特許第6559046号(P6559046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559046
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20190805BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20190805BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20190805BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20190805BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   H01L21/88 B
   H01L21/302 105A
   C23C16/40
   C23C16/56
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-216524(P2015-216524)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-92101(P2017-92101A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】永井 洋之
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064945(JP,A)
【文献】 特開2017−050304(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013941(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/173067(WO,A1)
【文献】 特開2014−236192(JP,A)
【文献】 特表2011−510517(JP,A)
【文献】 特開2014−072226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027−21/033
H01L 21/31−21/3115
H01L 21/3205−21/3215
H01L 21/285
H01L 21/768
C23C 16/40
C23C 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被エッチング膜上にメタルパターンが形成されてなる基板上に、反転材の一部となる金属酸化膜を形成し、前記メタルパターン上に、前記被エッチング膜上よりもOの結合が強い酸化膜が形成されるようにする第1工程と、
次いで、還元処理を行って、前記メタルパターン上の前記金属酸化膜を、酸化物のままの第1金属含有膜とし、前記被エッチング膜上の前記金属酸化膜を、表面が金属に還元された第2金属含有膜とする第2工程と、
次いで、金属上には形成されやすく、酸化物上には形成され難い性質を有する金属膜を、反転材の一部として前記被エッチング膜上の前記第2金属含有膜上のみに選択的に形成する第3工程と、
次いで、前記メタルパターンをエッチング除去し、前記金属酸化膜から得られた前記第1金属含有膜および前記第2金属含有膜と前記金属膜とで構成される反転材を残存させ、反転材からなる反転パターンを得る第4工程と
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記金属酸化膜を形成する工程は、ALDによりMnOx膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記メタルパターンは、Ti含有膜で構成され、前記メタルパターン上の前記MnOx膜が、MnTiOまたはMnTiOとなることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記メタルパターンは、TiN膜で構成されることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記還元処理は水素ラジカル処理であり、この水素ラジカル処理により、前記メタルパターン上の前記金属酸化膜としてのMnOx膜を、酸化物のままの第1金属含有膜である第1Mn含有膜とし、前記被エッチング膜上の前記金属酸化膜としてのMnOx膜を、前記第2金属含有膜である表面が金属Mnに還元された第2Mn含有膜とすることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記金属膜は、Ru膜であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
被エッチング膜上にメタルパターンが形成されてなる基板上に、反転材の一部となるMnOx膜をALDにより形成する第1工程と、
次いで、前記MnOx膜の表面に水素ラジカル処理を施す第2工程と、
次いで、反転材の一部となるRu膜をCVDにより形成する第3工程と、
次いで、前記メタルパターンをエッチング除去し、前記MnOx膜に水素ラジカル処理を施した後の物質および前記Ru膜とで構成される反転材を残存させ、前記被エッチング膜をエッチングするための、反転材からなる反転パターンを得る第4工程と
を有し、
前記メタルパターンは、前記MnOx膜が形成された際に、前記水素ラジカル処理では実質的に金属Mnに還元されない酸化物が形成される材料からなり、
前記MnOx膜の前記メタルパターンに対応する部分は、前記水素ラジカル処理により酸化物のままの第1Mn含有膜となり、
前記MnOx膜の前記被エッチング膜に対応する部分は、前記水素ラジカル処理により還元されて表面に金属Mnが形成された第2Mn含有膜となり、
前記Ru膜は、前記第1Mn含有膜上には実質的に形成されず、前記第2Mn含有膜上に選択的に形成されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
