(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水処理設備の現在地を示す所在地情報及び貸し出し可否を示すステータス情報を含む在庫情報と、前記水処理設備に使用される水処理ユニットの使用期間及びメンテナンス履歴を含む使用履歴データと、を格納する記憶部と、
前記在庫情報を参照し、要求された水処理仕様及び所定の絞り込み条件を満たす水処理設備を貸し出し候補として抽出する抽出部と、
前記貸し出し候補のうち、選択された水処理設備の貸し出し予約を受け付ける貸出設備決定部と、
貸し出し予約された水処理設備のステータス情報を更新する在庫情報更新部と、
貸し出し予約された水処理設備の所在地情報、及び貸し出し先の位置に基づいて、該水処理設備が該貸し出し先に到着するまでの所要時間を算出する算出部と、
を備え、
前記水処理ユニットは複数の在庫拠点に保管されており、
前記貸し出し候補のリストを、貸し出しに要する日数と共に表示部に表示することを特徴とする水処理設備の管理装置。
貸し出し中の水処理設備から通知された運転状況に基づいて、この水処理設備に使用されている水処理ユニットのメンテナンス時期を予測すると共に、メンテナンスに必要な部材の在庫状況を判断する予測部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の水処理設備の管理装置。
【背景技術】
【0002】
半導体等の製造工場においては、製品の洗浄に、塩分等の不純物を除去した処理水(純水)が大量に使用される。一時的な製品生産規模の拡大に伴い、より大量の処理水が必要とされることがある。この課題を経済的に解決すべく、一時的に水処理設備を貸し出し、かつ水処理設備を構成する複数種のユニットの在庫を管理することで、同時に数多くの工場に効率良く水処理設備と水処理設備を構成する複数種のユニットの交換品とを提供する水処理設備提供システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2には、リユース分離膜の流量、差圧、又はフラックスの運転データに基づいて、リユース分離膜を洗浄又は交換する時期を予測する方法が提案されている。また、リユース分離膜の識別情報と、リユース分離膜を使用していた水の含有成分や洗浄後の性能検査情報とを対応付け、リユース分離膜を効率的に在庫管理し、交換品を選定する管理装置が知られている(例えば特許文献3,4参照)。
【0004】
貸し出した水処理設備を中長期的に運転した場合、分離膜やイオン交換樹脂等の水処理機器が汚れや劣化によって処理不良を生じたり故障したりして、製品の生産量を減らすことがあった。特許文献1に開示されているシステムでは、ユニットの交換時期を予測できず、交換要求が集中しても対応できるようにするために、余裕をもって在庫を保有する必要があった。特許文献2〜4の手法では、ポンプやバルブ、電気式脱イオン装置など、リユース分離膜以外のユニットに対応することができなかった。
【0005】
このように、従来は、水処理設備の貸し出しにあたり、水処理ユニットを効率よく保有・管理できていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水処理ユニットを効率よく保有・管理し、水処理設備の貸し出しを行う水処理設備の管理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による水処理設備の管理装置は、水処理設備の現在地を示す所在地情報及び貸し出し可否を示すステータス情報を含む在庫情報と、前記水処理設備に使用される水処理ユニットの使用期間及びメンテナンス履歴を含む使用履歴データと、を格納する記憶部と、前記在庫情報を参照し、要求された水処理仕様及び所定の絞り込み条件を満たす水処理設備を貸し出し候補として抽出する抽出部と、前記貸し出し候補のうち、選択された水処理設備の貸し出し予約を受け付ける貸出設備決定部と、貸し出し予約された水処理設備のステータス情報を更新する在庫情報更新部と、を備えるものである。
【0009】
本発明の一態様では、貸し出し予約された水処理設備の所在地情報、及び貸し出し先の位置に基づいて、該水処理設備が該貸し出し先に到着するまでの所要時間を算出する算出部をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様では、貸し出し中の水処理設備から通知された運転状況に基づいて、この水処理設備に使用されている水処理ユニットのメンテナンス時期を予測すると共に、メンテナンスに必要な部材の在庫状況を判断する予測部をさらに備える。
