(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、一の実施形態に係る従来のゼロギャップ型電解槽900を模式的に説明する部分断面図である。ゼロギャップ型電解槽900は、陽極室Aと陰極室Cとを隔てる導電性の隔壁911及びフランジ部912を備える極室ユニット910、910、…と、隣接する極室ユニット910、910の間に配置されたイオン透過性の隔膜920と、隔膜920と極室ユニット910のフランジ部912との間に配置され、隔膜920の周縁部を挟み込むガスケット930、930と、一方の極室ユニットの隔壁911から立設された導電性のリブ913、913、…に保持された陽極940と、他方の極室ユニットの隔壁911から立設された導電性のリブ914、914、…に保持された集電体950及び該集電体950に接して配置された導電性の弾性体960に保持された柔軟な陰極970と、を備えている。陰極970の周縁部および導電性の弾性体960の周縁部は、集電体950の周縁部に固定されている。ゼロギャップ型電解槽900においては、導電性の弾性体960が柔軟な陰極970を隔膜920及び陽極940に向けて押し付けることにより、隣接する陰極970及び陽極940の間に隔膜920が挟み込まれている。その結果、隔膜920と陽極940及び陰極970とが直接に接触する(すなわちゼロギャップである)ので、陽極940と陰極970との間の溶液抵抗が低減され、したがってエネルギーロスが低減される。
【0005】
しかしながら、
図1に示すように、隔膜920の周縁部、すなわち隔膜920のうちフランジ部912(又はガスケット930)の近傍部分においては、隔膜920と陽極940及び陰極970とが直接に接触していない(すなわちゼロギャップでない)ので、当該部分において電極間の溶液抵抗が大きくなり、その結果運転電圧の増大を招いていた。
【0006】
本発明は、隔膜の周縁部においても隔膜と電極とを直接に接触させることが可能な、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体を提供することを課題とする。また、該膜−電極−ガスケット複合体を備えるアルカリ水電解槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の[1]〜[14]の形態を包含する。
[1] 第1の膜面および第2の膜面を有する隔膜と、
前記隔膜の第1の膜面に重ねて配置された、第1の電極と、
前記隔膜および前記第1の電極を一体に保持する、電気絶縁性のガスケットと
を含み、
前記ガスケットは、
陽極側の枠体に接する第1の面と、
陰極側の枠体に接する第2の面と、
内周側に向かって開口し、前記隔膜の全周縁部および前記第1の電極の全周縁部を収容する、スリット部と、
前記第1の面および前記第2の面に交差する方向において前記スリット部を介して対向する、前記第1の面を有する第1の部分および前記第2の面を有する第2の部分と、
前記スリット部の外周側に設けられ、前記第1の部分および前記第2の部分を一体に接続し、且つ前記スリット部の外周端を封止する、連続部と
を備え、
前記スリット部に収容された、前記隔膜の全周縁部および前記第1の電極の全周縁部が、前記第1の部分および前記第2の部分によって一体に挟持されていることを特徴とする、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体。
【0008】
[2] 前記第1の電極が、可撓性を有する第1の多孔板である、[1]に記載のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体。
【0009】
[3] 前記隔膜の第2の膜面に重ねて配置された、第2の電極をさらに含み、
前記ガスケットは、前記隔膜、前記第1の電極、及び前記第2の電極を一体に保持し、
前記スリット部は、前記隔膜の全周縁部、前記第1の電極の全周縁部、及び前記第2の電極の全周縁部を収容し、
前記スリット部に収容された、前記隔膜の全周縁部、前記第1の電極の全周縁部、及び前記第2の電極の全周縁部が、前記第1の部分および前記第2の部分によって一体に挟持されている、[1]又は[2]に記載のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体。
【0010】
[4] 前記第2の電極が、剛体多孔板である、[3]に記載のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体。
【0011】
[5] 前記第2の電極が、可撓性を有する第2の多孔板である、[3]に記載のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体。
【0012】
[6] 陽極室を画定する、陽極側枠体と、
陰極室を画定する、陰極側枠体と、
前記陽極側枠体および前記陰極側枠体に挟持された、[1]又は[2]に記載の膜−電極−ガスケット複合体と、
前記ガスケットに保持されることなく、前記隔膜の第2の膜面に接して配置された第2の電極と
を含み、
前記膜−電極−ガスケット複合体は、前記隔膜の第1の膜面が前記陽極室に面し、前記隔膜の第2の膜面が前記陰極室に面するように配置され、
前記第1の電極は陽極であって、
前記第2の電極は陰極である、アルカリ水電解槽。
【0013】
[7] 陽極室を画定する、陽極側枠体と、
陰極室を画定する、陰極側枠体と、
前記陽極側枠体および前記陰極側枠体に挟持された、[1]又は[2]に記載の膜−電極−ガスケット複合体と、
前記ガスケットに保持されることなく、前記隔膜の第2の膜面に接して配置された第2の電極とを含み、
前記膜−電極−ガスケット複合体は、前記隔膜の第1の膜面が前記陰極室に面し、前記隔膜の第2の膜面が前記陽極室に面するように配置され、
前記第1の電極は陰極であり、
前記第2の電極は陽極である、アルカリ水電解槽。
【0014】
[8] 陽極室を画定する、陽極側枠体と、
陰極室を画定する、陰極側枠体と、
前記陽極側枠体および前記陰極側枠体に挟持された、[3]〜[5]のいずれかに記載の膜−電極−ガスケット複合体とを含み、
前記膜−電極−ガスケット複合体は、前記隔膜の第1の膜面が前記陽極室に面し、前記隔膜の第2の膜面が前記陰極室に面するように配置され、
前記第1の電極は陽極であって、
前記第2の電極は陰極である、アルカリ水電解槽。
【0015】
[9] 陽極室を画定する、陽極側枠体と、
陰極室を画定する、陰極側枠体と、
前記陽極側枠体および前記陰極側枠体に挟持された、[3]〜[5]のいずれかに記載の膜−電極−ガスケット複合体とを含み、
前記膜−電極−ガスケット複合体は、前記隔膜の第1の膜面が前記陰極室に面し、前記隔膜の第2の膜面が前記陽極室に面するように配置され、
前記第1の電極は陰極であって、
前記第2の電極は陽極である、アルカリ水電解槽。
【0016】
[10] 前記第1の電極は、可撓性を有する第1の多孔板であり、
前記第1の電極は、導電性を有する第1の弾性体によって前記第2の電極へ向けて押し付けられている、[6]〜[9]のいずれかに記載のアルカリ水電解槽。
【0017】
[11] 前記第2の電極は、剛体多孔板である、[10]に記載のアルカリ水電解槽。
【0018】
[12] 前記第2の電極は、導電性を有する第2の弾性体によって前記第1の電極へ向けて押し付けられている、[11]に記載のアルカリ水電解槽。
【0019】
[13] 前記第2の電極は、可撓性を有する第2の多孔板であり、
前記第2の電極は、導電性を有する第2の弾性体によって前記第1の電極へ向けて押し付けられている、[10]に記載のアルカリ水電解槽。
【0020】
[14] 前記第2の電極に接して配置された、導電性を有する剛体集電体をさらに備え、
前記剛体集電体は、該剛体集電体と前記隔膜との間に前記第2の電極が挟まれるように配置され、
前記第2の電極は、可撓性を有する第2の多孔板であり、
前記第2の電極は、前記剛体集電体によって支持されている、[10]に記載のアルカリ水電解槽。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体によれば、隔膜の周縁部においても隔膜と電極とを直接に接触させることができる。したがって、本発明のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体を備えるアルカリ水電解槽によれば、運転電圧をさらに低減できるので、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図面は必ずしも正確な寸法を反映したものではない。また図では、一部の符号を省略することがある。本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。また要素E
1及びE
2について「E
1及び/又はE
2」という表記は「E
1若しくはE
2、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとし、要素E
