【文献】
第一電子工業株式会社,57シリーズ結線作業手順書,[online],1992年10月20日,改A,[2019年6月7日検索], インターネット, <URL:http://www.ddknet.co.jp/product/rectangular/57%20Relation/57%20Connection%20manual.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤー張設用のガイド溝を備えワイヤーが複数回巻き掛けられるガイドローラー群と、被加工物を固定する基台と、該基台と該ワイヤーとを相対的に移動させ該基台に固定した被加工物に該ワイヤーを切り込ませる移動手段と、を有するワイヤーソーの該ガイドローラー群に巻き掛けられた第1のワイヤーの一端部に、該第1のワイヤーとは別の第2のワイヤーの一端部を接続するワイヤーの接続方法であって、
内部にワイヤーが挿通した状態で該ガイド溝に沿って該ガイドローラー群に巻き掛けることのできるチューブ状のカバー部材を準備するカバー部材準備ステップと、
該第1のワイヤーの一端側又は該第2のワイヤーの一端側を該カバー部材に挿通するワイヤー挿通ステップと、
該ワイヤー挿通ステップを実施した後、該第1のワイヤーの一端部と該第2のワイヤーの一端部とを交差させ、該第1のワイヤーと該第2のワイヤーとの交差部を溶接して該第1のワイヤーと該第2のワイヤーとを接続する溶接ステップと、
該溶接ステップを実施した後、該カバー部材を該第1のワイヤー及び該第2のワイヤーに沿って移動させ、該第1のワイヤーの一端部及び該第2のワイヤーの一端部を該カバー部材の内部に収容する端部収容ステップと、を備えることを特徴とするワイヤーの接続方法。
該カバー部材の長さは、該第1のワイヤーの一端から該交差部までの長さと該第2のワイヤーの一端から該交差部までの長さの和以上であることを特徴とする請求項1記載のワイヤーの接続方法。
該ワイヤーソーは、ワイヤー及び被加工物に高周波パルス電力を供給する高周波パルス電源ユニットをさらに有し、被加工物を放電加工することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のワイヤーの接続方法。
【背景技術】
【0002】
インゴット等の被加工物からウェーハを切り出す場合には、ワイヤーソー(マルチワイヤーソー)と呼ばれる加工装置を用いるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このワイヤーソーは、複数のガイドローラーに巻き掛けられたワイヤーを所定の方向に送りながら被加工物に切り込ませることで、薄いウェーハを切り出す。
【0003】
一方、このワイヤーソーを用いる加工方法では、ガイドローラーに巻き掛けられたワイヤーに対して砥粒を分散させたスラリーを供給し続けなければならないので、工程が煩雑である。また、被加工物に対してワイヤーが直に接触するので、工程中にワイヤーが切れる可能性も高かった。
【0004】
これらの問題に対し、近年では、導電性を備えたワイヤーと被加工物との間で発生する放電を利用して、ウェーハを非接触で切り出すワイヤーソーも提案されている(例えば、特許文献2参照)。このワイヤーソーでは、ワイヤーと被加工物との間にパルス電圧を印加し、ワイヤーを所定の方向に送りながら被加工物に切り込ませることで、ウェーハを非接触で切り出すことができる。
【0005】
ところで、上述のようなワイヤーソーでは、例えば、ワイヤーが途中で切れてしまった場合や、セットされているワイヤーを全て使い切った場合等に、新たなワイヤーをガイドローラー群に巻き掛ける必要がある。しかしながら、例えば、直径が100μm〜200μmの細いワイヤーを、0.5mm〜1mm程度の狭いピッチで幾重にも巻き掛けるには、熟練したオペレータであっても30分以上の時間が掛かっていた。
【0006】
ワイヤーの交換に要する時間を短縮するために、ガイドローラー群に巻き掛けられたワイヤーの一端面に、新たなワイヤーの一端面を接触させて、2本のワイヤーを溶接するワイヤーの接続方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。このワイヤーの接続方法によれば、元のワイヤーを巻き取ることによって新たなワイヤーを巻き掛けることができるので、ワイヤーの交換に要する時間は大幅に短縮される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るワイヤーの接続方法は、カバー部材準備ステップ(
