特許第6557992号(P6557992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6557992
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20190805BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20190805BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C23C16/455
   H01L21/205
   C23C16/44 G
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-35548(P2015-35548)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-156066(P2016-156066A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133776
【弁理士】
【氏名又は名称】三井田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】本間 学
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−084730(JP,A)
【文献】 特開2001−254181(JP,A)
【文献】 特表2011−503345(JP,A)
【文献】 特開2010−229436(JP,A)
【文献】 特表2010−533377(JP,A)
【文献】 特開2002−184702(JP,A)
【文献】 特開2013−229485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
C23C 16/44
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて基板を加熱しながら基板の表面に原料ガスを供給し、原料ガスの反応により生成された反応生成物を基板の表面に堆積して薄膜を形成する成膜装置において、
前記基板を載置するために前記真空容器内に設けられた載置部と、
前記載置部に載置された基板を回転させるための回転機構と、
前記真空容器の壁部を上下方向に貫通し、その一端部に前記基板の表面に局所的に原料ガスを供給する原料ガス供給口が開口すると共に、その他端部は当該真空容器の外側に位置する原料ガス供給部と、
回転する前記基板の中心部と周縁部との間で前記原料ガスが供給される位置を移動させて当該基板の表面全体に前記反応生成物が堆積されるように、前記原料ガス供給部の他端部を自転させることによって前記原料ガス供給口を前記他端部の自転軸回りに公転させる移動機構と、
前記原料ガス供給部の他端部を囲み、当該他端部との間に隙間を形成する囲み部材と、
前記原料ガス供給部の他端部の自転中に前記隙間へ原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、
前記原料ガス供給部の他端部に開口し、前記隙間に供給された原料ガスを前記原料ガス供給口に導入する導入路と、
前記隙間における前記原料ガスの流れを規制するために、当該隙間において前記原料ガスが供給される位置とは異なる位置にパージガスを供給するパージガス供給機構と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記原料ガス供給口による原料ガスが供給される位置が、回転する基板の中心部と、当該基板の外側領域との間を移動して当該基板の周縁部を通過することにより、前記基板の中心部と周縁部との間を移動するように、前記移動機構による前記原料ガス供給部の移動が行われることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記原料ガスと反応して前記反応生成物を生成する反応ガスの雰囲気を前記真空容器内に形成するための反応ガス供給部が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記載置部に載置された基板に対する前記原料ガス供給部の高さを検出するための検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記原料ガス供給部に対して前記載置部を相対的に昇降させる昇降機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記載置部を第1の載置部とすると、
前記真空容器内には、前記第1の載置部とは別個に基板を載置するための第2の載置部と、
前記原料ガスとは異なる基板を処理するための処理ガスを、前記第2の載置部に載置された基板に供給する処理ガス供給部と、
前記処理ガスが供給される雰囲気を前記原料ガスが供給される雰囲気と区画するようにパージガスの供給と、排気とを行い、気流を形成する気流形成部と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
真空容器内にて基板を加熱しながら基板の表面に原料ガスを供給し、原料ガスの反応により生成された反応生成物を基板の表面に堆積して薄膜を形成する成膜装置を用いた成膜方法において、
前記真空容器内に設けられる載置部に基板を載置する工程と、
回転機構により前記載置部に載置された基板を回転させる工程と、
前記真空容器の壁部を上下方向に貫通し、その一端部に原料ガス供給口が開口すると共に、その他端部は当該真空容器の外側に位置する原料ガス供給部の前記原料ガス供給口により、前記基板の表面に局所的に原料ガスを供給する工程と、
回転する前記基板の中心部と周縁部との間で前記原料ガスが供給される位置を移動させて当該基板の表面全体に前記反応生成物が堆積されるように、前記原料ガス供給部の他端部を自転させることによって前記原料ガス供給口を当該他端部の自転軸回りに公転させる工程と、
前記原料ガス供給部の他端部を囲む囲み部材と当該他端部との間に形成された隙間に、原料ガス供給機構により当該他端部の自転中に前記原料ガスを供給する工程と、
前記隙間に供給されたガスを、前記原料ガス供給部の他端部に開口した導入路から前記原料ガス供給口に供給する工程と
前記隙間における前記原料ガスの流れを規制するために、パージガス供給機構により当該隙間において前記原料ガスが供給される位置とは異なる位置にパージガスを供給する工程と、
を備えることを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項6に記載された成膜方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスを基板に供給して薄膜を得る成膜装置、成膜方法及び前記成膜装置に用いられる記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)などの基板にシリコン酸化物(SiO2)やTiN(窒化チタン)などの薄膜を成膜する手法として、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)を行う成膜装置が知られている。例えば特許文献1には、ボートと呼ばれる基板保持具に上下方向に保持されたウエハを、当該ボートごと縦型の真空容器内に搬入し、当該真空容器内に薄膜の原料となる原料ガスを供給してCVDによる成膜を行う成膜装置について記載されている。各ガスは、真空容器内に固定されたノズルから供給される。
【0003】
しかし、この特許文献1の成膜装置においては、ウエハの面内における原料ガスの供給量の分布を調整すること、つまり形成される薄膜のウエハの面内各部における膜厚を制御することが困難であった。そのため、ウエハの面内で膜厚の均一性の向上を図るにあたり限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−190977