1、…、E
N(Nは3以上の整数)について「E
1、…、E
N−1、及び/又はE
N」という表記は「E
1、…、E
N−1、若しくはE
N、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとする。
【0024】
<1.アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体>
図2は、本発明の一の実施形態に係るアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体100(以下において「複合体100」ということがある。)を模式的に説明する図である。
図2において、(A)(B)及び(C)はそれぞれ複合体100の正面図、右側面図、及び背面図であり、(D)は(A)のX−X断面図であり、(E)は(D)の分解図である。複合体100は、第1の膜面11及び第2の膜面12を有する隔膜10と;隔膜10の第1の膜面11に重ねて配置された、陰極(第1の電極)20と;隔膜10及び陰極(第1の電極)20を一体に保持する電気絶縁性のガスケット30とを含む。ガスケット30は、陽極側の枠体に接する第1の面31と;陰極側の枠体に接する第2の面32と;内周側に向かって開口し、隔膜10の全周縁部および陰極(第1の電極)20の全周縁部を収容する、スリット部33と;第1の面31及び第2の面32に交差する方向(
図2(D)及び(E)における紙面上下方向。)においてスリット部33を介して対向する、第1の面31を有する第1の部分34及び第2の面32を有する第2の部分35と;スリット部33の外周側に設けられ、第1の部分34及び第2の部分35を一体に接続し、且つスリット部33の外周端を封止する、連続部36とを備えている。複合体100において、スリット部33に収容された、隔膜10の全周縁部および陰極(第1の電極)20の全周縁部は、第1の部分34及び第2の部分35によって一体に挟持されている。また
図2(A)(C)(D)に示すように、陰極(第1の電極)20は、隔膜10に対して、ガスケット30の第2の面32と同じ側に配置されている。
図2(A)のY−Y断面図は、
図2(A)のX−X断面図、すなわち
図2(D)と同様である。
【0025】
隔膜10としては、アルカリ水電解用のゼロギャップ型電解槽に用いられる公知のイオン透過性の隔膜を特に制限なく用いることができる。隔膜10は、ガス透過性が低く、電気伝導度が小さく、強度が高いことが望ましい。隔膜10の例としては、アスベスト及び/又は変性アスベストからなる多孔質膜、ポリスルホン系ポリマーを用いた多孔質隔膜、ポリフェニレンスルファイド繊維を用いた布、フッ素系多孔質膜、無機系材料と有機系材料との両方を含むハイブリッド材料を用いた多孔質膜、等の多孔質隔膜を挙げることができる。またこれらの多孔質隔膜以外にも、フッ素系イオン交換膜等のイオン交換膜を隔膜10として用いることも可能である。
【0026】
陰極(第1の電極)20としては、アルカリ水電解用のゼロギャップ型電解槽に用いられる公知の水素発生用の陰極を特に制限なく用いることができる。陰極20は通常、導電性基材と、該基材の表面を被覆する触媒層とを備える。陰極20の導電性基材としては、例えば、ニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、軟鋼、ニッケル合金、又は、ステンレススチール若しくは軟鋼の表面にニッケルメッキを施したものを好ましく採用できる。陰極20の触媒層としては、貴金属酸化物、ニッケル、コバルト、モリブデン、若しくはマンガン、若しくはそれらの酸化物、又は貴金属酸化物からなるコーティングを好ましく採用できる。陰極20は例えば可撓性を有する多孔板であってもよく、また例えば剛体多孔板であってもよい。剛体多孔板である陰極20としては、剛性を有する導電性基材(例えばエキスパンドメタル等。)と上記触媒層とを備える多孔板を用いることができる。また可撓性を有する多孔板である陰極20としては、可撓性を有する導電性基材(例えば金属ワイヤーで織った(又は編んだ)金網、薄いパンチドメタル等。)と上記触媒層とを備える多孔板を用いることができる。可撓性を有する多孔板である陰極20の一つの孔の面積は、好ましくは0.05〜2.0mm
2、より好ましくは0.1〜0.5mm
2である。可撓性を有する多孔板である陰極20の開孔率は、通電面の面積に対して好ましくは20%以上、より好ましくは20〜50%である。可撓性を有する多孔板である陰極20の曲げ柔さは、好ましくは0.05mm/g以上、より好ましくは0.1〜0.8mm/gである。なお本明細書において曲げ柔さとは、縦10mm×横10mmの正方形状の試料が水平になるように一辺を固定し、該固定された一辺に向かい合う他の一辺に下向きに一定の荷重をかけたときの該他の一辺(試料先端)の撓み幅(mm)を荷重(g)で除した値である。すなわち曲げ柔さは、曲げ剛性とは逆の性質を示すパラメタである。曲げ柔さは、多孔板の材質および厚さ、金網にあっては金網を構成する金属ワイヤーの織り方(又は編み方)等により調整することができる。
【0027】
ガスケット30は、
図2(A)及び(C)に示すように、陽極側枠体および陰極側枠体の形状に対応した形状を有している。また
図2(B)及び(D)(E)に示すように、ガスケット30の第1の面31及び第2の面32は平坦な面とされている。ガスケット30は、耐アルカリ性を有するエラストマーによって形成されていることが好ましい。ガスケット30の材料の例としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン−プロピレンゴム(EPT)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等のエラストマーを挙げることができる。また、アルカリ耐性を有しないガスケット材料を使用する場合、該ガスケット材料の表面に耐アルカリ性を有する材料の層を被覆等によって設けても良い。
【0028】
複合体100を製造する方法は特に制限されない。例えば、第1の面31を備える陽極側のガスケット部材と第2の面32を備える陰極側のガスケット部材とで隔膜10及び陰極20の周縁部を挟み、その後陽極側のガスケット部材の周縁部と陰極側のガスケット部材の周縁部とを溶着または接着等により接合して一体化することによって、スリット部33及び連続部36を備えるガスケット30のスリット部33に隔膜10及び陰極20の周縁部が保持された複合体100(
図2(D)及び(E)参照。)を得ることができる。また例えば、隔膜10、陰極20、及びガスケット30を別個に準備した後、ガスケット30を適宜変形させながら、ガスケット30のスリット部33に隔膜10及び陰極20の周縁部を挿入してもよい。
【0029】
アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体100においては、ガスケット30のスリット部33に収容された、隔膜10の全周縁部および陰極20の全周縁部が、ガスケット30の第1の部分34及び第2の部分35によって一体に挟持されているので、少なくとも隔膜10と陰極20とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができる。したがって複合体100をゼロギャップ型アルカリ水電解槽に採用することにより、運転電圧をさらに低減し、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。また従来のゼロギャップ型電解槽においては各電極は電解エレメント(陽極側枠体または陰極側枠体)に固定されており、電極の固定のために溶接やピン止め等の措置が必要であった。これに対して複合体100によれば、陰極20は隔膜10及びガスケット30に一体化されているので、陰極20を陰極側枠体に固定する必要はない。したがって複合体100をゼロギャップ型アルカリ水電解槽に採用することにより、電解槽の組み立てを容易にすることができる。さらに、隔膜10の周縁部がガスケット30のスリット部33に収容されているところ、ガスケット30はスリット部33の外周側に、スリット部33の外周端を封止する連続部36を備えているので、毛細管現象により隔膜10の端部から電解槽の外部に電解液やガスが漏洩することを防ぐことが可能になる。
【0030】
本発明に関する上記説明では、隔膜10と、陰極20と、ガスケット30とを備える形態の複合体100を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、陰極20に代えて、陽極を備える形態のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体とすることも可能である。
【0031】
図3は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体200(以下において「複合体200」ということがある。)を模式的に説明する図である。
