特許第6557957号(P6557957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6557957-積層体の製造方法及び化粧造作部材 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557957
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び化粧造作部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20190805BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20190805BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20190805BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190805BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190805BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190805BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C09J175/08
   C09J175/06
   C09J175/04
   B32B27/00 D
   B32B27/40
   B05D7/24 301P
   B05D7/24 302T
   B05D1/28
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-206378(P2014-206378)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-74826(P2016-74826A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】二宮 淳
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−180669(JP,A)
【文献】 特開2003−191206(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061790(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/153907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B05D 1/28
B05D 7/24
B32B 27/00
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロールで基材を搬送しつつ、搬送方向に回転する塗工ロールを介して加熱溶融されたホットメルト接着剤を前記基材上に塗工して得られる積層体の製造方法において、前記塗工ロールの回転速度が、前記搬送ロールの搬送速度に対して1.1〜2倍の範囲であり、前記ホットメルト接着剤が、1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A−1)と脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリエステルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(B)及びアクリルポリオール(C)を含有するポリオール(i)とポリイソシアネート(ii)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤であることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)の原料である前記脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸及び/又はセバシン酸である請求項記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記アクリルポリオール(C)の重量平均分子量が、5,000〜50,000の範囲である請求項1記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記アクリルポリオール(C)のガラス転移温度(Tmg)が、30〜120℃の範囲である請求項1記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法により得られる積層体に、シート又はフィルムを貼り合せることにより得られる化粧造作部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性及び初期クリープ性に優れる化粧造作部材等が得られる積層体の製造方法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建材分野では、美観の向上や耐久性の付与のため、木材、集成材、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等を基材として、その基材の表面に、装飾的な色や模様を有する化粧シートなどを貼り合わせて得られる化粧造作部材が広く利用されている。
【0003】
前記シート等が表面に光沢を有する、いわゆる鏡面化粧シートである場合には、シートと基材とを接着して得られる化粧版等の化粧造作部材には、その鏡面性を損なわない非常に優れた表面平滑性が求められる。
【0004】
前記化粧造作部材の製造に用いることができる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、並びに、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、イソフタル酸及びテレフタル酸を反応させて得られた芳香族ポリエステルポリオールを含むポリオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させたウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
しかしながら、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を用いた場合には、優れた初期クリープ性(初期接着性)を具備できるものの、該接着剤の硬化が進行するにつれて継時的に表面平滑性が損なわれ、結果、得られる化粧部材の鏡面部に凹凸等が発生して、その鏡面性が損なわれるとの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−45841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、表面平滑性及び初期クリープ性に優れる積層体が得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、搬送ロールで基材を搬送しつつ、搬送方向に回転する塗工ロールを介して加熱溶融されたホットメルト接着剤を前記基材上に塗工して得られる積層体の製造方法において、前記塗工ロールの回転速度が、前記搬送ロールの搬送速度に対して1.1〜2倍の範囲であり、前記ホットメルト接着剤が、ポリエステルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(B)及びアクリルポリオール(C)を含有するポリオール(i)とポリイソシアネート(ii)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤であることを特徴とする積層体の製造方法、及びその製造方法により得られる積層体に、シート又はフィルムを貼り合せることにより得られる化粧造作部材を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により得られる積層体は、表面平滑性及び初期クリープ性に優れるものである。従って、前記積層体は、化粧鏡面シートをはじめとする化粧造作部材の製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層体の製造方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、搬送ロールで基材を搬送しつつ、搬送方向に回転する塗工ロールを介して加熱溶融されたホットメルト接着剤を前記基材上に塗工して得られる積層体の製造方法であり、前記塗工ロールの回転速度は、前記搬送ロールの搬送速度に対して1.1〜2倍の範囲であり、前記ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(B)及びアクリルポリオール(C)を含有するポリオール(i)とポリイソシアネート(ii)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤である。
