【文献】
P. C. Rowlette et al.,Digital Control of SiO2 Film Deposition at Room Temperature,Journal of Physical Chemistry,2009年 4月 8日,113, 6906-6909
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4工程において前記処理容器内に供給される前記希ガスの流量は、前記第3工程において前記処理容器内に供給される前記希ガスの流量の5倍以上の流量である、請求項1又は11に記載の方法。
前記第1工程と前記第2工程との間、前記第2工程と前記第3工程との間、前記第3工程と前記第4工程との間、及び、前記第4工程と前記第1工程との間に、前記処理容器内の空間をパージする工程を更に含む、請求項2〜9の何れか一項に記載の方法。
前記第1工程では、前記処理容器内の圧力が13.33Pa以上の圧力であり、プラズマ生成用の高周波電源の電力が100W以下である高圧低電力の条件に設定される、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0028】
図1は、一実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図1に示す方法MTAは、被処理体(以下、「ウエハW」ということがある)のレジストマスクの開口幅を縮小する方法である。一実施形態の方法MTAでは、一連の工程を単一のプラズマ処理装置を用いて実行することが可能である。
【0029】
図2は、プラズマ処理装置の一例を示す図である。
図2には、被処理体を処理する方法の種々の実施形態で利用可能なプラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。
図2に示すように、プラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置であり、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有している。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成されており、その内壁面には陽極酸化処理が施されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0030】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14を構成する絶縁材料は、石英のように酸素を含み得る。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。また、処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。
【0031】
載置台PDは、その上面においてウエハWを保持する。載置台PDは、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0032】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
【0033】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジ及び静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、石英から構成され得る。
【0034】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24には、冷媒が循環するよう、供給される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。
【0035】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0036】
また、プラズマ処理装置10には、加熱素子であるヒータHTが設けられている。ヒータHTは、例えば、第2プレート18b内に埋め込まれている。ヒータHTには、ヒータ電源HPが接続されている。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることにより、載置台PDの温度が調整され、当該載置台PD上に載置されるウエハWの温度が調整されるようになっている。なお、ヒータHTは、静電チャックESCに内蔵されていてもよい。
【0037】
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、載置台PDの上方において、当該載置台PDと対向配置されている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と下部電極LEとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが提供されている。