【0011】
本発明の一態様では、前記ステータス情報は、予約可、予約済、修理中、及び貸出中を含み、前記抽出部は、ステータスが予約可又は予約済の水処理設備、ステータスが修理中であり貸出予定日までに修理が完了する水処理設備、及びステータスが貸出中であり貸出予定日までに返却される水処理設備を抽出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水処理ユニットを効率よく保有・管理し、水処理設備の貸し出しを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0015】
本発明の実施形態に係る管理システムは、顧客に貸し出す水処理設備の管理を行うものである。
図1に示すように、水処理設備を構築するための水処理ユニットは複数の在庫拠点Sに保管されており、顧客の要求に応じて工場F等へ配送され、水処理設備が構築・設置される。管理センタ内の管理装置1は、在庫拠点Sに保管されている水処理設備(水処理ユニット)の在庫や、顧客に貸し出し中の水処理設備を管理している。
【0016】
管理装置1は、水処理設備の貸し出し要求を受け付けると、要求された仕様を満たす設備を構築するために必要なユニットの在庫があるか否か、貸し出し中の場合はいつ返却されるか等を判定し、在庫状況や貸し出す水処理設備が顧客の元に配送・設置されるまでに要する時間を提示する。これにより、顧客は、製品の生産計画を立てやすくなる。
【0017】
また、管理装置1は、貸し出す水処理設備を構築する複数の水処理ユニットの各々について、次回メンテナンスの時期を予測し、交換品等の在庫状況と共に提示する。これにより、貸し出し後に必要となる交換品等を事前に準備し、メンテナンスをスムーズに行うことができる。
【0018】
水処理設備2は、例えば、用水処理設備、排水処理設備(水回収を含む)、水処理設備周辺設備といった種別に大別できる。
【0019】
用水処理設備としては、例えば、超純水製造設備、医療用純水製造設備などの純水製造設備、精製水製造設備、飲用水製造設備、軟水製造設備などの高度用水処理設備、海水淡水化設備、機能水製造設備といった特殊用水処理設備、などが挙げられる。
【0020】
排水処理設備としては、例えば、クロム排水処理設備、シアン処理設備、フッ素処理設備、セレン処理設備、重金属処理設備などの無機排水処理設備、好気性生物処理設備、嫌気性生物処理設備、凝集分離設備などの有機排水処理設備、クーラント排水処理設備、メッキ排水処理設備、雨水処理設備、ヤード排水処理設備などの特定排水処理設備、などが挙げられる。
【0021】
水処理設備周辺設備としては、例えば、ボイラ設備、冷却設備、薬注設備、脱水処理設備などの付帯設備、油回収設備、リン回収設備、フッ素回収設備などの有価物回収設備、などが挙げられる。
【0022】
図2は、管理システムのブロック図である。顧客の工場F等に設置される水処理設備2は、制御部20、監視部21、通信部22、及び複数の水処理ユニット23を有する。水処理ユニット23は、水処理設備に用いられる装置、機器であり、純水製造設備としては、例えば、活性炭フィルタ、逆浸透膜モジュール、電気式脱イオン装置、非再生型イオン交換器、膜式濾過器、脱気膜、水槽、ポンプ、バルブ等であり、また、排水処理設備としては、例えば、散気装置、ブロワ、DO計やpH計などの計器、浸漬膜、スクラバー、脱水機、放散装置、水槽、ポンプ、バルブ等である。各水処理ユニット23には固有のID(識別情報)が割り当てられている。
【0023】
監視部21は、水処理設備2に設けられた各種センサ(図示略)を用いて、処理水量や処理水の水質、電流、電圧、振動、温度、圧力等を検出し、各水処理ユニット23の運転状況を監視する。制御部20は、各水処理ユニット23の運転状況をその識別情報と対応付け、通信部22により、インターネット等のネットワークを介して管理装置1に定期的に通知する。
【0024】
管理装置1は、管理装置1の動作を統括的に制御する制御部としてのCPU(Central Processing Unit)10を有している。CPU10は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。CPU10には、バスを介して、記憶部11、通信部12、表示部13、入力部14等が接続されている。
