(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0015】
図1は実施の形態に係る好気性生物処理装置1の縦断面図である。この好気性生物処理装置1は、水平断面が円形の反応槽(槽体)2と、該反応槽2の下部に水平に設置されたパンチングプレート等の多孔板や、平板に複数の分散ノズルを均等に設けたものなどの透水板3と、該透水板3の上側に形成された大径粒子層4と、該大径粒子層4の上側に形成された小径粒子層5と、小径粒子層5の上側に粉粒状活性炭等の生物付着担体の充填により形成された流動床Fと、流動床F内に少なくとも一部が配置された酸素溶解膜モジュール6と、前記透水板3の下側に形成された受入室7と、該受入室7内に原水を供給する原水散布管8と、受入室7内に設置された散気管9等を有する。この散気管9にはコンプレッサ(又はブロワ)13から空気が供給される。
【0016】
原水散布管8には、ポンプによって原水が供給される。なお、高LV通水する場合には、ポンプとして高容量ポンプを用いるのが好ましい。
【0017】
反応槽2の上部は、その下側よりも水平断面積が大きい拡幅部2Wとなっている。拡幅部2Wの下側に、下方ほど水平断面積が小さくなるテーパ状部2Tが設けられている。テーパ状部2Tよりも下側は、反応槽2の下部まで水平断面積が一様な小水平断面積部2Sとなっている。なお、拡幅部2Wの水平断面積は、小水平断面積2Sの水平断面積よりも150〜300%特に175〜225%程度大きいことが好ましい。
【0018】
拡幅部2Wの上部には、処理水を流出させるためのトラフ10及び流出口11が設けられている。トラフ10は槽内壁に沿って環状流路を形成している。
【0019】
図1は、反応槽に流動床担体を充填して、酸素溶解膜の表面への生物膜の付着を担体の流動による剪断力によって抑制して生物膜の大部分が流動床担体に付着するようにしたものであり、酸素溶解膜は酸素供給の目的のみに用いられる。
【0020】
図1では、酸素溶解膜として非多孔質(ノンポーラス)の酸素溶解膜を用い、酸素含有気体を槽外から配管を通じて酸素溶解膜の一次側に通気して、排気は配管を通じて槽外に排出するように構成している。そのため、酸素含有気体を、低圧で酸素溶解膜に通気し、酸素を酸素分子として酸素溶解膜の構成原子の間を通過し(膜に溶解し)、酸素分子として被処理水と接触させる(水に直接溶解させるので気泡を生じない)という、いわば濃度勾配による分子拡散のメカニズムを用いた処理を行っているため、従来のように散気管などによる散気が不要となる。また酸素溶解膜として疎水性の素材を用いると膜中に浸水しづらいので好ましいが、疎水性であっても微量の水蒸気の浸入は免れない。
【0021】
図2は、酸素溶解膜モジュール6の一例を示している。この酸素溶解膜モジュール6は酸素溶解膜として非多孔質の中空糸膜22を用いたものである。この実施の形態では、中空糸膜22は上下方向に配列されており、各中空糸膜22の上端は上部ヘッダー20に連なり、下端は下部ヘッダー21に連なっている。中空糸膜22の内部は、それぞれ上部ヘッダー20及び下部ヘッダー21内に連通している。各ヘッダー20,21は中空管状である。なお、平膜やスパイラル膜を用いる場合にも、通気方向が上下方向となるように配列されることが望ましい。
【0022】
図1は、水平断面積が円形の反応槽を例に説明したが、水平断面が角形の反応槽を用いることもでき、この場合の一例を
図3に示す。断面が角形の反応槽は、反応領域の上方の拡幅部に向け幅が広がる部分が円形の場合の逆テーパ状ではなく、
図3のように縦横の横幅だけが拡張するような形状となる。この形状の反応槽は、直列多段化しやすい。
【0023】
図2(b)の通り、1対のヘッダー20,21と中空糸膜22とからなるユニットが複数個平行に配列されている。