図3において、(A)(B)及び(C)はそれぞれ複合体200の正面図、右側面図、及び背面図であり、(D)は(A)のX−X断面図であり、(E)は(D)の分解図である。
図3において、
図2に既に表れた要素には
図2と同一の符号を付し、説明を省略することがある。複合体200は、第1の膜面11及び第2の膜面12を有する隔膜10と;隔膜10の第1の膜面11に重ねて配置された、陽極(第1の電極)40と;隔膜10及び陽極(第1の電極)40を一体に保持する電気絶縁性のガスケット30とを含む。ガスケット30は、陽極側の枠体に接する第1の面31と;陰極側の枠体に接する第2の面32と;内周側に向かって開口し、隔膜10の全周縁部および陽極(第1の電極)40の全周縁部を収容する、スリット部33と;第1の面31及び第2の面32に交差する方向においてスリット部33を介して対向する、第1の面31を有する第1の部分34及び第2の面32を有する第2の部分35と;スリット部33の外周側に設けられ、第1の部分34及び第2の部分35を一体に接続し、且つスリット部33の外周端を封止する、連続部36とを備えている。複合体200において、スリット部33に収容された、隔膜10の全周縁部および陽極(第1の電極)40の全周縁部は、第1の部分34及び第2の部分35によって一体に挟持されている。また
図3(A)(C)(D)に示すように、陽極(第1の電極)40は、隔膜10に対して、ガスケット30の第1の面31と同じ側に配置されている。
図3(A)のY−Y断面図は、
図3(A)のX−X断面図、すなわち
図3(D)と同様である。
【0032】
複合体200における隔膜10及びガスケット30は、複合体100における隔膜10及びガスケット30と同一である。陽極(第1の電極)40としては、アルカリ水電解用のゼロギャップ型電解槽に用いられる公知の酸素発生用の陽極を特に制限なく用いることができる。陽極40は通常、導電性基材と、該基材の表面を被覆する触媒層とを備える。触媒層は多孔質であることが好ましい。陽極40の導電性基材としては、例えば、ニッケル鉄、バナジウム、モリブデン、銅、銀、マンガン、白金族元素、黒鉛、若しくはクロム、又はそれらの組み合わせを用いることができる。陽極40においてはニッケルからなる導電性基材を好ましく用いることができる。触媒層は元素としてニッケルを含む。触媒層は、酸化ニッケル、金属ニッケル、若しくは水酸化ニッケル、又はそれらの組み合わせを含むことが好ましく、ニッケルと他の1種以上の金属との合金を含んでもよい。触媒層は金属ニッケルからなることが特に好ましい。なお、触媒層は、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族元素、もしくは希土類元素、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。触媒層の表面に、ロジウム、パラジウム、イリジウム、若しくはルテニウム、又はそれらの組み合わせが追加的な触媒としてさらに担持されていてもよい。陽極40は例えば可撓性を有する多孔板であってもよく、また例えば剛体多孔板であってもよい。剛体多孔板である陽極40としては、剛性を有する導電性基材(例えばエキスパンドメタル等。)と上記触媒層とを備える多孔板を用いることができる。また可撓性を有する多孔板である陽極40としては、可撓性を有する導電性基材(例えば金属ワイヤーで織った(又は編んだ)金網、薄いパンチドメタル等。)と上記触媒層とを備える多孔板を用いることができる。可撓性を有する多孔板である陽極40の一つの孔の面積は、好ましくは0.05〜2.0mm
2、より好ましくは0.1〜0.5mm
2である。可撓性を有する多孔板である陽極40の開孔率は、通電面の面積に対して好ましくは20%以上、より好ましくは20〜50%である。可撓性を有する多孔板である陽極40の曲げ柔さは、好ましくは0.05mm/g以上、より好ましくは0.1〜0.8mm/gである。
【0033】
複合体200を製造する方法は特に制限されない。例えば、第1の面31を備える陽極側のガスケット部材と第2の面32を備える陰極側のガスケット部材とで隔膜10及び陽極40の周縁部を挟み、その後陽極側のガスケット部材の周縁部と陰極側のガスケット部材の周縁部とを溶着または接着等により接合して一体化することによって、スリット部33及び連続部36を備えるガスケット30のスリット部33に隔膜10及び陽極40の周縁部が保持された複合体200(
図3(D)及び(E)参照。)を得ることができる。また例えば、隔膜10、陽極40、及びガスケット30を別個に準備した後、ガスケット30を適宜変形させながら、ガスケット30のスリット部33に隔膜10及び陽極40の周縁部を挿入してもよい。
【0034】
アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体200においては、ガスケット30のスリット部33に収容された、隔膜10の全周縁部および陽極40の全周縁部が、ガスケット30の第1の部分34及び第2の部分35によって一体に挟持されているので、少なくとも隔膜10と陽極40とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができる。したがって複合体200をゼロギャップ型アルカリ水電解槽に採用することにより、運転電圧をさらに低減し、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。また従来のゼロギャップ型電解槽においては各電極は電解エレメント(陽極側枠体または陰極側枠体)に固定されており、電極の固定のために溶接やピン止め等の措置が必要であった。これに対して複合体200によれば、陽極40は隔膜10及びガスケット30に一体化されているので、陽極40を陽極側枠体に固定する必要はない。したがって複合体200をゼロギャップ型アルカリ水電解槽に採用することにより、電解槽の組み立てを容易にすることができる。さらに、隔膜10の周縁部がガスケット30のスリット部33に収容されているところ、ガスケット30はスリット部33の外周側に、スリット部33の外周端を封止する連続部36を備えているので、毛細管現象により隔膜10の端部から電解槽の外部に電解液やガスが漏洩することを防ぐことが可能になる。
【0035】
本発明に関する上記説明では、隔膜10と、陰極20と、ガスケット30とを備える形態の複合体100、及び、隔膜10と、陽極40と、ガスケット30とを備える形態の複合体200を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、陰極および陽極の両方を備える形態のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体とすることも可能である。
【0036】
図4は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体300(以下において「複合体300」ということがある。)を模式的に説明する図である。
図4において、(A)(B)及び(C)はそれぞれ複合体300の正面図、右側面図、及び背面図であり、(D)は(A)のX−X断面図であり、(E)は(D)の分解図である。
図4において、
図2〜3に既に表れた要素には
図2〜3と同一の符号を付し、説明を省略することがある。複合体300は、第1の膜面11及び第2の膜面12を有する隔膜10と;隔膜10の第1の膜面11に重ねて配置された、陽極(第1の電極)40と;隔膜10の第2の膜面12に重ねて配置された、陰極(第2の電極)20と;隔膜10、陽極(第1の電極)40、及び陰極(第2の電極)20を一体に保持する電気絶縁性のガスケット30とを含む。ガスケット30は、陽極側の枠体に接する第1の面31と;陰極側の枠体に接する第2の面32と;内周側に向かって開口し、隔膜10の全周縁部および陽極(第1の電極)40の全周縁部を収容する、スリット部33と;第1の面31及び第2の面32に交差する方向(
図4(D)及び(E)における紙面上下方向。)においてスリット部33を介して対向する、第1の面31を有する第1の部分34及び第2の面32を有する第2の部分35と;スリット部33の外周側に設けられ、第1の部分34及び第2の部分35を一体に接続し、且つスリット部33の外周端を封止する、連続部36とを備えている。複合体300において、スリット部33に収容された、隔膜10の全周縁部、陽極(第1の電極)40の全周縁部、および陰極(第2の電極)20の全周縁部は、第1の部分34及び第2の部分35によって一体に挟持されている。また
図4(A)(C)(D)に示すように、陽極(第1の電極)40は、隔膜10に対して、ガスケット30の第1の面31と同じ側に配置されており、陰極(第2の電極)20は、隔膜10に対して、ガスケット30の第2の面32と同じ側に配置されている。
図4(A)のY−Y断面図は、
図4(A)のX−X断面図、すなわち
図4(D)と同様である。
【0037】
複合体300における隔膜10、陽極40、陰極20、及びガスケット30は、複合体100及び200における隔膜10、陽極40、陰極20、及びガスケット30とそれぞれ同様である。
