特許第6558253号(P6558253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558253
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】厚膜抵抗体組成物および抵抗体ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/02 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H01C7/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-6226(P2016-6226)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-126709(P2017-126709A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】進藤 拓生
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−287173(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0164314(US,A1)
【文献】 特開2013−214591(JP,A)
【文献】 特開平09−017232(JP,A)
【文献】 特開2001−185409(JP,A)
【文献】 特開平03−170347(JP,A)
【文献】 特表2011−521869(JP,A)
【文献】 米国特許第05474711(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電成分としてパイロクロア型ルテニウム酸鉛、銀、酸化銅の各粉末を、厚膜形成成分としてガラス粉末を有する厚膜抵抗体組成物であって、パイロクロア型ルテニウム酸鉛を10〜15質量部、銀を10〜15質量部、酸化銅を2〜3質量部、ガラス粉末を30〜50質量部含有することを特徴とする厚膜抵抗体組成物。
【請求項2】
上記厚膜抵抗体組成物であって、銀/酸化銅の比率が質量比で5以上7.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物。
【請求項3】
請求項1,2に記載の厚膜抵抗体組成物と、有機ビヒクルを含有することを特徴とする抵抗体ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己温度制御発熱体に用いる厚膜抵抗体組成物および抵抗体ペーストに関し、より詳しくは、画像形成装置に用いられる通電時の抵抗値が高く、かつ高い正温度係数を有する自己温度制御発熱体用の厚膜抵抗体組成物およびその組成物を用いた抵抗体ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は小型化、高速動作化がますます進んできており、電子機器に用いられる部材においても小型化、高速動作化が求められている。サーミスタはその様な部材の一つで、温度変化に対する抵抗値の変化の大きい抵抗体のことであり、温度検出用や温度制御用等の温度センサーや、温度を一定に保つ自己温度制御加熱器等に用いられている。
【0003】
サーミスタは、その抵抗値の変化の大きさを1℃あたりの百分率で表した抵抗温度係数(TCR)によってその特性を評価される。サーミスタは温度が高くなるほど抵抗値が低くなる負温度係数を有するNTCサーミスタと、逆に温度が高くなるほど抵抗値が高くなる正温度係数を有するPTCサーミスタに分類される。自己温度制御発熱体はPTCサーミスタに分類され、半田ごてや複写機やプリンタなどの電子写真方式による画像形成装置の定着ローラ等に用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
正温度係数を有する組成物としては、例えば特許文献2に示すような、導電成分のカーボンブラック粒子を熱可塑性樹脂等の高分子材料に埋め込んだ組成物が知られている。この材料は温度上昇に伴う体積膨張の結果、カーボンブラック粒子の相互間距離が広がることで抵抗値が上昇する特性を利用している。しかしながら、特許文献2に示されている組成物は、表面抵抗率が10kΩ/□未満と低く画像形成装置用として用いるには高速での発熱に対応できない。
【0005】
