(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6558923
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】誘導式角度測定装置のための走査部材
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
G01D5/20 110X
【請求項の数】27
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-60428(P2015-60428)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-184282(P2015-184282A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】10 2014 205 397.8
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】グレゴル・ローゼンエッガー
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−239506(JP,A)
【文献】
実開平4−3311(JP,U)
【文献】
実開昭61−205243(JP,U)
【文献】
特開2002−314659(JP,A)
【文献】
特開2004−251902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
H05K 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁導体(1.21)および受信導体(1.22)を備えるプリント基板(1.2)と、
電子回路(1.31)と
を含む誘導式角度測定装置のための走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)がケーシング(1.1)内に配置されており、該ケーシング(1.1)が、前記プリント基板(1.2)が挿入されるガイド(1.12)を備え、
該ガイド(1.12)が、前記プリント基板(1.2)が軸線(A)に対して平行な方向に、形状に基づく結合により位置決めされ、前記プリント基板(1.2)が、前記ガイド(1.12)内に挿入されることにより前記軸線(A)を中心として湾曲した円周に沿って変形されるように、構成されており、
前記ケーシング(1.1)が、前記プリント基板(1.2)を接線方向に前記ガイド(1.12)内に挿入することができるように構成された開口(1.13)を備える走査部材(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、前記ケーシング(1.1)と前記プリント基板(1.2)との間に空隙(s)が設けられるように、前記ケーシング(1.1)内に配置されている走査部材(1)。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、該プリント基板(1.2)および前記ケーシング(1.1)が前記プリント基板(1.2)の縁部(1.23)に接触するように、前記ケーシング(1.1)内に配置されている走査部材(1)。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記ガイド(1.12)が、前記プリント基板(1.2)の少なくとも1つの縁部(1.23)で前記プリント基板(1.2)に係合する走査部材(1)。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記ガイド(1.12)が、周の一部にわたって周方向に延在する少なくとも1つの溝として構成されている走査部材(1)。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、360°の角度にわたって周方向に配置されている走査部材(1)。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)の端部(1.25)が、円周の半径方向外側または半径方向内側に配置されている走査部材(1)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、前記軸線(A)から半径方向に向いた半直線(R)が少なくとも2つの点(P)で前記プリント基板(1.2)と交差するように配置されている走査部材(1)。
【請求項9】