前記メタルパターンは、Ti含有膜で構成され、前記メタルパターン上の前記MnOx膜が、MnTiOまたはMnTiOとなることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記メタルパターンは、TiN膜で構成されることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記MnOx膜は、基板を配置した処理容器内に、マンガン化合物ガスおよび酸素含有ガスを、前記処理容器内のパージを挟んで交互に供給することにより成膜し、その際の基板温度を、前記マンガン化合物の熱分解温度よりも低い温度とすることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記水素ラジカル処理は、基板温度を200〜400℃にして100sec以上の期間行われることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記水素ラジカル処理は、水素ガスを含むガスのプラズマにより生成した水素ラジカルを前記基板に供給することにより行われることを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記Ru膜を形成する際に、成膜原料としてルテニウムカルボニルを用いることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記第1工程から前記第3工程は、真空を破ることなく連続的に行うことを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記メタルパターンは、SADP法、SAQP法、またはLEx法によりパターニングされて形成されたものであることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記被エッチング膜は、Si含有膜で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスにおいてパターンを形成するパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
将来的な半導体デバイスの微細化に対応した次世代露光技術として、13.5nmと非常に短い波長を用いるEUV(extreme ultraviolet)が検討されている。しかし、光源の照度不足により、量産適用に至っておらず、別のアプローチを採ることを余儀なくされている。
【0003】
そのため、波長が193nmのArFの露光をベースとしたマルチパターニング技術の適用が主流となってきているが、その中でもセルフアラインダブルパターニング(Self Align Double Patterning;SADP)法と呼ばれるパターニング技術が多用されている。図9に示すように、SADP法は、最初に被エッチング層101の上にフォトリソグラフィによりピッチSのパターン102を形成し(図9(a))、次いで、スリミングによりマンドレル(芯材)と呼ばれる第1のパターン103を形成し(図9(b))、その後、第1のパターン103に沿ってスペーサ104を成膜し(図9(c))、引き続き、スペーサ104をエッチバックし(図9(d))、その後、第1のパターン(マンドレル)103のエッチングを行うことにより、スペーサによる第2のパターン105を形成する(図9(e)。そして、この第2のパターン105をマスクとして被エッチング層101をエッチングする(図9(f))。これにより、ピッチS/2のエッチングパターン106を得る。すなわちリソグラフィ技術のみで形成されるピッチSの半分のピッチS/2のパターンを得ることが可能である(例えば特許文献1)。さらには、このSADP工程をもう一回繰り返し、ピッチを1/4にすることが可能なセルフアラインクアドループルパターニング(Self Align Quadruple Patterning;SAQP)法も検討されている。また、マルチパターニングの別の手法として、露光したパターンを基板のハードマスクにエッチングによって転写し、半分ピッチずらした位置に2回目の露光を行い、ハードマスクを加工するリソエッチリソエッチ(LELE)法等、リソエッチを複数回(x回)繰り返すLEx法も用いられている。
【0004】
これらの技術の場合、工程数が増えることによるばらつきや加工精度の制御性の問題が顕著になってくるが、例えばSADP法の場合、その性質上、ラインアンドスペース(L/S)のスペース部(S)に関しては、2種類あり、その一方については、スペーサの膜厚ばらつき、エッチングばらつき、およびリソグラフィのCDのばらつきが影響するため、最終的なスペース部のCDばらつきが大きくなる傾向がある。一方、ライン部(L)はスペーサの膜厚とエッチングばらつきのみである。具体的には、図10に示すように、ライン部(L1)はすべてスペーサ104の幅に対応し、そのばらつきはスペーサ104の膜厚、エッチングに依存するのみであるのに対し、スペース部に関しては、第1のパターン103に対応する第1のスペース部(S1)と隣接するスペーサ104の間に対応する第2のスペース(S2)の2種類あり、S1のばらつきはリソグラフィのCDおよびエッチングに依存するのみであるが、S2のばらつきは、リソグラフィのCD、スペーサの膜厚、エッチングに依存する。
【0005】
現在、半導体デバイスの配線工程においては、ダマシン構造を用いたCu配線が主流であるが、その場合、SADP法により形成されたスペース部が配線部分となる。つまりこれは、配線部のばらつきが大きくなることを意味する。このようなことは、SAQP法やLEx法においても生じる。
【0006】
しかし、配線工程においては、絶縁部のばらつきより配線部のばらつきのほうが問題になることが多い。このため、反転技術を用いてライン部とスペース部を反転させ配線部分のばらつきを抑えることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−134378号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0263965号明細書(本明細書段落0039に記載)
【特許文献3】国際公開第2012/060428号(本明細書段落0040に記載)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常の反転技術は、パターンの上への反転材の成膜→反転材のエッチバック→元のパターンのエッチング除去という工程を経てライン部とスペース部を反転させているが、この技術自体、工程数が多く、ばらつきの要因となる。また、加工制御性の問題も生じる。このため、このような反転技術は積極的に採用されていないのが実情である。
【0009】
したがって、本発明は、パターンを反転する際のばらつきが少ないパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、被エッチング膜上にメタルパターンが形成されてなる基板上に、反転材の一部となる金属酸化膜を形成し、前記メタルパターン上に、前記被エッチング膜上よりもOの結合が強い酸化膜が形成されるようにする第1工程と、次いで、還元処理を行って、前記メタルパターン上の前記金属酸化膜を、酸化物のままの第1金属含有膜とし、前記被エッチング膜上の前記金属酸化膜を、表面が金属に還元された第2金属含有膜とする第2工程と、次いで、金属上には形成されやすく、酸化物上には形成され難い性質を有する金属膜を、反転材の一部として前記被エッチング膜上の前記第2金属含有膜上のみに選択的に形成する第3工程と、次いで、前記メタルパターンをエッチング除去し、前記金属酸化膜から得られた前記第1金属含有膜および前記第2金属含有膜と前記金属膜とで構成される反転材を残存させ、反転材からなる反転パターンを得る第4工程とを有することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0011】
