(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、隣接する大径部の間に歯付プーリ部が設けられた構造を有し、作製が容易な紙葉類分離機構用ロー
ラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、
シャフトを挿通させるための貫通孔が設けられた円筒形状の芯部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に取り付けられた第1の鍔部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記第1の鍔部と隣接して取り付けられた歯付プーリ部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記歯付プーリ部を挟んで前記第1の鍔部と反対側に、前記歯付プーリ部と隣接して取り付けられた第2の鍔部と、
を有する紙葉類分離機構用ローラ
が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によれば、
シャフトを挿通させるための貫通孔が設けられた円筒形状の芯部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に取り付けられた第1の鍔部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記第1の鍔部と隣接して取り付けられた歯付プーリ部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記歯付プーリ部を挟んで前記第1の鍔部と反対側に、前記歯付プーリ部と隣接して取り付けられた第2の鍔部と、
を有する紙葉類分離機構用ローラの製造方法であって、
前記芯部に前記第1の鍔部を挿通させる工程と、
前記第1の鍔部と積み重なるように、前記芯部に前記歯付プーリ部を挿通させる工程と、
前記歯付プーリ部と積み重なるように、前記芯部に前記第2の鍔部を挿通させる工程と、
を有する紙葉類分離機構用ローラの製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
芯部、第1、第2の鍔部、および歯付プーリ部が組み立てられた構造により、芯部、第1、第2の鍔部、および歯付プーリ部が一体に形成された構造と比べて、大径部の間に歯付プーリ部が設けられた紙葉類分離機構用ローラを作製しやすい。例えば、第1の鍔部と歯付プーリ部と第2の鍔部とを積み重なるように芯部に挿入することで、紙葉類分離機構用ローラを容易に組み立てることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1(a)〜
図1(c)および
図2(a)〜
図2(f)を参照して、本発明の一実施形態による紙葉類分離機構用ローラ100について説明する。本実施形態による紙葉類分離機構用ローラ100は、紙幣分離機構等の紙葉類分離機構において紙葉類を送るためのローラとして好ましく用いられ、例えば、ピックアップローラやフィードローラやゲートローラとして用いることができる。紙葉類分離機構用ローラ100を、単に、ローラ100と呼ぶこともある。
【0012】
図1(a)および
図1(b)は、それぞれ、ローラ100の概略的な正面図および側面図であり、
図1(c)は、ローラ100の概略的な断面図である。
【0013】
ローラ100の中心部に、シャフトを挿通させるための貫通孔11が設けられている。シャフトの貫通方向を、ローラ100の厚さ方向と呼ぶこともある。
【0014】
ローラ100の外周部には、ローラ100の厚さ方向に沿って、外径が相対的に大きい大径部101と、外径が相対的に小さい小径部102とが交互に設けられている。大径部101の外周部として、紙葉類に対する摩擦係数の高い高摩擦部23が設けられている。なお、例示の構造では、高摩擦部23が大径部101の全周に亘って設けられているが、必要に応じて、高摩擦部23を大径部101の周方向の一部に設けてもよい。
【0015】
隣接する大径部101の間の、小径部102の外周上に、ベルトが掛けられるための歯付プーリ部30が設けられている。歯付プーリ部30の外径は、大径部101の外径よりは小さく、小径部102の外径よりは大きい。
