特許第6558543号(P6558543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6558543液晶配向剤及びそれを用いた液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558543
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】液晶配向剤及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20190805BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-550979(P2015-550979)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2014081327
(87)【国際公開番号】WO2015080186
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-246181(P2013-246181)
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】新津 新平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真文
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−315141(JP,A)
【文献】 特開2001−354767(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103003741(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体を反応させて得られるポリイミド前駆体および該ポリイミド前駆体をイミド化したイミド化重合体から選ばれる少なくとも1種を含有する液晶配向剤であって、該ポリイミド前駆体が下記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

式(1)中、Yはジアミン成分由来の2価の有機基であり、Xはテトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、Xの少なくとも一部が脂環式構造または脂肪族構造を有する4価の有機基であり、およびAはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキニル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、Yの少なくとも一部は下記式(2)の構造である。
【化2】
【請求項2】
上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xの少なくとも一部が下記(X−9)、(X−26)、(X−27)から選ばれる構造である、請求項に記載の液晶配向剤。
【化3】
【請求項3】
上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xが脂環式構造または脂肪族構造を有する4価の有機基である割合が10〜100モル%である、請求項に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xが(X−9)、(X−26)、(X−27)のいずれかの構造である割合が10〜100モル%である、請求項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
上記式(1)で表される繰り返し単位において、Yが式(2)の構造である割合が10〜100モル%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶配向剤を基板に塗布、焼成して得られる液晶配向膜。
【請求項7】
請求項に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造において用いられる液晶配向剤、この液晶配向剤から得られる液晶配向膜およびこの液晶配向膜を使用した液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、軽量、薄型かつ低消費電力の表示デバイスとして知られている。近年では、急速にシェアを拡大してきた携帯電話やタブレット型端末向けの高精細液晶表示素子においても、高い表示品位が求められるほどの目覚ましい発展を遂げている。
【0003】
液晶表示素子は、電極を備えた透明な一対の基板により液晶層を挟持して構成される。そして、液晶表示素子では、液晶が基板間で所望の配向状態となるように有機材料からなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。すなわち、液晶配向膜は、液晶表示素子の構成部材であって、液晶を挟持する基板の液晶と接する面に形成され、その基板間で液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。更には、液晶配向膜によって、液晶のプレチルト角を制御することができる。主にポリイミドの構造を選択することでプレチルト角を高くする方法(特許文献1参照)および低くする方法(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−278724号公報
【特許文献2】特開平10−123532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スマートフォンや携帯電話などのモバイル用途向けに、液晶表示素子が用いられている。これら用途では、できるだけ多くの表示面を確保するため、液晶表示素子の基板間を接着させるために用いるシール剤の幅を、従来に比べて狭くする必要がある。さらに、上述した理由により、シール剤の位置を、シール剤との接着性が弱い液晶配向膜の端部に接した位置、あるいは液晶配向膜の上部にすることも求められている。このような場合、特に高温高湿条件下での使用では、シール剤と液晶配向膜との間から水が混入しやすくなり、液晶表示素子の額縁付近に表示ムラが発生してしまう。
【0006】
そこで本発明は、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することのできる液晶配向剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下に示す通りである。
【0008】
1.ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体を反応させて得られるポリイミド前駆体および該ポリイミド前駆体をイミド化したイミド化重合体から選ばれる少なくとも1種を含有する液晶配向剤であって、該ポリイミド前駆体が下記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする液晶配向剤。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、Yはジアミン成分由来の2価の有機基であり、Xはテトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、AおよびAはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルキニル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、Yの少なくとも一部は下記式(2)の構造である。
【0011】
【化2】
【0012】
2.上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xの少なくとも一部が脂環式構造または脂肪族構造を有する4価の有機基である、上記1に記載の液晶配向剤。
【0013】
3.上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xの少なくとも一部が下記(X−9)、(X−26)、(X−27)から選ばれる構造である、上記2に記載の液晶配向剤。
【0014】
【化3】
【0015】
4.上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xが脂環式構造または脂肪族構造を有する4価の有機基である割合が10〜100モル%である、上記2に記載の液晶配向剤。
【0016】
5.上記式(1)で表される繰り返し単位において、Xが(X−9)、(X−26)、(X−27)のいずれかの構造である割合が10〜100モル%である、上記3に記載の液晶配向剤。
【0017】
6.上記式(1)で表される繰り返し単位において、Yが上記式(2)の構造である割合が10〜100モル%である、上記1〜5のいずれか1つに記載の液晶配向剤。
【0018】
7.上記1〜6のいずれか1つに記載の液晶配向剤を基板に塗布、焼成して得られる液晶配向膜。
【0019】
