特許第6558000号(P6558000)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558000
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20190805BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20190805BHJP
   C09D 175/16 20060101ALI20190805BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20190805BHJP
【FI】
   C08F299/06
   C08G18/44
   C09D175/16
   C09D7/65
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-50055(P2015-50055)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-169305(P2016-169305A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 高廣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】重安 真治
(72)【発明者】
【氏名】城野 孝喜
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−316614(JP,A)
【文献】 特開2012−036290(JP,A)
【文献】 特開2011−208096(JP,A)
【文献】 特開2009−280665(JP,A)
【文献】 特開2008−037993(JP,A)
【文献】 特開2007−238797(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045782(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/190553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C08F 299/00−299/08
C08G 18/00−18/87
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Cで表わされる構造と一般式Dで表わされる構造を含むポリカーボネートジオール(a)と、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含む(メタ)アクリレート(b)と、ポリイソシアネート(c)との反応生成物である不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、ポリカーボネートジオール(a)が、一般式Cで表わされる構造と一般式Dで表わされる構造が、n/m=80/20〜5/95(モル比)の割合で含有し、ポリカーボネートジオール(a)の数平均分子量が、800〜5,000の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化4】
【化5】
(式中、Rは各々独立して、2価の炭化水素基であり、置換基を有していても良い。上記炭化水素基中の1つ以上の炭素原子は、2価の芳香族基、2価のヘテロ環式基、又は2価の架橋炭素環基で置換されていても良く、上記炭化水素基中の末端以外の1つ以上の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていても良い。n≧1,m≧1である。)
【請求項2】
上記(メタ)アクリレート(b)の分子量が、100〜3,000の範囲であることを特徴とする請求項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
上記(メタ)アクリレート(b)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
上記ポリイソシアネート(c)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
上記不飽和基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が1,000〜200,000であり、且つ不飽和度が0.1〜1mol/kgであることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始剤を、上記不飽和基含有ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して0.01〜15質量部含有することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる塗料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、柔軟性に富み、強靭な硬化膜を形成し得ることから、活性エネルギー線硬化型の樹脂として、例えば、インキ、塗料、接着剤、コーティング剤、表面処理剤等に広く使用されている。
【0003】
一般に、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分、イソシアネート成分、及びラジカル重合性の水酸基含有不飽和モノマー成分を反応させて得られる。ここで、ポリオール成分としては、ポリカーボネートジオールは柔軟性が乏しいことから、ポリエーテルやポリエステル等が一般に使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年、不飽和基含有ポリウレタン樹脂には、さらなる柔軟性、屈曲性の向上とともに、当該樹脂から得られた硬化膜については、耐熱性等の耐久性が要求されている。
【0005】
不飽和基含有ポリウレタン樹脂の柔軟性や屈曲性を向上させるには、樹脂自体の高分子量化が必要である。
【0006】
しかしながら、形成される硬化膜の柔軟性や屈曲性等を向上させようとして、不飽和基含有ポリウレタン樹脂を高分子量化すると、樹脂の粘度が上昇し、ハンドリング性が低下し、低温液性が悪化する傾向があった。また当該樹脂から得られた硬化膜は、低温での屈曲性やグリップ性が低下する傾向にあり、耐熱性も十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−40965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分なハンドリング性能と低温液性を備えるとともに、形成される硬化膜の低温屈曲性やグリップ性、耐熱性にも優れる不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリオール成分として、特定のポリカーボネートジオールを用いた不飽和基含有ポリウレタン樹脂、及びこれを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下に示す活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。
