(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合材は、ポリカルボシラン、ポリカルボシラザン、アリルハイドライドポリカルボシラン、ポリチタノカルボシラン、ポリシルメチレン、ポリシラザン、ポリヒドロポリシラザン、およびポリオルガノシラザンの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
前記セラミックス部材は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびアルミノシリケートからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
前記セラミックス部材は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびアルミノシリケートからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項5に記載の接合体。
前記セラミックス部材は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびアルミノシリケートからなる群から選定された、少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0018】
前述のように、アルミニウム部材の表面には、セラミックス部材との接合を妨害する酸化膜(アルミナ層)が存在するため、セラミックス部材とアルミニウム部材を適正に接合させることは難しい。また、これまでに提案されているセラミックス部材とアルミニウム部材の接合方法は、簡便な方法であるとは言い難い。また、従来の方法では、仮にセラミックス部材とアルミニウム部材を接合することができたとしても、接合部分に塩化物やフッ化物のような不純物が残留してしまう可能性が高い。このため、製品の品質、例えば接合強度の面で、問題が生じ得る。また、このような残留化合物を洗浄除去しようとすると、洗浄によるコストの増大や環境上の問題が生じ得る。
【0019】
本願発明者らは、このような背景から、より簡便な方法で、セラミックス部材とアルミニウム部材を適正に接合させる技術について、鋭意研究開発を推進してきた。その結果、本願発明らは、セラミックス部材とアルミニウム部材との間に、特定の種類の接合材を設置することにより、セラミックス部材とアルミニウム部材を適正に接合させることができることを見出し、本願発明に至った。
【0020】
すなわち、本発明では、セラミックス部材とアルミニウム部材とを有する接合体の製造方法であって、
(a)アルミニウムおよび/またはケイ素を含有するセラミックス部材、ならびにアルミニウム部材を準備するステップと、
(b)前記セラミックス部材および前記アルミニウム部材の少なくとも一方に、接合材を設置するステップであって、前記接合材は、有機ケイ素系ポリマーを含み、該有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi−C−Si基およびSi−N−Si基の少なくとも一つを有する、ステップと、
(c)前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材を、前記接合材を介在させた状態で積層し、組立体を構成するステップと、
(d)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、500℃以上の温度で加熱するステップと、
を有する製造方法が提供される。
【0021】
本発明では、セラミックス部材とアルミニウム部材との間に、有機ケイ素系ポリマーを含む接合材が配置される。
【0022】
この接合材に含まれる有機ケイ素系ポリマーは、炭素原子を含む。この炭素原子は、高温状態において、アルミニウム部材の表面に形成されている酸化膜を還元したり、酸化膜を不安定な状態する役割を果たす。従って、前記接合材を使用した場合、炭素原子の働きにより、アルミニウム金属を覆う酸化膜のバリア性を低下させ、アルミニウム部材を活性化、すなわち反応しやすい状態にさせることができる。
【0023】
また、接合材に含まれる有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi−C−Si基およびSi−N−Si基の少なくとも一つを有するという特徴を有する。
【0024】
そのような主鎖を有する有機ケイ素系ポリマーは、不活性雰囲気下で加熱すると、ケイ素と炭素を含む化合物に変化する。このケイ素と炭素を含む化合物は、高温環境において、酸化膜のバリア機能が低下した、いわゆる「活性な」アルミニウム部材と反応することができる。
【0025】
また、本発明では、セラミックス部材として、アルミニウムおよび/またはケイ素を含有するセラミックス部材が使用される。そのようなセラミックス部材は、前述のケイ素と炭素を含む化合物に対して親和性を有する。
【0026】
従って、セラミックス部材とアルミニウム部材の間に前述のような接合材を介在させて、低酸素雰囲気下で熱処理を実施した場合、接合材中に含まれる炭素原子によって、アルミニウム部材の表面に存在する酸化膜の一部が還元される。あるいは、アルミニウム部材の表面に存在する酸化膜が不完全な状態となる。これにより、アルミニウム部材が活性化される。
【0027】
また、接合材を加熱した際に生じる反応成分、すなわち前述のようなケイ素と炭素を含む化合物は、活性化されたアルミニウム部材と反応し、その結果、接合材が接合層に変化する。通常の場合、得られる接合層は、炭化ケイ素系化合物を含む。
【0028】
ここで、炭化ケイ素系化合物には、例えば、SiC、SiOC、SiCN、SiOCN、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、および/またはSiAlOCN等が含まれる。炭化ケイ素系化合物は、アモルファス(ガラス)相として形成される場合が多い。
【0029】
このような接合層の存在により、セラミック部材が接合層と強固に密着されるとともに、アルミニウム部材も接合層と強固に密着される。その結果、セラミックス部材とアルミニウム部材は、接合層を介して接合される。
【0030】
以上のような現象により、本発明の一実施形態による接合体の製造方法では、セラミックス部材とアルミニウム部分との間で、良好な接合を得ることができる。
【0031】
ところで、本発明の一実施形態による接合体の製造方法では、組立体の熱処理温度、すなわち、セラミック部材とアルミニウム部材の接合処理温度は、500℃以上の範囲である。これは以下の実験結果に基づくものである。
