囲にある熱媒により加熱されて蒸発気化し、気化した天然ガスが、熱媒容器21の外部に通じるガスライン64に排出される。ガスライン64の下流側端は、バッファタンク3につながっている。伝熱管22において気化した天然ガスは、ガスライン64を介してバッファタンク3に送り込まれる。
【0037】
ここで、熱媒として水を用いる場合、熱媒容器21(気化器2)の内部においては、例えば20〜60℃の温度範囲の水が満たされた状態で流れている。伝熱管22内において気化した天然ガスは、例えば15〜50℃、好ましくは20〜45℃の温度範囲まで加温されて、0.70MPaG程度の圧力でガスライン64に排出される。
【0038】
本実施形態において、ガスライン64における熱媒容器21(気化器2)寄りの部位には、ガス温度検出部641が設けられている。ガス温度検出部641は、気化器2から排出された天然ガスの温度を検出するものである。
【0039】
伝熱管23は、熱媒容器21内に導入されるLNGが流れる流路であり、例えばコイル状に巻かれている。伝熱管23は、気化した天然ガスにより燃料貯槽1内部の空間部分の圧力を高める。伝熱管23の上流側端は、熱媒容器21の底板211を貫通して燃料供給ライン66につながっている。燃料供給ライン66は、燃料供給ライン61の途中から分岐している。燃料供給ライン66には、遮断弁661が設けられている。熱媒容器21の底板211にはまた、ガスライン67が接続されている。伝熱管23の下流側端は、底板211を貫通してガスライン67につながっている。ガスライン67には、圧力制御弁671が設けられている。
【0040】
伝熱管23において気化した天然ガスは、ガスライン67を通じて燃料貯槽1に送られる。ガスライン67内ではガス圧力が例えば0.75MPaGまで加圧される。この加圧圧力は、燃料貯槽1からのLNG供給圧力となり、内燃機関である船舶用ガスエンジン5(ディーゼルエンジン)に必要なガス燃料供給圧力源となる。
【0041】
バッファタンク3は、天然ガスを収容可能な密閉状容器である。バッファタンク3は、ガスライン64で送り込まれた天然ガス燃料について後段の燃焼装置5(船舶用ガスエンジン)の消費ガス量の負荷変動を吸収するために用いられる。例えば燃焼装置が内燃機関の場合、バッファタンク3により天然ガスを貯留する構成は負荷変動を吸収する上で有効である。バッファタンク3にはガスライン65が接続されている。ガスライン65には、圧力制御弁651が設けられている。この圧力制御弁651において、ガスライン65を流れる天然ガスが後段の船舶用ガスエンジン5での消費に適した圧力まで減圧される。
【0042】
ガスライン65を経た天然ガスは、船舶用ガスエンジン5に供給される。船舶用ガスエンジン5は、例えばデュアルフューエルエンジン(2元燃料ディーゼルエンジン)であり、重油などの液体燃料で起動された後、液体燃料モードからガス燃料モードに切り替えられると、ガス燃料が供給される。船舶用ガスエンジン5に供給されるガス燃料は、ガバナ51(調速機)を通じて当該船舶用ガスエンジン5の出力に見合う消費量で燃焼させられる。
【0043】
船舶用ガスエンジン5は、運転中常時、冷却水ポンプ681もしくはエンジン駆動式ポンプ682(エンジン5により駆動)でエンジン冷却水を循環させながら冷却されている。当該エンジン冷却水は、定常運転状態において、排熱回収および冷却を繰り返しながら55〜90℃の温度範囲で循環している。船舶用ガスエンジン5を出たエンジン冷却水は、冷却水循環ライン68を通って冷却水温度検出部683で温度検出されながら熱回収部4に導入される。
【0044】
熱回収部4は、船舶用ガスエンジン5の排熱を熱媒により回収するためのものである。本実施形態において、熱回収部4は、間接式熱交換器で構成されている。熱回収部4においては、気化器2から排出されて熱媒循環ライン63を流れる熱媒と、冷却水循環ライン68を流れるエンジン冷却水とが熱交換され、船舶用ガスエンジン5の排熱が熱媒に回収されていく。
【0045】
熱回収部4で除熱されたエンジン冷却水は、クーラー684で海水によってさらに冷却され、冷却用温調弁685で調節されながら、冷却水バイパスライン686を流れるエンジン冷却水の一部と混合し、冷却水ポンプ681もしくはエンジン駆動式ポンプ682で再び昇圧されて船舶用ガスエンジン5に送入される。
【0046】
次に、液化天然ガス気化システムX1の稼働時において、気化器2および熱回収部4の間で循環する熱媒の温度制御方法について説明する。
【0047】