上記第1の観点において、前記金属酸化膜を形成する工程は、ALDによりMnOx膜を形成するものとすることができる。前記メタルパターンは、Ti含有膜で構成され、前記メタルパターン上の前記MnOx膜が、MnTiOまたはMnTiOとなる構成とすることができる。この場合に、前記メタルパターンは、TiN膜で構成されることが好ましい。
【0012】
上記第1の観点において、前記還元処理は水素ラジカル処理であり、この水素ラジカル処理により、前記メタルパターン上の前記金属酸化膜としてのMnOx膜を、酸化物のままの第1金属含有膜である第1Mn含有膜とし、前記被エッチング膜上の前記金属酸化膜としてのMnOx膜を、前記第2金属含有膜である表面が金属Mnに還元された第2Mn含有膜とすることができる。また、前記金属膜としてRu膜を用いることができる。
【0013】
本発明の第2の観点は、被エッチング膜上にメタルパターンが形成されてなる基板上に、反転材の一部となるMnOx膜をALDにより形成する第1工程と、次いで、前記MnOx膜の表面に水素ラジカル処理を施す第2工程と、次いで、反転材の一部となるRu膜をCVDにより形成する第3工程と、次いで、前記メタルパターンをエッチング除去し、前記MnOx膜に水素ラジカル処理を施した後の物質および前記Ru膜とで構成される反転材を残存させ、前記被エッチング膜をエッチングするための、反転材からなる反転パターンを得る第4工程とを有し、前記メタルパターンは、前記MnOx膜が形成された際に、前記水素ラジカル処理では実質的に金属Mnに還元されない酸化物が形成される材料からなり、前記MnOx膜の前記メタルパターンに対応する部分は、前記水素ラジカル処理により酸化物のままの第1Mn含有膜となり、前記MnOx膜の前記被エッチング膜に対応する部分は、前記水素ラジカル処理により還元されて表面に金属Mnが形成された第2Mn含有膜となり、前記Ru膜は、前記第1Mn含有膜上には実質的に形成されず、前記第2Mn含有膜上に選択的に形成されることを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0014】
上記第2の観点において、前記メタルパターンは、Ti含有膜で構成され、前記メタルパターン上の前記MnOx膜が、MnTiOまたはMnTiOとなる構成とすることができる。この場合に、前記メタルパターンは、TiN膜で構成されることが好ましい。
【0015】
また、上記第2の観点において、前記MnOx膜は、基板を配置した処理容器内に、マンガン化合物ガスおよび酸素含有ガスを、前記処理容器内のパージを挟んで交互に供給することにより成膜し、その際の基板温度を、前記マンガン化合物の熱分解温度よりも低い温度とすることが好ましい。
【0016】
また、前記水素ラジカル処理は、基板温度を200〜400℃にして100sec以上の期間行われることが好ましい。前記水素ラジカル処理は、水素ガスを含むガスのプラズマにより生成した水素ラジカルを前記基板に供給することにより行うことができる。
【0017】
前記Ru膜を形成する際に、成膜原料としてルテニウムカルボニルを用いること用いることが好ましい。また、前記第1工程から前記第3工程は、真空を破ることなく連続的に行うことが好ましい。
【0018】
上記第1および第2の観点において、前記メタルパターンとして、SADP法、SAQP法、またはLEx法によりパターニングされて形成されたものを好適に用いることができる。前記被エッチング膜は、Si含有膜で構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属膜を被エッチング膜に対応する部分に選択的に形成することができるので、反転材のエッチバックが不要となり、パターンを反転する際のばらつきを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るパターン形成方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係るパターン形成方法の各工程を説明するための工程断面図である。
図3】従来の反転材を用いた反転工程と本発明の一実施形態とを概略的に比較して示す工程図である。
図4】本発明の一実施形態に係るパターン形成方法で得られた反転パターンをマスクとして被エッチング膜をエッチングした状態を示す図である。
図5】ステップ3〜5によってRu膜15が被エッチング膜11上に選択的に成膜されるメカニズムをまとめて示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るパターン形成方法のステップ2〜5の実施に好適な処理システムを示す平面図である。
図7】MnOx膜成膜装置に好適に用いることができる成膜装置の一例を示す断面図である。
図8】水素ラジカル処理装置の一例を示す断面図である。
図9】SADP法によりパターンを形成する際の手順を説明するための図である。
図10】SADP法によりパターンを形成した際のパターン幅、スペース幅を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るパターン形成方法を示すフローチャートであり、図2はその各工程を説明するための工程断面図である。
【0023】
<パターン形成方法の概略>
本実施形態では、最初に、FEOL(Front End Of Line)工程により得られた下部構造10(詳細な構造は省略)上に、被エッチング膜11を有し、その上に、マルチパターニング技術、例えば上述したSADP法、SAQP法、またはLEx法によりメタル膜がパターニングされて形成されたメタルパターンとして、TiN膜がパターニングされて形成されたTiNパターン12を有する基板、例えば半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを準備する(ステップ1、図2(a))。被エッチング膜11は、特に限定されないが、例えばSiO膜(TEOS膜等)、低誘電率(Low−k)膜(SiCO、SiCOH等)、SiN膜等のSi含有物質からなり、例えば層間絶縁膜として形成される。
【0024】