【0038】
複合体300を製造する方法は特に制限されない。例えば、第1の面31を備える陽極側のガスケット部材と第2の面32を備える陰極側のガスケット部材とで、陽極40、隔膜10、及び陰極20の周縁部を挟み、その後陽極側のガスケット部材の周縁部と陰極側のガスケット部材の周縁部とを溶着または接着等により接合して一体化することによって、スリット部33及び連続部36を備えるガスケット30のスリット部33に陽極40、隔膜10、及び陰極20の周縁部が保持された複合体300(
図4(D)及び(E)参照。)を得ることができる。また例えば、隔膜10、陽極40、陰極20、及びガスケット30を別個に準備した後、ガスケット30を適宜変形させながら、ガスケット30のスリット部33に隔膜10、陽極40、及び陰極20の周縁部を挿入してもよい。
【0039】
アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体300においては、ガスケット30のスリット部33に収容された、隔膜10の全周縁部、陽極40の全周縁部、及び陰極20の全周縁部が、ガスケット30の第1の部分34及び第2の部分35によって一体に挟持されているので、陽極40と隔膜10とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させ、且つ、隔膜10と陰極20とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができる。したがって複合体300をゼロギャップ型アルカリ水電解槽に採用することにより、運転電圧をさらに低減し、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。また従来のゼロギャップ型電解槽においては各電極は電解エレメント(陽極側枠体または陰極側枠体)に固定されており、電極の固定のために溶接やピン止め等の措置が必要であった。これに対して複合体300によれば、陽極40及び陰極20は隔膜10及びガスケット30に一体化されているので、陽極40を陽極側枠体に固定する必要はなく、また陰極20を陰極側枠体に固定する必要もない。したがって複合体300をゼロギャップ型アルカリ水電解槽に採用することにより、電解槽の組み立てを容易にすることができる。さらに、隔膜10の周縁部がガスケット30のスリット部33に収容されているところ、ガスケット30はスリット部33の外周側に、スリット部33の外周端を封止する連続部36を備えているので、毛細管現象により隔膜10の端部から電解槽の外部に電解液やガスが漏洩することを防ぐことが可能になる。
【0040】
本発明に関する上記説明では、四角形状のガスケット30を備える形態の複合体100、200、及び300を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。環状、又は、四角形以外の多角形状(例えば六角形や八角形等。)を有するガスケットを備える形態のアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体とすることも可能である。隔膜、陰極、および陽極の形状は、ガスケットの形状に合わせて決定される。
【0041】
<2.アルカリ水電解槽>
図5は、本発明の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽1000(以下において「電解槽1000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。電解槽1000は、上記説明した膜−電極−ガスケット複合体100(
図2参照。)を備えるアルカリ水電解槽である。
図5に示すように、電解槽1000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体100と;ガスケット30に保持されることなく、隔膜10の第2の膜面12に接して配置された陽極(第2の電極)41とを備えている。電解槽1000において、複合体100は、隔膜10の第1の膜面11が陰極室Cに面し、隔膜10の第2の膜面12が陽極室Aに面するように配置されている。電解槽1000において、陰極(第1の電極)20は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)であり、陽極(第2の電極)41は剛体多孔板(第2の多孔板)である。電解槽1000は、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61、61、…(以下において「導電性リブ61」ということがある。)をさらに備え、陽極41は導電性リブ61に保持されている。電解槽1000はまた、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62、62、…(以下において「導電性リブ62」ということがある。)と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82とを備えており、陰極20は弾性体82によって陽極41へ向けて押し付けられている。
【0042】
陽極側枠体51及び陰極側枠体52としては、陽極室Aおよび陰極室Cをそれぞれ画定できる限りにおいて、アルカリ水電解槽に用いられる公知の枠体を特に制限なく用いることができる。陽極側枠体51は、導電性の背面隔壁51aと、背面隔壁51aの全周縁部と水密に結合されたフランジ部51bとを有する。同様に陰極側枠体52も、導電性の背面隔壁52aと、背面隔壁52aの全周縁部と水密に結合されたフランジ部52bとを有する。背面隔壁51a、52aは、隣接する電解セル同士を区画し、かつ、隣接する電解セル同士を電気的に直列に接続する。フランジ部51bは、背面隔壁51a、隔膜10、及びガスケット30とともに陽極室を画定し、フランジ部52bは、背面隔壁52a、隔膜10、及びガスケット30とともに陰極室を画定する。フランジ部51b、52bは、複合体100のガスケット30に対応する形状を有している。すなわち、陽極側枠体51と陰極側枠体52とで複合体100のガスケット30を挟持したときに、陽極側枠体51のフランジ部51bはガスケット30の第1の面31と隙間なく接触し、陰極側枠体52のフランジ部52bはガスケット30の第2の面32と隙間なく接触する。なお
図5には示していないが、フランジ部51bは陽極室Aに陽極液を供給する陽極液供給流路と、陽極液Aから陽極液および陽極で発生したガスを回収する陽極液回収流路とを備えている。またフランジ部52bは陰極室Cに陰極液を供給する陰極液供給流路と、陰極室Cから陰極液および陰極で発生したガスを回収する陰極液回収流路とを備えている。背面隔壁51a、52aの材質としては、アルカリ耐性を有する剛性の導電性材料を特に制限なく用いることができ、そのような材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;及び、これらにニッケルめっきを施した金属材料を挙げることができる。フランジ部51b、52bの材質としては、アルカリ耐性を有する剛性の材料を特に制限なく用いることができ、そのような材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;及び、これらにニッケルめっきを施した金属材料;並びに、強化プラスチック等の非金属材料を挙げることができる。陽極側枠体51の背面隔壁51aとフランジ部51bとは溶接や接着等で接合されていてもよく、同一の材料で一体に形成されていてもよい。同様に陰極側枠体52の背面隔壁52aとフランジ部52bとは溶接や接着等で接合されていてもよく、同一の材料で一体に形成されていてもよい。また
図5には単一の電解セル(電解槽1000)のみを示しているが、陽極側枠体51のフランジ部51bは背面隔壁51aの反対側(
図5における紙面右側)にも延在して、背面隔壁51aとともに隣接する電解セルの陰極室を画定してもよく、また陰極側枠体52のフランジ部52bは背面隔壁52aの反対側(
図5における紙面左側)にも延在して、背面隔壁52aとともに隣接する電解セルの陽極室を画定してもよい。
【0043】
導電性リブ61及び導電性リブ62としては、アルカリ水電解槽に用いられる公知の導電性リブを特に制限なく用いることができる。電解槽1000において、導電性リブ61は陽極側枠体51の背面隔壁51aから立設されており、導電性リブ62は陰極側枠体の背面隔壁52aから立設されている。導電性リブ61が陽極41を陽極側枠体51に対して固定および保持できる限りにおいて、導電性リブ61の形状、数、及び配置は特に制限されない。また導電性リブ62が集電体72を陰極側枠体52に対して固定および保持できる限りにおいて、導電性リブの62の形状、数、及び配置も特に制限されない。導電性リブ61及び導電性リブ62の材質としては、アルカリ耐性を有する剛性の導電性材料を特に制限なく用いることができ、そのような材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;これらにニッケルめっきを施した金属、等の材料を挙げることができる。
