特許第6557984号(P6557984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6557984アルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法、及び封孔処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557984
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】アルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法、及び封孔処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/18 20060101AFI20190805BHJP
   C25B 1/30 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C25D11/18 301E
   C25B1/30
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-22436(P2015-22436)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-145382(P2016-145382A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年1月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年12月16日に一般社団法人 表面技術協会のホームページで公開された平成27年3月4日〜6日に開催される「第131回講演大会」の「プログラム(速報版)」
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】永井 達夫
【審査官】 印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−084397(JP,A)
【文献】 特開2003−049299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化処理により表面に細孔を形成したアルミニウムまたはアルミニウム合金に対して、封孔処理液中で細孔表面の封孔処理を行うアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法であって、該封孔処理液が硫酸と過硫酸を含有し、該封孔処理液の酸化還元電位が+1.5〜+3.5Vであることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項2】
請求項1において、電解処理、酸化剤の添加、及び高い酸化還元電位を有する液の添加のいずれか1以上の手法により、前記封孔処理液の酸化還元電位を+1.5〜+3.5Vに調整することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記封孔処理液の循環処理、前記封孔処理液の一過式添加、及び前記封孔処理液へのガス吹き込みのいずれか1以上の手法により、前記封孔処理液の酸化還元電位を+1.5〜+3.5Vに調整することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記封孔処理液の温度が60〜90℃、酸濃度が350〜1,600g/L、酸化剤濃度が2〜15g/Lであり、非通電下で封孔処理することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記封孔処理液の硫酸濃度が350〜1,600g/Lで、過硫酸濃度が2〜15g/Lであることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記硫酸を含有する封孔処理液を過硫酸生成用電解セルに循環流通させて電解処理することにより過硫酸を含有させることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記封孔処理液が硫酸と過酸化水素とを混合することにより過硫酸を生成させてなることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記封孔処理液が硫酸とオゾンとを混合することにより過硫酸を生成させてなることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金が、厚さ1mm以上のアルミニウム基材またはアルミニウム合金基材であることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【請求項10】
