【実施例】
【0042】
実施例1〔魚肉練り製品(乳化米ゲル(米6%、油10%)添加、直加熱)〕
高アミロース米(品種:モミロマン、平成20年度埼玉県産)200gを洗米及び吸水させて2時間静置し、その後4倍量の水を加え炊飯器(NP−NA10、象印マホービン株式会社)を用いてお粥モード(圧力のかからない条件)で炊飯を行った。得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gに対し菜種油(日清キャノーラ油)166.7gを添加してカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。キャノーラ油166.7gをさらに添加して同じカッターミキサーを用いて撹拌処理し(3,000rpm、30秒間)、油の分離がないことを目視で確認後さらに同じカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、2分間)。得られた乳化米ゲル(構成比:米15%、油脂25%、水60%)をチャック付きビニール袋に入れ室温で1時間放冷後、冷水で4.5〜6℃に冷却した。これにより、冷えた状態の乳化米ゲルを摺り身に配合できるため、摺り身へのいわゆる温度ダメージ(温度上昇による変質)を最小限に抑える効果を得ることができる。
【0043】
冷凍の魚肉摺り身(魚種:グレード;スケソウA、−20℃で保存)を細断した。摺り身をマイクロカッター(ステファン社、UM12型)を用いて粗摺りし(1500rpm、1分間)、得られた粗摺り身に、塩を摺り身重量の2.5重量%、及び水を摺り身重量の76重量%を、それぞれ添加して同じマイクロカッターを用いて塩摺りした(3000rpm、8分間)。
【0044】
得られた塩摺り身3000gに、先に作製した乳化米ゲル(米:摺り身重量の6重量%;水:摺り身重量の24重量%の炊飯米に、油:摺り身重量の10重量%を加え、カッターミキサーで撹拌処理)を添加し、同じマイクロカッターを用いて撹拌処理した(3,000rpm、1.5分間)。得られる乳化摺り身をステンレスリング(内径18.4mm、高さ20mm)に充填し直加熱(90℃、28分)した。得られた魚肉練り製品は、氷水中で15分以上冷却し、4℃で静置保管した。
【0045】
比較例1〔魚肉練り製品(米無添加、直加熱)〕
実施例1において、乳化米ゲルを添加しない代わりに、添加水分が摺り身重量の100重量%になるように水を添加したほかは、実施例1と同様にして魚肉練り製品を得た。
【0046】
比較例2〔魚肉練り製品(米ゲル(米6%)添加、直加熱)〕
実施例1と同様に炊飯を行い、得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gをカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理し(3,000rpm、3分間)、米ゲルを得た。この米ゲルを乳化米ゲルの代わりに用いたほかは実施例1と同様に行い、魚肉練り製品を得た。
【0047】
比較例1〜2及び実施例1のそれぞれで得られたサンプル(魚肉練り製品)のゲルの性質を、動的粘弾性において比較した(
図1)。また、各サンプルにつき貫入試験を行い破断荷重と破断歪みを測定した(
図2)。動的粘弾性の測定は、レオログラフ−ゾル特型(株式会社東洋精機製作所)を用いて行った。また、貫入試験は、クリープメーター RE−3305C(株式会社山電)を用い、φ5mmの球形ブランジャを用い進入速度1mm/secにて測定した。
【0048】
実施例1のサンプルは、比較例1のサンプルと比較して、硬くいわゆるグニャ感のあるゲルであった(
図1)。また実施例1のサンプルは、比較例1及び2のサンプルと比較して、有意に高い破断荷重を示し、比較例1のサンプルと比較して低い破断歪みを示し、特徴的な歯切れ感を有した。
【0049】
実施例2〔魚肉練り製品(乳化米ゲル(米6%、油10%)添加、2段加熱〕
実施例1において、直加熱の代わりに、30℃で27分の静置後に茹で加熱(90℃、27分)したほかは、実施例1と同様にして魚肉練り製品を得た。
【0050】
比較例3〔魚肉練り製品(無添加、2段加熱)〕
実施例2において、乳化米ゲルを添加しない代わりに、添加水分が摺り身重量の100重量%になるように水を添加したほかは、実施例1と同様にして魚肉練り製品を得た。
