【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されない。
【0044】
(実施例1)
二軸混練機を用いて、20体積%のチョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)及び80体積%のポリアミド6としてのCM1017(東レ社製)からなる組成物を溶融混練し、混練物を得た。このとき、混練温度を240℃、スクリューの回転数15rpmとした。
【0045】
加圧押出機を用いて、混練物を250〜280℃に加熱し、押出し比を28として、押出成形し、プリプレグを得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が94%であった。
【0046】
縦70mm、横90mmの金型に、プリプレグの押し出し方向が金型の横方向になるように、プリプレグを2層積層した後、加熱プレス機を用いて、0.6MPa、235℃で20分間成形し、厚さが4mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の配向度が87%、曲げ弾性率が21GPa、曲げ強度が286MPa、比剛性が1.5Mmであった。
【0047】
(比較例1)
二軸混練機を用いて、20体積%のチョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)及び80体積%のポリアミド6としてのCM1017(東レ社製)からなる組成物を溶融混練し、混練物を得た。このとき、混練温度を240℃、スクリューの回転数15rpmとした。
【0048】
縦70mm、横90mmの金型に混練物を充填した後、加熱プレス機を用いて、0.6MPa、235℃で20分間成形し、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が0.8mm、不連続炭素繊維の配向度が38%、曲げ弾性率が11GPa、曲げ強度が154MPa、比剛性が0.9Mmであった。
【0049】
(比較例2)
一軸混練機を用いて、ポリアミド6としてのCM1017(東レ社製)を2回溶融混練し、混練物を得た。このとき、混練温度を240℃、スクリューの回転数25rpmとした。
【0050】
縦70mm、横90mmの金型に混練物を充填した後、加熱プレス機を用いて、1.2MPa、235℃で20分間成形し、成形体を得た。成形体は、曲げ弾性率が4GPa、曲げ強度が123MPa、比剛性が0.3Mmであった。
【0051】
(実施例2)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が3mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−003(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が85%であった。成形体は、不連続炭素繊維の配向度が80%、曲げ弾性率が18GPa、曲げ強度が291MPa、比剛性が1.4Mmであった。
【0052】
(比較例3)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が3mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−003(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.1mm、不連続炭素繊維の配向度が33%、曲げ弾性率が11GPa、曲げ強度が113MPa、比剛性が0.9Mmであった。
【0053】
(実施例3)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−006(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が91%であった。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.9mm、不連続炭素繊維の配向度が86%、曲げ弾性率が23GPa、曲げ強度が351MPa、比剛性が1.8Mmであった。
【0054】
(比較例4)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−006(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が2.1mm、不連続炭素繊維の配向度が35%、曲げ弾性率が12GPa、曲げ強度が120MPa、比剛性が0.8Mmであった。
【0055】
(実施例4)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−006(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が91%であった。成形体は、不連続炭素繊維の配向度が83%、曲げ弾性率が26GPa、曲げ強度が336MPa、比剛性が2.0Mmであった。
【0056】
(比較例5)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が6mm、数平均繊維径が7μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維T008−006(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が2.3mm、不連続炭素繊維の配向度が27%、曲げ弾性率が10GPa、曲げ強度が112MPa、比剛性が0.9Mmであった。
【0057】