【0011】
[1]下記一般式Aで表わされる構造単位を含むポリカーボネートジオール(a)と、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含む(メタ)アクリレート(b)と、ポリイソシアネート(c)とを反応させて得られる不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
[2]下記一般式Aで表わされる構造単位及び下記一般式Bで表わされる構造単位を含むポリカーボネートジオール(a)と、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含む(メタ)アクリレート(b)と、ポリイソシアネート(c)とを反応させて得られる不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、Rは各々独立して、2価の炭化水素基であり、置換基を有していても良い。上記炭化水素基中の1つ以上の炭素原子は、2価の芳香族基、2価のヘテロ環式基、又は2価の架橋炭素環基で置換されていても良く、上記炭化水素基中の末端以外の1つ以上の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていても良い。)
[3]上記ポリカーボネートジオール(a)が、下記一般式Cで表わされる構造と下記一般式Dで表わされる構造を含む化合物であって、一般式Cで表わされる構造と一般式Dで表わされる構造が、n/m=80/20〜5/95(モル比)の割合で含有することを特徴とする[1]又は[2]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、Rは各々独立して、2価の炭化水素基であり、置換基を有していても良い。上記炭化水素基中の1つ以上の炭素原子は、2価の芳香族基、2価のヘテロ環式基、又は2価の架橋炭素環基で置換されていても良く、上記炭化水素基中の末端以外の1つ以上の炭素原子が酸素原子又は硫黄原子で置換されていても良い。n≧1,m≧1である。)
[4]上記ポリカーボネートジオール(a)の数平均分子量が、800〜5,000の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0020】
[5]上記(メタ)アクリレート(b)の分子量が、100〜3,000の範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0021】
[6]上記(メタ)アクリレート(b)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0022】
[7]上記ポリイソシアネート(c)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0023】
[8]上記不飽和基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が1,000〜200,000であり、且つ不飽和度が0.1〜1mol/kgであることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0024】
[9]さらに光重合開始剤を、上記不飽和基含有ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して0.01〜15質量部含有することを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0025】
[10]上記[1]乃至[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる塗料。
【0026】
[11]上記[1]乃至[9]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された塗膜。
【0027】
なお、本発明において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を指し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを指す。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、十分な樹脂のハンドリング性と低温液性、硬化性能を備えるとともに、形成される硬化膜もまた低温屈曲性やグリップ性に優れる不飽和基含有ポリウレタン樹脂、及びこれを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記一般式Aで示される構造を含むポリカーボネートジオール(a)と、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含む(メタ)アクリレート(b)と、ポリイソシアネート(c)とを反応させて得られる不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有することをその特徴とする。
【0031】
本発明においてポリカーボネートジオール(a)とは、カーボネート結合を介してポリオールに由来する炭化水素基が連結した高分子鎖と、この高分子鎖の両末端に結合した水酸基とを有するものであって、例えば、上記一般式Aで表わされる構造単位と上記一般式Bで表わされる構造単位の共重合(ブロック・ランダム等を含む)構造を有する。
【0032】
上記一般式Aで表わされる構造単位を有する化合物としては、例えばε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオールを挙げることができる。
【0033】
上記一般式Bで表わされる構造単位を有する化合物は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類等のカーボネート類と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類との反応によって得ることができる。これらのうち1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートから得られるポリカーボネートポリオールを好適に用いることができる。
【0034】
上記一般式B中、Rとしては、2価の炭化水素基であれば、特に限定するものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキシレン基、イソヘキシレン基、ヘプチレン基、イソヘプチレン基、オクチレン基、イソオクチレン基等の脂肪族炭化水素基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等の脂環族炭化水素基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0035】