【0051】
比較例4〔魚肉練り製品(米ゲル(米6%)添加、2段加熱)〕
比較例2と同様の条件で米ゲルを得た。この米ゲルを乳化米ゲルの代わりに用いたほかは実施例2と同様に行い、魚肉練り製品を得た。
【0052】
比較例3〜4及び実施例2のそれぞれで得られたサンプル(魚肉練り製品)のゲルの性質を、動的粘弾性において比較した(
図3)。また、各サンプルにつき貫入試験を行い破断荷重と破断歪みを測定した(
図4)。各測定は、実施例1のサンプルの測定と同様の条件で行った。
【0053】
実施例2のサンプルは、比較例3のサンプルと比較して、いわゆるプルプル感のあるゲルであった(
図3)。また実施例2のサンプルは、比較例4のサンプルと比較して、有意に高い破断荷重及び破断歪みを示し、比較例3のサンプルに対しても多少高い破断荷重を示した(
図4)。
【0054】
これらの結果は、本発明においては乳化米ゲルを食品用改質剤として食品に添加することにより、食品の弾力を維持又は低下抑制し、歯切れのよさなどの柔らかい独特の食感を付与することができることを示している。
【0055】
実施例3〔ドレッシング(乳化米ゲル(米2.7%、油35%)添加〕
実施例1と同様にして作成した炊飯米1,000gに、サラダ油1,250g、醤油250g、食酢535g、砂糖357gを添加して実施例1と同様のカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、3分間)。得られるサンプルに焙煎摺り胡麻179gを添加し、同じカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、1分間)。
【0056】
比較例5〔ドレッシング(米無添加)〕
実施例1において、炊飯米の代わりにリゾ化卵黄、グアーガム及びキサンタンガムを添加したほかは、実施例3と同様に行い。焙煎胡麻ドレッシングを得た。
【0057】
実施例3と比較例5のドレッシング組成を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例3と比較例5のサンプル(ドレッシング)を4℃で7日間保管し、保管後の流動性及び外観を観察した。その結果、実施例3のサンプルは、比較例5と比較して乳化ムラが少なく、物性(流動性)を維持していた。
【0060】
実施例3と比較例5のサンプルを4℃で長期間保管し、42日経過後の実施例3のサンプルと43日経過後の比較例5のサンプルを比較した。その結果、比較例5のサンプルは大きく油分離していたのに対し、実施例3のサンプルはほとんど油分離していなかった。
【0061】
これらの結果は、本発明において乳化米ゲルを食品に添加することにより、食品の風味及び食感を改質できること、及び、食品に優れた乳化性を付与できること、すなわち、乳化米ゲルが増粘多糖類と同様の、又はこれを超える、乳化剤、ゲル化剤、界面活性剤としての機能を発揮し得ることを示している。
【0062】
実施例4(乳成分無添加のジェラート)
高アミロース米(品種:モミロマン栃木、平成26年度茨栃木県産)100gを洗米及び吸水させて2時間静置し、その後3倍量の水(300g)を加え炊飯器(実施例1と同じ)を用いてお粥モード(圧力のかからない条件)で炊飯を行った。得られた炊飯米をチャック付きビニール袋に入れ、氷水中、あるいは冷蔵庫で4℃まで冷却し、炊飯米400gに対し表2に示す量の菜種油、砂糖、ミルクフレーバー、ミルクコロイド及びバニラフレーバー及び水400gを追加し(炊飯時300g+400g追加で、添加水は合計700g)、カッターミキサー(実施例1と同じ)を用いて撹拌処理した後(3,000rpmで3分間)、ジェラートマシン(株式会社エフ・エム・アイ、ハイパートロンミニ)を用いて22分間撹拌冷却し、ジェラートを得た。
【0063】
【表2】
【0064】
比較例6
実施例1と同様に炊飯を行い、得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gをカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理し(3,000rpm、3分間)、米ゲルを得た。この米ゲルを乳化米ゲルの代わりに用いたこと、カッターミキサーへ追加する水の量を479.5gとした(炊飯時300g+400g追加+油代替の水79.5gで、添加水は合計779.5g)ほかは実施例4と同様に行い、ジェラートを得た。表3に組成を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
