特許第6558775号(P6558775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558775
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】食品用改質剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20190805BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20190805BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20190805BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20190805BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20190805BHJP
   A23G 9/34 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   A23L7/10 A
   A23L29/00
   A23L13/00 A
   A23L27/60 A
   A23L17/00 101D
   A23G9/34
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-122898(P2016-122898)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-225379(P2017-225379A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000141509
【氏名又は名称】株式会社紀文食品
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 純一
(72)【発明者】
【氏名】蔦 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】粉川 美踏
(72)【発明者】
【氏名】北條 健一
【審査官】 松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/199961(WO,A1)
【文献】 特開2015−065934(JP,A)
【文献】 香川芳子, 「食品成分表2014本表編」, 初版, 女子栄養大学出版部, 2014年2月10日, p.200-201
【文献】 ビオフロレスタ[online],牛乳・生クリームの代わりにココナッツクリームを使ってヘルシーレシピ, INTERNET ARCHIVE: WAYBACK MACHINE,公開日:2014年12月6日, [検索日:2019年3月4日],< https://web.archive.org/web/20141206224807/http://biofloresta.jp/shop/item_list?category_id=351442>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
A23G 9/34
A23L 13/00
A23L 17/00
A23L 27/60
A23L 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
AGRICOLA(STN)
BIOSIS(STN)
BIOTECHNO(STN)
CAplus(STN)
SCISEARCH(STN)
TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):高アミロース米の炊飯米、及び
(B):油分
を含む乳化物である乳化米ゲルを含む、畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品用改質剤
【請求項2】
(A)成分に対する(B)成分の重量比が2重量%以上である、請求項1に記載の畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品用改質剤
【請求項3】
(A)成分に対する(B)成分の重量比が200重量%以下である、請求項1又は2に記載の畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品用改質剤
【請求項4】
乳化物における水分量が5重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品用改質剤
【請求項5】
油分は、植物性油脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品用改質剤
【請求項6】
乳化剤を含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品用改質剤
【請求項7】
高アミロース米の炊飯工程、及び
炊飯工程にて得られる炊飯米に油分を添加して撹拌する撹拌工程
を経て乳化物を得ることを含む、乳化米ゲルの製造方法。
【請求項8】
撹拌工程において、油分を段階的に炊飯米に添加してその都度撹拌を行う、請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の食品用改質剤を原料の少なくとも一部と共に撹拌する工程を含む、畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品の製造方法。
【請求項10】
(A):高アミロース米の炊飯米、及び
(B):油分
を原料と共に撹拌し乳化する工程を含む請求項に記載の畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、及び液体調味料から選ばれる食品の製造方法。
