(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱部材は、Ti,Al,Cu,Ni,Nbおよびこれらの金属を基材料とする非磁性合金からなる群から選ばれる金属材料からなる請求項1に記載の静電チャック装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に静電チャック装置の各実施形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0017】
図1は、本実施形態の静電チャック装置100を示す断面図である。
【0018】
静電チャック装置100は、板状試料Wを載置する円板状の静電チャック部20と、静電チャック部20を冷却する円板状の冷却ベース部50と、これらを接着一体化する樹脂層80と、を有している。換言すると、静電チャック装置100は、冷却ベース部50、樹脂層80、静電チャック部20がこの順に
図1の+Z方向(高さ方向)に積層された構
造を有する。
【0019】
また、静電チャック部20は、静電吸着用電極23と、静電吸着用電極23に電圧を印加する静電吸着用電極端子24と、を有している。
【0020】
静電チャック部20は、板状試料Wを載置する第1の面(一主面、積載面)20aと、その反対側の第2の面20bとを有している。第2の面20bには固定層6により固定された加熱部材(配線、ヒータパターン)7が設けられている。加熱部材7の下面(−Z側の面)には加熱部材7に電力を供給するための電極端子40が固定されている。
【0021】
また、静電チャック部20は、第2の面20bにおいて、電極端子40と平面的に重なる位置に凹部10が設けられている。凹部10の内部には、金属材料を形成材料とする裏打ち材11が挿入されている。
【0022】
冷却ベース部50は、静電チャック部20と対向する第1の面50aと、その反対側であり静電チャック装置100の取付面となる第2の面50bとを有する。
【0023】
冷却ベース部50には、厚さ方向に貫通する貫通孔51が設けられている。貫通孔51には、絶縁管(碍子)15が埋設されている。絶縁管15には、給電端子32、固定板16、接続線33、並びに電極端子40が内挿されている。電極端子40は、静電チャック部20に内挿された裏打ち材11とともに、加熱部材7に固定されている。
【0024】
以下、
図1を基に、各部の構成について詳細に説明する。
【0025】
<静電チャック部>
静電チャック部20は、半導体ウエハ、金属ウエハ、ガラス基板等の板状試料Wを載置する載置板21と、載置板21に対向配置された支持板22と、載置板21と支持板22の間に挟まれた静電吸着用電極23と、支持板22に埋設された静電吸着用電極端子24と、を有している。
【0026】
載置板21および支持板22を含む構造が、本実施形態における基体である。この基体は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状のものである。載置板21および支持板22は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al
2O
3)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y
2O
3)焼結体等の、機械的な強度と腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなるものが好ましい。
【0027】
また、載置板21を上記のセラミックス焼結体とし、支持板22をポリイミドなどの絶縁性の樹脂とすることで、安価かつ加工が容易な構造を有していてもよい。
【0028】
載置板21の一面であり板状試料Wを載置する第1の面20aには、直径が板状試料Wの厚さより小さい突起部26が複数個形成されており、突起部26が板状試料Wを支える構成となっている。
【0029】
支持板22には、厚さ方向に貫通する孔22aが設けられている。孔22aには、静電吸着用電極端子24が挿通する。
【0030】
静電吸着用電極23は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
【0031】
静電吸着用電極23の材料は、載置板21および支持板22に使用する材料との熱膨張差や耐熱性などを考慮して選定される。例えば、静電吸着用電極23は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属や、銀(Ag)、炭素(C)等を使用することができる。
