特許第6559053号(P6559053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559053
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】在宅状態推定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20190805BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   G08B25/04 K
   G08B25/10 D
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-230641(P2015-230641)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-97704(P2017-97704A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋思
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康直
(72)【発明者】
【氏名】香西 将樹
(72)【発明者】
【氏名】石山 文彦
(72)【発明者】
【氏名】大沢 彰
(72)【発明者】
【氏名】三田地 秀人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 哲也
【審査官】 永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−185040(JP,A)
【文献】 特許第5400127(JP,B2)
【文献】 井上洋思,外1名,“電力変動による人活動の検知に関する検討”,電子情報通信学会2012年通信ソサイエティ大会講演論文集2,一般社団法人電子情報通信学会,2012年 8月28日,p.180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 19/00
G06Q 10/00−10/10
G06Q 30/00−30/08
G06Q 50/00−50/20
G06Q 50/26−99/00
G08B 19/00−31/00
H02J 3/00− 5/00
H02J 13/00
H03J 9/00− 9/06
H04M 3/00
H04M 3/16− 3/20
H04M 3/38− 3/58
H04M 7/00− 7/16
H04M 11/00−11/10
H04Q 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅内における消費電力の時系列変化を表す電力データを送信する機能を有する電力データ送信部に対し、通信ネットワークを介して接続可能な在宅状態推定装置であって、
前記宅内において住人の操作が無い状態で機器が自動的に運転している機器自動運転状態における消費電力の最大値に設定された第1のしきい値と、前記機器自動運転状態における消費電力の最小値に予め定めた電力マージンを加算した値に設定された第2のしきい値を記憶する記憶手段と、
前記電力データ送信部から前記電力データを前記通信ネットワークを介して受信する手段と、
前記受信された電力データにより表される前記消費電力の時系列変化が前記第1および第2のしきい値と交差するときの特定の変化パターンを検出し、当該検出された特定の変化パターンから、前記住人の宅内における活動の開始および終了の各タイミングと、前記住人の宅内における非活動の開始および終了の各タイミングの少なくとも一方を検出するイベント検出手段と、
前記検出された各タイミングをもとに、前記住人の宅内における活動時間および非活動時間の少なくとも一方を算出する時間算出手段と
を具備することを特徴とする在宅状態推定装置。
【請求項2】
前記電力データ送信部から予め設定した時間帯における電力データを前記通信ネットワークを介して受信し、当該電力データから前記機器自動運転状態における消費電力の最大値を算出してその算出値を第1のしきい値として前記記憶手段に記憶させると共に、前記電力データから前記機器自動運転状態における消費電力の最小値を算出してその算出値に予め定めた電力マージンを加算した値を第2のしきい値として前記記憶手段に記憶させる手段を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の在宅状態推定装置。
【請求項3】
前記イベント検出手段は、
前記消費電力の時系列変化が前記第1のしきい値を下回った後に最初に前記第2のしきい値を下回ったときの第1の変化パターンを、前記住人の宅内における非活動の開始イベントまたは活動の終了イベントとして検出する第1の検出手段と、