実施例4と比較例6のサンプル(ジェラート)の風味を比較したところ、比較例6のサンプルはさっぱりした口当たりであったが、コクが不足しており、米ゲル自体に甘味及び風味を付けて香らせたような風味と口当たりであった。一方、実施例4のサンプルは、比較例6のサンプルとは異なる風味であり、乳脂肪無添加にも拘らずアイスクリームらしい濃厚さ、コク味が感じられ、滑らかさとコク味を感じやすかった。
【0067】
これらの結果は、本発明において乳化米ゲルを食品に添加することにより、食品の風味及び食感を改質できること、及び乳化米ゲルは牛乳等いわゆるアレルゲンの代替材料としても有用であることを示している。
【0068】
実施例5(ボロニアソーセージ)
高アミロース米(品種:モミロマン栃木、平成26年度茨栃木県産)233gを洗米及び吸水させて2時間静置し、その後1倍量の水を加え炊飯器(実施例1と同じ)を用いてお粥モード(圧力のかからない条件)で炊飯を行った。得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米467gに対し菜種油(実施例1と同じ)とパーム油を表4に示す量のそれぞれ半量添加してカッターミキサー(実施例1と同じ)を用いて撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。さらに、各油のそれぞれ残りの半量を添加して同じカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、2分30秒間)。摺り上がった材料をチャック付きビニール袋に入れ冷水で冷却し、保型可能な硬さになるまで静置した。静置後、使用重量分(560g)をボウルに採取した。
【0069】
一方、牛赤身肉と豚赤身肉を表4のとおり計量し、約2cmに細断し、ミンチ機でミンチにし、得られるミンチ肉を冷凍庫に入れ1日静置して凍結した。凍結したミンチ肉と塩、表3に示す調味料、総合塩漬剤及びスパイスを同じカッターミキサーを用いて温度を測定しながら撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。氷を半量(66.5g)入れてさらに撹拌処理し(3,000rpm、30秒間)、続いて乳化米ゲル560gを添加し、さらに撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。残りの氷(66.5g)を入れてさらに撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)、撹拌処理物の温度及び状態を確認し、摺り上がりを10℃以内で抑えた。
得られたエマルジョン状の肉をスタッファーに移し成型した。すなわち、ぬるま湯に予め30〜40分間浸けておいたフィブラスケーシング(直径60mm)に、エマルジョン状の肉をスタッファーを用いて注入し、両端をタコ糸で縛った。
ケーシングしたソーセージを湯(50℃)に入れ、お湯を温度80℃まで加熱し達温後60分間茹でた。茹であがったソーセージの表面を流水で洗浄し、しばらくつるして余熱が冷めるまで放冷した後(約1時間)、冷蔵庫で冷却静置した(10℃)。
【0070】
比較例7(ボロニアソーセージ)
ボロニアソーセージの標準的な製法に従い、乳化剤を使わず、油脂として菜種油およびパーム油の代わりに豚脂を用い、油脂の量と赤身肉(豚赤身肉+牛赤身肉)のそれぞれの量を実施例5のそれぞれの量の1.5倍として、ボロニアソーセージを得た。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例6(ボロニアソーセージ)
原料配合を表5のとおりとしたほかは、実施例5と同様にして、ボロニアソーセージを作成した。
【0073】
比較例8(ボロニアソーセージ)