【0032】
図1には、アルミニウム粒子と有機ケイ素系ポリマーを1:1の重量比で混合して得たサンプルについて、示差熱−熱重量(TG−DTA)同時分析を行った際の結果を示す。有機ケイ素系ポリマーには、ポリカルボシラン(化学構造式は後述する)を使用した。また、分析は、不活性ガス雰囲気下で実施した。
【0033】
図1において、横軸は温度を示し、左縦軸は、サンプルの初期の重量に対する変化量(%)を表し、右縦軸は、熱フロー(W/g)を表す。また、
図1において、破線は、サンプルの重量変化(左縦軸)を示しており、実線は、サンプルの熱フロー(右縦軸)を表している。
【0034】
図1から、不活性雰囲気においてサンプルを加熱していくと、約400℃付近から、熱フローの減少が始まる。ただし、この温度域では、サンプルの重量減少は未だ生じていない。従って、この熱フローの減少は、有機ケイ素系ポリマーの融解によるものであると考えられる。
【0035】
さらに加熱が進むと、約500℃からサンプルの重量減少が始まる。この結果から、有機ケイ素系ポリマー(ポリカルボシラン)の熱分解は、500℃近傍で始まることがわかる。
【0036】
従って、有機ケイ素系ポリマーを含む接合材をこの温度以上に加熱した場合、前述のような挙動により、セラミックスとアルミニウムとの接合が可能になる。
【0037】
なお、この温度域から、有機ケイ素系ポリマーの熱分解が進むようになるため、以降の温度では、全体的に、温度上昇とともに、サンプルの重量および熱フローは、減少して行く。
【0038】
ただし、
図1に示すように、サンプルの重量は、温度上昇とともに単調に減少し続けるのに対して、熱フローについては、約600℃前後の温度域で、減少が若干緩和される部分(以下、「プラトー領域」という)が観測されるようになる。
【0039】
このプラトー領域では、前述のようなアルミニウムの表面での化学反応が顕著に生じているものと予想される。
【0040】
その後、さらに加熱を続けると、約660℃近傍で、サンプルの熱フローが急激に減少する。これは、アルミニウムの融解による相変化に対応するものと考えられる。
【0041】
以上の結果から、有機ケイ素系ポリマーの熱分解が開始される温度域、すなわち500℃以上の温度では、前述のような挙動、すなわちアルミニウムの表面の活性化と、アルミニウムの表面における有機ケイ素系ポリマーから生じたケイ素と炭素を含む化合物による反応とにより、接合材が接合層に変化する。また、この接合層の存在により、セラミック部材とアルミニウム部材とが強固に密着される。
【0042】
従って、接合温度を500℃以上とすることにより、アルミニウム部材とセラミックス部材を接合することが可能になる。
【0043】
特に、熱フローにプラトー領域が観測される温度域(580℃前後)で接合処理を実施した場合、前述のような反応が顕著になるため、アルミニウム部材とセラミックス部材を、より簡単に接合することが可能となる。
【0044】
このような観点から、本発明では、セラミック部材とアルミニウム部材の接合処理温度は、500℃以上に設定されている。
【0045】
なお、以上の説明は、現時点で考察される一メカニズムに基づいて、生じ得る現象を記載したものに過ぎない。すなわち、本発明による接合体の製造方法では、他のメカニズムにより、セラミックス部材とアルミニウム部分との間に良好な接合が形成されても良い。
【0046】
(本発明の一実施形態による接合体の製造方法)
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態によるセラミックス部材とアルミニウム部材とを有する接合体の製造方法の一例について、より詳しく説明する。
【0047】
図2には、本発明の一実施形態によるセラミックス部材とアルミニウム部材とを有する接合体の製造方法(以下、「第1の製造方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0048】
図2に示すように、第1の製造方法は、
(a)アルミニウムおよび/またはケイ素を含有するセラミックス部材、ならびにアルミニウム部材を準備するステップ(ステップS110)と、
(b)前記セラミックス部材および前記アルミニウム部材の少なくとも一方に、接合材を設置するステップであって、前記接合材は、有機ケイ素系ポリマーを含み、該有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi−C−Si基およびSi−N−Si基の少なくとも一つを有する、ステップ(ステップS120)と、
(c)前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材を、前記接合材を介在させた状態で積層し、組立体を構成するステップ(ステップS130)と、
(d)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、500℃以上の温度で加熱するステップ(ステップS140)と、
を有する。
【0049】
以下、各ステップについて詳しく説明する。
【0050】
(ステップS110)
まず、セラミックス部材およびアルミニウム部材が準備される。
【0051】
セラミックス部材は、アルミニウムおよび/またはケイ素を含む限り、特に限られない。セラミックス部材は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ムライト、および/またはアルミノシリケートを含んでも良い。
【0052】
例えば、アルミナとしては、重量比で90重量%以上のアルミナを含む高純度アルミナが挙げられる。窒化アルミニウムとしては、重量比で90重量%以上の窒化アルミニウムを含む高純度窒化アルミナが挙げられる。
【0053】
なお、窒化ケイ素は、化学式Si
3N
4で表されるが、実際には、焼結助剤および/または不純物として3重量%〜20重量%のアルミニウムを含んでいる窒化ケイ素が一般的であり、入手も容易である。ただし、本発明では、より化学式Si
3N
4に近い窒化ケイ素、すなわちアルミニウムの含有量が3重量%以下のもの(いわゆる高熱伝導性窒化ケイ素)も使用できる。例えば、本発明では、アルミニウムの含有量が、2重量%以下、好ましくは1重量%以下の窒化ケイ素を使用しても良い。
【0054】
なお、セラミックスの結晶形態に特に制限はないが、アルミナとしては、α−アルミナを好適に使用できる。
【0055】
セラミックス部材の形状は特に限られず、セラミックス部材は、ブロック、板、棒、またはディスク等の形状を有しても良い。
【0056】
同様に、アルミニウム部材の形状は特に限られず、アルミニウム部材は、ブロック、板、棒、箔、またはディスク等の形状を有しても良い。
