(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ポリアミック酸及び該ポリアミック酸のイミド化重合体>
本発明の液晶配向剤は、下記式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸成分と、下記式(B)で表されるジアミンを含むジアミン成分とを反応させて得られるポリアミック酸及び該ポリアミック酸のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体と有機溶媒とを含有することを特徴とする。
【0019】
【化4】
式(B)において、Y
1はアミノ基、イミノ基、及び含窒素複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種類の構造を有する2価の有機基であり、B
1〜B
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、又は炭素数1〜10のアルキニル基であり、これらの基は置換基を有してもよい。
【0020】
<テトラカルボン酸二無水物成分>
本発明の液晶配向剤の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物成分は、上記式(A)のテトラカルボン酸二無水物を含有する。式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合は、少なすぎると、本発明の効果が得られない。式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合は、全テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、10〜100モル%が好ましく、より好ましくは、30〜100モル%、さらに好ましくは、50〜100モル%である。
【0021】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸としては、上記式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外に、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。
【0022】
【化5】
式(1)において、Xは4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。具体的例を挙げるならば、下記式(X−1)〜(X−42)の構造の基が挙げられる。
【0027】
式(X−1)において、R
3〜R
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基であり、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
化合物の入手性の観点から、テトラカルボン酸二無水物としては、下記式(2)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類のテトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。
【0028】
【化10】
(式(2)において、X
1は上記式(X−1)〜(X−14)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
【0029】
得られる液晶配向膜の信頼性をさらに高めることができるため、(X−1)〜(X−7)及び(X−11)のような脂肪族基のみからなる構造が好ましく、(X−1)で表される構造がより好ましい。更に、良好な液晶配向性を示すため、X
1の構造としては、下記式(X1−1)又は(X1−2)がさらに好ましい。
【0030】
【化11】
式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合が多くなると、本発明の効果を損なう可能性があるため、好ましくない。したがって、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合は、全テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、0〜90モル%が好ましく、より好ましくは0〜70モル%、さらに好ましくは0〜50モル%である。
【0031】
<ジアミン成分>
本発明の液晶配向剤の製造に用いられるジアミン成分は、上記式(B)のジアミンを含有する。式(B)において、Y
1はアミノ基、イミノ基、及び含窒素複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種類の構造を有する2価の有機基であり、B
1及びB
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、又は炭素数1〜10のアルキニル基であり、これらの基は置換基を有してもよい。
【0032】
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH
2−CH
2構造を、CH=CH構造に置き換えたものが挙げられる。具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH
2−CH
2構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられる。具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基などが挙げられる。
【0033】
上記のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、全体として炭素数が1〜10であれば置換基を有していてもよく、更には置換基によって環構造を形成してもよい。なお、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
置換基の例としては、ハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を挙げることができる。
【0034】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。アリール基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるオルガノオキシ基としては、O−Rで表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。アルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0035】
置換基であるオルガノチオ基としては、−S−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる。
置換基であるオルガノシリル基としては、−Si−(R)
3で表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。アルキルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0036】
置換基であるアシル基としては、−C(O)−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
置換基であるエステル基としては、−C(O)O−R、又は−OC(O)−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0037】
置換基であるチオエステル基としては、−C(S)O−R、又は−OC(S)−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるリン酸エステル基としては、−OP(O)−(OR)
2で表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0038】
置換基であるアミド基としては、−C(O)NH
2、−C(O)NHR、−NHC(O)R、−C(O)N(R)