【0032】
静電吸着用電極23は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0033】
静電吸着用電極端子24は、静電吸着用電極23に直流電圧を印加するために設けられている。静電吸着用電極端子24は、静電吸着用電極23から孔22aを挿通して厚さ方向に延び、静電チャック部20の第2の面20bに露出している。静電吸着用電極端子24には、図示略の直流電源回路が接続され、静電吸着用電極23に電圧を印加する構成となっている。
【0034】
静電吸着用電極端子24の材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではないが、熱膨張係数が静電吸着用電極23および支持板22の熱膨張係数に近似したものが好ましい。例えば、静電吸着用電極23を構成している導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料が好適に用いられる。
【0035】
支持板22の一面であり加熱部材7が接合されている第2の面20bには、加熱部材7に電力を供給する電極端子40と平面的に重なる位置に、裏打ち材11が埋設されている。
【0036】
<加熱部材>
加熱部材7は、帯状のヒータであり、静電チャック部20の第2の面20bに接着材もしくは金属ろう材等の固定層6を介して固着されている。
【0037】
図2に第2の面20bに形成された加熱部材7の一例を示す。加熱部材7は、例えば、相互に独立した2つのヒータ(7a、7b)から構成されていることが好ましい。
【0038】
ヒータ7aおよび7bは、それぞれが、帯状に蛇行させた金属材料のヒータ、即ち配線であり、第2の面20b全体に固着されている。ヒータ7aの端部8Bおよびヒータ7bの端部8Aには電極端子40が接続されている。電極端子40から供給される電流によって、ヒータ7aおよび7bは発熱する。
【0039】
加熱部材7は、上記のように相互に独立した2つ以上のヒータにより構成してもよいが、1つのヒータパターンにより構成することもできる。しかしながら、本実施形態のように、複数の相互に独立したヒータにより構成することで、各ヒータを個々に制御して、載置板21の載置面に静電吸着により載置されている板状試料Wの面内温度分布を自由にかつ精度良く制御できる。
【0040】
加熱部材7は、フォトリソグラフィー法により、金属製板を所望のパターンにエッチング加工することで形成できる。
【0041】
加熱部材7は、厚さが0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下の一定の厚さを有する。加熱部材7の厚さが0.2mmを超えると、加熱部材7のパターン形状が板状試料Wの温度分布として反映され、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になる。
【0042】
また、加熱部材7を一定の厚さとすることで、加熱部材7の発熱量も加熱面全域で一定とすることができる。これにより、静電チャック部20の第1の面20aにおける温度分布を均一化できる。
【0043】
加熱部材7は、Ti,Al,Cu,Ni,Nbおよびこれらの金属を基材料とする非磁性合金からなる群から選ばれる金属材料からなることが好ましい。
【0044】
加熱部材7が上述の金属で形成されることによって、本発明の一態様に係る静電チャック装置を、高周波雰囲気中で用いても、加熱部材7が高周波により自己発熱しない。したがって、高周波雰囲気中であっても、板状試料の面内温度を所望の一定温度または一定の温度パターンに維持することが容易となる。
【0045】
固定層6は、加熱部材7を静電チャック部20の第2の面20bに接着するために設けられており、加熱部材7と同一の平面形状を有する。
【0046】
固定層6が接着材である場合には、シート状またはフィルム状の接着性樹脂であり、耐熱性および絶縁性を有するものであることが好ましく、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を採用できる。
【0047】
固定層6の厚さは5μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。固定層6の面内の厚さのバラツキは10μm以内が好ましい。固定層6の面内の厚さのバラツキが10μmを超えると、静電チャック部20と加熱部材7との面内間隔に10μmを超えるバラツキが生じる。その結果、加熱部材7から静電チャック部20に伝達される熱の面内均一性が低下し、静電チャック部20の載置面における面内温度が不均一となる虞がある。
