(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程および前記第3工程は、前記有機金属化合物としてコバルトアミジネートを用い、さらに還元ガスを用いてコバルト膜の成膜を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成膜方法。
前記第2工程は、β−ジケトンとして、分子中のカルボニル基にハロゲン原子を含むアルキル基が結合したものを用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成膜方法。
NOガス流量/β−ジケトンガス流量で表される、NOガスとβ−ジケトンガスの流量比が、0.02〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の成膜方法。
NOガス流量/β−ジケトンガス流量で表される、NOガスとβ−ジケトンガスの流量比が、0.12〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の成膜方法。
前記第1工程および第3工程を第1のチャンバーで行い、前記第2工程を前記第1のチャンバーとは異なる第2のチャンバーで行い、前記第1工程から前記第3工程までを真空中で行うとともに、前記第1のチャンバーおよび前記第2のチャンバー間の被処理基板の搬送を真空中で行うことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の成膜方法。
コンピュータ上で動作し、成膜システムを制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項12のいずれかの成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜システムを制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
<成膜方法の実施形態>
最初に、成膜方法の一実施形態について、
図1のフローチャートおよび
図2の工程断面図を参照して説明する。
【0019】
本実施形態では、最初に、
図2(a)に示すように、層間絶縁膜1にビアホール2が形成された被処理基板である半導体ウエハW(以下単にウエハと記す)に対し、有機金属化合物ガスを用いたCVD法または原子層堆積法(ALD法)によりコバルト(Co)膜4aの成膜を行い、ビアホール2内をシームができない程度に部分的に埋め込む(ステップ1)。
【0020】
次に、
図2(b)に示すように、β−ジケトンと一酸化窒素(NO)とを含むエッチングガスをウエハWに供給して、
図2(b)に示すように、最初に成膜したCo膜4aを断面V字状にエッチングする(ステップ2)。
【0021】
次に、
図2(c)に示すように、再び有機金属化合物ガスを用いたCVD法またはALD法によりCo膜4bを成膜し、ビアホール2内をさらに埋め込む(ステップ3)。
【0022】
その後、ステップ2とステップ3を所定回繰り返すことにより、ビアホール2がほぼ完全に埋め込まれた状態となり、ビアホール2の埋め込みを完了する。
図2では、ステップ3の後、
図2(d)に示すように再度ステップ2のエッチングを行い、さらに
図2(e)に示すように再度ステップ3を行ってCo膜4cを埋め込み、ビアホール2の埋め込みを完了する例、すなわち、ステップ2およびステップ3を2回繰り返す例を示している。
【0023】
従来は、一回のCo膜の成膜によりビアホール内を埋め込んでいたが、この場合は、
図3に示すように、ビアホール2の開口部付近の成膜速度がビアホール2の底の成膜速度よりも大きいため、開口部付近でオーバーハングが生じ、ビアホール2の内に埋め込まれたCo膜5の内部にシーム6が発生する。
【0024】
これに対し、本実施形態では、ステップ1のCo膜4aの成膜後、ステップ2でβ−ジケトンおよびNOを用いてエッチングすることにより、ビアホール2内のCo膜を制御性よく断面V字状にエッチングすることができ、ステップ3のCo膜4bの成膜の際にオーバーハングが生じ難くなり、シームがほとんど形成されることなくビアホール2の埋め込みを行うことができる。
【0025】
ステップ2およびステップ3は、1回で埋め込みが完成できれば1回でもよいが、本実施形態のように、2回以上繰り返すことが好ましい。2回以上繰り返すことにより、ビアホールを段階的に埋め込むことができ、シームの発生をより確実に防止することができる。
【0026】
ステップ1およびステップ3のCo膜の成膜は、有機金属化合物ガスを用いてCVD法またはALD法により行われる。このとき、有機金属化合物ガスと還元ガスとを供給し、有機金属化合物ガスを還元することによりCo膜を成膜してもよいし、有機金属化合物ガスを熱分解してCo
膜を成膜してもよい。また、ALD法の場合は、有機金属化合物ガスと還元ガスとを交互に供給することによりCo膜を成膜する。有機金属化合物ガスの供給後、および還元ガスの供給後には、チャンバー内のパージ等、ウエハ表面からの残存ガスの除去を行う。
