特許第6557966号(P6557966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557966
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】積層体及び光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20190805BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20190805BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190805BHJP
   G02B 1/11 20150101ALN20190805BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   B32B27/40
   B32B27/20 Z
   B32B27/00 C
   !G02B1/11
   !G02B5/30
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-241400(P2014-241400)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101714(P2016-101714A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年9月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】小柳 達史
(72)【発明者】
【氏名】永浜 定
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206771(JP,A)
【文献】 特開2011−168053(JP,A)
【文献】 特開2011−174074(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/185685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
G02B 1/10− 1/18,
5/30
C09D 1/00− 10/00,
101/00−201/10
C09J 1/00− 5/10,
9/00−201/10
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル基材の表面に、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)及びシリカ(B)を含有する水性樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層を有し、前記プライマー層の表面に、活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成された硬化塗膜を有し、
前記スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)中のスルホン酸基濃度が、0.5〜2mol/kgの範囲であって、
前記シリカ(B)の平均粒子径が10〜50nmの範囲であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記シリカ(B)の含有量が、前記スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層体からなることを特徴とする光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成する際に、基材と前記硬化塗膜との密着性を向上するプライマーとしてシリカを含有する水性樹脂組成物を用いた積層体及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ等の表示装置は、通常、鮮明な映像を表示するために各種機能を有する多数の光学フィルムが積層され構成されている。この光学フィルムやシートの具体例としては、反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等が挙げられる。
【0003】
前記光学フィルムの基材としては、ポリエステルフィルム、とりわけ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが光学特性、機械強度、耐久性に優れることから使用されている。また、光学用途においては、ポリエステルフィルムの表面に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工、硬化することによって、ハードコート層を形成したり、活性エネルギー線硬化性組成物を注型した層を設け、ポリエステルフィルムをプリズムシートとしたりするが、ポリエステルフィルムは結晶性が高いことに起因して、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性が低いという問題があった。
【0004】
そこで、ポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上する方法として、基材であるポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との間に、アクリル樹脂やウレタン樹脂からなるプライマー層を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。その際、塗膜表面の平滑性やプライマーに用いられる樹脂のベタつきによって、フィルム巻き取り時またはフィルム巻き戻し時にブロッキングを起こすといった問題があった。このような問題の対処法に一つとしてコロイダルシリカなどの無機微粒子を含有したプライマーを塗工し、塗膜表面に微細な凹凸構造を形成させることでブロッキングを防止する方法が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、無機微粒子を配合したプライマーは、凝集や沈殿を起こす場合が多く、生産性を著しく低下させていた。
【0005】
そこで、ポリエステルフィルムと活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を十分なものとすることのでき、塗工後の塗膜にブロッキングを生じないプライマーを用いた光学フィルムとしても利用可能な積層体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−215843号公報