8.上記7に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液晶配向剤を用いることで、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる液晶配向膜を得ることができる。そのため、これにより得られる液晶配向膜を有する液晶表示素子はシール剤と液晶配向膜との接着性を高めることで額縁付近の表示ムラが解決でき、大画面で高精細の液晶ディスプレイに好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤はジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体を反応させて得られるポリイミド前駆体および該ポリイミド前駆体をイミド化したイミド化重合体から選ばれる少なくとも1種を含有する液晶配向剤であって、該ポリイミド前駆体が下記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする。
【0022】
【化4】
【0023】
式(1)中、Yはジアミン成分由来の2価の有機基であり、Xはテトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、AおよびAはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルキニル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、Yの少なくとも一部は下記式(2)の構造である。
【0024】
【化5】
【0025】
本発明に用いるテトラカルボン酸誘導体には、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸、ジカルボン酸ジアルキルエステル、ジカルボン酸クロライドジアルキルエステルなどが挙げられるが、ジアミンとの反応が進むものであればこれらに限定させるものではない。
【0026】
式(1)においてXはテトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。Xの具体例をあえて示すならば、以下に示すX−1〜X−44が挙げられる。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
式(X−1)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはフェニル基を表す。
【0033】
式(1)において、Xは1種類であってもよく2種類以上が混在していてもよいが、Xに脂環式構造または脂肪族構造を有していることで接着性がより高くなるので、脂環式構造または脂肪族構造を有しているXが1種類以上含まれていることは好ましい。脂環式構造または脂肪族構造を有しているXの好ましい割合としては、X全体の10モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。
【0034】
脂環式構造または脂肪族構造を有するXの構造としては(X−1)から(X−16)、(X−23)から(X−27)、(X−41)から(X−43)が好ましく、特に(X−9),(X−26),(X−27)が強い接着力が得られるという点で好ましい。
【0035】
式(1)において、Rにおける上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などが挙げられる。
【0036】
式(1)において、A及びAはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜10のアルキニル基である。
【0037】
上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造を、C=C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリール基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基などが挙げられる。
【0038】
上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は置換基を有していてもよく、更には置換基によって環構造を形成してもよい。なお、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
【0039】
この置換基の例としてはハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0040】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0042】
置換基であるオルガノオキシ基としては、O−Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0043】
置換基であるオルガノチオ基としては、−S−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる。
【0044】
置換基であるオルガノシリル基としては、−Si−(R)で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0045】
置換基であるアシル基としては、−C(O)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0046】
置換基であるエステル基としては、−C(O)O−R、又は−OC(O)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0047】
置換基であるチオエステル基としては、−C(S)O−R、又は−OC(S)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0048】
置換基であるリン酸エステル基としては、−OP(O)−(OR)2で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0049】
置換基であるアミド基としては、−C(O)NH、又は、−C(O)NHR、−NHC(O)R、−C(O)N(R)、−NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0050】
置換基であるアリール基としては、前述したアリール基と同じものを挙げることができる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0051】
置換基であるアルキル基としては、前述したアルキル基と同じものを挙げることができる。このアルキル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0052】
置換基であるアルケニル基としては、前述したアルケニル基と同じものを挙げることができる。このアルケニル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0053】
置換基であるアルキニル基としては、前述したアルキニル基と同じものを挙げることができる。このアルキニル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0054】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、A及びAとしては、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0055】
式(1)において、Yの少なくとも一部は式(2)の構造である。Yが式(2)の構造である割合をあえて示すならば10モル%〜100モル%が挙げられる。また、Yの50モル%以上が式(2)の構造であると、接着力がより高くなるので好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0056】
上記のようにYは、式(2)のみに限定されるものではなく、その他の構造を含んでもよい。あえて、その他のYの構造の具体例を示すならば、下記のY−1〜Y−115が挙げられる。
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
【化25】
【0072】
【化26】
【0073】
【化27】
【0074】
【化1】
(式(Y−102)中、m、nはそれぞれ1から11の整数であり、m+nは2から12の整数であり、式(Y−107)中、hは1〜3の整数であり、式(Y−104)及び(Y−111)中、jは0から3の整数である。)
【0075】
これらのうち、Y−7、Y−21、Y−22、Y−23、Y−25、Y−26、Y−27、Y−43、Y−44、Y−45、Y−46、Y−48、Y−56、Y−64、Y−66、Y−67、Y−68、Y−91、Y−92,Y−93など直線性の高い構造は、液晶配向膜としたときに液晶の配向性を高めることができる。また、Y−69、Y−70、Y−71、Y−72、Y−73、Y−74、Y−75、Y−76、Y−77、Y−78、Y−79、Y−80、Y−81、Y−82、Y−83、Y−84、Y−85、Y−86、Y−87、Y−88、Y−89、Y−90などのように側鎖に長鎖アルキル基、芳香族環、脂肪族環、ステロイド骨格、又はこれらを組み合わせた構造は、液晶配向膜としたときに液晶のプレチルト角を高くすることができる。また、Y−111のような構造は、液晶配向膜としたときに良好なラビング耐性を得ることができる。