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、基板の面内各部における膜厚を精度高く制御することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成膜装置は、真空容器内にて基板を加熱しながら基板の表面に原料ガスを供給し、原料ガスの反応により生成された反応生成物を基板の表面に堆積して薄膜を形成する成膜装置において、
前記基板を載置するために前記真空容器内に設けられた載置部と、
前記載置部に載置された基板を回転させるための回転機構と、
前記基板の表面に局所的に原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
回転する前記基板の中心部と周縁部との間で前記原料ガスが供給される位置を移動させて当該基板の表面全体に前記反応生成物が堆積されるように、前記基板に対して前記原料ガス供給部を相対的に移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成膜装置は、真空容器内にて基板を加熱しながら基板の表面に原料ガスを供給し、原料ガスの反応により生成された反応生成物を基板の表面に堆積して薄膜を形成する成膜装置において、
前記基板を載置するために前記真空容器内に設けられた載置部と、
前記載置部に載置された基板を回転させるための回転機構と、
前記真空容器の壁部を上下方向に貫通し、その一端部に前記基板の表面に局所的に原料ガスを供給する原料ガス供給口が開口すると共に、その他端部は当該真空容器の外側に位置する原料ガス供給部と、
回転する前記基板の中心部と周縁部との間で前記原料ガスが供給される位置を移動させて当該基板の表面全体に前記反応生成物が堆積されるように、前記原料ガス供給部の他端部を自転させることによって前記原料ガス供給口を前記他端部の自転軸回りに公転させる移動機構と、
前記原料ガス供給部の他端部を囲み、当該他端部との間に隙間を形成する囲み部材と、
前記原料ガス供給部の他端部の自転中に前記隙間へ原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、
前記原料ガス供給部の他端部に開口し、前記隙間に供給された原料ガスを前記原料ガス供給口に導入する導入路と、
前記隙間における前記原料ガスの流れを規制するために、当該隙間において前記原料ガスが供給される位置とは異なる位置にパージガスを供給するパージガス供給機構と、
を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の縦断側面図である。
図2】前記成膜装置の横断平面図である。
図3】前記成膜装置に設けられるホルダ載置用テーブル及びウエハホルダを示す斜視図である。
図4】前記成膜装置の横断平面図である。
図5】前記成膜装置に設けられる原料ガス供給部の縦断側面図である。
図6】前記原料ガス供給部の下面側斜視図である。
図7】前記原料ガス供給部の下面図である。
図8】前記成膜装置へのウエハの受け渡し動作を示す説明図である。
図9】前記成膜装置の動作を示す説明図である。
図10】ウエハ表面の変化を示す模式図である。
図11】第1の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置の縦断側面図である。
図12】第1の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置の縦断側面図である。
図13】前記成膜装置へのウエハの受け渡し動作を示す説明図である。
図14】第1の実施形態の第3の変形例に係る成膜装置へのウエハの受け渡し動作を示す説明図である。
図15】前記成膜装置を構成するホルダ保持部の下面図である。
図16】他のホルダ保持部の下面図である。
図17】前記ホルダ保持部と成膜装置を構成する昇降ピンとの位置関係を示す平面図である。
図18】第2の実施形態に係る成膜装置の縦断側面図である。
図19】前記成膜装置に設けられる原料ガス供給部の平面図である。
図20】前記原料ガス供給部の動作を示す説明図である。
図21】他の原料ガス供給部の動作を示す説明図である
図22】第3の実施形態に係る成膜装置の縦断側面図である。
図23】第4の実施形態に係る成膜装置の縦断側面図である。
図24】前記成膜装置の横断平面図である。
図25】前記成膜装置におけるガスの流れを示す縦断側面図である。
図26】前記成膜装置におけるガスの流れを示す横断平面図である。
図27】第4の実施形態の変形例の成膜装置の縦断側面図である。
図28】第1の実施形態の第4の変形例に係る成膜装置の縦断側面図である。
図29】前記成膜装置の変位センサとガス供給ヘッドとの位置関係を示す平面図である。
図30】前記成膜装置によるウエハの高さの調整を示す説明図である。
図31】ガス供給ヘッドの動作の一例を示すための説明図である。
図32】ガス供給ヘッドの動作の一例を示すための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の成膜装置の第1の実施形態であり、基板であるウエハWにCVDを行い、TiN膜を形成する成膜装置1について説明する。この成膜装置1は、6枚のウエハWに並行して成膜処理を行うことができるように構成されている。図1は成膜装置1の縦断側面図であり、図2は成膜装置1の横断平面図である。成膜装置1は概ね円形の扁平な真空容器11を備えており、この真空容器11は、当該真空容器11の天井を形成する蓋体12と、当該真空容器11の側壁及び底部を形成する容器本体13と、を備えている。図中、真空容器11内のウエハWの処理空間を10として示している。図中14はOリングであり、蓋体12と容器本体13との隙間をシールする。図中15は、前記側壁に設けられたウエハWの搬送口であり、図中16は搬送口15を開閉自在なシャッタであり、図中17はシャッタ16と側壁との隙間をシールするOリングである。
【0010】
図中18は、真空容器11の底部の中心部に設けられた開口部であり、垂直な回転軸21が挿通されている。図中19は回転軸21の軸受けであり、開口部18と回転軸21との隙間をシールする役割も有する。回転軸21の下端は真空容器11の外部において、当該回転軸21を軸周りに回転させる回転機構22に接続されている。回転軸21の上端は、水平な円板形のホルダ載置用テーブル23の裏面の中心部に接続されており、ホルダ載置用テーブル23は回転機構22によりその周方向に回転することができる。ホルダ載置用テーブル23は、搬送機構(図1,2では不図示)と後述のウエハホルダ26との間でのウエハWの移載時にはそのように回転し、ウエハWの処理時には所定の位置で静止する。図2は、そのように静止した状態のホルダ載置用テーブル23を示している。
【0011】
図3はホルダ載置用テーブル23の斜視図である。この図3に示すように、ホルダ載置用テーブル23には、周方向に間隔を置いて6つの円形の凹部24が形成されており、凹部24の底部の中央にはホルダ載置用テーブル23の表裏を形成する貫通孔が設けられている。当該貫通孔の外側、即ち凹部24の底部は、リング板状のホルダ載置部25として構成されている。そして、凹部24内には水平な円形のウエハホルダ26が、当該凹部24内を昇降自在に設けられている。このウエハホルダ26は、その表面中央に円形のウエハ載置用凹部27を備えている。このウエハ載置用凹部27内にウエハWが収められ、ウエハ載置用凹部27の底面上に水平に載置される。ウエハ載置用凹部27の底部には、ウエハホルダ26の表裏を貫通する3つの貫通孔28が設けられている。貫通孔28はホルダ載置用テーブル23の貫通孔に重なる位置に穿孔されており、後述の昇降ピン42が、当該貫通孔28を貫通して、ウエハ載置用凹部27の底面上に突出し、ウエハWの搬送機構とウエハホルダ26との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0012】
