(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
血管、体腔、または体内管腔部等を通して、各種の臓器(たとえば、心臓)等の目的組織まで挿入されるカテーテル(例えば、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、カテーテルシースを含む)においては、その挿入や目的組織への接近の容易化等を図るため、体内に挿入されるカテーテルの遠位端(先端)の向きを、体外に配置されるカテーテルの近位端(基端)に設けられた操作部を操作することにより偏向できるようにした先端偏向可動カテーテルが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
カテーテルチューブの遠位端部の偏向すべき部分は、例えば遠位端に行くにしたがってその硬度が段階的に低く設定されており、その先端に一体的に内挿されたリング部材(プルリング)の180°対向位置に一対のワイヤのそれぞれの遠位端を接続し、該一対のワイヤのそれぞれの近位端において、一方のワイヤ(第1ワイヤ)を引っ張り、他方のワイヤ(第2ワイヤ)を弛ませることにより、チューブ先端の向きを制御できるようにしている。
【0004】
このようなカテーテルチューブの近位端に設けられる操作部では、回動摘みに第1ワイヤおよび第2ワイヤの近位端を接続し、該回動摘みを第1方向に回動させた場合には第1ワイヤが引っ張られて第2ワイヤが弛み、第1方向とは逆の第2方向に回動させた場合には第2ワイヤが引っ張られて第1ワイヤが弛むようにして、チューブ先端の向きを制御できるようにしている。
【0005】
しかしながら、従来技術では、回動摘みに接続してあるワイヤが操作部を構成する固定部の壁面やカテーテルチューブの近位端部に当たり、ワイヤと固定部壁面やカテーテルチューブ近位端部との間で摩擦が生じ、操作性が悪いと共にワイヤにダメージが生じるなどの課題を有している。また、操作部での軽い操作力でカテーテル遠位端を大きな偏向角度で偏向させることができることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、操作性が良好で、カテーテル遠位端を大きく偏向させることが可能であり、しかもワイヤに損傷が生じることが少ない先端偏向可動カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る先端偏向可動カテーテルは、
カテーテルチューブと、
前記カテーテルチューブの遠位端に設けられたリング部材と、
前記リング部材にそれぞれの遠位端が接続された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
前記カテーテルチューブの近位端に設けられた操作部とを有する先端偏向可動カテーテルであって、
前記操作部が、
前記カテーテルチューブの近位端に固定される固定部と、
前記固定部に対して回動自在に設けられ、前記第1ワイヤの近位端が第1回動半径の外周部に取り付けられる第1回動片と、
前記第1回動片と反対側で前記第1回動片と同期して前記固定部に対して回動自在に設けられ、前記第2ワイヤの近位端が第2回動半径の外周部に取り付けられる第2回動片と、
前記操作部内で前記固定部に対して所定の配置間隔でそれぞれ回転自在に設けられ、前記カテーテルチューブの近位端から当該カテーテルチューブの軸方向に沿って略平行に引き出される前記第1ワイヤおよび第2ワイヤの近位端を、それぞれ前記第1回動片の外周部と第2回動片の外周部とに導く一対のガイド滑車と、を有する。
【0009】
本発明に係る先端偏向可動カテーテルでは、一対のガイド滑車が、それぞれ自ら回転することによって、カテーテルチューブの近位端から当該カテーテルチューブの軸方向に沿って略平行に引き出される前記第1ワイヤおよび第2ワイヤの近位端を、それぞれ前記第1回動片の外周部と第2回動片の外周部とに導く。そのため、ワイヤとガイド滑車とは擦れることなく、ワイヤをカテーテルから引き出す動作や押し込む動作をスムーズに行うことができる。
【0010】
また、第1回動半径および第2回動半径を大きくすることで、第1回動片および第2回動片の回動移動によりワイヤを大きく長手方向に移動させることが可能になり、カテーテル遠位端を大きく偏向させることが可能となる。すなわち、本発明では、操作性が良好で、カテーテル遠位端を大きく偏向させることが可能であり、しかもワイヤに損傷が生じることが少ない先端偏向可動カテーテルを実現することができる。