請求項8に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が端部(1.25)において、前記電子回路(1.31)を組み付けたプレート(1.3)に結合されており、前記半直線(R)が前記プレート(1.3)とも交差する走査部材。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)の端部(1.24,1.25)が、該両端部(1.24,1.25)を軸線方向にオーバラップさせて配置できるように構成されている走査部材(1)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が複数部分により構成されており、前記プリント基板(1.2)の前記部分がブリッジ部材(1.26)によって相互に結合されている走査部材。
【請求項12】
請求項11に記載の走査部材(1)において、
前記ブリッジ部材(1.26)が、前記軸線(A)に対して平行な方向に、前記プリント基板(1.2)よりもわずかな寸法を備える走査部材(1)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が複数部分により構成されており、前記プリント基板(1.2)の前記部分が、間隙(u)により周方向に相互に離間して配置されている走査部材(1)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記ケーシング(1.1)が、前記軸線(A)に対して平行な方向に延在するアンダカット(1.151)によってケーシング(1.1)に固定されたケーシング部分(1.11)を備える走査部材。
【請求項15】
励磁導体(1.21)および受信導体(1.22)を備えるプリント基板(1.2)と、
電子回路(1.31)と
を含む誘導式角度測定装置のための走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)がケーシング(1.1)内に配置されており、該ケーシング(1.1)が、前記プリント基板(1.2)が挿入されるガイド(1.12)を備え、
該ガイド(1.12)が、前記プリント基板(1.2)が軸線(A)に対して平行な方向に、形状に基づく結合により位置決めされ、前記プリント基板(1.2)が、前記ガイド(1.12)内に挿入されることにより前記軸線(A)を中心として湾曲した円周に沿って変形されるように、構成されており、
前記プリント基板(1.2)が、前記ケーシング(1.1)と前記プリント基板(1.2)との間に空隙(s)が設けられるように、前記ケーシング(1.1)内に配置されている走査部材(1)。
【請求項16】
請求項15に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、該プリント基板(1.2)および前記ケーシング(1.1)が前記プリント基板(1.2)の縁部(1.23)に接触するように、前記ケーシング(1.1)内に配置されている走査部材(1)。
【請求項17】
請求項15又は16のいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記ガイド(1.12)が、前記プリント基板(1.2)の少なくとも1つの縁部(1.23)で前記プリント基板(1.2)に係合する走査部材(1)。
【請求項18】
請求項15から17までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記ガイド(1.12)が、周の一部にわたって周方向に延在する少なくとも1つの溝として構成されている走査部材(1)。
【請求項19】
請求項15から18までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、360°の角度にわたって周方向に配置されている走査部材(1)。
【請求項20】
請求項15から19までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)の端部(1.25)が、円周の半径方向外側または半径方向内側に配置されている走査部材(1)。
【請求項21】
請求項15から20までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が、前記軸線(A)から半径方向に向いた半直線(R)が少なくとも2つの点(P)で前記プリント基板(1.2)と交差するように配置されている走査部材(1)。
【請求項22】
請求項21に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が端部(1.25)において、前記電子回路(1.31)を組み付けたプレート(1.3)に結合されており、前記半直線(R)が前記プレート(1.3)とも交差する走査部材。
【請求項23】