2、又は−NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアリール基としては、前述したアリール基と同じものを挙げることができる。アリール基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルキル基としては、前述したアルキル基と同じものを挙げることができる。アルキル基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルケニル基としては、前述したアルケニル基と同じものを挙げることができる。アルケニル基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルキニル基としては、前述したアルキニル基と同じものを挙げることができる。アルキニル基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0039】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、B
1及びB
2としては、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
式(B)におけるY
1の構造としては、アミノ基、イミノ基、及び含窒素複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種類の構造を有していれば、その構造は特に限定されるものではない。具体例としては、下記式(YD−1)〜(YD−5)で表されるアミノ基、イミノ基、及び含窒素複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種類の構造を有する2価の有機基が挙げられる。
【0041】
式(YD−1)において、A
1は炭素数3〜15の窒素原子含有複素環であり、Z
1は、水素原子、又は置換基を有してよい炭素数1〜20の炭化水素基である。
式(YD−2)において、W
1は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、A
2は窒素原子含有複素環を有する炭素数3〜15の1価の有機基、又は炭素数1〜6の脂肪族基で置換されたジ置換アミノ基である。
式(YD−3)において、W
2は炭素数6〜15で、且つベンゼン環を1〜2個有する2価の有機基であり、W
3は炭素数2〜5のアルキレン又はビフェニレンであり、Z
2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又はベンゼン環であり、aは0〜1の整数である。
式(YD−4)において、A
3は炭素数3〜15の窒素原子含有複素環である。
式(YD−5)において、A
4は炭素数3〜15の窒素原子含有複素環であり、W
5は炭素数2〜5のアルキレンである。
【0042】
式(YD−1)、(YD−2)、(YD−4)、及び(YD−5)のA
1、A
2、A
3、及びA
4の炭素数3〜15の窒素原子含有複素環としては、公知の構造であれば、特に限定されるものではない。中でも、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン等が挙げられ、ピペラジン、ピペリジン、インドール、ベンゾイミダゾール、イミダゾール、カルバゾール、又はピリジンがより好ましい。
【0043】
さらに、式(B)におけるY
1の具体例としては、下記式(YD−6)〜(YD−21)で表される窒素原子を有する2価の有機基が挙がられ、交流駆動による電荷蓄積を抑制できることから、式(YD−14)〜(YD−21)がより好ましく、(YD−14)又は(YD−18)が特に好ましい。
【0044】
【化13】
式(YD−14)及び(YD−21)中、jは0〜3の整数である。式(YD−17)中、hは1〜3の整数である。
【0045】
本発明のポリアミック酸及びポリアミック酸のイミド化重合体における式(B)で表されるジアミンの割合は、全ジアミン1モルに対して、10〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは30〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%である。
【0046】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸は、上記式(B)で表されるジアミン以外に、下記式(3)で表されるジアミンを用いてもよい。下記式(3)におけるY
2は、2価の有機基であり、その構造は特に限定されるものではなく、2種類以上が混在していてもよい。具体例を示すならば、下記の(Y−1)〜(Y−102)が挙げられる。
【0058】
なかでも、良好な液晶配向性を得るためには、直線性の高いジアミンが好ましく、Y
2としては、Y−7、Y−21、Y−22、Y−23、Y−25、Y−26、Y−27、Y−43、Y−44、Y−45、Y−46、Y−48、Y−63、Y−71、Y−73、Y−74、Y−75、Y−98、Y−99,Y−100、Y−101、又はY−102のジアミンがより好ましい。
式(3)で表されるジアミンの割合が多くなると、本発明の効果を損なう可能性があるため、好ましくない。式(3)で表されるジアミンの割合は、全ジアミン1モルに対して、0〜90モル%が好ましく、より好ましくは0〜70モル%、さらに好ましくは0〜50モル%である。
【0059】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成できる。
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及び重合体の溶解性から、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
重合体の濃度は、重合体の析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで、精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられ、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが好ましい。
【0061】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に、触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。
【0062】
塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると、反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
イミド化反応を行うときの温度は、−20〜140℃、好ましくは0〜100℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量は、ポリアミック酸基の0.5〜30倍モル、好ましくは2〜20倍モルであり、酸無水物の量は、ポリアミック酸基の1〜50倍モル、好ましくは3〜30倍モルである。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0063】
ポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製された重合体の粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、2−プロパノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられ、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトンなどが好ましい。
【0064】
<液晶配向剤>
本発明に用いられる液晶配向剤は、重合体成分が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、5,000〜50,000である。
【0065】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2〜8質量%である。
本発明に用いられる液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では重合体成分を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0066】
本発明に用いられる液晶配向剤は、重合体成分を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。かかる溶媒は、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの溶媒は2種上を併用してもよい。