気化器2から排出されて熱媒循環ライン63を流れる熱媒は、気化器2において伝熱管22内のLNGないし気化した天然ガスとの熱交換により、相対的に低温となっている。この熱媒循環ライン63を流れる熱媒は、熱回収部4を通過することにより船舶用ガスエンジン5の排熱を回収して熱媒温度が上昇した後、温度維持チャンバ623内に一旦収容される。温度維持チャンバ623内の熱媒温度が熱媒温度検出部622により検出され、この熱媒温度が一定温度となるように、熱媒循環ライン63を流れる熱媒の一部がバイパスライン72を介して温度調節部74により流量が調整されて熱媒循環ライン62内の熱媒に混合される。このようにして、実質的に一定温度の熱媒(以下、適宜「基本温度熱媒」という)が作られる。本実施形態では、温度維持チャンバ623に収容された熱媒が基本温度熱媒である。基本温度熱媒の温度は、例えば25〜60℃の温度範囲において所定温度に設定される。
【0048】
温度調節部74を用いて一定温度になった基本温度熱媒に対しては、その下流側に位置する温度調節部73により、気化器2から排出されて温度の下がった熱媒(熱媒循環ライン63を流れる熱媒)の一部がバイパスライン71を介して混合される。かかる混合の程度は、混合後の熱媒温度が上記基本温度熱媒の設定温度よりも低下して、ガス温度検出部641における検出温度が目標温度となるように調節される。上記混合後の熱媒温度は、例えば20〜60℃の温度範囲において所定温度に調節される。
【0049】
本実施形態において、温度調節部74および温度調節部73による低温熱媒の混合は、循環用ポンプ621の上流側で行われる。このことは、循環用ポンプ621の特性を利用して混合後の熱媒量を定量化するうえで有効である。例えば船舶用ガスエンジン5の出力が1,200kwで、天然ガス燃料の供給について約400kg/hの気化能力を有する気化器2の場合には、15m
3/h以上の熱媒循環量が適当である。
【0050】
一方、燃料貯槽1から気化器2(伝熱管22)に流れるLNGの流量は、船舶用ガスエンジン5におけるガス燃料の消費量によって決定される。船舶用ガスエンジン5の負荷変動があると、それに対応してガス燃料消費量も変動する。
【0051】
伝熱管22の内部では、例えば圧力が0.7MPaGの場合、約−130℃のLNGが気化して、その後15〜50℃の温度範囲、好ましくは20〜45℃の温度範囲まで昇温される。本実施形態において、気化器2から排出される天然ガスの温度は、気化器2の近傍のガス温度検出部641で検出される。そして、気化器2から排出される天然ガスの検出温度が船舶用ガスエンジン5に供給するのに適した燃料ガスの温度範囲(例えば25±5℃から40±5℃)内の目標温度となるように、熱媒循環ライン62を介して気化器2に供給される熱媒の温度が制御される。
【0052】
次に、
図2を参照して、船舶用ガスエンジン5の稼働時間に対するガス燃料消費量の変化特性について説明する。まず、船舶用ガスエンジン5(2元燃料ディーゼルエンジン)が起動して液体燃料モードで運転された後、ガスエンジンの運転に移行すべく液体燃料モードからガス燃料モードになる。そのとき、
図2の左端の立ち上がり線のように約30秒間でガス燃料消費量が0から100%に切り替わる。この切り替わりにより、液体燃料モードで既にエンジン冷却水が冷却水循環ライン68を循環し、クーラー684で海水によって冷却されていた状態から、熱回収部4において熱媒が排熱を回収する状態に変化する。この熱回収部4による排熱回収の機能は、ガス燃料消費量が増加するに従って、液化天然ガスの気化熱に相当する熱量が熱媒からより多く奪われ、気化器2から戻ってくる熱媒温度が下がり始めることによって、自動的にエンジン冷却水からより多くの排熱を回収する状態に変化する。
【0053】
また、ガス燃料消費量が増加すると、気化器2から排出される天然ガスの温度をガス温度検出部641により検知して、温度調節部73が、気化器2から出てくる温度が低下した熱媒の混合量を減らす動作をする。それによって、LNGの気化量の増加に追随して、気化器2に向けて循環させられる熱媒の温度が上がり加熱容量が増加する。したがって、熱媒循環ライン62,63では、常に温度調節部74が温度維持チャンバ623内の熱媒温度を検知して作動し、25〜60℃の温度範囲内の所定温度に設定して基本温度熱媒を用意しておかなければならない。
【0054】
上述のガス燃料消費量(エンジン負荷)が100%まで上昇する動作とは逆にエンジン負荷が下がり、ガスエンジンのガス燃料消費量が減少すると、