上記一般式Bにおいて、Rは置換基を有していても良い。置換基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。
【0036】
上記Rにおいて、炭化水素基中の1つ以上の炭素原子は、2価の芳香族基、2価のヘテロ環式基、又は2価の架橋炭素環基で置換されていても良い。例えば、上記Rにおいて、2価の炭化水素基中の1つ以上の炭素原子がベンゼン、トルエン、ナフタレン等の芳香族環を有する化合物で置換されているもの、モルホリン、イミダゾール、ピリジン、キノリン等のヘテロ環を有する化合物で置換されているもの、ノルボルナン、デカリン等の架橋炭素環を有する化合物で置換されているものが挙げられ、式中Rで表わされる炭化水素基の末端以外の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたエーテル構造、ペルオキシド構造を有するもの、若しくは硫黄原子で置換されたスルフィド構造、ジスルフィド構造を有するものが挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートジオール(a)が上記一般式Aで表わされる構造単位と上記一般式Bで表わされる構造単位とを含有する場合、ポリカーボネートジオール(a)中の上記一般式Aで表わされる構造単位と上記一般式Bで表わされる構造単位のモル比は、80:20〜5:95が好ましく、15:85〜40:60がさらに好ましい。すなわち、ポリカーボネートジオール(a)が、上記一般式Cで表わされる構造と上記一般式Dで表わされる構造を含む化合物であって、一般式Cで表わされる構造と一般式Dで表わされる構造が、n/m=80/20〜5/95(モル比)の割合で含有することが好ましい。範囲外となると液性が悪化するおそれがある。
【0038】
本発明において、ポリカーボネートジオール(a)の数平均分子量は、合成の容易さ、取り扱いやすさを考慮すると、800〜5,000、好ましくは1,000〜3,500の範囲である。
【0039】
本発明において、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含む(メタ)アクリレート(b)としては、特に限定するものではないが、例えば、分子量が100〜3,000、好ましくは100〜2,000、さらに好ましくは100〜1,000の範囲のものである。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、グリセロールモノアクリレート、グリセロールジアクリレート等のアクリレート類、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールジメタクリレート等のメタクリレート類、アリルアルコール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールジアリルエーテル等のアリル化合物類等が例示される。
【0040】
これらの中で好ましいものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物が好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0041】
また、(b)成分としては、上記した1種の化合物を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明において、ポリイソシアネート(c)としては、特に限定されず、従来公知の各種ポリイソシアネートから適宜選択して用いることができる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添化トリレンジイソシアネート、水素添化キシレンジイソシアネート、水素添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、脂肪族イソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。また、これらのイソシアネートの中でも、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0043】
本発明において、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,000〜200,000であるものが好ましい。数平均分子量が上記範囲未満では、当該樹脂から形成される硬化膜の柔軟性や伸びが不十分となる傾向があり、上記範囲を超えると結晶性、粘度が非常に高くなるため製造安定性の確保が難しくなる傾向がある。より好ましい数平均分子量は10,000〜50,000である。
【0044】
また、本発明において、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、不飽和度が0.1〜1mol/kgであるものが好ましい。ここで、不飽和度とは、樹脂1kgを製造するにあたって必要な(b)成分のモル数をαmolとし、(b)成分1分子中に含まれるラジカル重合性不飽和結合の数をβ個とした場合、α×βで計算される値である。不飽和度が上記範囲未満では硬化性能が不十分であったり、当該樹脂から形成される硬化膜の架橋密度が小さくなり、十分な表面硬化性が得られなくなる傾向があり、上記範囲を超えると十分な表面硬化性は得られるものの、硬化膜が硬くなり、柔軟性、伸びに乏しくなる傾向がある。より好ましい範囲は0.1〜0.5mol/kgである。
【0045】
本発明において、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、上記した(a)〜(c)成分を有機溶媒に投入し、反応させることにより製造できる。
【0046】
ここで、反応温度は、通常20〜200℃であり、30〜150℃の範囲が好ましい。また、反応はイソシアネート残基が無くなくなるまで適宜行えばよく、反応時間は通常10分間〜48時間である。有機溶媒としては、例えば、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−tert−ブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
この反応時には、必要に応じて水酸基とイソシアネート基の反応触媒を添加することができる。このような反応触媒としては、オレイン酸鉛、テトラブチルスズ、三塩化アンチモン、トリフェニルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0048】