【0011】
好ましくは、前記一対のガイド滑車は、前記第1回動片および第2回動片の回動移動に応じた前記第1ワイヤおよび第2ワイヤの長手方向に沿った移動により回転するように、前記固定部に取り付けてある。このように構成することで、ワイヤと滑車との間の摩擦を低減することが可能になり、操作性が向上する。
【0012】
好ましくは、前記第1ワイヤおよび第2ワイヤの近位端を前記カテーテルチューブの近位端から当該カテーテルチューブの軸方向に沿って略平行に引き出されるように、前記一対のガイド滑車の前記配置間隔が、前記カテーテルチューブの外径よりもわずかに大きい。このように構成することで、第1ワイヤおよび第2ワイヤの近位端をカテーテルチューブの近位端から当該カテーテルチューブの軸方向に沿って略平行に引き出すことが容易になり、チューブとワイヤとの間の摩擦力を低減することができ操作性が向上する。
【0013】
好ましくは、前記第1回動半径と第2回動半径とは略等しく、前記第1回動片と前記第2回動片とは、同じ回動方向に同じ回動角度で移動可能になっている。このように構成することで、カテーテルチューブの遠位端を、相互に反対側の第1方向と第2方向とで同じように偏向させることが可能になる。なお、第1回動半径と第2回動半径とを異ならせて、カテーテルチューブの遠位端を、相互に反対側の第1方向と第2方向とで異なる偏向角度で偏向できるようにしても良い。
【0014】
なお、本発明において、遠位端とは、操作側と反対側の端部で、先端側とも言い変えることも可能であり、遠位端の近傍も含む概念で用いる。また、近位端とは、遠位端の反対側であり、操作する側に近い端部であり、基端と言い変えることも可能であり、近位端の近傍も含む概念で用いる。遠位端および近位端は、相対的な概念であり、厳密な意味での端のみでなく、端の近くも含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
本実施形態の先端偏向可動カテーテルとしてのカテーテルシース(先端偏向可動カテーテル)は、たとえば、不整脈治療を行う際の心電を検出する電極カテーテルや心筋の焼灼を行うアブレーションカテーテルを案内するためのシースとしてや、その他の用途に用いられる。その他の用途としては、胆管にステントを導入するためのカテーテル(ステント搬送用カテーテル)を案内するためのシースなどが例示される。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のカテーテルシース1は、カテーテルチューブとしてのシース本体2と、シース本体2の近位端に設けられる操作部3およびグリップ部4とを有する。
【0018】
図2および
図3に示すように、シース本体2は、主ルーメン21を有する中空チューブ20からなる。本実施形態の中空チューブ20は、内側チューブ22と、外側チューブ24とを有する多層チューブで構成してある。外側チューブ24には、網状の補強線(たとえばステンレス等の金属線)からなるブレード層26が埋め込まれており、シース本体2に耐キンク特性を付与している。
【0019】
外側チューブ24におけるブレード層26の内側には、ワイヤルーメンが軸方向に沿って形成してあるワイヤルーメン用チューブ28,29がシース本体2の中心軸に対して約180°対向位置に埋め込まれている。チューブ28,29のワイヤルーメンには、それぞれ第1ワイヤ30および第2ワイヤ31が軸方向に移動自在に挿入してある。
【0020】
ブレード層26は、
図2に示すように、外側チューブ24の内部に、横断面が楕円形状を有するように埋め込まれており、楕円状のブレード層26の長軸方向に第1ワイヤ30および第2ワイヤ31が配置されるようになっている。楕円状のブレード層26の短軸方向では、ブレード層26は、内側チューブ22に近い側の外側チューブ24の内部に埋め込まれており、楕円状のブレード層26の長軸方向では、ブレード層26は、外周に近い外側チューブ24の内部に埋め込まれている。
【0021】
内側チューブ22の内周面に軸方向に沿って形成してある主ルーメン21には、電極カテーテル、アブレーションカテーテル、ステント搬送用カテーテル、その他の用途のカテーテル、あるいはガイドワイヤ、その他の医療器具が軸方向に移動自在に挿入可能になっている。主ルーメン21の内周面は、滑り特性が良いことが好ましく、内側チューブ22は、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などで構成される。
【0022】