ウエハWに処理が行われない成膜装置1の待機時には、ウエハホルダ26の裏面周縁部がホルダ載置用テーブル23のホルダ載置部25上に載置される。ウエハWの処理時には、ウエハホルダ26の裏面周縁部は、ホルダ載置部25から浮き上がるように後述のホルダ保持部35に保持される。図1では、このようにホルダ載置部25から浮き上がったウエハホルダ26を示している。
【0013】
上記の真空容器11における容器本体13の構成について、図4も用いて、さらに説明する。図4は、図2とは異なる高さ位置の成膜装置1の断面を示している。容器本体13の底部には、その表裏を貫通するように貫通孔32が、真空容器11の周方向に間隔を置いて、6つ設けられている。この貫通孔32の位置は、ウエハWの成膜処理時における上記のホルダ載置用テーブル23の凹部24の位置に対応する。
【0014】
各貫通孔32には垂直な回転軸33が挿通され、回転軸33の下端は容器本体13の下方側に設けられる回転機構である駆動部34に支持されている。駆動部34は、貫通孔32と回転軸33との間を塞ぐように設けられ、回転軸33を軸周りに回転させ、且つ昇降させることができる。回転軸33の上端部は拡径され、水平な円形のホルダ保持部35として構成されている。ホルダ保持部35は、図1に鎖線で示すように待機時にはホルダ載置用テーブル23の下方に位置しており、ウエハWの処理時には図1に実線で示すようにホルダ載置用テーブル23のウエハ載置用凹部27内に収まる高さに位置し、ウエハホルダ26の裏面中央部を保持する。これによってウエハホルダ26は既述のようにホルダ載置部25から浮き上がり、さらに回転軸33を介して当該ウエハホルダ26の周方向に回転可能になる。これによってウエハWが中心部まわりに回転することができる。
【0015】
また、容器本体13の底面には貫通孔32の外側にリング状のヒーター36が4つ設けられており、各ヒーター36は、容器本体13の底面の中心を中心とした同心円状に構成されている。図4では図の把握を容易にするために、当該ヒーター36には多数のドットを付して示している。ヒーター36から後述の底面カバー46を介して上方へ輻射される輻射熱によりウエハホルダ26が加熱される。そして、ウエハホルダ26からの伝熱により、ウエハホルダ26に載置されたウエハWが加熱される。容器本体13の底面には、ヒーター36よりも外側に排気口37が開口している。排気口37は、排気管38を介してバルブや真空ポンプなどにより構成された排気機構39に接続されており、任意の排気量で処理空間10を排気することができる。
【0016】
容器本体13の底部には3つの貫通孔41が設けられている。図4に示すように、この3つの貫通孔41は平面視1つのホルダ保持部35の外側に、当該ホルダ保持部35の周に沿って設けられている。この貫通孔41には、各々昇降ピン42が垂直に挿通されている。図1を用いて説明すると、図中43は昇降ピン42の基端を支持する支持板、44は支持板43を介して昇降ピン42を昇降させる昇降機構、45は外側カバーである。外側カバー45は、容器本体13の外側から貫通孔41、昇降ピン42、支持板43、昇降機構44及び前記ホルダ保持部35が接続される駆動部34を囲み、真空容器11内の真空度を担保する。支持板43は、当該駆動部34と干渉せずに昇降できるように構成されている。
【0017】
また、図1中46は、容器本体13の底面の略全体を覆う底面カバーであり、そのように底面を覆うことで、当該底面上に互いに区画されたリング状の領域47、48を形成している。リング状領域47は上記のヒーター36を含んでいる。リング状領域48はリング状領域47の外側に形成され、排気口37上に位置している。底面カバー46の表面には、リング状領域48に連通する開口部49が設けられ、処理空間10の雰囲気は、当該開口部49を介して排気口37から排気される。このように互いに区画されたリング状領域47、48を形成するのは、排気されるガスがヒーター36に接触して当該ヒーター36を劣化させることを防ぐためである。また、底面カバー46には、上記の昇降ピン42が昇降するために通過する貫通孔、及び既述の回転軸33が挿通された貫通孔が設けられている。
【0018】
続いて、真空容器11の蓋体12について説明する。この蓋体12には、例えば6つのガスシャワーヘッド51と、6つの原料ガス供給機構6と、が設けられており、図2に示すようにウエハWの成膜処理時には、1つのウエハW上に1つのガスシャワーヘッド51及び1つの原料ガス供給機構6が位置する。反応ガス供給部をなすガスシャワーヘッド51には、後述の成膜原料となる原料ガスと反応してTiNを生成する窒化ガスであるアンモニア(NH)ガスの供給源52が接続されており、当該ガス供給源52に貯留された反応ガスであるNHガスが、ガスシャワーヘッド51から処理空間10に供給される。
【0019】
上記の原料ガス供給機構6について、図5の縦断側面図及び図6の下面側斜視図を参照しながら説明する。原料ガス供給機構6は、本体部61と、外筒部71と、を備えている。本体部61は蓋体12を貫通するように設けられており、本体部61の上部側は垂直に伸びる円柱形状に構成され、本体部61の下部側は蓋体12の下方にて横方向に向かうように屈曲して、原料ガス供給部を構成するガス供給ヘッド62を構成している。このように横方向に向かって伸びるガス供給ヘッド62の先端部は、下方に突出する円形の対向部63として構成されている。この対向部63は平面視円形に構成されており、その下面は、ウエハホルダ26に保持されるウエハWの表面に対向する対向面として構成されている。
【0020】
対向部63の下面の中心部には、Ti(チタン)を含む原料ガスであるTiCl(四塩化チタン)ガスを吐出する供給口である原料ガス吐出口64が開口しており、ウエハWの面内のうち局所的な領域にTiClガスを供給することができる。また、本体部61には、その下流端が原料ガス吐出口64に接続されるガス流路64Aが形成されており、ガス流路64Aの上流端は、本体部61の外側面に、当該本体部61の周に沿って形成された溝64Bに接続されている。また、本体部61の外側面には、本体部61の周に沿って形成された溝65B、66Bが設けられている。溝65B、64B、66Bは、本体部61の上方側から下方側に向かってこの順に形成されており、これら溝64B〜66Bは、蓋体12よりも上方に位置している。
【0021】
外筒部71は本体部61の側周と上部とを囲み、図中72は、外筒部71の下端と蓋体12との隙間をシールするOリングである。外筒部71の上方には回転機構73が当該外筒部71に固定されて設けられ、この回転機構73は、外筒部71の内部に進入する回転軸74を介して本体部61に接続され、本体部61を鉛直軸周りに回転させることができる。この回転機構73及びウエハWの載置部をなすウエハホルダ26を回転させる上記の駆動部34は、ウエハWに対して原料ガス供給部を構成するガス供給ヘッド62を相対的に移動させる移動機構を構成する。
【0022】
また、外筒部71の内側面には、本体部61の溝65B、66Bと夫々同じ高さに外筒部71の周に沿って溝65C、66Cが形成されており、外筒部71の外側からこれら溝65C、66Cに開口するように、ガス供給管65D、66Dの下流端が、各々当該外筒部71に接続されている。ガス供給管65D、66Dの上流端は、N(窒素)ガス供給源75に接続されている。また、外筒部71の外側には、溝64Bに夫々開口するようにガス供給管64Dの一端が接続されており、ガス供給管64Dの他端はTiClガス供給源76に接続されている。このような構成によって、TiClガス供給源76に貯留されたTiClガスが、溝64Bに供給されて原料ガス吐出口64から吐出される。
【0023】
外筒部71と本体部61との間には、ベアリング77及びシール部材78A、78Bが設けられている。シール部材78Aは、溝65Bの上方に配置され、シール部材78Bは溝66Bの下方に配置されている。外筒部71の溝65C、66Cから溝65B、66Bに供給されるNガスは、外筒部71と本体部61との隙間を介して溝64Bへと流れるように各溝が形成されている。溝64Bに流れたNガスは、当該溝64Bに供給されるTiClガスと共にガス流路64Aを介して原料ガス吐出口64から吐出される。このように溝65B、66Bに供給されるNガスにより、TiClガスが外筒部71及び本体部61との隙間をシール部材78A、78Bに向かって流れることが防がれる。従って、当該TiClガスが、これらシール部材78A、78Bに接触して吸着され、パーティクルとなってしまうことが防がれる。