【0076】
本発明に用いるポリイミド前駆体は、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体との反応から得られるものであり、ポリアミック酸やポリアミック酸エステル等が挙げられる。
【0077】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により合成することができる。
【0078】
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成できる。
【0079】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0080】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0081】
<ポリアミック酸エステルの製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)〜(3)の方法で合成することができる。
【0082】
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
【0083】
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0084】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。
【0085】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0086】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
【0087】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0088】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0089】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0090】
(3)ジカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸を合成する場合
ポリアミック酸エステルは、ジカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
【0091】
具体的には、ジカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0092】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホナートなどが使用できる。縮合剤の添加量は、ジカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルであることが好ましい。
【0093】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルが好ましい。
【0094】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0〜1.0倍モルが好ましい。
【0095】
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の合成法が特に好ましい。
【0096】
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0097】
<イミド化重合体の製造方法>
本発明に用いられるイミド化重合体は、前記ポリイミド前駆体をイミド化することにより製造することができる。ポリイミド前駆体からイミド化重合体を製造する場合、ポリイミド前駆体溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0098】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリイミド前駆体を、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンやピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0099】
イミド化反応を行うときの温度は、−20℃〜140℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はポリイミド前駆体の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0100】
上記のようにして得られるイミド化重合体の溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたイミド化重合体の粉末を得ることができる。
【0101】
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0102】
<液晶配向剤>
本発明に用いられる液晶配向剤は、前記したポリイミド前駆体またはそのイミド化重合体(以下、特定構造の重合体とする)が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。特定構造の重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、8,000〜100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、4,000〜50,000である。
【0103】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下とすることが好ましい。
【0104】
本発明に用いられる液晶配向剤に含有される有機溶媒は、特定構造の重合体が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では重合体を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0105】
本発明に用いられる液晶配向剤は、特定構造の重合体を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。かかる溶媒は、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例を挙げるならば、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を併用してもよい。
【0106】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、本発明に記載の重合体以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を添加しても良い。
【0107】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のための電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0108】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。
【0109】
得られた液晶配向膜を配向処理する方法としては、ラビング法、光配向処理法などが挙げられる。
【0110】
光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によってはさらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100nm〜800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。
【0111】
[液晶表示素子]
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得、ラビング処理などにより配向処理を行った後、既知の方法により、液晶表示素子としたものである。
【0112】
液晶表示素子の液晶セルの製造方法は特に限定されないが、一例を挙げるならば、液晶配向膜が形成された1対の基板を液晶配向膜面を内側にして、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで設置した後、周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後封止を行う滴下法などが例示できる。上記のようにして本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜は、優れた特性を有しているので、VA、TN、STN、TFT、横電界型等の液晶表示素子、更には、強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子用の液晶配向膜として用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
本実施例及び比較例で使用した化合物の略号、及び特性評価の方法は、以下のとおりである。
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