図3(A)参照)、ワイヤー挿通ステップ(
図3(A)参照)、溶接ステップ(
図3(B)、
図3(C)参照)、及び端部収容ステップ(
図3(D)、
図3(E)参照)を含む。
【0016】
カバー部材準備ステップでは、内部にワイヤーを通すことができるチューブ状のカバー部材を準備する。ワイヤー挿通ステップでは、ワイヤーソーのガイドローラー群に巻き掛けられている第1のワイヤーの一端側、又は第1のワイヤーとは別の第2のワイヤーの一端側をカバー部材に通す。
【0017】
溶接ステップでは、第1のワイヤーの一端部と第2のワイヤーの一端部とを交差させ、その交差部を溶接する。端部収容ステップでは、第1のワイヤー及び第2のワイヤーに沿ってカバー部材を移動させ、第1のワイヤーの一端部及び第2のワイヤーの一端部をカバー部材の内部に収容する。以下、本実施形態に係るワイヤーの接続方法について詳述する。
【0018】
まず、本実施形態で接続されるワイヤーを使用するワイヤーソーの例を説明する。
図1は、ワイヤーソーの構成例を模式的に示す図である。
図1に示すように、ワイヤーソー(マルチワイヤーソー)2は、ワイヤー4が巻回された繰り出しボビン6を支持する円柱状の繰り出しローラー8を備えている。
【0019】
繰り出しローラー8の上方には、巻き取りボビン10を支持する円柱状の巻き取りローラー12が配置されている。繰り出しボビン6から繰り出されたワイヤー4は、加工に使用された後、巻き取りボビン10に巻き取られる。ワイヤー4は、例えば、直径が50μm〜140μmのピアノ線等をベースに構成されており、被加工物11の加工に必要な導電性を備えている。
【0020】
繰り出しローラー8に隣接する位置には、繰り出しボビン6から繰り出されたワイヤー4を下流側に送る第1供給ローラー14、第2供給ローラー16、第3供給ローラー18及び第4供給ローラー20が配置されている。また、第2供給ローラー16と第3供給ローラー18との間には、ワイヤー4の張力を調整する第1調整ローラー22が設けられている。
【0021】
繰り出しボビン6から繰り出されたワイヤー4は、第1供給ローラー14、第2供給ローラー16、第1調整ローラー22、第3供給ローラー18、第4供給ローラー20の順に巻き掛けられて、下流側に送られる。
【0022】
第4供給ローラー20の下方には、第4供給ローラー20から送られたワイヤー4を案内する円柱状の第1ガイドローラー24が配置されている。第4供給ローラー20から送られたワイヤー4は、第1ガイドローラー24に巻き掛けられて下方に案内される。この第1ガイドローラー24は、例えば、ワイヤー4の移動に合わせて回転する従動ローラーである。
【0023】
第1ガイドローラー24の下方には、第1ガイドローラー24で案内されたワイヤー4をさらに案内する円柱状の第2ガイドローラー26が配置されている。第1ガイドローラー24で案内されたワイヤー4は、第2ガイドローラー26に巻き掛けられて水平方向に案内される。この第2ガイドローラー26は、例えば、モーター等の回転駆動源に連結されワイヤー4を移動させる駆動ローラーである。
【0024】
第2ガイドローラー26から水平方向に離れた位置には、第2ガイドローラー26で案内されたワイヤー4をさらに案内する円柱状の第3ガイドローラー28が配置されている。第2ガイドローラー26で案内されたワイヤー4は、第3ガイドローラー28に巻き掛けられて上方に案内される。この第3ガイドローラー28は、例えば、ワイヤー4の移動に合わせて回転する従動ローラーである。また、第3ガイドローラー28によって上方に案内されたワイヤー4の一部は、被加工物11を加工する加工部4aとなる。
【0025】
第3ガイドローラー28の上方には、第3ガイドローラー28で案内されたワイヤー4をさらに案内する円柱状の第4ガイドローラー30が配置されている。第3ガイドローラー28で案内されたワイヤー4は、第4ガイドローラー30に巻き掛けられて水平方向に案内される。この第4ガイドローラー30は、例えば、モーター等の回転駆動源に連結されワイヤー4を移動させる駆動ローラーである。
