(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも前記装置本体を人が背負うときに、前記背負いベルトの前記第1部分が、前記背負いベルトの前記第2部分よりも人の背中側に位置している、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の農業用背負い型作業機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、農業用背負い型作業機の一実施形態について、
図1〜
図5に基づいて詳細に説明する。
図1には、一実施形態に係る農業用背負い型作業機としての動力噴霧機100の全体図が示されている。作業者は、動力噴霧機100を背負った状態で、ノズル30から噴出される薬液(農薬等)を周辺(圃場等)に噴霧する。なお、
図1等においては、動力噴霧機100の上下方向をZ軸方向、作業者が動力噴霧機100を背負ったときの左右方向(作業者の左肩と右肩を結ぶ方向)をX軸方向、作業者が動力噴霧機100を背負ったときの前後方向をY軸方向、として図示している。
【0011】
図1に示すように、動力噴霧機100は、装置本体10と、ノズル30と、ホース40と、一対の背負いベルト50A、50Bと、を備える。
【0012】
装置本体10は、薬液タンク12と、原動機14と、燃料タンク16と、ポンプ18と、フレーム20と、を備える。
【0013】
薬液タンク12は、樹脂等を材料とし、噴霧対象の薬液(農薬等)を収容する。原動機14は、ポンプ18を駆動する。燃料タンク16は、原動機14を駆動するための燃料(ガソリンや混合オイル)を収容する。ポンプ18は、例えばユニフローポンプであり、薬液タンク12内の農薬等をホース40を介してノズル30に送る。フレーム20は、薬液タンク12、原動機14、燃料タンク16、ポンプ18等を所定の位置関係で保持する。ここで、フレーム20の上端部(+Z端部)は、下端部(−Z端部)よりも−Y側に位置しており、結果的に、フレーム20の−Y側は、前傾した状態となっている。
【0014】
ノズル30は、農薬等を噴霧するためのものであり、ホース40の一端部に接続されている。ノズル30には、コック31が設けられており、作業者がコック31を捻ることで、農薬等の噴霧開始・停止を切り替えることができるようになっている。
【0015】
背負いベルト50A、50Bは、それぞれ、第1ベルトとしてのパッド部52と、ラダーロック54と、第2ベルトとしてのベルト部56と、リング状部材60と、を備える。
【0016】
パッド部52は、袋状にしたポリプロピレン等の生地の中にスポンジ等の柔軟性や弾性を有する材料を封入したものである。パッド部52は、作業者が動力噴霧機100を背負った状態で、作業者の肩付近や背中に接触する位置に設けられている。なお、パッド部52は、フレーム20の作業者の背中と対向する部分(−Y側の面)に固定されるとともに、フレーム20の上端部近傍から−Y側に所定距離離れた位置(
図1の第1部分P1)において、紐状部材62を介してフレーム20により保持されている。本実施形態においては、パッド部52の内部にスポンジ等の材料が封入されていることで、作業者が動力噴霧機100を背負ったときの肩や背中の痛みを軽減することができる。
【0017】
ラダーロック54は、例えば、プラスチック等を材料とし、
図2(a)に示すような形状を有する部品である。ラダーロック54は2つのスリット54b、54cを有しており、パッド部52の一端部が、
図2(a)の矢印Aに沿って、スリット54b部分に通されている。これにより、パッド部52がラダーロック54を吊り下げ保持した状態となっている。
【0018】
ベルト部56は、例えばナイロン製のベルト状部材であり、ラダーロック54において
図2(a)の矢印Bに沿って、スリット54b、54cに通されている。ベルト部56の一端部は、
図2(b)に模式的に示すように、パッド部52の一部(破線円Cで示す部分)に固定されている。また、ベルト部56は、
図1に示すように、リング状部材60を介して、装置本体10のフレーム20と連結されている。作業者は、動力噴霧機100を背負った状態で、ベルト部56の他端部(
図2(b)において符号Dで示す部分)を引っ張ることにより、装置本体10の下端部を上側に引き上げることができ、これにより装置本体10と作業者の体幹とを近づけることが可能となる。なお、ベルト部56の他端部には、
図1に示すように、作業者が指を掛けるためのループ部56aを設けることとしてもよい。これにより、作業者が、握力が弱いお年寄り等であっても、ベルト部56を引き易くすることができる。
【0019】
ベルト部56は、
