特許第6558623号(P6558623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558623
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/14 20060101AFI20190805BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20190805BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20190805BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20190805BHJP
   B29K 105/14 20060101ALN20190805BHJP
【FI】
   B29C70/14
   B29C43/18
   C08J5/00CEZ
   C08J5/00CFG
   B29K101:12
   B29K105:14
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-19443(P2015-19443)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-141074(P2016-141074A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年11月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】島本 太介
(72)【発明者】
【氏名】冨永 雄一
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】堀田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】廣田 修平
(72)【発明者】
【氏名】秋本 絵津子
(72)【発明者】
【氏名】福井 準
(72)【発明者】
【氏名】福井 武久
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−221114(JP,A)
【文献】 特開2014−004797(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103658(WO,A1)
【文献】 特開2009−197178(JP,A)
【文献】 特表2007−530326(JP,A)
【文献】 特開平11−207737(JP,A)
【文献】 特開2015−027772(JP,A)
【文献】 特開2015−027773(JP,A)
【文献】 特開2016−098271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/88
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04− 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ弾性率が15GPa以上30GPa以下であり、曲げ強度が250MPa以上340MPa以下であり、比剛性が1.0Mm以上2.3Mm以下である成形体を製造する方法であって、
不連続炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む組成物を、前記不連続炭素繊維の押し出し方向に対する角度が0°以上20°以下の範囲に配向している割合が80%以上になるように、加圧押出機を用い押出成形してプリプレグを作製する工程と、
該プリプレグを加熱プレス成形して成形体を作製する工程を有し、
前記不連続炭素繊維は、数平均繊維径が5μm以上10μm以下であり、
前記組成物は、前記不連続炭素繊維の含有量が16体積%以上40体積%以下であことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む組成物を溶融混練する工程をさらに有し、
該溶融混練された組成物を前記押出成形することを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
形体を有する物品を製造する方法であって、
請求項1又は2に記載の成形体の製造方法を用いて、成形体を製造する工程を有することを特徴とする物品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法及び成形体を有する物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不連続炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含むプリプレグは、連続炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含むプリプレグと比較して、柔軟性に優れるため、皺及び歪みの発生を抑制すると共に、凹部又は複雑な形状を有する成形体を容易に製造することができる。
【0003】
しかしながら、不連続炭素繊維を十分に配向させないと、機械的特性が不十分になるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、平均繊維長10mm以上の不連続な炭素繊維をシート状基材に形成した後、シート状基材にマトリックス樹脂を含浸する炭素繊維強化プラスチックの製造方法が開示されている。このとき、シート状基材の形成を、カーディングにより、基材に含まれる炭素繊維の配向度の平均値が2〜10の範囲内になるように行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/165076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、曲げ特性が不十分であるという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、曲げ特性に優れる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、曲げ弾性率が15GPa以上30GPa以下であり、曲げ強度が250MPa以上340MPa以下であり、比剛性が1.0Mm以上2.3Mm以下である成形体を製造する方法であって、不連続炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む組成物を、前記不連続炭素繊維の押し出し方向に対する角度が0°以上20°以下の範囲に配向している割合が80%以上になるように、加圧押出機を用い押出成形してプリプレグを作製する工程と、該プリプレグを加熱プレス成形して成形体を作製する工程を有し、前記不連続炭素繊維は、数平均繊維径が5μm以上10μm以下であり、前記組成物は、前記不連続炭素繊維の含有量が16体積%以上40体積%以下であ