【0057】
なお、本願において、「アルミニウム部材」という用語は、実質的にアルミニウム金属で構成された部材の他、重量比で50%以上のアルミニウム金属を含む部材、実質的にアルミニウム合金で構成された部材、および重量比で50%以上のアルミニウムを含む合金部材等が含まれる。
【0058】
アルミニウム合金は、例えばAl−Si合金等であっても良く、例えば、ケイ素を12重量%程度含むシルミンであっても良い。
【0059】
(ステップS120)
次に、セラミックス部材および/またはアルミニウム部材の少なくとも接合面に、接合材が設置される。接合材は、前述のように、有機ケイ素系ポリマーを含む。また、この、有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi−C−Si基およびSi−N−Si基の少なくとも一つを有する。
【0060】
ここで、本願では、Si−C−Si基で構成される主鎖を有する有機ケイ素系ポリマーを、特に「第1の有機ケイ素系ポリマー」と称し、Si−N−Si基で構成される主鎖を有する有機ケイ素系ポリマーを、特に「第2の有機ケイ素系ポリマー」と称する。なお、係る名称は、便宜的なものであり、例えば、「第1の有機ケイ素系ポリマー」が主鎖として、Si−C−Si基およびSi−N−Si基の両方を有する場合、そのような「第1の有機ケイ素系ポリマー」は、「第2の有機ケイ素系ポリマー」と称しても良い。同様に、「第2の有機ケイ素系ポリマー」が主鎖として、Si−N−Si基およびSi−C−Si基の両方を有する場合、そのような「第2の有機ケイ素系ポリマー」は、「第1の有機ケイ素系ポリマー」と称しても良い。
【0061】
以下、第1の製造方法における接合材として使用され得る、第1の有機ケイ素系ポリマーおよび第2の有機ケイ素系ポリマーの化学構造式の具体例について説明する。
【0062】
以下の式(1)には、第1の有機ケイ素系ポリマーの一例を示す。
【0064】
ここで、pとqの和は500〜5000の範囲である。また、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれ、独立にH、CH
3、C
2H
3、C
6H
5、およびOMCH
3(C
mH
2m+1)
2のいずれかである。R
1、R
2、R
3、およびR
4は、少なくとも2つが同一であっても良い。なお、mは1以上の整数を表し、MはTi、Zr、および/またはCrの1種類以上を表す。
【0065】
式(1)に示した化学構造を有する第1の有機ケイ素系ポリマーには、例えば、以下の式(2)で表されるポリカルボシラン、および式(3)で表されるポリチタノカルボシラン等が含まれる。
【0067】
【化3】
一方、以下の式(4)には、第2の有機ケイ素系ポリマーの一例を示す。
【0069】
ここで、pとqの和は1〜5000の範囲である。また、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれ、独立にH、CH
3、C
2H
3、およびC
6H
5のいずれかである。R
1、R
2、R
3、およびR
4は、少なくとも2つが同一であっても良い。
【0070】
式(4)に示した化学構造を有する第2の有機ケイ素系ポリマーには、例えば、以下の式(5)で表されるポリメチルジシラザン(PMDS)、および式(6)で表されるポリジメチルメチルシラザン(PDMMS)等が含まれる。
【0073】
また、第1の有機ケイ素系ポリマーは、以下の化学構造式を有しても良い。
【0075】
式(7)において、pとqの和は1〜5000の範囲である。また、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれ、独立にH、CH
3、C
2H
3、およびC
6H
5のいずれかである。R
1、R
2、R
3、およびR
4は、少なくとも2つが同一であっても良い。
【0076】
ここで、式(7)に示した第1の有機ケイ素系ポリマーは、主鎖の一部に、Si−N−Si基を有するため、第2の有機ケイ素系ポリマーと称することもできる。
【0077】
この他、第1および第2の有機ケイ素系ポリマーには、これに限られるものではないが、例えば、ポリカルボシラザン、アリルハイドライドポリカルボシラン、ポリシルメチレン、ポリシラザン、ポリヒドロポリシラザン、およびポリオルガノシラザン等が含まれる。
【0078】
なお、接合材は、第1の有機ケイ素系ポリマーおよび/または第2の有機ケイ素系ポリマーに加えて、さらに別のポリマー(「追加ポリマー」と称する)を含んでも良い。追加ポリマーは、例えば、主鎖が直鎖状のSi−O−Si基を有するシロキサン系ポリマーであっても良い。シロキサン系ポリマーの一例は、ポリメチルヒドロシロキサン、およびポリメチルフェニルシロキサン等である。
【0079】
次に、セラミックス部材および/またはアルミニウム部材の接合面に、前述のような接合材が設置される。
【0080】
セラミックス部材および/またはアルミニウム部材の接合面(以下、単に「接合面」と称する)への接合材の設置方法は、特に限られない。
【0081】
接合材は、例えば、塗布法などにより、接合面に設置しても良い。塗布法としては、ディッピング法、スピンコーター法、スプレー法等の手法が挙げられる。接合材は、なるべく均等に塗布することが望ましいため、引き上げ速度が1mm/秒以下のディッピング法、または回転速度が100rpm以上のスピンコーター法による塗布が望ましい。
【0082】
なお、接合材の厚みによって、最終的に得られる接合層の厚さが変化する。従って、目的に応じて接合材の種類と厚みを調整することが好ましい。
【0083】
また、本願に使用される有機ケイ素系ポリマーは、粘性が高いため、ディッピング法等で接合面に塗布する際は、溶媒で希釈し、粘性を適宜調整することが好ましい。この際には、相溶性の観点から、ベンゼンやトルエン等の芳香族系有機溶媒を使用することが好ましい。溶媒濃度は、0.001mol/L〜1mol/Lの範囲であっても良い。
【0084】
セラミックス部材の接合面に設置される接合材の量が少なすぎると、接合材が接合面全体に均一に広がらず、アルミニウム部材の接合面において、酸化層を十分に還元できないおそれがある。そのため、接合材の厚みは、0.1μm(溶媒揮発後)以上とすることが好ましい。一方、接合材が厚過ぎても、接合は可能である。しかしながら、接合材の厚みが厚すぎると、接合材部分のセラミックス化に伴う収縮により、セラミックス部材と接合層の界面に、クラックが生じやすくなる。このため、接合材の厚さは、1mm(溶媒揮発後)以下とすることが好ましい。
【0085】
