(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559347
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20190805BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20190805BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20190805BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-523623(P2018-523623)
(86)(22)【出願日】2017年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2017019685
(87)【国際公開番号】WO2017221631
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-124984(P2016-124984)
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(73)【特許権者】
【識別番号】591176306
【氏名又は名称】アルバック・クライオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】田代 征仁
(72)【発明者】
【氏名】伊東 潤一
(72)【発明者】
【氏名】福本 英範
(72)【発明者】
【氏名】日高 康祐
(72)【発明者】
【氏名】寺島 充級
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016-53202(JP,A)
【文献】
特開2010-219354(JP,A)
【文献】
特開2011-127136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/205
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で被処理物を冷却しながら回転自在に保持する保持装置であって、
被処理物が設置されるステージと、ステージを回転自在に支持する回転駆動手段と、ステージを冷却する冷却手段とを備え、
被処理物が設置されるステージ面側を上として、回転駆動手段が、真空チャンバの壁面に第1の真空シールを介して貫装される筒状の回転軸体と、ステージ下方に空間が画成されるように回転軸体の上端部とステージの下面とを連結する連結部材と、回転軸体を回転駆動する駆動モータとを有し、
冷却手段が、ステージ下方の空間に当該ステージの下面に隙間を存して対向配置される冷却パネルと、回転軸体に内挿されて冷却パネルの下面に当接する伝熱軸体と、伝熱軸体を冷却する冷凍機とを有することを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記ステージ下方の空間を前記回転軸体の内部空間から隔絶して当該空間を真空雰囲気に維持可能な第2の真空シールと、前記ステージと前記冷却パネルとの間の隙間に不活性ガスを供給するガス供給手段とを更に備え、
ガス供給手段が前記伝熱軸体と前記冷却パネルとに互いに連通させて設けたガス通路を有し、ガス通路のガス供給口が前記ステージに対向する冷却パネルの対向面に開設されることを特徴とする請求項1記載の保持装置。
【請求項3】
前記ステージの下面が、上下方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸形状を有し、前記冷却パネルの上面が、第1の凹凸形状に対応して前記隙間をその全面に亘って同等にする第2の凹凸形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の保持装置。
【請求項4】
前記回転軸体に対して前記伝熱軸体と前記冷却パネルとを一体に上下動する駆動手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項5】
前記第1の真空シールと前記連結部材との間に断熱材が介在されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気の真空チャンバ内で被処理物を冷却しながら回転自在に保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空雰囲気の真空チャンバ内でシリコンウエハやガラス基板等の被処理物に対して成膜処理やエッチング処理等の各種の処理を行う場合に、静電チャックにより被処理物を静電吸着した状態で行うことが知られている。ここで、被処理物に対する処理に際しては、被処理物を所定の温度に維持した状態、または、室温より低い所定温度に被処理物を保持した状態で行うことがある。そこで、静電チャックを構成するチャックプレート支持用の基台に通水管を設け、処理中、この通水管に冷却水循環装置により冷却水を循環させることで基台を冷却し、チャックプレート、ひいては、被処理物を冷却することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、所定の処理として、例えばスパッタリング用ターゲットをスパッタリングして成膜処理を行う場合、例えば膜厚分布の面内均一性を高めたり、または、凹凸形状を持つ基板に成膜する目的で、被処理物が設置されるステージに駆動モータの回転軸を連結し、処理中、ステージ、ひいては、被処理物を所定の速度で回転させながら処理を行うことも知られている(例えば、特許文献2参照)。なお、特許文献2に記載のものもまた、ステージには被処理物の静電チャック用の電極と循環用のジャケットとが設けられ、被処理物を回転可能かつ所定温度に冷却可能に保持できるようにしている。