【0038】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。絶縁性遮蔽部材32は、絶縁材料から構成されており、例えば、石英のように酸素を含み得る。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は処理空間Sに面しており、当該電極板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。この電極板34は、一実施形態では、シリコンから構成されている。また、別の実施形態では、電極板34は、酸化シリコンから構成され得る。
【0039】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0040】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを有している。複数のガスソースは、ハロゲン化ケイ素ガスのソース、酸素ガスのソース、窒素ガスのソース、フルオロカーボンガスのソース、希ガスのソース、及び、不活性ガスのソースを含み得る。ハロゲン化ケイ素ガスとしては、例えば、SiCl
4ガスが用いられ得る。また、ハロゲン化ケイ素ガスとしては、SiBr
4ガス、SiF
4ガス、又はSiH
2Cl4ガスが用いられてもよい。また、フルオロカーボンガスとしては、CF
4ガス、C
4F
6ガス、C
4F
8ガスといった任意のフルオロカーボンガスが用いられ得る。また、希ガスとしては、Heガス、Arガスといった任意の希ガスが用いられ得る。また、不活性ガスとしては、限定されるものではないが、窒素ガスが用いられ得る。
【0041】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラといった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。したがって、プラズマ処理装置10は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、処理容器12内に供給することが可能である。
【0042】
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。デポシールドは、Y
2O
3の他、例えば、石英のように酸素を含む材料から構成され得る。
【0043】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0044】
また、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波電力を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されていてもよい。
【0045】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための第2の高周波電力、即ち高周波バイアス電力を発生する電源であり、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、一例においては3.2MHzの高周波バイアス電力を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0046】
また、プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、処理空間S内に存在する正イオンを電極板34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。このような電圧が電源70から上部電極30に印加されると、処理空間Sに存在する正イオンが、電極板34に衝突する。これにより、電極板34から二次電子及び/又はシリコンが放出される。
【0047】
また、一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。具体的に、制御部Cntは、バルブ群42、流量制御器群44、排気装置50、第1の高周波電源62、整合器66、第2の高周波電源64、整合器68、電源70、ヒータ電源HP、及びチラーユニットに接続されている。
【0048】
制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号により、ガスソース群から供給されるガスの選択及び流量、排気装置50の排気、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64からの電力供給、電源70からの電圧印加、ヒータ電源HPの電力供給、チラーユニットからの冷媒流量及び冷媒温度を制御することが可能である。なお、本明細書において開示される被処理体を処理する方法の各工程は、制御部Cntによる制御によってプラズマ処理装置10の各部を動作させることにより、実行され得る。
【0049】
再び
図1を参照し、方法MTAについて詳細に説明する。以下では、方法MTAの実施にプラズマ処理装置10が用いられる例について説明を行う。また、以下の説明においては、
図3及び
図4を参照する。
図3は、被処理体の初期状態及び
図1に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
図4は、
図1に示す方法におけるプラズマの生成及びパージに関するタイミングチャートである。
図4においては、ハロゲン化ケイ素ガスのプラズマ、酸素ガスのプラズマ、及び希ガスのプラズマに関するタイミングチャートが示されている。