【0025】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置等を含む。ROMには、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU10が各種処理を実行することで管理装置1の各機能が実現される。RAMは、CPU10がプログラムに基づいて処理を実行する際にデータを一時的に格納するワークメモリとして使用される。
【0026】
ハードディスク装置は、保有している水処理設備(水処理ユニット)の在庫情報や、水処理ユニットの運転状況を示す運転状況データ、水処理ユニットの使用履歴やメンテナンス履歴を示す使用履歴データ等を格納する。
【0027】
通信部12は、インターネット等を介して、水処理設備2の通信部22と通信を行う。
【0028】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイであり、各種画面を表示する。入力部14は、管理者から各種の操作を受け付けるものであり、キーボードやマウス等である。
【0029】
CPU10が記憶部11に格納されている管理プログラムを実行することで、
図3に示すように、貸出候補抽出部15、所要時間算出部16、貸出設備決定部17、在庫情報更新部18、及び処方時期予測部19が実現され、水処理設備の在庫管理、貸し出し予約、メンテナンス予測等を行うことができる。
【0030】
なお、図示しないが、顧客工場内や在庫拠点などに据置した端末又はモバイル端末といった外部端末からインターネット等を介して管理装置1にアクセスすることにより、各種操作を行うこともできる。
【0031】
次に、
図4に示すフローチャートを用いて水処理設備の予約方法を説明する。
【0032】
まず、ユーザは、入力部14を用いて、貸し出す水処理設備に要求される仕様を入力する(ステップS1)。入力する仕様とは、例えば、顧客が要求する処理水の種別、水量、水質、原水の種別等である。なお、処理水の種別とは、処理水の用途であり、食品・飲用、医薬製造などが例示され、一方、原水の種別とは用水系では上水、井水など、排水系・排水回収系では、有機排水、電子プロセス排水などが例示される。
【0033】
ユーザは、水処理設備を貸し出す予定日、及び貸出先の名称や住所を入力する(ステップS2)。さらに、ユーザは、水処理設備を検索する際の絞り込み条件を設定する(ステップS3)。絞り込み条件の設定方法を、
図5に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、ユーザは、抽出対象とする水処理設備のステータスを選択する(ステップS31)。ステータスは、「貸出可」「貸出不可」からなり、「貸出可」は「予約可」「予約済」にさらに分類され、「貸出不可」は「修理中」「貸出中」に分類される。保有する全ての水処理設備の現在のステータスが、記憶部11内の在庫情報に記録されている。
【0034】
「予約可」は、現在、在庫拠点Sに保管されており、すぐに貸し出すことができる状態にあることを意味する。「予約済」は、現在、在庫拠点Sに保管されているが、既に予約されていることを意味する。この「予約済」は、先に予約したユーザと交渉し、他の水処理設備へ替えてもらうことが可能なため、「貸出可」に含まれる。
【0035】
「修理中」は、現在、構成する水処理ユニット等を修理していて使用できない状態にあることを意味する。「貸出中」は、現在貸し出されており、在庫拠点Sに無いことを意味する。
【0036】
ステータスが「貸出不可」となっている水処理設備を抽出対象とし(ステップS32_Yes)、さらに、ステップS2で入力した貸出予定日よりも後に貸し出し可能になる水処理設備を抽出対象とする場合(ステップS33_Yes)、貸出予定日から貸し出し可能になるまでの期間を入力する(ステップS34)。
【0037】
貸出予定日よりも後に貸し出し可能になる水処理設備とは、例えば、貸出予定日よりも後に返却される水処理設備や、貸出予定日よりも後に修理が完了する水処理設備である。貸出予定日からの期間を「1ヶ月」と入力した場合、貸出予定日から1ヶ月以内に返却又は修理が完了する水処理設備が抽出対象に含まれる。
【0038】
このようにして絞り込み条件を設定した後、貸出候補抽出部15が、貸し出しする水処理設備の候補を抽出する(
図4、ステップS4)。貸出候補抽出部15は、ステップS1で入力された仕様を満たし、かつ、設定された絞り込み条件を満たす水処理設備を貸し出し候補として抽出する。