【0004】
然しながら、上記各従来例のようにステージの内部に冷却水等の液体を冷媒として循環させる方法では、室温より低い温度に被処理物を冷却しようとしても、精々−30℃程度の温度に被処理物を冷却することが限界であった。しかも、処理中、回転駆動されるステージから、真空雰囲気の真空チャンバ内に冷媒が漏れ出たのでは、正常な処理が損なわれるだけでなく、処理装置自体の破損を招く虞れもあることから、完全な水密構造を採用する必要があり、装置の複雑化や高コスト化を招来していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−368070号公報
【特許文献2】特開2011−246759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、真空チャンバ内で被処理物を極低温に冷却しながら回転自在に保持することができる保持装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャン
バ内で被処理物たる基板Wを冷却しながら回転自在に保持する保持装
置は、被処理物が設置されるステー
ジと、ステージを回転自在に支持する回転駆動手
段と、ステージを冷却する冷却手
段とを備える。被処理物が設置されるステージ面側を上として、回転駆動手段が、真空チャンバの壁面に第1の真空シー
ルを介して貫装される筒状の回転軸
体と、ステージ下方に空
間が画成されるように回転軸体の上端部とステージの下面とを連結する連結部
材と、回転軸体を回転駆動する駆動モー
タとを有する。冷却手段が、ステージ下方の空間に当該ステージの下面に隙間を存して対向配置される冷却パネ
ルと、回転軸体に内挿されて冷却パネルの下面に当接する伝熱軸
体と、伝熱軸体を冷却する冷凍
機とを有する。
【0008】
本発明によれば、真空チャンバ外に設けられる駆動モータで回転軸体を回転駆動すると、連結部材を介して連結されたステージが回転駆動されるため、ステージにより被処理物を回転自在に保持することができる。この場合、ステージに所謂静電チャックやメカクランプを設けておけば、ステージの回転中に被処理物が脱離するといった不具合が生じない。そして、ステージ下方の空間に、ステージの下面に対向させて固定の冷却パネルを配置したため、ステージがこれに対向する冷却パネルからの輻射により冷却される。この場合、伝熱軸体や冷却パネルに冷却水を循環させるものではないため、漏れ出た冷却水で正常な処理が損なわれたり、処理装置自体の破損を招くといった不具合は生じない。なお、ステージと冷却パネルとの上下方向における隙間は、冷却しようとする被処理物の温度、処理時における被処理物への入熱の有無等に応じて適宜設定され、また、後述のように、真空雰囲気(真空断熱)された上記空間に不活性ガスを供給する場合には、当該空間の真空度(圧力)や不活性ガス(原子や分子)の平均自由行程等をも考慮して適宜設定される。
【0009】
本発明において、前記ステージ下方の空間を前記回転軸体の内部空間から隔絶して当該空間を真空雰囲気に維持可能な第2の真空シールと、前記ステージと前記冷却パネルとの間の隙間に不活性ガスを供給するガス供給手段とを更に備え、ガス供給手段が前記伝熱軸体と前記冷却パネルとに互いに連通させて設けたガス通路を有し、ガス通路のガス供給口が前記ステージに対向する冷却パネルの対向面に開設されることが好ましい。これによれば、上記冷却パネルの輻射による冷却に加えて、上記隙間に供給された不活性ガスがステージに衝突することによる熱交換でステージが一層冷却されるようになり、有利である。このとき、不活性ガスが極低温状態の伝熱軸体と冷却パネルとを通る間に冷却されるため、不活性ガスの衝突によるステージの冷却効率をより一層高めることができる。なお、伝熱軸体が挿通する回転軸体の内部空間を真空雰囲気に(即ち、真空断熱)するために、例えば回転軸体と冷凍機との間に第3の真空シールを設けておくことが好ましい。
【0010】