【0044】
集電体72としては、アルカリ水電解槽において用いられる公知の集電体を特に制限なく用いることができ、例えば耐アルカリ性を有する剛性の導電性材料からなる、エキスパンドメタル、パンチドメタル等を好ましく採用できる。集電体72の材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;及びこれらにニッケルめっきを施した金属、等を挙げることができる。集電体72を導電性リブ62に保持するにあたっては、溶接やピン止め等の公知の手法を特に制限なく採用できる。
【0045】
弾性体82としては、アルカリ水電解槽において用いられる公知の導電性弾性体を特に制限なく用いることができ、例えば耐アルカリ性を有する導電性材料からなる、金属線の集合体からなる弾性マット、コイルばね、板バネ等を好ましく採用できる。弾性体82の材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;これらにニッケルめっきを施した金属、等を挙げることができる。弾性体82を集電体72に保持するにあたっては、溶接やピン止め、ボルト止め等の公知の手法を特に制限なく採用できる。
【0046】
陽極41としては、複合体200(
図3)に関連して上記説明した陽極40と同様のアルカリ水電解用陽極であって、剛体多孔板であるものを特に制限なく用いることができる。陽極41をリブ61に保持するにあたっては、溶接やピン止め、ボルト止め等の公知の手法を特に制限なく採用できる。
【0047】
電解槽1000は、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体100を備えているので、少なくとも隔膜10と陰極20とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができる。したがって電解槽1000によれば、従来のゼロギャップ型電解槽よりも運転電圧をさらに低減し、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。また陰極20が隔膜10及びガスケット30とともに一体化されているので、陰極20を陰極側枠体52に固定する必要はない。したがって電解槽1000によれば、電解槽の組み立てを容易にすることができる。さらに、隔膜10の周縁部がガスケット30のスリット部33に収容されているところ、ガスケット30はスリット部33の外周側に、スリット部33の外周端を封止する連続部36を備えているので、毛細管現象により隔膜10の端部から電解槽の外部に電解液やガスが漏洩することを防ぐことが可能になる。
【0048】
本発明に関する上記説明では、複合体100を備える形態のアルカリ水電解槽1000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、上記説明した複合体200(
図3)を備える形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図6は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽2000(以下において「電解槽2000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図6において、
図2〜5に既に表れた要素には
図2〜5における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図6に示すように、電解槽2000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体200と;ガスケット30に保持されることなく、隔膜10の第2の膜面12に接して配置された陰極(第2の電極)21とを備えている。電解槽2000において、複合体200は、隔膜10の第1の膜面11が陽極室Aに面し、隔膜10の第2の膜面12が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽1000において、陽極(第1の電極)40は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)であり、陰極(第2の電極)21は剛体多孔板(第2の多孔板)である。電解槽2000は、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62をさらに備え、陰極21は導電性リブ62に保持されている。電解槽2000はまた、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)81とを備えており、陽極40は弾性体81によって陰極21へ向けて押し付けられている。
【0049】
集電体71としては、アルカリ水電解槽において用いられる公知の集電体を特に制限なく用いることができ、例えば耐アルカリ性を有する剛性の導電性材料からなる、エキスパンドメタル、パンチドメタル、網状体等を好ましく採用できる。集電体71の材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;これらにニッケルめっきを施した金属、等を挙げることができる。集電体71を導電性リブ61に保持するにあたっては、溶接やピン止め等の公知の手法を特に制限なく採用できる。
【0050】
弾性体81としては、アルカリ水電解槽において用いられる公知の導電性弾性体を特に制限なく用いることができ、例えば耐アルカリ性を有する導電性材料からなる、金属線の集合体からなる弾性マット、コイルばね、板バネ等を好ましく採用できる。集電体81の材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;これらにニッケルめっきを施した金属、等を挙げることができる。弾性体81を集電体71に保持するにあたっては、溶接、ピン止め等の公知の手法を特に制限なく採用できる。
【0051】
陰極21としては、複合体100(
図2)に関連して上記説明した陰極20と同様のアルカリ水電解用陰極であって、剛体多孔板であるものを特に制限なく用いることができる。陰極21をリブ62に保持するにあたっては、溶接やピン止め、ボルト止め等の公知の手法を特に制限なく採用できる。
【0052】
電解槽2000は、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体200を備えているので、少なくとも隔膜10と陽極40とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができる。したがって電解槽2000によれば、従来のゼロギャップ型電解槽よりも運転電圧をさらに低減し、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。また陽極40が隔膜10及びガスケット30とともに一体化されているので、陽極40を陽極側枠体51に固定する必要はない。したがって電解槽2000によれば、電解槽の組み立てを容易にすることができる。さらに、隔膜10の周縁部がガスケット30のスリット部33に収容されているところ、ガスケット30はスリット部33の外周側に、スリット部33の外周端を封止する連続部36を備えているので、毛細管現象により隔膜10の端部から電解槽の外部に電解液やガスが漏洩することを防ぐことが可能になる。
【0053】
本発明に関する上記説明では、剛体多孔板である第2の電極41が導電性リブ61によって保持されている形態のアルカリ水電解槽1000、及び、剛体多孔板である第2の電極21が導電性リブ62によって保持されている形態のアルカリ水電解槽2000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、剛体多孔板である第2の電極が、導電性を有する第2の弾性体によって第1の電極に向けて押し付けられている形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図7は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽3000(以下において「電解槽3000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図7において、
図2〜6に既に表れた要素と同一の要素には