外側チューブ24は、樹脂で形成されることが好ましく、たとえばポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどで構成される。また、ワイヤルーメン用チューブ28,29は、滑り特性が良い樹脂で形成されることが好ましく、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などで構成される。第1ワイヤ30および第2ワイヤ31は、たとえばステンレスなどの金属で構成してあり、撚り線でも単線でも良い。
【0023】
図1に示すように、シース本体2の遠位端は、その向きが矢印αおよび矢印βのように、相互に180°の反対方向に任意に偏向可能な偏向部2aとなっている。偏向部2aの偏向方向αとβは、前述したワイヤルーメン用チューブ28,29の180°対向な取付位置に対応している。偏向部2aでは、その余の部分よりも硬度が低く(柔軟に)設定されていることが好ましく、さらに偏向部においてはその先端にいくにしたがって徐々にまたは段階的に硬度が低くなるように設定されていてもよい。
【0024】
図4に示すように、シース本体2の遠位端(偏向部2aの先端近傍)には、円環状のプルリング(リング部材)32を有するワイヤ付きリング35が埋め込まれている。プルリング32の内周面でシース本体2の中心軸に対して180°対向位置には、第1ワイヤ30および第2ワイヤ31の遠位端30a,31aが接続固定されている。
【0025】
なお、第1ワイヤ30および第2ワイヤ31の遠位端30a,31aをプルリング32の内周面に接続固定するための方法については特に限定されず、銀ロウなどのロウ材によるロウ付け、レーザ溶接、超音波溶着、アーク溶接、半田付けなどが例示される。
【0026】
ワイヤ付きリング35を、シース本体2の遠位端に埋め込むために、
図3および
図5に示すように、外側チューブ24の遠位端には、プルリング32の通孔に挿入される段差状先端部24aが切削などの手段で形成してある。段差状先端部24aの外周面は、プルリング32の通孔の内周面形状に合わせて、円筒外周面形状に切削加工してある。そのため、
図3および
図5に示すように、横断面が楕円状のブレード層26の短軸方向では、ブレード層26はリング32の内側に残っていても良い。
【0027】
また、
図3および
図4に示すように、横断面が楕円状のブレード層26の長軸方向では、ブレード層26の一部も除去されており、ワイヤルーメン用チューブ28,29の一部も除去され、ワイヤルーメンがリング32の内側で開口している。ワイヤルーメンがリング32の内側で開口している位置で、各ワイヤ30,31の遠位端がリング32の内周面に接続固定してある。
【0028】
図4および
図5に示すように、偏向部2aの遠位端では、リング32の外周と段差状先端部24aの外周と内側チューブ22の外周と内側チューブ22の遠位端とは、遠位端被覆樹脂34により覆われて一体化されている。遠位端被覆樹脂34は、ワイヤルーメン用チューブ28,29の遠位端側ルーメン内に一部入り込んでも良いが、ワイヤ30,31がワイヤルーメン内を軸方向に移動することを妨げないようになっている。
【0029】
遠位端被覆樹脂34は、たとえばディピング法により形成され、たとえばポリエーテルブロックアミド共重合体などのポリアミド系エラストマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなどの樹脂で構成してある。
【0030】
リング32は、たとえばステンレス鋼などの金属で構成してあり、その遠位端には、造影リングが装着してあっても良い。造影リングは、X線などで検出しやすい金属で構成してあり、たとえば金、白金、イリジウム、タングステンなどで構成される。なお、リング32の全体を造影リングで構成しても良い。
【0031】
ワイヤ付きリング35は、
図4および
図5に示す遠位端被覆樹脂34が形成される前に、ワイヤルーメン用チューブ28,29のルーメン内に、各ワイヤ30,31が挿入され、リング32の通孔に
図5に示す段差状先端部24aが通される。その後に、遠位端被覆樹脂34が形成されて、偏向部2aの遠位端では、リング32の外周と段差状先端部24aの外周と内側チューブ22の外周と内側チューブ22の遠位端とが、遠位端被覆樹脂34により覆われて一体化される。
【0032】
第1ワイヤ30および第2ワイヤ31の近位端は、
図1に示すシース本体2の近位端に設けられた操作部3に接続されている。操作部3はグリップ部4の先端(遠位端)側に設けられている。
【0033】
操作部3は、
図6A〜