硫酸含有処理液を貯留するための封孔処理槽と、該封孔処理槽内の硫酸含有処理液が循環される過硫酸生成用電解セルとを備え、該過硫酸生成用電解セルは、該硫酸含有処理液を電解処理して過硫酸を生成させることで、該封孔処理槽内の液の酸化還元電位を+1.5〜+3.5Vに調整することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の陽極酸化処理面に形成された細孔を封孔処理するアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法、及び封孔処理装置に関する。本発明はまた、この封孔処理方法により封孔処理されたアルミニウム基材に関する。本発明のアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法、及び封孔処理装置は、例えば、アルミサッシの表面アルマイト処理及びベーマイト処理として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
一般建材や器物に用いられるアルミニウムまたはアルミニウム合金は、そのままでは長期使用中に腐食、すなわち溶解し、粉ふきを発生したりするため、通常、陽極酸化処理される。また、ドライエッチング装置等に使用される部品は内表面が絶縁性でなければならないので、耐プラズマ性や耐ガス腐食性を付与するため陽極酸化処理される。
さらに、陽極酸化処理したままでは、陽極酸化処理で形成された細孔の孔底からのアルミニウムの溶出や陽極酸化処理で使用した処理液からの吸着物質の溶出があるため、実用に当たっては何らかの封孔処理が施されている。
【0003】
特許文献1には、アルミニウム容器を陽極酸化する方法として、シュウ酸溶液や硫酸溶液、ほう酸溶液を用いる基本的な陽極酸化法が記載されている。
陽極酸化処理に引続いて行なわれる封孔処理については、蒸気封孔、温水封孔及び封孔剤を用いた封孔など各種の方法があるが、封孔剤を用いる方法が主に用いられている。封孔剤としては酢酸ニッケルをはじめ各種のものが知られており、これらの封孔剤を含む70〜100℃の水溶液を収容した封孔槽中に、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を浸漬することにより、封孔処理が行なわれる(例えば特許文献2)。
なお、溶液皮膜の封孔処理に先立ち、陽極酸化皮膜の細孔内に抗菌剤等の機能性材料を充填した後封孔処理することで封入し、機能性を付与することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−103377号公報
【特許文献2】特開2004−277866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の封孔処理では、処理に長時間を要するため、細孔内に例えば抗菌剤等を封入する場合には、封入した剤が不純物として処理液に拡散して溶出する;孔内表面の水和化が進み、孔が細まるため、封入量が減少する;といった問題が起こる。また、処理時間が長いことは、生産性に影響し、処理コストを高めることにもつながっている。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、不純物の溶出量が少なく、かつ細孔表面付近のみを従来よりも短時間で封孔することができるアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法と、そのための処理装置を提供することを目的とする。本発明はまた、この封孔処理方法により封孔処理されたアルミニウム基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が種々検討を重ねた結果、封孔処理時の処理液として、酸化還元電位が所定の範囲のものを用いることにより、短時間で効率的に封孔処理することができ、強固な封孔処理面を形成することができることを見出した。
【0008】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0009】
[1] 陽極酸化処理により表面に細孔を形成したアルミニウムまたはアルミニウム合金に対して、封孔処理液中で細孔表面の封孔処理を行うアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法であって、該封孔処理液の酸化還元電位が+1.5〜+3.5Vであることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0010】