図2に示したように100%のガス燃料消費量がエンジン負荷の低下に伴い、最低で19%のガス燃料消費量(エンジン負荷では15%に相当)にまで下がるときがある。このとき、液化天然ガス気化システムX1においては、温度調節部74により基本温度熱媒を用意する動作を常にしているので、LNGの気化熱の消費量が減少しても基本温度熱媒の温度は変わることがない。したがって、ガス燃料消費量が減少しても気化器2から排出される天然ガスの温度が基本温度熱媒の温度よりも高くなることはないので、温度調節部73の制御が不調になっても安全である。これはガスエンジン(船舶用ガスエンジン5)がガス燃料モードから液体燃料モードに切り替わり、船舶が停船状態に入った場合でも上記と同様の動作が行われる。以上のように、液化天然ガス気化システムX1が稼働すると、気化器2から排出される天然ガスの温度を常にガスエンジンが必要とする目標温度に維持しようとする動作が実行される。
【0055】
気化器2は、熱媒を収容する熱媒容器21の内部にコイル状の伝熱管22を浸したような状態でセットされた構造を有している。熱媒容器21の下部から流入した熱媒は、当該熱媒容器21の内壁に沿って周回しながら上昇し、熱媒容器21の上部から中央を貫通するオーバーフロー管24を通り外部の熱媒循環ライン63に流れ出る。ガス燃料消費量、すなわち気化ガス量がどのように負荷変動しても、気化器2の大きさは定まっているので熱媒容器21内の伝熱管22によって形成される全伝熱面積は一定である。したがって、ガス燃料消費量が小さくなると、伝熱管22からエンジン5に送り出される気化天然ガスの量が減る(すなわち、伝熱管22に残る気化天然ガスの量が増える)ので、伝熱管22における蒸発部(LNGあるいはLNGと気化ガスが混在する領域)の伝熱面積が減少し、ガス加温部(気化天然ガスのみが存在する領域)の伝熱面積が増加する。これに対して、気化器2(熱媒容器21)に収容される熱媒の量はガス燃料消費量に関係なく一定である。したがって、ガス燃料消費量の負荷が小さくなると、気化器2内での冷却による熱媒の温度降下の程度が小さくなり、熱媒と伝熱管22内のLNGとの温度差は大きくなり、伝熱が進んで気化器2から排出される気化天然ガスの温度は上昇する。一方、ガス燃料消費量が大きくなると、蒸発部の伝熱面積が増加してガス加温部の伝熱面積は減少する。それと同時に、熱媒の温度降下程度が大きくなり、熱媒と伝熱管22内のLNGとの温度差が縮まり、伝熱が遅くなって気化器2から排出される天然ガスの温度は低下する。本発明は、ガス燃料消費量が変動する際、一定容量の気化器2におけるこのような特性に着目してなされたものである。
【0056】
次に、
図3を参照して、ガス燃料消費量に対する気化器2から排出される天然ガス温度の変化特性について説明する。
図3は、1,200kwの出力の船舶用ガスエンジン5に適合できるように、気化器2におけるLNGの気化能力を約400kg/hとし、循環用ポンプ621の揚量を20m
3/hとした場合において、ガス燃料消費量に対する気化器2から排出される天然ガスの温度変化を表したものである。
図3においては、熱媒温度(基本温度熱媒の温度)が異なる5例を示しており、それぞれの曲線は、温度調節部73で各所定温度に調節した基本温度熱媒を気化器2に送入したときに、ガスエンジンの負荷変動によって変わるガス燃料消費量に対して気化器2から排出される天然ガスの温度がどのように変化をするかを表したものである。
図3においては、基本温度熱媒の温度が45℃の場合、40℃の場合、35℃の場合、30℃の場合、25℃の場合をそれぞれ示している。ガスエンジンの負荷は、通常最大の負荷率を100%とすると最小の負荷率は15%であり、それに相当するガス燃料消費量の負荷率は最大を100%とすると最小は19%になる。したがって、最大のガス燃料消費量を約400kg/hとすると最小は約76kg/hとなる。
【0057】
まず、
図3に示されたうちの一例として、45℃の基本温度熱媒を20m
3/hの流量にて気化器2に流すと、ガス燃料消費量が最も少ない場合(燃料負荷率19%、エンジン負荷率15%)には、気化器2から排出される天然ガスの温度は熱媒温度とほぼ同じ約45℃である。しかし、ガス燃料消費量が増加し、気化ガス量が増加していくと、最大の燃料負荷率100%のときには気化器2から排出される天然ガスの温度は34℃まで降下する。このとき、気化器2から排出される熱媒の温度については、気化器2内で冷却されて約41℃まで下がっている。
【0058】