図2(a)の通り、各上部ヘッダー20の一端又は両端が上部マニホルド23に連結され、各下部ヘッダー21の一端又は両端が下部マニホルド24に連結されていることが好ましい。酸素溶解膜モジュール6の上部に給気配管27を通じて酸素含有ガスを供給し、酸素溶解膜モジュール6の下部から排出配管29を通じて槽外に排出する。空気等の酸素含有ガスは上部ヘッダー20から中空糸膜22を通って下部ヘッダー21へ流れ、この間に酸素が中空糸膜22を透過して反応槽2内の水に溶解する。
【0024】
各ヘッダー20,21及び各マニホルド23,24は流水勾配を有するように設けられていてもよい。酸素溶解膜モジュール6は上下に多段に設置されてもよい。
【0025】
この酸素溶解膜モジュール6に空気を供給するために、ブロワ26と空気供給用の給気配管27とが設けられており、該給気配管27が上部マニホルド23に接続されている。下部マニホルド24には排ガス用の中継配管28が接続されている。中継配管28は排出配管29が接続している。排出配管29は、下り勾配を有するように設けられ、反応槽2外にまで延設されている。
図1では排出配管29は反応槽2の側方に引き出されているが、反応槽2の底部から下方に引き出されてもよい。
【0026】
図1の通り、酸素溶解膜に溶解しなかった酸素含有気体の残部が排出配管29を通じて槽外に排気され、その末端が酸素溶解膜モジュールの下端(モジュールが複数のときは各モジュール下端の中で最も下位のもの)より低い位置となるよう配置しているため、排気に凝縮水が含まれる場合は排出配管29の下方に設置のタンク32に凝縮水が流出する。タンク32内の水は、ポンプ33及び配管34によって反応槽2に送水することもできる。
【0027】
なお、排出配管29を槽内または槽外で分岐して排気を槽外に排出する排ガス配管30を別途設けてもよい。この場合、凝縮水は排出配管29を通じて排出されるため、分岐して別途設けた排ガス配管30はその末端の排気部が酸素溶解膜モジュールの下端より高い位置に配置することができるが、凝縮水の溜まりができないよう配管は下り勾配を有さず上り勾配または鉛直上向きのみで構成することが好ましい。またこのとき排出配管29の排ガス配管30との分岐点より下流側にバルブを設け、バルブを開くことにより凝縮水がタンク32に流出するように構成してもよい。
【0028】
バルブは自動弁、手動弁のいずれでもよい。凝縮水を排出するためのバルブの開放は、連続式でも間欠式でもよい。間欠式の場合は、温度変化、湿度変化によって変化するが、通常の運転では、1日に1回〜30日に1回(多くても日に1回数秒、少なければ月に1回数十秒)、好ましくは1日に1回〜15日に1回、バルブを開くことにより排水する。
【0029】
このように構成された好気性生物処理装置1において、原水は散布管8を通じて受入室7に導入され、透水板3及び大径・小径の粒子層4,5を上向流通水されてSSが濾過され、次いで生物膜付着の粉粒状活性炭の流動床Fにおいて、一過式で上向流通水され生物反応を行って上部清澄領域からトラフ10と流出口11を通じて処理水として取り出される。定常運転時のLVでは、流動床Fの上面は拡幅部2Wに位置している。
【0030】
通常の生物処理運転時では、給気配管27から供給された空気等の酸素含有気体は、酸素溶解膜モジュール6を下向流通気した後、酸素溶解モジュール6の下端位置より下部ヘッダー21、下部マニホルド24を通じて流出し、排空気は排出配管29から(または排ガス配管30を設けたときは排ガス配管30から)大気中へ排出される。凝縮水は排出配管29を通じてタンク32へ流出する。
【0031】
生物処理運転を継続すると、担体表面の生物膜が次第に厚くなってくる。この生物膜が過度に厚くなると、担体が流出したり、生物処理効率が低下する。(生物膜の深部すなわち担体に近い側では、酸素が行き届かないために好気性生物処理が行われない。)また、成長した生物膜を介して担体同士が固着し、さらに担体が流出したり生物処理効率が低下したりする。