【0039】
例えば、貸出候補抽出部15は、在庫拠点Sに保管されている水処理設備、及び貸し出し予定日よりも前に返却される現在貸し出し中の水処理設備の中から、ステップS1で入力された仕様を満たす水処理設備を抽出する。
【0040】
所要時間算出部16は、抽出した貸し出し候補の各々について、貸し出し先に配送されるまでに要する時間を算出する。例えば、所要時間算出部16は、貸し出し候補の水処理設備が保管されている在庫拠点Sの位置と、貸し出し先の住所から、貸し出しに要する日数を算出する。貸し出し候補の水処理設備が現在貸し出し中の場合は、返却されるまでの日数を加算する。
【0041】
水処理設備の貸し出し候補のリストが、貸し出しに要する日数と共に、表示部13に表示される。リストでは、貸し出しに要する日数が短い順に候補を表示してもよい。ユーザがリストから候補を選択すると、選択された水処理設備の詳細情報を示す画面が表示部13に表示される。
【0042】
図6に示すように、詳細情報画面には、ステータス、所在地、使用期間、構成する水処理ユニットの情報等が表示される。所在地は、この水処理設備が現在どこにあるかを示すものであり、在庫拠点Sや貸し出し先の位置が表示される。履歴ボタン61を押すと、過去の使用履歴が表示される。
【0043】
構成ユニット毎に、使用期間、最終メンテナンス日、次回メンテナンス予定月などが表示される。
【0044】
貸し出し水処理設備を決定して予約ボタン60を押すと(ステップS5)、貸出設備決定部17が予約を受け付け、この水処理設備の貸し出し期間の入力画面に切り替える。ユーザは、入力部14を用いて、貸し出し期間(顧客の使用期間)を入力する(ステップS6)。
【0045】
在庫情報更新部18は、予約された水処理設備について、ステータスを「予約済」にして、在庫情報を更新する(ステップS7)。このようにして、水処理設備の予約が行われる。
【0046】
在庫情報更新部18は、水処理設備が在庫拠点Sから発送されたり、貸出先から返却されたり、修理が完了したりして状況が変化する都度、在庫情報のステータスを更新する。
【0047】
処方時期予測部19は、記憶部11内の運転状況データ及び使用履歴データに基づいて、貸し出し中の水処理設備2を構成する水処理ユニット毎に、メンテナンスや部品交換を行う時期を予測する。処方時期予測部19は、在庫情報を参照し、メンテナンスに必要となる水処理ユニットや部品・部材の在庫状況を検出し、在庫状況とメンテナンス予測時期とを表示部13に表示する。ユーザは表示された在庫状況をみて、メンテナンスの準備をすることができる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、複数の在庫拠点Sに保管されている水処理設備・水処理ユニットの在庫状況を管理し、貸し出し中の水処理設備を構成する水処理ユニットのメンテナンス時期を予測することで、水処理ユニットを効率よく保有・管理し、メンテナンスをスムーズに行うことができる。また、顧客の元に水処理設備が到着するまでの時間を算出するため、顧客は事業計画を立てやすくなる。
【0049】
上記実施形態において、管理装置1は、ステップS1で入力された仕様を満たす水処理設備の設計を行ってもよい。例えば、管理装置1は、水処理の仕様別に構築された水処理設備の標準モデルを参照し、入力された仕様を満たすために必要な水処理ユニットの種別や数を決定する。貸出候補抽出部15は、在庫情報を参照し、決定した水処理ユニットの在庫状況や貸し出し可否を表示部13に表示する。
【0050】
本発明におけるステータス情報として少なくとも予約可、予約済、修理中及び貸出中が例示されるが、他にも必要に応じて、例えば輸出手続中、廃棄中、発送中、在庫確認中など項目を追加してもよい。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【解決手段】水処理設備の管理装置は、水処理設備の現在地を示す所在地情報及び貸し出し可否を示すステータス情報を含む在庫情報と、前記水処理設備に使用される水処理ユニットの使用期間及びメンテナンス履歴を含む使用履歴データと、を格納する記憶部と、前記在庫情報を参照し、要求された水処理仕様及び所定の絞り込み条件を満たす水処理設備を貸し出し候補として抽出する抽出部と、前記貸し出し候補のうち、選択された水処理設備の貸し出し予約を受け付ける貸出設備決定部と、貸し出し予約された水処理設備のステータス情報を更新する在庫情報更新部と、を備える。