【0024】
図7は、下方から見たガスシャワーヘッド51と、ガス供給ヘッド62とを示している。上記のようにガス供給ヘッド62は回転することができ、それによって原料ガス吐出口64は、ウエハWの中心部上と周縁部上との間で移動することができる。ウエハWの処理時には、このガス供給ヘッド62の回転に並行してウエハWの回転が行われることで、ウエハWの表面全体に原料ガスを供給することができる。図中P1、P2は、夫々ガス供給ヘッド62の回転中心、ウエハWの回転中心を示している。従って、原料ガス吐出口64は、このP1を中心として公転するように移動する。
【0025】
この成膜装置1には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられている(図1参照)。この制御部100には、後述のように成膜処理を実行するプログラムが格納されている。前記プログラムは、成膜装置1の各部に制御信号を送信して各部の動作を制御する。具体的には、ヒーター36によるウエハWの加熱、回転機構22によるホルダ載置用テーブル23の回転、昇降機構44による昇降ピン42の昇降、排気機構39による排気量の調整、駆動部34によるホルダ保持部35の昇降及び回転、各ガス供給源からガス供給ヘッド62及びガスシャワーヘッド51へのガスの給断などの動作が、前記制御信号に従って制御される。上記のプログラムにおいてはこれらの制御を行い、後述の各処理が実行されるようにステップ群が組まれている。当該プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0026】
処理空間10の外部からウエハホルダ26にウエハWが受け渡される際の成膜装置1の動作について、図8を参照しながら説明する。ホルダ保持部35がホルダ載置用テーブル23の下方に位置し、且つ各ウエハホルダ26がホルダ載置用テーブル23のホルダ載置部25に載置された状態で、ホルダ載置用テーブル23が回転し、ウエハホルダ26の1つが所定の位置に移動する。そして、ウエハWを保持した搬送機構29が外部から処理空間10に進入し、昇降ピン42の先端がウエハホルダ26の貫通孔28を介してホルダ載置用テーブル23の上方に突出して、搬送機構29から昇降ピン42にウエハWが受け渡される(図8上段)。
【0027】
搬送機構29が処理空間10から退出すると、昇降ピン42が下降し、ウエハホルダ26のウエハ載置用凹部27内にウエハWが載置され、昇降ピン42の先端は、ホルダ載置用テーブル23の回転を妨げないように当該ホルダ載置用テーブル23の下方へ移動する(図8中段)。以降、ホルダ載置用テーブル23の回転と上記の昇降ピン42の昇降とにより、他のウエハ載置用凹部27にも順次ウエハWが受け渡される。そして、全てのウエハ載置用凹部27にウエハWが受け渡されると、ホルダ載置用テーブル23の回転が停止した状態でホルダ保持部35が上昇して、ウエハホルダ26の裏面中心部を保持し、ウエハホルダ26がホルダ載置部25から浮き上がる(図8下段)。
【0028】
続いて、上記のようにウエハホルダ26に載置されたウエハWの表面に成膜処理が行われる様子を説明する。先ず、各ウエハホルダ26が回転してウエハWがその中心周りに回転する。つまり、ホルダ載置用テーブル23によるウエハWの移動を公転と見ると、各ウエハWは自転するように回転する。また、このウエハWの回転に並行して、ヒーター36の出力の増大、各ガスシャワーヘッド51から処理空間10へのNHガスの供給、排気口37を介しての処理空間10の排気が、夫々行われる。
【0029】
ウエハWの回転により当該ウエハWの各部がヒーター36の上方を通過して、ウエハWの面内全体が所定の温度に加熱される。それに並行して、処理空間10のNHガスの濃度が所定の濃度になると共に、処理空間10が所定の圧力の真空雰囲気となる。然る後、各ガス供給ヘッド62が回転し、対向部63の原料ガス吐出口64が原料ガス供給機構6の本体部61の中心軸まわりに公転する。そして、各ガス供給ヘッド62の原料ガス吐出口64からTiClガスが吐出される。図9は、このときの処理空間10のガスの流れを矢印で示している。
【0030】
ウエハWの表面を示す模式図である図10も参照して説明する。原料ガス吐出口64から吐出されたTiClガスは対向部63の下方を広がり、ウエハW表面における吐出口64の投影領域とその近傍の領域とに局所的に供給される(図10上段)。このTiClガスは、ウエハWの表面の熱によって、周囲のNHガスと化学反応を起こし、反応生成物としてTiNを生じ、ウエハWの表面に堆積する。このようなCVDによって、ウエハWの面内のうち対向部63の吐出口64に重なる領域とその近傍の領域とにTiNの層が限定的に形成される(図10下段)。ガス供給ヘッド62の回転によって、対向部63は回転するウエハWの中心部上と周縁部上との間で移動する。そして、このウエハWの回転及びガス供給ヘッド62の回転によって、ウエハWの面内においてTiClガスが供給される領域が移動する、即ちCVDによってTiNの層が形成される領域が移動する。
【0031】
ガス供給ヘッド62の対向部63はウエハWの表面全体を通過し、各ウエハWの表面全体にTiNの分子層が形成される。その後も引き続き、ウエハWの回転及びガス供給ヘッド62の回転が行われ、対向部63は繰り返し複数回、ウエハWの表面全体を通過して、TiNの分子層が積層される。このように分子層が積層されることで、ウエハWの表面全体において、当該TiN膜の膜厚が増加する。TiN膜の膜厚が所望の大きさになると、ガス供給ヘッド62からのTiClガスの供給が停止すると共に、ウエハWの回転及びガス供給ヘッド62の回転が停止する。そして、ウエハホルダ26に受け渡すときとは逆の動作で搬送機構29にウエハWが受け渡され、処理空間10から搬出される。なお、上記のウエハW表面全体とは、ウエハWにおける半導体デバイスの形成領域の全体の意味であり、従って、形成領域の外側のウエハWの周縁部においてはTiN膜が形成されなくてもよい。
【0032】
この成膜装置1によれば、ウエハWが載置されるウエハホルダ26が駆動部34により回転して当該ウエハWが回転すると共に、ガス供給ヘッド62が回転機構73により回転して、原料ガス吐出口64が回転するウエハWの周縁部上と中心部上との間を移動する。これによって、原料ガス吐出口64から吐出されるTiClガスがウエハWに供給される領域、即ちウエハWにおいてTiN膜が形成される領域が移動する。従って、ウエハWの回転速度及びガス供給ヘッド62の回転速度を調整することで、ウエハWの各部におけるガス供給ヘッド62からのTiClガスの供給量を制御することができる。従って、ウエハWの各部においてTiN膜の膜厚を制御することができるので、ウエハWの面内でTiN膜の膜厚の均一性の向上を図ることができる。
【0033】
成膜装置1での成膜処理中には、遠心力がウエハWの周の各部に均一性高く働くため、ウエハWがウエハホルダ26内を移動することが抑えられる。従って、ウエハWの裏面がウエハホルダ26の底面に擦れたり、ウエハWの側面がウエハホルダ26の側壁に衝突することが抑えられるので、パーティクルの発生を抑えることができる。さらに、当該遠心力によるウエハホルダ26からのウエハWの脱離が起きることも抑えられる。
【0034】