また、大きな正温度係数を有する組成物としては、例えば特許文献3に示すような、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体組成物が知られている。この材料はキュリー温度を超えると急激に抵抗値が増大する特性を利用している。しかしながら、特許文献3に示されている組成物は、プレス機を使用して加圧成形することにより得られるものであり、より小型化の進む画像形成装置用として用いるにはサイズが大きすぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−287471号公報
【特許文献2】特許第3558771号公報
【特許文献3】特許第5327556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、表面抵抗率が50kΩ/□〜500kΩ/□の高抵抗領域において、200ppm/℃以上の高い正温度係数が実現できる自己温度制御発熱体用の厚膜抵抗体組成物、およびその組成物を用いた抵抗体ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上述した従来の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、厚膜抵抗体組成物の構成成分のうち、導電成分をパイロクロア型ルテニウム酸鉛と、銀、酸化銅から構成することにより、焼結時にガラス成分の影響を受けにくい導電経路を形成することが可能であり、抵抗値が高い領域でも正温度係数の低下を抑制し、高い正温度係数を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、導電成分としてパイロクロア型ルテニウム酸鉛、銀、酸化銅の粉末を、厚膜形成成分としてガラス粉末を有する厚膜抵抗体組成物であって、パイロクロア型ルテニウム酸鉛を10〜15質量部、銀を10〜15質量部、酸化銅を2〜3質量部、ガラス粉末を30〜50質量部含有することを特徴とする厚膜抵抗体組成物が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、銀/酸化銅の比率が質量比で5以上7.5以下であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1もしくは第2の発明における厚膜抵抗体組成物と、有機物であるビヒクルを含有することを特徴とする抵抗体ペーストが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の厚膜抵抗体組成物を用いた抵抗体は、高い抵抗値を有するので電流値に対する発熱量を多くすることができ、かつ大きな正温度係数を有するので、温度が上がりすぎると電流が流れ難くなり発熱が抑制されるため、自己温度制御発熱体に用いた場合、効率良く発熱させることができる。それにより、少量で十分な発熱量が得られるため、自己温度制御発熱体を小型に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る厚膜抵抗体組成物及び抵抗体ペースト、自己温度制御発熱体について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0014】
1.厚膜抵抗体組成物
本発明の厚膜抵抗体組成物は、パイロクロア型ルテニウム酸鉛、銀、酸化銅の粉末と、ガラス粉末によって構成されている。
【0015】
(A)パイロクロア型ルテニウム酸鉛
本発明においてパイロクロア型ルテニウム酸鉛は、所定の抵抗を示すための主成分である。パイロクロア型ルテニウム酸鉛は、その粒径によって制限されないが、高温での抵抗値のバラツキを小さくし、電圧負荷による抵抗値変化を小さくするためには粒径を1μm以下とするのが好ましい。さらに好ましくは0.1μm以下にする。
【0016】
本発明では、銀を10〜15質量部、酸化銅を2〜3質量部、ガラス粉末を30〜50質量部含有する場合、パイロクロア型ルテニウム酸鉛の配合率を10〜15質量部とする。10質量部より少ないと抵抗体を形成した時に十分な導電路が形成できず抵抗値が高くなり過ぎる。更に、前記抵抗体をオーバーコートガラスで保護すると一層抵抗値が高くなり過ぎる場合があるので好ましくない。また、15質量部より多いと抵抗体を形成した時の導電路が形成され過ぎることにより抵抗値が低くなり過ぎてしまい、好ましくない。ガラスによるオーバーコートによる抵抗値の上昇を加味しても所定の抵抗値が得られない場合がある。