【請求項11】
(A):高アミロース米の炊飯米、及び
(B):油分
を含む乳化物である乳化米ゲルを含む化粧品改質剤。
【請求項12】
請求項11に記載の化粧品改質剤を原料の少なくとも一部と共に撹拌する工程を含む化粧品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用改質剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の美味しさの基準は、時代によって異なり、また消費者の世代によっても異なる。近年は食感が柔らかい食品が美味しいとされる方向にシフトする傾向にある。例えば、カマボコ等の魚肉加工品の美味しさの基準は、従来はプリプリ感、弾力の強い食感のものが好まれたが、近年は柔らかい食感のものが好まれる傾向にある。また、柔らかい食感を呈する畜肉加工品、魚肉加工品は、高齢者も容易に食べることができるので、高齢者社会において容易な動物性タンパク質の摂取源として期待されている。
【0003】
一方、食品には従来からラード等の動物性油脂が用いられることがあるが、消費者の健康志向の高まりに伴い、植物性油脂のほうが好ましいとされる傾向にある。さらに、食物アレルギーへの対応から、アレルゲンとなり得るタンパク質を含まないいわゆるアレルゲンフリーの食品の開発が望まれてきた。
【0004】
特許文献1〜3には、米に所定量の水を添加して加熱処理してなる糊化物を撹拌処理して得られるいわゆる米ゲルは、食品の様々な二次加工に利用することができること、例えば、風味の良好な、またアレルゲンフリー等の付加価値を有する代替食品を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/199961号
【特許文献2】特許第5828628号公報
【特許文献3】特許第5840904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3に記載の米ゲルは、添加対象の食品の種類によっては、食感や風味を改善することが難しい場合があった。
【0007】
本発明の目的は、主原料が米であり、食品の食感や風味を十分に改善できる新たな食品用改質材となり得る素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明を提供する。
[1](A):高アミロース米の炊飯米、及び
(B):油分
を含む乳化物である乳化米ゲル。
[2](A)成分に対する(B)成分の重量比が2重量%以上である、[1]に記載の乳化米ゲル。
[3](A)成分に対する(B)成分の重量比が200重量%以下である、[1]又は[2]に記載の乳化米ゲル。
[4]乳化物における水分量が5重量%以上である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の乳化米ゲル。
[5]油分は、植物性油脂である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の乳化米ゲル。
[6]乳化剤を含まない、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の乳化米ゲル。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の乳化米ゲルを含む食品用改質剤。
[8]食品が、畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、又は液体調味料である、[7]に記載の食品用改質剤。
[9]高アミロース米の炊飯工程、及び
炊飯工程にて得られる炊飯米に油分を添加して撹拌する撹拌工程
を経て乳化物を得ることを含む、乳化米ゲルの製造方法。
[10]撹拌工程において、油分を段階的に炊飯米に添加してその都度撹拌を行う、[9]に記載の方法。
[11][1]〜[6]のいずれか1項に記載の乳化米ゲル若しくは[7]又は[8]に記載の食品用改質剤を含む食品。
[12][1]〜[6]のいずれか1項に記載の乳化米ゲル若しくは[7]又は[8]に記載の食品用改質剤を原料の少なくとも一部と共に撹拌する工程を含む食品の製造方法。
[13](A):高アミロース米の炊飯米、及び
(B):油分
を原料と共に撹拌し乳化する工程を含む[12]に記載の食品の製造方法。
[14]食品が、畜肉加工品、魚肉加工品、氷菓、又は液体調味料である、[12]又は[13]に記載の方法。
[15][1]〜[6]のいずれか1項に記載の乳化米ゲルを含む化粧品改質剤。
[16][15]に記載の化粧品改質剤を原料の少なくとも一部と共に撹拌する工程を含む化粧品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食品に添加することにより、食感及び風味を変化させることができ、消費者の好み、ニーズ、年齢、健康状態にあわせた食感及び風味を有する食品への改質を図ることができる、乳化米ゲルが提供される。また、本発明によれば、斯かる乳化米ゲルを効率よく製造する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、魚肉練り製品(直加熱)の動的粘弾性の比較を示す図である。
図2図2は、魚肉練り製品(直加熱)の貫入試験の結果を示す図である。
図3図3は、魚肉練り製品(2段加熱)の動的粘弾性の比較を示す図である。
図4図4は、魚肉練り製品(2段加熱)の貫入試験の結果を示す図である。
図5図5は、実施例5のサンプルの顕微鏡画像を示す図である。
図6図6は、比較例9のサンプルの顕微鏡画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の乳化米ゲルは、以下の(A)及び(B)成分を含む乳化物(以下、乳化米ゲルと称することがある)である。