【0012】
図1に示す概略図において、基材を搬送するための搬送手段として前記基材の裏面に、駆動源と連結した搬送ロールが配設されている。前記搬送ロールの搬送方向の前後には、必要に応じて、基材を搬送するための送りロールが配置されていてもよい。
【0013】
前記基材としては、例えば、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材;アルミ、鉄等の金属基材;ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を用いて得られたシート基材;紙;金属箔;突板などを用いることができる。前記基材の大きさとして、使用される用途に応じて決定されるが、例えば、幅が400〜1,500mmの範囲、長さが700〜5,000mmの範囲、厚さが1〜50mmの範囲である。
【0014】
前記基材の表面上には、例えば前記搬送ロールと対向する位置に塗工ロールが配置されており、該塗工ロールの外周面には、調整可能なギャップを介してメータリングロールが配設されている。それぞれ駆動源に接続された塗工ロールとメータリングロールとの間には、例えば60〜130℃の範囲で加熱溶融されたホットメルト接着剤を収容するための液溜め部が形成されている。液溜め部内のホットメルト接着剤は塗工ロールの回転によって塗工ロール外周面に付着して送られる。前塗工ロールと前記メータリングロールとの周速の差でホットメルト接着剤の塗工量が決定される。なお、前記塗工ロールの回転方向は、前記搬送ロールによる基材の搬送方向に設定される。また、前記塗工ロールの配置場所としては、前記搬送ロールと対向する位置から前後移動した位置であってもよい。
【0015】
前記液溜め部には、ノズルで連結された加熱可能な溶融装置が配設されていることが好ましく、該溶融装置から随時、加熱溶融したホットメルト接着剤が供給されることが好ましい。
【0016】
前記塗工ロールの回転により前記液溜め部内の加熱溶融されたホットメルト接着剤が、搬送ロールにより搬送された前記基材上に塗工され、積層体が得られる。前記塗工されたホットメルト接着剤層の厚さとしては、例えば、10〜300μmの範囲である。
【0017】
前記塗工ロールの回転速度としては、前記搬送ロールの搬送速度に対して、1.1〜2倍の範囲であることが必須であり、1.15〜1.8倍の範囲であることがより好ましく、1.2〜1.6倍の範囲であることが更に好ましい。また、前記ホットメルト接着剤としては、ポリエステルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(B)及びアクリルポリオール(C)を含有するポリオール(i)とポリイソシアネート(ii)とを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤であることが必須である。
【0018】
塗工ロールの回転速度が搬送ロールの搬送速度より早い塗工方法は「加速塗工」と呼ばれるが、粘度の高いホットメルト接着剤を使用して加速塗工する場合には、通常、表面平滑性に優れる積層体を得ることは非常に困難であると考えられてきた。しかしながら、本発明においては、前記特定のホットメルト接着剤を前記塗工ロールの特定の回転速度で塗工することによって、表面平滑性及び初期クリープ性(初期接着性)に優れる積層体が得られる。
【0019】
また、塗工ロールの回転速度としては、表面平滑性をより一層向上できる点から、メータリングロールの回転速度に対して、10〜1,000倍の範囲が好ましく、20〜500倍の範囲がより好ましい。
【0020】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を得る際に用いる前記ポリエステルポリオール(A)としては、例えば、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族結晶性ポリエステルポリオール、脂肪族非晶性ポリエステルポリオール等を用いることができる。これらのポリエステルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、表面平滑性をより一層向上できる点から、1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに脂肪族ジカルボン酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオール(A−1)(以下、「芳香族ポリエステルポリオール(A−1)」と略記する。)、及び、初期クリープ性をより一層向上できる点から脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2)を含有することが好ましい。
【0021】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)は、1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸、並びに脂肪族ジカルボン酸を用いて従来公知のエステル化反応により得られるものである。
【0022】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、1,12−ドデカン二酸等を用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、初期クリープ性や表面平滑性をより一層向上できる観点から、炭素原子数が4〜12の範囲の脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、アジピン酸及び/又はセバシン酸を用いることがより好ましい。
【0023】
前記脂肪族ジカルボン酸以外に用いる二塩基酸としては、初期クリープ及び表面平滑性をより一層向上できる点から、テレフタル酸を用いることがより好ましい。
【0024】
前記テレフタル酸及び/又はイソフタル酸と、前記脂肪族ジカルボン酸とのモル比としては、表面平滑性をより一層向上できる点から、40/60〜90/10の範囲であることが好ましく、50/50〜80/20の範囲であることがより好ましい。
【0025】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量としては、表面平滑性の点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、1,000〜3,000の範囲がより好ましい。なお、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0026】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0027】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0028】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)を用いる場合の使用量としては、表面平滑性の点から、ポリオール(i)全量中3〜35質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0029】
前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2)としては、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0030】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、初期クリープ性をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールを用いることが好ましい。
【0031】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を用いることができる。
【0032】
前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量としては、初期クリープ性の点から、500〜10,000の範囲が好ましく、2,000〜8,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量は、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0033】
また、前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の融点としては、40〜130℃の範囲が好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(A−2)の融点は、JISK7121−1987に準拠し測定した値を示す。