【0017】
(B)銀
本発明において銀は、パイロクロア型ルテニウム酸鉛と結合し、導電路を形成することにより所定の抵抗値を得るため、かつ正温度係数を上昇させるための成分である。しかしながら銀はガラス成分と反応すると抵抗成分となってしまい、正温度係数上昇を阻害する特性を生じてしまう。そのため、銀の添加量が多過ぎると余剰な銀とガラスが反応し抵抗成分となってしまい、抵抗値や正温度係数が大きく変化することがあるため、添加量を適切に調整する必要がある。
【0018】
本発明では、パイロクロア型ルテニウム酸鉛を10〜15質量部、酸化銅を2〜3質量部、ガラス粉末を30〜50質量部含有する場合、銀の配合率を10〜15質量部とする。10質量部よりも少ないと抵抗体を形成した時の正温度係数を上げる効果が十分に得られず好ましくない。15質量部よりも多いとガラスと反応する成分が多くなり、抵抗体を形成した時の抵抗値が必要以上に高くなってしまうと共に、正温度係数を上昇させる効果も得られなくなってしまうため好ましくない。この不具合はオーバーコートガラスで保護するとより顕著に発現する。
【0019】
(C)酸化銅
本発明において酸化銅は、正温度係数を上昇させると共に導電材料の焼結を促進させる成分である。
【0020】
本発明では、パイロクロア型ルテニウム酸鉛を10〜15質量部、銀を10〜15質量部、ガラス粉末を30〜50質量部含有する場合、酸化銅の配合率を2〜3質量部とする。2質量部よりも少ないと抵抗体を形成した時の正温度係数を上げる効果を十分に得ることが出来ない。3質量より大きくしても抵抗体を形成した時の正温度係数はそれ以上上昇させることが出来ない。更には、ルテニウム酸鉛や銀の焼結を促進させる効果を過剰に発揮してしまうことによって導電性が向上し過ぎてしまい、抵抗値を十分高くすることが出来なくなってしまう場合があるので好ましくない。
【0021】
(D)銀と酸化銅の組成比
本発明組成において、酸化銅と銀を共存させることにより、導電材料が高抵抗を示す適度な割合で焼結しやすくなるだけでなく、より効果的に正温度係数を上げる効果も得られる。この様な効果を発揮する銀と酸化銅の質量比は、対象とする発熱体に求められる正温度係数に応じて設定すれば良い。ただし、銀と酸化銅の質量比(銀/酸化銅)は5以上7.5以下にすることが好ましい。5未満となり銀/酸化銅の比率が小さくなりすぎると、銀との共存で効果を発揮するのに必要な量以上の酸化銅が存在してしまい、その余剰な酸化銅が抵抗体の上に形成されたオーバーコートガラスと反応しオーバーコートガラス内に気泡を生じさせるため好ましくない。余剰の酸化銅がより多くなると発生する気泡の数が増え、オーバーコートガラス表面に達した気泡が凹みを生じさせる場合がある。オーバーコートガラス表面に凹みが存在する自己温度制御発熱体をプリンタに用いると、印字用用紙の繊維が凹みに引っ掛かって印字精度が悪くなる場合があるため好ましくない。また、銀と酸化銅の質量比(銀/酸化銅)が7.5よりも大きいと銀との共存で効果を発揮するのに必要な酸化銅の量が足りなくなり、余剰の銀がガラスと反応し、抵抗体を形成した時の抵抗値が必要以上に高くなってしまうと共に、正温度係数を上昇させる効果も得られなくなってしまうため好ましくない。
【0022】
(E)ガラス粉末
本発明において、ガラス粉末は焼成されることによって軟化し導電性粒子を結合させ厚膜を形成し、さらにその厚膜を基板に密着させる働きを担っている。ここで、ガラス粉末としては、ペーストを用いる対象部品や使用条件などに応じて選定され、例えば、PbO、SiO、B、Al、CaOなどを含むガラス粉末が用いられる。
【0023】
本発明では、パイロクロア型ルテニウム酸鉛を10〜15質量部、銀を10〜15質量部、酸化銅を2〜3質量部含有する場合、ガラス粉末の配合率は30〜50質量部とする。30質量部より少ないと焼成膜が脆くなり抵抗体が割れたり欠けたりする上、基板への密着力が乏しくなったりするため好ましくない。逆に50質量部よりも多い場合、相対的に導電成分の配合量が少なくなるため、抵抗値が高くなり過ぎたり、正温度係数を十分に高くできなかったり、抵抗値のバラツキが大きくなるなど、特性が不安定になるため好ましくない。
【0024】
2.抵抗体ペースト