【0027】
有機金属化合物としては、従来、CVD法によるCo膜の成膜に用いられているものを用いることができ、例えば、上記特許文献1に開示されたコバルトアミジネートを好適に用いることができる。コバルトアミジネートとしては、例えば、ビス(N−ターシャリブチル−N′−エチル−プロピオンアミジネート)コバルト(II)(Co(tBu−Et−Et−amd)
2)を挙げることができる。また、コバルトアミジネートを用いた場合の還元ガスとしては、カルボン酸を含むガス、例えば、蟻酸や酢酸を好適に用いることができる。また、還元ガスとしてアンモニア(NH
3)や水素(H
2)を用いることもできる。また、還元ガスとしてこれらの2種以上を用いてもよい。
【0028】
成膜温度は、300℃以下が好ましく、120〜250℃がより好ましい。また、成膜の際の圧力は、1.33〜1333Pa(10mTorr〜10Torr)が好ましい。有機金属化合物ガスの流量は50〜500sccmの範囲が好ましく、還元ガスの流量は50〜500sccmの範囲が好ましい。
【0029】
有機金属化合物として、他に、ビスシクロペンタジエニルコバルト(コバルトセン)(Journal of Crystal Growth 114 1991年,pp364-372)等を用いることもできる。
【0030】
ステップ2のCo膜のエッチングは、上述したように、β−ジケトンとNOガスとを含む処理ガスを用いる。βジケトンとしては、分子中のカルボニル基にハロゲン原子を含むアルキル基が結合したものを用いることが好ましく、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトン(Hfac)が好適である。これは、ハロゲン原子の誘起効果により、カルボニル基の酸素原子の電子密度が小さくなり、酸素原子に結びついている水素原子が水素イオンとして解離しやすくなるからである。ただし、β−ジケトンのみでは、金属であるCoはエッチングされず、これにNOを加えることによって初めてCoを適度にエッチングすることができる。このように、β−ジケトン、特にHfacのような分子中のカルボニル基にハロゲン原子を含むアルキル基が結合したβ−ジケトンと、NOとの組み合わせにより、ビアホール付近のCo膜をエッチング可能であるのみならず、NOの流量を調整することで、これらがビアホールの底に到達する時間を確保してビアホール底付近のCo膜もエッチング可能となり、制御性よくCo膜をエッチングすることができ、シームを抑制する効果を高めることができる。
【0031】
β−ジケトンガス(Hfacガス)の流量は5〜1000sccmの範囲が好ましい。また、NOガスの流量は、β−ジケトンガス500sccmに対して10〜250sccmが好ましく、60〜250sccmがより好ましい。流量比で表すと、NOガス流量/β−ジケトンガス流量=0.02〜0.5の範囲が好ましく、0.12〜0.5の範囲がより好ましい。β−ジケトンとしてHfacを用いた場合には、
図4に示すように、Hfacガス500sccmに対してNOガス30sccmまでの低NO領域では急激にエッチング量が増加するが、低NO領域はビアホール開口部でエッチングが集中する傾向にある。これに対して、NOガス流量が60sccm以上になるとビアホール底付近にガスが輸送される時間的余裕があり、ビアホール底付近のCo膜もエッチング可能となる。また、NOガスが30sccmの低NO領域ではCo膜のエッチング面の表面状態が悪化する傾向にあるが、NOガス流量が60sccm以上になるとCo膜のエッチング面の表面状態が良好になる。
【0032】
エッチングの際の温度は200〜250℃が好ましい。200℃より低いとエッチングレートが低く生産性が悪くなり、250℃以上になるとエッチングレートは高くなるが分解により炭素を取り込みやすくなる。より好ましくは220〜240℃である。この範囲であれば、エッチングレートが安定し、炭素の取り込みを有効に防止することができる。
【0033】
また、エッチングの際の圧力は、133.33〜13333Pa(1〜100Torr)が好ましい。
【0034】
ステップ1およびステップ3のCo膜の成膜と、ステップ2のエッチングは、それぞれ異なる装置(チャンバー)で実施することができる。この場合は、真空搬送室に成膜装置とエッチング装置を接続し、真空搬送室に設けられた搬送装置により成膜装置およびエッチング装置の間でウエハを真空雰囲気中で搬送するような真空システムで処理を行うことが好ましい。
【0035】
また、Co膜成膜の際の好ましい温度とエッチングの際の好ましい温度とはオーバーラップしており、Co膜成膜とエッチングとは同じ温度または近接した温度で行うことができるので、ステップ1〜3の処理を1つのチャンバー内で行うことができる。これにより、ステップ1〜3の処理を高スループットで行うことができる。
【0036】
<成膜システム>