図4のプラズマに関するタイミングチャートにおいて、Highレベル(図中、「H」で表記)は、各ガスのプラズマが生成されていることを示しており、Lowレベル(図中、「L」で表記)は、各ガスのプラズマが生成されていないことを示している。また、
図4には、パージに関するタイミングチャートも示されている。パージに関するタイミングチャートにおいて、Highレベル(図中、「H」で表記)は、パージが行われていることを示しており、Lowレベル(図中、「L」で表記)は、パージが行われていないことを示している。
【0050】
図1に示す方法MTAでは、まず、
図3の(a)に示すウエハWが準備される。ウエハWは、下地領域UR及びマスクMKを含んでいる。下地領域URは、マスクMKの下地であり、被エッチング層を含む領域である。方法MTAでは、このようなウエハWが、プラズマ処理装置10の処理容器12内に収容され、載置台PD上に載置される。
【0051】
そして、方法MTAでは、シーケンスSQAが繰り返して実行される。シーケンスSQAは、工程STA1、工程STA2、工程STA3、及び工程STA4を含んでいる。シーケンスSQAは、パージを実行する工程STP1、工程STP2、工程STP3、及び工程STP4を更に含み得る。
【0052】
図1に示すように、工程STA1では、処理容器12内においてハロゲン化ケイ素ガスを含む第1のガスのプラズマが生成される。一実施形態では、第1のガスは、ハロゲン化ケイ素ガス及び希ガスを含み、工程STA1では、
図4に示すように、ハロゲン化ケイ素ガスのプラズマ及び希ガスのプラズマが生成される。具体的に、工程STA1では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、ハロゲン化ケイ素ガス及び希ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、第1のガスのプラズマが生成される。第1のガスは、ハロゲン化ケイ素ガスとして、例えば、SiCl
4ガスを含む。また、第1のガスは、Arガス又はHeガスといった希ガスを更に含み得る。なお、第1のガスは、ハロゲン化ケイ素ガスとして、SiBr
4ガス、SiF
4ガス、又はSiH
2Cl4ガスを含んでいてもよい。
【0053】
工程STA1において第1のガスのプラズマが生成されると、第1のガスに含まれるハロゲン化ケイ素の解離種といった反応前駆体が生成される。生成された前駆体はウエハWに付着して、
図3の(b)に示すように、ウエハWの表面上にシリコン含有膜SFを形成する。
【0054】
図1及び
図4に示すように、続く工程STP1では、処理容器12内の空間がパージされる。具体的には、工程STA1において供給された第1のガスが排気される。工程STP1では、パージガスとして窒素ガスといった不活性ガスがプラズマ処理装置の処理容器に供給されてもよい。即ち、工程STP1では、不活性ガスを処理容器内に流すガスパージ、真空引きによるパージ、又はガスパージ及び真空引きによるパージの双方が実行される。この工程STP1では、ウエハW上に過剰に付着した前駆体も除去される。
【0055】
続く工程STA2では、処理容器12内において、Arガス又はHeガスといった希ガスのプラズマが生成される。具体的には、工程STA2では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、希ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、希ガスのプラズマが生成される。続く工程STP2では、工程STP1と同様に処理容器12内の空間がパージされる。
【0056】
続く工程STA3では、処理容器12内において酸素ガスを含む第2のガスのプラズマが生成される。一実施形態では、第2のガスは、酸素ガスに加えて、Arガス又はHeガスといった希ガスを含み、工程STA3では、
図4に示すように、酸素ガスのプラズマ及び希ガスのプラズマが生成される。具体的に、工程STA3では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、第2のガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。
【0057】
上述した工程STA1で形成されたシリコン含有膜SF中の前駆体は、シリコンとハロゲン元素の結合、例えば、シリコンと塩素との結合を含む。シリコンとハロゲン元素との結合エネルギーは、シリコンと酸素との結合エネルギーよりも低い。したがって、工程STA3の実行により、シリコン含有膜SF中のハロゲン元素が酸素に置換される。これにより、
図3の(c)に示すように、ウエハWの表面上にシリコン酸化膜SXが形成される。
【0058】
続く工程STP3では、工程STP1及び工程STP2と同様に処理容器12内の空間のパージが行われる。続く工程STA4では、工程STA2と同様に処理容器12内において希ガスのプラズマが生成される。続く工程STP4では、工程STP1、工程STP2、及び工程STP3と同様に処理容器12内の空間のパージが行われる。
【0059】