【0032】
そこで、定期的に、又は反応槽2内の流動状況の観察結果に基づいて、コンプレッサ13を作動させ、散気管9から空気を流出させ、反応槽2内を曝気する。この曝気により、担体表面の余剰汚泥が水流の剪断力で剥離する。
【0033】
この空気曝気を行った後、反応槽2内に原水を通常の処理時のLVよりも高LVにて上向流通水することが好ましい。これにより、剥離して反応槽2内に存在していた汚泥が流出口11から流出する。この際の排出水は、処理水として排出され後工程(凝集沈殿など)で処理されるか、洗浄排水として別途処理されるか、原水槽に送水される。このようにして、担体同士の固着を抑制し、反応槽2内の偏流や閉塞を防止することができる。
【0034】
上記の高LV通水の際、流動床Fの展開率が大きくなり、流動床Fの界面は上昇するが、拡幅部2Wの水平断面積が大きいので、拡幅部2W内での上昇流速は小水平断面積2Sよりも小さくなるので、担体の流失が抑制される。所定時間、この高LV運転を行った後、LVを通常LVに戻し、通常の生物処理運転を再開する。
【0035】
なお、この曝気により、反応槽2内が脱炭酸され、低下したpHが上昇したり、担体(活性炭)間に蓄積した炭酸が脱炭酸されるという効果も奏される。
【0036】
本発明では、活性炭等の生物担体の流動床に非多孔性の酸素溶解膜を設置することで、供給酸素量が多くなるため、対象とする原水の有機性排水濃度に上限が無い。
【0037】
また、生物担体を流動床で運転するため、激しい撹乱にさらされることがない。したがって、多量の生物を安定して維持できるため、負荷を高くとることができる。
【0038】
また、本発明では酸素溶解膜を使用するため、プリエアレーション、直接曝気と比較すると、酸素の溶解動力が小さい。
【0039】
これらのことから、前記曝気によって、中和剤を全く又は殆ど使用することなく、反応槽2内のpHを、中性付近に維持し、低濃度から高濃度までの有機性排水を高負荷で、かつ安価に安定して処理することが可能となる。
【0040】
<生物担体>
生物担体としては、活性炭が好適である。
【0041】
活性炭等の流動床担体の充填量は反応槽の容積の30〜70%程度、特に40〜60%程度が好ましい。この充填量は、多いほうが生物量が多く活性は高いが、多すぎると担体が流出するおそれがある。従って、流動床が20〜50%程度展開するLVで通水するのが良い。通水LVは7〜30m/h特に8〜15m/hr程度である。なお、流動床担体として活性炭以外のゲル状物質、多孔質材、非多孔質材等も同様の条件で使用できる。例えば、ポリビニルアルコールゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタンフォーム、アルギン酸カルシウムゲル、ゼオライト、プラスチック等も用いることができる。ただし、担体として活性炭を用いると、活性炭の吸着作用と生物分解作用による相互作用により、広範囲な汚濁物質の除去を行うことが可能である。
【0042】
活性炭の平均粒径は0.2〜1.2mm、特に0.3〜0.6mm程度が好ましい。平均粒径が大きいと高LVとすることが可能であり、処理水の一部を反応槽に循環する場合は循環量を増やせるため高負荷が可能となる。しかし、比表面積が小さくなるため、生物量が少なくなる。平均粒径が小さいと比表面積が大きいため、付着生物量が増えるが、高LVとしたときに担体が流出し易くなる。
【0043】
通常運転時の活性炭の展開率は、20〜50%程度が好ましい。展開率が20%よりも低いと、目詰まり、短絡のおそれがある。展開率が50%よりも高いと、担体流出のおそれがあると共に、ポンプ動力コストが高くなる。
【0044】