[2] [1]において、前記封孔処理液がリン酸、シュウ酸、酢酸、硫酸、ホウ酸及びフッ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0011】
[3] [1]又は[2]において、電解処理、酸化剤の添加、及び高い酸化還元電位を有する液の添加のいずれか1以上の手法により、前記封孔処理液の酸化還元電位を+1.5〜+3.5Vに調整することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0012】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記封孔処理液の循環処理、前記封孔処理液の一過式添加、及び前記封孔処理液へのガス吹き込みのいずれか1以上の手法により、前記封孔処理液の酸化還元電位を+1.5〜+3.5Vに調整することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法。
【0013】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記封孔処理液の温度が60〜90℃、酸濃度が350〜1,600g/L、酸化剤濃度が2〜15g/Lであり、非通電下で封孔処理することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面処理方法。
【0014】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記封孔処理液が硫酸と過硫酸を含有することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0015】
[7] [6]において、前記封孔処理液の硫酸濃度が350〜1,600g/Lで、過硫酸濃度が2〜15g/Lであることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0016】
[8] [6]又は[7]において、前記硫酸を含有する封孔処理液を過硫酸生成用電解セルに循環流通させて電解処理することにより過硫酸を含有させることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0017】
[9] [6]又は[7]において、前記封孔処理液が硫酸と過酸化水素とを混合することにより過硫酸を生成させてなることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0018】
[10] [6]又は[7]において、前記封孔処理液が硫酸とオゾンとを混合することにより過硫酸を生成させてなることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0019】
[11] [1]ないし[10]のいずれかにおいて、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金が、厚さ1mm以上のアルミニウム基材またはアルミニウム合金基材であることを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法。
【0020】
[12] [1]ないし[11]のいずれかに記載のアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理方法により封孔処理されてなるアルミニウム基材。
【0021】
[13] 陽極酸化処理により表面に細孔を形成したアルミニウムまたはアルミニウム合金を封孔処理液中で封孔処理する封孔手段を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理装置であって、該封孔処理液の酸化還元電位を+1.5〜+3.5Vに調整する手段を有することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理装置。
【0022】
[14] 硫酸含有処理液を貯留するための処理槽と、該処理槽内の硫酸含有処理液が循環される、過硫酸生成用電解セルとを備えたことを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金の封孔処理装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の封孔処理にあたり、不純物の溶出を抑えて、細孔表面付近のみを従来よりも短時間で効率的に封孔処理することができ、良好な封孔処理面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明装置の一例を示す模式的な断面図である。
図2】実施例1で得られた陽極酸化皮膜の電子顕微鏡写真である。