【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、曲げ特性に優れる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
成形体の製造方法は、不連続炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む組成物を押出成形してプリプレグを作製する工程と、プリプレグを加熱プレス成形して成形体を作製する工程を有する。
【0012】
不連続炭素繊維は、ギロチンカッター等を用いて、連続炭素繊維を切断することにより製造することができる。
【0013】
炭素繊維は、バージン繊維及びリユース・リサイクル繊維のいずれであってもよく、両者を併用してもよい。
【0014】
炭素繊維は、表面がサイジング剤でコーティングされている及び表面がサイジング剤でコーティングされていない繊維のいずれであってもよく、両者を併用してもよい。
【0015】
サイジング剤としては、熱可塑性樹脂と炭素繊維の密着性を向上させることが可能であれば、特に限定されない。
【0016】
不連続炭素繊維の数平均繊維径は、5〜15μmであり、5〜10μmであることが好ましい。不連続炭素繊維の数平均繊維径が5μm未満であると、不連続炭素繊維が折れやすくなる。一方、不連続炭素繊維の数平均繊維径が10μmを超えると、不連続炭素繊維の柔軟性が低下し、組成物及びプリプレグの成形性が低下する。
【0017】
組成物中の不連続炭素繊維の含有量は、1〜50体積%であり、16〜40体積%であることが好ましい。組成物中の不連続炭素繊維の含有量が1体積%以下であると、成形体の曲げ特性が低下する。一方、組成物中の不連続炭素繊維の含有量が50体積%を超えると、組成物及びプリプレグの成形性が低下する。
【0018】
プリプレグに含まれる不連続炭素繊維の押し出し方向に対する角度が0〜20°の範囲に配向している割合は、70%以上であり、80%以上であることが好ましい。プリプレグに含まれる不連続炭素繊維の押し出し方向に対する角度が0〜20°の範囲に配向している割合が70%未満であると、成形体の曲げ特性が低下する。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ABS樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0020】
組成物は、炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含む組成物を溶融混練することにより、作製されていてもよい。
【0021】
組成物を作製する際に用いる炭素繊維は、不連続炭素繊維及び連続炭素繊維のいずれであってもよい。
【0022】
組成物を押出成形する際に用いる押出成形機としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂を軟化させるための加熱機構を備えた加圧押出機等が挙げられる。

【0023】
プリプレグを加熱プレス成形する方法としては、特に限定されないが、プリプレグを所定の方向で金型に積層した後、加熱プレス機を用いて成形する方法等が挙げられる。
【0024】
プリプレグを金型に積層する際は、手動であってもよいし、機械を用いてもよい。
【0025】
なお、プリプレグを金型に積層する前に、延伸してもよい。これにより、成形体中の空隙の残存量を低減することができる。
【0026】
次に、プリプレグを所定の方向で積層する方法について説明する。
【0027】
例えば、n+1層目のプリプレグの押し出し方向が、n層目のプリプレグの押し出し方向に対して、平行になるように、プリプレグを積層すると、プリプレグの押し出し方向に対して、垂直な力に対する曲げ特性を向上させることができる。
【0028】
また、n+1層目のプリプレグの押し出し方向と、n層目のプリプレグの押し出し方向の間の角度が45°となるように、プリプレグを積層すると、n層目のプリプレグの押し出し方向に対して、垂直な力に対する曲げ特性を向上させることができる。
【0029】
さらに、n+1層目のプリプレグの押し出し方向が、n層目のプリプレグの押し出し方向に対して、垂直になるように、プリプレグを積層すると、n層目のプリプレグの押し出し方向に対して、垂直な力に対する曲げ特性を向上させることができる。
【0030】
なお、プリプレグの積層数及びn+1層目のプリプレグの押し出し方向と、n層目のプリプレグの押し出し方向の間の角度は、特に限定されない。
【0031】
プリプレグを加熱プレス成形する温度は、通常、180〜350℃である。
【0032】
プリプレグを加熱プレス成形する圧力は、通常、0.5〜4MPaである。
【0033】
成形体に含まれる不連続炭素繊維の数平均繊維長は、0.1〜5mmであり、0.1〜4mmであることが好ましい。成形体に含まれる不連続炭素繊維の数平均繊維長が0.1mm未満であると、プリプレグに含まれる不連続炭素繊維の自由度が大きくなり、プリプレグを加熱プレス成形する際に、不連続炭素繊維の配向が乱れ、成形体の曲げ特性が低下する。一方、成形体に含まれる不連続炭素繊維の数平均繊維長が5mmを超えると、不連続炭素繊維が絡まりやすくなり、組成物の成形性が低下する。
【0034】
成形体の曲げ弾性率は、通常、15〜30GPaであり、18〜30GPaであることが好ましい。
【0035】