CA−1:ピロメリット酸二無水物
CA−2:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CA−3:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
CA−4:2,4−ビス(メトキシカルボニル)シクロブタン−1,3−ジカルボン酸
CA−5:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物
CA−6:1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸二無水物
CA−7:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
DA−1:ビス(4−アミノフェノキシ)メタン
DA−2:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン
DA−3:1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン
【0115】
【化28】
【0116】
<ポリイミド前駆体およびイミド化重合体の分子量測定>
合成例におけるポリイミド前駆体およびイミド化重合体の分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)(昭和電工社製)、カラム(KD−803,KD−805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000、および30,000)(東ソー社製)およびポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000、および1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0117】
(イミド化重合体のイミド化率の測定)
合成例におけるイミド化重合体のイミド化率は次のようにして測定した。イミド化重合体粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW−ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
【0118】
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
【0119】
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0120】
[合成例1]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコにDA−1(6.9g,30mmol)入れ、NMP82.3gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−1を(5.9g,27mmol)添加し、更にNMP9.1gを加え、窒素雰囲気下、オイルバスを使用して50℃で12時間撹拌することで、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度をE型粘度計(東機産業社製)で確認したところ、68mPa・sであった。このポリアミック酸の分子量はMn=8,500、Mw=22,900であった。
【0121】
[合成例2]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの2000ml四つ口フラスコにDA−1(136.5g,593mmol)を入れ、NMP1532.8gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−2(166.1g,564.5mmol)を添加し、更にNMP170.3gを加え、窒素雰囲気下、オイルバスを使用して50℃で12時間撹拌することで、樹脂固形分濃度15質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は504mPa・sであった。このポリアミック酸の分子量はMn=12,000、Mw=30,300であった。
【0122】
[合成例3]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの300ml四つ口フラスコにDA−1(20.5g,89.0mmol)を入れ、NMP214.43gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−3(16.2g,82.8mmol)を添加し、更にNMP53.6gを加え、窒素雰囲気下、23℃で12時間撹拌することで、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は72mPa・sであった。
【0123】
[合成例4]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの200ml四つ口フラスコにCA−4(7.5g,29.1mmol)をNMP135.8g中で混合し、そこにトリエチルアミン(6.4g,63mmol)及びDA−1(6.9g,30mmol)を加えて撹拌して溶解させた。
【0124】
この溶液を撹拌しながら、ジフェニル(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホナート(24.2g,63mmol)を添加し、更にNMPを18.7g加え、室温で15時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリミック酸エステル溶液の温度25℃における粘度は110mPa・sであった。
【0125】
このポリミック酸エステル溶液をイソプロピルアルコール(1,196.7g)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をイソプロピルアルコールで洗浄した後に温度100℃で減圧乾燥し、ポリアミック酸エステルの粉末を得た。このポリアミック酸エステルの分子量はMn=9,900、Mw=21,800であった。
【0126】
[合成例5]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの2000ml四つ口フラスコにDA−1(97.92g,425.3mmol)を入れ、NMP924.8gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−5(83.41g,420.7mmol)を添加し、更にNMP102.8gを加え、窒素雰囲気下、オイルバスを使用して50℃で12時間撹拌することで、樹脂固形分濃度15質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は172mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=9,800、Mw=19,600であった。
【0127】
[合成例6]
合成例5で得られたポリアミック酸溶液(562.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(197.5g)およびピリジン(76.6g)を加え、50℃で5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(5772ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しイミド化重合体粉末を得た。このイミド化重合体のイミド化率は84%であり、数平均分子量は9,800、重量平均分子量は19,300であった。
【0128】
[合成例7]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコにDA−1(8.1g,35mmol)を入れ、NMP76.7gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−6(7.0g,32.9mmol)を添加し、更にNMP8.52gを加え、窒素雰囲気下、オイルバスを使用して40℃で12時間撹拌することで、樹脂固形分濃度15質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は192mPa・sであった。このポリアミック酸の分子量はMn=8,300、Mw=23,700であった。
【0129】
[合成例8]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコにDA−1(5.9g,26.0mmol)を入れ、NMP79.9gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−7(6.1g,24.4mmol)を添加し、更にNMP8.9gを加え、窒素雰囲気下、オイルバスを使用して50℃で12時間撹拌することで、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は72mPa・sであった。
【0130】
