特許第6559233号(P6559233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6559233-マグネトロンスパッタリング装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559233
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】マグネトロンスパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20190805BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190805BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
   C23C14/35 C
   H01L21/31 D
   H01L21/316 Y
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-520213(P2017-520213)
(86)(22)【出願日】2016年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2016002308
(87)【国際公開番号】WO2016189809
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-104441(P2015-104441)
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−117019(JP,A)
【文献】 特開2008−255456(JP,A)
【文献】 特表2002−521567(JP,A)
【文献】 特開2014−084483(JP,A)
【文献】 特開2013−189711(JP,A)
【文献】 特開平7−003450(JP,A)
【文献】 米国特許第6039848(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/31
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、この真空チャンバに着脱自在なカソードユニットとを備え、カソードユニットは、真空チャンバ内を臨むように設置されるターゲットと、ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されてスパッタ面側に漏洩磁場を発生させる磁石ユニットとを有するマグネトロンスパッタリング装置であって、真空チャンバ内でターゲットに対向配置される処理基板に対してターゲットをスパッタリングして成膜する間、ターゲット中心を回転中心として磁石ユニットを回転駆動する駆動源を有するものにおいて、
前記処理基板に成膜したときに生じる膜厚分布の偏りの方位に一致させて真空チャンバまたはカソードユニットのハウジングの外壁に、真空チャンバ内に漏洩磁場を作用させる補助磁石ユニットを局所的に設け、
前記ターゲットが絶縁物製であり、このターゲットが、内部に冷媒循環通路が設けられたバッキングプレートに接合された状態でカソードユニットに設けられ、
高周波電力を投入してターゲットをスパッタリングして成膜する間、バッキングプレートの上壁に設けた冷媒の流入口から冷媒循環通路に冷媒を供給し、その上壁に設けた冷媒の流出口から排出しながら冷媒との熱交換でターゲットを冷却し、
前記補助磁石ユニットが、ターゲットの中心から流出口を経てのびる線と真空チャンバの外壁との交点を跨ぐように周方向に列設され、前記補助磁石ユニットで発生させる漏洩磁場の作用により、処理基板に成膜される薄膜の膜厚分布の偏りを抑制することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置であって、
前記補助磁石ユニットは、複数個の夫々対をなす磁石から構成され閉磁場を形成することを特徴とするマグネトロンスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリのような次世代の半導体デバイスの製造工程において、酸化アルミニウム膜等の絶縁膜を成膜するために、マグネトロンスパッタリング装置が用いられる。マグネトロンスパッタリング装置としては、真空チャンバと、この真空チャンバに着脱自在なカソードユニットとを備え、カソードユニットは、真空チャンバ内を臨むように設置されるターゲットと、ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されてスパッタ面側に漏洩磁場を発生させる磁石ユニットとを有し、真空チャンバ内でターゲットに対向配置される処理基板に対してターゲットをスパッタリングして成膜する間、ターゲット中心を回転中心として磁石ユニットを回転駆動する駆動源を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなマグネトロンスパッタリング装置を用いた成膜では、真空チャンバに設けられた排気口の位置やガス導入口の位置に起因して、処理基板に成膜される薄膜の膜厚分布に偏りが生じることが知られている。次世代の半導体デバイスでは、膜厚面内分布を例えば1%未満に制御することが要求されており、この要求を満たすには、膜厚分布の偏りを如何に抑制するかが重要となる。