(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559294
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】塩化物不含ポリエチレンイミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/04 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
C08G73/04
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-90794(P2018-90794)
(22)【出願日】2018年5月9日
(62)【分割の表示】特願2015-546934(P2015-546934)の分割
【原出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-119165(P2018-119165A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】12196731.9
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 太介
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヒュファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラーマー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ディーチェ
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−500383(JP,A)
【文献】
特表2000−501757(JP,A)
【文献】
特公昭41−014596(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0163199(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)液状の水性溶剤、及び
(b)触媒としての二酸化炭素
の存在下、アルキレンイミンから、塩素含有不純物の割合がポリアルキレンイミンに対して0.1質量%以下であるポリアルキレンイミンを製造する方法において、
前記製造を1つの反応容器内で、バッチ式で行い、
液状の前記水性溶剤、触媒としての前記二酸化炭素、及び(c)添加剤を含む初期装入物にアルキレンイミンを計量供給し、かつ
前記(c)添加剤が、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又は3,3−ジメチルアミノプロピルアミンであることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記製造を、塩素含有化合物の不在下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキレンイミンとして、エチレンイミン、2−メチルアジリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)アジリジン、1−(2−アミノエチル)アジリジンを使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアルキレンイミンは、分子量分布が数平均Mnで300〜500000g/molであり、多分散性が1.3〜5である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
塩素濃度の上昇が、適用特性に対して否定的に作用する適用領域における、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法により製造されたポリアルキレンイミンの使用。
【請求項6】
前記適用領域が、医療技術、印刷媒体、排水処理、表面処理、化粧品、洗浄剤、生命工学、包装、電子産業、紙、建築化学、テキスタイル、クロマトグラフィー、イオン交換体、油産業、セラミック、ガラス、膜技術、触媒、電気めっき用途、殺生剤、又は木材保護の分野である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
・腐食防止剤、分散剤、又は油添加剤としての、
・薬剤、ヘアケア用品、香料、及び芳香剤を調合するための、
・遺伝子ベクターを製造するための、
・電気めっき技術及び医療技術において表面を官能化及び変性するための、又は
・半導体産業用及びリチウム電池用の洗浄系を製造するための、
請求項5又は6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンイミンからポリアルキレンイミンを製造する方法に関する。本発明はさらにまた、特定のポリアルキレンイミン、並びに特定のポリアルキレンイミンを含有する調製物に関する。本発明のさらなる対象は、塩素濃度の上昇が、適用特性に対して否定的に作用する用途分野における、ポリアルキレンイミンの使用である。
【0002】
本発明のさらなる実施態様は、請求項、明細書、及び実施例から読み取ることができる。前述の、また後に説明する本発明の対象の特徴は、それぞれ具体的に記載された組み合わせのみならず、別の組み合わせでも、本願発明の枠組みを逸脱しない限りにおいて使用可能であると理解されるべきである。全ての特徴が好ましい及び/又は特に好ましい意味を有する本発明の実施態様が、好ましい、又は特に好ましい。