【0026】
第1ガイドローラー24と第4ガイドローラー30との間の位置には、第4ガイドローラー30で案内されたワイヤー4を巻き掛ける第5供給ローラー32が配置されている。第4ガイドローラー30で案内されたワイヤー4は、第5供給ローラー32に巻き掛けられて第1ガイドローラー24に送られる。
【0027】
第5供給ローラー32から第1ガイドローラー24に送られたワイヤー4は、第1ガイドローラー24に再び巻き掛けられて第2ガイドローラー26に案内される。上述のように、第1ガイドローラー24には、既にワイヤー4が巻き掛けられているので、ここでは、第1ガイドローラー24の別の位置にワイヤー4が巻き掛けられる。具体的には、既に巻き掛けられているワイヤー4に対して第1ガイドローラー24の回転軸方向に所定の間隔をあけてワイヤー4が再度巻き掛けられる。
【0028】
同様に、第1ガイドローラー24で案内されたワイヤー4は、第2ガイドローラー26に再び巻き掛けられて第3ガイドローラー28に案内される。また、第2ガイドローラー26で案内されたワイヤー4は、第3ガイドローラー28に再び巻き掛けられて第4ガイドローラー30に案内される。さらに、第3ガイドローラー28で案内されたワイヤー4は、第4ガイドローラー30に再び巻き掛けられ、第5供給ローラー32を経て第1ガイドローラー24に案内される。
【0029】
第2ガイドローラー26、第3ガイドローラー28、第4ガイドローラー30、及び第5供給ローラー32にも既にワイヤー4が巻き掛けられているので、ここでも、第2ガイドローラー26、第3ガイドローラー28、第4ガイドローラー30、又は第5供給ローラー32の回転軸方向に所定の間隔をあけてワイヤー4が再度巻き掛けられる。第5供給ローラー32で案内されたワイヤー4は、第1ガイドローラー24にさらに巻き掛けられて第2ガイドローラー26に案内される。
【0030】
このように、第1ガイドローラー24、第2ガイドローラー26、第3ガイドローラー28及び第4ガイドローラー30(以下、ガイドローラー群)には、回転軸方向に所定の間隔をあけてワイヤー4が複数回巻き掛けられる。これにより、第3ガイドローラー28と第4ガイドローラー30との間には複数の加工部4aが並列されて、被加工物11から複数のウェーハを一度に切り出すことができる。
【0031】
第3ガイドローラー28及び第4ガイドローラー30に巻き掛けられるワイヤー4の回転軸方向の間隔(すなわち、隣接する加工部4aの間隔)は、切り出されるウェーハの厚みに対応し、例えば、0.5mm〜1mmに設定される。ただし、ワイヤー4の回転軸方向の間隔(隣接する加工部4aの間隔)は、ウェーハの仕様等に応じて任意に変更できる。同様に、ワイヤー4を巻き掛ける回数は、被加工物11やウェーハの仕様等に応じて任意に設定される。
【0032】
巻き取りローラー12に隣接する位置には、加工に使用されたワイヤー4を送る第6供給ローラー34、第7供給ローラー36及び第8供給ローラー38が配置されている。また、第7供給ローラー36と第8供給ローラー38との間には、ワイヤー4の張力を調整する第2調整ローラー40が設けられている。
【0033】
上述のようにガイドローラー群に複数回巻き掛けられたワイヤー4は、第1ガイドローラー24で鉛直方向に案内される。第1ガイドローラー24で案内されたワイヤー4は、第6供給ローラー34、第7供給ローラー36、第2調整ローラー40、第8供給ローラー38の順に巻き掛けられて、巻き取りボビン10で巻き取られる。
【0034】
上述のように、第2ガイドローラー26及び第4ガイドローラー30には、モーター等の回転駆動源が連結されている。この回転駆動源で、第2ガイドローラー26及び第4ガイドローラー30を回転させれば、ワイヤー4は、所定の送り方向に送られる。なお、回転駆動源は、繰り出しローラー8、巻き取りローラー12、第1調整ローラー22、第2調整ローラー40等に連結されていても良い。
【0035】
加工部4aの側方には、被加工物11を固定する基台42が配置されている。基台42は、アーム状の本体44と、本体44の一端部に装着される被加工物固定部材46とを含む。