次に、本発明の成膜方法を実施することができる成膜システムの例について説明する。
【0037】
(成膜システムの第1の例)
図5は、本発明の成膜方法を実施することができる成膜システムの第1の例を示す概略図である。
【0038】
図5に示すように、本例の成膜システム100は、断面矩形状の真空搬送室101を有し、真空搬送室101の長辺の一方側に冷却装置102、成膜装置103、およびエッチング装置104がゲートバルブGを介して接続されている。また、真空搬送室101の長辺の他方側にも同様に冷却装置102、成膜装置103、およびエッチング装置104がゲートバルブGを介して接続されている。真空搬送室101内は、真空ポンプにより排気されて所定の真空度に保持される。成膜装置103は、Co膜の成膜を行うものである。また、エッチング装置104は、Co膜成膜後にCo膜をエッチングするものである。冷却装置102は、エッチング装置104でのエッチングが終了後、再び成膜装置103によりCo膜を成膜する際に、ウエハWを冷却するためのものである。
【0039】
また、真空搬送室101の短辺の一方側には2つのロードロック室105がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室105を挟んで真空搬送室101の反対側には大気搬送室106が設けられている。ロードロック室105は、ゲートバルブG2を介して搬入出室106に接続されている。ロードロック室105は、大気搬送室106と真空搬送室101との間でウエハWを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力制御するものである。
【0040】
大気搬送室106のロードロック室105取り付け壁部とは反対側の壁部には、FOUP等のウエハWを収容するキャリアCを取り付ける3つのキャリア取り付けポート107を有している。また、大気搬送室106の側壁には、
ウエハWのアライメントを行うアライメントチャンバ108が設けられている。大気搬送室106内には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0041】
真空搬送室101内には、2のウエハ搬送機構110が設けられている。一方のウエハ搬送機構110は、真空搬送室101の長辺の一方側に接続された冷却装置102、Co膜成膜装置103、およびエッチング装置104、ならびに一方のロードロック室105に対してウエハWの搬入出を行えるようになっており、他方のウエハ搬送機構110は、真空搬送室101の長辺の他方側に接続された冷却装置102、Co膜成膜装置103、およびエッチング装置104、ならびに他方のロードロック室105に対してウエハWの搬入出を行えるようになっている。
【0042】
大気搬送室106内には、ウエハ搬送機構111が設けられている。搬送機構111は、キャリアC、ロードロック室105、アライメントチャンバ108に対してシリコンウエハWを搬送するようになっている。
【0043】
成膜システム100は、全体制御部112を有している。全体制御部112は、冷却装置102、成膜装置103、エッチング装置104の各構成部、真空搬送室101の排気機構やウエハ搬送機構110、ロードロック室105の排気機構やガス供給機構、大気搬送室106のウエハ搬送機構111、ゲートバルブG、G1、G2の駆動系等を制御する、CPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。全体制御部112の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、成膜システム100に、所定の動作を実行させる。
【0044】
次に、成膜装置103について説明する。
図6は成膜装置103を示す断面図である。成膜装置103は、
図6に示すように、密閉構造のチャンバー121と、チャンバー121の内部に設けられた、ウエハWを略水平にした状態で載置する載置台122と、載置台122に対向して設けられたシャワーヘッド130と、シャワーヘッド120に成膜用のガスを供給するガス供給機構140と、排気機構150とを有している。
【0045】
載置台122は、平面視略円形をなしており、チャンバー121の底部に固定されている。載置台122の内部には、ヒーター123が埋め込まれている。そして、ヒーター123に印加される電圧を制御することにより、ウエハWを所定の成膜温度に加熱するようになっている。なお、図示はしていないが、載置台122には、そのウエハ載置面に対して突没するようにウエハWを昇降する複数、例えば3本の昇降ピンが設けられている。
【0046】