[合成例9]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの1000ml四つ口フラスコにDA−2(51.7g,200mmol)を入れ、NMP672.2gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA−1(41.7g,191.2mmol)を添加し、更にNMP168.1gを加え、窒素雰囲気下、オイルバスを使用して50℃で24時間撹拌することで、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は135mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=12,600、Mw=30,900であった。
【0131】
[合成例10]
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの100ml四つ口フラスコにDA−3(6.9g,24mmol)を入れ、NMP80.0gを加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を攪拌しながらCA−1(5.0g,23mmol)を添加し、固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、オイルバスを使用して50℃で一晩撹拌してポリアミック酸の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は525mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=14,800、Mw=32,500であった。
【0132】
[実施例1]
合成例1の合成手法で得られたポリアミック酸溶液50.0gにNMPを19.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(A−1)を得た。この液晶配向剤(A−1)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0133】
[実施例2]
合成例2の合成手法で得られたポリアミック酸溶40.0gにNMPを29.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(A−2)を得た。この液晶配向剤(A−2)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0134】
[実施例3]
合成例3の合成手法で得られたポリアミック酸溶液50.0gにNMPを19.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(A−3)を得た。この液晶配向剤(A−3)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0135】
[実施例4]
合成例4の合成手法で得られたポリアミック酸エステル粉末(10.0g)に、NMP(113.3g)を加え、23℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を10.0g、BCS(33.3g)を加え、23℃にて2時間攪拌して液晶配向剤(A−4)を得た。この液晶配向剤(A−4)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0136】
[実施例5]
合成例5の合成手法で得られたポリアミック酸溶液40.0gにNMPを29.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(A−5)を得た。この液晶配向剤(A−5)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0137】
[実施例6]
合成例6の合成手法で得られたイミド化重合体粉末(10.0g)に、NMP(113.3g)を加え、23℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を10.0g、BCS(33.3g)を加え、23℃にて2時間攪拌して液晶配向剤(A−6)を得た。この液晶配向剤(A−6)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0138】
[実施例7]
合成例7の合成手法で得られたポリアミック酸溶液40.0gにNMPを29.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(A−7)を得た。この液晶配向剤(A−7)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0139】
[実施例8]
合成例8の合成手法で得られたポリアミック酸溶液50.0gにNMPを19.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(A−8)を得た。この液晶配向剤(A−8)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0140】
[比較例1]
合成例9の合成手法で得られたポリアミック酸溶液50.0gにNMPを19.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(B−1)を得た。この液晶配向剤(B−1)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0141】
[比較例2]
合成例10の合成手法で得られたポリアミック酸溶液50.0gにNMPを19.0g、3−アミノプロピルトリエトキシシランが1.0重量%入ったNMP溶液を6.0g、及びBCS25.0g加え、濃度が6質量%の液晶配向剤(B−2)を得た。この液晶配向剤(B−2)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0142】
<接着性評価サンプルの作製>
得られた液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、80℃のホットプレート上で2分間乾燥後、230℃で20分間焼成して膜厚100nmの塗膜を得た。このようにして得られた2枚の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜面上に4μmビーズスペーサーを散布した後、シール剤(協立化学製XN−1500T)を滴下した。次いで、他方の基板の液晶配向膜面を内側にし、基板の重なり幅が1cmになるように、貼り合わせを行った。その際、貼り合わせ後のシール剤の直径が約3mmとなるようにシール剤滴下量を調整した。貼り合わせた2枚の基板をクリップにて固定した後、120℃で1時間熱硬化させて、接着性評価用のサンプルを作製した。
【0143】
<接着力の測定>
作製したサンプルを島津製作所製の卓上形精密万能試験機AGS−X 500Nにて、上下基板の端の部分を固定した後、基板中央部の上部から押し込みを行い、剥離する際の圧力(N)を測定した。そして、計測したシール剤の直径より見積もった面積(mm)で圧力(N)を規格化した値を用いて接着力の評価を実施した。
【0144】
液晶配向剤A−1〜A−8、B−1〜B−2に関して実施した接着力の結果を表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
<液晶セルの作製>
得られた液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、80℃のホットプレート上で2分間乾燥後、230℃で20分間焼成して膜厚100nmの塗膜を得た。このイミド化重合体膜をレーヨン布でラビング(ロール径120mm、回転数1000rpm、移動速度20mm/sec、押し込み量0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射を行い、80℃で10分間乾燥した。このような液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に4μmのスペーサーを設置した後、2枚の基板のラビング方向が逆平行になるように組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし、セルギャップが4μmの空セルを作製した。このセルに液晶(MLC−2041、メルク社製)を常温で真空注入し、注入口を封止してアンチパラレル液晶セルとした。
【0147】
<液晶配向性>
この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡にて観察し、配向欠陥がないものを「良好」、配向欠陥があるものは「不良」とした。
【0148】
<プレチルト角の測定>
この液晶セルを110℃で30分間加熱した後、プレチルト角の測定を行った。測定にはオプトメトリクス社製 Axo Scan ミュラーマトリクスポーラリメーターを用いた。
【0149】
液晶配向剤A−1〜A−8、B−1〜B−2に関して実施したプレチルト角と配向性の結果を表2に示す。
【0150】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の液晶配向剤は、多くの表示面を確保することが出来る狭額縁液晶表示素子において、シール剤と液晶配向膜との接着性を高めることで額縁付近の表示ムラが解決でき、産業上有用である。