【背景技術】
【0003】
従前より、エチレンイミンから水溶性ポリエチレンイミンを製造すること、例えば製紙業において用いることは、公知である。
【0004】
US 2,182,306は、触媒の存在下での、エチレンイミンの重合を記載している。
US 3,203,910には、ポリアルキレンイミンを製造するための、ポリハロゲン化された開始剤が記載されている。
【0005】
エチレンイミンの反応(例えばDE 1 169 131に記載)は、別の物質(例えば尿素、フェニルイソシアネート、又はジエチルカーボネート)の存在下でも行うことができる。アミンの存在下での反応によって通常、ポリエチレンポリアミンの製造につながる。
【0006】
DE 195 45 874 A1には、少なくとも80℃の温度で触媒の存在下において溶剤中でエチレンイミンを重合させることによって、エチレンイミンのホモポリマーを連続的に製造する方法が記載されている。触媒としては酸性の反応物質、ブレンステッド酸(例えば鉱酸)、有機酸、又はルイス酸が挙げられる。
【0007】
DE 101 11 776 B4は、水性エチレンイミンポリマー溶液の製造方法に関し、ここではエチレンイミンを水性媒体中、80℃未満の温度で重合させ、続いて100〜150℃の温度で、熟成工程が行われる。
【0008】
WO 97/40088 A1、及びWO 98/02482 A1には、不活性溶剤中、少なくとも2個の官能基を有する架橋剤の存在下でアジリジンを重合させることにより、アジリジンの微粒子状水不溶性ポリマーを製造する方法が記載されている。この重合体は、作用物質の不活性化において、アルデヒド、ケトン、及び酸のための吸収剤として、また排水から重金属イオンを除去するために用いられる。
【0009】
DE 10 205 050 201 B3には、プロトン化又は第四級化によってカチオン性アミノ基を有する、ハロゲン化物が少ないポリマー水溶液の製造が記載されている。このようなカチオン性ポリマーの作用は、ポリマー分子における正電荷と、懸濁された又は乳化された粒子の表面の負電荷との相互作用に基づくものである。
【0010】
上記従来技術から公知のポリアルキレンイミンはしばしば、広範な分子量分布を有し、これは特定の用途においてポリマーの用途特性に対して否定的に作用することがある。分子量分布が狭いポリアルキレンイミンは通常、顔料に対する分散性が改善される。
【0011】
従来技術から公知のポリアルキレンイミンはしばしば、塩化物含有開始剤又は触媒を用いて製造される。こうして得られるポリマーは、塩化物含分が比較的高く、工業的に用いる際、それぞれの用途に否定的な影響を与えることがある。ポリエチレンイミンは例えば、腐食防止剤として使用されるが、塩化物含分の上昇によって、望ましくないピッティングの形成が増加する。さらに、塩化物含分が高いポリアルキレンイミンは、高温による負荷が生じる用途では使用できない。このように塩化物含分が高いポリアルキレンイミンを、例えばエンジンオイルにおけるスス洗浄剤として用いる場合、高温による負荷のため、毒性化合物(例えばダイオキシン)が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2,182,306号明細書
【特許文献2】米国特許第3,203,910号明細書
【特許文献3】独国特許第1 169 131 B号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第195 45 874 A1号公報
【特許文献5】独国特許第101 11 776 B4号明細書
【特許文献6】国際公開第97/40088 A1号
【特許文献7】国際公開第98/02482 A1号
【特許文献8】独国特許第10 205 050 201 B3号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって本発明の課題は、分子量分布が狭いポリアルキレンポリイミン(特にポリエチレンイミン)が得られる製造方法を見出すことであった。本発明のさらなる課題は、塩素含分が少ない不純物を含有するポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの課題は、
(a)液状溶剤、及び
(b)触媒
の存在下、アルキレンイミンからポリアルキレンイミンを製造する方法によって解決され、ここで前記製造は、半非連続的に、好ましくはバッチ法で、反応器内において行われる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の範囲において半非連続的な製造とは、製造工程が、反応容器を装入物(例えば水、アミン、及び開始剤若しくは触媒から成るもの)で充填した後、アルキレンイミン(例えばアジリジン)の計量供給によって開始され、所定の反応時間に達した後に(好ましくは5〜30時間後)、又は所定のアルキレンイミン変換率に達した後(好ましくはアルキレンイミンの99%超)、完全に停止させることを意味する。連続的な方法とは異なり、変換率を一定に保つためにさらなる原料は添加せず、反応混合物の一部のみが分離されることはない。変換の停止後、任意で生成物を精製して、特に液状の溶剤及び/又は触媒を一部、又は完全に分離し、ポリアルキレンイミンを得る。ポリアルキレンイミンの製造は好ましくは、バッチ式で、すなわち装入物ごとに行う。半非連続的な製造の利点は、ポリアルキレンイミンの分子量分布が、連続的な運転法に比して良好に制御できることであり、通常は狭く分布したポリマーが得られることにある。