請求項15から22までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)の端部(1.24,1.25)が、該両端部(1.24,1.25)を軸線方向にオーバラップさせて配置できるように構成されている走査部材(1)。
【請求項24】
請求項15から23までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が複数部分により構成されており、前記プリント基板(1.2)の前記部分がブリッジ部材(1.26)によって相互に結合されている走査部材。
【請求項25】
請求項24に記載の走査部材(1)において、
前記ブリッジ部材(1.26)が、前記軸線(A)に対して平行な方向に、前記プリント基板(1.2)よりもわずかな寸法を備える走査部材(1)。
【請求項26】
請求項15から25までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記プリント基板(1.2)が複数部分により構成されており、前記プリント基板(1.2)の前記部分が、間隙(u)により周方向に相互に離間して配置されている走査部材(1)。
【請求項27】
請求項15から26までのいずれか一項に記載の走査部材(1)において、
前記ケーシング(1.1)が、前記軸線(A)に対して平行な方向に延在するアンダカット(1.151)によってケーシング(1.1)に固定されたケーシング部分(1.11)を備える走査部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の相対位置を決定する誘導式角度測定装置のための走査部材に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導式角度測定装置は、例えば、相互に相対的に回転可能な2つの機械部分の角度位置を決定するロータリエンコーダとして使用される。誘導式角度測定装置では、励磁導体および受信導体が、例えば導体路の形式で、例えばロータリエンコーダのステータに堅固に結合された共通のプリント基板に取り付けられている。このプリント基板には分割部材が向かい合って位置し、この分割部材には、周期的な間隔をおいて交互に導電性および非導電性の面またはウェブおよびギャップが分割パターンとして設けられている。分割部材は、ロータリエンコーダのロータに回動不能に結合されている。励磁導体もしくは励磁コイルに時間毎に変動する励磁電流が加えられた場合、ロータとステータとが相対回動した際に受信導体もしくは受信コイルでは角度位置に依存した信号が生成される。次いでこれらの信号は評価電子機器でさらに処理される。
【0003】
このような誘導式角度測定装置は、電気駆動装置のための測定器として、関連した機械部分の相対運動もしくは相対位置を決定するために使用されることが多い。この場合、生成された位置値は、適宜なインタフェイス装置を介して、駆動装置を制御する後続電子機器に供給される。
【0004】
WO2007/000653A1(例えば、この文献の
図24によれば)には、当該センサが円筒形を有する誘導式角度測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/000653A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎をなす課題は、誘導式角度測定装置のための走査部材において、正確な測定信号を供給し、簡単に組み付けられるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は請求項1に記載の特徴により解決される。
【0008】
誘導式角度測定装置のための走査部材は、励磁導体および受信導体を備えるプリント基板と、受信導体により受信された信号を処理するための電子回路とを含む。プリント基板はケーシング内に配置されており、ケーシングはガイドを備え、このガイド内にプリント基板が挿入される。ガイドは、プリント基板が軸線に対して平行な方向に、形状に基づく結合により位置決めされるように構成されている。さらに、プリント基板はガイド内へ挿入されることにより、軸線を中心として湾曲した円周に沿って‐特に弾性的に‐変形されている。
【0009】
走査部材は、少なくとも1つの分割レーンを配置した湾曲した周面を備える分割部材を走査するために適している。角度測定装置は、ケーシングと分割部材とが、同心的に配置された2つのリングとして形成された構成としてもよい。プリント基板は円周に沿って湾曲され、この円周の幾何学中心は、角度測定装置が規定どおりに作動された場合に回転の中心となることが望ましい軸線上に位置する。プリント基板は、特に柔軟なプリント基板として構成されていてもよい。有利には、プリント基板は多層状に構成されている。プリント基板がエポキシ材料を含む場合、特に有利である。本発明の有利な構成では、プリント基板は50μmよりも厚くない。プリント基板は、特に変形されることにより均一な円形となるように十分に堅固に、かつガイド内に挿入するために十分に弾性的に構成されている。本実施例では、測定される周にわたって、プリント基板と、半径方向に向かい合った分割部材との間の空隙が正確に調節されることが、正確な角度測定のために重要であることに留意されたい。