【0048】
<電極端子>
電極端子40は、加熱部材7に接合される対向面41a側(+Z側)に設けられた円形の鍔部41と、鍔部41から立設された円柱部42とを有している。
【0049】
電極端子40の材料は金属または金属とセラミックスの複合体であり、加熱部材7の材料と同じ材料、若しくは加熱部材7の材料と同じ材料と他の材料の複合材料とすることが好ましい。
【0050】
円柱部42の端面42aには、接続線33が接続される。電極端子40と接続線33とは、溶接またははんだ付け等の接続方法で接続する。また、電極端子40の円柱部42を雄ネジ部と雌ネジ部の分割構造とする等して、雄ネジ部と雌ネジ部の間に接続線33を機械的に挟み込んで電気的な接続を行ってもよい。
【0051】
電極端子40は、加熱部材7に溶接、ろう付け、はんだ付けまたはねじ止めにより固定されているのが好ましい。また、固定方法によって、電極端子40を介して加熱部材7に電流を流す際の接続部の発熱量が異なる。したがって、静電チャック装置の温度制御の目標精度や接着材の耐熱温度に合わせて、電極端子と加熱部材との上記の固定方法を選択できる。
【0052】
しかしながら、加熱部材7と電極端子40とを接続する製造工程において、加熱部材7が薄いことにより、加熱部材が熱変形または破断する問題があった。
【0053】
さらに、加熱部材と電極端子との接続部分には、電力供給に伴う発熱による熱応力または熱変形が生じることがあった。また、上述の接続部分には、周辺部材の熱膨張係数差に起因する熱応力または熱変形が生じることがあった。これらの熱応力または熱変形によって、加熱部材と電極端子との接続部分が破損する問題があった。
【0054】
<裏打ち材>
上記の課題を解決するため、裏打ち材11は、加熱部材7に固定されている。裏打ち材11によって、加熱部材7と電極端子40の接続部分を補強することができる。
【0055】
裏打ち材11は、静電チャック部20の第2の面20bと、電極端子40とが平面的に重なる位置に設けられた凹部10の内部に挿入され、固定されている。
【0056】
裏打ち材11は、凹部10の内部にシリコーン、エポキシ、ポリイミド等の耐熱性の接着剤もしくはろう材等により固定されているのが好ましい。
【0057】
裏打ち材11の材料は、耐熱性および加工性に優れ、高周波雰囲気中で用いても、高周波により自己発熱しない非磁性材料が好ましい。また、裏打ち材11の熱膨張係数が、固定層6および支持板22の熱膨張係数に近似したものが好ましく、加熱部材と同質の金属材料であることがより好ましい。
【0058】
電極端子40が、加熱部材7に溶接およびねじ止めにより固定されている場合には、電極端子40を裏打ち材11とともに固定することができ、上述の接続部分の強度をさらに向上することができる。また、電極端子40が、加熱部材7に溶接、ろう付けおよびはんだ付けにより固定されている場合には、裏打ち材11が、これらの固定方法に伴う発熱による加熱部材7の熱変形を抑制することができ、上述の接続部分の破損を抑制することができる。
【0059】
裏打ち材11は、製造時における加熱部材7の熱変形または破断や、使用時における加熱部材7と電極端子40の接続部分の熱応力または熱変形を抑制し、上述する部分の破損を抑制することができる。
【0060】
<樹脂層>
図1に示すように、樹脂層80は、静電チャック部20の第2の面20bと冷却ベース部50の第1の面50aの間に介在する。樹脂層80は、加熱部材7が接着された静電チャック部20と冷却ベース部50とを接着一体化するとともに、熱応力の緩和作用を有する。
【0061】
樹脂層80は、その内部や、静電チャック部20の第2の面20b、加熱部材7の下面(−Z側の面)、並びに冷却ベース部50の第1の面50aとの界面に空隙や欠陥が少ないことが望まれる。空隙や欠陥が形成されていると、熱伝達性が低下して板状試料Wの均熱性が阻害される虞がある。
【0062】
樹脂層80は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体またはアクリル樹脂で形成されている。樹脂層80は、流動性ある樹脂組成物を静電チャック部20と冷却ベース部50の間に充填した後に加熱硬化させることで形成することが好ましい。冷却ベース部50の第1の面50aには加熱部材7が設けられており、これにより凹凸が形成されている。また、冷却ベース部50の第1の面50aおよび静電チャック部20の第2の面20bは必ずしも平坦ではない。流動性の樹脂組成物を冷却ベース部50と静電チャック部20の間に充填させた後に硬化させて樹脂層80を形成することで、静電チャック部20と冷却ベース部50の凹凸に起因して樹脂層80に空隙が生じることを抑制できる。