この場合、磁石ユニットの磁石を一方向に移動自在に構成することが考えられるが、装置構成が複雑化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−209268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記知見に基づき、簡単な構成で、膜厚分布の偏りを効果的に抑制することができるマグネトロンスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、真空チャンバと、この真空チャンバに着脱自在なカソードユニットとを備え、カソードユニットは、真空チャンバ内を臨むように設置されるターゲットと、ターゲットのスパッタ面と背向する側に配置されてスパッタ面側に漏洩磁場を発生させる磁石ユニットとを有する本発明のマグネトロンスパッタリング装置は、真空チャンバ内でターゲットに対向配置される処理基板に対してターゲットをスパッタリングして成膜する間、ターゲット中心を回転中心として磁石ユニットを回転駆動する駆動源を有し、前記処理基板に成膜したときに生じる膜厚分布の偏りの方位に一致させて真空チャンバまたはカソードユニットのハウジングの外壁に、真空チャンバ内に漏洩磁場を作用させる補助磁石ユニットを局所的に設けることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、補助磁石ユニットで発生させる漏洩磁場の作用により、処理基板に成膜される薄膜の膜厚分布の偏りを効果的に抑制することができ、その結果、膜厚面内分布を向上できる。しかも、磁石ユニットを一方向に移動させる複雑な機構を設ける必要がなく、簡単な装置構成で実現できる。
【0008】
ところで、ターゲットが絶縁物製であり、この絶縁物製のターゲットが、内部に冷媒循環通路が設けられたバッキングプレートに接合された状態でカソードユニットに設けられ、高周波電力を投入してターゲットをスパッタリングして成膜する場合、バッキングプレートの冷媒循環通路から冷媒を排出する部分での膜厚が薄くなっていることを判明した。これは、冷媒循環通路から冷却水が排出される流出口付近で高周波電力が消費されてプラズマのインピーダンスが局所的に低くなることに起因するとの知見するに至った。
【0009】
そこで、本発明において、補助磁石ユニットを、ターゲットの中心から流出口を経てのびる線と真空チャンバの外壁との交点を跨ぐように配置することで、流出口近傍におけるプラズマのインピーダンスが高められ、膜厚分布の偏りを効果的に抑制することができる。本発明者らの実験では、膜厚面内分布を0.6%未満に制御できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のマグネトロンスパッタリング装置を示す模式的断面図。
図2図1のII−II線に沿う模式的断面図。
図3】(a)及び(b)は、本発明の効果を確認する実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のマグネトロンスパッタリング装置について説明する。以下においては、図1を基準とし、真空チャンバ1の天井部側を「上」、その底部側を「下」として説明する。
【0012】
図1に示すように、マグネトロンスパッタリング装置SMは、処理室1aを画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の底部には排気口11が設けられ、この排気口11は排気管12を介してターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空ポンプPが接続され、処理室1aを所定圧力(例えば1×10−5Pa)まで真空引きできるようにしている。真空チャンバ1の側壁にはガス導入口13が設けられ、このガス導入口13には、図示省略のガス源に連通し、マスフローコントローラ14が介設されたガス管15が接続され、Arなどの希ガスからなるスパッタガスを処理室1a内に所定流量で導入できるようになっている。
【0013】
真空チャンバ1の底部には、後述するターゲットと対向させて基板ステージ16が配置されている。基板ステージ16は図示省略する公知の静電チャックを有し、この静電チャックの電極に所定電圧を印加することで、基板ステージ16上に処理すべき基板Wをその成膜面を上にして吸着保持できるようになっている。
【0014】
真空チャンバ1の天井部には、カソードユニットCが着脱自在に設けられている。カソードユニットCは、真空チャンバ1内(処理室1a)を臨むように設置されるターゲット2と、ターゲット2のスパッタ面2aと背向する面にインジウムやスズ等のボンディング材を介して接合されるバッキングプレート3と、ターゲット2のスパッタ面2aと背向する側に配置されてスパッタ面2a側に漏洩磁場を発生させる磁石ユニット4とを有する。バッキングプレート3及び磁石ユニット4はハウジングHで囲われている。ターゲット2は、成膜しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択されるアルミナ(Al)等の絶縁物製であり、公知の方法を用いて例えば平面視円形に作製されている。ターゲット2には、スパッタ電源Eとしての高周波電源からの出力が接続され、スパッタリング時、高周波電力が投入される。バッキングプレート3は、熱伝導の良いCu等の金属製であり、内部に冷媒循環通路31が形成されていると共に、上壁には、冷媒の流入口32と流出口33が設けられている。図外のチラーから供給される冷媒(例えば冷却水)を流入口32から冷媒循環通路31に供給し、冷媒循環通路31を循環した冷媒を流出口33から排出しながら、冷媒との熱交換でターゲット2を冷却出来るようになっている。磁石ユニット4としては、ヨーク41と、ヨーク41の下面に環状に列設した同磁化の複数個の第1の磁石42と、第1の磁石42の周囲を囲うように環状に列設した第1の磁石42と同磁化の複数個の第2の磁石43とを有する。ヨーク41の上面には、駆動源44の駆動軸44aが接続され、ターゲット2をスパッタリングして成膜する間、ターゲット2中心を回転中心として磁石ユニット4を回転駆動できるようになっている。
【0015】