図6Cに示すように、シース本体2の近位端に固定される固定部50を有する。固定部50は、円盤状の固定部本体51と、グリップ部4の遠位端4aに挿入されて連結するグリップ連結部52と、グリップ連結部52の180°反対側に位置するシース引き込み部54とを有する。固定部50を構成する固定部本体51とグリップ連結部52とシース引き込み部52とは、プラスチックなどで一体成形される。
【0034】
固定部50のシース引き込み部54の外周には、カバー56が取り付けられる。シース本体2の近位端2bは、カバー56の内部を通り、シース引き込み部54の内部、固定部本体51の中央部、グリップ連結部52の内部を通り、グリップ部4の内部に到達している。
【0035】
カバー56の内部に位置するシース本体2の外周部には、それぞれ第1ワイヤ30および第2ワイヤ31を取り出すための引出部2cが形成してある。引出部2cは、シース本体2の外周部に形成してある孔であり、
図2に示すワイヤルーメン用チューブ28,29の内部に連通しており、そこから各ワイヤ30,31の近位端30b,31bがシース本体2の外部に取り出されるようになっている。
【0036】
引出部2cから引き出された各ワイヤ30,31の近位端30b,31bは、カバー56の内部およびシース引き込み部54の内部を通して、操作部3の内部に導かれるようになっている。固定部50には、円盤状の固定部本体51の中心回りに回動(枢軸回転移動)自在に回動カバー45が取り付けてある。回転カバー45には、回動摘み58が固定してあり、回動摘み58を操作することで、回転カバー45を固定部50に対して回動可能になっている。
【0037】
なお、
図6A〜
図6Cでは、固定部50の下側に配置される回転カバー45のみが図示してあるが、実際には、
図8に示すように、固定部50の上側にも、上部回転カバー45aが配置される。上部回転カバー45aにも、回転カバー45と同様に、回動摘み58aが固定してあり、回動摘み58aが回動摘み58と連結されることで、上部回転カバー45aと回転カバー45と第1回動片40と第2回動片41とが一体となって、固定部50に対して回動可能になっている。
【0038】
回動カバー45には、第1回動片40と第2回動片41とが円盤状の固定部本体51の円周方向に沿ってビスなどで取り付けられ、これらの第1回動片40と第2回動片41とは、同時に同一方向に同期して回動するようになっている。第1回動片40と第2回動片41とは、円盤状の固定部本体51の円周方向に沿って所定間隔で設けられ、シース本体2を挟んで、操作部3の内部で反対側に位置するようになっている。
【0039】
第1回動片40における回動中心から第1半径R1の円弧状外周部40aには、第1ワイヤ30の近位端30bが巻き付けられてビス42などにより回動片40に固定してあり、回動片40が回動中心回りに回動することで、ワイヤ30の近位端30bが引出部2cから引き出されたり戻されたりするようになっている。また、同様に、第2回動片41における回動中心から第2半径R2の円弧状外周部41aには、第2ワイヤ31の近位端31bが巻き付けられてビス43などにより回動片41に固定してあり、回動片41が回動中心回りに回動することで、ワイヤ31の近位端31bが引出部2cから引き出されたり戻されたりするようになっている。
【0040】
固定部50のシース引き込み部54には、シース本体2を挟んで所定の配置間隔D2で一対のガイド滑車60が、各滑車60の軸芯回りで回転自在に装着してある。各ガイド滑車60には、
図7に示すように、ワイヤ30,31の近位端30b,31bが係止する係止溝62が形成してあっても良い。また、各ガイド滑車60には、回転軸64が一体に形成してあっても良く、回転軸64が、固定部50のシース引き込み部54の底壁に形成してある軸受け孔50aに差し込まれることで、各滑車60が回転するようになっていても良い。
【0041】
一対の滑車60の配置間隔D2は、シース本体2の外径D1よりもわずかに大きい程度が好ましく、引出部2から引き出されるワイヤ30,31の近位端30b,31bがシース本体2の軸方向に沿って略平行に滑車60に向かうようになっている。滑車60は、引出部2cから引き出された各ワイヤ30,31の近位端30b,31bを、それぞれ第1回動片40の外周部40aと第2回動片41の外周部41aとに導くようになっている。
【0042】
これらの一対のガイド滑車60は、
図6Bおよび