前記消費電力の時系列変化が前記第2のしきい値を上回った後に最初に前記第1のしきい値を上回ったときの第2の変化パターンを、前記住人の宅内における活動の開始イベントまたは非活動の終了イベントとして検出する第2の検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の在宅状態推定装置。
【請求項4】
前記イベント検出手段は、前記第1の変化パターンが検出された場合に、当該検出のタイミングが昼間に含まれるか或いは夜間に含まれるかを判定する手段を、さらに備え、
前記第1の検出手段は、前記第1の変化パターンの検出タイミングが昼間に含まれる場合には前記第1の変化パターンを前記住人が外出したことを示すイベントとし、前記第1の変化パターンの検出タイミングが夜間に含まれる場合には前記第1の変化パターンを前記住人が就寝したことを示すイベントとし、
前記第2の検出手段は、前記第2の変化パターンの検出タイミングが昼間に含まれる場合には前記第2の変化パターンを前記住人が帰宅したことを示すイベントとし、前記第2の変化パターンの検出タイミングが夜間に含まれる場合には前記第2の変化パターンを前記住人が起床したことを示すイベントとする
ことを特徴とする請求項3記載の在宅状態推定装置。
【請求項5】
前記時間算出手段は、前記住人の宅内における非活動時間として、前記外出による不在時間および睡眠時間を算出することを特徴とする請求項4記載の在宅状態推定装置。
【請求項6】
宅内における消費電力の時系列変化を表す電力データを送信する機能を有する電力データ送信部に対し通信ネットワークを介して接続可能な在宅状態推定装置により行われる在宅状態推定方法であって、
前記電力データ送信部から予め設定した時間帯における電力データを前記通信ネットワークを介して受信し、当該電力データから前記宅内において住人の操作が無い状態で機器が自動的に運転している機器自動運転状態における消費電力の最大値を算出してその算出値を第1のしきい値として記憶手段に記憶させると共に、前記電力データから前記機器自動運転状態における消費電力の最小値を算出してその算出値に予め定めた電力マージンを加算した値を第2のしきい値として前記記憶手段に記憶させる過程と、
前記電力データ送信部から前記電力データを前記通信ネットワークを介して受信する過程と、
前記受信された電力データにより表される前記消費電力の時系列変化が前記第1および第2のしきい値と交差するときの特定の変化パターンを検出し、当該検出された特定の変化パターンから、前記住人の宅内における活動の開始および終了の各タイミングと、前記住人の宅内における非活動の開始および終了の各タイミングの少なくとも一方を検出する過程と、
前記検出された各タイミングをもとに、前記宅内における住人の活動時間および非活動時間の少なくとも一方を算出する過程と
を具備することを特徴とする在宅状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高齢者の在宅状況を消費電力をもとに推定する在宅状態推定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、独居高齢者の増加に伴い、非特許文献1や非特許文献2等に記載されているように、独居高齢者を離れた場所から見守るための見守りシステムの開発が進められている。これらの見守りシステムの多くは、緊急性は要しないものの、独居高齢者の普段の活動状態を見守りたいというニーズのみならず、独居高齢者の緊急事態を想定した安否確認にも対応することが考慮されている。
【0003】
非特許文献1、2に記載された技術は、電力の大きさや電力変動の大きさに対し1つのしきい値を設定し、消費電力の大きさや電力変動の大きさがこのしきい値より大きい場合に住人活動があると判定する技術であり、しきい値を上回る時間帯およびしきい値を下回る時間帯をそれぞれ活動時間および非活動時間として算出する。しかし、住宅には冷蔵庫や温水便座のヒータ等のように住人の活動状態に関係なく常時自動的に間欠運転が行われる自動運転機器が存在するため、上記しきい値は自動運転機器による消費電力や電力変動の影響を受けないようにするべく、比較的大きな値に設定される。しきい値をこのように大きな値に設定すると、消費電力や電力変動がしきい値を超える場合には、ある程度高精度に住人活動があると判定することができる。ところが、消費電力や電力変動がしきい値を超えない場合には、住人が少ない電力消費で宅内活動している状態なのか、それとも外出や就寝により宅内活動していない状態なのかを判別することが困難だった。
【0004】