【0016】
本発明による方法の範囲では、ポリアルキレンイミンの所望の適用領域に応じて、様々なアルキレンイミンが多数使用できる。アルキレンイミンとして好ましくは、エチレンイミン、2−メチルアジリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)アジリジン、1−(2−アミノエチル)アジリジンを使用する。アルキレンイミンとしてはもちろんまた、様々なアルキレンイミンの混合物が使用できる。このため本発明による方法により、ホモポリアルキレンイミンも、アルキレンイミンのコポリマーも得られる。本発明による方法によって好ましくは、ポリエチレンイミンが得られる。
【0017】
液状の溶剤(a)は通常、1bar〜2barの圧力、80〜120℃の温度範囲、好ましくは85〜105℃の温度範囲で、液体として存在する。もちろん溶剤の混合物も、液状の溶剤(a)として使用できる。通常は溶剤として、不活性の炭化水素、又は極性溶剤(例えばアルコール若しくは水)を使用する。
【0018】
液状の溶剤として好ましくは、水性溶剤を使用する。水性溶剤はさらなる溶剤成分として、水の他にアルコール及び/又はアミンを含有することができる。水性溶剤は、その他の溶剤成分全てと水との合計量に対して少なくとも35質量%、水を含有する。水性溶剤中に好ましくは、少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも70質量%、極めて特に好ましくは少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%、水が含まれている。極めて特に好ましくは、液状の溶剤として水を使用する。
【0019】
触媒(b)として好ましくは、酸、又は酸性化合物を使用する。酸、又は酸性化合物とは通常、ブレンステッド酸、又はルイス酸である。触媒と水との反応によって好ましくは、ブレンステッド酸が形成され、このブレンステッド酸は一部、又は完全に変換が行われた後、反応混合物から容易に除去できる。この触媒(b)とは例えば、硫酸、メタンスルホン酸、ジクロロエタン、塩化ブチル、ギ酸、酢酸、二酸化炭素である。ギ酸と二酸化炭素が好ましい。極めて特に好ましいのは、水と接触させると炭酸が形成され、変換後には容易に反応混合物から除去可能な二酸化炭素である。
【0020】
本発明による方法のさらなる実施形態では、
(c)任意で、さらなる添加剤の存在下、
アルキレンイミンを変換して、ポリアルキレンイミンにする。
【0021】
さらなる添加剤(c)としては例えば、プライマー(例えばアミン又はコモノマー)が考慮される。好ましくは、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロイルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又は3,3−ジメチルアミノプロピルアミン、特にエチレンジアミンをプライマーとして使用する。
【0022】
本発明による方法の好ましい実施態様では、液状の溶剤(a)、触媒(b)、任意の添加剤(c)のいずれも、塩素含有化合物を含有しない。本発明による方法の実施態様のうち特に好ましいのは、変換の際にあらゆる塩素含有化合物が存在しないため、塩素含有化合物の不在下で製造される態様である。
【0023】
本発明による方法は、従来技術から当業者に信頼性のある反応容器内で行う。このためには例えば、反応容器内に溶剤(例えば水)を装入し、任意で添加剤、例えばプライマー(エチレンジアミンなど)を加える。触媒、例えば酸(ギ酸又は二酸化炭素など)を添加後、混合物を所望の反応温度(好ましくは85〜105℃)に加熱し、アルキレンイミン(例えばエチレンイミン)を計量供給して開始させる。ここで反応圧力は通常、1〜2barの間である。或いは、触媒(例えば酸)を開始剤として、アルキレンイミンと並行して計量供給できる。アルキレンイミンの添加終了後、重合反応を完全にするため、また残りのアルキレンイミンを分解させるために、混合物を120〜180℃の温度に加熱し、これに相応して通常は反応圧力が、2〜8barに上昇する。
【0024】
本発明による方法の好ましい実施態様では、二酸化炭素を触媒として使用し、ここで二酸化炭素は反応容器中で、液状の溶剤、好ましくは水性溶剤の液体表面の下に導入される。
【0025】
本発明のさらなる対象は、本発明による方法によって製造されるポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)である。ここでポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)とは好ましくは、分子量分布(質量平均分布)が数平均M
nで300〜500000g/mol、好ましくは500〜50000g/mol、特に好ましくは600〜20000g/mol、とりわけ1000〜15000g/molであり、多分散性(M
w/M
n、ただしM
wは質量平均)が1.3〜5、好ましくは1.3〜2、特に好ましくは1.4〜1.6である。
【0026】
さらに好ましいのは、分岐度(DB)が50超、好ましくは60超の本発明により製造されるポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)である。ポリアルキレンイミンは、その分岐度(Degree of Branching=DB)によって特徴付けられる。「分岐度」の定義については、H. FreyらのActa Polym. 1997, 48, 30を参照されたい。ここで分岐度DBは、以下のように定義される:
DB(%)=(T+Z)/(T+Z+L)×100
前記式中、
Tは、熱により結合されるモノマー単位(第一級アミノ基)の平均数であり、
Zは、分岐を形成するモノマー単位(第三級アミノ基)の平均数であり、
Lは、直鎖状に結合されたモノマー単位(第二級アミノ基)の平均数である。
【0027】
本発明により製造されるポリアルキレンイミンは好ましくは、分岐度(DB)が55〜95%、好ましくは57〜90%、特に好ましくは60〜80%である。
【0028】
本発明により製造されるポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)の好ましい実施態様では、ポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)は、塩素含有不純物を僅かな割合でしか有しておらず、ここで塩素含有不純物の割合は、ポリアルキレンイミン(特にポリエチレンイミン)に対して0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下、とりわけ0.001質量%以下、とりわけ好ましくは0.0001質量%以下である。
【0029】
本発明により製造されるポリアルキレンイミンはしばしば、調製物の構成要素として使用される。本発明によるこれらの調製物は、固体であるか、又は液状であってよい。液状の調製物が好ましい。特に好ましくは、調製物中にポリアルキレンイミンに加えて、溶剤が存在する。これは好ましくは、水性の調製物、特に好ましくは酸性の調製物、とりわけ酸性の洗浄溶液の調製物である。調製物中のポリアルキレンイミンの割合は通常、調製物の全量に対して0.1〜10質量%である。
【0030】
ポリアルキレンイミンの割合は好ましくは、0.1〜5質量%、とりわけ0.1〜2.5質量%である。
【0031】
本発明のさらなる対象は、塩素濃度の上昇が、適用特性に対して否定的に作用する用途分野における、上述の本発明による、若しくは本発明により製造された、塩素含有不純物の割合が少ないポリアルキレンイミン、特にポリエチレンイミンの使用である。
【0032】
ここで好ましいのは、医療技術、印刷媒体、排水処理、表面処理、化粧品、洗浄剤、生命工学、包装、電子産業、紙、建築化学、テキスタイル、クロマトグラフィー、イオン交換体、油産業、セラミック、ガラス、膜技術、触媒、電気めっき用途、殺生剤、又は木材保護の適用分野である。
【0033】
特に好ましいのは、腐食防止剤、分散剤、油添加剤(特に潤滑剤とエンジンオイル)としての、医薬、ヘアケア用品、香料、及び芳香剤を調合するための、遺伝子ベクター製造のための、電気めっき技術及び医療技術における表面の官能化及び変性のための、又は半導体産業及びリチウム電池のための洗浄系製造のための、使用である。
【0034】
本発明は、アルキレンイミンからポリアルキレンイミンを製造する半非連続的な方法をもたらす。本発明により製造される、若しくは製造可能なポリアルキレンイミンの特徴は、分散作用の改善につながる狭いモル質量分布である。ポリアルキレンイミンはさらに、特定の用途で問題のある塩化物含有不純物の含分が、ごく僅かである。
【0035】
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明の対象がこれらの実施例により制限されることはない。
【実施例】
【0036】
実施例
例1:一般的な製造処方の例
反応槽に順次、水0.0〜100g、エチレンジアミン0.01〜20g、及び二酸化炭素0.01〜30gを装入し、80〜120℃に加熱する。その後、エチレンイミンを500g添加し、任意で水に溶解させて、99〜10質量%の含分にする。この計量供給は通常、1〜24時間にわたって行う。2〜24時間の後反応時間後、この反応混合物を120〜180℃の温度に加熱する。その後、反応を終了させ、エチレンイミンを99%超、変換させる。
【0037】
反応混合物を真空下で80〜180℃の温度で処理することによって、水、並びに二酸化炭素の一部を、反応混合物から除去することができる。塩化物含分は、10ppm未満である。
【0038】
開始剤として塩化ブチル(エチレンイミンに並行して、反応バッチに添加される)を6.4g使用する場合、塩化物含分は、反応混合物に対して最大0.46質量%であり得る。
【0039】
例2:
ポリエチレンイミンは多くの用途で、効率的な腐食防止剤としても使用される。しかしながら、金属表面の保護作用に対する肯定的な効果は、塩化物化合物/塩化物イオンが存在することによって相殺され得る。
【0040】
そこで例えば鋼の表面浸食(表面腐食)は、ポリアルキレンイミンを0.5〜2質量%、酸性の洗浄溶液に添加することによって最大70%、低減された。使用するポリアルキレンイミンの量は、酸性洗浄溶液及びポリアルキレンイミンの量に対するものである。
【0041】
酸性の洗浄溶液は、メタンスルホン酸10質量%、非イオン性界面活性剤(Lutensol TO12、C
13オキソアルコール+12EO)6質量%、本発明により製造されたもの(Mnは1,000〜25,000、Mw/Mn<2、Cl含分<0.01%)1.5質量%を水(残分、合計で100質量%)に入れたものから成る水性調製物に相当する。
【0042】
Cl含分が2%のポリアミンにより、比較試験を行った。これを行うため、金属ストリップ(鋼、Gardobpnd OC;0.3×10.5×19cm、Chemetall社製)を浸漬容器の中に吊るし、40℃で30分間置いた。