ここで、伝熱軸体と冷却パネルとのガス通路を通して、冷却された不活性ガスを上記空間に供給する場合、ガス供給口はステージの下面の中央領域に位置することなる。一方、冷却された不活性ガスは下方へ直ちに流れてしまう傾向があり、これでは、ステージの外縁方向に向かうに従い、ステージ下面に不活性ガスが衝突しない虞がある。そこで、本発明において、前記ステージの下面が、上下方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸形状を有し、前記冷却パネルの上面が、第1の凹凸形状に対応して前記隙間をその全面に亘って同等にする第2の凹凸形状を有することが好ましい。これによれば、ステージの下面中央領域にあるガス供給口から不活性ガスが供給されると、当該不活性ガスはステージの外縁方向へと流れるが、このとき、冷却パネルの凹凸形状による段差を乗り越えさせることで、ステージの外縁まで確実に不活性ガスを衝突させることができる。
【0011】
ところで、冷却パネルと冷凍機とを所定長さの伝熱軸体を介して接続し、伝熱で冷却パネルを冷却しようとする場合、伝熱軸体の材質や長さによっては、冷却時における伝熱軸体の熱収縮により上記間隙が拡がり過ぎ、ステージを冷却パネルからの輻射で効率よく冷却できない虞がある。このため、本発明においては、前記回転軸体に対して伝熱軸体と冷却パネルとを一体に上下動する駆動手段を更に備えることが好ましい。これによれば、例えば伝熱軸体の熱収縮に応じて上記隙間を最適に調節でき、有利である。しかも、ステージを回転させないような場合には、冷却パネルをステージ下面に当接させ、効果的に冷却するようにできる。
【0012】
また、本発明においては、前記第1の真空シールと前記連結部材との間に断熱材が介在されることが好ましい。これによれば、第1の真空シールとして、回転軸体の軸受を兼用する磁気流体シールを用いるような場合、当該磁気流体シールが冷却されて破損するといった不具合が生じることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の保持装置を有する真空チャンバを部分的に示す模式的断面図。
【
図2】ステージと冷却パネルの表面形状を説明する斜視図。
【
図3】(a)〜(d)は、ステージと冷却パネルとの間の隙間の調整手法を説明する、
図1に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、被処理物をシリコンウエハ(以下、「基板W」という)とし、真空チャンバ内で基板Wを冷却しながら回転自在に保持する本発明の保持装置の実施形態を説明する。以下においては、
図1に示す姿勢で保持装置が真空チャンバの底面側に設けられるものとし、上、下といった方向を示す用語は
図1に基準として説明する。
【0015】
図1を参照して、Vcは、本実施形態の保持装置HSを備える真空チャンバである。真空チャンバVcには、特に図示して説明しないが、排気管を介して真空ポンプが接続され、所定圧力(真空度)に真空引きして保持できるようになっている。また、真空チャンバVc内には、スパッタリング用カソード等の所定の処理を行う図外の処理手段が設けられ、真空雰囲気の真空チャンバVcで基板Wに対して所定の処理が行われる。そして、処理中、真空チャンバVc内で基板Wを回転自在に保持するために保持装置HSが設けられている。
【0016】
保持装置HSは、基板Wが設置されるステージ1と、ステージ1を回転自在に支持する回転駆動手段2と、ステージ1を冷却する冷却手段3とを備える。ステージ1は、基板Wに対応する輪郭を持ち、熱伝導のよい材質(例えばアルミニウム)で構成される基台11と、基台11の上面に図示省略のインジウムシートを介して設けられる誘電体としてのチャックプレート12とを有し、静電チャック用電極13が組み付けられている。これにより、図外のチャック電源により給電して基板Wをステージ1の上面に静電吸着できるようになっている。
【0017】
回転駆動手段2は、筒状の回転軸体21を備える。回転軸体21は、固定の内管部21aとこの内管部21aに同心に外挿される外管部21bとで構成され、後述の駆動モータで外管部21bが回転自在となるように、真空チャンバVcの底壁開口に設けた第1の真空シールとしての磁性流体シール22で支承されている。外管部21bの上端には筒状の断熱材21cが設けられ、断熱材21cと基台11の下面外周縁部との間には皿状の連結部材23が設けられている。これにより、ステージ1下方に、基台11の裏面と連結部材23とで所定の空間24が画成されるようにしている。断熱材21cとしては、ポリイミドやFRP(Fiber-Reinforced Plastics)等の樹脂製のもの、または、セラミック材が利用できる。また、真空チャンバVc外に位置する回転軸体21の部分には駆動モータとしての所謂中空サーボモータ25が外挿され、中空サーボモータ25により回転軸体21の外管部21b、ひいては、連結部材23を介して連結されたステージ1が所定の回転数で回転駆動される。なお、駆動モータの種類や回転軸体21の回転駆動方法はこれに限定されるものではなく、DCモータやギア等を用いた他の公知のものを利用できる。
【0018】