【0012】
(A)成分は、高アミロース米の炊飯米(米および水分を含む)である。高アミロース米とは、アミロース含量が高いコメ、通常はアミロース含量が20%以上であるコメを意味する。アミロース含量とは、デンプンに占めるアミロースの含量を意味し、栽培条件、気候変動等によって変化し得るので、上記「20%」はあくまでも目安である。高アミロース米のアミロース含量の上限は特に限定されず、28%を超えてもよい。高アミロース米の品種は、ジャポニカ種、インディカ種及びジャバニカ(ジャパニカ)種のいずれでもよい。高アミロース米としては例えば、モミロマン、夢十色、ホシユタカ、ホシニシキ、ミレニシキ、中国134号、越のかおり、ミズホチカラなどが挙げられ、モミロマン、ミズホチカラが好ましい。
【0013】
高アミロース米は、米粒または米粉の形態のいずれでもよく、精米の程度、品種などの異なる2種以上の混合物であってもよい。
【0014】
高アミロース米の精米の程度には特に制限はなく、玄米、分搗き米、白米の何れであってもよい。なお、米粉や破砕米であってもよいが、製粉処理のコストや手間を省くためには米粉以外の形態であることが好ましい。
【0015】
高アミロース米の炊飯米は、通常は、高アミロース米を炊飯する炊飯工程を経て得られる。炊飯とは、通常、米に加水して加熱処理すること又は米を蒸気で加熱処理(蒸気炊飯)することを意味する。加水量は特に限定されず、高アミロース米のアミロース含量、食品の種類、改質の目的等の条件により適宜定めることができる。加水の際、必要に応じて、酵素(例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ)の製剤、該酵素を含有する物質(例えば、モルト、米麹)、糖類、酸、スキムミルク等の水分以外の成分をさらに添加してもよい。
【0016】
炊飯前に、米に吸水させてもよい。吸水は通常、米を水分に浸漬させて行う。炊飯及び/又は浸漬の際用いる水分は、液状であればよく、水、牛乳、豆乳及びそれらの混合液が例示され、乳化米ゲルが添加される食品や改質したい食感、風味によって選択することができる。浸漬時間は、通常10分以上であればよいが、2時間以上が好ましく、10時間以上行ってもよい。2時間以上とすることにより滑らかな食感を出すことができる。また、10時間以上とすることにより冬季や米の吸水性又は含水率が低い場合にも食感の向上を図ることができる。
【0017】
炊飯には、炊飯器、鍋、圧力鍋、電磁調理器(例:電子レンジ)、スチームオーブン等の加熱手段を用いることができる。加熱温度、加熱時間は、目的とする加工食品素材又は加工食品、及びいずれの加熱手段を用いるかにより異なり一義的に特定することは困難であり、米が焦げ付かず糊化が十分に進む時間を適宜調整する。炊飯の際には、米への圧力を付加することが好ましい。圧力は1.5気圧程度(例えば、1.0〜2.0気圧、好ましくは1.2〜1.8気圧)であることが好ましい。また、炊飯条件は、加熱手段内に内蔵された条件モード(例えば、お粥モード)に従って調整してもよい。
【0018】
(A)成分は、高アミロース米と水分の配合比、高アミロース米の種類、炊飯条件等の異なる少なくとも2つの炊飯米の組み合わせであってもよい。
【0019】
(B)成分は、油分である。油分は、植物性油脂及び動物性油脂のいずれでもよい。植物性油脂は、植物由来の油脂であればよく、その製法は特に限定されない。植物性油脂としては例えば、菜種油(キャノーラ油、サラダ油)、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、紅花油、米ぬか油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、シア油、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、シソ油、ラベンダー油、マンゴー核油、これらの少なくとも1つを原料とする加工油脂等が挙げられる。動物性油脂は、動物由来の油脂であればよく、その製法は特に限定されない。動物性油脂としては例えば、牛脂、ラード、魚油、鯨油、乳原料由来の乳脂肪分、これらの少なくとも1つを原料とする加工油脂が挙げられる。加工油脂としては、硬化油、エステル交換油、分別油が挙げられる。これらのうち植物性油脂、又は機能性油脂が好ましい。機能性油脂としては例えば、オリーブ油、ココナッツ油等の機能性を有する植物性油脂、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の動物性油脂が挙げられる。
【0020】
(B)成分は、種類、製法等の異なる少なくとも2つの油分の組み合わせであってもよい。
【0021】
乳化米ゲルは、(A)及び(B)成分を含み、かつ乳化状を呈していればよい。乳化米ゲルは、通常は水中油型(O/W型)を示す。乳化物は、通常、従来報告されてきた米ゲル(特許文献1〜3参照)よりも粘性が低くなる。そのため、食品と共に撹拌する際の温度上昇が抑制され、低温操作を維持した状態での食品製造が可能である。乳化米ゲルは、なるべく小さな油滴を含むことが好ましく、乳化していない(A)及び(B)成分を含む組成物において、例えば、(A)成分の組成物中において(B)成分が撹拌により微小な油滴として均一に分散している状態が好ましい。好ましい油滴のサイズとしては、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、130μm以下がさらに好ましい。油滴のサイズは、(B)成分としてオイルレッドにて着色した油脂を用いて得られるサンプルを高解像度スキャナ(解像度6400dpi)で画像解析することにより確認できる。
【0022】