また、接合材の設置量が過剰な場合、アルミニウム部材による有機ケイ素系ポリマーの還元のため、接合層とアルミニウム部材の界面付近に金属シリコンが析出しやすくなる。ケイ素含有量が高い有機ケイ素系ポリマーを使用した場合も同様である。従って、有機ケイ素系ポリマー中のケイ素含有量は、10重量%〜45重量%の範囲で選択することが好ましい。
【0086】
(ステップS130)
次に、セラミックス部材とアルミニウム部材とを、接合材を介在させた状態で積層し、組立体を構成する。すなわち、セラミックス部材の接合面と、アルミニウム部材の接合面とが、接合材を介して対向するようにして、セラミックス部材とアルミニウム部材が配置される。
【0087】
なお、組立体において、セラミックス部材とアルミニウム部材は、実質的に無加圧状態で相互に積層されても良い。ただし、両者の間にある程度の荷重を加えても良い。
【0088】
(ステップS140)
次に、接合処理のため、組立体が熱処理される。これにより、セラミックス部材とアルミニウム部材とが接合層を介して接合された接合体が製造される。
【0089】
熱処理は、実質的に酸素が存在しない雰囲気、例えば不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で実施される。熱処理を大気雰囲気のような酸素を含む環境下で実施した場合、アルミニウム部材の表面の酸化物が十分に還元せず、セラミックス部材とアルミニウム部材との間で、良好な接合を得ることが難しくなる。
【0090】
不活性ガス雰囲気は、例えば、アルゴン、ヘリウム、および/または窒素などの雰囲気であっても良い。真空雰囲気における真空度は、例えば、大気圧を0MPaとした場合、−0.08MPa以下である。
【0091】
熱処理の温度は、500℃以上である。なお、熱処理の温度は、例えば、700℃以下であることが好ましい。特に、熱処理の温度は、540℃〜660℃の範囲であることが好ましい。540℃以上に加熱すると、効率の良い接合が可能となる。また、660℃以下で加熱すると、熱処理後にも、アルミニウムの形状が維持される。
【0092】
組立体を熱処理することにより、接合材が変化して、セラミックス部材とアルミニウム部材との界面に、接合層が形成される。
【0093】
一般に、接合層は、炭素およびケイ素を含むアモルファス相、すなわち、炭化ケイ素系化合物のアモルファス相を含む。前述のように、炭化ケイ素系化合物は、例えば、SiC、SiOC、SiCN、SiOCN、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、および/またはSiAlOCN等を含んでも良い。なお、接合層に含まれる炭化ケイ素系化合物は、使用される接合材の種類、およびセラミックス部材の材質等によっても変化する。
【0094】
接合層中には炭化ケイ素系化合物の他に、少量の他の物質、例えば、炭素塊、金属シリコン塊、および/またはアルミノシリケート等が含まれる場合がある。
【0095】
このうち、アルミノシリケートは、一般式がAl
XSi
YO
Z(0<X<3、0<Y<51、0<Z<104)で表される。アルミノシリケートは、結晶質であっても、非晶質であっても良い。
【0096】
以上の工程により、セラミックス部材とアルミニウム部材とが接合層を介して良好に接合された接合体が製造される。
【0097】
以上、第1の製造方法を例に、本発明の一実施例によるセラミックス部材とアルミニウム部材とを接合する方法について説明した。しかしながら、以上の説明は、単なる一例に過ぎず、前述の方法の一部を変更したり、他の工程を組み合わせたりしても良いことは当業者には明らかである。
【0098】
例えば、前述の例では、接合体は、セラミックス部材と、接合層と、アルミニウム部材とがこの順に積層された構造を有する。しかしながら、接合体は、例えば、第1のセラミックス部材、第1の接合層、アルミニウム部材、第2の接合層、および第2のセラミック部材がこの順に積層された構造を有しても良い。
【0099】
そのような接合体は、例えば、前述の組立体を製造する工程(ステップS130、ステップS230)において、2つのセラミックス部材のそれぞれの接合面に接合材を配置し、さらに両セラミックス部材の間にアルミニウム部材が介在された組立体を構成し、この組立体を、ステップS140、ステップS240のように熱処理することにより製造することができる。
【0100】
同様に、接合体は、第1のアルミニウム部材、第1の接合層、セラミックス部材、第2の接合層、および第2のアルミニウム部材がこの順に積層された構造を有しても良い。
【0101】
(本発明の一実施形態による接合体の別の製造方法)
次に、
図2Aを参照して、本発明の一実施形態によるセラミックス部材とアルミニウム部材とを有する接合体の別の製造方法の一例について説明する。
【0102】
図2Aには、本発明の一実施形態によるセラミックス部材とアルミニウム部材とを有する接合体の別の製造方法(以下、「第2の製造方法」と称する)のフローを概略的に示す。
【0103】
図2Aに示すように、第2の製造方法は、
(a)アルミニウムおよび/またはケイ素を含有するセラミックス部材、ならびにアルミニウム部材を準備するステップ(ステップS210)と、
(b)前記セラミックス部材および前記アルミニウム部材の少なくとも一方に、接合材を設置するステップであって、前記接合材は、有機ケイ素系ポリマーを含み、該有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi−Si基を有する、ステップ(ステップS220)と、
(c)前記セラミックス部材と前記アルミニウム部材を、前記接合材を介在させた状態で積層し、組立体を構成するステップ(ステップS230)と、
(d)前記組立体を、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下、500℃以上の温度で加熱するステップ(ステップS240)と、
を有する。
【0104】
なお、第2の製造方法は、ステップS220において使用される接合材の種類を除き、前述の第1の製造方法とほぼ同様である。そこで、ここではステップS220において使用される接合材についてのみ説明する。
【0105】
第2の製造方法においても、ステップS220において、セラミックス部材および/またはアルミニウム部材の少なくとも接合面に、接合材が設置される。この接合材は、有機ケイ素系ポリマーを含む。また、有機ケイ素系ポリマーは、主鎖がSi−Si基を有する。
【0106】
ここで、本願では、Si−Si基で構成される主鎖を有する有機ケイ素系ポリマーを、特に「第3の有機ケイ素系ポリマー」と称する。