そこで本発明者は、特許文献1に記載されているように、自動運転機器による消費電力の変動を考慮してしきい値を2つ設定し、消費電力が大きい方の第1のしきい値を上回らない継続時間と、消費電力が小さい方の第2のしきい値を下回らない継続時間をそれぞれ検出して、これらの時間の合計が予め設定した時間、例えば24時間以上となる場合に、危険状態と見なしてアラートを発する技術を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5400127号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】財団法人電力中央研究所、「独居高齢者見守りシステム−狛江市における実証試験−」、研究報告R09014、平成22年5月、インターネット<URL: http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/download/uUtRMCXDU9WjHMJ9GfExmbe6q6tfrQqk/report.pdf>
【非特許文献2】財団法人電力中央研究所、「電気の使い方から独居高齢者を見守るシステム(その2)−総負荷電流の変化の累積度数分布を用いる方法−」、研究報告R05013、平成18年6月、インターネット<URL: http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/R05013.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された技術は、2つのしきい値を定義しているものの、これらのしきい値が危険状態を判断するのに利用しているのみであり、宅内における住人の活動の開始と終了のタイミング、さらには外出や就寝等による非活動の開始と終了のタイミングを検出することまでは検討されていない。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、住人の宅内における活動状態または非活動状態を精度良く推定できるようにした在宅状態推定装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためにこの発明は以下のような各態様を備える。
(1)宅内における消費電力の時系列変化を表す電力データを送信する機能を有する電力データ送信部に対し、通信ネットワークを介して接続可能な在宅状態推定装置であって、前記宅内において住人の操作が無い状態で機器が自動的に運転している機器自動運転状態における消費電力の最大値に設定された第1のしきい値と、前記機器自動運転状態における消費電力の最小値に予め定めた電力マージンを加算した値に設定された第2のしきい値を記憶する記憶手段と、前記電力データ送信部から前記電力データを前記通信ネットワークを介して受信する手段と、前記受信された電力データにより表される前記消費電力の時系列変化が前記第1および第2のしきい値と交差するときの特定の変化パターンを検出し、当該検出された特定の変化パターンから、前記住人の宅内における活動の開始および終了の各タイミングと、前記住人の宅内における非活動の開始および終了の各タイミングの少なくとも一方を検出するイベント検出手段と、前記検出された各タイミングをもとに、前記住人の宅内における活動時間および非活動時間の少なくとも一方を算出する時間算出手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
(2)(1)において、前記電力データ送信部から予め設定した時間帯における電力データを前記通信ネットワークを介して受信し、当該電力データから前記機器自動運転状態における消費電力の最大値を算出してその算出値を第1のしきい値として前記記憶手段に記憶させると共に、前記電力データから前記機器自動運転状態における消費電力の最小値を算出してその算出値に予め定めた電力マージンを加算した値を第2のしきい値として前記記憶手段に記憶させる手段を、さらに具備することを特徴とする。
【0011】
(3)(1)または(2)において、前記イベント検出手段は、前記消費電力の時系列変化が前記第1のしきい値を下回った後に最初に前記第2のしきい値を下回ったときの第1の変化パターンを、前記住人の宅内における非活動の開始イベントまたは活動の終了イベントとして検出する第1の検出手段と、前記消費電力の時系列変化が前記第2のしきい値を上回った後に最初に前記第1のしきい値を上回ったときの第2の変化パターンを、前記住人の宅内における活動の開始イベントまたは非活動の終了イベントとして検出する第2の検出手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