図2〜6における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図7に示すように、電解槽3000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体100と;ガスケット30に保持されることなく、隔膜10の第2の膜面12に接して配置された陽極(第2の電極)41とを備えている。電解槽3000において、複合体100は、隔膜10の第1の膜面11が陰極室Cに面し、隔膜10の第2の膜面12が陽極室Aに面するように配置されている。電解槽3000において、陰極(第1の電極)20は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)である。陽極(第2の電極)41は剛体多孔板であってもよく、可撓性を有する多孔板であってもよい(第2の多孔板)が、好ましくは剛体多孔板である。電解槽3000は、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82とを備えており、陰極20は弾性体82によって陽極41へ向けて押し付けられている。電解槽3000はまた、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第2の弾性体)81とを備えており、陽極41は弾性体81によって陰極20へ向けて押し付けられている。
【0054】
電解槽3000によれば、複合体100に一体化された第1の電極20が第1の弾性体82によって陽極41へ向けて(隔膜10へ向けて)押し付けられているだけでなく、複合体100に一体化されていない第2の電極41も、第2の弾性体81によって陰極20へ向けて(すなわち隔膜10へ向けて)押し付けられている。したがって複合体100に一体化された第1の電極20を枠体52に固定する必要がないだけでなく、複合体100に一体化されていない第2の電極41を枠体51に固定する必要もない。よって電解槽3000によれば、電解槽の組み立てを更に容易にすることが可能になる。また隔膜10が陽極側および陰極側の両方から弾性体による圧力を受けるので、第2の電極41の周縁部の近傍における隔膜10の変形を低減することが容易になる。電解槽1000について上記説明した効果も同様に得ることができる。
【0055】
本発明に関する上記説明では、複合体100に一体化されていない第2の電極が剛体多孔板である形態のアルカリ水電解槽1000、2000、及び3000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体に一体化されていない第2の電極が可撓性を有する多孔板である形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図8は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽4000(以下において「電解槽4000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図8において、
図2〜7に既に表れた要素には
図2〜7における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図8に示すように、電解槽4000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体100と;ガスケット30に保持されることなく、隔膜10の第2の膜面12に接して配置された陽極(第2の電極)42とを備えている。電解槽4000において、複合体100は、隔膜10の第1の膜面11が陰極室Cに面し、隔膜10の第2の膜面12が陽極室Aに面するように配置されている。電解槽4000において、陰極(第1の電極)20は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)であり、陽極(第2の電極)42は可撓性を有する多孔板(第2の多孔板)である。電解槽4000は、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82とを備えており、陰極20は弾性体82によって陽極42へ向けて押し付けられている。電解槽4000はまた、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第2の弾性体)81と、弾性体81と陽極42との間に配置された、導電性を有する剛体集電体91とを備えており、陽極42は弾性体81によって剛体集電体91を介して陰極20へ向けて押し付けられている。すなわち、電解槽4000において、剛体集電体91は、剛体集電体91と隔膜10との間に第2の電極(陽極)42が挟まれるように配置されており、第2の電極(陽極)42は剛体集電体91によって支持されている。
【0056】
剛体集電体91としては、導電性を有する剛性の集電体を用いることができ、例えば耐アルカリ性を有する剛性の導電性材料からなる、エキスパンドメタル、パンチドメタル等を好ましく採用できる。剛性集電体91の材料の例としては、ニッケル、鉄等の単体金属;SUS304、SUS310、SUS310S、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼;これらにニッケルめっきを施した金属、等を挙げることができる。剛体集電体91は弾性体81に保持されていてもよく、保持されていなくてもよい。剛体集電体91を弾性体81に保持する場合、溶接やピン止め、ボルト止め等の公知の手段を特に制限なく採用できる。
【0057】
電解槽4000によれば、複合体100に一体化された第1の電極20が第1の弾性体82によって陽極42へ向けて(すなわち隔膜10へ向けて)押し付けられているだけでなく、複合体100に一体化されていない第2の電極42も、第2の弾性体81によって剛性集電体91を介して陰極20へ向けて(すなわち隔膜10へ向けて)押し付けられている。したがって複合体100に一体化された第1の電極20を枠体52に固定する必要がないだけでなく、複合体100に一体化されていない第2の電極42を枠体51に固定する必要もない。よって電解槽4000によれば、電解槽の組み立てを更に容易にすることが可能になる。また弾性体81が剛性集電体91を介して第2の電極42を押し付けている(すなわち第2の電極42が剛性集電体91によって背後から支持されている)ので、複合体に一体化されていない第2の電極が可撓性を有する場合にも、両電極が隔膜10に向けて押し付けられる圧力を両電極の全面にわたってより均一にすることが可能になり、したがって電流密度をより均一にすることが可能になる。また隔膜10が陽極側および陰極側の両方から弾性体による圧力を受けるので、ガスケット30の近傍における隔膜10の変形を低減することが容易になる。電解槽1000について上記説明した効果も同様に得ることができる。
【0058】
本発明に関する上記説明では、隔膜10及び陰極20がガスケット30とともに一体化された複合体100(
図2)又は隔膜10及び陽極40がガスケット30とともに一体化された複合体200(
図3)を備えるアルカリ水電解槽1000、2000、3000、及び4000(
図5〜8)を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、隔膜10、陰極20、及び陽極40がガスケット30とともに一体化された複合体300(
図4)を備える形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図9は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽5000(以下において「電解槽5000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図9において、
図2〜8に既に表れた要素には
図2〜8における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図9に示すように、電解槽5000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体300とを備えている。電解槽5000において、複合体300は、陽極40が陽極室Aに面し、陰極20が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽5000において、陰極(第1の電極)20は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)である。陽極(第2の電極)40は可撓性を有する多孔板(第2の多孔板)であってもよく、剛体多孔板であってもよい。電解槽5000は、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82とを備えており、陰極20は弾性体82によって陽極40へ向けて押し付けられている。電解槽5000はまた、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71とを備えており、陽極40は集電体71によって背後から支持されている。
【0059】