冷却手段3は、空間24内で基台11の下面に対向させてかつ隙間Dを存して固定配置される冷却パネル31を備え、冷却パネル31が、回転軸体21の外管部21bより下方にのびる内管部21aに内挿されて当該冷却パネル31の下面に当接する上下方向に長手の伝熱軸体32で支持されている。冷却パネル31と伝熱軸体32とは、熱伝導のよい材質、例えば銅やアルミニウムから選択される金属またはこれらの金属を主成分とする合金等で構成され、冷却パネル31としては、例えば、基板Wを冷却しようとする温度に応じた面積を持つ板状のもの、伝熱軸体32としては中実丸棒状のものが用いられる。この場合、冷却パネル31の基台11との対向面を黒色化加工し、冷却パネル31の基台11との背向面と伝熱軸体32とを鏡面加工するようにしてもよい。
【0019】
基台11の下面は、
図2に示すように、上下方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸形状11aに加工され、冷却パネル31の上面が、第1の凹凸形状11aに対応して上記隙間Dをその全面に亘って同等にする第2の凹凸形状31aに加工されている。そして、伝熱軸体32の下部が、当該伝熱軸体32を冷却する冷凍機33に連結されている。冷凍機33としては、特に図示して説明しないが、圧縮器、凝縮器及び膨張弁を備え、図外の熱交換機から冷凍機33に冷媒が供給・循環されて冷却されるようになっている。なお、冷凍機33自体は公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。これにより、冷却パネル31を冷凍機33により伝熱軸体32を介して所定温度(例えば、−200℃)に冷却することができる。
【0020】
また、真空チャンバ
Vc内に存する伝熱軸体32の上端部には、空間24と回転軸体21の内部空間21dとを隔絶する第2の真空シールとしてのベローズ4が設けられている。この場合、ベローズ4は、連結部材23の下面に吊設した外筒部41と、伝熱軸体32に軸シール5a及び軸受け5bを介して外挿された内筒部42とで保持されるように設けられ、中空サーボモータ25により回転軸体21が回転駆動されたとき、内筒部42と外筒部41と共にべローズ4も伝熱軸体32に対して相対回転するようになっている。また、回転軸体21の内管部21aの下端より下方に位置する冷凍機33の筐体部分には、径方向外方にのびる円盤状の仕切り板6がOリング61により気密保持した状態で取り付けられ、仕切り板6の上面と回転軸体21の内管部21aの下端面と間には他のベローズ(第3の真空シール)7が設けられ、回転軸体21の内部空間21dが気密保持されるようになっている。この場合、仕切り板6には排気口62が開設され、図外の真空ポンプにより内部空間21dが所定圧力(真空度)に真空引きして保持できるようになっている。
【0021】
伝熱軸体32の下端部には、仕切り板6を貫通してのびるガス供給管81aとガス排気管81bとの接続口82a,82bが設けられ、各接続口82a,82bは、伝熱軸体32と冷却パネル31とに互いに連通させて設けたガス通路83a,83bに夫々通じている。そして、両ガス通路83a,83bが基台11に対向する冷却パネル31の対向面に夫々開設されるガス供給口84aとガス排気口84bに夫々通じている。また、ガス供給管81aは図外のマスフローコントローラを介してガス源に接続され、所定の流量に調節した不活性ガスを空間24に供給できるようになっている。不活性ガスとしては、ヘリウムガスやアルゴンガス等の希ガスや窒素ガスが用いられる。一方、ガス排気管81bは図外の真空ポンプに接続され、不活性ガスの導入に先立って空間24を所定圧力に真空引きして当該空間24を真空断熱したり、または、真空雰囲気の空間24に不活性ガスを導入しながら真空排気して当該不活性ガスを循環させるようにすることができる。また、ガス排気管81bに図外の開閉弁を介設し、空間24を所定圧力に真空引きした後に、当該開閉弁を閉弁し、この状態でガス供給管81aから空間24に不活性ガスを導入して封入することができる。更に、ガス供給管81aに加えて、ガス排気管81bからも不活性ガスを導入するようにしてもよい。
【0022】
ここで、真空雰囲気の空間24に不活性ガスを供給してステージ1を冷却する場合、基台11と冷却パネル31との上下方向における隙間Dは、基板Wの冷却しようとする温度、処理時における被処理物への入熱の有無等に加えて、空間24内の圧力(真空度)や不活性ガス(原子や分子)の平均自由行程等を考慮して適宜設定される。つまり、不活性ガスの種類、空間24内の圧力で空間24の熱伝達係数が決まり、これに応じて間隔Dが決められる。
【0023】
ところで、冷却パネル31と冷凍機33とを上下方向に長手の伝熱軸体32を介して接続し、伝熱で冷却パネル31を冷却しようとする場合、伝熱軸体32の材質や長さによっては、冷却時における伝熱軸体32の熱収縮により上記間隙Dが拡がり過ぎ、ステージ1を冷却パネル31からの輻射で効率よく冷却できない虞がある。本実施形態においては、回転軸体21に対して冷却手段3を一体に上下動する駆動手段9を設けた。駆動手段9は仕切り板6の外周側で周方向に120度間隔で3個設けられている。各駆動手段9は同一の構成を有し、真空チャンバVcの底璧に吊設したフレーム91に設けた駆動モータ92と、駆動モータ92の回転軸に取り付けた送りねじ93とを備え、送りねじ93が、仕切り板6に設けたスライダー63に螺合している。以下に、