【0036】
被加工物11は、例えば、シリコンやSiC、ダイヤモンド(単結晶ダイヤモンド)等の材料で円柱状に形成されたインゴットであり、ワイヤー4(加工部4a)の送り方向に対して被加工物11の高さ方向(代表的には、結晶成長方向)が垂直になるように、導電性接着剤や半田等で被加工物固定部材46に接着される。ただし、被加工物11の種類に特段の制限はない。
【0037】
本体44の他端部には、基台42を水平方向に移動(加工送り)させる移動機構(移動手段)48が連結されている。この移動機構48によって、基台42とワイヤー4とを相対的に移動(加工送り)させることで、ワイヤー4の加工部4aを被加工物11に切り込ませることができる。
【0038】
本体44には、放電加工用の高周波パルス電圧を発生する高周波パルス電源ユニット50の第1端子が接続されている。一方、第4ガイドローラー30と第5供給ローラー32との間には、高周波パルス電源ユニット50の第2端子に接続された給電ローラー52が配置されている。
【0039】
この給電ローラー52は、第4ガイドローラー30と第5供給ローラー32との間でワイヤー4に接触している。すなわち、ワイヤー4には、高周波パルス電源ユニット50の第2端子が電気的に接続されている。
【0040】
高周波パルス電源ユニット50は、例えば、高周波パルス電圧の発生を制御し、パルス幅や繰り返し周波数を調整するパルス調整部50aと、電圧を調整する電圧調整部50bと、を含んでいる。この高周波パルス電源ユニット50により、放電加工に必要なパルス電圧を発生できる。
【0041】
第1端子に接続される基台42の本体44及び被加工物固定部材46は、例えば、カーボン、金属等の導電性材料で構成されており、被加工物11は、電性接着剤や半田等で被加工物固定部材46に接着される。また、給電ローラー52を介して第2端子に接続されるワイヤー4は、導電性を備えている。そのため、高周波パルス電源ユニット50で発生した高周波パルス電圧は、ワイヤー4と被加工物11との間に印加される。
【0042】
なお、本実施形態のワイヤーソー2では、給電ローラー52とワイヤー4との接触面積を増やすために、給電ローラー52に対してワイヤー4を押し当てることができる位置に第5供給ローラー32と給電ローラー52とを配置している。これにより、ワイヤー4に対して高周波パルス電圧を適切に印加できる。また、本実施形態のワイヤーソー2では、給電ローラー52にのみ高周波パルス電源ユニット50の第2端子を接続しているが、第5供給ローラー32に高周波パルス電源ユニット50の第2端子を接続しても良い。
【0043】
第2ガイドローラー26及び第3ガイドローラー28を囲む位置には、加工槽54が配置されている。加工槽54の内部には、純水等の加工液56が貯留されており、少なくとも、ワイヤー4の加工部4a及び被加工物11が加工液56に浸漬している。
【0044】
次に、上述したワイヤーソー2を用いる被加工物11の加工方法について説明する。
図2は、被加工物11が加工される様子を模式的に示す斜視図である。まず、高周波パルス電源ユニット50でワイヤー4と被加工物11との間に高周波パルス電圧を印加する。また、ガイドローラー群等を回転させて、
図2に示すように、ワイヤー4を所定の送り方向に送る。
【0045】
次に、被加工物11にワイヤー4(加工部4a)を切り込ませるように、移動機構48で被加工物11を水平方向に移動(加工送り)させる。加工液56中で絶縁状態にある被加工物11とワイヤー4の加工部4aとが十分に近づくと、絶縁が破壊されて被加工物11と加工部4aとの間で放電が生じる。
【0046】
その結果、放電に伴う熱で被加工物11の加工部4aに近接する部分が溶融される。また、加工液56の温度が急激に上昇して沸騰し、体積が膨張して被加工物11の溶融した部分を飛散(拡散)させる。このように、ワイヤー4と被加工物11との間に高周波パルス電圧を供給しながら被加工物11を水平方向に移動させることで、被加工物11に対する加工部4aの移動経路に応じた位置で被加工物11を加工できる。
【0047】