【0010】
ケーシングは、一般に、走査部材によって分割部材もしくは分割部材の角度位置を走査することができる側が開かれている。特に分割部材が半径方向内側に位置する構成では、ケーシングの、半径方向内側に位置する側が開かれており、分割部材が半径方向外側に位置する構成では、ケーシングの、半径方向外側に位置する側が開かれていてもよい。
【0011】
有利には、ケーシングは開口を備え、この開口は、走査部材を組み付ける際にプリント基板を接線方向にガイド内に挿入することができるように構成されている。接線方向とは、軸線に対して実質的に垂直方向に延在し、半径方向に対して実質的に垂直方向に延在する方向である。特に接線方向とは角度測定を行う方向であり、この方向に沿って角度測定を行うことが望ましい。
【0012】
本発明の別の構成では、プリント基板は、ケーシングとプリント基板との間に空隙が設けられるようにケーシング内に配置されている。特に、励磁導体および/または受信導体が位置するプリント基板の領域と、ケーシングとの間には空隙が設けられる。この空隙は、特に半径方向に延在する。
【0013】
さらに、プリント基板は、プリント基板およびケーシングもしくはガイドがプリント基板の縁部に接触するようにケーシング内に配置してもよい。縁部は、特にプリント基板の縦方向側部に沿って延在する。
【0014】
有利には、ガイドは、プリント基板の少なくとも1つの縁部でプリント基板に係合する。換言すれば、プリント基板はガイド内でプリント基板の少なくとも1つの縁部に沿って案内される。有利には、ガイドはプリント基板の2つの縁部に係合する。
【0015】
さらにガイドは、ケーシングの周の一部にわたって周方向に延在する少なくとも1つの溝として構成されていてもよい。ガイドは、特にケーシングの周の一部にわたって周方向に延在する2つの溝として構成されていてもよい。
【0016】
本発明の好ましい構成では、プリント基板は360°の角度にわたって周方向に配置されている。代替的には、プリント基板は360°未満の角度にわたって周方向に延在していてもよい。この場合、特に走査部材はリングセグメントとして構成されている。
【0017】
有利には、受信導体および/または励磁導体は周方向に180°を超える角度にわたって、特に225°を超える角度にわたって、有利には少なくとも270°にわたって延在している。これらの角度情報は、走査部材に対して分割部材の回動が行われる際に回動の中心となることが望ましい軸線を中心とした中心角に関係している。
【0018】
受信導体のアーチ長さが比較的大きいことにより、生成される信号は偏心誤差および酔歩誤差の影響を極めて受けにくい。その結果、比較的大きい製造許容差、組付け許容差を許可することができる。
【0019】
本発明の別の構成では、円周に沿ってガイド内に位置決めされるプリント基板の端部は円周の半径方向外側に配置されている。この構成は、角度測定装置が半径方向内側に位置する分割部材を備えるように形成されている場合に使用することができる。
【0020】
代替的には、円周に沿ってガイド内に位置決めされるプリント基板の端部は円周の半径方向内側に配置されていてもよい。この構成は、好ましくは角度測定装置が半径方向外側に位置する分割部材を備えるように形成されている場合に使用される。
【0021】
有利には、プリント基板は、軸線から半径方向に向いた半直線が少なくとも2つの点でプリント基板と交差するように配置されている。したがってこの場合、プリント基板は、ほぼ360°にわたって円周に沿って延在する形状を備え、さらに半径方向外側または半径方向内側に延在している。
【0022】
有利には、プリント基板の端部は、電子回路を組み付けたプレートに結合されており、半直線はこのプレートとも交差する。電子回路は、特に受信導体によって得られた信号を評価および処理するための評価電子機器を形成している。
【0023】
特にプリント基板が360°の角度にわたって周方向に配置されている場合、プリント基板の端部が、両端部を軸線方向にオーバラップさせて配置できるように構成されていると有利である。これらの端部は、例えば、このために切欠きを備えていてもよい。特にこの場合、両端部には、軸線に対して平行に延在する直線が交差する。プリント基板の端部は、特に、励磁導体および受信導体のいずれも設けられていないように構成されていてもよい。