乳化物は通常、(A)及び(B)成分を撹拌して得られるか、又は(A)成分を得る際の炊飯時に(B)成分を添加し撹拌して得られる。撹拌は、撹拌機器を用いて行うことができ、斯かる撹拌機器としては例えばフードプロセッサ、ホモジナイザー、ミキサー、ニーダー、混練機、押出機等が挙げられる。撹拌機器はトルクが大きいことが、機械的撹拌処理中に糊化物の粘度が上昇しても撹拌が妨げられることがないため、好ましい。トルクの大きい撹拌機器としては例えば、カッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)が挙げられる。
【0023】
(A)成分と(B)成分の全量ずつを一気に撹拌してもよいし、それぞれを段階的に添加してその都度撹拌してもよい。段階的に添加するとは、各成分のそれぞれ一部の混合物に対し、混合物に含めなかった残りのすべてまたは残りの一部を添加し、斯かる残りがなくなるまで添加することを言う。添加回数は特に限定されないが、(A)成分の全部に対し(B)成分を段階的に添加してその都度撹拌することが好ましく、(A)成分の全部に対し(B)成分の半量を添加して撹拌したのち、残りの半量を添加してさらに撹拌することがより好ましい。各回の撹拌条件は一定でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0024】
(A)成分は、撹拌に際し先に冷却を行ってもよい。これにより、炊飯米の粘度を低下させることができる。冷却処理は、炊飯米の温度が通常60℃以下、好ましくは45℃以下になるように行えばよい。
【0025】
撹拌条件(回転数、時間、温度など)は、乳化物が得られる条件であればよい。斯かる条件は、(A)及び(B)成分の種類、性状、重量比、撹拌機器の種類、食品の種類等により異なり得るため一義的に特定することは困難である。回転数は通常700rpm以上、好ましくは1000rpm以上、より好ましくは1300rpm以上、更により好ましくは1500rpm以上である。これにより均一な性状の乳化米ゲルを得ることができる。撹拌は、減圧下で行ってもよい。減圧下で行うことにより、気泡を除去することができる。減圧後の圧力は、通常0.4気圧以下、好ましくは0.1気圧以下である。撹拌時間は、通常10秒以上であり、好ましくは15秒以上であり、より好ましくは20秒以上である。上限は特にないが、通常は10分以下、好ましくは7分以下、より好ましくは5分以下である。撹拌温度は特に限定されないが、通常80℃以下、好ましくは60℃以下である。好ましくは非加熱下で、より好ましくは冷却下で撹拌することが好ましい。
【0026】
乳化米ゲルにおいて、(A)成分(炊飯米)に対する(B)成分の重量比(重量%:((B)の重量/(A)の重量)×100)は、通常は2重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。上限は通常、200重量%以下、好ましくは100重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。蒲鉾の場合、上限は、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。ドレッシングの場合上限は150重量%以下が好ましく、130重量%以下がより好ましく、100重量%以下が更に好ましい。ジェラートの場合下限は5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。ソーセージの場合上限は40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、25重量%以下が更に好ましい。
【0027】
乳化米ゲルは、(A)及び(B)成分の他に乳化剤を含まなくてもよく、含まないことが好ましい。乳化剤としては例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、アルギン酸エステル、ポリソルベートが挙げられる。乳化米ゲルは、(A)及び(B)成分、並びに乳化剤以外の成分を含んでいてもよい。
【0028】
乳化米ゲルは、気泡を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。気泡の増減によりゲル自体の食感(例えば、硬さ、歯ごたえ)及び添加された食品の食感を変化させることができる。気泡の除去は、プリン、杏仁豆腐等の本来ソフトなゲル状食品の場合、滑らかさ、喉越しの良さの増強、ゲル性の増強等の食感改善が期待できる。麺類、くずきり様食品等の麺状食品など本来ハードなゲル状食品の場合、しなやかさ、滑らかさ、こしの強さの増強、つる感の増強等の食感改善が期待できる。気泡の注入は、公知の気泡注入手段によることができ、強制注入してもよい。気泡の除去は、減圧処理(例えば、真空ポンプを用いミキサーの容器内圧力を減圧吸引(例えば0.07MPa以下)によればよい。
【0029】
乳化米ゲルは、食品用改質剤として利用できる。改質の対象である食品は天然物である食品でもいわゆる食品用組成物でもよく特に限定されないが、通常は食品用組成物であり、例えば、畜肉加工品(例:ハム、ソーセージ、ウインナー、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、餃子の具)、魚肉加工品(例:かまぼこ、さつまあげ、ちくわ、はんぺん、つみれ、伊達巻)、氷菓(例:アイスクリーム、ジェラート、シャーベット)、液体調味料(例:ドレッシング(胡麻ドレッシングなど常温で非分離の(乳化)ドレッシング))、洋菓子(例:バームクーヘン、スポンジケーキ)、パン(食パン、菓子パン、ドーナツ、蒸しパン)が挙げられる。このうち畜肉加工品、魚肉加工品、液体調味料及び氷菓が好ましい。
【0030】