次いで、ウエハWに対して、前処理としてデガス(Degas)プロセスや前洗浄(Pre−Clean)プロセスによって、被エッチング膜11表面の水分を除去し(ステップ2、図2では図示せず)、その後、層間絶縁膜に代表される被エッチング膜11およびメタルパターン膜であるTiNパターン12の上に、反転材の一部となる金属酸化膜としてALDにより酸化マンガン膜13を形成する(ステップ3、図2(b))。なお、酸化マンガンはMnO、Mn、Mn、MnO等複数の形態をとり得るため、酸化マンガンはこれら全てを総称してMnOxで表す。
【0025】
次いで、ALDによるMnOx膜13に対して水素ラジカル処理を施す(ステップ4、図2(c))。この処理は、MnOx膜13の表面を還元して金属Mnとし、次に形成される反転材の一部となるRu膜15を、Si含有被エッチング膜11に対して成膜しやすくするための処理である。ただし、後述するように、MnOx膜13は、水素ラジカル処理によってもTiNパターン12と接触する部分は表面が金属Mnに還元されずに酸化物状態の第1Mn含有膜14aとなり、被エッチング膜11に接触する部分のみに表面の還元が生じ、その部分が表面に金属Mnが生成された第2Mn含有膜14bとなる。なお、この水素ラジカル処理により、第2Mn含有膜14bの一部は、Si含有被エッチング膜11との反応によりシリケート化される。
【0026】
その後、MnOx膜とともに反転材となる金属膜としてCVDによるRu膜15を形成する(ステップ5、図2(d))。これにより、RuおよびMnを含むRu/Mn反転材16が形成される。CVDによるRu膜は金属上には成膜されるが酸化物上には形成されない性質を有するため、TiNパターン12上の第1Mn含有膜14aにはRu膜15が形成されず、被エッチング膜11上の第2Mn含有膜14bにのみRu膜15が形成される。すなわち、TiNパターン12の上部に形成された第1Mn含有膜14aの上にはRu膜15は形成されず、スペース部分のみにRu膜15が形成される。したがって、反転材をエッチバックする工程が不要となる。
【0027】
その後、反転材16を残存させ、TiNパターン12(およびTiNパターン12の上の薄い第1Mn含有膜14a)を選択的にエッチングして除去し、反転材16からなる反転パターンを形成する(ステップ6、図2(e))。反転パターンを構成する反転材16は、具体的には、Ru膜15と、その側面の第1Mn含有膜14aと、Ru膜15の下の底部に存在する第2Mn含有膜14bからなっている。
【0028】
このように、本実施形態では、従来の反転材を用いた反転工程に必要であった反転材のエッチバックが不要である。
【0029】
すなわち、従来の反転材を用いた反転工程は、概略的には例えば図3(a)に示すように、例えばSADP法により形成されたTiNパターン12を有するウエハWを準備し(ステップA1)、次いで、反転材215を塗布により成膜する(ステップA2)。そうすると、TiNパターン12の上面にも反転材215が比較的厚く塗布される。このため、反転材215をエッチバックし(ステップA3)、その後、TiNパターン12をエッチングし、反転材215からなる反転パターンを形成する(ステップA4)。これに対し、本実施形態では、概略的には図3(b)に示すように、上記ステップA1と同様にTiNパターン12を有するウエハWを準備し(ステップB1)、次いで、上述したようにRu/Mn反転材16を形成する(ステップB2)、その後、反転材のエッチバックを経ることなく、反転材16を残存させた状態で、TiNパターン12をエッチング除去し、反転材16からなる反転パターンを形成する(ステップB4)。
【0030】
このように、本実施形態では、反転材のエッチバックを省略することができるので、従来の反転材を用いた反転工程において、エッチバック工程起因のばらつきや、加工制御性の問題を改善することができる。
【0031】
本実施形態では、MnOx膜成膜、水素ラジカル処理、Ru膜成膜処理、TiNパターンの選択除去により反転パターンを形成するが、MnOx膜成膜、水素ラジカル処理、Ru膜成膜処理の工程はエッチバック工程のようにばらつきをもたらさず、かつ加工制御性の問題が生じないので、エッチバック工程を省略することにより、パターンを反転する際のばらつきを少なくすることができる。なお、MnOx膜成膜、水素ラジカル処理、Ru膜成膜処理は、真空を破ることなく連続して行うことが好ましい。これにより、これらの工程中での膜の酸化を防止することができ、より高精度に反転パターンを形成することができる。
【0032】
そして、図4に示すように、このような反転パターンを構成する反転材16をマスクとして被エッチング膜11をエッチングすることにより、エッチングパターン17が形成される。被エッチング膜11は例えば層間絶縁膜であり、エッチングパターン17の凹部18には例えばCu膜が埋め込まれてCu配線が形成される。
【0033】
<主要工程の詳細>
次に、以上の工程のうち、主要工程であるステップ3〜5について詳細に説明する。
【0034】
(ステップ3)
まず、ステップ3のMnOx膜13を形成する工程について説明する。
MnOx膜13は、メタルパターン膜であるTiN膜12との間で、水素ラジカル処理では金属まで還元されない結合の強い酸化膜を生成する酸化膜として形成される。
【0035】
MnOx膜13は、処理容器内の圧力を0.133〜13.3Pa程度の減圧状態として、マンガン化合物ガスとHO等の酸素含有ガスとを、処理容器内のパージを挟んで交互に供給するALDにより成膜する。このとき、成膜の際の熱、またはその後のプロセス(水素ラジカル処理やアニール処理等)の熱により、少なくとも被エッチング膜11との境界部分被エッチング膜11中のSiおよびO成分と反応してマンガンシリケート(MnxSiOy(MnSiOまたはMnSiO))が形成される。
【0036】
また、TiNパターン12上では、MnOx膜形成時に、TiNパターン12中のTiと、MnOx膜のALDの際に供給されるHOおよびMnとが反応して強固な結合を有するMnTiOまたはMnTiOが生成される。
【0037】
MnOx膜13を成膜する際に用いるマンガン化合物ガスとしては、シクロペンタジエニル系マンガン化合物、アミジネート系マンガン化合物、アミドアミノアルカン系マンガン化合物が好適である。
【0038】
シクロペンタジエニル系マンガン化合物としては、CpMn[=Mn(C]、(MeCp)Mn[=Mn(CH]、(EtCp)Mn[=Mn(C]、(i−PrCp)Mn[=Mn(C]、(t−BuCp)Mn[=Mn(C]のような一般式Mn(RCで表されるビス(アルキルシクロペンタジエニル)マンガンを挙げることができる。
【0039】
アミジネート系マンガン化合物としては、特許文献2(米国特許出願公開第2009/0263965号明細書)に開示されている一般式Mn(RN−CR−NRで表されるビス(N,N'−ジアルキルアセトアミジネート)マンガンを挙げることができる。