【特許文献2】特開2014−048348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ポリエステルフィルムのような難接着の基材であっても、その基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上するプライマーとして水性樹脂組成物を用いた積層体及び光学フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂及びシリカを含有する水性樹脂組成物をプライマーとして用いることで、ポリエステルフィルムのような難接着の基材であっても、その基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を大幅に向上した積層体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、基材の表面に、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)及びシリカ(B)を含有する水性樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層を有し、前記プライマー層の表面に、活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成された硬化塗膜を有することを特徴とする積層体及び光学フィルムに関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、その基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上するプライマーとして、保存安定性、塗膜の透明性に優れる水性樹脂組成物を用いていることから、ポリエステルフィルムのような難接着の基材であっても、その表面に活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成した積層体とすることができ、光学フィルムとして好適に用いることができる。このような光学フィルムとしては、例えば、反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等が挙げられる。また、これらの光学フィルムは、液晶ディスプレイ等の画像表示装置に応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体は、基材の表面に、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)及びシリカ(B)を含有する水性樹脂組成物を用いて形成されたプライマー層を有し、前記プライマー層の表面に、活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成された硬化塗膜を有するものである。
【0012】
前記スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって得られたものが挙げられ、前記ポリオールの一部にスルホン酸基またはスルホン酸基の金属塩を有するポリオールを用いることによって、ウレタン樹脂中にスルホン酸基を導入することができる。
【0013】
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、スルホン酸基またはスルホン酸基の金属塩を有するジカルボン酸またはそれらの塩と、低分子量のポリオールを反応させて得られるポリエステルポリオール、2−ブテン−1,4−ジオール等の不飽和基を有するポリオールをスルホン化することによって得られるスルホン酸基を有するポリオール等が挙げられる。
【0014】
前記スルホン酸基を有するジカルボン酸としては、例えば、4−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、及びこれらのジアルキルエステル等が挙げられる。また、これらの化合物が有するスルホン酸基が金属塩となっているものも用いることができる。これらの中でも、長期にわたる保存安定性を維持でき、より優れた耐水性や耐溶剤性を付与できることから、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルが好ましい。
【0015】
前記低分子量のポリオールとしては、分子量が50〜300の範囲のものが好ましく、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造を有するポリオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキサイド付加物の芳香環を有するポリオールなどが挙げられる。
【0016】
また、前記スルホン酸基を有するポリオールは、前記水性ウレタン樹脂(A)全量中に50〜90質量%の範囲で用いることが、良好な水分散性を付与できることから好ましい。
【0017】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオールとしては、前記スルホン酸基を有するポリオールの他に、必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0018】
前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0019】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0020】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0021】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の分子量50〜2,000であるジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリヘキサメチレンアジペート等のポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0022】
また、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたもの等が挙げられる。
【0023】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0024】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0025】
また、前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0026】
また、前記その他のポリオールとして、上記のポリオールの他に、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のポリオールを併用してもよい。
【0027】
前記水性ウレタン樹脂(A)の原料となるポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式構造を有するポリイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
本発明で用いる水性樹脂組成物の塗膜物性をより向上できることから、前記ポリイソシアネートの中でも、芳香族ポリイソシアネートまたは脂環式構造を有するポリイソシアネートが好ましく、さらに本発明で用いる水性樹脂組成物の塗膜の耐光性をより向上できることから、脂環式構造を有するポリイソシアネートがより好ましい。
【0029】
前記水性ウレタン樹脂(A)は、例えば、無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応させることで水性ウレタン樹脂を製造し、次いで、前記ウレタン樹脂中に親水性基がある場合には、該親水性基の一部または全部を必要に応じて中和したものを、水性媒体中に混合し水性化する際に、必要に応じて鎖伸長剤と混合し、反応させることによって製造することができる。
【0030】