【0067】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、重合体以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには、塗膜を焼成する際にポリアミック酸のイミド化を効率よく進行させる目的の、イミド化促進剤等を添加しても良い。
【0068】
<液晶配向膜の製造方法>
発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができる。液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点からは好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0069】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために、50〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後、150〜300℃で5分〜120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。
【0070】
得られた液晶配向膜を配向処理する方法としては、ラビング法、光配向処理法などが挙げられる。
光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によっては、さらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100nm〜800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。このうち、100nm〜400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200nm〜400nmの波長を有するものが特に好ましい。また、液晶配向性を改善するために、塗膜基板を50〜250℃で加熱しつつ、放射線を照射してもよい。前記放射線の照射量は、1〜10,000mJ/cm
2が好ましく、100〜5,000mJ/cm
2が特に好ましい。上記のようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
上記のように偏光された放射線を照射した膜は、次いで、水及び有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含む溶媒で接触処理してもよい。
【0071】
接触処理に使用する溶媒としては、光照射によって生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの溶媒は2種上を併用してもよい。
汎用性や安全性の観点から、水、2−プロパンール、1−メトキシ−2−プロパノール及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。1−メトキシ−2−プロパノール又は乳酸エチルが特に好ましい。
【0072】
本発明において、偏光された放射線を照射した膜と有機溶媒を含む溶液との接触処理は、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などの、膜と液とが好ましくは十分に接触するような処理で行なわれる。なかでも、有機溶媒を含む溶液中に膜を、好ましくは10秒〜1時間、より好ましくは1〜30分浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は、常温でも加温してもよいが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜50℃で実施される。また、必要に応じて、超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
上記接触処理の後に、使用した溶液中の有機溶媒を除去する目的で、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってもよい。
さらに、上記で溶媒による接触処理をした膜は、溶媒の乾燥及び膜中の分子鎖の再配向を目的に、150℃以上で加熱してもよい。
【0073】
加熱の温度としては、150〜300℃が好ましい。温度が高いほど、分子鎖の再配向が促進されるが、温度が高すぎると分子鎖の分解を伴う恐れがある。そのため、加熱温度としては、180〜250℃がより好ましく、200〜230℃が特に好ましい。
加熱する時間は、短すぎると本発明の効果が得られない可能性があり、長すぎると分子鎖が分解してしまう可能性があるため、10秒〜30分が好ましく、1〜10分がより好ましい。
本発明の液晶配向膜は、IPS方式、フリンジフィールドスイッチング(以下、FFS)方式等の横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、FFS方式の液晶表示素子の液晶配向膜として、特に有用である。
【0074】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、本発明の製造方法によって、液晶配向剤から形成される液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して液晶表示素子としたものである。
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。尚、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0075】
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル−ゲル法によって形成されたSiO
2−TiO
2からなる膜とすることができる。
次に、各基板の上に、本発明の液晶配向膜を形成する。
次に、一方の基板に他方の基板を、互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサを混入しておく。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサを散布しておくことが好ましい。シール材の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。
【0076】
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料を注入する。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。液晶材料としては、ポジ型液晶材料及びネガ型液晶材料のいずれを用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。
この液晶表示素子は、液晶配向膜として、本発明の製造方法により得られた液晶配向膜を使用していることから、残像特性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用可能である。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例等を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。実施例などで用いた有機溶媒等の略号は、以下のとおりである。
【0078】
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
GBL: γ−ブチロラクトン
BCS: ブチルセロソルブ
酸二無水物(A):下記式(A)で表される化合物
DA−1:下記式(DA−1)で表される化合物
DA−2:下記式(DA−2)で表される化合物
DA−3:下記式(DA−3)で表される化合物
【0079】
【化25】
【0080】
以下に、粘度測定、分子量測定、液晶セルの作製、並びに長期交流駆動による電荷蓄積値評価及び電荷蓄積値評価の方法を示す。
【0081】
[粘度測定]
ポリアミック酸エステル及びポリアミック酸溶液の粘度は、E型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0082】
[分子量測定]