図3を参照して、駆動手段9を用いた間隔Dの調整方法を具体的に説明する。
【0024】
先ず、各駆動手段9の駆動モータ92を一方向に夫々回転させて、基台11から冷却パネル31が離間した所定位置まで冷却手段3を下動させる(
図3(a)参照)。この場合、回転軸体21に対する冷却手段3の相対移動量をベローズ7が吸収し、回転軸体21の内部空間21dは気密状態に保持される。そして、いずれか1個(図中左側)の駆動手段9の駆動モータ92のみを他方向に回転させ、冷却パネル31の上面を基台11の下面に片当たりさせる。このとき、例えば駆動モータのトルク変動から、冷却パネル31の上面が基台11の下面に片当たりしたことを検出し、この状態で、いずれか1個の駆動手段9の駆動モータ92を停止する(
図3(b)参照)。そして、この操作を他の2個の駆動手段9について行うと、冷却パネル31の上面が基台11の下面にその全面に亘って当接した状態となる(
図3(c)参照)。最後に、設定しようとする隙間Dに応じた回転角で、各駆動手段9の駆動モータ92を同期して一方向に夫々回転させる。これにより、冷却パネル31の上面と基台11の下面との間の隙間Dがその全面に亘って同等になる(
図3(d)参照)。
【0025】
以上の実施形態によれば、真空チャンバVc外に設けられる中空サーボモータ25で回転軸体21を回転駆動すると、連結部材23を介して連結されたステージ1が回転駆動されるため、ステージ1により基板Wを回転自在に保持することができる。そして、基台11下方の空間24に、基台11の下面に対向させて冷却パネル31が固定配置されているため、ステージ1がこれに対向する冷却パネル31からの輻射により冷却される。このとき、冷却パネル31は、回転軸体21に内挿された、冷凍機33で冷却される伝熱軸体32からの伝熱で冷却され、隙間Dに供給された不活性ガスがステージ1に衝突することによる熱交換でステージ1が冷却されることと相俟って、上記従来例における冷却温度(−30℃)より低い極低温(例えば、−200℃)に基板Wを冷却することが可能になる。しかも、不活性ガスが極低温状態の伝熱軸体32と冷却パネル31とを通る間に冷却されるため、不活性ガスの衝突によるステージ1の冷却効率をより一層高めることができる。この場合、伝熱軸体32や冷却パネル31に冷却水を循環させるものではないため、漏れ出た冷却水で正常な処理が損なわれたり、処理装置自体の破損を招くといった不具合は生じない。
【0026】
また、基台11の下面が、上下方向に凹凸を繰り返す第1の凹凸形状11aを有し、冷却パネル31の上面が、第1の凹凸形状11aに対応して前記隙間Dをその全面に亘って同等にする第2の凹凸形状31aを有するため、冷却パネル31のガス供給口84aから不活性ガスが供給されると、当該不活性ガスは基台11の径方向外縁方向へと流れるが、このとき、冷却パネル31の上面の凹凸形状による段差を乗り越えさせることで、基台11の外縁まで確実に不活性ガスを衝突させることができる。さらに、回転軸体
21に対して冷却手段3を一体に上下動する駆動手段9を設けたため、例えば伝熱軸体32の熱収縮に応じて隙間Dを最適に調節でき、有利である。しかも、ステージ1を回転させないような場合には、冷却パネル31を基台11下面に当接させ、効果的に冷却するようにできる。また、磁性流体シール22と連結部材23との間に断熱材21cを介在したため、磁性流体シール22が冷却されて破損するといった不具合が生じることが防止できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で適宜変形可能である。上記実施形態では、ステージ1を静電チャック機能付きに構成したものを例に説明したが、ステージの構成は上記のものに限定されるものではなく、他の公知のものを利用でき、また、基台11に所謂メカチャックを設けてステージを構成することもできる。また、上記実施形態では、冷却パネル31と伝熱軸体32とに空間24を真空排気するためのガス通路83bやガス排気口84bを設けたものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば連結部材23の貫通孔を穿設して、当該貫通孔を通して空間24内を真空チャンバVcの排気に伴って真空引きしたり、空間24に供給された不活性ガスが排気されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
HS…保持装置、W…基板(被処理物)、Vc…真空チャンバ、1…ステージ、11…基台(ステージの構成要素)、11a…第1の凹凸形状、2…回転駆動手段、21…回転軸体、21a…内管部、21b…外管部、21c…断熱材、21d…回転軸体の内部空間、22…磁性流体シール(第1の真空シール)、23…連結部材、24…空間、25…中空サーボモータ(駆動モータ)、3…冷却手段、31…冷却パネル、31a…第2の凹凸形状、32…伝熱軸体、33…冷凍機、4…ベローズ(第2の真空シール)、7…ベローズ(第3の真空シール)、83a…ガス通路(ガス供給手段の構成要素)、84a…ガス供給口(ガス供給手段の構成要素)、9…駆動手段、D…隙間。