(4)(3)において、前記イベント検出手段は、前記第1の変化パターンが検出された場合に、当該検出のタイミングが昼間に含まれるか或いは夜間に含まれるかを判定する手段をさらに備え、前記第1の検出手段は、前記第1の変化パターンの検出タイミングが昼間に含まれる場合には前記第1の変化パターンを前記住人が外出したことを示すイベントとし、前記第1の変化パターンの検出タイミングが夜間に含まれる場合には前記第1の変化パターンを前記住人が就寝したことを示すイベントとし、前記第2の検出手段は、前記第2の変化パターンの検出タイミングが昼間に含まれる場合には前記第2の変化パターンを前記住人が帰宅したことを示すイベントとし、前記第2の変化パターンの検出タイミングが夜間に含まれる場合には前記第2の変化パターンを前記住人が起床したことを示すイベントとすることを特徴とする。
【0013】
(5)(4)において、前記時間算出手段は、前記住人の宅内における非活動時間として、前記外出による不在時間および睡眠時間を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記各態様により以下のような効果が奏せられる。
(1)しきい値として、宅内において住人の操作が無い状態で機器が自動的に運転している機器自動運転状態における消費電力の最大値に設定された第1のしきい値と、前記機器自動運転状態における消費電力の最小値に予め定めた電力マージンを加算した値に設定された第2のしきい値が用いられ、宅内における消費電力の時系列変化が上記第1および第2のしきい値と交差するときの特定の変化パターンが検出され、当該検出された特定の変化パターンから、住人の宅内における活動または非活動の開始および終了の各タイミングが検出され、この検出された各タイミングをもとに、住人の宅内における活動時間または非活動時間が算出される。従って、消費電力が第1のしきい値以上では高い確率で活動状態と判定でき、第2のしきい値以下では高い確率で非活動状態と判定できるため、これらの変化が起こる時間帯との組み合わせにより高精度に住人の活動時間または非活動時間を判定することが可能となり、これにより信頼性の高い在宅状態の監視を実現することができる。
【0015】
(2)宅内から収集した電力データをもとに第1のしきい値および第2のしきい値が設定される。このため、住人ごとの生活パターンの個人差を考慮して、精度の高い推定処理を実現できる。
【0016】
(3)消費電力値が第1のしきい値および第2のしきい値を連続して交差するときの変化パターンが住人の活動の開始または終了を表すイベントとして検出される。このため、活動中または非活動中における消費電力値の一時的な変化と区別して、住人の活動状態または非活動状態の切り替わりタイミングを精度良く検出することが可能となる。
【0017】
(4)イベントの検出タイミングが昼間に含まれるか夜間に含まれるかにより、検出されたイベントが外出か就寝か、或いは帰宅か起床かを的確に判別することが可能となる。
【0018】
(5)住人の宅内における非活動時間が、外出による不在時間であるのか或いは睡眠時間であるのかを的確に区別して算出することができる。
【0019】
すなわちこの発明によれば、住人の宅内における活動状態または非活動状態を精度良く判定できるようにした在宅状態推定装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明に係る宅内状態推定装置の一実施形態であるサーバ装置を主体とする見守りシステムの構成を示す図。
図2図1に示したサーバ装置の機能構成を示すブロック図。
図3図2に示したサーバ装置によるしきい値設定処理の手順と処理内容を示すフローチャート。
図4図2に示したサーバ装置による宅内状態推定処理の手順と内容を示す図。
図5図4に示した宅内状態推定処理の各手順のうちイベント検知処理の手順と内容を示すフローチャート。
図6図2に示したサーバ装置による、住人の宅内における非活動の開始タイミングおよび終了タイミングの検知動作と、非活動時間の算出例を説明するための図。
図7図2に示したサーバ装置による、住人の宅内における活動の開始タイミングおよび終了タイミングの検知動作と、活動時間の算出例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[一実施形態]
(構成)
図1は、この発明に係る宅内状態推定装置の一実施形態であるサーバ装置を主体とする見守りシステムの構成を示す図である。
同図において、EV1〜EVnは見守り対象の複数の宅内に配置された分電盤であり、これらの分電盤EV1〜EVnにはそれぞれ電力センサSS1〜SSnが付設してある。電力センサSS1〜SSnは、予め設定した周期(例えば1秒)で分電盤EV1〜EVnから消費電力値を計測し、計測した消費電力値をその計測時刻と関連付けて電力データとし、メモリに保存する。そして、当該保存された電力データを一定時間分ずつ読み出し、通信ネットワークNWを介してサーバ装置SVへ送信する機能を有する。
【0022】