図1において破線円で示す位置P2(第2部分)においてフレーム20に設けられたリング状部材60に係合している。ここで、リング状部材60は、
図3に示すように、フレーム20の一部に設けられたX軸方向に突出する薄板状の部分20bに設けられている。より具体的には、リング状部材60は、薄板状の部分20bの下端から所定高さの位置にY軸方向に沿って貫通形成された孔20aに通された状態となっている。リング状部材60が
図3に示すように設けられることで、リング状部材60のX軸回りの回転(
図3の状態からX軸を中心とした反時計回りの回転)が規制された状態となっている。また、
図3の状態では、リング状部材60のY軸回りの回転(−Y側から見て時計回り方向の回転)が規制された状態となっている。これにより、ベルト部56の移動範囲も規制されるので、動力噴霧機100を台等に置いた場合に、ベルト部56がフレーム20の下側(−Z側)に挟み込まれるのを抑制することができる。すなわち、本実施形態においては、薄板状の部分20bが、リング状部材60に接触して、リング状部材60の動きを規制し、ベルト部56のフレーム20の下側への回り込みを抑制する回り込み抑制手段としての機能を有している。なお、本実施形態では、リング状部材60として、
図3に示すような、薄板状の部分20bからの着脱が容易なカラビナを採用しているが、これに限らず、その他のリング状部材を採用することとしてもよい。
【0020】
本実施形態では、作業者は、台に載せた動力噴霧機100の背負いベルト50A、50Bに腕を通して背負った後、ベルト部56を引くことにより、装置本体10を身体に密着させる。そして、作業者は、原動機14を駆動し、ポンプ18を作動させることで、薬液タンク12からノズル30に農薬等を送り、ノズル30に設けられたコック31を捻ることにより、ノズル30から農薬を噴霧させる。これにより、圃場等に農薬等の薬液を噴霧することが可能である。
【0021】
ここで、背負いベルト50A、50B等の作用についてより詳細に説明する。
【0022】
前述のように、装置本体10においては、フレーム20の上端部近傍の−Y端部がフレーム20の下端部近傍の−Y端部よりも−Y側に位置している(装置本体10が前傾した状態となっている)。また、背負いベルト50A、50Bのパッド部52は、装置本体10から−Y側に所定距離離れた位置(第1部分P1)において、紐状部材62を介して装置本体10により保持されている。これにより、背負いベルト50A、50Bの上端部の保持位置(第1部分P1)は、下端部と装置本体10との接続位置(第2部分P2)よりも−Y側に位置している。更に、パッド部52の内部には柔軟性や弾性を有する材料が封入されているため、ベルト部56よりも屈曲しにくくなっている。これにより、パッド部52の紐状部材62により保持されている部分よりも−Y側に位置する部分は、重力に抗して水平方向及び鉛直方向に対して所定角度方向に延びた状態を維持する。これらの作用により本実施形態では、動力噴霧機100を台等に置いた状態で、背負いベルト50A、50Bが形成する空間(腕を通す環状の部分)を大きく維持することが可能となっている。これにより、作業者は、背負いベルト50A、50Bに対して腕を通し易くなる。
【0023】
図4(a)〜
図4(d)は、一般的な動力噴霧機(比較例)を背負うときの作業者の動作を模式的に示す図であり、
図4(e)〜
図4(h)は、本実施形態の動力噴霧機100を背負うときの作業者の動作を模式的に示す図である。
図4(a)、
図4(e)を比較すると、台の上に動力噴霧機を置いた状態では、本実施形態の動力噴霧機100の方が背負いベルトの形成する空間(腕を通す環状の部分)が大きく維持されているため、作業者は背負いベルトに対して腕を通し易いことが分かる。また、本実施形態の装置本体10は−Y側に傾斜していることから、台よりも前方側(−Y側)に出っ張った状態となっている。このため、作業者が腕を通した段階で、
図4(f)に示すように作業者が動力噴霧機を背負った状態になることから、
図4(b)の場合と比べて作業者は立ち上がりやすくなっている。また、装置本体を背負った作業者が立ち上がるときに体幹が前傾になるため、作業者の筋負担を軽減することができる。更に、
図4(c)、
図4(g)の状態(動力噴霧機を背負った状態)から、
図4(d)、
図4(h)に示すように台の上に動力噴霧機を下ろす場合にも、本実施形態(
図4(h))においては、作業者が必要以上に後傾にならなくても、動力噴霧機を下ろすことができる。この点からも作業者の負担が軽減される。
【0024】
また、本実施形態においては、上述したように、背負いベルト50A、50Bが、
図2(b)に示すような構造を有している。ここで、一般的に用いられている背負いベルトは、