図6Cに示すように、第1回動片40および第2回動片41の回動移動に応じた第1ワイヤ30および第2ワイヤ31の長手方向に沿った移動により回転するように、固定部50に取り付けてある。なお、配置間隔D2とシース本体2の外径D1との関係は、D2/D1が好ましくは1.05〜1.60である。D2/D1が大きすぎると、引出部2cからワイヤ30,31を軸方向に沿って略平行に引き出すことが困難になる傾向にあり、小さすぎるとワイヤ30,31とシース本体2の外周面との摩擦が大きくなる傾向にある。第1ワイヤ30および第2ワイヤ31の近位端30b,31bをシース本体2の近位端2bから当該シース本体2の軸方向に沿って略平行に引き出すことで、シース本体2とワイヤ30,31との間の摩擦力を低減することができ操作性が向上する。
【0043】
また、本実施形態では、第1半径R1と第2半径R2とは、略等しいことが好ましい。また、シース本体2の外径D1と第1半径R1や第2半径R2との関係は、R1/D1またはR2/D1が好ましくは8.0〜12.0であり、R1およびR2を大きくする程、回動摘み58の回動角度当たりのワイヤ30,31の長手方向移動量を大きくすることができる。ただしR1およびR2を大きくし過ぎると、操作部3の外径が大きくなり、片手での操作が困難になる傾向にある。本実施形態では、
図6Bおよび
図6Cに示すように、第1回動片40と第2回動片41とは、同じ回動方向に同じ回動角度で移動可能になっている。
【0044】
固定部50を構成するブラスチックとしては、特に限定されず、たとえばポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂などが例示される。回動カバー45およびカバー56に関しても、固定部50と同様なプラスチックで構成すればよい。
【0045】
本実施形態では、
図6Bに示すように、摘み58を第1回転方向(たとえば左回り)に操作することにより、
図2〜
図5に示す第1ワイヤ30が操作部3の方向に引っ張られ、第2ワイヤ31が偏向部2aの側に戻され、偏向部2aが矢印αに示すように偏向される。また、
図6Cに示すように、摘み58を第1回転方向と反対方向の第2回転方向(たとえば右回り)に操作することにより、
図2〜
図5に示す第2ワイヤ31が操作部3の方向に引っ張られ、第1ワイヤ30が偏向部2aの側に戻され、先端の偏向部2aが矢印βに示すように偏向される。
【0046】
本実施形態では、一対のガイド滑車60が、それぞれ自ら回転することによって、シース本体2の近位端2bから当該シース本体2の軸方向に沿って略平行に引き出される第1ワイヤ30および第2ワイヤ31の近位端30b,31bを、それぞれ第1回動片40の外周部40aと第2回動片41の外周部41aとに導く。そのため、ワイヤ30,31とガイド滑車60とは擦れることなく、ワイヤ30,31をシース本体2の引出部2cから引き出す動作や押し込む動作をスムーズに行うことができる。すなわち、ワイヤ30,31と滑車60との間の摩擦を低減することが可能になり、操作性が向上する。
【0047】
また、本実施形態では、第1回動半径R1および第2回動半径R2を大きくすることで、第1回動片40および第2回動片41の回動移動によりワイヤ30,31を大きく長手方向に移動させることが可能になり、カテーテル遠位端を大きく偏向させることが可能となる。すなわち、本実施形態では、操作性が良好で、シース本体2の偏向部2aを大きく偏向させることが可能であり、しかもワイヤ30,31に損傷が生じることが少ない先端偏向可動カテーテルシース1を実現することができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0049】
たとえば上述した実施形態では、先端偏向可動カテーテルを、主ルーメン21を有するカテーテルシースとして用いたが、主ルーメン21を持たないカテーテルやその他のカテーテルに本発明を適用することも可能である。また、上述した実施形態では、ワイヤルーメンがワイヤルーメン用チューブ28,29により形成してあるが、これに限定されず、チューブ28,29を設けることなくワイヤルーメンを外側チューブ24自体に形成しても良い。また、上述した実施形態では、シース本体2を多層チューブで構成したが、単層チューブで構成しても良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、第1回動半径R1と第2回動半径R2とを同じに構成したが、第1回動半径R1と第2回動半径R2とを異ならせてもよい。その場合には、シース本体2の偏向部2aを、相互に反対側の第1方向αと第2方向βとで異なる偏向角度で偏向できる。