続く工程STJでは、シーケンスSQAの実行を終了するか否かが判定される。具体的には、工程STJでは、シーケンスSQAの実行回数が所定回数に達したか否かが判定される。シーケンスSQAの実行回数は、ウエハWの表面上に形成されるシリコン酸化膜SXの膜厚を決定する。即ち、シーケンスSQAの実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQAの実行回数との積により、最終的にウエハWの表面上に形成されるシリコン酸化膜SXの膜厚が実質的に決定される。したがって、ウエハWの表面上に形成されるシリコン酸化膜の所望の膜厚に応じて、シーケンスSQAの実行回数が設定される。
【0060】
工程STJにおいてシーケンスSQAの実行回数が所定回数に達していないと判定される場合には、シーケンスSQAの実行が工程STA1から再び繰り返される。そして、
図3の(d)に示すように、シリコン含有膜SFが更に形成され、しかる後に、シリコン含有膜SFが酸化されることにより、
図3の(e)に示すようにシリコン酸化膜SXが更に形成される。一方、工程STJにおいてシーケンスSQAの実行回数が所定回数に達していると判定される場合には、シーケンスSQAの実行が終了する。このようなシーケンスSQAの繰り返しにより、
図3の(f)に示すように、所望の膜厚を有するシリコン酸化膜SXがウエハWの表面上に形成される。
【0061】
この方法MTAでは、シリコン酸化膜SXの膜厚をシーケンスSQAの実行回数に応じた所望の膜厚に調整できるので、マスクMKの開口の幅を所望の幅に調整することが可能である。
【0062】
また、方法MTAによれば、工程STA1と工程STA3の間の工程STA2において、希ガス原子の活性種によりシリコン含有膜SFの前駆体表面における結合が活性化される。また、工程STA4において、シリコン酸化膜SXの表面の結合が活性化される。これにより、シリコン酸化膜SX中のSi−Oのネットワークにおける酸素欠損が解消される。したがって、形成されるシリコン酸化膜SXが緻密化される。即ち、高い密度を有し、且つ、小さい膜厚を有するシリコン酸化膜SXが1回のシーケンスSQAで、ウエハWの表面上にコンフォーマルに形成される。かかるシーケンスSQAの繰り返しにより、高いアスペクト比で形成された開口を提供するマスクMKを有するウエハWであっても、高い面内均一性とコンフォーマルな被覆性を有するシリコン酸化膜SXが当該ウエハWの表面上にコンフォーマルに形成される。即ち、ウエハWの表面上に形成されるシリコン酸化膜SXの膜厚のバラツキが低減される。
【0063】
より具体的には、
図3の(f)に示すように、シリコン酸化膜SXは、領域R1、領域R2及び領域R3を含んでいる。領域R3は、マスクMKの側面、即ち開口OPを画成する側壁面上で当該側面に沿って延在する領域である。領域R1は、マスクMK1の上面の上及び領域R3上で延在している。また、領域R2は、隣接する領域R3の間、且つ、下地領域URの表面上で延在している。方法MTAによれば、高いアスペクト比の開口OPを有するマスクMKを備えたウエハWであっても、領域R1、領域R2、及び領域R3のそれぞれのシリコン酸化膜の膜厚T1、T2、T3の差異を低減させることが可能となる。
【0064】
また、かかるシーケンスSQAの工程STA1では、前駆体用のガスとしてハロゲン化ケイ素ガスが用いられている。一般的には、前駆体用のガスとしてはアミノシラン系ガスが用いられるが、アミノシランは高い沸点を有する液体ソースである。一方、工程STA1において用いられる前駆体用のガスはハロゲン化ケイ素ガス、例えば、SiCl
4ガス、SiBr
4ガス、SiF
4ガス、又はSiH
2Cl4ガスは、常温で気化状態にある。したがって、工程STA1では、気化器を有する専用の成膜装置を用いずに、シリコンを含む前駆体を、低温でウエハW上に堆積させることが可能である。
【0065】
なお、工程STA1の実行時の処理容器12内の圧力は、限定されるものではないが、一実施形態では、13.33Pa(100mTorr)以上の圧力に設定される。また、工程STA1の実行時の第1の高周波電源62の高周波電力は、100W以下の電力に設定される。このような高圧且つ低パワーの条件でプラズマを生成することにより、ハロゲン化ケイ素ガスの過剰な解離を抑制することができる。即ち、ハロゲン元素の活性種の過剰な発生を抑制することができる。なお、過剰解離を抑制した同様なプラズマ状態を生成する手法として第2の高周波電源64を用いてもよい。これにより、マスクMKの損傷、及び/又は、既に形成されているシリコン酸化膜の損傷を抑制することが可能となる。また、領域R1、領域R2、及び領域R3の膜厚の差異を低減することが可能となる。さらに、マスクMKが密に設けられている領域及び粗に設けられている領域が存在する場合に、即ち、マスクMKのパターンに粗密が存在する場合に、双方の領域に形成されるシリコン酸化膜の膜厚の差異を低減することが可能である。
【0066】
また、一実施形態では、工程STA1の実行時に、第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力は下部電極LEに殆ど供給されないか、又は供給されない。これは、バイアス電力を印加すると異方性成分が生じることによる。このようにバイアス電力を最小限にすることにより、前駆体を等方的にウエハWに付着させることができる。その結果、マスクMKの上面及び側面、及び当該マスクMK1の下地の表面のそれぞれに形成されるシリコン酸化膜の膜厚の均一性が更に向上される。なお、第2の高周波電源64を用いてプラズマを生成する場合は、前駆体を等方的に付着させるためにイオンエネルギーを最小限にする条件の選択が必要となる。また、工程STA3の実行は工程STA1で付着した前駆体をシリコン酸化膜に置換するため、前述の工程STA1と同様な等方的な反応が必要となる。そのため工程STA3においても第2の高周波電源64からの高周波バイアス電力は下部電極LEに殆ど供給されないか、又は供給されない。