ポリアミック酸エステルの分子量は、GPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置(昭和電工社製、Shodex GP-101)によって測定し、ポリエチレングリコール、及びポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
【0083】
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、及び30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp) 約12,000、4,000、及び1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、及び1,000の4種類を混合したサンプルと、150,000、30,000、及び4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルについて別々に行った。
【0084】
[液晶セルの作製]
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:以下、FFSという)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。
初めに電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×50mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には、第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には、第2層目として、CVD(chemical vapor deposition)法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目として、ITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により、電気的に絶縁されている。
【0085】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を、複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を、複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では、画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では、画素電極の電極要素が−10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0086】
次に、得られた液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板と、裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面にラビングや偏光紫外線照射などの配向処理を施し、液晶配向膜付き基板を得た。上記、2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2041(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、一晩放置してから各評価に使用した。
【0087】
[交流駆動の非対称化による電荷蓄積値評価]
作製した液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でLEDバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように、液晶セルの配置角度を調整した。
次に、この液晶セルに周波数30Hzの交流電圧を印加しながらV−Tカーブ(電圧−透過率曲線)を測定し、相対透過率が50%となる交流電圧を駆動電圧として算出した。
なお、LED光が液晶セルに当たらないよう遮光した。さらに、液晶セルに周波数1kHzで20mVの矩形波を30分間印加した。
その後、LED点灯と同時に相対透過率が50%となる交流駆動を行い、点灯直後のV−F(電圧−フリッカ曲線)カーブを測定し、交流駆動の非対称化による電荷蓄積を打ち消すオフセット電圧値を算出した。その後、1分毎に最小オフセット電圧値変化量を測定し、点灯直後から30分までに変化した際の最大電圧値を算出した。その際、最大オフセット電圧の変化量が、20mVを超える場合「不良」と定義し、評価した。また最大オフセット電圧の変化量が、20mVを越えない場合には、「良好」と定義し、評価した。
【0088】
[電荷緩和特性]
作製した液晶セルを光源上に置き、45℃の温度下でのV−T特性(電圧−透過率特性)を測定した後、±1.5V/60Hzの矩形波を印加した状態での液晶セルの透過率(Ta)を測定した。その後、45℃の温度下で、±1.5V/60Hzの矩形波10分間印加した後、直流2Vを重畳し、120分間駆動させた。直流電圧を切り、再び±1.5V/60Hzの矩形波のみで、0分、5分、10分、及び20分駆動させた時の液晶セルの透過率(Tb)をそれぞれ測定し、各時間での透過率(Tb)と初期の透過率(Ta)の差(ΔT)から、液晶表示素子内に残留した電圧により生じた透過率の差を算出した。
【0089】
(合成例1)
撹拌装置付きの50mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、4,4’−ジアミノジフェニルアミンを2.40g(12.0mmol)量り取り、NMPを29.8g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、酸二無水物(A)を3.41g(11.6mmol)添加し、更にNMPを12.8g加え、窒素雰囲気下、23℃で25時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は、550mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=15076、Mw=35742であった。
【0090】
(合成例2)
撹拌装置付きの100mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、DA−1を2.21g(9.60mmol)量り取り、NMPを65.2g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、酸二無水物(A)を2.47g(8.40mmol)添加し、窒素雰囲気下、23℃で4時間撹拌した。その後、4,4’−ジアミノジフェニルアミンを2.87g(14.4mmol)添加し、溶解するのを確認した後に、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を2.80g(14.3mmol)加えた。さらに、NMPを27.95g加えて、30時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA−2)を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は、118mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=15591、Mw=36804であった。
【0091】
(合成例3)
撹拌装置付きの100mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、DA−2を2.35g(9.60mmol)量り取り、NMPを65.9g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、酸二無水物(A)を2.47g(8.40mmol)添加し、窒素雰囲気下、23℃で2時間撹拌した。その後、4,4’−ジアミノジフェニルアミンを2.87g(14.4mmol)添加し、溶解するのを確認した後に、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を2.78g(14.2mmol)加えた。さらに、NMPを28.2g加えて、4時間撹拌してポリアミック酸溶液(PAA−3)を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は、122mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=11511、Mw=29470であった。