見守り者の端末MT1〜MTmは、例えば上記見守り対象の高齢者や障害者の親族或いは医療・保健従事者が所有するもので、例えばパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット型情報端末からなる。見守り者の端末MT1〜MTmは、ブラウザまたはメーラを有し、このブラウザまたはメーラにより上記サーバ装置SVから見守り対象者の宅内における活動状態および非活動状態を表す情報を取得する。
【0023】
通信ネットワークNWは、インターネットに代表されるIP(Internet Protocol)網と、このIP網にアクセスするためのアクセス網とから構成される。アクセス網としては、有線電話網、携帯電話網、LAN(Local Area Network)、無線LAN、CATV網等が用いられる。
【0024】
サーバ装置SVは例えばクラウドサーバからなり、以下のように構成される。図2はその機能構成を示すブロック図である。
すなわち、サーバ装置SVは制御ユニット1、記憶ユニット2および通信インタフェースユニット3を備えている。このうち通信インタフェースユニット3は、制御ユニット1の制御の下、通信ネットワークNWを介して、上記各宅内の電力センサSS1〜SSnおよび見守り者の端末MT1〜MTmとの間でデータ通信を行う。
【0025】
記憶ユニット2は、記憶媒体として例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)を使用したもので、一実施形態を実施するために必要な記憶部として、電力データ記憶部21と、しきい値記憶部22と、イベント記憶部23と、算出時間記憶部24とを備えている。
【0026】
電力データ記憶部21は、上記各宅内の電力センサSS1〜SSnから収集した電力データを、見守り対象者宅または見守り対象者の識別情報と関連付けて蓄積するために使用される。
【0027】
しきい値記憶部22は、宅内における見守り対象者の特定の行動をイベントとして検知するための2つのしきい値、つまり第1および第2のしきい値を保存するために用いられる。
【0028】
イベント記憶部23は、制御ユニット1により検知された上記イベントの種類と検知タイミングを、見守り対象者の識別情報と関連付けて記憶するために用いられる。算出時間記憶部24は、制御ユニット1により算出された見守り対象者の活動時間および非活動時間を、見守り対象者の識別情報と関連付けて記憶するために用いられる。
【0029】
制御ユニット1はCPU(Central Processing Unit)とプログラムメモリおよび作業用メモリを備えたもので、一実施形態を実施する上で必要な処理機能として、電力データ収集制御部11と、しきい値設定部12と、イベント検知処理部13と、時間算出部14と、出力制御部15とを有している。
【0030】
電力データ収集制御部11は、上記電力センサSS1〜SSnから例えばポーリング方式により電力データを収集し、収集した電力データを上記電力データ記憶部21に格納する処理を行う。
【0031】
しきい値設定部12は、見守り対象者宅ごとに、上記電力データ記憶部21に記憶された所定期間分の電力データをもとに第1および第2のしきい値を設定し、上記しきい値記憶部22に格納する処理を行う。第1および第2のしきい値の具体的な設定処理手法については後に詳しく述べる。
【0032】
イベント検知処理部13は、見守り対象者ごとに、その見守り期間において一定の時間間隔で上記電力データ記憶部21から電力データを読み出し、当該読み出された電力データを上記しきい値記憶部22に記憶された第1および第2のしきい値と比較する。そして、その比較結果をもとに、見守り対象者の活動の開始と終了、および非活動の開始と終了をイベントとして検知し、この検知されたイベントの種類と検知タイミングを上記イベント記憶部23に格納する処理を行う。
【0033】
時間算出部14は、見守り対象者ごとに、上記イベント記憶部23に格納されたイベントの種類と検知タイミングをもとに「活動時間」と「非活動時間」を算出し、その算出結果を上記算出時間記憶部24に記憶させる。なお、非活動時間については、外出による「不在時間(外出時間)」と「睡眠時間」とに分けて算出する。
【0034】
出力制御部15は、見守り者の端末MT1〜MTmから在宅状態の閲覧要求を受信した場合に、当該閲覧要求に含まれる見守り対象者の識別情報をもとに上記算出時間記憶部24から該当する見守り対象者の活動時間および非活動時間を表す情報を読み出す。そして、当該情報を要求元の見守り者の端末MT1〜MTmへ送信する処理を行う。また出力制御部15は、見守り対象者の非活動時間が予め設定した時間を超えた場合には、当該見守り対象者に対し予め登録されている見守り者の端末MT1〜MTmへ、メールを使用してアラート情報を送信する処理も行う。