【0067】
以下、被処理体を処理する方法の別の実施形態について説明する。
図5は、別の実施形態に係る被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図6は、
図5に示す方法におけるプラズマの生成及び希ガスのガス流量に関するタイミングチャートである。
図6においては、
図4と同様に、ハロゲン化ケイ素ガスのプラズマ、酸素ガスのプラズマ、及び希ガスのプラズマに関するタイミングチャートが示されている。
図6のプラズマに関するタイミングチャートにおいて、Highレベル(図中、「H」で表記)は、各ガスのプラズマが生成されていることを示しており、Lowレベル(図中、「L」で表記)は、各ガスのプラズマが生成されていないことを示している。また、
図6においては、プラズマ処理装置の処理容器内に供給される希ガスの流量に関するタイミングチャートも示されている。希ガスの流量に関するタイミングチャートでは、レベルが高いほど希ガスの流量が高いことが示されている。
【0068】
図5に示す方法MTBは、方法MTAと同様に、シーケンスSQBを繰り返して実行することにより、ウエハWの表面上にシリコン酸化膜SXを形成するものである。なお、方法MTBの工程STJは、方法MTAの工程STJと同様にシーケンスの実行の終了を判定する工程である。
【0069】
シーケンスSQBは、工程STB1、工程STB2、工程STB3、及び工程STB4を含んでいる。工程STB1はシーケンスSQAの工程STA1と同様の工程であり、当該工程STB1では、プラズマ処理装置10の処理容器12内において第1のガスのプラズマが生成される。工程STB2はシーケンスSQAの工程STA2と同様の工程であり、当該工程STB2では、処理容器12内において希ガスのプラズマが生成される。工程STB3はシーケンスSQAの工程STA3と同様の工程であり、当該工程STB3では、処理容器12内において第2のガスのプラズマが生成される。また、工程STB4はシーケンスSQAの工程STA4と同様の工程であり、当該工程STB4では、処理容器12内において希ガスのプラズマが生成される。
【0070】
但し、シーケンスSQBでは、工程STB1、工程STB2、工程STB3、及び工程STB4が順に連続して実行される。即ち、シーケンスSQBでは、工程SQAの工程STP1、工程STP2、工程STP3、及び工程STP4のようなパージが、実行されない。
【0071】
また、シーケンスSQBでは、
図6に示すように、工程STB1、工程STB2、工程STB3、及び工程STB4にわたって、希ガスのプラズマが生成される。即ち、シーケンスSQBの実行期間中にわたって、処理容器12内に希ガスが供給され、当該希ガスのプラズマが生成される。一実施形態では、最初に実行されるシーケンスSQBの工程STB1の実行に先立って、処理容器12内に希ガスが供給され、しかる後にプラズマ生成用の高周波電力が供給されることにより、希ガスのプラズマが生成される。その後に、処理容器12内にハロゲン化ケイ素ガスが供給されることにより、第1のガスのプラズマが生成されてもよい。
【0072】
かかるシーケンスSQBを含む方法MTBでは、工程STB1において処理容器12内に供給されたハロゲン化ケイ素ガスが、工程STB2の希ガスのプラズマの生成中に、処理容器12内の空間から排出される。一実施形態の工程STB2では、処理容器12内のプラズマの発光を、発光分光計測(OES)により計測し、ハロゲン化ケイ素ガスに基づく発光が略観察されない状態となったときに、当該工程STB2を終了することができる。また、工程STB3において処理容器12内に供給された酸素ガスが、工程STB4の希ガスのプラズマの生成中に、処理容器12内の空間から排出される。一実施形態の工程STB4では、処理容器12内のプラズマの発光を、OESにより計測し、酸素ガスに基づく発光が略観察されない状態となったときに、当該工程STB4を終了することができる。
【0073】
上記説明から明らかなように、方法MTBでは、パージを別途に行う必要がない。また、プラズマの安定化のための期間も省略することが可能である。即ち、プラズマを利用する各工程の実行前にプラズマを安定化させるための期間を確保する必要がなくなる。したがって、方法MTBによれば、スループットが改善される。
【0074】
この方法MTBでは、シーケンスSQBの実行期間中にわたって供給される希ガスの流量は、一定であってもよく、変更されてもよい。一実施形態では、
図6に示すように、工程STB4において処理容器12内に供給される希ガスの流量が、工程STB3において処理容器12内に供給される希ガスの流量よりも大きい流量に設定される。これにより、工程STB3において使用された酸素ガスを処理容器12内の空間から高速に排出することが可能となる。したがって、スループットが更に改善される。
【0075】