上記厚膜抵抗体組成物を用いた抵抗体ペーストの調製方法としては、ロールミルやビーズミルによって厚膜抵抗体組成物を有機ビヒクル中に分散させればよく、例えば、パイロクロア型ルテニウム酸鉛、銀、酸化銅及びガラス粉末からなる厚膜抵抗体組成物と有機ビヒクルを混合した後、スリーロールミルなどにより混練して各種成分が均一に分散する様に調製する。ここで使用する有機ビヒクルは、抵抗体ペーストを用いる対象部品や使用条件などに応じて任意に選定することができるが、エチルセルロース等のセルロース系樹脂等をターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等に溶解したものを使用することが好ましい。
【0025】
有機ビヒクルの配合率は、使用する有機ビヒクルと上記厚膜抵抗体組成物との混合により所定の形状に印刷するのに好適な粘度に調整できれば良く、特に限定されるものではない。ただし、一般的に上記厚膜抵抗体組成物の合計100質量部に対して、50質量部以上とするのが好ましい。50質量部未満だとペーストの粘度が高くなりすぎて印刷できない場合がある。有機ビヒクルは、焼成時に分解、蒸発してしまうため、配合率の上限は特に制限されないが、ペーストの取り扱い上100質量部以下とするのが好ましい。100質量部よりも多いと、粘度が低くなりすぎて印刷時の形状を維持できず、濡れ広がり過ぎてしまう場合がある。
【0026】
3.自己温度制御発熱体
自己温度制御発熱体は、上記抵抗体ペーストを用いて形成した抵抗体の上に、一般的には保護層としてオーバーコートガラスを形成した形状で用いられる。その際使用するオーバーコートガラスには、ホウ珪酸鉛ガラスやホウ珪酸亜鉛、珪酸鉛など、一般的なオーバーコートガラスを用いることが出来る。
【0027】
表面抵抗率が50kΩ/□未満だと、十分な発熱をさせるために大きな電流が必要となり好ましくない。また、表面抵抗率が500kΩ/□より大きいと、発熱に必要な電流を流すために大きな電圧が必要となり好ましくない。また、正温度係数が200ppm/℃未満だと抵抗値の上昇による発熱温度が一定になるまでに時間がかかり過ぎるため好ましくない。また、オーバーコートガラス内に気泡が多く発生すると、オーバーコートガラス表面に達した気泡が凹みを生じる場合がある。オーバーコートガラス表面に凹みが存在する自己温度制御発熱体をプリンタに用いると、印字用用紙の繊維が凹みに引っ掛かって印字精度が悪くなる場合があるため好ましくない。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1〜8]
本発明の厚膜抵抗体組成物として、平均粒径0.1μmのパイロクロア型ルテニウム酸鉛、平均粒径1μmの銀粉、及び平均粒径1μmの酸化銅粉、平均粒径2μmの14質量%PbO−53質量%SiO−5質量%B−10質量%Al−18質量%BaOの組成を有するガラス粉末を表1に示す配合比で、実施例1〜8の厚膜抵抗体組成物を構成した。本厚膜抵抗体組成物を、エチルセルロースを溶解したターピネオールからなる有機ビヒクルとともに、混合し、その混合物をスリーロールミルで混練して均一に分散させ、抵抗体ペーストを得た。
【0029】
アルミナ基板上に予めAgペーストを印刷、焼成して形成したAg電極間を、上記抵抗体ペーストを用いてスクリーン印刷法で結線し、150℃で10分乾燥したのちベルト炉によりピーク温度810℃で約9分間大気焼成して、厚膜抵抗体(面積1mm×1mm×厚み8μm)を5点形成した。その後、市販のオーバーコートガラスペースト(旭硝子社製AP5564G)を、上記厚膜抵抗体の上にスクリーン印刷法を用いて塗布し、150℃で10分乾燥したのちベルト炉によりピーク温度810℃で約9分間大気焼成して、自己温度制御発熱体を作製した。得られた5点の自己温度制御発熱体の抵抗値を測定し、表面抵抗率と正温度係数を算出した。本発明では大きな正温度係数が得られることを目的としており、正温度係数は200ppm/℃以上であることが望ましい。
【0030】
なお本評価で用いた正温度係数は、25℃から125℃の温度範囲の正温度係数で、以下の計算式1により求めた値である。以下「高TCR」と称する。
[計算式1]
高TCR=(R125−R25)/R25/(125−25)×10 (ppm/℃)
25:25℃での抵抗値、R125:125℃での抵抗値
【0031】
得られた自己温度制御発熱体の表面抵抗率の平均値、高TCRの平均値を表1に示した。
また、得られた自己温度制御発熱体のオーバーコートガラスを観察し、気泡の有無を確認した。気泡が全く見られないものを○、10カ所未満の気泡が見られるが、オーバーコートガラス表面に凹みとして存在しないものを△、気泡が10カ所以上観察されオーバーコートガラス表面の凹みも複数確認されたものを×とした。得られた観察結果を表1に示した。