上記のように、ガス供給ヘッド62、ウエハWの回転数を夫々調整することで、膜厚分布の調整を行うことができる。即ち、ガス供給ヘッド62、ウエハWは夫々成膜処理中に等速で回転してもよいし、成膜処理中に回転速度が変化してもよい。具体的には、ウエハWの周縁部よりも中心部の膜厚が大きい場合、ガス供給ヘッド62について、ウエハWの中心部側を移動するときの回転速度より、ウエハWの周縁部側を移動するときの回転速度を小さくすることで、ウエハWの周縁部へのTiClガスの供給量を上昇させる。それによって、周縁部の膜厚を増加させ、ウエハWの面内での成膜処理の均一性の向上を図ることができる。また、ガス供給ヘッド62がウエハWの周縁部上を通過するときに、ウエハWの中心部上を通過するときに比べて、ウエハWの回転速度が小さくなるようにすることで、ウエハWの周縁部へのTiClガスの供給量を上昇させて、周縁部の膜厚を大きくしてもよい。即ち、ガス供給ヘッド62がウエハWの周縁部上を通過するときのウエハWに対する相対的な移動速度が、ガス供給ヘッド62がウエハWの中心部上を通過するときのウエハWに対する相対的な移動速度よりも小さくなるように、ガス供給ヘッド62及びウエハWの回転を制御する。
【0035】
反対に、ウエハWの中心部よりも周縁部の膜厚が大きい場合は、ガス供給ヘッド62がウエハWの中心部上を通過するときのウエハWに対する相対的な移動速度が、ガス供給ヘッド62がウエハWの周縁部上を通過するときのウエハWに対する相対的な移動速度よりも小さくなるように、ガス供給ヘッド62及びウエハWの回転を制御する。それによって、ウエハWの面内の膜厚の均一性を高くすることができる。
【0036】
成膜装置1では、吐出口64からTiClガスを下方に局所的に供給しているため、例えば処理空間10全体に亘ってTiClガスを吐出するようにガスシャワーヘッドなどを設ける構成に比べてTiClガスが供給される領域の縮小化を図ることができる。従って、処理コストの上昇を抑えることができる。また、成膜処理中にはウエハWがその中心周りに回転しているため、上記の例で示すように、真空容器11の底面を径方向に見て、ヒーター36を回転軸33よりも外側のみに配置することでウエハW全体を加熱することができる。そのようにヒーター36を回転軸33の外側のみに配置する代わりに、内側のみに配置してもよい。このようにヒーター36を設けるために必要となる領域が比較的小さいため、ヒーター36の配置の自由度を高くすることができる。上記の例ではヒーター36を真空容器11内の真空雰囲気に設けているが、例えば真空容器11の外部の大気雰囲気に設けてもよい。
【0037】
上記の成膜装置1では、各ウエハホルダ26のウエハWには、同様の膜厚で成膜されるように処理が行われる。つまり、各ウエハホルダ26が互いに同様の速度で回転すると共に各ウエハWが同様の速度で回転する。ただし、例えば各ウエハホルダ26の回転速度及び/または各ウエハWの回転速度について互いに異なる速度に設定して、各ウエハホルダ26のウエハWに異なる膜厚のTiN膜が成膜されるようにしてもよい。なお、上記の例では、6つのガスシャワーヘッド51を配置しているが、処理空間10にNHガス雰囲気を形成できればよいため、ガスシャワーヘッド51は1つのみ設けるようにしてもよい。
【0038】
(第1の実施形態の第1の変形例)
図11には、第1の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置81を示している。成膜装置1との差異点を中心に説明すると、成膜装置81では排気口37がウエハWの底面の周縁部に設けられる代りに、ホルダ載置用テーブル23の表面の中心部に開口している。ホルダ載置用テーブル23の裏面中心部には、回転軸21の代わりに起立した回転筒82が、ホルダ載置用テーブル23を支持するように設けられ、上記の排気口37は、この回転筒82内に連通する。そして、回転筒82内の下方側には起立した排気管83の一端が設けられ、排気口37を介して処理空間10に開口している。排気管83の他端は排気機構39に接続されている。
【0039】
図中84は、容器本体13の底部の開口部18の内周と回転筒82の外周との隙間をシールするシール部材であり、図中85は排気管83の外周と回転筒82の内周との隙間をシールするシール部材である。これらのシール部材84、85は、回転筒82がその軸周りに回転可能であるように各隙間をシールしている。図中86は、モーターとベルトとからなり、回転筒82を中心軸周りに回転させるための回転機構である。
【0040】
(第1の実施形態の第2の変形例)
図13には、第1の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置86を示している。ただし、成膜装置1と同様に構成されている部分に関して、図示を省いているものがある。成膜装置86における成膜装置1との構成の差異点を説明すると、この成膜装置86ではホルダ保持部35が昇降せず、ホルダ載置用テーブル23が昇降する。ホルダ載置用テーブル23の回転軸21は、上記の回転機構22の代わりに駆動部87に接続されており、当該駆動部87によりホルダ載置用テーブル23の昇降及び回転が行われる。
【0041】
この成膜装置86においては、ウエハホルダ26に対するウエハWの受け渡しについて、成膜装置1における受け渡しと異なる。この差異点を説明すると、図12に示すように、先ずホルダ載置用テーブル23がホルダ保持部35よりも高い位置に位置する状態で、当該ホルダ載置用テーブル23の回転と昇降ピン42の昇降とが行われ、搬送機構29からウエハWがウエハホルダ26に受け渡される。全てのウエハホルダ26にウエハWが受け渡されると、ウエハホルダ26の裏面の中心部下方にホルダ保持部35が位置する状態となり(図13上段)、然る後、ホルダ載置用テーブル23が下降する。そして、ホルダ保持部35によって、ウエハホルダ26がホルダ載置用テーブル23のホルダ載置部25から浮き上がると共にホルダ保持部35にウエハホルダ26が保持され、ウエハホルダ26がホルダ保持部35により回転可能な状態となる(図13下段)。
【0042】
ウエハホルダ26から搬送機構29にウエハWを受け渡す際には、このような動作と逆の動作が行われる。なお、例えばウエハホルダ26には係合部としてピン、ホルダ保持部35には被係合部として凹部が夫々設けられ、当該ピンが凹部に差し込まれて係合することで、既述のようにウエハホルダ26がホルダ保持部35に保持されるようにすることができる。ホルダ保持部35にピンが設けられ、ウエハホルダ26に凹部が設けられていてもよい。
【0043】
(第1の実施形態の第3の変形例)
図14の各段には、第1の実施形態の第3の変形例に係る成膜装置91を示している。この成膜装置91は、ホルダ保持部35とは形状が異なるホルダ保持部92を備えていることを除いて成膜装置1と同様に構成されており、ウエハWの受け渡しについて関連性が低い部材についての図示を省略している。図15は、下方から見たホルダ保持部92を示しており、ホルダ保持部92はホルダ保持部35に相当する円形部93と、円形部から放射状に3方向に伸びる羽根部94と、を備えている。円形部93は、ウエハホルダ26の裏面中心部を保持する。
【0044】
成膜装置1と同様に、成膜装置91においてはホルダ保持部92がホルダ載置用テーブル23の下方に位置する状態で、昇降ピン42の昇降とホルダ載置用テーブル23の回転とが行われ、各ウエハホルダ26に順次ウエハWが受け渡される。図15の上段は、そのように昇降ピン42が昇降している状態を示している。このように昇降ピン42が昇降するとき、図15の上段に示すように、ホルダ保持部92の各羽根部94の向きは、当該ウエハホルダ26の貫通孔28に重ならない向きとなっている。
【0045】
ウエハホルダ26へのウエハWの受け渡しが終わり、昇降ピン42がホルダ保持部92よりも下方に位置すると、各羽根部94がウエハホルダ26の貫通孔28に重なるようにホルダ保持部92が回転した後に上昇する。それによって、ホルダ保持部92の円形部93によりウエハホルダ26が保持されると共に、羽根部94により貫通孔28が塞がれる。図14の下段は、そのようにウエハホルダ26が保持された状態を示しており、図15の下段は、このときの貫通孔28と羽根部94との位置を示している。
【0046】
成膜装置91においては、このように貫通孔28がウエハホルダ26の裏面側から塞がれた状態でウエハWが回転して、成膜処理が行われる。このように貫通孔28を塞ぐことで、ウエハホルダ26の表面側と裏面側との間で圧力差が生じても、貫通孔28を介してウエハホルダ26の裏面からウエハWの裏面へガスが流れることが防がれる。結果として、ウエハホルダ26からのウエハWの脱離を抑えることができる。