被加工物11の水平方向への移動は、ワイヤー4の加工部4aによって被加工物11が完全に切断されるまで続けられる。以上により、被加工物11から複数のウェーハを同時に切り出すことができる。
【0048】
次に、上述のワイヤー4を交換等する際に実施されるワイヤーの接続方法を説明する。本実施形態に係るワイヤーの接続方法では、まず、内部にワイヤー4を通すことができるカバー部材を準備するカバー部材準備ステップを実施する。
図3(A)は、カバー部材準備ステップ及び次のワイヤー挿通ステップを模式的に示す図である。
【0049】
カバー部材62は、例えば、2本のワイヤー4を通すことができるチューブ状(円筒状)に形成されている。カバー部材62の内径(直径)は、例えば、200μm〜240μmであり、カバー部材62の外径(直径)は、例えば、280μm〜300μmである。
【0050】
このカバー部材62は、例えば、ポリイミド等の比較的柔軟な樹脂材料で形成されている。そのため、内部に形成された円柱状の空間に対して2本のワイヤー4を容易に通すことができる。また、2本のワイヤー4と共にカバー部材62をガイドローラー群に巻き掛けることもできる。
【0051】
カバー部材準備ステップの後には、既にガイドローラー群に巻き掛けられているワイヤー4、又は、このワイヤー4に接続される別のワイヤー4をカバー部材62に通すワイヤー挿通ステップを実施する。
【0052】
図3(A)に示すように、本実施形態では、既にガイドローラー群に巻き掛けられている第1のワイヤー64の一端(下流端)64a側をカバー部材62に通す。なお、第1のワイヤー64は、少なくとも一端64aがカバー部材62から露出する位置まで挿入される。
【0053】
ワイヤー挿通ステップの後には、第1のワイヤー64の一端64a側の一部(一端部)と別のワイヤー4の一端側の一部(一端部)とを交差させ、その交差部を溶接する溶接ステップを実施する。
図3(B)及び
図3(C)は、溶接ステップを模式的に示す図である。
【0054】
本実施形態では、
図3(B)及び
図3(C)に示すスポット溶接機72を用いて第1のワイヤー64の一端64a側の一部と、第2のワイヤー66の一端(上流端)66a側の一部(一端部)とを溶接する。スポット溶接機72は、例えば、対向して配置された第1電極74及び第2電極76を備えている。第1電極74及び第2電極76で第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66を挟み込んで加圧し、大電流を集中させることで、第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66を点状に溶接できる。
【0055】
具体的には、
図3(B)に示すように、第1のワイヤー64の一端64a側の一部と第2のワイヤー66の一端66a側の一部とを交差させて、交差部68を形成する。次に、
図3(B)に示すように、上述したスポット溶接機72の第1電極74及び第2電極76で交差部68を挟み込んで溶接する。これにより、第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とを簡単かつ確実に接続できる。
【0056】
溶接ステップの後には、互いに接続された第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66に沿ってカバー部材62を移動させ、第1のワイヤー64の一端66a側の一部と第2のワイヤー66の一端66a側の一部とをカバー部材62の内部に収容する端部収容ステップを実施する。
図3(D)及び
図3(E)は、端部収容ステップを模式的に示す図である。
【0057】
本実施形態では、第1のワイヤー64の一端64a側をカバー部材62に通しているので、
図3(D)に示すように、カバー部材62を第2のワイヤー66側に移動させる。これにより、
図3(E)に示すように、第1のワイヤー64の一端66a側の一部及び第2のワイヤー66の一端66a側の一部(すなわち、交差部68)をカバー部材62の内部に収容できる。
【0058】
このように、接続後の第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66の形状をカバー部材62で整えることにより、例えば、第1のワイヤー64を巻き取りボビン10に巻き取らせて第2のワイヤー66をガイドローラー群に巻き掛ける際に、第2のワイヤー66の位置がずれ難くなる。