図3】実施例1で得られた封孔処理面の電子顕微鏡写真である。
図4】実験例1で得られた封孔処理膜の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明では、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、これらを「アルミニウム基材」又は「アルミニウム基板」と称す場合がある。)を陽極酸化処理して表面に細孔を形成した後、この細孔表面を封孔処理するにあたり、封孔処理に用いる封孔処理液として酸化還元電位が+1.5〜+3.5Vのものを用いる。
【0027】
<作用機構>
一般に、アルミニウムを陽極酸化処理すると、陽極では、
Al→Al3++3e …(1)
の反応に従ってAl3+が溶出する。
溶出したAl3+は、陽極反応として一部または局部電池で起こる次式(2)で表される水分解反応によって発生する酸素と反応し、Alとなる。
3HO→3(O)+6H+6e …(2)
【0028】
式(1),(2)の総括反応は次式(3)の通りとなる。
2Al+3HO→Al+6H+12e …(3)
【0029】
アルミニウムの陽極酸化処理は式(1)のAl溶解と式(2)、(3)のAl酸化(Al生成)との競争反応であり、Al酸化速度が速くなるほど微細な孔を開けることが可能となる。
【0030】
アルミニウムの陽極酸化皮膜に関する国内規格JIS H8601−1968では、封孔に水和封孔を規定している。さらに、陽極酸化処理技術基準(JIS H9500−1971、JIS H9501−1971)においては、加圧水蒸気封孔または煮沸封孔における処理条件を規定して、煮沸封孔の場合には封孔助剤の添加を認めている。これらの反応は、陽極酸化で生成した無水状態のAlを水和物(Al・HO)に変化させ、その際の体積変化によって微細孔を閉塞するという見解が有力である。
【0031】
これに対して、本発明における封孔処理は、従来法と全く異なる考え方に基づくものである。
即ち、本発明では、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム基材をpHの低い酸溶液に浸漬することにより、処理液に接触する陽極酸化皮膜表面において、下記式(4)で表される、前記式(3)の逆向きの反応を起こす。
Al+6H→2Al3++3HO …(4)
上記式(4)の反応と同時に、陽極酸化層の下に存在するアルミニウム基材からAl溶出分とあわせ、下記式(5)で表される、前記式(3)の正方向の反応が起こる。
Al3++3HO→Al+6H …(5)
【0032】
即ち、本発明における封孔処理は、上記式(4)のAl溶解と上記式(5)のAl酸化(Al生成)との競争反応であり、Al酸化速度が速くなるほど封孔速度が速くなるが、このような封孔処理において、本発明では、酸化還元電位が+1.5V以上の封孔処理液を用いることにより、Alの酸化反応が加速する。これにより、封孔速度が速くなって、短時間で効率的に封孔処理を行える。
このように、封孔処理を短時間で行えることから、陽極酸化皮膜の細孔中に機能性材料を封入する場合も、その溶出や封入量の減少を抑制することができる。
封孔処理液の酸化還元電位は高い程好ましいが、酸化還元電位を最も高くするためにフッ酸を用いた際に得られる酸化還元電位は+3.5Vであるので、酸化還元電位の上限は+3.5Vである。ただし、フッ酸を使用すると処理液寿命が短くなるため、フッ酸以外の例えばフッ素等による酸化還元電位として、封孔処理液の酸化還元電位は好ましくは+1.7〜+3.0Vであり、より好ましくは+2.0〜+2.1Vである。
【0033】
<アルミニウム基材>
本発明で処理するアルミニウム基材は特に限定されず、例えば純アルミニウムやアルミニウムを主成分とし微量(例えば5重量%以下)の異元素を含む合金が挙げられる。アルミニウム基材の厚さは、良好な封孔処理面を形成する観点から1mm以上が好ましい。アルミニウム基材の厚さの上限には特に制限はない。
アルミニウム基材は、陽極酸化処理に先立ち、予め脱脂処理や電解研磨、鏡面仕上げ処理といった表面処理を施しても良い。
【0034】
<陽極酸化処理>
本発明において、アルミニウム基材に陽極酸化皮膜を形成する方法には特に制限はないが、以下の理由により、アルミニウムの溶出を抑えて良好な陽極酸化皮膜を形成できることから、酸化還元電位+1.5〜+3.5Vの陽極酸化処理液中で陽極酸化処理することが好ましい。
【0035】
即ち、前述の通り、アルミニウムの陽極酸化処理は式(1)のAl溶解と式(2)、(3)のAl酸化(Al生成)との競争反応であり、Al酸化速度が速くなるほど微細な孔を開けることが可能となるが、酸化還元電位が+1.5V以上の陽極酸化処理液を用いると、Alの酸化反応が加速する。これにより、アルミニウムの溶出量は抑えられ、アルミニウム基材表面には孔径10nm以下、例えば6〜10nmの微細孔が多数効率よく形成され、微細孔が均一に分散した緻密な陽極酸化処理表面となる。