【0047】
図16にはホルダ保持部の他の構成として、下方から見たホルダ保持部96を示している。このホルダ保持部96は、成膜装置1のホルダ保持部35と同様に円形に構成されているが、その径はホルダ保持部35の径よりも大きい。そして、ウエハホルダ26の裏面中央部を保持すると共に、ウエハホルダ26の貫通孔28を塞ぐことができるように構成されている。図17は、このホルダ保持部96を備えるように成膜装置1を構成した場合の昇降ピン42の位置の例を示している。この例では昇降ピン42は、処理空間10を周方向に見て、一のホルダ保持部96と、当該一のホルダ保持部96に隣接する他のホルダ保持部96との間を昇降するように構成されている。このような配置によって昇降ピン42がホルダ保持部96に干渉せずに、ウエハWをウエハホルダ26に受け渡すことができる。
【0048】
(第2の実施形態)
続いて、図18に示す第2の実施形態に係る成膜装置101について、第1の実施形態の第1の変形例として示した成膜装置81との差異点を中心に説明する。成膜装置101では、ホルダ載置用テーブル23の表面中心部には排気口89が設けられておらず、成膜装置1と同様に、容器本体13の底面の周縁に排気口37が設けられている。ホルダ載置用テーブル23には、ホルダ載置用テーブル23の中心部を表裏方向に貫通する中心部貫通孔102が設けられており、回転筒82内に連通している。回転筒82の下端部は、容器本体13の底面において開口部18の外側を囲むように形成されたリング状の開口部103を介して真空容器11の外部に延出されており、回転筒82の外側、内側に夫々設けられるシール部材84、85は、夫々この開口部103と回転筒82との隙間をシールする。
【0049】
そして成膜装置101には、原料ガス供給機構6が設けられる代りに、当該原料ガス供給機構6と概ね同様に構成された原料ガス供給部111が設けられている。原料ガス供給部111において、原料ガス供給機構6と同様に構成された部材については、当該部材と同じ符号を付している。原料ガス供給部111の原料ガス供給機構6との差異点としては、外筒部71がOリング72を介して、容器本体13の底部の開口部18を、真空容器11の外部の下方側から塞ぐように設けられていることが挙げられる。
【0050】
そして、原料ガス供給部111を構成する本体部61は、この外筒部71内から回転筒82内及び中心部貫通孔102を介して、ホルダ載置用テーブル23の上方へ向かって伸びる中心軸112と、中心軸112の上端部から6方向に放射状に広がるように伸びるアーム113を形成し、アーム113の先端部は各々平面視円形のガス供給ヘッド114を形成している。即ち、ガス供給ヘッド114内、アーム113内及び中心軸112内に、第1の実施形態で説明したガス流路64Aが設けられている。このように、ガス供給ヘッド114は6つ設けられるが、図18では図示の複雑化を防ぐために、そのうちの1つのみ表示している。図19では、各ガス供給ヘッド114の上面を示している。各ガス供給ヘッド114は回転機構73によって、平面視、処理空間10の中心周りに公転することができる。
【0051】
ガス供給ヘッド114はその形状が異なる他は、第1の実施形態のガス供給ヘッド62と同様に構成されており、ガス供給ヘッド114の下部は、ガス供給ヘッド62の対向部に相当する。即ち、ガス供給ヘッド114の下面はウエハWに対向し、原料ガス吐出口64が当該下面に開口している。
【0052】
図20は、6つのうち1つのガス供給ヘッド114を例に挙げて、成膜処理中におけるガス供給ヘッド114の動作を示している。当該ガス供給ヘッド114は、平面視時計回りの移動と反時計回りとの移動とを交互に繰り返すことでウエハWの周縁部上と中心部上との間を往復移動する。このような往復移動が行われるにあたり、移動領域の一端、他端に夫々位置するときのガス供給ヘッド114を、図中に実線、鎖線で夫々示している。当該一端に位置するときのガス供給ヘッド114の原料ガス吐出口64の中心と、当該他端に位置するときのガス供給ヘッド114の原料ガス吐出口64の中心と、ガス供給ヘッド114の公転の中心とのなす角θは、例えば30°である。
【0053】
成膜処理中はこのようにガス供給ヘッド114が移動することに加えて、第1の実施形態のガス供給ヘッド62と同様に、ガス供給ヘッド114からTiClガスの吐出が行われる。また、第1の実施形態と同様にガスシャワーヘッド51からガスが供給されると共に、ウエハWが回転することで、ウエハWの表面全体にTiN膜が形成される。従って、この第2の実施形態の成膜装置101も成膜装置1と同様の効果を奏する。また、上記の図20に示した例では成膜処理時にガス供給ヘッド114は往復運動しているが、このように往復運動することには限られず、上記の平面視時計回りの移動及び反時計回りの移動のうちの一方のみを継続して行い、真空容器11内を回転運動するようにしてもよい。即ち、1つのガス供給ヘッド114が6つのウエハW上を移動するようにしてもよい。
【0054】
(第2の実施形態の第1の変形例)
ところで、ガス供給ヘッド114は1つのウエハWに対して1つ設けられることに限られず、複数のウエハWに共用されるようにしてもよい。図21に示す第2の実施形態の第1の変形例では上記の成膜装置101において、ガス供給ヘッド114を1つのみ設けている。このガス供給ヘッド114は、成膜処理中に処理空間10を例えば平面視時計回りに繰り返し移動する。即ち、6つの回転するウエハW上を移動することで、各ウエハWの表面全体にTiCl4ガスを供給することができる。このような構成とすることで、装置の製造コストの低下を図ることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図22は、第3の実施形態に係る成膜装置121の縦断斜視図である。この成膜装置121では、真空容器11内で1枚のウエハWに成膜処理が行われる。成膜装置1との差異点を説明すると、成膜装置1にはホルダ載置用テーブル23及びホルダ保持部35が設けられておらず、回転軸33の上端は、ウエハホルダ26に接続されている。図中122は、回転軸33と容器本体13との隙間をシールするシール部材である。図中123は、ウエハホルダ26に載置されるウエハWの側周を囲む水平なリング板である。リング板123の周縁部は下方へ向けて折り曲げられて筒状の屈曲部124をなし、屈曲部124は容器本体13の側面から若干離れている。この屈曲部124と容器本体13の内側面との間の隙間は、容器本体13の底面の排気口37に連通しており、処理空間10を排気することができる。
【0056】
図中125はリング板112の裏面から下方に伸びる筒状部であり、126は容器本体13の底面から上方に伸びる筒状部であり、筒状部126の上端は筒状部125の下端と屈曲部124の下端との間に進入している。筒状部125の内側には、同心円状に配置された3つのヒーター36が、ウエハWの周に沿って設けられており、筒状部125、126は、排気口37へと排気されるガスがヒーター36に向かうことを抑える役割を有する。
【0057】
この成膜装置121にも原料ガス供給機構6が設けられている。図22中では、図6に示したベアリング77、各シール部材78A、78B及び回転機構73などを省略して示している。また、この成膜装置121の真空容器11の蓋体12にはガスシャワーヘッド51が設けられる代りに、処理空間10にNH3ガスを供給するための供給路127が設けられている。このような成膜装置121においても、ウエハWの各部における膜厚分布を調整することができるので、第1の実施形態で説明した効果を得ることができる。
【0058】
(第4の実施形態)
図23図24は、夫々第4の実施形態に係る成膜装置131の縦断側面図、横断平面図である。この成膜装置131について、成膜装置1との差異点を中心に説明する。この成膜装置131では3つのウエハホルダ26に載置されたウエハWには、成膜装置1と同様にCVDによるTiN膜の成膜処理が行われる。そして、他の3つのウエハホルダ26に載置されたウエハWには、当該ウエハW表面に形成された例えばTiN膜のプラズマによる改質処理が、上記の成膜処理と並行して行われる。つまり成膜装置131は、改質装置として兼用される。便宜上、成膜を行うウエハホルダを26A、改質を行うウエハホルダを26Bとして示しており、ホルダ載置用テーブル23の周方向に、26A、26Bが例えば交互に配列されている。