また、(a)成分、(b)成分、(c)成分の比率は、不飽和基含有ポリウレタン樹脂に要求される不飽和度、数平均分子量等に応じて決定すればよく、特に限定するものではないが、例えば、数平均分子量が1,000〜200,000で、不飽和度が0.1〜1mol/kgの不飽和基含有ポリウレタン樹脂を製造するためには、(a)〜(c)成分の総合計量(固形分)を100質量%とした場合に、(a)成分が50〜90質量%、(b)成分が2〜20質量%、(c)成分が5〜40質量%であることが好ましい。また、反応触媒を使用する場合には、通常、(a)〜(c)成分の総合計量(固形分)100質量部に対して0.005〜1.0質量部の範囲で使用する。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記した不飽和基含有ポリウレタン樹脂100質量部に対して、光重合開始剤を0.01〜15質量部含有することが好ましく、活性エネルギー線照射することにより硬化物が得られる。
【0050】
光重合開始剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のケトン類、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン酸化物、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、カンファン−2,3−ジオン、フェナントレンキノン等のキノン類等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、特に限定するものではないが、例えば、電子線、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。その照射量は必要に応じて調整してよい。
【0052】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記した(a)〜(c)成分の他に、必要に応じて、有機溶媒、着色顔料、体質顔料、塗料用添加剤等を配合してもよい。
【0053】
有機溶媒としては、例えば、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−tert−ブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶剤等が挙げられる。
【0054】
着色顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料が挙げられる。
【0055】
体質顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等が挙げられる。
【0056】
塗料用添加剤としては、特に限定するものではないが、例えば、可塑剤、触媒、防かび剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤、艶消し剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、インキ、塗料、接着剤、コーティング剤、表面処理剤等、様々なコーティング用途に好適に用いることが出来る。当該樹脂組成物の塗布法は特に限定されるものではなく公知の手法から適宜選択すればよい。また、塗布量、塗膜の厚み、活性エネルギー線照射量等は、被塗装面の材質等に応じて適宜なものとすればよい。
【0058】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、形成された硬化膜について低温屈曲性、グリップ性、耐熱性が要求される各種用途に好適に使用される。
【実施例】
【0059】
製造例1.
〔ポリカーボネートジオールの製造1〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、グリコールとして1,6−ヘキサンジオール(以下、「1,6−HG」と略す。)とジエチルカーボネート(以下、「DEC」と略す。)を配合割合がモル比で1.10となるように、1,6−HGを700g、DECを637g仕込むとともに、さらに反応触媒としてテトラブチルチタネート(以下、「TBT」と略す。)を0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(p1)(以下PCD(p1)と略す)を得た。
【0060】
製造例2.
〔ポリカーボネートジオールの製造2〕
PCD(p1)を850g、前記一般式Cで表わされる構造単位を有するポリカプロラクトンジオール(c1)(ダイセル社製、水酸基価56.1(mg−KOH/g)。以下、「PCL(c1)」と略す)を150gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−1)を得た。Polyol−1はPCL(c1)/PCD(p1)=15/85(mol比)であり、水酸基価は56.1mg−KOH/g(数平均分子量(以下Mn)=2,000)であった。
【0061】
製造例3.
〔ポリカーボネートジオールの製造3〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、PCD(p1)を得た。
次いでPCD(p1)を700g、前記一般式Cで表わされる構造単位を有するPCL(c1)を300gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−2)を得た。Polyol−2はPCL(c1)/PCD(p1)=30/70(mol比)であり、水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であった。
【0062】
製造例4.
〔ポリカーボネートジオールの製造4〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が110〜114(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(p2)(以下PCD(p2)と略す)を得た。
次いでPCD(p2)を700g、前記一般式Cで表わされる構造単位を有するポリカプロラクトンジオール(c2)(ダイセル社製、水酸基価112.2(mg−KOH/g)。以下、「PCL(c2)」と略す)を300gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−3)を得た。Polyol−3はPCL(c2)/PCD(p2)=30/70(mol比)であり、水酸基価は112.2mg−KOH/g(Mn=1,000)であった。
【0063】
製造例5.
〔ポリカーボネートジオールの製造5〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が35〜40(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(p3)(以下PCD(p3)と略す)を得た。
次いでPCD(p3)を700g、前記一般式Cで表わされる構造単位を有するポリカプロラクトンジオール(c3)(ダイセル社製、水酸基価37.4(mg−KOH/g)。以下、「PCL(c3)」と略す)を300gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−4)を得た。Polyol−4はPCL(c3)/PCD(p3)=30/70(mol比)であり、水酸基価は37.4mg−KOH/g(Mn=3,000)であった。
【0064】
製造例6.