実施例6において、乳化米ゲルの代わりに表5に示す量の菜種油及びパーム油、及び米ゲルを添加したことのほかは、実施例5と同様に行い、ボロニアソーセージを得た。米ゲルは、実施例5と同様に炊飯を行い、得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gをカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理して(3,000rpm、3分間)調製した。
【0074】
【表5】
【0075】
〔表4及び表5の脚注〕
・豚赤身肉:モモ肉、カナダ産
・牛赤身肉:モモ肉、豪州産
・豚脂:豚背脂、国産
・ソーセージシーズニング:(株)カネカサンスパイス、ソーセージ用ミックスFW(1×10×1)
・総合塩漬剤:オルガノフードテック(株)、ソーセージMIX−SH
・菜種油:日清キャノーラ油
・パーム油:日清オイリオ(株)製
* 比較例8では、表5に示す量の菜種油とパーム油、表5に示す量の米と水に相当する米ゲルを、それぞれ別々に添加した。
【0076】
実施例5と比較例7のサンプルを10℃で2日間保存し、保存後の外観及び食感を調べた。その結果、実施例5のサンプルは比較例7のサンプルと同様に離水がなく、また食感は、比較例7と異なりパーム油に由来するねっとり感があり独特の食感となった。また、結着性も良好であった。
【0077】
また、実施例6と比較例8のサンプル(ボロニアソーセージ)を10℃で2日間保存後の外観及び食感を調べた。その結果、実施例6のサンプルにおいては比較例8と同様に離水が見られず、パーム油由来のねっとり感があり結着に優れていた。一方、比較例7のサンプルにおいては米ゲルが混合しきれず粒状に残っていたのに対し、実施例5のサンプルにおいては全体が均一に混ざっていた。食感は、比較例8のサンプルにおいては食感が固く肉と米が別々に主張するような、さらに油がしみ出る感じであったのに対し、実施例6のサンプルにおいては、食感がねっとりとして軟らかく(ペースト状)、均一でやわらかな食感であった。また、油のしみ出る感じがなかった。
【0078】
実施例7(油滴観察)
実施例1と同様にして得た炊飯米のうち800gを分取し、これにオイルレッドで赤く染色したキャノーラ油20gを添加し、3000rpm×30秒間撹拌した。撹拌後、容器の壁面に付着したサンプルを掻き取り、さらに同様に染色されたキャノーラ油20gを添加し、再び3000rpm×2分30秒間撹拌し、赤い油で着色された米ゲルを得た(オイルレッドの最終濃度は、0.024%)。
【0079】
比較例9(油滴観察)
2回の撹拌のいずれの際も油を添加しなかったこと、2回目の撹拌終了後にオイルレッドで染色したキャノーラ油40gを添加して、手作業にてゴムへらで赤みが均一になるまで撹拌したこと、の他は、実施例7と同様にして、赤い油で着色された米ゲル(オイルレッド最終濃度0.024%)を得た。
【0080】
なお、上記各例で用いた染色条件は、以下のとおりである。油脂(日清キャノーラ油)に対油0.5%(w/w)のオイルレッドを添加混合し、24時間静置して上清のみ分取し、赤く染色された油を得た。
【0081】
実施例7及び比較例9で油分が赤く染色された米ゲルを放冷後、スライドグラスにスパチュラで微少量載せ、カバーガラスでゲルを挟み込んだ。高解像度スキャナー(解像度;6400dpiで表面を画像取り込みし、画像観察をした(
図5及び6)。
【0082】
実施例7の米ゲルの油滴(図中の黒色部分)は小さく(約30μm)、ゲル全体に細かく分散していた(
図5)のに対し、比較例9の手作業で撹拌した米ゲルでは、油滴が大きく、約130μm以上のものもあり、ゲルへの分散が不均一であった(
図6)。これらのことは、従来の米ゲルは水及び油と混合しにくいのに対し(国際公開第2014/199961号段落[0129])、本発明の乳化米ゲルは(A)及び(B)成分が十分に乳化していることを示している。なお、実施例1〜4でも、油脂と米ゲルを添加してから撹拌を行っており、乳化していることから、実施例5のサンプル、すなわち
図5と同様の物理的性状(細かい油滴(30μm程度)が分散し大きい油滴(130μm程度以上)が実質的に含まれない)を示すことが推定される。
【0083】
以上の実施例の結果は、本発明において乳化米ゲルを食品に添加することにより、食品の風味及び食感を改善できること、及び、乳化米ゲルが動物性油脂の代替材料又は結着剤として利用できることを示している。