チャンバー121の天壁121aには、円形の孔121bが形成されており、そこからチャンバー121内へ突出するようにシャワーヘッド130が嵌め込まれている。シャワーヘッド130は、後述するガス供給機構140から供給された成膜用のガスをチャンバー121内に吐出するためのものであり、その上部には、第1の導入路131と、第2の導入路132とを有している。シャワーヘッド130は、ベース部材133と、シャワープレート134と、ベース部材133とシャワープレート134の間に設けられた円筒状の側壁135とを有しており、内部にガス拡散空間136が形成されている。シャワープレート134には複数のガス吐出孔137が形成されている。シャワーヘッド130はヒーター(図示せず)により加熱されるようになっている。
【0047】
ガス供給機構140は、コバルトアミジネート(Co−AMD)、例えば、ビス(N−ターシャリブチル−N′−エチル−プロピオンアミジネート)コバルト(II)(Co(tBu−Et−Et−amd)
2)を貯留する成膜原料タンク141を有している。成膜原料タンク141の周囲にはヒーター(図示せず)が設けられ、成膜原料タンク141内の成膜原料を適宜の温度に加熱することができるようになっている。
【0048】
成膜原料タンク141には、上方から例えばArガスやN
2ガス等の不活性ガスからなるキャリアガスを供給するためのキャリアガス配管142が挿入されている。キャリアガス配管142には、キャリアガス供給源143が接続されており、また、流量制御器としてのマスフローコントローラ144およびその前後の開閉バルブ145が介装されている。また、成膜原料タンク141内には原料ガス送出配管146が上方から挿入されており、この原料ガス送出配管146の他端はシャワーヘッド130の第1の導入路131に接続されている。原料ガス送出配管146のシャワーヘッド130の近傍には開閉バルブ147が介装されている。
【0049】
キャリアガス配管142と原料ガス送出配管146との間は、バイパス配管148により接続されており、この配管148にはバルブ149が介装されている。一方、キャリアガス配管14
2における配管148接続部分の下流側
および原料ガス送出配管146における配管148接続部分の上流側にはそれぞれバルブ145a,147aが介装されている。したがって、バルブ145a,147aを閉じてバルブ149を開くことにより、キャリアガス供給源143からのキャリアガスを、キャリアガス配管142、バイパス配管148、原料ガス送出配管146を経て、パージガス等としてチャンバー121内に供給することが可能となっている。
【0050】
また、ガス供給機構140は、カルボン酸を含むガス、NH
3ガス、H
2ガス等からなる還元ガスを供給する還元ガス供給源161を有している。還元ガス供給源161には還元ガス配管162の一端が接続されており、還元ガス配管162の他端はシャワーヘッド130の第2の導入路132に接続されている。還元ガス配管162のシャワーヘッド130の近傍には開閉バルブ163が介装されている。また、還元ガス配管162の還元ガス供給源161の近傍には、流量制御器としてのマスフローコントローラ164およびその前後の開閉バルブ165が介装されている。ガス供給機構140は、さらに、例えばArガスやN
2ガス等の不活性ガスからなるパージガスを供給するためのパージガス供給源171を有している。パージガス供給源171にはパージガス配管172の一端が接続されており、パージガス配管172の他端は還元ガス配管162に合流している。パージガス配管172には、流量制御器としてのマスフローコントローラ173およびその前後の開閉バルブ174が介装されている。
【0051】
排気機構150は、チャンバー121の底部に形成された排気口151に繋がる排気配管152と、排気配管152に介装された、チャンバー131内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)153と、排気配管152を介してチャンバー131内を排気するための真空ポンプ154を有している。なお、図示していないが、原料ガス送出配管146と排気配管152との間、および還元ガス配管162と排気配管152との間にはプリフローラインが介装されており、これらプリフローラインはバルブにより開閉可能となっている。これにより、Co−AMDガスおよび還元ガスをチャンバー121を介さずに排気配管152に流すプリフローを行うことができる。
【0052】
チャンバー121の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口181が形成されており、この搬入出口181はゲートバルブGを介して真空搬送室101と接続されている。
【0053】
次に、エッチング装置104について説明する。
図7はエッチング装置104を示す断面図である。
成膜装置104は、
図7に示すように、密閉構造のチャンバー221と、チャンバー221の内部に設けられた、ウエハWを略水平にした状態で載置する載置台222と、載置台222に対向して設けられたシャワーヘッド230と、シャワーヘッド230に
エッチング用のガスを供給するガス供給機構240と、排気機構250とを有している。
【0054】