〔ポリカーボネートジオールの製造6〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が22〜23(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(p4)(以下PCD(p4)と略す)を得た。
次いでPCD(p4)を700g、前記一般式Cで表わされる構造単位を有するポリカプロラクトンジオール(c4)(ダイセル社製、水酸基価22.4(mg−KOH/g)。以下、「PCL(c4)」と略す)を300gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−5)を得た。Polyol−5はPCL(c4)/PCD(p4)=30/70(mol比)であり、水酸基価は22.4mg−KOH/g(Mn=5,000)であった。
【0065】
製造例7.
〔ポリカーボネートジオールの製造7〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、PCD(p1)を得た。
次いでPCD(p1)を600g、PCL(c1)を400gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−6)を得た。Polyol−6はPCL(c1)/PCD(p1)=40/60(mol比)であり、水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であった。
【0066】
製造例8.
〔ポリカーボネートジオールの製造8〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、PCD(p1)を得た。
次いでPCD(p1)を400g、PCL(c1)を600gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−7)を得た。Polyol−7はPCL(c1)/PCD(p1)=60/40(mol比)であり、水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であった。
【0067】
製造例9.
〔ポリカーボネートジオールの製造9〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、PCD(p1)を得た。
次いでPCD(p1)を200g、PCL(c1)を800gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−8)を得た。Polyol−8はPCL(c1)/PCD(p1)=80/20(mol比)であり、水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であった。
【0068】
製造例10.
〔ポリカーボネートジオールの製造10〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が35〜40(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(Polyol−9)を得た。Polyol−9の水酸基価は37.4mg−KOH/g(Mn=3,000)であり、前記一般式Cで表わされる構造単位は有していない。
【0069】
製造例11.
〔ポリカーボネートジオールの製造11〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(Polyol−10)を得た。Polyol−10の水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であり、前記一般式Cで表わされる構造単位を有していない。
【0070】
製造例12.
〔ポリカーボネートジオールの製造12〕
製造例1と同様の製造方法において、反応物の水酸基価が110〜114(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(Polyol−11)を得た。Polyol−11の水酸基価は112.2mg−KOH/g(Mn=1,000)であり、前記一般式Cで表わされる構造単位を有していない。
【0071】
製造例13.
〔ポリカーボネートジオールの製造13〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が220〜230(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、前記一般式Dで表わされる構造単位を有するポリカーボネートジオール(p5)(以下PCD(p5)と略す)を得た。
次いでPCD(p5)を700gと前記一般式Cで表わされる構造単位を有するポリカプロラクトンジオール(c5)(ダイセル社製、水酸基価224.0(mg−KOH/g)。以下、「PCL(c5)」と略す)を300gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−12)を得た。Polyol−12はPCL(c5)/PCD(p5)=30/70(mol比)であり、水酸基価は224.0mg−KOH/g(Mn=500)であった。
【0072】
製造例14.
〔ポリカーボネートジオールの製造14〕
製造例1と同様の製造方法にて、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、PCD(p1)を得た。
次いでPCD(p1)を100g、PCL(c1)を900gとを190℃で5時間エステル交換反応を行い、ポリカーボネートジオール(Polyol−13)を得た。Polyol−13はPCL(c1)/PCD(p1)=90/10(mol比)であり、水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であった。
【0073】
製造例15.