陽極酸化処理液の酸化還元電位は高い程好ましいが、酸化還元電位を最も高くするためにフッ酸を用いた際に得られる酸化還元電位は+3.5Vであるので、酸化還元電位の上限は+3.5Vである。ただし、フッ酸を使用すると処理液寿命が短くなるため、フッ酸以外の例えばフッ素等による酸化還元電位として、陽極酸化処理液の酸化還元電位は好ましくは+1.7〜+3.0Vであり、より好ましくは+2.0〜+2.1Vである。
【0036】
以下、本発明において、このような陽極酸化処理液を用いた陽極酸化処理を行った場合を例示して本発明を説明するが、本発明に係る陽極酸化処理は、何ら、上記陽極酸化処理液を用いるものに限定されない。
【0037】
<陽極酸化処理液・封孔処理液>
(陽極酸化処理液)
陽極酸化処理液としては、アルミニウムの陽極酸化処理に一般的に用いられているものをいずれも使用することができ、これらの一般的な処理液の酸化還元電位を上記範囲に調整して用いることが好ましい。
【0038】
陽極酸化処理液としては、リン酸、シュウ酸、酢酸、硫酸、ホウ酸及びフッ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸を含む水溶液に対して、酸化還元電位の調整のために、電解処理、酸化剤の添加、及び高い酸化還元電位を有する液(以下、「高ORP液」と称す場合がある。)の添加のいずれか1以上の処理を施したものが好ましい。
例えば、酸化剤としては、オゾンや過酸化水素、過硫酸、過酢酸、過ホウ酸等の1種又は2種以上を用いることができ、高ORP液としては、フッ酸、フッ素等を用いることができる。
電解処理については後述する。
【0039】
陽極酸化処理液の酸化還元電位調整のための上記の処理は、例えば以下のような方法で行うことができる。
(1) 陽極酸化を行うための処理液を貯留した処理槽(以下、単に「処理槽」と称す場合がある。)と、酸化還元電位調整のための調整槽とに処理液を循環させて、調整槽において電解処理、酸化剤添加又は高ORP液の添加を行う(循環処理)。
(2) 処理槽に所定の酸化還元電位の処理液を一過式で添加する(一過式添加)。
(3) 処理槽内の処理液にオゾンガス等のガスを吹き込む(ガス吹き込み)。
【0040】
陽極酸化処理液は、例えば前述の酸の濃度が50〜300g/L、特に50〜200g/Lであり、酸化剤濃度が1〜30g/L、特に2〜20g/Lの水溶液が好ましく、このうち、酸濃度や酸化剤濃度は、用いる酸や酸化剤の種類に応じて、即ち生成するHイオン量に応じて、適宜決定される。
酸濃度が上記下限よりも低いと陽極酸化処理を行っても孔が形成されず、上記上限よりも高いと形成される孔の孔径が大きくなり過ぎる。
また、酸化剤濃度が上記下限よりも低いと、形成される孔の孔径が過大となり、上記上限よりも高いと、後述の過硫酸生成用電解セル等の酸化還元電位調整のための設備が過大となり、或いは酸化剤添加コストがかさみ好ましくない。
なお、Alの溶解を防止して、陽極酸化による電解処理のみで細孔表面を形成するために、陽極酸化処理液のpHは低い方が好ましく、−0.2〜+0.3程度であることが好ましい。
【0041】
陽極酸化処理液としては、特に硫酸と過硫酸を含有するものが好ましく、硫酸濃度が50〜200g/L、特に75〜150g/Lで、過硫酸濃度が2〜20g/L、特に5〜15g/Lの水溶液を用いることが好ましい。
【0042】
(封孔処理液)
封孔処理液としては、上述の陽極酸化処理液と同様のものを用いることができるが、封孔処理液と陽極酸化処理液とは同一の酸や酸化剤を含むものに限らず、配合成分は互いに異なるものであってもよい。
ただし、一般的には、同一の処理槽内で電圧を印加して陽極酸化処理した後、必要に応じて処理液の成分調整を行った後、通電を停止して封孔処理を行うことが好ましく、この観点において、同種の酸や酸化剤を含むものを用いることが好ましい。
【0043】
封孔処理液の酸化還元電位の調整等についても上述の陽極酸化処理液の場合と同様に行うことができるが、封孔処理液の酸化還元電位の調整手法と、陽極酸化処理液の酸化還元電位の調整手法とは同一であってもよく、異なるものであってもよい。
【0044】
封孔処理液は、例えば前述の酸の濃度が350〜1,600g/Lであり、酸化剤濃度が2〜15g/Lの水溶液が好ましく、このうち、酸濃度や酸化剤濃度は、用いる酸や酸化剤の種類に応じて、即ち生成するHイオン量に応じて、適宜決定される。
封孔処理液の酸濃度が上記範囲よりも低すぎても、高すぎても封孔速度が遅くなる。また、酸化剤濃度が上記下限よりも低すぎると封孔速度が遅くなり、上記上限よりも高すぎると、後述の過硫酸生成用電解セル等の酸化還元電位調整のための設備が過大となる。また、酸化剤コストが高くつく。