【0035】
(動作)
次に、以上のように構成されたサーバ装置SVによる在宅状態推定動作を説明する。
(1)しきい値の設定
見守り対象者に対する在宅状態の推定処理に先立ち、サーバ装置SVは見守り対象者ごとにそのイベント検知に使用する第1および第2のしきい値を以下のように設定する。図3はその処理手順と処理内容の概要を示すフローチャートである。
【0036】
サーバ装置SVは、先ずステップS11により、電力データ収集制御部11の制御の下で、各見守り対象者の住宅に設置された電力センサSS1〜SSnから、任意期間(N日)分の電力データを収集し、収集した電力データを電力データ記憶部21に格納する。任意期間は、例えば2週間程度が望ましいが、これに限るものではない。
【0037】
サーバ装置SVは、次にステップS12において、しきい値設定部12の制御の下で、上記電力データ記憶部21に格納された電力データをもとに第1および第2のしきい値を設定する処理を以下のように行う。
【0038】
すなわち、先ず第1のしきい値については、人間の操作がない状態で宅内機器が自動的に運転している機器自動運転の状態における電力消費量の最大値を近似する電力値に設定する。一方、第2のしきい値については、人間の操作がない状態で機器が自動的に運転している機器自動運転の状態における電力消費量の最小値に若干のマージン電力を上乗せした電力値に設定する。設定された第1および第2のしきい値はしきい値記憶部22に格納される。
【0039】
具体的には、以下のような設定処理が行われる。すなわち、先ず第1のしきい値については、任意に定めた過去のN日分(N:正整数)の電力時系列データから、1日ごとの電力消費量に関するヒストグラムを生成する。次に、上記生成した1日ごとの電力消費量のヒストグラムそれぞれについて、判別分析法(Discriminant Analysis Method)を用いて、電力消費量が小さい低消費クラスと電力消費量が大きい高消費クラスとの2つのクラスに分離する分離度(Separation Metrics)σ2/σ2 (σ2:クラス間分散(Between-Class Variance)、σ2:クラス内分散(Within-Class Variance))を1日ごとに算出し、この算出した分離度σ2/σ2 が最大になる日のしきい値を導出する。そして、導出した当該しきい値を、見守り対象とする宅内に設置されている電気機器に関する機器自動運転時の電力消費量の最大値と見なし、これを第1のしきい値として設定する。
【0040】
一方、第2のしきい値については、先ず任意に定めたN日分(N:正整数)の電力時系列データから、各日ごとの電力消費量に関するヒストグラムを生成する。次に、上記生成した各日ごとの電力消費量のヒストグラムについてそれぞれの最小の電力消費量を各日最小電力消費量として抽出する。続いて、上記抽出した各日最小電力消費量の中から、最小になっている電力消費量をN日間における最小電力消費量として抽出し、さらにこの抽出した最小電力消費量に基づいて、見守り対象とする宅内に設置されている電気機器に関する機器自動運転時の電力消費量の最小値を算出する。そして、上記算出した機器自動運転時の電力消費量の最小値を、第2のしきい値として設定する。
【0041】
なお、以上述べた第1および第2のしきい値のより具体的な設定処理手法については、本発明者が過去にした発明を記載した特許文献1(特許第5400127号公報)に詳しく記載されている。
【0042】
(2)見守り対象者の在宅状態の推定処理
上記第1および第2のしきい値の設定が終了すると、サーバ装置SVは見守り対象者について在宅状態の推定処理を以下のように実行する。図4はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0043】
すなわち、先ずステップS21により、電力データ収集制御部11の制御の下で、見守り対象者の住宅に設置された電力センサSS1〜SSnから、所定の単位時間ごと、例えば1時間ごとに電力データを収集し、収集した電力データを電力データ記憶部21に格納する。なお、収集単位期間は、1時間に限らずそれ以下の任意の時間であっても、またそれ以上の任意の時間であってもよい。
【0044】
サーバ装置SVは、次にステップS22において、イベント検知処理部13の制御の下で、見守り対象者の行動イベントを検知する処理を以下のように実行する。図5はその処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
すなわち、イベント検知処理部13は、先ずステップS31において昼間と夜間の時間帯を定義する。例えば、昼間を午前5時から午後6時まで、夜間を午後6時から翌日の午前5時までと定義する。なお、この定義は一例であり、この時間帯に限定されるものではない。
【0046】