成形体の曲げ強度は、通常、250〜340MPaであり、280〜340MPaであることが好ましい。
【0036】
成形体の比剛性は、通常、1.0〜2.3Mmであり、1.2〜2.3Mmであることが好ましい。
【0037】
成形体に含まれる不連続炭素繊維のプリプレグの押し出し方向に対する角度が0〜20°の範囲に配向している割合は、通常、70%以上であり、80%以上であることが好ましい。成形体に含まれる不連続炭素繊維のプリプレグの押し出し方向に対する角度が0〜20°の範囲に配向している割合が70%以上であることにより、成形体の曲げ特性をさらに向上させることができる。
【0038】
成形体の厚さは、通常、1〜10mmである。
【0039】
なお、成形体の形状は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0040】
また、成形体に対して、高次の成形を繰り返してもよい。
【0041】
さらに、補強材と共に、プリプレグを加熱プレス成形してもよい。
【0042】
成形体は、自動車等の輸送機器、電子モバイル機器、医療機器、介助用品等に適用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されない。
【0044】
(実施例1)
二軸混練機を用いて、20体積%のチョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)及び80体積%のポリアミド6としてのCM1017(東レ社製)からなる組成物を溶融混練し、混練物を得た。このとき、混練温度を240℃、スクリューの回転数15rpmとした。
【0045】
加圧押出機を用いて、混練物を250〜280℃に加熱し、押出し比を28として、押出成形し、プリプレグを得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が94%であった。
【0046】
縦70mm、横90mmの金型に、プリプレグの押し出し方向が金型の横方向になるように、プリプレグを2層積層した後、加熱プレス機を用いて、0.6MPa、235℃で20分間成形し、厚さが4mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の配向度が87%、曲げ弾性率が21GPa、曲げ強度が286MPa、比剛性が1.5Mmであった。
【0047】
(比較例1)
二軸混練機を用いて、20体積%のチョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)及び80体積%のポリアミド6としてのCM1017(東レ社製)からなる組成物を溶融混練し、混練物を得た。このとき、混練温度を240℃、スクリューの回転数15rpmとした。
【0048】
縦70mm、横90mmの金型に混練物を充填した後、加熱プレス機を用いて、0.6MPa、235℃で20分間成形し、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が0.8mm、不連続炭素繊維の配向度が38%、曲げ弾性率が11GPa、曲げ強度が154MPa、比剛性が0.9Mmであった。
【0049】
(比較例2)
一軸混練機を用いて、ポリアミド6としてのCM1017(東レ社製)を2回溶融混練し、混練物を得た。このとき、混練温度を240℃、スクリューの回転数25rpmとした。
【0050】
縦70mm、横90mmの金型に混練物を充填した後、加熱プレス機を用いて、1.2MPa、235℃で20分間成形し、成形体を得た。成形体は、曲げ弾性率が4GPa、曲げ強度が123MPa、比剛性が0.3Mmであった。
【0051】
(実施例2)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が3mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−003(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が85%であった。成形体は、不連続炭素繊維の配向度が80%、曲げ弾性率が18GPa、曲げ強度が291MPa、比剛性が1.4Mmであった。
【0052】
(比較例3)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が3mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−003(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.1mm、不連続炭素繊維の配向度が33%、曲げ弾性率が11GPa、曲げ強度が113MPa、比剛性が0.9Mmであった。
【0053】
(実施例3)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−006(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が91%であった。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.9mm、不連続炭素繊維の配向度が86%、曲げ弾性率が23GPa、曲げ強度が351MPa、比剛性が1.8Mmであった。
【0054】
(比較例4)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−006(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が2.1mm、不連続炭素繊維の配向度が35%、曲げ弾性率が12GPa、曲げ強度が120MPa、比剛性が0.8Mmであった。
【0055】
(実施例4)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−006(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が91%であった。成形体は、不連続炭素繊維の配向度が83%、曲げ弾性率が26GPa、曲げ強度が336MPa、比剛性が2.0Mmであった。
【0056】