載置台222は、平面視略円形をなしており、チャンバー221の底部に固定されている。載置台222の内部には、ヒーター223が埋め込まれている。そして、ヒーター223に印加される電圧を制御することにより、ウエハWを所定の
エッチング温度に加熱するようになっている。なお、図示はしていないが、載置台222には、そのウエハ載置面に対して突没するようにウエハWを昇降する複数、例えば3本の昇降ピンが設けられている。
【0055】
チャンバー221の天壁221aには、円形の孔221bが形成されており、そこからチャンバー221内へ突出するようにシャワーヘッド230が嵌め込まれている。シャワーヘッド230は、後述するガス供給機構240から供給されたエッチング用のガスをチャンバー221内に吐出するためのものであり、その上部には、第1の導入路231と、第2の導入路232とを有している。シャワーヘッド230は、ベース部材233と、シャワープレート234と、ベース部材233とシャワープレート234の間に設けられた円筒状の側壁235とを有しており、内部にガス拡散空間236が形成されている。シャワープレート234には複数のガス吐出孔237が形成されている。シャワーヘッド230はヒーター(図示せず)により加熱されるようになっている。
【0056】
ガス供給機構240は、エッチングガスの一方の成分であるβ−ジケトン、例えば分子中のカルボニル基にハロゲン原子を含むアルキル基が結合したもの、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトン(Hfac)を貯留するタンク241を有している。タンク241の周囲にはヒーター(図示せず)が設けられ、タンク241内のβ−ジケトンを適宜の温度に加熱することができるようになっている。
【0057】
タンク241には、上方から例えばArガスやN
2ガス等の不活性ガスからなるキャリアガスを供給するためのキャリアガス配管242が挿入されている。キャリアガス配管242には、キャリアガス供給源243が接続されており、また、流量制御器としてのマスフローコントローラ244およびその前後の開閉バルブ245が介装されている。また、タンク241内にはガス送出配管246が上方から挿入されており、このガス送出配管246の他端はシャワーヘッド230の第1の導入路231に接続されている。ガス送出配管246のシャワーヘッド230の近傍には開閉バルブ247が介装されている。
【0058】
キャリアガス配管242とガス送出配管246との間は、バイパス配管248により接続されており、この配管248にはバルブ249が介装されている。一方、キャリアガス配管24
2における配管248接続部分の下流側
およびガス送出配管246における配管148接続部分の上流側にはそれぞれバルブ245a,247aが介装されている。したがって、バルブ245a,247aを閉じてバルブ249を開くことにより、キャリアガス供給源243からのキャリアガスを、キャリアガス配管242、バイパス配管248、
ガス送出配管246を経て、パージガス等としてチャンバー221内に供給することが可能となっている。
【0059】
また、ガス供給機構240は、エッチングガスの他方の成分であるNOガスを供給するNOガス供給源261を有している。NOガス供給源261にはNOガス配管262の一端が接続されており、NOガス配管262の他端はシャワーヘッド230の第2の導入路232に接続されている。NOガス配管262のシャワーヘッド230の近傍には開閉バルブ263が介装されている。また、NOガス配管262のNOガス供給源261の近傍には、流量制御器としてのマスフローコントローラ264およびその前後の開閉バルブ265が介装されている。ガス供給機構240は、さらに、例えばArガスやN
2ガス等の不活性ガスからなるパージガスを供給するためのパージガス供給源271を有している。パージガス供給源271にはパージガス配管272の一端が接続されており、パージガス配管272の他端はNOガス配管262に合流している。パージガス配管272には、流量制御器としてのマスフローコントローラ273およびその前後の開閉バルブ274が介装されている。
【0060】
排気機構250は、チャンバー221の底部に形成された排気口251に繋がる排気配管252と、排気配管252に介装された、チャンバー221内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)253と、排気配管252を介してチャンバー221内を排気するための真空ポンプ254を有している。なお、図示していないが、ガス送出配管246と排気配管252との間、およびNOガス配管262と排気配管252との間にはプリフローラインが介装されており、これらプリフローラインはバルブにより開閉可能となっている。これにより、β−ジケトンガスおよびNOガスをチャンバー221を介さずに排気配管252に流すプリフローを行うことができる。
【0061】