前記ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、例えば、前記ポリオールが有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の当量比[イソシアネート基/水酸基]が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0031】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0032】
前記鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、o−トリレンジアミン、m−トリレンジアミン、p−トリレンジアミン等のジアミン化合物;ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を4個以上有するポリアミン化合物などが挙げられる。また、これらの鎖伸長剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0033】
前記鎖伸長剤を使用して得られたウレタン樹脂は、分子中にウレア結合を有するため、耐摩耗性に優れた塗膜を形成できることから好ましい。一方、前記ウレタン樹脂は、ウレア結合の影響によって耐アルコール性を低下させる傾向にあるため、耐溶剤性に優れた塗膜を形成する場合には、前記ウレタン樹脂として、鎖伸長剤を使用せずに得られたウレタン樹脂や、その使用量を最小限に制限して得られたウレタン樹脂、具体的には、前記ウレタン樹脂中に含まれるウレア結合の割合が10質量%以下であるものを用いることが好ましい。
【0034】
上記の方法で得られる前記水性ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、基材と活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性がより向上することから、3,000〜200,000の範囲が好ましく、5,000〜100,00の範囲がより好ましく、10,000〜80,000の範囲がさらに好ましい。
【0035】
前記スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)中のスルホン酸基濃度は、後述するシリカ(B)の本発明でプライマーとして用いる水性樹脂組成物中での分散性をより向上し、前記水性樹脂組成物の保存安定性をより向上できることから、0.5〜2mol/kgの範囲が好ましく、0.8〜1.5mol/kgの範囲がより好ましい。なお、本発明におけるスルホン酸基濃度とは、原料の使用量から算出したものである。
【0036】
前記シリカ(B)としては、本発明でプライマーとして用いる水性樹脂組成物の塗膜の透明性をより向上できることから、ナノメーターオーダーのサイズのものが好ましく、コロイダルシリカが好ましい。前記シリカ(B)の具体的な平均粒子径としては、5〜100nmの範囲が好ましく、10〜50nmの範囲がより好ましく、10〜20nmの範囲がさらに好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱法で測定した結果から求めたものである。
【0037】
前記シリカ(B)の含有量は、本発明でプライマーとして用いる水性樹脂組成物の塗膜の透明性をより向上でき、さらにブロッキングをより防止できることから、前記スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.2〜10質量部の範囲がより好ましく、0.4〜5質量部の範囲がさらに好ましい。
【0038】
また、前記スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(A)の含有量は、本発明でプライマーとして用いる水性樹脂組成物の保存安定性をより向上できることから、前記シリカ(B)100質量部に対して、20〜400質量部の範囲が好ましく、50〜300質量部の範囲がより好ましく、100〜250質量部の範囲がさらに好ましい。
【0039】
本発明で用いる水性樹脂組成物には、必要に応じて、造膜助剤、硬化剤、架橋剤、可塑剤、帯電防止剤、ワックス、光安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料等の添加剤;ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等のその他の樹脂などを配合することができる。
【0040】
前記架橋剤としては、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。前記メラミン化合物としては、アルキル化メチロールメラミン樹脂が挙げられる。前記アルキル化メチロールメラミン樹脂は、例えば、メチロール化メラミン樹脂と、メチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール(炭素原子数1〜6のアルコール)とを反応して得られるものである。前記メチロール化メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られるアミノ基を有するメチロールメラミン樹脂、イミノ基を有するメチロールメラミン樹脂、トリメトキシメチロールメラミン樹脂、ヘキサメトキシメチロールメラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、トリメトキシメチロールメラミン樹脂、ヘキサメトキシメチロールメラミン樹脂が好ましい。また、前記アルキル化メチロールメラミン樹脂としては、イミノ基を有するアルキル化メチロールメラミン樹脂、アミノ基を有するアルキル化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。
【0041】
本発明の積層体は、上記で説明した本発明で用いる水性樹脂組成物を用いて形成したプライマー層を有し、前記プライマー層の表面に活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成した硬化塗膜を有するものである。
【0042】
前記活性エネルギー線硬化性組成物としては、重合性不飽和基を有する樹脂と、重合性不飽和基を有する単量体とを含有するものが好ましく、これら重合性不飽和基を有する樹脂及び重合性不飽和基を有する単量体の種類は、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜に要求される特性に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0043】
前記重合性不飽和基を有する樹脂としては、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、アクリル(メタ)アクリレート樹脂、マレイミド基を有する樹脂等が挙げられる。これらの重合性不飽和基を有する樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0044】
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0045】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとをウレタン化反応させて得られるウレタン結合と(メタ)アクリロイル基とを有する樹脂等が挙げられる。
【0046】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。また、前記芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0048】