図5(a)に示すような構造(ベルト部56’の端部が本体の下端部に固定される構造)を有している。この場合、
図5(a)の構造を模式的に示すと、
図5(b)に示すように滑車を用いて表現することができる。これら
図5(a)、
図5(b)の構造を採用した場合、装置本体10の下端部を上側に引き上げるためには、力Fよりも大きな力F’でベルト部56’を引く必要があった。
【0025】
これに対し、本実施形態の背負いベルト50A、50Bにおいては、
図2(b)の構造を模式的に示した
図5(c)のように、2つの滑車を用いて表現することができるので、
図5(c)において装置本体10の下端部を上側に引き上げるためには、F/2よりも大きな力F”でベルト部56を引くようにすればよいことになる。これにより、本実施形態では、装置本体10の下端部を上側に引き上げる場合に必要な力を少なくすることができるため、作業者の身体的負担を軽減することが可能となっている。
【0026】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の動力噴霧機100によれば、装置本体10(フレーム20)の下端部近傍において、背負いベルト50A、50Bのリング状部材60(位置P2)に接触してリング状部材60の動きを規制し、背負いベルト50A、50Bのフレーム20の下側への回り込みを抑制する薄板状の部分20bを有している。これにより、背負いベルト50A、50B(ベルト部56)がフレーム20と台の間に挟まり、作業者の腕通しが妨げられるのを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、背負う際の作業者の利便性を向上し、身体的負担を軽減することができる。
【0027】
また、本実施形態では、リング状部材60の回り込みを抑制する構造として、孔20aが形成された薄板状の部分20bを採用しているため、簡易な構造で、背負いベルト50A、50B(ベルト部56)が装置本体10の下側に挟み込まれるのを抑制することができる。また、本実施形態では、孔20aをフレーム20の下面から所定高さの位置に形成しているので、孔20aをフレーム20の下端部付近に設ける場合に比べ、ベルト部56が装置本体10と台の間に挟まるのを抑制することができる。なお、孔20aの高さや位置については、リング状部材60の大きさ等を考慮し選択することが好ましい。
【0028】
また、本実施形態では、背負いベルト50A、50Bの第1部分P1の近傍から所定範囲(パッド部52)が他の部分(ベルト部56)よりも屈曲しにくくなっている。これにより、
図4(e)に示すように、背負いベルト50A、50Bが形成する空間が広くなるため、作業者が動力噴霧機100を背負う際に、背負いベルト50A、50Bに腕を通し易くすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、背負いベルト50A、50Bのパッド部52は、ラダーロック54を吊り下げ保持し、ベルト部56は、パッド部52に一端部が接続され、他端側がラダーロック54に通されるとともに、一端部とラダーロック54に通された部分との間においてリング状部材60を介して装置本体10に連結されている。これにより、
図5(c)に示すように、装置本体10の下端部を上側に引き上げるために作業者が下側に引く力を低減することができる。
【0030】
また、本実施形態では、一対の背負いベルト50A、50Bは、装置本体10の−Y側において、第1部分P1が装置本体10の上端部近傍に接続されるとともに、第2部分P2が装置本体10の下端部近傍に接続されており、背負いベルト50A、50Bの第1部分P1が第2部分P2よりも人の背中側(−Y側)に位置している。これにより、装置本体10の重心を作業者に近づけることができるので、動力噴霧機100を背負う作業者の身体的負担を軽減することができる。また、装置本体10を背負った作業者が立ち上がるときには、一般的な動力噴霧機を背負う場合よりも体幹が前傾となるため、作業者の身体的負担(特に脚や腰への負担)を軽減することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、
図1に示すように、背負いベルト50A、50Bにおいて、ラダーロック54の上側の素材を下側よりも屈曲しにくい素材とした場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、