なお、封孔処理液のpHは−0.5〜−1.0程度であることが好ましい。
【0045】
封孔処理液として、過硫酸を含む硫酸含有処理液を用いる場合、硫酸濃度が350〜1,600g/L、特に500〜1,500g/Lで、過硫酸濃度が2〜15g/L、特に5〜15g/Lの水溶液を用いることが好ましい。
【0046】
<過硫酸の生成>
硫酸を含有する陽極酸化処理液及び封孔処理液(以下、単に「処理液」と称す。)に過硫酸を存在させて処理液を+1.5〜+3.5Vに調整する方法としては特に制限はなく、以下の方法を採用することができる。
(1) 硫酸溶液を硫酸電解セルに導入し、電解処理して過硫酸を生成させる。
(2) 硫酸と過酸化水素水を混合して過硫酸を生成させる。
(3) 硫酸とオゾンを混合して過硫酸を生成させる。
【0047】
上記(2)の方法の場合、例えば、硫酸濃度が96〜98重量%の硫酸溶液に、過酸化水素濃度が30〜35重量%の過酸化水素溶液を容積比で1対35から4対30の範囲で混合することにより、前述の陽極酸化処理に好適な処理液を得ることができる。また、硫酸濃度が96〜98重量%の硫酸溶液に、過酸化水素濃度が30〜35重量%の過酸化水素溶液を容積比で1対4から5対1の範囲で混合することにより、前述の封孔処理に好適な処理液を得ることができる。
【0048】
また、上記(3)の方法の場合、硫酸濃度が50〜200g/Lの硫酸溶液に、オゾン濃度20ppm以上、例えば20〜60ppmとなるようにオゾンを添加することにより、前述の陽極酸化処理に好適な処理液を得ることができる。また、硫酸濃度が350〜1,600g/Lの硫酸溶液に、オゾン濃度5ppm以上、例えば5〜10ppmとなるようにオゾンを添加することにより、前述の封孔処理に好適な処理液を得ることができる。
【0049】
硫酸と過酸化水素を混合したときに生成する過硫酸はペルオキソ一硫酸(HSO)で、混合直後の過硫酸濃度は高いが、過硫酸の自己分解に伴う減少分を補うために過酸化水素を繰り返し添加しなければならない。その添加により硫酸濃度が低下するという課題がある。硫酸にオゾンを溶解させたときに生成する過硫酸はペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸(H)であるが、それらの生成濃度は非常に低い。これに対して、硫酸を電気分解して得られる過硫酸はペルオキソ二硫酸であり、時間とともに化学平衡によりペルオキソ一硫酸との両種が存在することになるものの、それらの濃度は高く、かつ硫酸濃度を変化させることなく過硫酸濃度の調整ができるので、本発明では硫酸を電気分解して過硫酸を生成させることが好ましい。電気分解に供する硫酸含有処理液の硫酸濃度は、各々、前述の各工程に用いる硫酸含有処理液の硫酸濃度と同程度である。
【0050】
図1は、このような硫酸電解セルを備えた本発明の封孔処理装置の一例を示す模式的断面図である。この装置は、封孔処理に先立つ陽極酸化処理も同一の処理槽内で行えるものである。
【0051】
処理槽1の外周に恒温ヒータ2が設けられている。槽1内には、枠状ホルダ4によって周縁部が保持されたアルミニウム基板3が板面を上下方向として配置されている。アルミニウム基板3の被表面処理面に対峙してカーボン等よりなる板状の陰極5が配置されている。陰極5は、アルミニウム基板3と略同一の大きさのものであり、板面をアルミニウム基板3と平行としている。アルミニウム基板3と陰極5には直流電源6より電圧が印加される。
処理槽1内には、液を撹拌するための散気管等の撹拌手段を設置してもよい。
【0052】
処理槽1内の液は、配管7、ポンプ8、電解セル9及び配管10を介して循環される。電解セル9内にダイヤモンド電極よりなる陽極9a及び陰極9bと、両者間に配置されたバイポーラ電極9cとが設置されている。陽極9a及び陰極9bに電源ユニットから所定の電流が通電され、硫酸が電解されてペルオキソ二硫酸等の過硫酸が生成する。
【0053】
陽極酸化及びその後の封孔処理は、図1に示す装置を用い、所定の硫酸及び過硫酸濃度の硫酸含有処理液を得、通電を行いながら所定時間陽極酸化処理を行った後、通電を停止すると共に硫酸含有処理液の硫酸及び過硫酸濃度を調整し、陽極酸化処理に引き続いて非通電下に同一の処理槽内で封孔処理を行ってもよいし、図1に示す装置を用いて陽極酸化処理した後、陰極5及び電源6を省略したこと以外は同様の構成とされた封孔処理用の装置を用いて封孔処理を行ってもよい。この際、封孔処理槽と陽極酸化槽とで電解セルを共用するようにしてもよい。
本発明の封孔処理装置が封孔処理のみを行うものである場合は、図1において、陰極5及び電源6を省略した構成のものとすることができる。