【0107】
第2の製造方法における接合材として使用され得る第3の有機ケイ素系ポリマーとしては、例えば、ポリヒドロシラン、ポリメチルシラン、およびポリフェニルシラン等が含まれる。
【0108】
このような第3の有機ケイ素系ポリマーを含む接合材を使用した場合も、前述の第1の製造方法と同様、セラミック部材とアルミニウム部材とが良好に接合された接合体を製造することができる。
【0109】
(本発明の一実施形態による接合体)
次に、
図3〜
図5を参照して、本発明の一実施形態による接合体について説明する。
【0110】
図3には、本発明の一実施形態による接合体の概略的な断面図を示す。
【0111】
図3に示すように、この接合体100は、セラミックス部材110と、アルミニウム部材130と、両者の間に配置された接合層150とを有する。
【0112】
セラミックス部材110は、アルミニウム成分および/またはケイ素成分を含有するセラミックスで構成される。例えば、セラミックス部材110は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびアルミノシリケートの少なくとも1種を含む。
【0113】
前述のように、窒化ケイ素は、焼結助剤および/または不純物として3重量%〜10重量%のアルミニウムを含むものの他、アルミニウムの含有量が2重量%以下、好ましくは1重量%以下の窒化ケイ素であっても良い。
【0114】
また、セラミックス部材110の結晶形態に特に制限はないが、アルミナとしては、α−アルミナを好適に使用できる。
【0115】
セラミックス部材110の形状は特に限られず、セラミックス部材110は、ブロック、板、棒、またはディスク等の形状を有しても良い。
【0116】
同様に、アルミニウム部材130の形状は特に限られず、アルミニウム部材130は、ブロック、板、棒、箔、またはディスク等の形状を有しても良い。
【0117】
アルミニウム部材130は、前述のように、実質的にアルミニウム金属で構成された部材、重量比で50%以上のアルミニウム金属を含む部材、実質的にアルミニウム合金で構成された部材、および重量比で50%以上のアルミニウムを含む合金部材であっても良い。
【0118】
接合層150は、前述のように、炭素およびケイ素を含むアモルファス相、すなわち炭化ケイ素系化合物のアモルファス相を主体とする。アモルファス相は、例えば、SiC、SiOC、SiCN、SiOCN、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、および/またはSiAlOCN等を含んでも良い。
【0119】
接合層150は、さらに、少量の炭素塊、金属シリコン塊、および/またはアルミノシリケート等を含んでも良い。アルミノシリケートは、結晶質であっても、非晶質であっても良い。
【0120】
接合層150のアモルファス相中の炭素量は、8重量%以上であり、同領域における酸素量は、30重量%未満である。
【0121】
前述のようなメカニズムにより、炭化ケイ素系化合物を主体とする接合層150の存在によって、セラミックス部材110とアルミニウム部材130の間に、良好な接合状態が得られる。従って、接合体100は、セラミックス部材110とアルミニウム部材130を適正に接合することができる。
【0122】
図4には、本発明の一実施形態による別の接合体(「第2の接合体」と称する)の概略的な断面図を示す。
【0123】
図4に示すように、この第2の接合体200は、
図3に示した接合体100を構成する各部材に加えて、さらに、第2のセラミックス部材260および第2の接合層290を有する。すなわち、この第2の接合体200は、第1のセラミックス部材210、第1の接合層250、アルミニウム部材230、第2の接合層290、および第2のセラミックス部材260をこの順に配置することにより構成される。
【0124】
ここで、第2のセラミックス部材260は、アルミニウム成分および/またはケイ素成分を含有するセラミックスで構成される。例えば、第2のセラミックス部材260は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、およびアルミノシリケートの少なくとも1種を含む。
【0125】
第2のセラミックス部材260は、第1のセラミックス部材210と同じ材料で構成されても良い。
【0126】
また、第2の接合層290は、炭素とケイ素を含むアモルファス相を主体とする。アモルファス相は、例えば、SiC、SiOC、SiCN、SiOCN、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、および/またはSiAlOCN等を含んでも良い。
【0127】
第2の接合層290は、さらに、少量の炭素塊、金属シリコン塊、および/またはアルミノシリケート等を含んでも良い。アルミノシリケートは、結晶質であっても、非晶質であっても良い。
【0128】
第2の接合層290のアモルファス相中の炭素量は、8重量%以上であり、同領域における酸素量は、30重量%未満である。
【0129】
第2の接合層290は、第1の接合層250と同じ組成を有しても良い。
【0130】
このような構成の第2の接合体200においても、第1および第2の接合層250、290の存在により、良好な接合強度が得られることは、容易に予想されるであろう。
【0131】
図5には、本発明の一実施形態によるさらに別の接合体(「第3の接合体」と称する)の概略的な断面図を示す。
【0132】
図5に示すように、この第3の接合体300は、
図3に示した接合体100を構成する各部材に加えて、さらに、第2の接合層390、および第2のアルミニウム部材370を有する。すなわち、この第3の接合体300は、第1のアルミニウム部材330、第1の接合層350、セラミックス部材310、第2の接合層390、および第2のアルミニウム部材370をこの順に配置することにより構成される。
【0133】
ここで、第2のアルミニウム部材370は、実質的にアルミニウム金属で構成された部材、重量比で50%以上のアルミニウム金属を含む部材、実質的にアルミニウム合金で構成された部材、および重量比で50%以上のアルミニウムを含む合金部材で構成される。
【0134】
第2のアルミニウム部材370は、第1のアルミニウム部材330と同じ材料で構成されても良い。
【0135】
また、第2の接合層390は、炭素とケイ素を含むアモルファス相を主体とする。アモルファス相は、例えば、SiC、SiOC、SiCN、SiOCN、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、および/またはSiAlOCN等を含んでも良い。