【0040】
アミドアミノアルカン系マンガン化合物としては、特許文献3(国際公開第2012/060428号)に開示されている一般式Mn(RN−Z−NRで表されるビス(N,N'−1−アルキルアミド−2−ジアルキルアミノアルカン)マンガンを挙げることができる。ここで、上記一般式中の“R,R,R,R”は−C2n+1(nは0以上の整数)で記述される官能基であり、“Z”は−C2n−(nは1以上の整数)で記述される官能基である。
【0041】
また、他のマンガン化合物として、カルボニル系マンガン化合物、ベータジケトン系マンガン化合物も用いることができる。カルボニル系マンガン化合物としては、デカカルボニル2マンガン(Mn(CO)10)やメチルシクロペンタジエニルトリカルボニルマンガン((CH)Mn(CO))を挙げることができる。この中では、特に、Mn(CO)10は構造が単純であるため、不純物の少ないMn膜の成膜を期待することができる。
【0042】
また、酸素含有ガスとしては、HO(水蒸気)、NO、NO、NO、O、O、H、CO、CO、メチルアルコールやエチルアルコールなどのアルコール類を用いることができる。
【0043】
また、ALDでMnOx膜13を成膜する際に、CVDモードとなって表面が粗くなることを防止する観点から、成膜原料であるマンガン化合物の熱分解開始温度よりも低い温度とすることが好ましい。なお、有機Mn化合物の温度が気化開始温度以下ではガスとして処理容器に供給することができないから、気化開始温度が事実上の下限となる。
【0044】
有機Mn化合物がアミドアミノアルカン系マンガン化合物(ビス(N,N'−1−アルキルアミド−2−ジアルキルアミノアルカン)マンガン)であれば、230℃付近から熱分解が始まるため、ALD成膜温度は230℃未満であることが好ましい。また、このマンガン化合物を有効に気化させるためには80℃以上に加熱する必要がある。ALD成膜温度として好ましいのは、100〜180℃であり、CVDモードになることを極力防止するとともに、成膜速度を上げるためには、130℃付近が好ましい。また、他の好適なMn化合物であるシクロペンタジエニル系マンガン化合物、アミジネート系マンガン化合物についても、同様の温度範囲において同様の膜厚で成膜することができる。
【0045】
(ステップ4)
次に、ステップ4の水素ラジカル処理について説明する。
水素ラジカル処理は、MnOx膜13を還元して表面を金属Mnに改質する処理であり、この処理によりRu膜15が成膜されやすくなる。すなわち、Ru膜は下地が酸化膜であるとRu核形成密度が低くなり堆積され難いが、下地が金属であるとRu核形成密度が高くなって堆積されやすいことから、水素ラジカル処理により表面が金属Mnに改質された部分にRu膜15が成膜されやすくなるのである。
【0046】
一方、MnOx膜13のうちTiNパターン12と接触する部分は、上述したように、MnTiOまたはMnTiOとなっており、これらはOの結合が強いため、水素ラジカル処理では金属まで還元されず、その部分は酸化物のままの第1Mn含有膜14aとなる。このため、水素ラジカル処理によりMnOx膜13のうちSi含有被エッチング膜11に接触する部分のみに表面の還元が生じ、その部分が表面に金属Mnが生成された第2Mn含有膜14bとなる。
【0047】
水素ラジカル処理は、MnOx膜13を成膜した後、大気暴露することなく行われることが好ましい。MnOx膜13を成膜後に大気暴露する場合には、水素ラジカル処理を行う処理容器において水素ラジカル処理の前にデガス処理を行うことが好ましい。
【0048】
水素ラジカル処理は、水素ラジカル(原子状水素)が生成されればその手法は問わない。例えば、リモートプラズマ処理、プラズマ処理、加熱フィラメントに水素ガスを接触させる処理を挙げることができる。
【0049】
リモートプラズマ処理は、処理容器外で誘導結合プラズマやマイクロ波プラズマ等で水素プラズマを生成し、これを処理容器内に供給し、その中の水素ラジカルにより処理するものである。
【0050】
また、プラズマ処理は、処理容器内に容量結合プラズマまたは誘導結合プラズマ等を生成し、これによって処理容器内に生成された水素プラズマ中の水素ラジカルにより処理するものである。
【0051】
さらに、加熱フィラメントに水素ガスを接触させる処理は、加熱フィラメントが触媒として機能し、接触分解反応により水素ラジカルを発生させる。
【0052】
水素ラジカル処理の処理温度(ウエハ温度)は、MnOx膜13の還元性を決定する重要なファクターである。十分な還元性を得るためには200〜400℃が好ましく、300〜400℃がより好ましい。また、水素ラジカル処理の処理時間もMnOx膜13の還元性を決定する重要なファクターである。十分な還元性を得るためには処理時間は100sec以上が好ましく、300sec付近がより好ましい。
【0053】
水素ラジカル処理の際に供給されるガスとしては、水素ガスにArガス等の不活性ガスを加えたものが好ましく、この際の水素濃度は1〜50%が好ましい。また、水素ラジカル処理の処理圧力は、10〜500Paが好ましく、20〜100Paがより好ましい。
【0054】
(ステップ5)
次に、ステップ5のRu膜15を形成する工程について説明する。
CVD−Ru膜15は、ルテニウムカルボニル(Ru(CO)12)を成膜原料として用いて熱CVDにより好適に形成することができる。これにより、高純度で薄いRu膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。この場合に、成膜温度が175〜230℃の範囲、圧力が1.3〜133Paの範囲であることが好ましい。
【0055】
なお、CVD−Ru膜15は、ルテニウムカルボニル以外の他の成膜原料、例えば(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウム、ビス(シクロペンタジエニル)(2,4−メチルペンタジエニル)ルテニウム、(2,4−ジメチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(2,4−メチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムのようなルテニウムのペンタジエニル化合物を用いたCVDを用いて成膜することもできる。
【0056】
CVD−Ru膜は、上述したように、下地が金属であると堆積されやすいが、下地が酸化膜であるとRuの核形成密度が低くなり、堆積され難い性質を有する。このため、上述の水素ラジカル処理を行うことにより、被エッチング膜11上のMnOx膜13の表面を還元して金属Mnを生成させ、その部分にRu膜15が堆積できるようにする。ただし、TiNパターン12上では、Oの結合が強いMnTiOまたはMnTiOが生成されており、水素ラジカル処理した際にも実質的に還元されず、酸化物のままの第1Mn含有膜14aとなっているから、Ru膜15はほとんど堆積されない。したがって、上述したようにTiNパターン12の間のスペース部分のみに選択的にRu膜15が形成される。