図6に示すように、ラダーロック54の下側のベルト部56を、筒状の部材92(例えばスポンジなどの弾性、柔軟性を有する部材)で覆うこととしてもよい。この場合、ラダーロック54の上側をベルト部56と同様の素材としてもよい。このようにしても、背負いベルト50A、50Bが形成する空間を広く維持することができるので、作業者は背負いベルト50A、50Bに対する腕通しを簡易に行うことが可能となる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、作業者がベルト部56を引く方向を制限する(制限手段を設ける)ようにしてもよい。
【0033】
図7(a)は、作業者がベルト部56を引く方向を異ならせた場合に、引く力がどの程度変化するかを実験した結果(5回平均値)を示すグラフである。なお、引く方向を示す角度αは、
図7(b)に示す一点鎖線方向を基準とした角度であるものとする。
図7(a)に示すように、作業者がベルト部56を前方向に引いた場合(α≒60°)には、作業者がベルト部56を後側(背中側)に引いた場合(α≒0〜30°)よりも必要な引き力が大きい(例えば、1〜3割大きい)ことがわかる。
【0034】
したがって、上記実施形態においては、引く方向が、例えば角度α≒0〜30°となるように制限する制限手段を設ければよい。例えば、ベルト部56に、
図8(a)に示すようにベルト通し70を設けることにより、引く方向を制限してもよいし、
図8(b)に示すように、ベルト部56の端部を装置本体10に連結することにより、引く方向を制限してもよい。
【0035】
なお、上記実施形態では、薬液タンク12に農薬が投入されていない状態では、
図4(a)に示すように装置本体(フレーム20)が前傾せず、薬液タンク12に農薬が投入された段階で、フレーム20の上端部が−Y側に傾斜することで、
図1に示すような状態に遷移するような構成を採用してもよい。すなわち、少なくとも装置本体10を作業者が背負うときに、装置本体10の上端部近傍が下端部近傍よりも−Y側に位置するようになっていればよい。
【0036】
なお、上記実施形態では、
図3に示すような構造を採用することにより、ベルト部56がフレーム20の下面に挟まれるのを抑制する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、
図9(a)に示すように、孔20aを長円形状とし、孔20aの下方(−Z側)に−Y方向に突出する突起部20cを設けることとしてもよい。このようにしても、リング状部材60に突起部20cが接触してリング状部材60の動きが規制されるので、ベルト部56がフレーム20の下面に挟まれるのを抑制することができる。
【0037】
また、
図9(b)に示すように、
図9(a)の孔20aに代えて、半円状の部材20dを突起部20cと薄板状の部分20bとの間に設けることとしてもよい。このようにしても、リング状部材60に突起部20cが接触してリング状部材60の動きが規制されるので、ベルト部56がフレーム20の下面に挟まれるのを抑制することができる。更に、
図10(a)に示すように、薄板状の部分20bに、ベルト部56よりも屈曲しにくい材料から成る固定部96を設け、固定部96にベルト通し94を設けることとし、ベルト通し94にベルト部56を通すようにしてもよい。このようにしても、ベルト部56の動きが固定部96により規制されるので、ベルト部56がフレーム20の下面に挟まれるのを抑制することができる。更に、
図10(b)に示すように、固定部96が回動可能となるように、軸98を介してフレーム20に設け、フレーム20のベルト通し94の下側に突起部20cを設けるようにしてもよい。また、
図10(c)に示すように、
図10(b)の突起部20cに代えて、固定部96に突起部材20eを設けるようにしてもよい。
図10(b)、
図10(c)のいずれの構成を採用しても、
図3、
図9(a)、
図9(b)、
図10(a)の構成と同様、ベルト部56がフレーム20の下面に挟まれるのを抑制することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、動力噴霧機100が一対の背負いベルト50A、50Bを有する場合について説明したが、これに限らず、背負いベルトは、1つ(例えば、作業者が襷状に肩掛けする背負いベルト)であってもよい。
【0039】
なお、上記実施形態では、農業用背負い型作業機が動力噴霧機である場合について説明したが、これに限らず、農業用背負い型作業機は、粉状又は粒状の肥料や農薬などをファンの風を利用して散布する動力散布機などの防除機であってもよいし、その他の農業用背負い型作業機であってもよい。
【0040】
なお、上記実施形態では、ラダーロック54が2つに分離可能な脱着式バックル構造を有していてもよい。また、上記実施形態では、背負いベルト50A、50Bに胸ベルトや腰ベルトを付加してもよい。
【0041】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。