【0034】
前記脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2)を使用する場合の使用量としては、初期クリープ性の点から、ポリオール(i)中3〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0035】
前記ポリエーテルポリオール(B)は、優れた表面平滑性を付与する上で必須の成分であり、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量としては、表面平滑性の点から、500〜5,000の範囲が好ましく、700〜4,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量は、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0037】
前記ポリエーテルポリオール(B)の使用量としては、表面平滑性の点から、前記ポリオール(i)中10〜50質量%の範囲であることが好ましく、15〜45質量%の範囲がより好ましい。
【0038】
前記アクリルポリオール(C)は、初期クリープ性、表面平滑性、塗布後の適度オープンタイム(貼り合わせ可能時間)を調整して優れた作業性を付与するものであり、た問えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を含有する(メタ)アクリル化合物を重合して得られるものである。なお、本発明において、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物とアクリル化合物の一方又は両方を示し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方を示し、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方を示す。
【0039】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが原料入手の容易性から好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を用いることができる。これらの中でも、初期クリープ性及び表面平滑性をより一層向上できる点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが特に好ましい。
【0040】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物以外に用いることができる(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シジクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−メチル−[1,3]−ジオキソラン−4−イル−メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの(メタ)アクリル化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、初期クリープ性及び表面平滑性をより一層向上できる点から、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0041】
前記アクリルポリオール(C)の重量平均分子量は、初期クリープ性及び表面平滑性の点から、5,000〜50,000が好ましく、10,000〜40,000の範囲がより好ましく、15,000〜30,000の範囲が更に好ましい。なお、前記アクリルポリオール(C)の重量平均分子量は、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量と同様に測定した値を示す。
【0042】
前記アクリルポリオール(C)のガラス転移温度としては、初期クリープ性や表面平滑性をより一層向上できる点から、30〜120℃の範囲が好ましく、50〜80℃の範囲が更に好ましい。なお、前記アクリルポリオール(C)のガラス転移温度は、JISK7121−1987に準拠し測定した中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0043】
前記アクリルポリオール(C)の使用量としては、初期クリープ性及び表面平滑性をより一層向上できる点から、前記ポリオール(i)中5〜40質量%の範囲であることが好ましく、8〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0044】
前記ポリオール(i)は、前記ポリエステルポリオール(A)、前記ポリエーテルポリオール(B)及び前記アクリルポリオール(C)を必須の成分として含有するが、必要に応じてその他のポリオールを含有してもよい。
【0045】
前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。
【0046】
前記ポリイソシアネート(ii)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ウレタン化の反応性及び接着性の点から、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0047】
前記ポリイソシアネート(B)の使用量としては、湿気硬化型ポリウレタンホットメルトの粘度及び作業性の点から、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤100質量部に対して、5〜50質量部の範囲であることが好ましく、10〜30質量部の範囲がより好ましい。
【0048】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やホットメルト接着剤が塗工される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0049】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(ii)の入った反応容器に、前記ポリオール(i)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(ii)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(i)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0050】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリイソシアネート(ii)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(i)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])としては、作業性、表面平滑性及び初期クリープ性の点から、1.1〜5の範囲であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0051】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を用いることができる。
【0052】
前記ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン及びN−メチルモルホリン等の含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩;ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物などを用いることができる。
【0053】
以上の方法によって得られるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、表面平滑性及び初期クリープ性の点から、1.5〜8%の範囲であることが好ましく、1.7〜5%の範囲がより好ましく、1.8〜3%の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603−1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0054】
前記ウレタンプレポリマーの粘度としては、表面平滑性及び初期クリープ性の点から、120℃における溶融粘度が1,000〜50,000mPa・sの範囲であることが好ましく、2,000〜20,000mPa・sの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーの120℃における溶融粘度は、コーンプレート粘度計(ICI製)で測定した値を示す。