チャンバー221の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口281が形成されており、この搬入出口281はゲートバルブGを介して真空搬送室101と接続されている。
【0062】
なお、エッチング装置104は、ガス供給機構240以外のチャンバー221、載置台222、シャワーヘッド230、排気機構240は、成膜装置103のチャンバー121、載置台122、シャワーヘッド130、排気装置140と同様に構成されている。
【0063】
冷却装置102は、チャンバー内に温調機構を有する載置台が設けられており、エッチング装置104によるエッチング温度が、成膜装置103による成膜温度より高い場合に、エッチング装置104でエッチングされたウエハWを再び成膜装置103に搬送する前に、ウエハWを成膜温度付近まで冷却する機能を有している。
【0064】
以上のように構成された成膜システム100においては、まず、ウエハ搬送機構111により大気搬送室106に接続されたキャリアCからウエハWを取り出し、いずれかのロードロック室105のゲートバルブG2を開けてウエハWをそのロードロック室105に搬入する。ゲートバルブG2を閉じた後、ロードロック室105内を真空排気する。
【0065】
そのロードロック室105が、所定の真空度になった時点でゲートバルブG1を開けて、ウエハ搬送機構110によりロードロック室105からウエハWを取り出す。そして、成膜装置103のゲートバルブGを開けて、ウエハ搬送機構110に保持されたウエハWを成膜装置103に搬入する。
【0066】
ウエハ搬送機構110により成膜装置103のチャンバー121内にウエハWを搬入し、載置台122上に載置した後、ウエハ搬送機構110を戻し、ゲートバルブGを閉じる。そして、ヒーター123によりウエハWを所定の温度に加熱するとともに、チャンバー121内を排気し、パージガスおよびキャリアガスを供給してチャンバー121内の圧力調整を行い、Co−AMDガス、例えばCo(tBu−Et−Et−amd)
2ガス、および還元ガスのプリフローを行う。その後、プリフローラインから原料ガス送出配管146および還元ガス配管162に切り替え、シャワーヘッド130を介してチャンバー121内にCo−AMDガスおよび還元ガスを供給してCo膜の成膜を行う。このとき、Co−AMDガスおよび還元ガスを同時に供給してCVD法によりCo膜を成膜してもよく、チャンバー121のパージを挟んで、これらを交互に供給するALD法でCo膜を供給してもよい。
【0067】
Co膜を成膜して、ビアホール内に所定のCo膜埋め込みがなされた後、Co−AMDガスおよび還元ガスを停止し、チャンバー121内をパージした後、成膜装置103のゲートバルブGを開け、ウエハ搬送機構110により成膜後のウエハWをチャンバー121から取り出す。そして、エッチング装置104のゲートバルブGを開けて、ウエハ搬送機構110に保持されたウエハWをエッチング装置104に搬入する。
【0068】
ウエハ搬送機構110によりエッチング装置104のチャンバー221内にウエハWを搬入し、載置台222上に載置した後、ウエハ搬送機構110を戻し、ゲートバルブGを閉じる。そして、ヒーター223によりウエハWを所定の温度に加熱するとともに、チャンバー221内を排気し、パージガスおよびキャリアガスを供給してチャンバー221内の圧力調整を行い、エッチングガスである、β−ジケトンガス、例えばHfacガス、およびNOガスのプリフローを行う。その後、プリフローラインからガス送出配管246およびNOガス配管262に切り替え、シャワーヘッド230を介してチャンバー221内にエッチングガスであるβ−ジケトンガスおよびNOガスを供給してCo膜のエッチングを行う。
【0069】
Co膜が所望の形状にエッチングされた後、β−ジケトンガスおよびNOガスを停止し、チャンバー221内をパージした後、エッチング装置104のゲートバルブGを開け、ウエハ搬送機構110により
エッチング後のウエハWをチャンバー221から取り出す。
【0070】
その後、必要に応じて、冷却装置102によりウエハWを所定温度に冷却した後、搬送機構110により、ウエハを再び成膜装置103に搬入し、同様にCo膜の成膜を行い、ビアホール内のCo膜のエッチングした部分を埋め込む。
【0071】
その後、必要に応じて、エッチング装置104によるエッチングおよび成膜装置103による成膜を所定回数繰り返す。
【0072】
このようにして、所定の成膜シーケンスが終了後、ウエハ搬送機構110によりウエハWを取り出し、ゲートバルブG1を開けて、ウエハ搬送機構110からロードロック室105にウエハWを搬送し、ゲートバルブG1を閉じてロードロック室105内を大気圧に戻す。その後、ゲートバルブG2を開けて、ウエハ搬送機構111にてロードロック室105内のウエハWをキャリアCに戻す。
【0073】
以上のような処理を、複数のウエハWについて同時並行的に行って、所定枚数のウエハWの成膜処理が完了する。
【0074】