【0057】
<ステップ3〜5における選択成膜のメカニズムのまとめ>
以上のように、ステップ3〜5によってRu膜15が被エッチング膜11上に選択的に成膜されるメカニズムをまとめると、図5に示すようになる。すなわち、図5(a)に示すように、ステップ3において被エッチング膜11を構成する例えばTEOS膜上およびTiNパターン12を構成するTiN膜上にALDによりMnOx膜13を成膜すると、TEOS膜ではMnOx膜13の表面はMnOxのままであるが、TiN膜上ではMnOx膜中のMnとTiN膜中のTiとHOとが反応してOの結合が強いMnTiOまたはMnTiOが生成される。
【0058】
この状態でステップ4の水素ラジカル処理を行うと、図5(b)に示すように、被エッチング膜11を構成するTEOS膜上ではMnOx膜13が還元されて表面に金属Mnが生成された第2Mn含有膜14bとなるのに対し、TiNパターン12を構成するTiN膜上ではMnOx膜13がMnTiOまたはMnTiOとなっており、これらはOの結合が強いため、水素ラジカル処理ではMnは金属まで還元されず、その部分は酸化物のままの第1Mn含有膜14aとなる。
【0059】
次いで、ステップ5のCVDによるRu膜15の成膜を行うと、図5(c)に示すように、被エッチング膜11であるTEOS膜上には、表面に金属Mnが生成された第2Mn含有膜14bが形成されているのでRu膜が堆積されるのに対し、TiNパターン12を構成するTiN膜上では酸化物のままの第1Mn含有膜14aとなっているので、Ru膜がほとんど堆積されない。したがって、被エッチング膜11上に選択的にRu膜が成膜される。
【0060】
<ステップ2〜5に好適な処理システム>
次に、上記ステップ2〜5の実施に好適な処理システムについて説明する。
図6はそのような処理システムを示す平面図である。
【0061】
図6に示すように、処理システム20は、デガス処理、ALDによるMnOx膜の成膜、および水素ラジカル処理を行うための第1の処理セクション21と、Ru膜の成膜のための第2の処理セクション22と、搬入出セクション23と、制御部24とを有している。
【0062】
第1の処理セクション21は、第1の真空搬送室31と、この第1の真空搬送室31の壁部に接続された、4つのMnOx膜成膜装置32a,32b,32c,32d、デガス室33、および水素ラジカル処理装置34とを有している。水素ラジカル処理装置34はウエハWのデガス処理も行えるようになっている。第1の真空搬送室31のデガス室33と水素ラジカル処理装置34との間の壁部には、第1の真空搬送室31と後述する第2の真空搬送室41との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し室35が接続されている。
【0063】
MnOx膜成膜装置32a,32b,32c,32d、デガス室33、水素ラジカル処理装置34、および受け渡し室35は、第1の真空搬送室31の各辺にゲートバルブGを介して接続されている。
【0064】
第1の真空搬送室31内は所定の真空雰囲気に保持されるようになっており、その中には、ウエハWを搬送する第1の搬送機構36が設けられている。この第1の搬送機構36は、第1の真空搬送室31の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部37と、その先端に設けられたウエハWを支持する2つの支持アーム38a,38bとを有する。第1の搬送機構36は、ウエハWをMnOx膜成膜装置32a,32b,32c,32d、デガス室33、水素ラジカル処理装置34、および受け渡し室35に対して搬入出する。
【0065】
第2の処理セクション22は、第2の真空搬送室41と、この第2の真空搬送室41の対向する壁部に接続された、2つのRu膜成膜装置42aおよび42bとを有している。
【0066】
第2の真空搬送室41の第1の処理セクション21側の2つの壁部には、それぞれ上記デガス室33および水素ラジカル処理装置34が接続され、デガス室33と水素ラジカル処理装置34との間の壁部には、上記受け渡し室35が接続されている。すなわち、デガス室33、水素ラジカル処理装置34および受け渡し室35は、いずれも第1の真空搬送室31と第2の真空搬送室41との間に設けられ、受け渡し室35の両側にデガス室33および水素ラジカル処理装置34が配置されている。さらに、第2の真空搬送室41の搬入出セクション23側の2つの壁部には、それぞれ大気搬送および真空搬送可能なロードロック室44a,44bが接続されている。
【0067】
Ru膜成膜装置42aおよび42b、デガス室33、水素ラジカル処理装置34、およびロードロック室44a,44bは、第2の真空搬送室41の各壁部にゲートバルブGを介して接続されている。また、受け渡し室35はゲートバルブを介さずに第2の真空搬送室41に接続されている。
【0068】
第2の真空搬送室41内は所定の真空雰囲気に保持されるようになっており、その中には、Ru膜成膜装置42aおよび42b、デガス室33、水素ラジカル処理装置34、ロードロック室44aおよび44b、ならびに受け渡し室35に対してウエハWの搬入出を行う第2の搬送機構46が設けられている。この第2の搬送機構46は、第2の真空搬送室41の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部47を有し、その回転・伸縮部47の先端にウエハWを支持する2つの支持アーム48a,48bが設けられており、これら2つの支持アーム48a,48bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部47に取り付けられている。
【0069】
搬入出セクション23は、上記ロードロック室44a,44bを挟んで第2の処理セクション22と反対側に設けられており、ロードロック室44a,44bが接続される大気搬送室51を有している。大気搬送室51の上部には清浄空気のダウンフローを形成するためのフィルター(図示せず)が設けられている。ロードロック室44a,44bと大気搬送室51との間の壁部にはゲートバルブGが設けられている。大気搬送室51のロードロック室44a,44bが接続された壁部と対向する壁部には、被処理基板としてのウエハWを収容するキャリアCを接続する2つの接続ポート52,53が設けられている。また、大気搬送室51の側面にはウエハWのアライメントを行うアライメント室54が設けられている。大気搬送室51内には、キャリアCに対するウエハWの搬入出およびロードロック室44a,44bに対するウエハWの搬入出を行う大気搬送用搬送機構56が設けられている。この大気搬送用搬送機構56は、2つの多関節アームを有しており、キャリアCの配列方向に沿ってレール58上を走行可能となっていて、それぞれの先端のハンド57上にウエハWを載せてその搬送を行うようになっている。