通常の生物活性炭では、活性炭流動床の展開率は10〜20%程度であるがこの場合、活性炭の流動状態が不均一で上下左右に流動する。結果として同時に設置した膜が活性炭によってこすられ、すり減って消耗することになる。これを防止するため、本発明では、活性炭等の流動床担体は十分に流動させることが必要で、展開率は20%以上例えば20〜50%とするのが望ましい。このため、担体の粒径は通常の生物活性炭よりも小さいほうが好ましい。なお、活性炭の場合、やしがら炭、石炭、木炭等特に限定されない。形状は球状炭が好ましいが、通常の粒状炭や破砕炭でも良い。
【0045】
<酸素含有ガス>
酸素含有ガスは空気、酸素富化空気、純酸素等、酸素を含む気体であればよい。通気する気体はフィルターを通過させて微細粒子を予め除去することが望ましい。
【0046】
通気量は生物反応に必要な酸素量の等量から2倍程度が望ましい。これよりも少ないと酸素不足で処理水中にBODやアンモニアが残存し、多いと通気量が不必要に多くなることに加えて圧力損失が高くなるため、経済性が損なわれる。
【0047】
通気圧力は所定の通気量で生ずる中空糸の圧力損失よりもわずかに高い程度が望ましい。
【0048】
<被処理水の流速>
通常運転時の被処理水の反応槽内の流速はLV7m/hr以上とし、TOC濃度20mg/L以下の低濃度排水では処理水を循環せず、ワンパスで処理することもできる。一過式で処理するとポンプ動力を削減することができる。ただし、高LVとするために、流出口11からの処理水の一部を原水散布管8に返送してもよい。
【0049】
LVを高くすると、それに比例して酸素溶解速度が向上する。LVが高い場合は、粒径が大きい活性炭を使い、展開率をあまり大きくしないようにするのが好ましい。生物量、酸素溶解速度から、最適LV範囲は7〜30m/hr特に8〜15m/hr程度である。
【0050】
<滞留時間>
槽負荷0.5〜4kg−TOC/m
3/dayとなるように滞留時間を設定するのが好ましい。
【0051】
<ブロワ>
ブロワ26は、吐出風圧が水深からくる水圧以下のもので十分である。但し、配管等の圧損以上であることは必要である。通常、配管抵抗は1〜2kPa程度である。
【0052】
5mの水深の場合、通常は0.55MPa程度までの出力の汎用ブロワが用いられ、それ以上の水深では高圧ブロワが用いられてきている。
【0053】
本発明では、5m以上の水深であっても0.5MPa以下の圧力の汎用ブロワを用いることができ、0.1MPa以下の低圧ブロワを用いることが好ましい。
【0054】
酸素含有ガスの供給圧は、中空糸膜の圧力損失より高く、さらに膜が水圧でつぶれないこと、が条件となる。平膜、スパイラル膜は膜の圧損が水圧と比較すると無視できるため、極めて低い圧力、5kPa程度以上、水深圧力以下、望ましくは20kPa以下である。
【0055】
中空糸膜の場合、内径と長さによって圧力損失は変化する。通気する空気量は膜1m
2あたり50〜200mL/dayであるから、膜長さが2倍になると空気量は2倍になり、膜径が2倍になっても空気量は2倍にしかならない。したがって、膜の圧力損失は膜長さに正比例し、直径に反比例する。
【0056】
圧力損失の値は、内径50μm、長さ2mの中空糸で3〜20kPa程度である。
【0057】
上記実施の形態では、酸素溶解膜モジュール6に空気を下向きに流すようにしているが、上向きに流すようにしてもよい。
【解決手段】反応槽(槽体)2と、該反応槽2の下部に水平に設置された透水板3と、該透水板3の上側に形成された大径粒子層4と、該大径粒子層4の上側に形成された小径粒子層5と、該小径粒子層5の上側に配置された酸素溶解膜モジュール6と、前記透水板3の下側に形成された受入室7と、該受入室7内に原水を供給する原水散布管8と、受入室7内において散気を行うように設置された散気管9等を有し、反応槽2の上部は、水平断面積が大きい拡幅部2Wとなっている、好気性生物処理装置1。