【0136】
第2の接合層390は、さらに、少量の炭素塊、金属シリコン塊、および/またはアルミノシリケート等を含んでも良い。アルミノシリケートは、結晶質であっても、非晶質であっても良い。
【0137】
第2の接合層390のアモルファス相中の炭素量は、8重量%以上であり、同領域における酸素量は、30重量%未満である。
【0138】
第2の接合層390は、第1の接合層350と同じ組成を有しても良い。
【0139】
このような構成の第3の接合体300においても、第1および第2の接合層350、390の存在により、良好な接合強度が得られることは、容易に予想されるであろう。
【実施例】
【0140】
以下、本発明の実施例について、詳しく説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0141】
以下の記載において、例1〜例6および例8〜例9は、実施例であり、例7は、比較例である。
【0142】
(例1)
以下の方法により、セラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0143】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有する窒化ケイ素板(窒化ケイ素含有量90%以上、JFC製)を用意した。この窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は1重量%未満であった。
【0144】
また、アルミニウム部材として、縦20mm×横20mm×厚さ5mmの寸法を有する市販のアルミニウム板(純度99%以上、スリーエス社製)を準備した。
【0145】
次に、市販のポリカルボシラン(NIPUSI Type−A、日本カーボン社製)をトルエン溶媒により0.1mol/Lに希釈して、塗布液(以下、「塗布液A」と称する)を調製した。
【0146】
次に、スピンコーティング法により、窒化ケイ素板の接合面(20mm×20mmの一つの面)に、前述の塗布液Aを塗布した。スピンコーティングの条件は、回転数3000rps、回転時間30秒とした。
【0147】
次に、窒化ケイ素板を、前述の接合面が上向きとなるように台上に設置した後、窒化ケイ素板の上に、アルミニウム板を設置し、組立体を構成した。
【0148】
次に、得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、580℃で1時間熱処理した。これにより、窒化ケイ素板とアルミニウム板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例1に係る接合体」と称する。
【0149】
例1に係る接合体において、窒化ケイ素板とアルミニウム板の接合状態を評価した。
【0150】
まず、走査型電子顕微鏡を用いて、両者の間に形成された接合層を観察した。その結果、接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められなかった。
【0151】
また、窒化ケイ素板とアルミニウム板の接合状態を、超音波探傷試験により評価した。その結果、窒化ケイ素板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0152】
図6には、接合層の部分におけるX線回折分析結果を示す。この結果から、接合層は、アモルファス相を有することがわかる。
【0153】
また、接合層の詳細な分析の結果、接合層は、アモルファス相を構成する炭化ケイ素系化合物の他、少量の炭素塊および金属シリコン塊を含むことがわかった。特に、炭化ケイ素系化合物は、SiCの他、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、およびSiAlOCNを含むことがわかった。
【0154】
また、接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0155】
(例2)
以下の方法により、2つのセラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0156】
まず、セラミックス部材として、縦40mm×横40mm×厚さ0.32mmの寸法を有する窒化ケイ素板(窒化ケイ素含有量90%以上、JFC製)を2枚用意した。これらの窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は1重量%未満であった。
【0157】
また、アルミニウム部材として、縦40mm×横40mm×厚さ2mmの寸法を有する市販のアルミニウム合金板(A3003相当)を準備した。
【0158】
次に、例1の場合と同様の方法で、前述の塗布液Aを、それぞれの窒化ケイ素板の接合面に塗布した。
【0159】
次に、1枚の窒化ケイ素板を、接合面が上向きとなるように台上に設置した後、この窒化ケイ素板の上に、アルミニウム合金板を設置した。さらに、アルミニウム合金板の上に、残りの窒化ケイ素板を、接合面が下向きになるように設置し、組立体を構成した。
【0160】
得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、620℃で0.5時間熱処理した。これにより、アルミニウム合金板の両側に、接合層を介して2枚の窒化ケイ素板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例2に係る接合体」と称する。
【0161】
例2に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、いずれの接合層においても、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、窒化ケイ素板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0162】
また、各接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0163】
(例3)
以下の方法により、2つのアルミニウム部材とセラミックス部材の接合体を製作した。
【0164】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.6mmの寸法を有する窒化アルミニウム板(窒化アルミニウム含有量90%以上、JFC製)を用意した。この窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は1重量%未満であった。
【0165】