また、乳化米ゲルは、化粧品または医薬の改質にも利用できる。化粧品及び医薬の態様としては例えば、乳液、化粧水、クリーム(スキンクリーム等)等の液状または半液状、若しくは保湿シート等のシート状の剤形が挙げられる。化粧品の適用部位は、通常は外用であり、皮膚、毛髪などに適用可能である。
【0031】
畜肉加工品及び魚肉加工品に従来知られている米ゲル(特許文献1〜3参照)を添加すると、前記加工品の弾力を阻害し食感を低下させるおそれがあった。これに対し、畜肉加工品及び魚肉加工品に上記乳化米ゲルを添加すると、前記加工品の弾力の阻害が抑制され、独特の(例:歯切れがよい)、柔らかい食感を付与することができる。
【0032】
液体調味料に上記乳化米ゲルを添加することで、増粘多糖類を添加せずとも油の分離を抑制することができる。増粘多糖類を添加したときよりもむしろ長期間油分離を抑制することができる。よって、乳化米ゲルは、増粘多糖類と同様の、又はこれを超える、乳化剤、ゲル化剤、界面活性剤としての機能を発揮し得る。
【0033】
氷菓に牛乳を添加せずに従来知られている米ゲル(特許文献1〜3参照)を添加すると、脂肪分の不足に起因すると推測される食感の低下が生じ得る。これに対し、氷菓に上記乳化米ゲルを添加すると、原料に牛乳が含まれていなくとも、コク味と滑らかな独特の食感を得ることができる。よって、乳化米ゲルは、牛乳等いわゆるアレルゲンの代替材料としても有用である。
【0034】
畜肉加工品に乳化米ゲルを添加すると、原料に動物性油脂が含まれていなくとも、動物性油脂を含む従来品と独特の食感を得ることができる。よって、乳化米ゲルは、動物性油脂の代替材料としても有用である。
【0035】
食品への上記乳化米ゲルの添加量は特に限定されず、食品の種類、乳化米ゲルの組成などによって適宜定めることができる。通常は2重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。上限は、通常は200重量%以下、好ましくは100重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
【0036】
食品への乳化米ゲルの添加方法は、方法(1):乳化米ゲルを原料の少なくとも一部と共に撹拌する方法でもよいし、方法(2):上記成分(A)及び(B)を原料と共に撹拌し乳化する方法でもよい。食品が畜肉加工品及び魚肉加工品の場合、方法(1)が好ましい。食品が氷菓又は液体調味料の場合、方法(2)が好ましい。
【0037】
撹拌条件(回転数、時間、温度など)は、食品の種類、性状、重量比、撹拌機器の種類、乳化米ゲルの組成等により異なり得るため一義的に特定することは困難である。回転数は通常1500rpm以上、好ましくは1700rpm以上、より好ましくは2000rpm以上である。これにより均一な性状の乳化物を得ることができる。撹拌は、減圧下で行ってもよい。減圧後の圧力は、通常0.4気圧以下、好ましくは0.1気圧以下である。撹拌時間は、通常10秒以上であり、好ましくは15秒以上であり、より好ましくは20秒以上である。上限は特にないが、通常は10分以下、好ましくは7分以下、より好ましくは5分以下である。撹拌温度は特に限定されないが、通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。好ましくは非加熱下で、より好ましくは冷却下で撹拌することが好ましい。
【0038】
方法(1)においては、食品の原料と乳化米ゲルの全量ずつを一気に撹拌してもよいし、それぞれを段階的に添加してその都度撹拌してもよい。段階的に添加するとは、各成分のそれぞれ一部の混合物に対し、混合物に含めなかった残りのすべてまたは残りの一部を添加し、斯かる残りがなくなるまで添加することを言う。添加回数は特に限定されないが、食品の原料に対し乳化米ゲルを段階的に添加してその都度撹拌することが好ましく、食品の原料の全部に対し乳化米ゲルの成分の半量を添加して撹拌したのち、残りの半量を添加してさらに撹拌することがより好ましい。各回の撹拌条件は一定でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0039】
乳化米ゲルを、又は(A)成分と(B)成分を原料に添加するにあたり、原料を予め撹拌しておいてもよい。乳化米ゲルを原料に添加する際には、原料を予め撹拌しておくことが好ましい。原料の撹拌条件(回転数、時間、温度など)は、食品の種類及び組成、性状、重量比、撹拌機器の種類等により異なり得るため一義的に特定することは困難である。回転数は通常1500rpm以上、好ましくは1700rpm以上、より好ましくは2000rpm以上である。これにより均一な性状の乳化物を得ることができる。撹拌は、減圧下で行ってもよい。減圧後の圧力は、通常0.4気圧以下、好ましくは0.1気圧以下である。撹拌時間は、通常10秒以上であり、好ましくは15秒以上であり、より好ましくは20秒以上である。上限は特にないが、通常は10分以下、好ましくは7分以下、より好ましくは5分以下である。撹拌温度は特に限定されないが、通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。好ましくは非加熱下で、より好ましくは冷却下で撹拌することが好ましい。
【0040】
練り製品(例えば蒲鉾)の場合、原料への乳化米ゲル添加後の加熱の方法は、特に限定されず、例えば直加熱と2段加熱が挙げられるが、2段加熱が好ましい。これにより、網状構造が強化され、足の強い練り製品を得ることができる。
【0041】