【0055】
前記ウレタンプレポリマーの軟化点としては、表面平滑性及び初期クリープ性の点から、30〜120℃の範囲内であることが好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーの軟化点とは、ウレタプレポリマーの温度を段階的に上昇させた場合に、熱流動し始め凝集力を失う温度をいい、具体的にはJISK5902−1969に準拠した環球法により求めた値を示す。
【0056】
前記ウレタンプレポリマーの貼り合わせ可能時間(オープンタイム)としては、表面平滑性及び初期クリープ性の点から、23℃において20〜150秒であることが好ましく、30〜90秒であることがより好ましい。
【0057】
本発明で用いる前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、前記ウレタンプレポリマーのみから構成されてもよいが、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。
【0058】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を使用することができる。
【0059】
以上、本発明の製造方法により得られる積層体は、表面平滑性及び初期クリープ性に優れるものである。従って、前記積層体は、化粧鏡面シートをはじめとする化粧造作部材の製造に好適に用いることができる。
【0060】
前記化粧造作部材は、本発明の製造方法により得られる積層体に、シート又はフィルムを貼り合せることにより得られる。
【0061】
前記シート又はフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を用いて得られたシート又はフィルム;紙;金属箔;突板等を用いることができる。
【0062】
前記シート又はフィルムは、一般に化粧紙、化粧板用原紙、化粧シートなどと称呼されており、その表面に装飾的な無地若しくは多彩な色、又は模様が施されているものも用いることができる。また、それらの裏面には、樹脂等によりプライマー処理が施されていてもよい。なかでも、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、優れた表面平滑性を有する接着剤層を形成できることから、表面が鏡面状の化粧シートを使用する場合であっても、化粧シート由来の鏡面性を低下させることがない。また、前記接着剤であれば、高硬度の接着剤層を形成できることから、該接着剤を用いて前記機材と前記化粧シートとを接着して得られた化粧板に対して、外的な衝撃が加わった場合であっても、その表面外観や鏡面性の低下を抑制することが可能である。
【0063】
前記積層体に前記シート又はフィルムを貼り合わせる方法としては、例えば、ロールプレス、フラットプレス、ベルトプレス等を使用して圧着させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0065】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、芳香族ポリエステルポリオール(A−1−1)(1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸及びセバシン酸をモル比で53/33/14で反応させたもの、数平均分子量2,000)を20質量部、脂肪族結晶性ポリエステルポリオール(A−2−1)(1,6−ヘキサンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸とを反応させたもの、数平均分子量3,500)を12質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量1,000、以下「PPG1000」と略記する。)を30質量部、アクリルポリオール(C−1)(メタクリル酸、メタクリル酸ブチル及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートをモル比で73.8/25.8/0.4で反応させたもの、重量平均分子量;20,000、Tmg;73℃)を20質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
フラスコ内を90℃に冷却した後、70℃で溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)を18質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;7,000mPa・s、NCO%;2.2%)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤とした。
次に、搬送ロール上にMDFを載置し、搬送ロールの搬送速度を15m/分、塗工ロールの回転速度を20m/分、メータリングロールの回転速度を0.1m/分に設定した後に、110℃で1時間溶融された前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を厚さ50μmとなるように、前記MDF上に塗工し、ロールプレスにより鏡面化粧シートを貼り合せ、鏡面化粧板を得た。
【0066】
[実施例2〜8及び比較例1〜6]
用いるポリオール(i)及びポリイソシアネート(ii)の種類及び/又は量、搬送ロールの搬送速度、塗工ロールの回転速度、並びに、メータリングロールの回転速度を表1〜2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にして湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤と鏡面化粧板を得た。
【0067】
[表面平滑性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた鏡面化粧板の表面に蛍光灯をあて、目視観察により表面平滑性が非常に良好であれば「◎」、表面平滑性が良好であれば「○」、凹凸やうねりがあり表面平滑性が不良であれば「×」と評価した。
【0068】
[初期クリープ性の評価方法]
溶融装置を用いて実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を、それぞれ110℃の温度で1時間溶融させた。該接着剤を厚さ75μmのPETシート(東レ株式会社製「ルミラー」)上に厚さが50μmとなるようにTダイコーターを用いて塗工した。該接着剤層の上にMDFを貼り合せ、圧着ローラーで圧着した。圧着後3分経過後から15分間75gの荷重を90°方向に与えて、その剥離長さ(mm)を測定し、初期クリープ性とした。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1〜2中の略語について説明する。
「芳香族ポリエステルポリオール(A−1−2)」;1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸及びアジピン酸を53/33/14で反応させたもの、数平均分子量2,000
「その他の芳香族ポリエステルポリオール(1)」;エチレングリコール、アジピン酸、オルトフタル酸及びテレフタル酸を反応させたもの、数平均分子量3,500
「脂肪族非晶性ポリエステルポリオール(1)」;ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びアジピン酸を反応させたもの、数平均分子量2,000
【0072】
本発明の製造方法により得られた鏡面化粧板は、表面平滑性及び初期クリープ性に優れることが分かった。
【0073】
一方、比較例1〜3は、塗工ロール、搬送ロールの回転速度が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、いずれも表面平滑性が不良であった。
【0074】
比較例4は、ポリエステルポリオール(A)を用いない湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を使用した態様であるが、表面平滑性及び初期クリープ性が不良であった。
【0075】
比較例5は、ポリエーテルポリオール(B)を用いない湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を使用した態様であるが、表面平滑性が不良であった。
【0076】
比較例6は、アクリルポリオール(C)を用いない湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を使用した態様であるが、表面平滑性及び初期クリープ性が不良であった。
【符号の説明】
【0077】
1 塗工装置
2 搬送ロール
3 塗工ロール
4 液溜め部
5 メータリングロール
6 ホットメルト接着剤
7 基材
8 送りロール
9 積層体
図1