前記不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物、及び、グリコールの重縮合によって得られる硬化性樹脂である。前記α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸、及びこれらのエステル等が挙げられる。前記芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。脂肪族あるいは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等が挙げられる。前記グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、その他にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の酸化物も同様に用いることができる。
【0049】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0050】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールの水酸基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0051】
前記アクリル(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、グリシジルメタクリレート、及び必要に応じてアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート単量体とを重合させて、エポキシ基を有するアクリル樹脂を得た後、そのエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものが挙げられる。
【0052】
前記マレイミド基を有する樹脂としては、N−ヒドロキシエチルマレイミドとイソホロンジイソシアネートとをウレタン化して得られる2官能マレイミドウレタン化合物、マレイミド酢酸とポリテトラメチレングリコールとをエステル化して得られる2官能マレイミドエステル化合物、マレイミドカプロン酸とペンタエリスリトールのテトラエチレンオキサイド付加物とをエステル化して得られる4官能マレイミドエステル化合物、マレイミド酢酸と多価アルコール化合物とをエステル化して得られる多官能マレイミドエステル化合物等が挙げられる。
【0053】
前記重合性不飽和基を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、数平均分子量が150〜1000の範囲にあるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングルリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−プロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N,N−ヘキサメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ジマレイミドシクロヘキサン等のマレイミド化合物などが挙げられる。これらの重合性不飽和基を有する単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0054】
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、基材等に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。活性エネルギー線として紫外線を照射して、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化塗膜とする場合には、前記活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、活性エネルギー線として電子線、α線、β線又はγ線を照射して、前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化塗膜とする場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するため、光重合開始剤や光増感剤を添加する必要はない。
【0055】
前記光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0057】
本発明の積層体に用いる基材としては、例えば、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材、紙基材、木材基材、繊維質基材等が挙げられる。これらの基材の中でも、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜と基材との密着性を向上するため、本発明で用いる水性樹脂組成物をプライマーとして用いる場合は、プラスチック基材が好適である。
【0058】
前記プラスチック基材の材質としては、ポリエステル、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ABS樹脂とポリカーボネートとの複合樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン(COP)等)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。
【0059】
本発明で用いる水性樹脂組成物は、上記のプラスチック基材の中でも、ポリエステル基材のプライマーとして、非常に有用である。前記ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0060】
前記プラスチック基材としては、例えば、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成形品が挙げられる。また、プラスチックを素材としたフィルム基材も挙げられる。フィルム基材を本発明の積層体の基材とする場合には、反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等の光学フィルム;アルミ蒸着フィルム等の食品包装などの高機能フィルムに用いることができる。
【0061】
また、本発明の積層体を反射防止フィルム、位相差フィルム、プリズムレンズシート等の光学フィルムとする場合には、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)等の各種画面表示装置の部材として用いることができる。
【0062】
本発明で用いる水性樹脂組成物は、例えば、前記基材の表面に直接、塗布し、次いで、乾燥、硬化させることによって、基材の表面に塗膜を形成することができる。本発明で用いる水性樹脂組成物を乾燥し硬化を進行させる方法としては、常温下で1〜10日程度養生する方法であってもよいが、硬化を迅速に進行させることができるから、100℃〜150℃の温度で、1〜600秒程度加熱する方法が好ましい。また、比較的高温で変形や変色をしやすいプラスチック基材を用いる場合には、70℃〜100℃程度の比較的低温で加熱することが好ましい。
【0063】