【0024】
プリント基板は複数部分により構成されていてもよい。この場合、プリント基板部分をブリッジ部材によって相互に結合してもよい。
【0025】
有利には、ブリッジ部材は、軸線に対して平行な方向に、プリント基板よりもわずかな寸法を備える。したがってプリント基板は、特にブリッジ部材よりも広幅である。
【0026】
本発明の別の構成では、複数部分により構成されたプリント基板の部分は、間隙により周方向に相互に離間して配置されている。このことは、特にプリント基板のこれらの部分を案内する場合に、これらの部分、ひいては受信導体の正確で簡単な相互位置決めが可能であるという利点を有する。このことは、正確な測定値を得るための有利である。
【0027】
ケーシングは、軸線に対して平行な方向に延在するアンダカットによってケーシングに固定されたケーシング部分を備えていてもよい。以下においては、アンダカットとは、形状に基づく結合を可能にし、特に半径方向に向けられた力を形状に基づく結合により伝達する切欠きのことである。
【0028】
本発明の有利な構成が従属請求項に記載されている。
【0029】
本発明による走査部材のさらなる詳細および利点が添付の図面に基づいた実施例の説明により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】相対的な角度位置を決定するための角度測定装置を示す斜視図である。
【
図3】組付け前のプリント基板を示す平面図である。
【
図4】組付け前のプリント基板を示す側面図である。
【
図5】組付け前のプリント基板の一部を示す平面図である。
【
図6】プリント基板が組み付けられたケーシングの一部を示す斜視図である。
【
図7】プリント基板が組み付けられたケーシングの一部を示す別の斜視図である。
【
図8】別のケーシング部分を組み付けた後の角度測定装置の走査部材の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、センサ装置(又はスキャナー装置)としての走査部材1と、分割部材2とを備える角度測定装置が示されており、分割部材2は走査部材1に対して軸線Aを中心として回動可能に配置されている。
図1では、走査部材1および分割部材2は構成を説明するために別々に示されている。作動状態で、走査部材1および分割部材2は半径方向の空隙をおいて相互に同心的に位置している。センサ装置(又はスキャナー装置)としての走査部材1はケーシング1.1を含み、本実施例では実質的にリング状に構成されている。特に、本実施例に示すように分割部材2が半径方向内側に位置する構成では、ケーシングは半径方向内側に位置する側が開かれた状態に構成されている。
【0032】
図2には、ケーシング1.1がケーシング部分1.11なしに部分的な斜視図で示されている。ケーシング1.1は、本実施例ではほぼ全周にわたって円周に沿って延在するように構成されたガイド1.12を備える。ガイド1.12は、本実施例では周方向に延在する2つの溝(
図9も参照されたい)を備える。さらにケーシング1.1は開口1.13を備える。固定孔1.14によってケーシング1.1を機械部分に固定することができる。ケーシング部分1.11を収容するために、ケーシング1.1は切欠き1.15(
図6も参照されたい)を備え、この切欠きには、円周方向に隣接する段部にアンダカット1.151もしくは溝が設けられている。
【0033】
図3、
図4、および
図5には、ケーシング1.1内に組み付けられる前のプリント基板1.2が示されている。
図3には、プリント基板1.2が、特にプリント基板1.2の幾何学的な外形を説明するために平面図で示されている。プリント基板1.2は多層構造を備え、本実施例では0.5mmの厚さを有する。本実施例では、プリント基板1.2は2部分により構成されている。プリント基板1.2の両方の部分は、プリント基板部材の形態のブリッジ部材1.26によって機械的および電気的に相互に接続されている。プリント基板1.2の両部分は間隙uにより相互に離間して配置されている。間隙uはプリント基板1.2の長手(長さ)方向又は縦方向に、すなわちケーシング1.1内に組み付けられた後には周方向もしくは測定方向に延在する。ブリッジ部材1.26は、プリント基板1.2よりもわずかな幅を有する。プリント基板1.2の両部分がブリッジ部材1.26によって最終的に結合される前に、これらの部分は、両部分に配置される受信導体1.22が相互に正確に位置決めされるように、相互に整列される。この後にようやく結合が最終的に形成される。
【0034】
それぞれ間隙uの向かい側に、プリント基板1.2は2つの端部1.24,1.25を備える。第1端部1.24は1つの切欠き1.241を備える。第2端部1.25は2つの切欠き1.251と電気的な接続部材1.27とを備える。