(実施例5)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が12mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−012(東レ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が93%であった。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が3.4mm、不連続炭素繊維の配向度が89%、曲げ弾性率が23GPa、曲げ強度が314MPa、比剛性が1.8Mmであった。
【0058】
(比較例6)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が12mm、数平均繊維径が7μmのチョップド炭素繊維T010−012(東レ社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが4mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が5.5mm、不連続炭素繊維の配向度が49%、曲げ弾性率が10GPa、曲げ強度が101MPa、比剛性が0.8Mmであった。
【0059】
(実施例6)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が48mm、数平均繊維径が9μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維CS−2516(Formosa Plastic社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さが2mmの成形体を得た。プリプレグは、不連続炭素繊維の配向度が91%であった。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.2mm、不連続炭素繊維の配向度が80%、曲げ弾性率が24GPa、曲げ強度が297MPa、比剛性が1.8Mmであった。
【0060】
(比較例7)
チョップド炭素繊維T010−003(東レ社製)の代わりに、数平均繊維長が48mm、数平均繊維径が9μmの表面がサイジング剤でコーティングされているチョップド炭素繊維CS−2516(Formosa Plastic社製)を用いた以外は、比較例1と同様にして、厚さが3mmの成形体を得た。成形体は、不連続炭素繊維の数平均繊維長が1.9mm、不連続炭素繊維の配向度が31%、曲げ弾性率が13GPa、曲げ強度が156MPa、比剛性が1.0Mmであった。
【0061】
表1に、成形体の製造条件を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、成形体中の不連続炭素繊維の数平均繊維長及び配向度、成形体の曲げ特性を評価した。
【0064】
<チョップド炭素繊維の数平均繊維長>
チョップド炭素繊維をスライドガラスの上に載せた。次に、チョップド炭素繊維が切れないようピンセットで解した後、チョップド炭素繊維をスケールと共に写真撮影し、チョップド炭素繊維の長さを手動で計測し、数平均繊維長を求めた。
【0065】
<チョップド炭素繊維の数平均繊維径>
チョップド炭素繊維の断面を走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、手動で繊維径を計測し、数平均繊維径を求めた。
【0066】
<成形体に含まれる不連続炭素繊維の数平均繊維長>
成形体をギ酸に浸漬し、ポリアミド6を溶解させた後、濾過しながら残存したポリアミド6をギ酸で洗い流した。次に、蒸留水でギ酸を洗い流すことで不連続炭素繊維を抽出した。抽出した不連続炭素繊維をスライドガラスの上に載せた以外は、チョップド炭素繊維と同様にして、不連続炭素繊維の数平均繊維長を求めた。
【0067】
<プリプレグ中の不連続炭素繊維の配向度>
光学顕微鏡を用いて、倍率を15倍として、プリプレグの表面を二次元撮影した後、250個の不連続炭素繊維の方向を、押し出し方向を0°として、−90°〜+90°の角度で測定した。次に、−90°〜0°の角度を0°〜90°に畳み込み、10°間隔とした0〜90°の範囲のヒストグラムを作成した後、0〜20°の範囲に配向している不連続炭素繊維の割合を算出し、不連続炭素繊維の配向度とした。
【0068】
<成形体中の不連続炭素繊維の配向度>
光学顕微鏡を用いて、倍率を15倍として、成形体の表面を二次元撮影した後、片面当たり125個、合計250個の不連続炭素繊維の方向を、プリプレグの押し出し方向を0°として、−90°〜+90°の角度で測定した。次に、−90°〜0°の角度を0°〜90°に畳み込み、10°間隔とした0°〜90°範囲のヒストグラムを作成した後、0〜20°の範囲に配向している不連続炭素繊維の割合を算出し、不連続炭素繊維の配向度とした。
【0069】
<成形体の曲げ特性>
JIS K 7171に準拠し、圧子に対して、成形体の押し出し方向が垂直になるように、成形体を設置した後、三点曲げ試験を実施し、曲げ弾性率、曲げ強度及び比剛性を測定した。
【0070】
表2に、成形体中の不連続炭素繊維の数平均繊維長及び配向度、成形体の曲げ特性の評価結果を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から、実施例1〜6の成形体は、曲げ特性に優れることがわかる。
【0073】
これに対して、比較例1、3〜7の成形体は、プリプレグを作製する代わりに、混練物を作製したため、不連続炭素繊維の配向度が低下し、曲げ特性が低下する。
【0074】
比較例2の成形体は、不連続炭素繊維を含まないため、曲げ特性が低下する。