【0070】
制御部24は、処理システム20の各構成部の制御を実行するマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ61と、オペレータが処理システム20を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理システム20の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース62と、処理システム20で実行される処理をプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、各種データ、および処理条件に応じて各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部63とを備えている。なお、ユーザーインターフェース62および記憶部63はプロセスコントローラ61に接続されている。
【0071】
上記レシピは記憶部63の中の記憶媒体63aに記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクであってもよいし、CDROM、DVD等の可搬性ディスクや、フラッシュメモリ等の半導体メモリであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0072】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63の記憶媒体63aから呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、処理システム20での所望の処理が行われる。
【0073】
次に、このような処理システム20の動作について説明する。
下部構造上に、被エッチング膜11を有し、その上に、SADP法によりTiN膜がパターニングされて形成されたTiNパターンを有するウエハを収容したキャリアCを成膜システム20へ搬送し、接続ポート52または53に接続する。そして、キャリアCから大気搬送用搬送機構56によりウエハWを取り出し、アライメント室54でアライメントを行った後、ロードロック室44aまたは44bに搬送する。そのロードロック室を第2の真空搬送室41と同程度の真空度に減圧した後、第2の搬送機構46によりロードロック室のウエハWを取り出し、第2の真空搬送室41を介してデガス室33に搬送し、ウエハWのデガス処理を行う。その後、第1の搬送機構36によりデガス室33のウエハWを取り出し、第1の真空搬送室31を介してMnOx膜成膜装置32a、32b、32c、32dのいずれかに搬入し、上述したような反転材の一部となるMnOx膜をALDにより成膜する。
【0074】
MnOx膜の形成後、第1の搬送機構36によりウエハWを取り出し、水素ラジカル処理装置34に搬送し、MnOx膜表面の水素ラジカル処理を行う。その後、第2の搬送機構46により水素ラジカル処理装置34からウエハWを取り出し、第2の真空搬送室41を介してRu膜成膜装置42a,42bのいずれかに搬送し、反転パターンを形成するための反転材の一部となるRu膜を成膜する。
【0075】
Ru膜の形成後、第2の搬送機構46によりウエハWをロードロック室44aまたは44bに搬送し、そのロードロック室を大気圧に戻した後、大気搬送用搬送機構56によりRu膜の成膜まで行われたウエハWを取り出し、キャリアCに戻す。このような処理をキャリア内のウエハWの数の分だけ繰り返す。
【0076】
処理システム20では、エッチング後のウエハに対し、大気開放することなく真空中でデガス処理、MnOx膜成膜処理、水素ラジカル処理、Ru膜成膜処理を行うので、これらの工程中での膜の酸化を防止することができ、より高精度で反転パターンを形成することができる。
【0077】
[成膜装置]
次に、上記処理システム20に用いられるALDによりMnOx膜を成膜するMnOx膜成膜装置32a,32b,32c,32dに好適に用いることができる成膜装置について説明する。図7は、成膜装置の一例を示す断面図である。なお、この成膜装置は、CVDによりRu膜を成膜するRu膜成膜装置42a,42bにも適用することができる。
【0078】
図7に示すように、この成膜装置は処理容器110を有する。処理容器110内にはウエハWを水平に載置するための載置台111が設けられている。載置台111内にはウエハの温調手段となるヒーター111aが設けられている。また、載置台111には昇降機構111bにより昇降自在な3本の昇降ピン111c(2本のみ図示)が設けられており、この昇降ピン111cを介してウエハ搬送手段(図示せず)と載置台111との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0079】
処理容器110の底部には排気管112の一端側が接続され、この排気管112の他端側には真空ポンプ113が接続されている。処理容器110の側壁には、ゲートバルブGにより開閉される搬送口114が形成されている。
【0080】
処理容器110の天井部には載置台111に対向するガスシャワーヘッド115が設けられている。ガスシャワーヘッド115はガス室115aを備え、ガス室115aに供給されたガスは複数設けられたガス吐出孔115bから処理容器110内に供給される。
【0081】
ガスシャワーヘッド115には、マンガン化合物ガスをガス室115aに導入するためのマンガン化合物ガス供給配管系116が接続される。マンガン化合物ガス供給配管系116は、ガス供給路116aを備え、ガス供給路116aの上流側には、バルブ116b、マンガン化合物ガス供給源117、マスフローコントローラ116cが接続されている。マンガン化合物ガス供給源117からは、マンガン化合物ガスがバブリング法により供給される。バブリングのためのキャリアガスとしてはArガス等を用いることができる。このキャリアガスはパージガスとしても機能する。
【0082】
さらに、ガスシャワーヘッド115には、酸素含有ガスをガス室115aに導入するための酸素含有ガス供給配管系118が接続される。酸素含有ガス供給配管系118もまたガス供給路118aを備えており、ガス供給路118aの上流側に、バルブ118b、マスフローコントローラ118cを介して酸素含有ガス供給源119が接続されている。酸素含有ガス供給源119からは、酸素含有ガスとして、例えば、HOガス、NOガス、NOガス、NOガス、Oガス、Oガス等が供給される。なお、酸素含有ガス供給配管系118は、Arガス等をパージガスとして供給可能となっている。