乳化米ゲルを添加する際、食品の原料は、好ましくは、アレルゲンとなり得るタンパク質原料(例:牛乳、バター、乳製品、卵)、動物性油脂(例:牛脂、ラード、魚油、鯨油、乳原料由来の乳脂肪分、これらの少なくとも1つを原料とする加工油脂)、増粘多糖類〔ゲル化剤〕(例:グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン、カラギーナン、寒天、ペクチン)、乳化剤(例:レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル、アルギン酸エステル、ポリソルベート)から選ばれる少なくとも1つを含まなくてもよく、含まないことが好ましく、すべて含まないことがより好ましい。これにより、アレルゲンフリーの食品、健康にマイナスイメージのある動物性油脂フリーであり、かつ食感の改善された食品を得ることができる。
【実施例】
【0042】
実施例1〔魚肉練り製品(乳化米ゲル(米6%、油10%)添加、直加熱)〕
高アミロース米(品種:モミロマン、平成20年度埼玉県産)200gを洗米及び吸水させて2時間静置し、その後4倍量の水を加え炊飯器(NP−NA10、象印マホービン株式会社)を用いてお粥モード(圧力のかからない条件)で炊飯を行った。得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gに対し菜種油(日清キャノーラ油)166.7gを添加してカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。キャノーラ油166.7gをさらに添加して同じカッターミキサーを用いて撹拌処理し(3,000rpm、30秒間)、油の分離がないことを目視で確認後さらに同じカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、2分間)。得られた乳化米ゲル(構成比:米15%、油脂25%、水60%)をチャック付きビニール袋に入れ室温で1時間放冷後、冷水で4.5〜6℃に冷却した。これにより、冷えた状態の乳化米ゲルを摺り身に配合できるため、摺り身へのいわゆる温度ダメージ(温度上昇による変質)を最小限に抑える効果を得ることができる。
【0043】
冷凍の魚肉摺り身(魚種:グレード;スケソウA、−20℃で保存)を細断した。摺り身をマイクロカッター(ステファン社、UM12型)を用いて粗摺りし(1500rpm、1分間)、得られた粗摺り身に、塩を摺り身重量の2.5重量%、及び水を摺り身重量の76重量%を、それぞれ添加して同じマイクロカッターを用いて塩摺りした(3000rpm、8分間)。
【0044】
得られた塩摺り身3000gに、先に作製した乳化米ゲル(米:摺り身重量の6重量%;水:摺り身重量の24重量%の炊飯米に、油:摺り身重量の10重量%を加え、カッターミキサーで撹拌処理)を添加し、同じマイクロカッターを用いて撹拌処理した(3,000rpm、1.5分間)。得られる乳化摺り身をステンレスリング(内径18.4mm、高さ20mm)に充填し直加熱(90℃、28分)した。得られた魚肉練り製品は、氷水中で15分以上冷却し、4℃で静置保管した。
【0045】
比較例1〔魚肉練り製品(米無添加、直加熱)〕
実施例1において、乳化米ゲルを添加しない代わりに、添加水分が摺り身重量の100重量%になるように水を添加したほかは、実施例1と同様にして魚肉練り製品を得た。
【0046】
比較例2〔魚肉練り製品(米ゲル(米6%)添加、直加熱)〕
実施例1と同様に炊飯を行い、得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gをカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理し(3,000rpm、3分間)、米ゲルを得た。この米ゲルを乳化米ゲルの代わりに用いたほかは実施例1と同様に行い、魚肉練り製品を得た。
【0047】
比較例1〜2及び実施例1のそれぞれで得られたサンプル(魚肉練り製品)のゲルの性質を、動的粘弾性において比較した(図1)。また、各サンプルにつき貫入試験を行い破断荷重と破断歪みを測定した(図2)。動的粘弾性の測定は、レオログラフ−ゾル特型(株式会社東洋精機製作所)を用いて行った。また、貫入試験は、クリープメーター RE−3305C(株式会社山電)を用い、φ5mmの球形ブランジャを用い進入速度1mm/secにて測定した。
【0048】
実施例1のサンプルは、比較例1のサンプルと比較して、硬くいわゆるグニャ感のあるゲルであった(図1)。また実施例1のサンプルは、比較例1及び2のサンプルと比較して、有意に高い破断荷重を示し、比較例1のサンプルと比較して低い破断歪みを示し、特徴的な歯切れ感を有した。
【0049】
実施例2〔魚肉練り製品(乳化米ゲル(米6%、油10%)添加、2段加熱〕
実施例1において、直加熱の代わりに、30℃で27分の静置後に茹で加熱(90℃、27分)したほかは、実施例1と同様にして魚肉練り製品を得た。
【0050】
比較例3〔魚肉練り製品(無添加、2段加熱)〕
実施例2において、乳化米ゲルを添加しない代わりに、添加水分が摺り身重量の100重量%になるように水を添加したほかは、実施例1と同様にして魚肉練り製品を得た。
【0051】
比較例4〔魚肉練り製品(米ゲル(米6%)添加、2段加熱)〕
比較例2と同様の条件で米ゲルを得た。この米ゲルを乳化米ゲルの代わりに用いたほかは実施例2と同様に行い、魚肉練り製品を得た。
【0052】
比較例3〜4及び実施例2のそれぞれで得られたサンプル(魚肉練り製品)のゲルの性質を、動的粘弾性において比較した(図3)。また、各サンプルにつき貫入試験を行い破断荷重と破断歪みを測定した(図4)。各測定は、実施例1のサンプルの測定と同様の条件で行った。
【0053】
実施例2のサンプルは、比較例3のサンプルと比較して、いわゆるプルプル感のあるゲルであった(図3)。また実施例2のサンプルは、比較例4のサンプルと比較して、有意に高い破断荷重及び破断歪みを示し、比較例3のサンプルに対しても多少高い破断荷重を示した(図4)。
【0054】