前記基材の表面に、本発明で用いる水性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、フローコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、刷毛塗り、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法が挙げられる。
【0064】
本発明で用いる水性樹脂組成物を用いて形成する塗膜の膜厚は、使用される用途に応じて適宜調整可能であるが、通常は、0.01〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0065】
本発明の積層体は、上記のようにして得られた本発明で用いる水性樹脂組成物の塗膜であるプライマー層の表面に、さらに、前記活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成することにより得ることができる。なお、前記活性エネルギー線硬化性組成物の塗布方法は、上記の本発明で用いる水性樹脂組成物の塗布方法と同じ方法を用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例及び比較例により、具体的に説明する。
【0067】
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、1,6−ヘキサンジオール47.2質量部、ε−カプロラクトン42.5質量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル10.7質量部、エチレングリコール6.2質量部、及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み、180〜230℃で酸価が1以下になるまで重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(1)を得た。
【0068】
(合成例2:ポリエステルポリオール(2)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、1,6−ヘキサンジオール47.2量部、アジピン酸52.8質量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル10.6質量部、エチレングリコール6.2質量部、及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み、180〜230℃で酸価が1以下になるまで重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(2)を得た。
【0069】
(合成例3:ポリエステルポリオール(3)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、1,6−ヘキサンジオール47.2質量部、フタル酸59.2質量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル10.2質量部、エチレングリコール6.2質量部、及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み、180〜230℃で酸価が1以下になるまで重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(3)を得た。
【0070】
(合成例4:ポリエステルポリオール(4)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸27.6質量部、テレフタル酸27.6質量部、エチレングリコール11.7質量部、ジエチレングリコール19.9質量部、及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み、180〜230℃で酸価が1以下になるまで重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(4)を得た。
【0071】
(製造例1:スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(I)の合成)
反応容器に合成例1で得られたポリエステルポリオール(1)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン33.7質量部を加えて攪拌し均一に混合した。次に、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール6.1質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート23.1質量部を加えて80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n−ブタノール3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分80質量%のスルホン酸基を有するウレタン樹脂(I)を得た。
【0072】
次に、上記で得られたウレタン樹脂(I)139.8質量部にイオン交換水391.5質量部をゆっくりと添加した。次いで、減圧下、30℃〜50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、不揮発分25.0質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(I)の水分散体を得た。なお、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂中のスルホン酸基濃度は、1.04mol/kgであった。
【0073】
(製造例2:スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)の合成)
反応容器に合成例2で得られたポリエステルポリオール(2)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン33.7質量部を加えて攪拌し均一に混合した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネート23.1質量部を加えて80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n−ブタノール3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分80質量%のスルホン酸基を有するウレタン樹脂(II)を得た。
【0074】
次に、上記で得られたウレタン樹脂(II)139.8質量部にイオン交換水335.5質量部をゆっくりと添加した。次いで、減圧下、30℃〜50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、不揮発分25.0質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)の水分散体を得た。なお、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂中のスルホン酸基濃度は、1.04mol/kgであった。
【0075】
(製造例3:スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(III)の合成)