イベント検知処理部13は、次にステップS32において、上記ステップS21で電力データ記憶部21に記憶された電力データをもとに、任意の単位期間ごとにその電力データからOFF変動を検知する。このOFF変動は、例えば図6のIV1に示すように、電力値が第1のしきい値Th1より大きい状態から当該第1のしきい値Th1を時刻x1で下回り、しかる後最初に第2のしきい値Th2を時刻y1で下回ったときの電力変化パターンのことであり、イベント検知処理部13はこのOFF変動が検知されたときその検知タイミングy1を一旦保存する。
【0047】
イベント検知処理部13は、続いてステップS33により、上記OFF変動の検知タイミングy1が昼間に含まれるか夜間に含まれるかを判定する。この判定の結果、上記OFF変動の検知タイミングy1が昼間に含まれていれば、ステップS34により、上記OFF変動を見守り対象者の「外出」を表すイベントと見なす。そして、上記OFF変動の検知タイミングy1を「外出」イベントの発生タイミングとする。
【0048】
上記OFF変動を検知するとイベント検知処理部13は、続いてステップS35に移行する。そして、電力データ記憶部21に記憶された電力データをもとに、任意の単位期間ごとにその電力データからON変動を検知する。このON変動は、例えば図6のIV2に示すように、電力値が第2のしきい値Th2より小さい状態から当該第2のしきい値Th2をy2で上回った後、最初に第1のしきい値Th1をx2で上回ったときの電力変化パターンのことであり、イベント検知処理部13はこのON変動が検知されたときその検知タイミングx2を一旦保存する。そして、ステップS36により、上記ON変動を見守り対象者の「帰宅」を表すイベントと見なし、上記ON変動の検知タイミングx2を「帰宅」イベントの発生タイミングとする。最後にイベント検知処理部13は、上記「外出」イベントの検知タイミングy1および上記「帰宅」イベントの検知タイミングx1を、ステップS40においてイベント記憶部23に格納する。
【0049】
一方、上記ステップS33により、上記OFF変動の検知タイミングy1が昼間に含まれていると判定されたとする。この場合イベント検知処理部13は、ステップS37により、上記OFF変動を見守り対象者の「就寝」を表すイベントと見なす。そして、上記OFF変動の検知タイミングy1を「就寝」イベントの発生タイミングとする。
【0050】
上記OFF変動を検知すると、イベント検知処理部13は続いてステップS38に移行する。そして、電力データ記憶部21に記憶された電力データをもとに、任意の単位期間ごとにその電力データからON変動を検知する。このON変動は、先に図6のIV2にて示したように、電力値が第2のしきい値Th2より小さい状態から当該第2のしきい値Th2をy2で上回った後、最初に第1のしきい値Th1をx2で上回ったときの電力変化パターンであり、イベント検知処理部13はこのON変動が検知されたときその検知タイミングx2を一旦保存する。そして、ステップS39により、上記ON変動を見守り対象者の「起床」を表すイベントと見なし、上記ON変動の検知タイミングx2を「起床」イベントの発生タイミングとする。最後にイベント検知処理部13は、上記「就寝」イベントの検知タイミングy1および上記「起床」イベントの検知タイミングx1を、ステップS40においてイベント記憶部23に格納する。
【0051】
上記「帰宅」イベントまたは「起床」イベントの検知後に、イベント検知処理部13はステップS31を経てステップS32に戻り、OFF変動の検知処理を行う。そして、例えば図7のIV3に示すように、電力値が第1のしきい値Th1より大きい状態から当該第1のしきい値Th1を時刻x3で下回り、しかる後最初に第2のしきい値Th2を時刻y3で下回ったときの電力変化パターンを検知したとき、イベント検知処理部13はこの電力変化パターンをOFF変動と見なしてその検知タイミングy3を保存する。以後同様にイベント検知処理部13は、図5に示したイベント検知処理手順に従い、イベントの発生を検知する。
【0052】
上記イベントの検知処理が終了するとサーバ装置SVは、次にステップS23において、不在時間または睡眠時間と活動時間の算出処理を以下のように実行する。
すなわち、サーバ装置SVは時間算出部14の制御の下、先ず上記イベント記憶部23から各イベントの検知タイミングを読み出し、各イベントのうちイベントの種類が対をなすイベント間の検知タイミングの時間差を算出して、その算出結果を不在時間、睡眠時間または活動時間として算出時間記憶部24に格納する。なお、不在時間と睡眠時間を総称して宅内における非活動時間と称する。
【0053】