図5には、プリント基板の第2端部1.25と、この第2端部に接続する領域とが示されている。この図によれば、プリント基板1.2は励磁導体1.21と受信導体1.22とを備え、本実施例では受信導体1.22に2つのコイルが割り当てられている。励磁導体1.21および受信導体1.22は、多層状に構成された柔軟なプリント基板1.2に導体路として形成されている。受信導体1.22の第1および第2レーンは、それぞれ一対の受信導体路を備える。したがって、
図5に示すように、第1レーンおよび第2レーンに隣接して両側に励磁導体1.21が配置されている。
【0035】
第2端部1.25の領域には、励磁導体1.21および受信導体1.22のいずれも配置されていない。むしろ第2端部1.25の領域には、励磁導体1.21に給電し、受信導体1.22により受信された信号を接続部材1.27に伝送する導体路が設けられている。
【0036】
また第1端部1.24の領域(詳しく図示しない)にも、励磁導体1.21および受信導体1.22のいずれも配置されていない。同様にプリント基板1.2の長手(長さ)方向又は縦方向縁部に沿って延在する縁部1.23も、励磁導体1.21および受信導体1.22を備えていない。
【0037】
図4は、プリント基板1.2の側面図を示す。プリント基板1.2は、ケーシング1.1内への組付け前には図示のように平坦な形状を備えている。
【0038】
はんだ付け方法、例えばワイヤボンディング方法によって、プレート1.3が、プリント基板1.2の接続部材1.27に結合される。
図8には、適宜な配置が示されている。プレート1.3には、電子回路1.31を形成する電子モジュールが装着されている。さらにプレート1.3には、コネクタ部材1.32が配置されている。ケーブルを介して、電子回路1.31、ひいては走査部材1を後続電子機器に接続することができる。
【0039】
一般にプレート1.3は、プリント基板1.2がケーシング1.1内に位置決めされる前にプリント基板1.2に結合される。しかしながら、組付け段階をよりよく説明することができるように、
図6および7にはプレート1.3は示されていない。走査部材1への組付けに際して、プリント基板1.2は、開口1.13を通って接線方向にガイド1.12に差し込まれ、プリント基板1.2の第1端部1.24がプリント基板1.2の表面に接触するまでガイド内に完全に挿入されるか、もしくは押し込まれる。この場合、2つの溝として形成されたガイド1.12は、プリント基板1.2の縁部1.23に係合する。さらにプリント基板1.2の端面が、縁部1.23の領域で溝により案内され、これによりプリント基板1.2は、軸線Aに対して平行な方向に、形状に基づいた結合により位置決めされる。ガイド1.12もしくは溝は、プリント基板1.2を押し込むことが可能となり、しかもケーシング1.1内にプリント基板1.2が正確に位置決めされるように寸法決めされている。この場合、プリント基板1.2が弾性的に変形されることにより、半径方向外側に位置するガイド1.12の溝の壁に対してプリント基板1.2を押圧する機械的な応力が生じる。このようにして、プリント基板1.2とガイド1.12との間の許容できない遊びにもかかわらず、必要とされる測定精度のために縦方向寸法に沿ったプリント基板1.2の正確な位置決めが達成される。
【0040】
上述のように、
図6および
図7に示した組付け段階では、一般にプレート1.3は、既にプリント配線板1.2の第1端部1.24に結合されている。代替的には、
図6および
図7に示した段階で、プレート1.3はプリント基板1.2に結合されていてもよい。
【0041】
次にケーシング部分1.11は軸線Aの方向に対して平行に溝1.151に押し込まれる。同時にプレート1.3は、同様に軸線Aに平行なケーシング部分1.11の溝1.111に収容される。この組付け段階の後に、
図8に示す装置が得られる。次いでケーシング部分1.11は、カバーによって閉じられる。高い密閉性を達成するために、ケーシング部分1.11の組付け前または組付け後に接合部および/または中空スペースに接着剤または鋳込み剤を挿入してもよい。
【0042】
ガイド1.12内に挿入されることにより、プリント基板1.2は、軸線Aを中心として湾曲した円周に沿って弾性変形される。すなわち、ガイド1.12の領域で、プリント基板1.2はリング状もしくは中空円筒状の形状をとり、この場合、プリント基板1.2はガイド1.12よりも長く、特に純粋に分割部材2を走査するために必要な周よりも長い。この長さを超えるプリント基板1.2の部分、特に第2端部1.25は、例えば