また、アルミニウム部材として、縦25mm×横25mm×厚さ0.5mmの寸法を有する市販のアルミニウム板(純度99%以上、ニラコ社製)を2枚準備した。
【0166】
次に、例1の場合と同様の方法で、前述の塗布液Aを、窒化ケイ素板の対向する接合面(20mm×20mmの面)のそれぞれに塗布した。
【0167】
次に、窒化アルミニウム板の両接合面に、アルミニウム板を設置し、組立体を構成した。
【0168】
得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、620℃で4時間熱処理した。これにより、窒化アルミニウム板の両側に、接合層を介して2枚のアルミニウム板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例3に係る接合体」と称する。
【0169】
例3に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、いずれの接合層においても、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、窒化アルミニウム板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0170】
それぞれの接合層のEDS分析の結果、接合層には、SiCの他、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、およびSiAlOCNが含まれることがわかった。
【0171】
また、接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0172】
(例4)
以下の方法により、2つのセラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0173】
まず、セラミックス部材として、縦40mm×横40mm×厚さ2mmの寸法を有するアルミナ板(アルミナ含有量99%以上、三井金属製)を2枚用意した。
【0174】
また、アルミニウム部材として、縦40mm×横40mm×厚さ2mmの寸法を有する市販のアルミニウム合金板(A6063相当)を準備した。
【0175】
次に、例1の場合と同様の方法で、前述の塗布液Aを、それぞれのアルミナ板の接合面(40mm×40mmの一つの面)に塗布した。
【0176】
次に、1枚のアルミナ板を、接合面が上向きとなるように台上に設置した後、このアルミナ板の上に、アルミニウム合金板を設置した。さらに、アルミニウム合金板の上に、残りのアルミナ板を、接合面が下向きになるように設置し、組立体を構成した。
【0177】
得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、500℃で8時間熱処理した。これにより、アルミニウム合金板の両側に、接合層を介して2枚のアルミナ板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例4に係る接合体」と称する。
【0178】
例4に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、いずれの接合層においても、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、アルミナ板とアルミニウム合金板は、適正に接合されていることがわかった。
【0179】
また、接合層のEDS分析の結果、接合層は、SiCの他、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、およびSiAlOCNが含むことがわかった。
【0180】
また、各接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0181】
(例5)
以下の方法により、セラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0182】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有する窒化ケイ素板(窒化ケイ素含有量90%以上、JFC製)を用意した。この窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は1重量%未満であった。
【0183】
また、アルミニウム部材として、縦20mm×横20mm×厚さ5mmの寸法を有する市販のアルミニウム板(純度99%以上、スリーエス社製)を準備した。
【0184】
次に、市販のポリカルボシラン(NIPUSI Type−A、日本カーボン社製)と、市販のポリメチルフェニルシロキサン(KF−54、信越シリコーン製)とを混合し、トルエン溶媒により0.1mol/Lに希釈して、塗布液(以下、「塗布液B」と称する)を調製した。ポリカルボシランとポリメチルフェニルシロキサンの混合比は、1:1(重量比)である。
【0185】
次に、スピンコーティング法により、窒化ケイ素板の接合面(20mm×20mmの一つの面)に、前述の塗布液Bを塗布した。スピンコーティングの条件は、回転数3000rps、回転時間30秒とした。
【0186】
次に、窒化ケイ素板を、前述の接合面が上向きとなるように台上に設置した後、窒化ケイ素板の上に、アルミニウム板を設置し、組立体を構成した。
【0187】
次に、得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、580℃で1時間熱処理した。これにより、窒化ケイ素板とアルミニウム板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例5に係る接合体」と称する。
【0188】
例5に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、窒化ケイ素板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0189】
また、接合層のEDS分析の結果、接合層は、SiCの他、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、およびSiAlOCNが含むことがわかった。
【0190】
また、接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0191】
(例6)