(比較例5)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−006(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が2.3mm、不連続炭素繊維の配向度が27%、曲げ弾性率が10GPa、曲げ強度が112MPa、比剛性が0.9Mmであった。
【0057】
(実施例5)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が12mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−012(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が93%であった。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が3.4mm、不連続炭素繊維の配向度が89%、曲げ弾性率が23GPa、曲げ強度が314MPa、比剛性が1.8Mmであった。
【0058】
(比較例6)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が12mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−012(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が5.5mm、不連続炭素繊維の配向度が49%、曲げ弾性率が10GPa、曲げ強度が101MPa、比剛性が0.8Mmであった。
【0059】
(実施例6)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が48mm、数平均繊維径が9μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維CS−2516(Formosa Plastic社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが2mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が91%であった。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.2mm、不連続炭素繊維の配向度が80%、曲げ弾性率が24GPa、曲げ強度が297MPa、比剛性が1.8Mmであった。
【0060】
(比較例7)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が48mm、数平均繊維径が9μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維CS−2516(Formosa Plastic社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.9mm、不連続炭素繊維の配向度が31%、曲げ弾性率が13GPa、曲げ強度が156MPa、比剛性が1.0Mmであった。
【0061】
表1に、成形体の製造条件を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、成形体中の不連続炭素繊維の数平均繊維長及び配向度、成形体の曲げ特性を評価した。
【0064】
<チョップド炭素繊維の数平均繊維長>
チョップド炭素繊維をスライドガラスの上に載せた。次に、チョップド炭素繊維が切れないようピンセットで解した後、チョップド炭素繊維をスケールと共に写真撮影し、チョップド炭素繊維の長さを手動で計測し、数平均繊維長を求めた。
【0065】
<チョップド炭素繊維の数平均繊維径>
チョップド炭素繊維の断面を走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、手動で繊維径を計測し、数平均繊維径を求めた。
【0066】
<成形体に含まれる不連続炭素繊維の数平均繊維長>
成形体をギ酸に浸漬し、ポリアミド6を溶解させた後、濾過しながら残存したポリアミド6をギ酸で洗い流した。次に、蒸留水でギ酸を洗い流すことで不連続炭素繊維を抽出した。抽出した不連続炭素繊維をスライドガラスの上に載せた以外は、チョップド炭素繊維と同様にして、不連続炭素繊維の数平均繊維長を求めた。
【0067】
<プリプレグ中の不連続炭素繊維の配向度>
光学顕微鏡を用いて、倍率を15倍として、プリプレグの表面を二次元撮影した後、250個の不連続炭素繊維の方向を、押し出し方向を0°として、−90°〜+90°の角度で測定した。次に、−90°〜0°の角度を0°〜90°に畳み込み、10°間隔とした0〜90°の範囲のヒストグラムを作成した後、0〜20°の範囲に配向している不連続炭素繊維の割合を算出し、不連続炭素繊維の配向度とした。
【0068】
<成形体中の不連続炭素繊維の配向度>
光学顕微鏡を用いて、倍率を15倍として、成形体の表面を二次元撮影した後、片面当たり125個、合計250個の不連続炭素繊維の方向を、プリプレグの押し出し方向を0°として、−90°〜+90°の角度で測定した。次に、−90°〜0°の角度を0°〜90°に畳み込み、10°間隔とした0°〜90°範囲のヒストグラムを作成した後、0〜20°の範囲に配向している不連続炭素繊維の割合を算出し、不連続炭素繊維の配向度とした。
【0069】
<成形体の曲げ特性>
JIS K 7171に準拠し、圧子に対して、成形体の押し出し方向が垂直になるように、成形体を設置した後、三点曲げ試験を実施し、曲げ弾性率、曲げ強度及び比剛性を測定した。
【0070】
表2に、成形体中の不連続炭素繊維の数平均繊維長及び配向度、成形体の曲げ特性の評価結果を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から、実施例1〜6の成形体は、曲げ特性に優れることがわかる。
【0073】
これに対して、比較例1、3〜7の成形体は、プリプレグを作製する代わりに、混練物を作製したため、不連続炭素繊維の配向度が低下し、曲げ特性が低下する。
【0074】
比較例2の成形体は、不連続炭素繊維を含まないため、曲げ特性が低下する。