【0032】
[比較例1〜9]
表1に示した配合にした以外は実施例と同様にして比較例1〜9の厚膜抵抗体組成物および抵抗体ペーストを作製した後、実施例と同様の条件で自己温度制御発熱体を形成し、表面抵抗率と高TCRの評価、及びオーバーコートガラス表面の観察を行った。得られた表面抵抗率と高TCRの平均値、及び観察結果を合わせて表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
[評価]
本発明品の実施例1〜8では、得られた自己温度制御発熱体の表面抵抗率の平均値が50kΩ/□〜500kΩ/□の領域内の値を示し発明対象としていた抵抗値が得られていることが分かる。また、得られた表面抵抗率の平均値に対し、高TCRの平均値が200ppm/℃以上の大きなプラスの値を維持しており、十分なPTC特性を有していることが分かる。
【0035】
実施例6は、上記した通り本発明の目的である抵抗特性において問題は無かったものの、銀/酸化銅の比率が質量比で5に満たなかったため、自己温度制御発熱体のオーバーコートガラス内に若干の気泡が観察された。他の実施例では気泡は観察されず、良好な表面状態であった。
【0036】
これに対して、パイロクロア型ルテニウム酸鉛の添加量が本発明の範囲より少ない比較例1は、表面抵抗率の平均値が発明対象の500kΩ/□を大きく超え、かつ高TCRの平均値は200ppm/℃未満であった。
【0037】
パイロクロア型ルテニウム酸鉛の添加量が本発明の範囲より多すぎる比較例2は、表面抵抗率の平均値が発明対象の50Ω/□に満たなかった。
【0038】
銀の添加量が本発明の範囲より少なすぎる比較例3は、高TCRの平均値がマイナスと非常に低い値となった。また、銀/酸化銅の比率が5に満たなかったため、自己温度制御発熱体のオーバーコートガラス表面に凹みは見られなかったもののオーバーコートガラス内の一部に気泡が観察された。
【0039】
銀の添加量が本発明の範囲より多すぎる比較例4は、表面抵抗率の平均値が発明対象の500kΩ/□を大きく超え、かつ高TCRの平均値はマイナスと非常に低い値となった。
【0040】
酸化銅の添加量が本発明の範囲より少なすぎる比較例5は、銀との共存効果が十分に発揮されず、高TCRの平均値が200ppm/℃未満であった。
【0041】
酸化銅の添加量が本発明の範囲以上である比較例6は、高TCRの平均値の更なる上昇は得られず、逆に焼結性が必要以上に促進されたため、しっかりした導電経路が形成されてしまい表面抵抗率が発明対象の50Ω/□に満たなかった。加えて、銀/酸化銅の比率が3.0と非常に低い値であったため、自己温度制御発熱体のオーバーコートガラス表面で多数の凹みが観察され実使用に耐えられない表面状態であった。
【0042】
ガラス粉の添加量が本発明の範囲より少なすぎる比較例7は、基板との密着力が十分得られず、基板から抵抗体が剥離するなどして抵抗体の不連続部が発生し、表面抵抗率の平均値が発明対象の500kΩ/□を大きく超えてしまった。また、高TCRの平均値は200ppm/℃未満であった。
【0043】
ガラス粉の添加量が本発明の範囲より多過ぎる比較例8は、導電成分の連続性が妨げられる箇所が多数発生し、表面抵抗率の平均値が発明対象の500kΩ/□よりも高くなると共に値のばらつきが大きく不安定になってしまった。また、高TCRの平均値は200ppm/℃未満であった。
【0044】
以上の様に本発明の範囲を外れた比較例は、表面抵抗率の平均値が所定の範囲に留まらないか、高TCRの平均値が200ppm/℃以上にならないか、若しくは両方とも満たさないなど、本発明の対象の自己温度制御発熱体として十分な抵抗特性が得られなかったり、オーバーコートガラス表面上に多数の凹みが観察され、好ましい表面状態でなかったりするなど、実使用に用いるには困難な結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、厚膜抵抗体組成物の組成を、パイロクロア型ルテニウム酸鉛10〜15質量部と、銀10〜15質量部と、酸化銅2〜3質量部と、ガラス粉末30〜50質量部とすることにより、高抵抗領域において、高いプラスの抵抗温度係数を有した自己温度制御発熱体を製造することができるため、プリンタやファクシミリの電子写真方式による画像形成装置用として好適に用いることができ、産業上の利用可能性は極めて大きい。