例えば、イベント記憶部23に「外出」イベントと「帰宅」イベントが記憶されている場合には、これらのイベントの発生タイミングx1,y2の時間差Taを算出し、算出された時間差Taを「不在時間(または外出時間)」として、算出時間記憶部24に格納する。また、イベント記憶部23に「就寝」イベントと「起床」イベントが記憶されている場合には、これらのイベントの発生タイミングx1,y2の時間差Taを算出し、算出された時間差Taを「睡眠時間」として、算出時間記憶部24に格納する。
【0054】
さらに、イベント記憶部23から「帰宅」イベントもしくは「起床」イベントもしくはその両方の情報を読み出し、さらにイベント記憶部23から「外出」イベントもしくは「就寝」イベントもしくはその両方の情報を読み出し、これらのイベントの発生タイミングx2,y3の時間差Tbをすべて算出する。そして、算出された各時間差の合計値を、見守り対象者の宅内における「活動時間」として、算出時間記憶部24に格納する。
【0055】
なお、任意期間内で対となるイベントが複数回検知される場合には、それぞれの対について算出した時間の総和を算出し、その算出結果を合計の外出時間、合計の就寝時間または合計の活動時間として算出時間記憶部24に格納する。
【0056】
最後にサーバ装置SVは、ステップS24において、出力制御部15の制御の下、上記算出された不在時間、睡眠時間または活動時間を表す情報を、見守り者の端末MT1〜MTmへ送信する処理を実行する。
【0057】
例えば、端末MT1からそのブラウザ機能により情報閲覧要求を受信すると、当該閲覧要求に含まれる見守り対象者の識別情報をもとに、該当する見守り対象者の情報を上記算出時間記憶部24から読み出す。そして、読み出された情報を要求元の端末MT1へ送信する。従って、見守り者は例えば自宅内にいる高齢者や障害者の状態を遠隔的に確認することが可能となる。
【0058】
またそれと共に出力制御部15は、見守り対象者ごとに宅内における非活動時間が予め設定した時間を超えたか否かを監視する。そして、超えた場合には、当該見守り対象者に対応付けて予め登録されている見守り者の端末MT1〜MTmのメールアドレスを見守り対象者管理メモリ(図示せず)から読み出し、読み出したメールアドレスを宛先としてアラート情報を送信する。
【0059】
(効果)
以上詳述したように一実施形態では、見守り対象者ごとに、宅内機器が自動運転しているときの電力消費量の最大値を近似する電力値に設定した第1のしきい値と、宅内機器が自動運転しているときの電力消費量の最小値に若干のマージン電力を上乗せした電力値に設定した第2のしきい値を用意する。そして、各見守り対象者の自宅に設けられた電力センサSS1〜SSnから時系列の電力データを収集して、当該電力データを上記第1および第2のしきい値と比較することで見守り対象者の行動イベントの種類とタイミングを検知し、検知された行動イベントの種類とタイミングをもとに見守り対象者の活動時間と非活動時間を算出し、その結果を見守り者の端末MT1〜MTmへ送信するようにしている。
【0060】
したがって、人感センサや寝具に設置するマットセンサなど、直接的に見守り対象者の状態をセンシングするためのセンサを必要とせず、電力データのみを用いて、見守り対象者の外出時間、睡眠時間および活動時間を算出することができる。また、見守り対象者ごとに第1および第2のしきい値を設定するようにしているので、見守り対象者ごとの生活パターンの個人差を考慮して、精度の高い見守り結果を得ることができる。
【0061】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では在宅状態推定装置の機能をクラウド上のサーバ装置SVに設けた場合を例にとって説明したが、宅内のユーザが使用するパーソナルコンピュータに設けたり、分電盤にプロセッサを内蔵したLSIを設置してこのLSIに上記在宅状態推定装置の機能を設けるようにしてもよい。また、電力センサSS1〜SSnに上記在宅状態推定装置の機能を持たせるようにしてもよい。
【0062】
その他、在宅状態推定装置の機能や処理手順および処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0063】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0064】
SV…サーバ装置、EV1〜EVn…分電盤、SS1〜SSn…電力センサ、MT1〜MTm…見守り者の端末、NW…通信ネットワーク、1…制御ユニット、2…記憶ユニット、3…通信インタフェースユニット、11…電力データ収集制御部、12…しきい値設定部、13…イベント検知処理部、14…時間算出部、15…出力制御部、21…電力データ記憶部、22…しきい値記憶部、23…イベント記憶部、24…算出時間記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7