これにより、樹脂層80の熱伝導特性を面内に均一にすることが出来、静電チャック部20の均熱性を高めることが出来る。
【0063】
なお、加熱部材7が有する端部8A、8Bには、加熱部材7に電力を供給するための電極端子40が固定される。そのため、樹脂層80を形成する工程では、端部8A、8Bに樹脂層80が回り込まないようにマスクしておくことが好ましい。
【0064】
<冷却ベース部>
冷却ベース部50は、円板形状を有し、静電チャック部20を所望の温度に調整する。
【0065】
冷却ベース部50としては、例えば、内部に冷媒を循環させる流路(図示略)が形成された液冷ベース等が好適である。
【0066】
冷却ベース部50を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。冷却ベース部50の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0067】
また、冷却ベース部50の静電チャック部20と対向する第1の面50aに、ポリイミドなどの絶縁性樹脂シートを貼り付け、耐電圧特性を向上させてもよい。
【0068】
冷却ベース部50には、貫通孔51が設けられている。貫通孔51には、絶縁管15、給電端子32、接続線33、電極端子40、並びに固定板16が内挿されている。
【0069】
またその他に、冷却ベース部50には、静電吸着用電極端子24に電圧を印加するための給電部が配置される貫通孔、板状試料Wの処理工程でウエハを押し上げるリフトピンを挿通させるための貫通孔、並びに板状試料Wと静電チャック部20との間に供給する冷却ガスを供給するための貫通孔、等の目的に応じて複数の貫通孔が設けられている。
【0070】
<絶縁管>
絶縁管15は、貫通孔51に埋設されている。絶縁管15には、給電端子32、固定板16、接続線33、並びに電極端子40が内挿されている。
【0071】
なお、絶縁管15は、加熱部材7内の端部8A、8Bに対応して設けられており、各々の絶縁管15に、給電端子32、固定板16、接続線33、並びに電極端子40がそれぞれ内挿され、加熱部材7に電流を供給する。
【0072】
絶縁管15の材料は樹脂製であってもセラミックス製であってもよいが、熱伝導、耐熱性、耐電圧、寸法精度、コストなどの面からセラミックス製とすることが好ましく、酸化アルミニウムなどを好適に採用できる。
【0073】
<給電端子>
給電端子32は、雌型コネクタである。給電端子32には、外部の電源から静電チャック装置100に電気を供給するための雄型コネクタ(図示略)を接続することができる。
給電端子32は導電性のものであればその材料は限定されない。給電端子32は、固定板16を介して、冷却ベース部50の貫通孔51に固定されている。給電端子32には、接続線33が接続されている。
【0074】
<固定板>
固定板16は、貫通孔51の下面(−Z側)の開口部に取り付けられている。給電端子32と固定板16の固定、並びに固定板16と冷却ベース部50との固定は、例えばネジ止めによって行うことができる。また、固定板16は、絶縁管15と固定する構造となっていてもよい。固定板16の材料にはセラミックスや絶縁性樹脂などが適宜選定される。
【0075】
<接続線>
接続線33は、電極端子40と給電端子32を電気的に接続するために設けられている。接続線33としては、可撓性を有する電気ケーブルを使用し、弛緩した状態で電極端子40と給電端子32との間のスペースに収納されることが好ましい。
【0076】
接続線33として可撓性を有する電気ケーブルを用い、弛緩させた状態で収納することで、冷却ベース部50が熱膨張および熱収縮して、電極端子40と給電端子32との距離が変わる場合であっても、距離の変化を吸収できる。したがって、電極端子40、給電端子32、並びにこれらの接続部に負荷が加わることを抑制できる。また、接続線33は、給電端子32に外力や衝撃が加わった場合であっても電極端子40に伝わることを防ぎ、電極端子40およびその接続部に破損が生じることを抑制できる。
【0077】
以上のような構成の静電チャック装置によれば、加熱部材と電極端子とを接続しやすく、使用時に接続部分が破損しにくい効果が得られる。
【0078】
また、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。