電解槽5000は、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体300を備えているので、隔膜10と陰極20とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができ、且つ、隔膜10と陽極40とを全面にわたって(すなわち周縁部においても)直接に接触させることができる。したがって電解槽5000によれば、従来のゼロギャップ型電解槽よりも運転電圧をさらに低減し、エネルギーロスをさらに低減することが可能になる。また陽極40及び陰極20が隔膜10及びガスケット30とともに一体化されているので、陽極40を陽極側枠体51に固定する必要がなく、陰極20を陰極側枠体52に固定する必要もない。したがって電解槽5000によれば、電解槽の組み立てを容易にすることができる。さらに、隔膜10の周縁部がガスケット30のスリット部33に収容されているところ、ガスケット30はスリット部33の外周側に、スリット部33の外周端を封止する連続部36を備えているので、毛細管現象により隔膜10の端部から電解槽の外部に電解液やガスが漏洩することを防ぐことが可能になる。
【0060】
本発明に関する上記説明では、導電性リブ61に支持された集電体71を備え、陽極40が集電体71によって背後から支持されている形態のアルカリ水電解槽5000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、陽極40が剛体の多孔電極である場合には、集電体71を備えず、導電性リブ61が陽極40を背後から直接に支持する形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
【0061】
本発明に関する上記説明では、陰極20が可撓性を有する多孔板であって弾性体82によって陽極40へ向けて押し付けられており、陽極40が導電性リブ61及び集電体71によって背後から支持されている形態のアルカリ水電解槽5000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、陽極が可撓性を有する多孔板であって弾性体によって陰極へ向けて押し付けられており、陰極が導電性リブ及び集電体によって背後から支持されている形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図10は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽6000(以下において「電解槽6000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図10において、
図2〜9に既に表れた要素には
図2〜9における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図10に示すように、電解槽6000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体300とを備えている。電解槽6000において、複合体300は、陽極40が陽極室Aに面し、陰極20が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽6000において、陽極(第1の電極)40は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)である。陰極(第2の電極)20は可撓性を有する多孔板(第2の多孔板)であってもよく、剛体多孔板であってもよい。電解槽6000は、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)81とを備えており、陽極40は弾性体81によって陰極20へ向けて押し付けられている。電解槽6000はまた、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72とを備えており、陰極20は集電体72によって背後から支持されている。このような形態のアルカリ水電解槽6000によっても、上記説明した電解槽5000と同様の効果を得ることができる。
【0062】
本発明に関する上記説明では、導電性リブ62に支持された集電体72を備え、陰極20が集電体72によって背後から支持されている形態のアルカリ水電解槽6000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、陰極20が剛体の多孔電極である場合には、集電体72を備えず、導電性リブ62が陰極20を背後から直接に支持する形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
【0063】
本発明に関する上記説明では、可撓性を有する多孔板である第1の電極が導電性を有する第1の弾性体によって第2の電極へ向けて押し付けられており、第2の電極が導電性リブによって背後から支持されている形態のアルカリ水電解槽5000及び6000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、可撓性を有する多孔板である第1の電極が導電性を有する第1の弾性体によって第2の電極へ向けて押し付けられており、第2の電極が導電性を有する第2の弾性体によって第1の電極へ向けて押し付けられている形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図11は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽7000(以下において「アルカリ水電解槽7000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図11において、
図2〜10に既に表れた要素には
図2〜10における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図11に示すように、電解槽7000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体300とを備えている。電解槽7000において、複合体300は、陽極40が陽極室Aに面し、陰極20が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽7000において、陰極(第1の電極)20及び陽極(第2の電極)40の少なくとも一方は、可撓性を有する多孔板である。陰極(第1の電極)20及び陽極(第2の電極)40の両方が可撓性を有する多孔板であってもよいが、陰極(第1の電極)20及び陽極(第2の電極)40の一方が可撓性を有する多孔板であり、他方が剛体多孔板であることが好ましい。電解槽7000は、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82とを備えており、陰極20は弾性体82によって陽極40へ向けて押し付けられている。電解槽7000はまた、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第2の弾性体)81とを備えており、陽極40は弾性体81によって陰極20へ向けて押し付けられている。
【0064】
このような形態のアルカリ水電解槽7000によっても、上記説明した電解槽5000と同様の効果を得ることができる。また隔膜10が陽極側および陰極側の両方から弾性体による圧力を受けるので、ガスケット30の近傍における隔膜10の変形を低減することが容易になる。
【0065】
図12は、さらに他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽8000(以下において「電解槽8000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図12において、
図2〜11に既に表れた要素には
図2〜11における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図12に示すように、電解槽8000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体300とを備えている。電解槽8000において、複合体300は、陽極40が陽極室Aに面し、陰極20が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽8000において、陰極(第1の電極)20は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)である。陽極(第2の電極)40は剛性を有する多孔板であってもよく、可撓性を有する多孔板であってもよい(第2の多孔板)が、好ましくは可撓性を有する多孔板である。電解槽8000は、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82とを備えており、陰極20は弾性体82によって陽極40へ向けて押し付けられている。電解槽8000はまた、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第2の弾性体)81と、弾性体81と陽極40との間に配置された、導電性を有する剛体集電体91とを備えており、陽極40は弾性体81によって剛体集電体91を介して陰極20へ向けて押し付けられている。すなわち、電解槽8000において、剛体集電体91は、剛体集電体91と隔膜10との間に第2の電極(陽極)40が挟まれるように配置されており、第2の電極(陽極)40は剛体集電体91によって支持されている。