本例では、成膜温度とエッチング温度が異なる場合でも、成膜とエッチングとを真空雰囲気で連続して行うことができ、シームを生じさせず、かつ高スループットでビアホール内のCo膜の埋め込みを行うことができる。
【0075】
(成膜システムの第2の例)
図8は、本発明の成膜方法を実施することができる成膜システムの第2の例を示す概略図である。
【0076】
図8に示すように、本例の成膜システム300は、平面形状が七角形をなす真空搬送室301を有し、真空搬送室301の4つの壁部にそれぞれゲートバルブGを介してCo膜の成膜処理とエッチング処理を一括して行える成膜・エッチング装置302が接続されている。真空搬送室301内は、真空ポンプにより排気されて所定の真空度に保持される。
【0077】
また、真空搬送室301の他の3つの壁部には3つのロードロック室303がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室302を挟んで真空搬送室301の反対側には大気搬送室304が設けられている。3つのロードロック室303は、ゲートバルブG2を介して
大気搬送室304に接続されている。ロードロック室303は、大気搬送室304と真空搬送室301との間でウエハWを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力制御するものである。
【0078】
大気搬送室304のロードロック室303取り付け壁部とは反対側の壁部にはウエハWを収容するキャリア(FOUP等)Cを取り付ける3つのキャリア取り付けポート305を有している。また、大気搬送室304の側壁には、シリコンウエハWのアライメントを行うアライメントチャンバ306が設けられている。大気搬送室304内には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0079】
真空搬送室301内には、ウエハ搬送機構307が設けられている。ウエハ搬送機構307は、成膜・エッチング装置302およびロードロック室303に対してウエハWを搬送する。ウエハ搬送機構307は、独立に移動可能な2つの搬送アーム307a,307bを有している。
【0080】
大気搬送室304内には、ウエハ搬送機構308が設けられている。ウエハ搬送機構308は、キャリアC、ロードロック室303、アライメントチャンバ306に対してシリコンウエハWを搬送するようになっている。
【0081】
成膜システム300は、全体制御部310を有している。全体制御部310は、成膜・エッチング装置302の各構成部、真空搬送室301の排気機構やウエハ搬送機構307、ロードロック室303の排気機構やガス供給機構、大気搬送室304のウエハ搬送機構308、ゲートバルブG、G1、G2の駆動系等を制御する、CPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。全体制御部310の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、成膜システム300に、所定の動作を実行させる。
【0082】
次に、成膜・エッチング装置302について説明する。
図9は成膜・エッチング装置302を示す断面図である。成膜・エッチング装置302は、第1の例の成膜装置103と同様の構成のチャンバー121に、成膜装置103と同様の成膜ガスを供給するガス供給機構140と、エッチング装置104と同様のエッチングガスを供給するガス供給機構240とを取り付け、チャンバー121に成膜ガスとエッチングガスの両方を供給可能としたものである。
【0083】
なお、チャンバー121内の各部材およびガス供給機構(成膜ガス供給機構)140およびガス供給機構(エッチングガス供給機構)240の各部材についても成膜装置103またはエッチング装置104と同様のものには同様の符号を付している。シャワーヘッド130には、成膜用のガスを導入するための第1のガス導入部131および第2のガス導入部132の他、エッチング用のガスを導入するための第3のガス導入部231および第4のガス導入部232が設けられている。
【0084】
以上のように構成された成膜システム300においては、まず、ウエハ搬送機構308により大気搬送室304に接続されたキャリアCからウエハWを取り出し、いずれかのロードロック室303のゲートバルブG2を開けてウエハWをそのロードロック室303に搬入する。ゲートバルブG2を閉じた後、ロードロック室303内を真空排気する。
【0085】
そのロードロック室303が、所定の真空度になった時点でゲートバルブG1を開けて、ウエハ搬送機構307によりロードロック室303からウエハWを取り出す。そして、成膜・エッチング装置302のゲートバルブGを開けて、ウエハ搬送機構307に保持されたウエハWを成膜・エッチング装置302に搬入する。
【0086】