したがって、ガスエンジンのガス燃料温度の目標値を40℃にしたいときには、温度調節部74で基本温度熱媒の温度を45℃に調節するとともに、ガスエンジン負荷の変化にともなって変わるガス燃料消費量、即ち気化器2から排出される天然ガスの温度を検知しながら、気化器2から排出される天然ガスの温度(ガス温度検出部641での検出温度)が40℃となるように、温度調節部73においてバイパスライン71を流れる熱媒(相対的に低温である熱媒)の混合量を増減すればよい。ガス燃料消費量が最低(燃料負荷率19%)である場合、温度調節部73により混合後の熱媒が約40℃となるように調節され、ガス燃料消費量が最大(燃料負荷率100%)である場合、気化器2に供給される熱媒の温度が約45℃となるように温度調節部73を調節する(具体的には、バイパスライン71を介しての低温側熱媒の混合を停止する)。このとき、ガス燃料消費量が急激に100%まで増大しても、気化器2から排出される天然ガスの温度は34℃を下回ることがなく、また、ガス燃料消費量が急激に減少しても、気化器2から排出される天然ガスの温度は、基本温度熱媒の温度である45℃を上回ることがない。その結果、ガス燃料温度の目標値40℃±5℃は、ほぼ達成できることになる。
【0059】
また、ガスエンジンのガス燃料温度の目標値を27℃としたいときには、温度調節部74で基本温度熱媒の温度を35℃に調節し、温度調節部73による温度の低い熱媒の混合量を増減して、気化器2から排出される天然ガスの温度が27℃になるように調節すればよい。ガス燃料消費量が最低(燃料負荷率19%)である場合、温度調節部73により混合後の熱媒が約27℃となるように調節され、ガス燃料消費量が最大(燃料負荷率100%)である場合、気化器2に供給される熱媒の温度が約35℃となるように温度調節部73が調節される。この結果、ガス燃料消費量が急激に100%まで増大しても、気化器2から排出される天然ガスの温度は20℃を下回ることがなく、また、ガス燃料消費量が急激に減少しても、気化器2から排出される天然ガスの温度は35℃を上回ることがない。したがって、ガス燃料温度の目標値27℃±5℃は、ほぼ達成できることになる。
【0060】
以上から理解されるように、温度調節部74の調節により基本温度熱媒を用意することは有用であり、気化器2から排出される天然ガスの温度を決定させるために有効な働きをする。
図3においては5例の基本温度熱媒の温度による曲線しか示していないが、本発明による技術は基本温度熱媒が25℃から60℃の温度範囲であればいずれの温度でも操作が可能であり、ガスエンジンには安定した温度のガス燃料が供給できる。
【0061】
以上のように、基本温度熱媒の温度は25℃から60℃の温度範囲のいずれかの温度で設定しておく必要がある。それは気化器2から排出される天然ガス(ガス燃料)の目標温度が決まれば、ガス燃料消費量の変化に応じて気化器2から排出される天然ガスの温度がどのように変化するかを想定して、ガス燃料消費量が最も多い100%負荷率の場合のガス温度と基本温度熱媒の温度との算術平均値がガス燃料温度の目標値となる。
図3に示した一例に基づくと、基本温度熱媒の温度が45℃の場合、ガス燃料消費量が最大100%負荷率の場合のガス温度は34℃であり、当該ガス温度(34℃)と基本温度熱媒の温度(45℃)との算術平均値は、約40℃となる。温度調節部73の応答性がよい場合、このようにガス燃料の目標温度を設定して、上述した制御を行うことにより、実際のガス燃料の温度をガス燃料の目標温度±5℃の範囲にほぼ収めることができる。
【0062】
ここで、エンジン負荷が変動してもエンジン冷却水温度の高低幅が小さく安定している場合には、熱回収部4で回収する熱量変化が小さくなり、基本温度熱媒の温度は25℃から60℃の温度範囲内でほぼ一定となり変化幅も小さくなる。また、気化器2を循環する熱媒量が多い場合には、ガス燃料消費量の変化が大きくても、気化器2における熱媒温度の変化幅が小さくなり、温度調節部73のみでも気化器2から排出される天然ガスの温度を安定して調節することが可能となる。そのような場合には、温度調節部74の動作を停止するか、あるいは温度調節部74を無くす事ができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0064】
例えば、気化器の構造については、
図1に記載された熱媒槽式気化器に限られたものではなく、熱媒を循環させて液化天然ガスを気化させることができる気化器であれば、いかなる構造を採用してもよい。
【0065】
また、温度調節部73,74の取り付け位置については、熱媒の混合点が循環用ポンプ621の近傍であれば、
図4に示すように温度調節部73,74の位置を変更して当該温度調節部73,74により熱媒の流れ方向を変えるように構成してもよい。