【0016】
ローラ100は、貫通孔11にシャフトが挿通され、歯付プーリ部30にベルトが掛けられた状態で使用される。より具体的に説明すると、例えば、歯付プーリ部30に掛けられたベルトを介して伝達された駆動力により、貫通孔11に挿通されたシャフトの周りにローラ100が回転し、この際、高摩擦部23が紙葉類に接触して紙葉類を送る。
【0017】
図2(a)および
図2(b)は、それぞれ、ローラ100を構成する部品である芯部10の概略的な正面図および側面図であり、
図2(c)および
図2(d)は、それぞれ、ローラ100を構成する部品である鍔部20の概略的な正面図および側面図であり、
図2(e)および
図2(f)は、それぞれ、ローラ100を構成する部品である歯付プーリ部30の概略的な正面図および側面図である。
【0018】
本実施形態によるローラ100は、芯部10、鍔部20、および歯付プーリ部30の3種類の部品を組み合わせることで構成されていることを特徴とする。ローラ100の厚さ方向を、芯部10の長さ方向、鍔部20の厚さ方向、歯付プーリ部30の厚さ方向と呼ぶこともある。
【0019】
芯部10は、シャフトを挿通させるための貫通孔11が設けられ、芯部10の長さ方向について外径が一定の円筒形状を有し、ローラ100の小径部102を構成する。芯部10は、金属材料を切削加工することで形成されている。芯部10の長さ(ローラ100の厚さ)は、例えば20.5mm程度であり、芯部10の外径(小径部102の外径)は、例えば14mm程度である。
【0020】
鍔部20は、芯部10が挿通する貫通孔21が設けられた円板形状を有し、芯部10の外周上に取り付けられて、ローラ100の大径部101を構成する。鍔部20は、内周側に配置された内周部材22と、内周部材22の外周上に配置された外周部材23とにより構成されている。内周部材22は、金属材料を切削加工することで形成されており、外周部材23は、内周部材22上にゴム材料を成形することで形成されている。ゴム材料で形成された外周部材23が、紙葉類に対する摩擦係数が内周部材22よりも高い高摩擦部23を構成する。鍔部20の厚さは、例えば3.5mm程度であり、鍔部20の外径(大径部101の外径)は、例えば35mm程度である。
【0021】
例示の構造では、ローラ100の厚さ方向の両端と中間とに、3箇所の大径部101が設けられている。つまり、芯部10の長さ方向の両端と中間とに、3個の鍔部20a〜20cが取り付けられている。
図2(a)に、芯部10の外周上の鍔部20a〜20cが取り付けられる領域A20a〜A20cを示す。鍔部20a〜20cは、同一形状であり、部品の種類としては、1種類の鍔部20が使用される。芯部10の長さ方向の両端に配置された鍔部20a、20cの側面は、それぞれ、芯部10の一端側の側面、他端側の側面と揃うように(面一となるように)配置されている。
【0022】
歯付プーリ部30は、外周上に歯面が設けられた歯付きのプーリとして構成され、芯部10が挿通する貫通孔31が設けられた円板形状を有し、芯部10の外周上に、鍔部20bと鍔部20cの間に取り付けられている。
図2(a)に、芯部10の外周上の歯付プーリ部30が取り付けられる領域A30を示す。歯付プーリ部30は、金属材料を切削加工することで形成されている。歯付プーリ部30の厚さ(隣接する大径部101の間の間隙幅)は、例えば5mm程度であり、歯付プーリ部30の外径は、例えば20mm程度である。
【0023】
なお、大径部101の箇所数、つまり鍔部20の個数は、例示の3つに限定されず、必要に応じて、2つあるいは4つ以上としてもよい。
【0024】
次に、
図3(a)〜
図3(c)を参照して、実施形態によるローラ100の作製方法の一例について説明する。
図3(a)〜
図3(c)は、ローラ100の作製工程の一例を示す概略図である。
【0025】
まず、上述のような部品として、芯部10、鍔部20、および歯付プーリ部30を準備する。芯部10および歯付プーリ部30は、それぞれ、例えば、アルミ合金等の金属材料を旋盤やフライス盤等により切削加工することで作製する。
【0026】