ウエハ搬送機構307により成膜・エッチング装置302のチャンバー121内にウエハWを搬入し、載置台122上に載置した後、ウエハ搬送機構307を戻し、ゲートバルブGを閉じる。そして、ヒーター123によりウエハWを所定の温度に加熱するとともに、チャンバー121内を排気し、パージガスおよびキャリアガスを供給してチャンバー121内の圧力調整を行い、Co−AMDガス、例えばCo(tBu−Et−Et−amd)
2ガス、および還元ガスのプリフローを行う。その後、プリフローラインから成膜ガス供給機構140の原料ガス送出配管146および還元ガス配管162に切り替え、シャワーヘッド130を介してチャンバー121内にCo−AMDガスおよび還元ガスを供給してCo膜の成膜を行う。このとき、Co−AMDガスおよび還元ガスを同時に供給してCVD法によりCo膜を成膜してもよく、チャンバー121のパージを挟んで、これらを交互に供給するALD法でCo膜を供給してもよい。
【0087】
Co膜を成膜して、ビアホール内に所定のCo膜埋め込みがなされた後、Co−AMDガスおよび還元ガスを停止し、チャンバー121内をパージした後、必要に応じてヒーター123の制御温度を調整し、ウエハWを所定のエッチング温度に加熱するとともに、チャンバー121内を排気し、パージガスおよびキャリアガスを供給してチャンバー121内の圧力調整を行い、エッチングガスである、β−ジケトンガス、例えばHfacガス、およびNOガスのプリフローを行う。その後、プリフローラインからエッチングガス供給機構240のガス送出配管246およびNOガス配管262に切り替え、シャワーヘッド130を介してチャンバー121内にエッチングガスであるβ−ジケトンガスおよびNOガスを供給してCo膜のエッチングを行う。
【0088】
Co膜が所望の形状にエッチングされた後、β−ジケトンガスおよびNOガスを停止し、チャンバー121内をパージする。
【0089】
その後、再び、成膜ガス供給機構140から、チャンバー121内に従前の成膜の際と同様にCo−AMDガスおよび還元ガスを供給し、ビアホール内のCo膜のエッチングした部分を埋め込む。
【0090】
その後、成膜・エッチング装置302内で、必要に応じて、エッチングおよび成膜を所定回数繰り返す。
【0091】
このようにして、所定の成膜シーケンスが終了後、ウエハ搬送機構307によりウエハWを取り出し、ゲートバルブG1を開けて、ウエハ搬送機構307からロードロック室303にウエハWを搬送し、ゲートバルブG1を閉じてロードロック室303内を大気圧に戻す。その後、ゲートバルブG2を開けて、ウエハ搬送機構308にてロードロック室303内のウエハWをキャリアCに戻す。
【0092】
以上のような処理を、複数のウエハWについて同時並行的に行って、所定枚数のウエハWの成膜処理が完了する。
【0093】
本例では、Co膜成膜とエッチングとは同じ温度または近接した温度で行う場合、一つのチャンバー121内で載置台122の温度変更をほとんど行うことなく、しかもウエハの搬送をともなわずに成膜とエッチングを繰り返し行うことができ、シームを生じさせず、かつ極めて高スループットでビアホール内のCo膜の埋め込みを行うことができる。
【0094】
<実験例>
次に、本発明の実験例について説明する。
本発明の成膜→エッチング→成膜のシーケンスでCo膜によりビアホール内を埋め込んだ際の効果を確認した。
【0095】
ここでは、φ160
nmのビアホールに対し、Co膜の成膜を2回繰り返したサンプル(サンプル1)と、Co膜の成膜→エッチング→成膜を行ったサンプル(サンプル2)とを比較した。Co膜の成膜は、プリカーサとしてコバルトアミジネートを用いて、240℃で行い、エッチングは、HfacとNOガスとを用いて、240℃で行った。成膜とエッチングの他の条件は、以下のとおりとした。
成膜
圧力:5〜20Torr、還元ガス:NH
3(50〜500sccm)
エッチング
圧力:5〜100Torr
【0096】
その際の表面および断面のSEM写真を図
10に示す。図
10(a)に示すように、エッチングを行わずにCo膜の成膜を2回繰り返したサンプル1では、ビアホール開口部のオーバーハングが大きく、φ160nmのビアホールが最も狭い部分でφ31.0nmまで縮小していたのに対し、
図10(b)に示すように、本発明に従って成膜→エッチング→成膜を行ったサンプル2では、最も狭い部分でφ53.2nmであり、HfacとNOガスによるエッチングを付加することにより、ビアホール開口部のオーバーハングが22.2nmも減少することが確認された。
【0097】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態の成膜システムは例示に過ぎず、種々の構成のシステムにより本発明の成膜方法を実施することができる。
【0099】
また、被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【0100】
さらに、上記実施形態では、ビアホールの埋め込みに本発明を適用した例を示したが、他の凹部の埋め込みにも適用することができる。