上記マグネトロンスパッタリング装置SMは、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段を有し、マスフローコントローラ10の稼働、真空排気手段Pの稼働、駆動源44の駆動、チラーの駆動等を統括制御するようにしている。以下、上記スパッタリング装置SMを用いたスパッタリング方法について、アルミナ膜を成膜する場合を例に説明する。
【0016】
アルミナ製のターゲット2が配置された真空チャンバ1内を所定の真空度(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きし、図外の搬送ロボットにより真空チャンバ1内に基板Wを搬送し、基板ステージ16に基板Wを受け渡し、静電吸着する。次いで、スパッタガスたるアルゴンガスを例えば、150〜250sccmの流量で導入し(このときの真空チャンバ1内の圧力は2〜4Pa)、スパッタ電源Eからターゲット2に高周波電力(例えば、13.56MHz、4kW)を投入することにより、真空チャンバ1内にプラズマを形成する。これにより、ターゲット2のスパッタ面2aがスパッタされ、飛散したスパッタ粒子を基板Wの表面に付着、堆積させてアルミナ膜が成膜される。
【0017】
ここで、磁石ユニット4の第1及び第2の磁石42,43の位置は、処理基板Wに成膜されるアルミナ膜の膜厚面内分布が良好となるように設計されるが、排気口11の位置やガス導入口13の位置に起因して、処理基板Wに成膜される薄膜の膜厚分布に偏りが生じることが知られている。本実施形態では、バッキングプレート3の冷媒循環通路31から冷媒を排出する流出口33の部分での膜厚が薄くなっており、その結果、膜厚分布の偏りが生じることが判明した。
【0018】
そこで、本実施形態では、膜厚分布の偏りの方位に一致させて、つまり、ターゲット2の中心から流出口33を経てのびる線と真空チャンバ1の外壁との交点Cpを跨ぐように、真空チャンバ1の外壁に補助磁石ユニット5を局所的に設けた。補助磁石ユニット5は、周方向に列設した複数個(本実施形態では4個)の磁石51で構成することができる。尚、膜厚の制御範囲を限定し、発散磁場でない閉磁場とさせるため、これら複数個の磁石51は夫々対をなすことが好ましい。
【0019】
以上説明した実施形態によれば、補助磁石ユニット5により真空チャンバ1内に発生させる漏洩磁場の作用により、流出口近傍におけるプラズマのインピーダンスが高められ、膜厚分布の偏りを効果的に抑制することができ、その結果、膜厚面内分布を向上させることができる。しかも、磁石ユニット4を一方向に移動自在にする複雑な機構を設ける必要がなく、補助磁石ユニットという簡単な構成で実現することができ、設備コストの上昇を抑制できて有利である。
【0020】
次に、上記効果を確認するために、上記マグネトロンスパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。発明実験では、処理基板Wとしてφ300mmのシリコン基板を用い、カソードユニットCのターゲット2としてφ400mmの酸化アルミニウム製のものを用いた。このカソードユニットCを組み付け、図2に示すように補助磁石ユニット5の4つの磁石51を交点Cpを跨ぐように真空チャンバ1の外壁に設けた。そして、真空チャンバ1内の基板ステージ16に処理基板Wをセットした後、磁石ユニット4を回転速度40rpmで回転させると共に、真空チャンバ1内にアルゴンガスを200sccmの流量で導入し(このときの処理室1a内の圧力は3Pa)、ターゲット2へ13.56MHzの高周波電力を4kW投入してプラズマを生成し、スパッタリングにより処理基板Wにアルミナ膜を成膜した。成膜したアルミナ膜の平均膜厚は45.61nm、膜厚面内分布(σ)は0.55%であり、図3(a)に示すように、基板面内において線で結ばれる同一膜厚を有する部分が略同心円状となって膜厚面内分布の偏りが抑制されていることが確認された。尚、図3(a)に示す方向は、図2に示す方向に対応する。
【0021】
上記発明実験に対する比較のために比較実験を行った。比較実験では、補助磁石ユニット5を設けない点を除いて、上記発明条件と同様の条件を用いてアルミナ膜を成膜した。成膜したアルミナ膜の平均膜厚は46.16nm、膜厚面内分布(σ)は1.19%であり、図3(b)に示すように、流出口33に対応する左側部分の膜厚が薄く、右側に向かうほど膜厚が厚くなるという膜厚分布の偏りが確認された。上記発明実験及び比較実験によれば、真空チャンバ1の外壁に補助磁石ユニット5を局所的に設けることで、膜厚分布の偏りを抑制でき、ひいては、膜厚面内分布を0.6%未満にまで大幅に向上できることが判った。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、補助磁石ユニット5を真空チャンバ1の外壁に設ける場合を例に説明したが、膜厚分布の偏りの方位に一致させてハウジングHの外壁に設けるようにしてもよい。また、上記実施形態では、補助磁石ユニット5を4個の磁石51で構成しているが、漏洩磁場を作用させる範囲に応じて磁石51の数を適宜設定すればよい。
【0023】
また、上記実施形態では、ターゲット2の材質として酸化アルミニウムを例に説明したが、これに限らず、MgO、SiC,SiN等の絶縁物を選択でき、また、Ti、Cu、Al等の金属を選択できる。金属製のターゲット2を用いる場合、スパッタ電源Eとして公知の直流電源を用いればよい。
【符号の説明】
【0024】
SM…マグネトロンスパッタリング装置、C…カソードユニット、Cp…ターゲット中心2cから流出口33を経てのびる線と真空チャンバ1の外壁との交点、H…ハウジング、W…処理基板、1…真空チャンバ、2…ターゲット、2a…スパッタ面、2c…ターゲット2の中心、3…バッキングプレート、31…冷媒循環通路、32…流入口、33…流出口、4…磁石ユニット、5…補助磁石ユニット。
図1
図2
図3