反応容器に合成例3で得られたポリエステルポリオール(3)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン33.7質量部を加えて攪拌し均一に混合した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネート11.5質量部、及びイソホロンジイソシアネート11.5質量部を加えて80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n−ブタノール3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分80質量%のスルホン酸基を有するウレタン樹脂(III)を得た。
【0076】
次に、上記で得られたウレタン樹脂(III)139.8質量部にイオン交換水391.5質量部をゆっくりと添加した。次いで、減圧下、30℃〜50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、不揮発分25.0質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(III)の水分散体を得た。なお、スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂中のスルホン酸基濃度は、1.04mol/kgであった。
【0077】
(製造例4:カルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)の合成)
反応容器に合成例4で得られたポリエステルポリオール(4)100質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン33.7質量部を加えて攪拌し均一に混合した。次に、2,2’−ジメチロールプロピオン酸6.1質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート23.1質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化反応を行った。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n−ブタノール3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、不揮発分80質量%のカルボキシル基を有するウレタン樹脂(IV)を得た。
【0078】
次に、上記で得られたウレタン樹脂(IV)139.8質量部にトリエチルアミン3.7質量部を加え、イオン交換水385.2質量部をゆっくりと添加した。次いで、減圧下、30℃〜50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、不揮発分22.5質量%のカルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)の水分散体を得た。
【0079】
(調製例1:水性樹脂組成物(1)の調製)
製造例1で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(I)水分散体400質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(I)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)2質量部(シリカとして0.4質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(1)を得た。
【0080】
(調製例2:水性樹脂組成物(2)の調製)
製造例2で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)水分散体400質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)2質量部(シリカとして0.4質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(2)を得た。
【0081】
(調製例3:水性樹脂組成物(3)の調製)
製造例3で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(III)水分散体400質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(III)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)2質量部(シリカとして0.4質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(3)を得た。
【0082】
(調製例4:水性樹脂組成物(4)の調製)
製造例1で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(I)水分散体400質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(I)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)4質量部(シリカとして0.8質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(4)を得た。
【0083】
(調製例5:水性樹脂組成物(5)の調製)
製造例2で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)水分散体400質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)4質量部(シリカとして0.8質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(5)を得た。
【0084】
(調製例6:水性樹脂組成物(6)の調製)
製造例2で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)水分散体400質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(II)として100質量部)と製造例3で得られた不揮発分25質量%のスルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(III)水分散体2質量部(スルホン酸基を有する水性ウレタン樹脂(III)として0.5質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)4質量部(シリカとして0.8質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(6)を得た。
【0085】
(比較調製例1:水性樹脂組成物(C1)の調製)
製造例4で得られた不揮発分22.5質量%のカルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)水分散体444質量部(カルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)2.2質量部(シリカとして0.44質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(C1)を得た。
【0086】
(比較調製例2:水性樹脂組成物(C2)の調製)