【0059】
図4(A)は、第1ガイドローラー24、第2ガイドローラー26、第3ガイドローラー28、及び第4ガイドローラー30となるローラーの構造を模式的に示す図である。
図4(A)に示すように、ローラー82の側面(周面)82aには、ワイヤー4を巻き掛ける位置を規定する溝(ガイド溝)82bが形成されている。この溝82bは、例えば、直径が300μm以下のワイヤー4等に適合する深さ、幅等の条件で形成されている。
【0060】
図4(B)は、
図4(A)の一部の領域82cを拡大した断面図である。なお、
図4(B)では、ローラー82に第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66が巻き掛けられた状態を示している。
【0061】
上述のように、本実施形態では、溝82bの適合範囲(例えば、直径が300μm以下)内の外径(直径)(例えば、280μm〜300μm)を持つカバー部材62が使用されている。また、カバー部材62は、ローラー82に巻き掛けることができる程度に柔軟である。
【0062】
そのため、第1のワイヤー64、第2のワイヤー66、及びこれらを収容するカバー部材62は、
図4(B)に示すように、溝82bに沿って巻き掛けられて、溝82bからずれてしまうことがない。これにより、ワイヤー4の交換作業を、迅速かつ確実に遂行できる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係るワイヤーの接続方法では、第1のワイヤー64の一端64a側の一部(一端部)と第2のワイヤー66の一端66a側の一部(一端部)とを交差させ、その交差部68を溶接することで第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とを接続するので、端面同士を接触させて溶接する従来の接続方法に比べて、第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とを簡単かつ確実に接続できる。
【0064】
また、本実施形態に係るワイヤーの接続方法では、第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とを接続した後に、チューブ状のカバー部材62の内部に第1のワイヤー64の一端64a側の一部及び第2のワイヤー66の一端66a側の一部を収容するので、接続後の第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66の形状が整えられ、第1のワイヤー64及び第2のワイヤー66が溝(ガイド溝)82bからずれることもない。
【0065】
さらに、本実施形態に係るワイヤーの接続方法では、第1のワイヤー64の一端64a側の一部と第2のワイヤー66の一端66a側の一部とを交差させ、その交差部68を溶接することで第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とを強固に接続できるので、例えば、上述のように、第5供給ローラー32と給電ローラー52との間でワイヤー4が大きく湾曲されるような場合にも、交差部68でのワイヤー4の切断を防いで適切に送ることができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態のワイヤー挿通ステップでは、既にガイドローラー群に巻き掛けられている第1のワイヤー64の一端64a側をカバー部材62に通しているが、第2のワイヤー66の一端66a側をカバー部材62に通しても良い。
【0067】
また、上記実施形態の溶接ステップでは、第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とが交差する交差部68の1点で溶接しているが、複数の点で溶接しても良い。また、第1のワイヤー64と第2のワイヤー66とを、スポット溶接以外の方法で溶接することもできる。
【0068】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。