【0043】
続いて、事前に全ての鋼板を秤量した後、質量分析により浸食を測定した。
【0044】
さらに、電気化学的な測定法で(表へのプロット、W. Stephen Tait著、Introduction to Electrochemical Korrosion Testing for practical Engeneers and Scientists, PairODocs Publication 1994, p. 55以降、ISBN 0-9660207-0-7)、いわゆる腐食電流を測定した。この方法では電流/電圧曲線が特定され、特にOCP(=Open Circuit Potential、開放回路電位)の位置、並びに時間にわたるOCPの推移/一定性により、a)不活性化、及びb)腐食保護の持続性に関する記録が得られる。この測定は、Gamry社製の電位測定器 VFP 600を用いて行った。この測定は、未処理の鋼板で行った(Gardobond OC; 10.5×19cm、Chemetall社製)。
【0045】
この測定は、電解質としてのメタンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液中で行い、それぞれにポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミン、表1参照)を2質量%(全調製物に対して)添加して行った。乾燥させた鋼板について、倍率100倍の光学顕微鏡で表面形状、特にピッティングを調べた。
【0046】
表1からの結果が示すように、ポリアルキレンイミンは原則的に腐食防止剤として、酸性媒体に対する保護のために使用できる。さらに、ピッティング形成に対する優れた予防も得られることによって、本発明により製造されるポリアミンでは、保護効果が強化される。浸食は、表面形状を目に見えて変えること無く、表面にわたって極めて均一に起こる。これはOCP値が、基本的に平面的に上昇すること(又は、より負の値に低下すること)にも反映されている。
【表1】
【0047】
これに対して、工程条件により約1質量%の塩化物含分につながった製造方法によるポリエチレンイミンを使用すると、いわゆるピッティングが生じる。ピッティングは、1cm
2当たりのピッティング数で測定する。
【0048】
ピッティングは特に、不所望の、及び/又は有害な腐食メカニズムであり、これはしばしば、ポリエチレンイミンの適用濃度が非常に低い場合にも起こる。
【0049】
本発明による方法から得られるポリアルキレンイミンによって、ピッティングはもはや観察されず、比較的僅かな表面浸食は、工業的な装置の耐久時間が向上した中で初めて、形成されることがある。
【0050】
例3:
ポリエチレンイミンはしばしばまた、分散剤としても使用され、例えばススの分散剤として、又は有機媒体/オイル中のナノ粒子顔料として使用される。工業的な用途においてこれらの媒体は、より高温にもさらされる(例えばエンジンオイル、及び油圧液体)。
【0051】
有機媒体中に塩化物が存在することは、これらの場合において避けなければならない。毒性化合物(例えばダイオキシン)が形成され得るからである。これらの背景によって、本発明により製造されるポリエチレンイミンは、高性能分散剤として使用できる。
【0052】
例4:エポキシ系接着剤で接着するため、鋼を事前処理するための使用(T型剥離試験)
本発明により製造されるポリアミンを、鋼又は亜鉛めっき鋼の下塗りのために用いて、多成分接着剤による接着の際に接着力を向上させるとともに、腐食をもたらすクリープ、又は接着剥離性を減少させる。
【0053】
このためVDA 230-213と同様に、金属ストリップ(電気亜鉛めっき鋼;DC 05)による接着試験を行った。金属ストリップを接着前に、水中で1質量%のポリアミン溶液により噴霧法で予備処理した(1m
2当たりプライマー溶液10g、次いで50℃で15分間の乾燥工程)。
【0054】
続いて金属ストリップを、エポキシ系接着剤のDow社製BETAMATE(登録商標)1496 Vで処理した(VDA 230-213と同様)。硬化は、175℃で行った(30分)。これらのストリップにつき、次の工程でカチオン浸漬塗装(KTL)を行った(BASF Coatings社製のCathoguard 500、VDA 230-213に記載の塗布)。
【0055】
続いて、接着した金属ストリップを、VDA 621-415に記載の鋼板基材用VDAサイクル試験に10サイクルかけて、エージングした。
【0056】
T型剥離試験では、いわゆる角度剥離強度(Winkelschaelfestigkeit)を測定し、また破壊状態(凝集破壊又は接着破壊)を特定した。
【0057】
表2にリスト化された試験結果は、それぞれの試験を二回実施した値の平均値である。「エージングされていない」試験体の引張試験は、KTL被覆の直後に行う。
【0058】
破壊状態の分析は視覚的に、凝集破壊(CF)と接着破壊(AF)との面積比を測定することによって行う。
【表2】
【0059】
実験結果により、ポリアルキレンイミンの接着強化作用がわかる(エージング前と比べて+約20%)。腐食促進条件下での貯蔵後では、試験5〜7において接着性が、実質的にポリアルキレンイミン無しのレベルにまで、著しく低下する。これに相応して破壊状態も、接着破壊の割合が顕著に悪化する。
【0060】
本発明による例は、貯蔵前における接着性向上率が非常に高く、エージング後の低下も非常に少ない。これに相応して、接着破壊が100%という完全無欠な破壊状態が示される(ポリマーマトリックス内部での破壊)。