製造例4で得られた不揮発分22.5質量%のカルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)水分散体444質量部(カルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)4.45質量部(シリカとして0.89質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(C2)を得た。
【0087】
(比較調製例3:水性樹脂組成物(C3)の調製)
製造例4で得られた不揮発分22.5質量%のカルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)水分散体444質量部(カルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂(IV)として100質量部)とコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスOL」、不揮発分20質量%分散液)11.1質量部(シリカとして2.22質量部)とを混合することによって水性樹脂組成物(C3)を得た。
【0088】
調製例1〜6で得られた水性樹脂組成物(1)〜(6)、及び比較調製例1〜3で得られた水性樹脂組成物(C1)〜(C3)の組成を表1に示す。なお、表1中の組成(配合量)は、不揮発分量で表す。
【0089】
【表1】
【0090】
(調製例7:紫外線硬化性組成物(UV−1)の調製)
ウレタンアクリレート樹脂(DIC株式会社製「ユニディック17−824−9」)50質量部及びメチルエチルケトン12.5質量部を混合することによって、紫外線硬化性組成物を得た。
【0091】
(実施例1:積層体(1)の作製)
調製例1で得られた水性樹脂組成物(1)100質量部と、イオン交換水275質量部とを混合することによってプライマー(P−1)を得た。次いで、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)製フィルム基材(厚さ125μm)の表面に、乾燥後の膜厚が約1μmとなるように、上記で得られたプライマー(P−1)を塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層を形成した。
【0092】
前記プライマー層の表面に、調製例7で得られた紫外線硬化性組成物(UV−1)を、15μmの膜厚になるように塗布し、80℃で10分間加熱した後、その塗布面に、高圧水銀灯を光源として、照射量0.5J/cmで紫外線を照射することによって、前記基材の表面にプライマー層を有し、そのプライマー層の表面に紫外線硬化性組成物の硬化塗膜(以下、「UV塗膜」と略記する。)を有する積層体(1)を得た。
【0093】
(実施例2〜6:積層体(2)〜(6)の作製)
実施例1で用いた水性樹脂組成物(1)に代えて、調製例2〜6で得られた水性樹脂組成物(2)〜(6)を用いてプライマー(P−2)〜(P−6)を調製して用いた以外は、実施例1と同様に行い、積層体(2)〜(6)を得た。
【0094】
(比較例1:積層体(R1)の作製)
比較調製例1で得られた水性樹脂組成物(C1)100質量部と、イオン交換水275質量部とを混合することによってプライマー(P’−1)を得た。次いで、PET製フィルム基材(厚さ125μm)の表面に、乾燥後の膜厚が約1μmとなるように、上記で得られたプライマー(P’−1)を塗布し、150℃で5分間加熱することによって、前記基材の表面にプライマー層を形成した。
【0095】
前記プライマー層の表面に、調製例7で得られた紫外線硬化性組成物(UV−1)を、15μmの膜厚になるように塗布し、80℃で10分間加熱した後、その塗布面に、高圧水銀灯を光源として、照射量0.5J/cmで紫外線を照射することによって、前記基材の表面にプライマー層を有し、そのプライマー層の表面にUV塗膜を有する積層体(R1)を得た。
【0096】
(比較例2及び3:積層体(R2)及び(R3)の作製)
比較例1で用いた水性樹脂組成物(C1)に代えて、比較調製例2〜5で得られた水性樹脂組成物(C2)及び(C3)を用いてプライマー(P’−2)及び(P’−3)を調製して用いた以外は、比較例1と同様に行い、積層体(R2)及び(R3)を得た。
【0097】
上記の実施例及び比較例で得られた水性樹脂組成物及び積層体を用いて、下記の評価を行った。
【0098】
[保存安定性の評価]
調製例及び比較調製例で得た製造直後の水性樹脂組成物を、常温環境下で7日間保存した。水性樹脂組成物の外観を目視で観察し、下記基準に基づいて保存安定性を評価した。
◎:凝集物が全く見られず、製造直後のものと比較して変化がなかった。
○:若干の沈殿物が確認されたが、実用上使用可能なレベルであり、また、再度攪拌することによって、沈殿物の再分散が可能であった。
△:沈殿物がやや多く、再度攪拌してもごく一部の沈殿物が残留し、十分に再分散することができなかった。
×:樹脂全量の約50質量%以上が沈殿し、再度の攪拌によっても、再分散ですることができなかった。
【0099】
[基材密着性の評価]
上記で得られた積層体のUV塗膜表面に、ニチバン株式会社製の24mm幅の粘着テープを貼付した。次いで、前記粘着テープを前記プライマー層に対して垂直方向に引張り、前記粘着テープをプライマー層の表面から剥がした際の、前記プライマー層の表面の状態を、下記評価基準に従って基材密着性を評価した。JIS試験方法(JIS K5600:1999)に準拠した方法で測定した。
◎:基材表面から、UV塗膜が全く剥離しなかった。
○:基材表面から、UV塗膜の全面積の10%未満が剥離した。
△:基材表面から、UV塗膜の全面積の10%以上50%未満が剥離した。
×:基材表面から、UV塗膜の全面積の50%以上が剥離した。
【0100】
[フィルム外観の評価(ヘイズ値の測定)]
上記で得られた積層板のヘイズ値を、ヘイズメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。JIS試験方法(JIS K7136:2000)に準拠した方法にて測定した。ヘイズ値(H)は下記計算式より算出した。また、PET基材のみのヘイズ値も測定し、そのヘイズ値は2.05%であった。得られたヘイズ値に基づいて下記評価基準に従いフィルム外観を評価した。
H(%)=Td/Tt×100
H;ヘイズ(曇値)(%)
Td;拡散透光率(%)
Tt;全光線透過率(%)
◎:PET基材のみのヘイズ値に対して、ヘイズ値の上昇率が10%未満であり、凝集物は見られなかった。
○:PET基材のみのヘイズ値に対して、上昇率が10%以上20%未満であり、凝集物は見られなかった。
△:PET基材のみのヘイズ値に対して、上昇率が20%以上50%未満であり、凝集物がやや見られた。
×:PET基材のみのヘイズ値に対して、上昇率が50%以上であり、凝集物が数多く見られた。
【0101】
上記の評価結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示した実施例1〜6の評価結果から、本発明の積層体に用いる水性樹脂組成物は、保存安定性に優れ、また、前記水性樹脂組成物を用いて得られた塗膜の透明性に優れることが確認できた。さらに、本発明の積層体は、基材との密着性に優れることも確認できた。
【0104】
一方、比較例1〜3は、カルボキシル基を有する水性ウレタン樹脂を含有する水性樹脂組成物を用いた例のものである。本発明の積層体に用いる水性樹脂組成物に比べ、保存安定性が著しく悪く、また、前記水性樹脂組成物を用いて得られた塗膜の透明性も低いことが確認できた。さらに、比較例1〜3で得られた積層体は、基材との密着性も不十分であることが確認できた。