【0092】
(比較合成例1)
撹拌装置付きの100mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、DA−3を5.97g(20.0mmol)量り取り、NMPを59.3g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、酸二無水物(A)を5.59g(19.0mmol)添加し、更にNMPを25.4g加え、窒素雰囲気下、23℃で20時間撹拌してポリアミック酸溶液(PAA−4)を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は、230mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=11541、Mw=22939であった。
【0093】
(比較合成例2)
撹拌装置付きの100mL四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、4,4’−ジアミノジフェニルアミンを3.83g(19.0mmol)、及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンを0.95g(5.0mmol)量り取り、NMPを57.2g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を4.31g(22.0mmol)添加し、更に、NMPを24.5g加え、窒素雰囲気下、23℃で3時間撹拌してポリアミック酸溶液(PAA−5)を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は、132mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量は、Mn=11700、Mw=25900であった。
【0094】
(実施例1)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を16.2g分取し、NMPを13.0g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを0.02g、及びBCSを9.73g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A−1)を得た。
【0095】
(実施例2)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)を16.6g分取し、NMPを11.0g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを0.02g、及びBCSを9.20g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A−2)を得た。
【0096】
(実施例3)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA−3)を18.0g分取し、NMPを12.0g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを0.02g、及びBCSを10.0g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A−3)を得た。
【0097】
(比較例1)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、比較合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−4)を16.6g分取し、NMPを13.2g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを0.02g、及びBCSを9.93g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B−1)を得た。
【0098】
(比較例2)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、比較合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−5)を16.5g分取し、NMPを13.2g、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを0.02g、及びBCSを9.81g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B−2)を得た。
【0099】
(実施例4)
実施例1で得られた液晶配向剤(A−1)を、1.0μmのフィルターで濾過した後、第1層目として膜厚50nmのITO電極を、第2層目として、絶縁膜である膜厚500nmの窒化ケイ素を、第3層目として櫛歯形状のITO電極(電極幅:3μm、電極間隔:6μm、電極高さ:50nm)を有する、FFS駆動用電極が形成されているガラス基板上に、スピンコート塗布にて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面に、ローラー回転数1000rpm、ステージ移動速度20mm/s、ラビング布押し込み圧0.4mmの条件でラビング処理を施し、液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として、電極が形成されていない、高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板上にも、同様に塗膜を形成させ、配向処理を施した。
【0100】
上記、2枚の基板を一組とし、基板上にシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2041(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。
このFFS駆動液晶セルについて、電荷緩和特性を評価した結果、交流駆動0分、5分、10分、及び20分のΔTは、それぞれ9.0%、2.5%、0.5%、及び0%であった。
また、交流駆動の非対称化による電荷蓄積値評価を実施した結果、30分駆動での最大オフセット電圧の変化量が20mV以下であり、良好であった。
【0101】
(実施例5)
実施例2で得られた液晶配向剤(A−2)を用いた以外は、実施例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、電荷緩和特性を評価した結果、交流駆動0分、5分、10分、及び20分のΔTは、それぞれ9.0%、2.5%、0.5%、及び0%であった。
また、交流駆動の非対称化による電荷蓄積値評価を実施した結果、30分駆動での最大オフセット電圧の変化量が20mV以下であり、良好であった。
【0102】
(実施例6)
実施例3で得られた液晶配向剤(A−3)を用いた以外は、実施例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、電荷緩和特性を評価した結果、交流駆動0分、5分、10分、及び20分のΔTは、それぞれ9.0%、2.5%、0.5%、及び0%であった。
また、交流駆動の非対称化による電荷蓄積値評価を実施した結果、30分駆動での最大オフセット電圧の変化量が20mV以下であり、良好であった。
【0103】
(比較例3)
比較例1で得られた液晶配向剤(B−1)を用いた以外は、実施例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、電荷緩和特性を評価した結果、交流駆動0分、5分、10分、及び20分のΔTは、それぞれ11.0%、3.5%、1.0%、及び0%であった。
また、交流駆動の非対称化による電荷蓄積値評価を実施した結果、30分駆動での最大オフセット電圧の変化量が20mV以上であり、不良であった。
【0104】
(比較例4)
比較例2で得られた液晶配向剤(B−2)を用いた以外は、実施例4と同様の方法でFFS駆動液晶セルを作製した。このFFS駆動液晶セルについて、電荷緩和特性を評価した結果、交流駆動0分、5分、10分、及び20分のΔTは、それぞれ7.0%、3.5%、1.5%、及び0%であった。
また、交流駆動の非対称化による電荷蓄積値評価を実施した結果、30分駆動での最大オフセット電圧の変化量が20mV以上であり、不良であった。
【0105】
【表1】