鍔部20については、まず、内周部材22を、例えば、アルミ合金等の金属材料を旋盤やフライス盤等により切削加工することで作製する。そして、外周部材23の外形形状を画定する外型の中に、中子として接着剤を塗布した内周部材22を配置して、外周部材23を成形するための金型を準備する。次に、この金型に、例えばポリウレタン等のゴム材料を流し込み、加硫を行って、外周部材23を接着し成形する。このようにして、鍔部20を作製する。鍔部20は、必要となる複数個(例示の構造では3個)作製する。
【0027】
次に、芯部10、鍔部20(20a〜20c)、および歯付プーリ部30を組み立てることで、ローラ100を構成する。
【0028】
図3(a)を参照する。芯部10の、鍔部20c、歯付プーリ部30、および鍔部20bが取り付けられる領域A20c、領域A30、および領域A20bに接着剤を塗布し、領域A20c側の側面を、作業台200上に載置する。
【0029】
図3(b)を参照する。下方から順に、鍔部20c、歯付プーリ部30、および鍔部20bを、芯部10に挿通させて積み重ねる。このようにして、鍔部20c、歯付プーリ部30、および鍔部20bが、芯部10に取り付けられる。つまり、芯部10の外周上で、鍔部20cに隣接して歯付プーリ部30が配置されるとともに、歯付プーリ部30を挟んで鍔部20cと反対側に、歯付プーリ部30に隣接して鍔部20bが配置された構造が形成される。
【0030】
そして、芯部10の、鍔部20aが取り付けられる領域A20aに接着剤を塗布する。また、鍔部20aを、作業台200上に載置する。
【0031】
図3(c)を参照する。鍔部20c、歯付プーリ部30、および鍔部20bが取り付けられた芯部10の上下を反転し、芯部10の領域A20aを鍔部20aに挿通させて、領域A20a側の側面を、支持台200の上に載置する。このようにして、さらに鍔部20aが、芯部10に取り付けられる。つまり、芯部10の外周上で、鍔部20bを挟んで鍔部20cと反対側に、鍔部20aが配置された構造が形成される。例えば以上のようにして、ローラ100が組み立てられる。
【0032】
次に、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0033】
ここで、まず、比較形態によるローラについて説明する。比較形態によるローラは、
図1(a)および
図1(b)に示す構造のローラが、一体的に構成されたものである。つまり、比較形態によるローラは、実施形態によるローラ100の芯部10、鍔部20の内周部材22、および歯付プーリ部30が、一体の金属部材として形成された構造を有し(この金属部材を、一体金属部材と呼ぶこととする)、一体金属部材の大径部101の外周上に、ゴム材料による高摩擦部23が形成されたものである。比較形態によるローラは、金属材料を切削加工することで一体金属部材を準備し、一体金属部材の大径部の外周上にゴム材料を流し込み成形することで作製される。
【0034】
比較形態によるローラでは、以下のような課題が生じる。比較形態による一体金属部材は、隣接する大径部101間に歯付プーリ部30の歯面を切削形成することが難しい。また、ゴム材料を流し込んで高摩擦部23を成形する際に、歯付プーリ部30の歯の間にゴム材料が入り込み、これを除去することが難しい。
【0035】
実施形態によるローラ100では、芯部10、鍔部20、および歯付プーリ部30が別体の部材となっている。このため、歯付プーリ部30を、単体で作製できる。つまり、歯付プーリ部30の歯面は、大径部101に干渉されることなく容易に切削形成できる。また、鍔部20も、単体で作製できる。つまり、鍔部20に高摩擦部23(外周部材23)が形成された後に、鍔部20と歯付プーリ部30とが組み立てられるので、歯付プーリ部30の歯の間にゴム材料が入り込むことがない。このように、実施形態によるローラ100は、芯部10、鍔部20、および歯付プーリ部30が組み立てられた構造により、作製しやすいという効果を有する。
【0036】
さらに、実施形態によるローラ100は、以下に説明するように、組み立てやすいという効果も有する。芯部10は、外径が一定の円筒形状を有し、複数設けられる鍔部20は、同一形状を有する。このため、各鍔部20を芯部10の外周上に順に挿通させるだけで、ローラ100の大径部101と小径部102とを構成できる。また、各鍔部20は同一形状を有しているので、複数の大径部102を構成するために、一種類の部品(鍔部20)を複数個作製すればよい。
【0037】