【0054】
なお、上記の説明では、硫酸の電解処理や酸化で過硫酸を生成させる場合を例示したが、過硫酸に限らず、炭酸の電解処理或いは酸化で過炭酸(ペルオキソ一炭酸(HCO)、ペルオキソ二炭酸(H))を生成させることができ、また、ホウ酸の電解処理或いは酸化で過ホウ酸を、更に酢酸の電解処理或いは酸化で過酢酸を生成させることができ、いずれも本発明における陽極酸化処理液及び封孔処理液として使用することができる。
【0055】
<処理条件>
(陽極酸化処理条件)
以下に、上記のような陽極酸化処理液を用いる陽極酸化工程の処理条件について説明する。
【0056】
陽極酸化処理時の温度(処理液の温度)は、0〜30℃程度が好ましい。この温度が低すぎると処理時間が長くなり、高すぎると孔が開かなくなるおそれがある。
【0057】
印加電圧は10〜30V、電流密度は2.5〜6A/dm程度が好ましい。印加電圧及び電流密度が低すぎると孔が開かなくなり、陽極酸化被膜が破れるおそれがある。
【0058】
陽極酸化の処理時間は、用いる陽極酸化処理液の酸化還元電位や酸濃度や酸化剤濃度、印加電圧等の処理条件に応じて、目的とする陽極酸化処理の程度(形成する陽極酸化皮膜の厚さ)によって適宜調整される。例えば、1.5〜3.0時間程度の陽極酸化処理により、膜厚50〜85μm程度の陽極酸化皮膜を形成することが好ましい。
【0059】
(封孔処理条件)
以下に、上記の封孔処理液を用いる本発明の封孔処理の処理条件について説明する。
【0060】
封孔処理液の温度は60〜90℃程度が好ましい。この温度が低すぎると処理時間が長くなり、高すぎると陽極酸化皮膜を溶解してしまうおそれがある。
なお、陽極酸化処理と異なり、封孔処理ではアルミニウム基材と陰極間に電流を流さない。電流を流すと陽極酸化皮膜を溶解してしまうおそれがある。
【0061】
封孔処理時間は、用いる封孔処理液の酸化還元電位や酸濃度や酸化剤濃度、処理温度等の処理条件に応じて、所望の状態で封孔処理できる程度に適宜決定されるが、例えば、上記の条件下では、通常3〜10分程度の封孔処理により、陽極酸化皮膜の細孔表面を塞いで良好な封孔処理面を形成することができる。
なお、ここで、封孔処理の程度は、封孔処理前の細孔に対して、封孔処理された細孔の割合の百分率を「封孔度」として表すことがある。封孔度は、アルミニウム基材の用途に応じて、30〜100%の範囲で適宜設定される。
【0062】
本発明においては、この封孔処理に先立ち、陽極酸化処理で形成された陽極酸化皮膜の微細孔に塗料や抗菌剤、その他の機能性材料を封入し、その後封孔処理することで、アルミニウム基材に所望の機能を付与することができる。
【0063】
<適用分野>
本発明に従って封孔処理を施した本発明のアルミニウム基材の適用分野としては特に制限はないが、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0064】
(1) アルミサッシ
本発明により形成した陽極酸化皮膜の細孔に塗装を封入し、その後封孔処理することにより、長期に亘り、変色の問題もなく所望の着色を維持し得るカラーサッシを得ることができる。
従来のカラーサッシは、アルミサッシに塗料を施していたが、アルミサッシ表面のアルミ酸化物上に塗装するため、塗料の塗膜が経時により変色したり、剥離したりする問題があった。
本発明によれば、この問題を解決することができる。
また、陽極酸化皮膜の細孔に抗菌剤を封入した後封孔処理することにより、抗菌アルミサッシとすることもできる。この際、封孔度を例えば90%程度とし、徐々に抗菌剤が表面に出るような放射性を付与することもできる。
【0065】
(2) ドライエッチング装置等に使用されるプラズマ用部品
半導体や液晶で使用されるドライエッチング装置プラズマ用部品は、チャンバー内を真空とするため、部品に不純物を含んでいるとこれがチャンバー内に拡散して被処理物に付着し、製品不良につながる。
本発明によれば、封孔処理を確実に行うことができ、細孔内からの不純物拡散を抑えることができる。
【0066】
(3) 触媒用担体
本発明により形成された陽極酸化皮膜の細孔に触媒金属を封入した後、適度に封孔処理することで、良好な金属担持触媒とすることができる。
触媒は化学反応を起こさせる反応場であるため、比表面積が大きいほど触媒能は向上する。例えば、白金(Pt)は多くの反応で触媒として使用されており、比表面積を大きくするために、Ptナノコロイドが開発されている。しかし、Ptナノコロイドを大きな触媒活性表面積が得られるように担持することが難しい。現在樹脂に担持することが行われているが、担持量は樹脂表面積の5%以下である。