これらの結果は、本発明においては乳化米ゲルを食品用改質剤として食品に添加することにより、食品の弾力を維持又は低下抑制し、歯切れのよさなどの柔らかい独特の食感を付与することができることを示している。
【0055】
実施例3〔ドレッシング(乳化米ゲル(米2.7%、油35%)添加〕
実施例1と同様にして作成した炊飯米1,000gに、サラダ油1,250g、醤油250g、食酢535g、砂糖357gを添加して実施例1と同様のカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、3分間)。得られるサンプルに焙煎摺り胡麻179gを添加し、同じカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、1分間)。
【0056】
比較例5〔ドレッシング(米無添加)〕
実施例1において、炊飯米の代わりにリゾ化卵黄、グアーガム及びキサンタンガムを添加したほかは、実施例3と同様に行い。焙煎胡麻ドレッシングを得た。
【0057】
実施例3と比較例5のドレッシング組成を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例3と比較例5のサンプル(ドレッシング)を4℃で7日間保管し、保管後の流動性及び外観を観察した。その結果、実施例3のサンプルは、比較例5と比較して乳化ムラが少なく、物性(流動性)を維持していた。
【0060】
実施例3と比較例5のサンプルを4℃で長期間保管し、42日経過後の実施例3のサンプルと43日経過後の比較例5のサンプルを比較した。その結果、比較例5のサンプルは大きく油分離していたのに対し、実施例3のサンプルはほとんど油分離していなかった。
【0061】
これらの結果は、本発明において乳化米ゲルを食品に添加することにより、食品の風味及び食感を改質できること、及び、食品に優れた乳化性を付与できること、すなわち、乳化米ゲルが増粘多糖類と同様の、又はこれを超える、乳化剤、ゲル化剤、界面活性剤としての機能を発揮し得ることを示している。
【0062】
実施例4(乳成分無添加のジェラート)
高アミロース米(品種:モミロマン栃木、平成26年度茨栃木県産)100gを洗米及び吸水させて2時間静置し、その後3倍量の水(300g)を加え炊飯器(実施例1と同じ)を用いてお粥モード(圧力のかからない条件)で炊飯を行った。得られた炊飯米をチャック付きビニール袋に入れ、氷水中、あるいは冷蔵庫で4℃まで冷却し、炊飯米400gに対し表2に示す量の菜種油、砂糖、ミルクフレーバー、ミルクコロイド及びバニラフレーバー及び水400gを追加し(炊飯時300g+400g追加で、添加水は合計700g)、カッターミキサー(実施例1と同じ)を用いて撹拌処理した後(3,000rpmで3分間)、ジェラートマシン(株式会社エフ・エム・アイ、ハイパートロンミニ)を用いて22分間撹拌冷却し、ジェラートを得た。
【0063】
【表2】
【0064】
比較例6
実施例1と同様に炊飯を行い、得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gをカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理し(3,000rpm、3分間)、米ゲルを得た。この米ゲルを乳化米ゲルの代わりに用いたこと、カッターミキサーへ追加する水の量を479.5gとした(炊飯時300g+400g追加+油代替の水79.5gで、添加水は合計779.5g)ほかは実施例4と同様に行い、ジェラートを得た。表3に組成を示す。
【0065】
【表3】
【0066】
実施例4と比較例6のサンプル(ジェラート)の風味を比較したところ、比較例6のサンプルはさっぱりした口当たりであったが、コクが不足しており、米ゲル自体に甘味及び風味を付けて香らせたような風味と口当たりであった。一方、実施例4のサンプルは、比較例6のサンプルとは異なる風味であり、乳脂肪無添加にも拘らずアイスクリームらしい濃厚さ、コク味が感じられ、滑らかさとコク味を感じやすかった。
【0067】
これらの結果は、本発明において乳化米ゲルを食品に添加することにより、食品の風味及び食感を改質できること、及び乳化米ゲルは牛乳等いわゆるアレルゲンの代替材料としても有用であることを示している。
【0068】
実施例5(ボロニアソーセージ)
高アミロース米(品種:モミロマン栃木、平成26年度茨栃木県産)233gを洗米及び吸水させて2時間静置し、その後1倍量の水を加え炊飯器(実施例1と同じ)を用いてお粥モード(圧力のかからない条件)で炊飯を行った。得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米467gに対し菜種油(実施例1と同じ)とパーム油を表4に示す量のそれぞれ半量添加してカッターミキサー(実施例1と同じ)を用いて撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。さらに、各油のそれぞれ残りの半量を添加して同じカッターミキサーを用いて撹拌処理した(3,000rpm、2分30秒間)。摺り上がった材料をチャック付きビニール袋に入れ冷水で冷却し、保型可能な硬さになるまで静置した。静置後、使用重量分(560g)をボウルに採取した。
【0069】
一方、牛赤身肉と豚赤身肉を表4のとおり計量し、約2cmに細断し、ミンチ機でミンチにし、得られるミンチ肉を冷凍庫に入れ1日静置して凍結した。凍結したミンチ肉と塩、表3に示す調味料、総合塩漬剤及びスパイスを同じカッターミキサーを用いて温度を測定しながら撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。氷を半量(66.5g)入れてさらに撹拌処理し(3,000rpm、30秒間)、続いて乳化米ゲル560gを添加し、さらに撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)。残りの氷(66.5g)を入れてさらに撹拌処理した(3,000rpm、30秒間)、撹拌処理物の温度及び状態を確認し、摺り上がりを10℃以内で抑えた。