【0066】
電解槽8000によれば、弾性体81が剛性集電体91を介して陽極40を押し付けている(すなわち陽極40が剛性集電体91に背後から支持されている)ので、陽極40および陰極20の両方が可撓性を有する場合にも、両電極が隔膜10に向けて押し付けられる圧力を両電極の全面にわたってより均一にすることが可能になり、したがって電流密度をより均一にすることが可能になる。電解槽7000について上記説明した効果も同様に得ることができる。
【0067】
本発明に関する上記説明では、導電性の弾性体81が剛性集電体91を介して陽極40を陰極20に向けて押し付ける形態のアルカリ水電解槽8000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、導電性の弾性体が剛性集電体を介して陰極を陽極に向けて押し付ける形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図13は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽9000(以下において「電解槽9000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図13において、
図2〜12に既に表れた要素には
図2〜12における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図13に示すように、電解槽9000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体300とを備えている。電解槽9000において、複合体300は、陽極40が陽極室Aに面し、陰極20が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽9000において、陽極(第1の電極)40は可撓性を有する多孔板(第1の多孔板)である。陰極(第2の電極)20は剛性を有する多孔板であってもよく、可撓性を有する多孔板(第2の多孔板)であってもよいが、好ましくは可撓性を有する多孔板である。電解槽9000は、陽極側枠体51の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ61と、導電性リブ61に保持された集電体71と、集電体71に保持された導電性を有する弾性体(第1の弾性体)81とを備えており、陽極40は弾性体81によって陰極20へ向けて押し付けられている。電解槽9000はまた、陰極側枠体52の内壁から突き出すように設けられた導電性リブ62と、導電性リブ62に保持された集電体72と、集電体72に保持された導電性を有する弾性体(第2の弾性体)82と、弾性体82と陰極20との間に配置された、導電性を有する剛体集電体91とを備えており、陰極20は弾性体82によって剛体集電体91を介して陽極40へ向けて押し付けられている。すなわち、電解槽9000において、剛体集電体91は、剛体集電体91と隔膜10との間に第2の電極(陰極)20が挟まれるように配置されており、第2の電極(陰極)20は剛体集電体91によって支持されている。
【0068】
このような形態のアルカリ水電解槽9000によっても、上記説明した電解槽8000と同様の効果を得ることができる。すなわち、電解槽9000によれば、弾性体82が剛性集電体91を介して陰極20を押し付けている(すなわち陰極20が剛性集電体91に背後から支持されている)ので、陽極40および陰極20の両方が可撓性を有する場合にも、両電極が隔膜10に向けて押し付けられる圧力を両電極の全面にわたってより均一にすることが可能になり、したがって電流密度をより均一にすることが可能になる。電解槽7000について上記説明した効果も同様に得ることができる。
【0069】
本発明に関する上記説明では、陽極室に導電性リブ61を備え、陰極室に導電性リブ62を備える形態のアルカリ水電解槽1000〜9000を例に挙げたが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、陽極室および陰極室の一方または両方が導電性リブを備えない形態のアルカリ水電解槽とすることも可能である。
図14は、そのような他の一の実施形態に係るアルカリ水電解槽10000(以下において「電解槽10000」ということがある。)を模式的に説明する断面図である。
図14において、
図2〜13に既に表れた要素には
図2〜13における符号と同一の符号を付し、説明を省略することがある。
図14に示すように、電解槽10000は、陽極室Aを画定する導電性の陽極側枠体51と;陰極室Cを画定する導電性の陰極側枠体52と;陽極側枠体51が第1の面31に接し、陰極側枠体52が第2の面32に接するように、陽極側枠体51および陰極側枠体52に挟持された複合体300とを備えている。電解槽10000において、複合体300は、陽極40が陽極室Aに面し、陰極20が陰極室Cに面するように配置されている。電解槽10000において、陰極(第1の電極)20及び陽極(第2の電極)40の少なくとも一方は、可撓性を有する多孔板である。陰極(第1の電極)20及び陽極(第2の電極)40の両方が可撓性を有する多孔板であってもよいが、陰極(第1の電極)20及び陽極(第2の電極)40の一方が可撓性を有する多孔板であり、他方が剛体多孔板であることが好ましい。電解槽10000は、陰極側枠体52の導電性の背面隔壁52aと陰極20との間に、背面隔壁52a及び陰極20に直接に接するように配置された、導電性を有する弾性体(第1の弾性体)82を備えており、陰極20は弾性体82によって陽極40へ向けて押し付けられている。電解槽10000はまた、陽極側枠体51の導電性の背面隔壁51aと陽極40との間に、背面隔壁51a及び陽極40に直接に接するように配置された、導電性を有する弾性体(第2の弾性体)81を備えており、陽極40は弾性体81によって陰極20へ向けて押し付けられている。
【0070】
このような形態のアルカリ水電解槽10000によっても、上記説明した電解槽7000と同様の効果を得ることができる。さらに、電解槽10000においては,陽極室A及び陰極室Cが導電性リブを備えないので、電解セル一つあたりの厚さを薄くすることが可能になり、したがって電解槽を小型化して占有敷地面積あたりのガス生産量を高めることが可能になる。また、陽極室および陰極室の一方または両方が導電性リブを備えないので、電解槽を構成する材料および電解槽の作製に必要な工数を削減することが可能になる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0072】
<実施例>
本発明に包含されるアルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体300(
図4)を備えるアルカリ水電解槽5000(
図9)を用いて、通電面積0.5dm
2、極液温度80℃、KOH濃度25質量%、電流密度60A/dm
2の条件でアルカリ水の電解を行い、必要な電圧を測定した。
【0073】
<比較例>
実施例で用いたアルカリ水電解槽に代えて、ガスケットと電極とが一体化されていない従来型の構造(
図1参照)を有するゼロギャップ型電解槽を用いた他は、実施例1と同一の条件でアルカリ水の電解を行い、必要な電圧を測定した。
【0074】
<評価結果>
実施例で用いたアルカリ水電解槽によれば、比較例で用いた従来型のゼロギャップ型電解槽に対し、通電面積および電流値が同一であるにもかかわらず、電解に必要な電圧を1.5%低減することができた。これはゼロギャップ化されている(電極と隔膜とが直接に接触している)面積が増加したことにより、通電面の全体にわたってより均一に電流が流れるようになったことを示している。また比較例の電解槽では電解開始から1日後にはガスケット周辺に極液の漏洩による結晶の析出が確認されたのに対し、実施例で用いたアルカリ水電解槽においては2週間にわたって電解を継続しても極液の漏洩による結晶の析出は観察されなかった。
第1及び第2の膜面を有する隔膜と、第1の膜面に重ねて配置された第1の電極と、隔膜および第1の電極を一体に保持する電気絶縁性のガスケットとを含み、ガスケットは、陽極側の枠体に接する第1の面と、陰極側の枠体に接する第2の面と、内周側に向かって開口し隔膜および第1の電極の全周縁部を収容するスリット部と、スリット部を介して対向する第1及び第2の部分と、スリット部の外周側に設けられ、第1及び第2の部分を一体に接続し、且つスリット部の外周端を封止する連続部とを備え、スリット部に収容された隔膜及び第1の電極の全周縁部が、第1及び第2の部分によって一体に挟持されている、アルカリ水電解用膜−電極−ガスケット複合体。