本発明に従って、陽極酸化したアルミニウム基材の細孔にPtナノコロイドを封入し、反応系に脱落しないように僅かに封孔する(例えば封孔度10〜20%)ことにより、アルミニウム基材表面積の30%程度をPt表面とすることが可能となり、触媒機能を高めることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0068】
[実施例1]
図1に示す装置を用いて、純度99.85%、厚さ2mmのアルミニウム板を陽極酸化処理し、次いで封孔処理する表面処理を行った。処理槽の仕様及び条件は以下の通りである。
【0069】
<処理槽>
処理槽1の容積:40L
アルミニウム板の大きさ:500mm×500mm×厚さ2mm
陰極の大きさ:500mm×500mm×厚さ3mm
陰極材料:カーボン
アルミニウム板と陰極との距離:30mm
印加電圧:20V(一定)
陽極酸化処理液
硫酸濃度:100g/L
過硫酸濃度:10g/L
酸化還元電位:+2.0V
pH:0.0
温度:20℃
処理時間:2時間
【0070】
<過硫酸生成用電解セル>
セル容積:0.5L
陽極及び陰極:ダイヤモンド電極(直径150mm)
バイポーラ膜材質:陽極と同じ
電流密度:50A/dm
液流量:52L/h
【0071】
封孔処理は、上記の陽極酸化処理槽をそのまま用い、電圧を印加せずに、以下の条件で行った。封孔処理では、陽極酸化処理時よりも封孔処理液の硫酸濃度を上げるために硫酸を追加添加した。
【0072】
<封孔処理条件>
硫酸含有処理液:
硫酸濃度:1,200g/L
過硫酸濃度:10g/L
酸化還元電位:+2.0V
pH:−1.0
温度:80℃
処理時間:5分
【0073】
なお、処理液の過硫酸濃度は以下の方法で測定し、酸化還元電位は、ボルタンメトリー法で、pHはpH計で測定した。
【0074】
<過硫酸濃度測定方法>
まず、ヨウ素滴定により処理液中に含まれる全酸化剤濃度を測定する。このヨウ素滴定とは、Klを加えてlを遊離させ、そのlをチオ硫酸ナトリウム標準溶液で滴定してlの量を求め、そのlの量から、酸化剤濃度を求めるものである。次に過酸化水素濃度のみを過マンガン酸カリウム滴定により求め、ヨウ素滴定−過マンガン酸カリウム滴定より過硫酸濃度を求めた。
【0075】
処理槽内に100g/L硫酸水溶液を収容し、ポンプ8及び電解セル9を作動させて過硫酸濃度が10g/L、硫酸濃度が100g/L、酸化還元電位が+2.0V、pH0.0となった後、アルミニウム板を浸漬し、陰極との間に20Vの電圧を印加して150A(6A/dm)で陽極酸化を開始し、2時間陽極酸化を継続した。その後、表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を処理槽1から取り出し、純水で洗浄した後乾燥し、形成された陽極酸化皮膜表面を電子顕微鏡観察した。電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0076】
次いで、アルミニウム板を再び処理槽1に戻し、上記の封孔処理条件で電圧を印加せずに5分間封孔処理を行った。その後アルミニウム板を処理槽1から取り出し、純水で洗浄した後乾燥し、封孔処理面を電子顕微鏡観察した。電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0077】
図2に示されるように、陽極酸化により、均一かつ緻密な開孔が形成された良好な多孔質陽極酸化皮膜が形成された。なお、この陽極酸化皮膜の膜厚を電子顕微鏡により測定したところ70μmであった。
また、図3に示されるように、封孔処理で陽極酸化皮膜の開孔が封孔度100%程度で封孔され、良好な封孔処理面が形成された。
【0078】
[実施例2,3、比較例1]
実施例1において、封孔処理液として、表1に示す硫酸濃度、過硫酸濃度、酸化還元電位(ORP)及びpHのものを用いたこと以外は同様に封孔処理を行ったところ、比較例1では封孔処理時に陽極酸化皮膜が溶解したが、実施例2,3では良好な封孔処理を行うことができた。
【0079】
【表1】
【0080】
[実験例1]
本発明に係る封孔処理が陽極酸化皮膜のAlの再溶解ではなく、Al溶解とAl酸化(Al生成)との競争反応であることを確認するための実験を行った。
厚さ20μmのアルミニウム薄膜(純度99.85%)を用いたこと以外は実施例1と同様に陽極酸化処理を30分間行い、陽極酸化処理により、貫通細孔を形成した多孔質アルミナ膜を得た。その後、実施例1と同一の条件で封孔処理し、得られた封孔処理膜を純水で洗浄した後乾燥し、断面の電子顕微鏡観察を行った。その電子顕微鏡写真を図4に示す。
図4より、本発明によれば、表層の細孔のみが封孔処理されることが分かる。
【符号の説明】
【0081】
1 処理槽
2 恒温ヒータ
3 アルミニウム基板
4 ホルダ
5 陰極
9 過硫酸生成用電解セル
図1
図2
図3
図4