【0059】
ウエハホルダ26Bを保持するホルダ保持部96内には、例えば電極132が設けられている。この電極132に一端が接続される配線の他端は、例えば回転軸33の中心を軸方向に貫いて真空容器11の外部に引き出され、高周波電源133に接続されており、回転軸33及びウエハホルダ26の回転中に、電極132に高周波電力を供給できるように構成されている。
【0060】
ウエハホルダ26A、26Bは、ホルダ載置用テーブル23により所定の位置に配置されて処理が行われる。蓋体12の下面において、このように所定の位置に配置されたウエハホルダ26Bと対向する円形領域が下方に突出して、プラズマ発生用のガス供給部134を形成している。このガス供給部134には、ウエハWと対向するように吐出口135が開口しており、蓋体12に形成された流路を介して、プラズマ発生用ガスである例えばH(水素)ガス及びAr(アルゴン)ガスの混合ガスを供給するガス供給源136に接続されている。
【0061】
プラズマ発生用のガス供給部134の周縁部は、さらに下方へ突出してウエハホルダ26Bの周縁部に対向すると共に近接するリング部137を形成しており、このリング部137には、当該周方向に沿ってパージガスの吐出口138が形成されている。パージガス吐出口138は、蓋体12に形成された流路を介してパージガスである例えばNガスの供給源139に接続されている。
【0062】
また、蓋体12にはガス供給部134を貫通する貫通孔140が形成されており、この貫通孔140は、前記ホルダ保持部96の電極132に重なると共にウエハWの半径上に開口している。そして、この貫通孔140にはプラズマ発生部141が設けられている。プラズマ発生部141は、カップ体142、ファラデーシールド143、コイル144及び高周波電源145を含んでいる。カップ体142は例えば石英からなり、上側が開口すると共に貫通孔140を塞ぐように形成されている。
【0063】
上記のファラデーシールド143は接地された導電性の板状体からなり、カップ体141の底面上に設けられている。コイル144は鉛直軸周りに巻回され、ファラデーシールド143上に設けられている。ファラデーシールド143と、コイル144との間には図示しない絶縁体が介在し、これらを絶縁している。高周波電源145は、コイル144に高周波電力を供給する。ファラデーシールド143においては、高周波電力の印加により、コイル144の周囲に発生した電磁界における電界成分が処理空間10へ向かうことを阻止するために例えばコイル144と直交する方向に伸びるスリットが、コイルの伸びる方向に多数配列されるように形成されている。このような構成により、カップ体142の下方が、プラズマ発生用ガスによりプラズマが形成されるプラズマ形成領域とされている。このプラズマ形成領域は、処理中にウエハWが回転するため、ウエハホルダ26Bに保持されるウエハWの半径をカバーする大きさであればよい。
【0064】
この成膜装置131では、成膜装置1と同様に、ウエハホルダ26A、24Bに夫々近接するように6つの開口部49が設けられて、各開口部49からガスが排気される。開口部49は、例えば成膜装置1と同様にホルダ載置用テーブル23の周縁部の下方に設けられるが、後述する図26では、図示が複雑化することを防ぐために、ホルダ載置用テーブル23の外側に示している。
【0065】
図25図26は、成膜装置131におけるウエハWの処理時におけるガスの流れを矢印で示している。このウエハWの処理時には、成膜装置1におけるウエハWの処理時と同様に、ウエハホルダ26A、26Bは回転する。ウエハホルダ26A上のウエハWには、図9図10で説明したように回転するガス供給ヘッド62からTiClガスが供給され、当該TiClガスがガスシャワーヘッド51から供給されたNHガスと反応して成膜される。供給されたTiClガスは、ウエハホルダ26Aに近接する開口部49からNHガスと共に排気される。
【0066】
ウエハホルダ26Bでは、ガス供給源136、139からパージガス及びプラズマ発生用ガスが供給され、高周波電源145によりコイル144に高周波が印加されることにより、カップ体141の下方領域において、プラズマ発生用ガスがプラズマ化して、ウエハWの改質が行われる。また、このようにコイル143への高周波の印加時は、高周波電源133から電極132へも高周波が印加される。ファラデーシールド142とホルダ保持部96の電極132が対向電極となり、ウエハW上に形成されるプラズマは、容量結合型のプラズマとなる。このプラズマ中ではイオンが上下動し、ウエハWに衝突するのでウエハWに比較的深い凹部が形成されており、当該凹部内にTiN膜が成膜されても、当該TiN膜の改質を確実に行うことができる。
【0067】
ウエハホルダ26Bの周縁部に供給されたパージガスは、ウエハホルダ26Bの外方へ流れ、ウエハホルダ26Bに近接する開口部49より排気される。このパージガスの流れによって、NHガス及びTiClガスがウエハホルダ26Bに保持されるウエハW上に流入することが防がれる。プラズマ発生用ガスについては、当該プラズマ発生用ガスが供給されたウエハホルダ26Bに近接する開口部49より、パージガスと共に排気される。
【0068】
上記したようにパージガスの流れによって、NHガス及びTiClガスが供給される領域が限定され、成膜装置131では互いに異なるウエハホルダ26に保持されるウエハWに互いに異なる処理を行うことができる。成膜装置と改質装置とを個別に製造することに対して、排気機構39など装置を構成する部品が共有化されることになるため、成膜装置131では装置の製造コストの低下を図ることができる。
【0069】
図27には、成膜装置131の変形例である成膜装置151を示している。成膜装置131との差異点としては、図11で示した成膜装置81のようにホルダ載置用テーブル23を支持する回転筒82が設けられ、排気機構39により回転筒82内が排気される。成膜装置81ではホルダ載置用テーブル23の中央に回転筒82内と連通する排気口37が設けられているが、この成膜装置151では排気口37がウエハホルダ26A、26Bを夫々囲むようにホルダ載置用テーブル23に多数形成されている。ウエハホルダ26A、26Bから外方に流れた各ガスが排気口37から排気されることで、ウエハホルダ26A上のウエハWの雰囲気とウエハホルダ26B上のウエハWの雰囲気とが分離されて、成膜装置131と同様に成膜処理及び改質処理が行われる。
【0070】
(第1の実施形態の第4の変形例)
続いて、成膜装置1の第4の変形例に係る成膜装置161について、図28を参照しながら成膜装置1との差異点を中心に説明する。この成膜装置161の蓋体12には、成膜処理時における各ウエハW上に変位センサ162が設けられている。変位センサ162は下方に向けて光を照射すると共に、この光が照射された被照射物からの反射光を受光し、当該受光された反射光についてのデータ信号を制御部100に送信する。そして、制御部100は、このデータ信号から変位センサ162と被照射物との間の距離を算出できるように構成されている。
【0071】
図29の平面図を参照して、変位センサ162が設けられる位置についてさらに説明すると、変位センサ162は、例えばウエハホルダ26に保持されるウエハWの周縁部上に設けられる。図29では回転するガス供給ヘッド62の各位置を、実線、一点鎖線、二点鎖線で示しており、二点鎖線で示すように変位センサ162の下方を、ガス供給ヘッド62が通過することができる。また、実線及び一点鎖線で示すように、ガス供給ヘッド62は変移センサ162の下方から退避することができる。つまり、ウエハWの周縁部及びガス供給ヘッド62が、既述の被照射物となる。
【0072】