【0083】
なお、本実施形態においては、マンガン化合物ガスと酸素含有ガスとがガスシャワーヘッド115のガス室115aを共有する構成となっており、ガス吐出孔115bから処理容器110内に交互に供給されるようになっているが、これに限らず、ガスシャワーヘッド115においてマンガン化合物ガス専用のガス室と酸素含有ガス専用のガス室とが独立して設けられ、マンガン化合物ガスと酸素含有ガスとが別々に処理容器110内に供給されるようになっていてもよい。
【0084】
このように構成される成膜装置においては、搬送口114からウエハWを処理容器110内に搬送して、所定温度に温調された載置台111に載置する。そして、チャンバー110内を所定の圧力に調整しつつ、マンガン化合物ガス供給配管系116からのマンガン化合物ガスの供給と、酸素含有ガス供給配管系118からの酸素含有ガスの供給とを、処理容器110内のパージを挟んで複数回繰り返すALD法により、所定の膜厚のMnOx膜を成膜する。成膜終了後、搬送口114から処理後のウエハWを搬出する。
【0085】
[水素ラジカル処理装置]
次に、上記処理システム20に用いられる水素ラジカル処理装置の一例について説明する。
図8は、水素ラジカル処理装置の一例を示す断面図であり、リモートプラズマ処理により処理容器内に水素ラジカルを生成するものを例にとって説明する。
【0086】
図8に示すように、この水素ラジカル処理装置は、例えばアルミニウム等により筒体に形成された水素ラジカル処理を行うための処理容器141と、処理容器141の上方に設けられた誘電体からなる円筒状のベルジャー142とを有している。ベルジャー142は処理容器141よりも小径であり、処理容器141の壁部とベルジャー142の壁部とは気密に形成され、それらの内部が連通している。
【0087】
処理容器141の内部には、ウエハWを載置する例えばAlN等のセラミックスからなる載置台143が配置されており、この載置台143内にはヒーター144が設けられている。このヒーター144はヒーター電源(図示せず)から給電されることにより発熱する。載置台143には、ウエハ搬送用の3本のウエハ支持ピン(図示せず)が載置台143の表面に対して突没可能に設けられている。
【0088】
処理容器141の底部には、排気口151が設けられており、この排気口151には排気管152が接続されている。排気管152には圧力調整を行うスロットルバルブ153および真空ポンプ154が接続されており、処理容器141およびベルジャー142内が真空引き可能となっている。一方、処理容器141の側壁には、ウエハ搬出入口161が形成されており、ウエハ搬出入口161はゲートバルブGにより開閉可能となっている。そして、ゲートバルブGを開放した状態でウエハWの搬入出が行われる。
【0089】
ベルジャー142の天壁中央には、ガス導入口171が形成されている。ガス導入口171にはガス供給配管172が接続されており、ガス供給配管172には水素ラジカル処理のために用いられる水素ガスや不活性ガス等を供給するためのガス供給源173が接続されている。また、ガス供給配管172には、ガス流量制御器、バルブ等よりなるガス制御部174が介装されている。
【0090】
ベルジャー142の周囲には、アンテナとしてコイル181が巻回されている。コイル181には高周波電源182が接続されている。そして、ベルジャー142内に水素ガスおよび不活性ガスを供給しつつコイル181に高周波電力が供給されることにより、ベルジャー142内に誘導結合プラズマが生成され、処理容器141内でウエハWのMnOx膜に対して水素プラズマ処理が施される。
【0091】
このように構成される水素ラジカル処理装置においては、ゲートバルブGを開けて、ウエハWを載置台143上に載置した後、ゲートバルブGを閉じ、処理容器141およびベルジャー142内を真空ポンプ154により排気してスロットルバルブ153によって処理容器141およびベルジャー142内を所定の圧力に調整するとともに、ヒーター144により載置台143上のウエハWを所定温度に加熱する。そして、ガス供給源173からガス供給配管172およびガス供給口171を介して処理容器141内に水素ラジカル処理のために用いられる水素ガスや不活性ガス等を供給するとともに、高周波電源182からコイル181に高周波電力を供給することにより、ベルジャー142内に水素ガスや不活性ガス等が励起されて誘導結合プラズマが生成され、その誘導結合プラズマが処理容器141内に導入される。そして、生成したプラズマ中の水素ラジカルにより、ウエハWのMnOx膜に対して水素プラズマ処理が施される。
【0092】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、メタルパターンとしてTiNパターンを用いたが、他のTi含有膜を好適に用いることもでき、また、Ti含有膜に限らず、金属酸化膜成膜時に還元処理で実質的に還元されない強固な結合を持った酸化物が形成されるものであればよい。
【0093】
また、上記実施形態では、反転材の一部となる金属酸化膜としてMnOx膜を用いた例を示したが、これに限らず、メタルパターン上に、前記被エッチング膜上よりもOの結合が強い酸化膜が形成される金属酸化膜であれば適用可能である。
【0094】
さらに、上記実施形態では、還元処理として水素ラジカル処理を用いた例を示したが、メタルパターン上の金属酸化膜を、酸化物のままの第1金属含有膜とし、被エッチング膜上の金属酸化膜を、表面が金属に還元された第2金属含有膜とすることができれば、これに限らない。
【0095】
さらにまた、上記実施形態では、反転材の一部を構成する金属膜としてRu膜を用いた例を示したが、これに限らず、金属上には形成されやすく、酸化物上には形成され難い性質を有する金属膜であれば適用可能である。
【0096】
さらにまた、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハにはシリコンのみならず、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体も含まれ、さらに、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0097】
11;被エッチング膜
12;TiNパターン
13;MnOx膜
14a;第1Mn含有膜
14b;第2Mn含有膜
15;Ru膜
16;反転材
17;エッチングパターン
18;凹部
W;半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10