得られたエマルジョン状の肉をスタッファーに移し成型した。すなわち、ぬるま湯に予め30〜40分間浸けておいたフィブラスケーシング(直径60mm)に、エマルジョン状の肉をスタッファーを用いて注入し、両端をタコ糸で縛った。
ケーシングしたソーセージを湯(50℃)に入れ、お湯を温度80℃まで加熱し達温後60分間茹でた。茹であがったソーセージの表面を流水で洗浄し、しばらくつるして余熱が冷めるまで放冷した後(約1時間)、冷蔵庫で冷却静置した(10℃)。
【0070】
比較例7(ボロニアソーセージ)
ボロニアソーセージの標準的な製法に従い、乳化剤を使わず、油脂として菜種油およびパーム油の代わりに豚脂を用い、油脂の量と赤身肉(豚赤身肉+牛赤身肉)のそれぞれの量を実施例5のそれぞれの量の1.5倍として、ボロニアソーセージを得た。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例6(ボロニアソーセージ)
原料配合を表5のとおりとしたほかは、実施例5と同様にして、ボロニアソーセージを作成した。
【0073】
比較例8(ボロニアソーセージ)
実施例6において、乳化米ゲルの代わりに表5に示す量の菜種油及びパーム油、及び米ゲルを添加したことのほかは、実施例5と同様に行い、ボロニアソーセージを得た。米ゲルは、実施例5と同様に炊飯を行い、得られた炊飯米を常温まで冷却し、炊飯米1000gをカッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて撹拌処理して(3,000rpm、3分間)調製した。
【0074】
【表5】
【0075】
〔表4及び表5の脚注〕
・豚赤身肉:モモ肉、カナダ産
・牛赤身肉:モモ肉、豪州産
・豚脂:豚背脂、国産
・ソーセージシーズニング:(株)カネカサンスパイス、ソーセージ用ミックスFW(1×10×1)
・総合塩漬剤:オルガノフードテック(株)、ソーセージMIX−SH
・菜種油:日清キャノーラ油
・パーム油:日清オイリオ(株)製
* 比較例8では、表5に示す量の菜種油とパーム油、表5に示す量の米と水に相当する米ゲルを、それぞれ別々に添加した。
【0076】
実施例5と比較例7のサンプルを10℃で2日間保存し、保存後の外観及び食感を調べた。その結果、実施例5のサンプルは比較例7のサンプルと同様に離水がなく、また食感は、比較例7と異なりパーム油に由来するねっとり感があり独特の食感となった。また、結着性も良好であった。
【0077】
また、実施例6と比較例8のサンプル(ボロニアソーセージ)を10℃で2日間保存後の外観及び食感を調べた。その結果、実施例6のサンプルにおいては比較例8と同様に離水が見られず、パーム油由来のねっとり感があり結着に優れていた。一方、比較例7のサンプルにおいては米ゲルが混合しきれず粒状に残っていたのに対し、実施例5のサンプルにおいては全体が均一に混ざっていた。食感は、比較例8のサンプルにおいては食感が固く肉と米が別々に主張するような、さらに油がしみ出る感じであったのに対し、実施例6のサンプルにおいては、食感がねっとりとして軟らかく(ペースト状)、均一でやわらかな食感であった。また、油のしみ出る感じがなかった。
【0078】
実施例7(油滴観察)
実施例1と同様にして得た炊飯米のうち800gを分取し、これにオイルレッドで赤く染色したキャノーラ油20gを添加し、3000rpm×30秒間撹拌した。撹拌後、容器の壁面に付着したサンプルを掻き取り、さらに同様に染色されたキャノーラ油20gを添加し、再び3000rpm×2分30秒間撹拌し、赤い油で着色された米ゲルを得た(オイルレッドの最終濃度は、0.024%)。
【0079】
比較例9(油滴観察)
2回の撹拌のいずれの際も油を添加しなかったこと、2回目の撹拌終了後にオイルレッドで染色したキャノーラ油40gを添加して、手作業にてゴムへらで赤みが均一になるまで撹拌したこと、の他は、実施例7と同様にして、赤い油で着色された米ゲル(オイルレッド最終濃度0.024%)を得た。
【0080】
なお、上記各例で用いた染色条件は、以下のとおりである。油脂(日清キャノーラ油)に対油0.5%(w/w)のオイルレッドを添加混合し、24時間静置して上清のみ分取し、赤く染色された油を得た。
【0081】
実施例7及び比較例9で油分が赤く染色された米ゲルを放冷後、スライドグラスにスパチュラで微少量載せ、カバーガラスでゲルを挟み込んだ。高解像度スキャナー(解像度;6400dpiで表面を画像取り込みし、画像観察をした(図5及び6)。
【0082】
実施例7の米ゲルの油滴(図中の黒色部分)は小さく(約30μm)、ゲル全体に細かく分散していた(図5)のに対し、比較例9の手作業で撹拌した米ゲルでは、油滴が大きく、約130μm以上のものもあり、ゲルへの分散が不均一であった(図6)。これらのことは、従来の米ゲルは水及び油と混合しにくいのに対し(国際公開第2014/199961号段落[0129])、本発明の乳化米ゲルは(A)及び(B)成分が十分に乳化していることを示している。なお、実施例1〜4でも、油脂と米ゲルを添加してから撹拌を行っており、乳化していることから、実施例5のサンプル、すなわち図5と同様の物理的性状(細かい油滴(30μm程度)が分散し大きい油滴(130μm程度以上)が実質的に含まれない)を示すことが推定される。
【0083】
以上の実施例の結果は、本発明において乳化米ゲルを食品に添加することにより、食品の風味及び食感を改善できること、及び、乳化米ゲルが動物性油脂の代替材料又は結着剤として利用できることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6