〔ポリカーボネートジオールの製造15〕
グリコールとして1,5−ペンタンジオールと1,6−HGを使用すること以外は製造例1と同様の製造方法にてポリカーボネートジオールを製造した。その際、1,5−ペンタンジオール/1,6−HG=5/5(モル比)とし、上記グリコールの合計量がDECに対する配合割合としてモル比で1.08になるように、1,5−ペンタンジオールを531.7g、1,6−HGを468.3g、DECを868.6g仕込み反応させることにより、ポリカーボネートジオール(Polyol−14)を得た。Polyol−14の水酸基価は56.1mg−KOH/g(Mn=2,000)であり、前記一般式Cで表わされる構造単位を有していない。
【0074】
なお、以下の比較例において、Polyol−15として、ダイセル化学社製 PCL−220(ポリカプロラクトンジオール、水酸基価56.1mg−KOH/g(Mn=2,000))を使用した。また、Polyol−16としては、保土谷化学社製 PTG−2000SN(ポリテトラメチレングリコール、水酸基価56.1mg−KOH/g(Mn=2,000))を使用した。
【0075】
実施例1.
〔不飽和基含有ポリウレタン樹脂の製造〕
攪拌機、温度計、加熱装置、組んだ2Lの4口フラスコに、Polyol−1、428.7gと、と、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)52.9gと、ジオクチルスズジラウレート(以下DOTDLと略す)0.2g、メチルエチルケトン(以下MEKと略す)500gを投入し、70℃において約12時間攪拌し反応させた。その後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略す)12.7gを投入し、70℃において約12時間攪拌し反応させた。
【0076】
赤外線吸収スペクトルによりイソシアネート残基が観測されなくなったことで反応終了とした。このようにして、数平均分子量30,000、不飽和度0.20mol/kgの不飽和基含有ポリウレタン樹脂を固形分として50質量%含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、ハンドリング性と低温液性を評価した。結果を表1、表2に示す。
【0077】
〔活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いたフィルム作製〕
得られた樹脂溶液中の不飽和基含有ポリウレタン樹脂固形分100質量部に対して、1.5質量部の光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア184、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)を加えて樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を離型紙上に約200μmの膜厚でコーティングした(グリップ性評価についてはPET基材を使用した)。その後、40℃において24時間放置して、有機溶媒を完全に揮発させてから、紫外線を100mJ/cm照射してフィルム(硬化膜)を形成した。この硬化膜について、下記の評価方法により低温屈曲性(柔軟性)、グリップ性、耐熱性を評価した。結果を表1、表2に示す。
【0078】
〔評価方法〕
(1)ハンドリング性.
得られた不飽和基含有ポリウレタン樹脂溶液のハンドリング性を以下の3段階で評価した。
200μmアプリケーターを用い、塗装速度5cm/sにて塗装し直後の外観を3段階で評価した。平滑で滑らかなものを「◎」、凹凸が見られるものを「×」、その中間を「○」とした。
【0079】
(2)低温液性.
得られた不飽和基含有ポリウレタン樹脂溶液を−5℃に1週間静値した後の液性を以下の3段階で評価した。液状で濁りや浮遊物がないものを「◎」、液状であるが濁りや浮遊物が認められるものを「○」、固化したものを「×」とした。
【0080】
(3)低温屈曲性(柔軟性).
JIS K 6542に基づき、得られた硬化膜から切り出した試験片を−30℃にて25,000回屈曲を実施し、外観を以下の3段階で評価した。試験片に変化が認められないものを「◎」、曲げた後が残るものを「○」とし、試験片が割れたものを「×」とした。
【0081】
(4)グリップ性.
PET基材上に得られた硬化膜を上側にして水平な平台に固定した。この硬化膜上に半径10mmの円形分銅(1g)を乗せ、平台を傾けたときに分銅が滑り出す角度(θ)を求め、以下の3段階で評価した。θ>30°を「◎」、15°≦θ≦30°を「○」、θ<15°を「×」とした。
【0082】
(5)耐熱性.
得られた硬化膜を110℃にて2週間静置し、硬化膜の外観を以下の2段階で評価した。
試験前後で変化のないものを「◎」、試験後溶解したものを「×」とし、とした。
【0083】
実施例2〜8及び比較例1〜8.
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた2Lの4口フラスコに投入する成分の種類及び質量を表1、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、不飽和基含有ポリウレタン樹脂を製造し、同様にフィルム(硬化膜)を形成し評価を行った。結果を表1、表2に併せて示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】