以下の方法により、セラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0192】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有する窒化ケイ素板(窒化ケイ素含有量90%以上、JFC製)を用意した。この窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は1重量%未満であった。
【0193】
また、アルミニウム部材として、縦20mm×横20mm×厚さ5mmの寸法を有する市販のアルミニウム板(純度99%以上、スリーエス社製)を準備した。
【0194】
次に、公知の方法で作製されたポリメチルジシラザンを、トルエン溶媒により0.1mol/Lに希釈して、塗布液(以下、「塗布液C」と称する)を調製した。
【0195】
次に、浸漬法により、窒化ケイ素板の接合面(20mm×20mmの一つの面)に、前述の塗布液Cを塗布した。
【0196】
次に、窒化ケイ素板を、前述の接合面が上向きとなるように台上に設置した後、窒化ケイ素板の上に、アルミニウム板を設置し、組立体を構成した。
【0197】
次に、得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、600℃で1時間熱処理した。これにより、窒化ケイ素板とアルミニウム板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例6に係る接合体」と称する。
【0198】
例6に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、窒化ケイ素板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0199】
また、接合層のEDS分析の結果、接合層は、SiCの他、SiAlC、SiAlOC、SiAlCN、およびSiAlOCNが含むことがわかった。
【0200】
また、接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0201】
(例7)
例1と同様の方法により、セラミックス部材とアルミニウム部材の接合を試みた。
【0202】
ただし、この例7では、塗布液として、前述の塗布液Aの代わりに、ポリメチルフェニルシロキサン(KF−54、信越シリコーン製、以下PMPhS)をトルエン溶媒中に添加したものを使用した。
【0203】
得られた組立体を、アルゴン雰囲気下で8時間、熱処理した。熱処理温度は、580℃、600℃、620℃、635℃、および637℃とした。
【0204】
その結果、いずれの温度で熱処理しても、窒化ケイ素板とアルミニウム板を接合することはできなかった。
【0205】
(例8)
以下の方法により、セラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0206】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ1mmの寸法を有する窒化ケイ素板(窒化ケイ素含有量80%以上、JFC製)を用意した。窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は3重量%であった。
【0207】
また、アルミニウム部材として、縦20mm×横20mm×厚さ5mmの寸法を有する市販の純アルミニウム板(純度99%以上、スリーエス社製)を準備した。
【0208】
次に、例1の場合と同様の方法で、前述の塗布液Aを、それぞれの窒化ケイ素板の接合面に塗布した。
【0209】
次に、1枚の窒化ケイ素板を、接合面が上向きとなるように台上に設置した後、この窒化ケイ素板の上に、アルミニウム板を設置し、組立体を構成した。
【0210】
得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、630℃で1時間熱処理した。これにより、接合層を介してアルミニウム板と窒化ケイ素板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例8に係る接合体」と称する。
【0211】
例8に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、いずれの接合層においても、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、窒化ケイ素板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0212】
また、各接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0213】
(例9)
以下の方法により、セラミックス部材とアルミニウム部材の接合体を製作した。
【0214】
まず、セラミックス部材として、縦20mm×横20mm×厚さ0.32mmの寸法を有する窒化ケイ素板(窒化ケイ素含有量90%以上、JFC製)を用意した。この窒化ケイ素板内のアルミニウム含有量をEDSで測定した結果、含有量は1重量%未満であった。
また、アルミニウム部材として、縦20mm×横20mm×厚さ5mmの寸法を有する市販のアルミニウム板(純度99%以上、スリーエス社製)を準備した。
【0215】
次に、市販のポリシラン(OGSOL SI−20−10、大阪ガスケミカル(株)製)をトルエン溶媒により0.1mol/Lに希釈して、塗布液(以下、「塗布液D」と称する)を調製した。
【0216】
次に、浸漬法により、窒化ケイ素板の接合面(20mm×20mmの一つの面)に、前述の塗布液Dを塗布した。
【0217】
次に、窒化ケイ素板を、前述の接合面が上向きとなるように台上に設置した後、窒化ケイ素板の上に、アルミニウム板を設置し、組立体を構成した。
【0218】
次に、得られた組立体を、アルゴン雰囲気下、500℃で1時間熱処理した。これにより、窒化ケイ素板とアルミニウム板が接合された接合体が得られた。以下、この接合体を、「例9に係る接合体」と称する。
【0219】
例9に係る接合体を用いて、例1と同様の評価を実施した。その結果、接合層には、特にクラックやボイド等の欠陥は認められず、窒化ケイ素板とアルミニウム板は、適正に接合されていることがわかった。
【0220】
また、接合層のEDS分析の結果、接合層は、SiAlCの他、SiAlCN、およびSiAlOCNが含むことがわかった。
【0221】
また、接合層のアモルファス相の領域でのEDX分析の結果、該領域における炭素量は、8重量%以上であり、酸素量は、30重量%未満であることがわかった。
【0222】
本願は2016年6月9日に出願した日本国特許出願2016−115146号に基づく優先権を主張するものであり、同日本国出願の全内容を本願に参照により援用する。