図3(b)を参照して説明したように、両側の鍔部20で歯付プーリ部30が挟まれた構造は、下側の鍔部20と歯付プーリ部30と上側の鍔部20とを積み重ねることで容易に作製できる。この際、歯付プーリ部30がスペーサとして働くことで、歯付プーリ部30の両側の鍔部20を、適切な間隔を空けて配置できる。
【0038】
また、
図3(b)および
図3(c)を参照して説明したように、作業台200上に載置された芯部10に鍔部20を挿通すること、あるいは、作業台200上に載置された鍔部20に芯部10を挿通することで、芯部10の側面と鍔部20の側面とが揃った(面一となった)構造を容易に作製できる。
【0039】
以上、実施形態に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0040】
以下、本発明の好ましい形態について付記する。
【0041】
(付記1)
シャフトを挿通させるための貫通孔が設けられた円筒形状の芯部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に取り付けられた第1の鍔部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記第1の鍔部と隣接して取り付けられた歯付プーリ部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記歯付プーリ部を挟んで前記第1の鍔部と反対側に、前記歯付プーリ部と隣接して取り付けられた第2の鍔部と、
を有する紙葉類分離機構用ローラ。
【0042】
(付記2)
前記芯部および前記歯付プーリ部は、金属材料で形成されており、
前記第1の鍔部および前記第2の鍔部は、それぞれ、金属材料で形成された内周部材と、前記内周部材の外周上に配置されゴム材料で形成された外周部材とを有する付記1に記載の紙葉類分離機構用ローラ。
【0043】
(付記3)
前記芯部は、長さ方向に一定の外径を有し、
前記第1の鍔部と前記第2の鍔部とは、同一形状を有している付記1または2に記載の紙葉類分離機構用ローラ。
【0044】
(付記4)
前記芯部の側面と前記第1の鍔部の側面とが、面一となっている付記1〜3のいずれか1つに記載の紙葉類分離機構用ローラ。
【0045】
(付記5)
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記第2の鍔部を挟んで前記第1の鍔部と反対側に取り付けられた第3の鍔部をさらに有する付記1〜4のいずれか1つに記載の紙葉類分離機構用ローラ。
【0046】
(付記6)
前記芯部の一端側の側面と前記第1の鍔部の側面とが、面一となっており、前記芯部の他端側の側面と前記第3の鍔部の側面とが、面一となっている付記5に記載の紙葉類分離機構用ローラ。
【0047】
(付記7)
シャフトを挿通させるための貫通孔が設けられた円筒形状の芯部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に取り付けられた第1の鍔部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記第1の鍔部と隣接して取り付けられた歯付プーリ部と、
前記芯部が挿通する貫通孔が設けられた円板形状を有し、前記芯部の外周上に、前記歯付プーリ部を挟んで前記第1の鍔部と反対側に、前記歯付プーリ部と隣接して取り付けられた第2の鍔部と、
を有する紙葉類分離機構用ローラの製造方法であって、
前記芯部に前記第1の鍔部を挿通させる工程と、
前記第1の鍔部と積み重なるように、前記芯部に前記歯付プーリ部を挿通させる工程と、
前記歯付プーリ部と積み重なるように、前記芯部に前記第2の鍔部を挿通させる工程と、
を有する紙葉類分離機構用ローラの製造方法。
【0048】
(付記8)
前記芯部および前記歯付プーリ部は、金属材料で形成されており、
前記第1の鍔部および前記第2の鍔部は、それぞれ、金属材料で形成された内周部材と、前記内周部材の外周上に配置されゴム材料で形成された外周部材とを有し、
前記芯部に前記第1の鍔部を挿通させる工程、前記芯部に前記歯付プーリ部を挿通させる工程、および、前記芯部に前記第2の鍔部を挿通させる工程の前に、
前記第1の鍔部および前記第2の鍔部のそれぞれについて、前記内周部材の外周上に、前記外周部材を成形する工程
を有する付記7に記載の紙葉類分離機構用ローラの製造方法。