成膜装置161の動作について、図30を参照しながら説明する。成膜装置1と同様に6枚のウエハWが各ウエハホルダ26に載置された後、駆動部34によってホルダ保持部35が上昇してウエハホルダ26を保持し、所定の高さ位置でホルダ保持部35の上昇が停止する。そして、ウエハホルダ26が回転し、ヒーター36によりウエハW全体が加熱される。然る後、変位センサ162の下方に位置した状態のガス供給ヘッド62と変位センサ162とのなす距離D1(図30上段参照)が算出される。続いて、ガス供給ヘッド62が回転して変位センサ162の下方から退避した後に静止し、回転するウエハWの周縁部と変位センサ162とのなす距離D2(図30中段参照)が例えば所定の間隔をおいて、複数回取得される。その後、D2の平均が算出され、さらにD2の平均とD1との差分が算出される。
【0073】
然る後、算出されたD2の平均とD1との差分が、予め設定された基準値になるように、駆動部34によってウエハホルダ26が上記の所定の位置から上昇または下降し、ウエハWの高さの位置合わせが行われる。図30の下段では、ウエハホルダ26が上昇する例を示している。高さの位置合わせ後、成膜装置1と同様に、ガス供給ヘッド62の回転とガス供給ヘッド62からのTiClガスの供給とが行われて、成膜装置1と同様にウエハWにTiN膜が成膜される。
【0074】
このようにウエハWの高さの位置合わせを行う理由を説明する。例えばウエハWの反りや、ガス供給ヘッド62及びウエハホルダ26の熱膨張や、装置の組み立て誤差などにより、成膜処理を行うためにホルダ保持部35がウエハホルダ26を保持して所定の高さ位置に移動したときのウエハWの表面とガス供給ヘッド62との距離が、設計値からずれてしまう場合がある。この場合、ガス供給ヘッド62の対向部63とウエハW表面との間の隙間におけるTiClガスの濃度が、所望の膜厚を得るための濃度から乖離するおそれがある。しかし成膜装置161によれば、上記のウエハWの高さ調整が行われることで、そのようなTiClガスの濃度の乖離が抑えられ、ウエハWに形成されるTiN膜の膜厚を、より精度高く制御することができる。
【0075】
対向部63とウエハW表面との間の空間におけるTiClガスの濃度を高くして成膜処理に要する時間を短縮する観点からは、TiClガス吐出時におけるウエハWの表面と対向部63の下面との距離D3(図30下段参照)が小さいほど好ましい。上記のウエハWの高さ調整は、そのようにガスの濃度を高くし、且つウエハWと対向部63との接触を防ぐ目的から、例えば距離D3が0.5mm〜3mmになるように行われる。なお、この成膜装置161では駆動部34を介してウエハWが昇降して距離D3が調整されるが、ガス供給機構62を昇降させる昇降機構を設けてガス供給ヘッド62をウエハWに対して昇降させ、上記のD3が調整されるようにしてもよい。
【0076】
図31では成膜装置1において、5つの原料ガス吐出口64を備えるようにガス供給ヘッド62の対向部63を形成した例を示している。移動する軌跡が最も大きい原料ガス吐出口64について見ると、図31の上段に示すガス供給ヘッド62は回転することにより、横方向に見てウエハWの一端部上、中心部上にて上記の原料ガス吐出口64の移動方向が切り返される。図中の一点鎖線は、ウエハWの中心軸(回転軸)を示している。このようにウエハWの一端部上、中心部上で移動方向の切り返しが行われると、ウエハW及びガス供給ヘッド62が等速で回転する場合、回転するウエハWの一端部上及び中心部上に原料ガス吐出口64が配置される時間が、他の領域上に配置される時間に比べて短くなる。ウエハWの端部は、中心部に比べて面積が大きいことから、そのようにウエハWの一端部上に原料ガス吐出口64が配置される時間が短いと、ウエハWの端部にてガスの供給量が少なくなり、ウエハWの面内で膜厚がばらつくことになる。
【0077】
そこで、図31の下段のガス供給ヘッド62では、横方向に見て、回転するウエハWの一端の外側で原料ガス吐出口64の移動方向が切り返されるように、ガス供給ヘッド62が回転する。つまり、原料ガス吐出口64によるガスの吐出位置が、回転するウエハWの中心部と、当該ウエハWの外側領域との間を移動している。この吐出位置は、具体的には例えば吐出口64のガスの吐出方向に向かう投影領域である。なお、この図31の下段のガス供給ヘッド62では、ウエハWの中心部の成膜量も多くするために、ウエハWの中心部上よりも他端側で原料ガス吐出口64の移動方向が切り返されるようにしている。図32も用いて、図31の下段のガス供給ヘッド62ウエハWの周縁部の成膜について説明すると、図32は、当該ガス供給ヘッド62が移動し得る横方向の領域を複数に分割して数値を付した表を示している。表中に縦方向に並んだ数値は、ウエハWの回転した回数を示しており、従って処理開始からの経過時間に対応する。
【0078】
この表は、原料ガス吐出口64の位置とウエハWの回転した回数とを対応付けて示すものであり、表中の原料ガス吐出口64の位置に対応する表のマス目には1を付している。ここではガス供給ヘッド62及びウエハWが等速で回転し、表のマス目に付した1はガスの供給量、即ち成膜量に対応するものとする。図中の上段側の表、下段側の表が、夫々原料ガス供給ヘッド62がウエハWの中心部側、周縁部側に向かうときの成膜量を表す。上記のように原料ガス吐出口64によるガスの吐出位置が、回転するウエハWの中心部と、当該ウエハWの外側領域との間を移動しているため、各表において、ウエハWの領域に対応する各領域0〜5の成膜量の合計は、ウエハWの外側の領域に対応する各領域−4〜−1の成膜量の合計よりも多く、領域0〜領域5間では成膜量の合計は揃っており、ウエハWの面内におけるウエハWの膜厚のばらつきが抑えられている。
【0079】
既述の各例ではガス供給ヘッド62は連続的に回転させているが、ウエハWの径方向におけるガスの供給位置を変移させることができればよいため、間欠的に回転させてもよい。また、原料ガス吐出口64が公転するようにガス供給ヘッド62が回転する構成とする代わりに、原料ガス吐出口64がウエハWの中心部上と周縁部上との間を移動するようにガス供給ヘッド62が直線移動する構成としてもよい。また、ガス供給ヘッド62の位置が固定され、回転するウエハホルダ26が横方向に移動することで、原料ガスの供給位置が回転するウエハWの周縁部と中心部との間で移動する装置構成としてもよい。
【0080】
上記の例ではCVDとして、原料ガスであるTiClを反応ガスであるNHガスにより窒化する例について示したが、CVDによる成膜が可能な膜種であれば、上記以外のものにも適用可能である。具体的には例えば原料ガスとしてTMA(トリメチルアルミ(Al(CH))あるいはTEA(トリエチルアルミ(Al(C))をガス供給ヘッド62から供給し、ガスシャワーヘッド51から反応ガスとしてOガスまたはOガスを供給することで、ウエハW表面に酸化アルミニウム(Al)膜を形成することができる。
【0081】
SiH(モノシラン)ガスをウエハW表面で熱により分解してSi膜を成膜する場合、即ち、原料ガスと反応ガスとの化学反応を行わず、原料ガスのみにて成膜を行う場合は、ガスシャワーヘッド51を設けなくてよい。つまり、本発明は反応ガスを用いなくてもよい。また、そのようにSiH4ガスによりSi膜を形成する場合、ガスシャワーヘッド51の代わりにプラズマ発生部141を設け、ウエハWにおいてSiHガスが供給されない領域にはプラズマが形成されるようにし、Si膜の形成と、当該Si膜のプラズマによる改質処理とを並行して行ってもよい。また、上記の各実施形態及び各実施形態の変形例で示した構成は、互いに組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
W ウエハ
1 成膜装置
10 処理空間
11 真空容器
23 ホルダ載置用テーブル
26 ウエハホルダ
34 駆動部
35 ホルダ保持部
51 ガスシャワーヘッド
6 原料ガス供給部
62 ガス供給ヘッド
63 対向部
64 原料ガス吐出口
73 回転機構
100 制御部
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