図8に示すように、半径方向外側に向いた方向要素として延在している。したがって、走査部材1は、軸線Aから半径方向に向いた1本の半直線Rがプリント基板1.2と2回交わる領域を備える。交点は
図8にPにより示されている。組付け状態では、プリント基板1.2の端部1.24は重なるように配置されており、端部1.24は円周に対して半径方向外側に配置されている。
【0043】
したがって、組付けられた走査部材1は、ケーシング1.1内にリング状に配置された柔軟なプリント基板1.2を備え、プリント基板1.2には励磁導体1.21と受信導体1.22とが配置されている。励磁導体1.21および受信導体1.22は、周方向に沿って走査部材1のほぼ全周にわたって延在する。完全に全周にわたって延在させることは実際には難しく、多大な手間をかけてのみ可能である。なぜなら、走査部材1には励磁導体1.21および受信導体1.22のための接続領域が設けられており、これにより、例えわずかであっても非連続性が生じるからである。
【0044】
作動状態では、分割部材2は、走査部材1に接触することなしに走査部材1の半径方向内側に位置している。一般に、分割部材2は、ロータとして用いられ、軸線Aを中心として回転可能な機械部分に固定される。これに対して、走査部材1は、角度測定装置のステータを形成しており、不動の機械部分に固定される。軸線Aを中心として分割部材2と走査部材1とが相対回動された場合、走査部材1において、それぞれの角度位置に応じた信号が誘導効果により生成可能である。したがって、本発明による走査部材1を備える角度測定装置は、第1機械部分に固定可能な走査部材1と、第2固定部分、例えばシャフトに固定可能な分割部材2との間の角度位置を検出するために用いられる。
【0045】
分割部材2は、本実施例ではリングとして構成されており、このリングの周面には、軸線方向に間隔をおいて2つの分割レーン2.1,2.2が配置されている。これらの分割レーン2.1,2.2は、本実施例ではウェブ2.11,2.21と、これらのウェブの間に位置するギャップ2.12,2.22を含み、第1分割レーン2.1は64個のこのようなウェブ2.11を備え、第2分割レーン2.2は31個しかウェブ2.22を備えていない。したがって、両方の分割レーン2.1,2.2はそれぞれ、周期的に連続して交互に配置されたウェブ2.11,2.21およびギャップ2.12,2.22からなる。分割レーン2.1,2.2は、特に周方向に沿って異なる分割周期を備える。
【0046】
適宜な信号を形成するための前提は、励磁導体1.21が、受信導体1.22の領域もしくは受信導体1.22により走査される分割レーン2.1,2.2の領域に時間的に変動する電磁的な励起場を生成することである。図示の実施例では、励磁導体1.21は、電流が貫流する平行した複数の個別導体路として形成されている。励磁導体1.21が通電された場合、それぞれの励磁導体1.21の周囲にはホース状もしくは円筒状に向いた電磁場が形成される。生じた電磁場の磁界線は、励磁導体1.21を中心とした同心円の形状で延在し、磁界線の方向は、既知のように励磁導体1.21の流れ方向に依存する。ウェブ2.11,2.21の領域では渦流が誘導され、角度位置に依存して磁界の変調が行われる。これに応じて、受信導体1.22によって周方向の相対位置を測定することができる。受信レーンの一対の受信導体1.22は、回転方向の決定を行うこともできるように、それぞれ90°だけ位相をずらされた信号を供給するように配置されている。周方向の位置、すなわち角度位置を決定するためのそれぞれの受信レーンは、固有の励磁導体1.21によって取り囲まれる。プレート1.3上の電子回路1.31は、信号を評価もしくは処理するために用いられ、例えば測定された角度位置に関する情報を含むデジタルデータを形成し、出力することもできる。
【0047】
受信導体1.22の2つのレーンは、実質的に走査部材1の全周、すなわち軸線Aを中心としてほぼ360°に延在する。このような構成により、構成許容差が比較的大きい場合にも正確な角度決定を行うことができる。
【0048】
2つの分割レーン2.1,2.2がわずかに異なる分割周期を備えることにより、うなり原理もしくはノギス原理を利用して、受信導体1.22の信号から走査部材1に対して分割部材2の絶対的な角度位置を決定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 走査部材(センサ装置又はスキャナー装置)
1.1 ケーシング
1.11 ケーシング部分
1.12 ガイド
1.13 開口
1.2 プリント基板
1.21 励磁導体
1.22 受信導体
1.23 縁部
1.24,1.25 端部
1.26 ブリッジ部材
1.3 プレート
1.31 電子回路
1.151 アンダカット
A 軸線
R 半直線
s 空隙