また、一実施形態では、工程STB4において処理容器12内に供給される希ガスの流量は、工程STB3において処理容器12内に供給される希ガスの流量の5倍以上の流量に設定されてもよい。かかる流量の希ガスが工程STB4において用いられることにより、工程STB3において使用された酸素ガスを処理容器12内の空間から更に高速に排出することが可能となる。
【0076】
以下、方法MTA又は方法MTBを含む被処理体を処理する方法の一実施形態について説明する。
図7は、
図1に示す方法又は
図5に示す方法を含む被処理体を処理する方法の一実施形態を示す流れ図である。また、
図8及び
図9は、
図7に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
【0077】
図7に示す方法MT1では、まず、工程ST1においてウエハWが準備される。工程ST1において準備されるウエハWは、
図8の(a)に示すように、下地領域RUとして、基板SB、被エッチング層EL、有機膜OL、及び反射防止膜ALを有しており、マスクMK1を更に有している。被エッチング層ELは、基板SB上に設けられている。被エッチング層ELは、有機膜OLに対して選択的にエッチングされる材料から構成される層であり、当該被エッチング層ELとしては絶縁膜が用いられる。例えば、被エッチング層ELは、酸化シリコン(SiO
2)から構成され得る。なお、被エッチング層ELは、多結晶シリコンといった他の材料から構成されていてもよい。有機膜OLは、被エッチング層EL上に設けられている。有機膜OLは、炭素を含む層であり、例えば、SOH(スピンオンハードマスク)層である。反射防止膜ALは、シリコン含有反射防止膜であり、有機膜OL上に設けられている。
【0078】
マスクMK1は、反射防止膜AL上に設けられている。マスクMK1は、レジスト材料から構成されたレジストマスクであり、フォトリソグラフィ技術によってレジスト層がパターニングされることにより作成される。マスクMK1は、反射防止膜ALを部分的に覆っている。また、マスクMK1は、反射防止膜ALを部分的に露出させる開口OP1を画成している。マスクMK1のパターンは、例えば、ライン・アンド・スペースパターンである。なお、マスクMK1は、平面視において円形の開口を提供するパターンを有していてもよい。或いは、マスクMK1は、平面視において楕円形状の開口を提供するパターンを有していてもよい。
【0079】
工程ST1では、
図8の(a)に示すウエハWが準備され、当該ウエハWがプラズマ処理装置10の処理容器12内に収容され、載置台PD上に載置される。
【0080】
方法MT1では、次いで、工程ST2が実行される。工程ST2では、ウエハWに二次電子が照射される。具体的には、処理容器12内に水素ガス及び希ガスが供給され、第1の高周波電源62から高周波電力が供給されることにより、プラズマが生成される。また、電源70によって、上部電極30に負の直流電圧が印加される。これにより、処理空間S中の正イオンが上部電極30に引き込まれて、当該正イオンが上部電極30に衝突する。正イオンが上部電極30に衝突することにより、上部電極30からは二次電子が放出される。放出された二次電子がウエハWに照射されることにより、マスクMK1が改質される。なお、上部電極30に印加される負の直流電圧の絶対値のレベルが高い場合には、電極板34に正イオンが衝突することにより、当該電極板34の構成材料であるシリコンが、二次電子と共に放出される。放出されたシリコンは、プラズマに晒されたプラズマ処理装置10の構成部品から放出される酸素と結合する。当該酸素は、例えば、支持部14、絶縁性遮蔽部材32、及びデポシールド46といった部材から放出される。このようなシリコンと酸素の結合により、酸化シリコン化合物が生成され、当該酸化シリコン化合物がウエハW上に堆積してマスクMK1を覆い保護する。これら改質と保護の効果により、後続の工程によるマスクMK1の損傷が抑制される。なお、工程ST2では二次電子の照射による改質や保護膜の形成のため、第2の高周波電源64のバイアス電力を最小限にして、シリコンの放出を抑制してもよい。
【0081】
次いで、方法MT1では工程ST3が実行される。工程ST3では、上述した方法MTA又は方法MTBが実行される。これにより、
図8の(b)に示すように、マスクMK1の表面上及び反射防止膜AL上にシリコン酸化膜SXが形成される。
【0082】
方法MT1では、次いで、工程ST4が実行される。工程ST4では、領域R1及び領域R2を除去するように、シリコン酸化膜SXがエッチングされる。これら領域R1及び領域R2の除去のためには、異方性のエッチング条件が必要である。このため、工程ST4では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給されてプラズマが生成される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、高周波バイアス電力による鉛直方向への引き込みにより、領域R1及び領域R2を優先的にエッチングする。その結果、
図8の(c)に示すように、領域R1及び領域R2が除去され、残された領域R3からマスクMSが形成される。マスクMSはマスクMK1と共に、マスクMK1の開口OP1の幅を縮小させるように構成されたマスクMK2を形成する。このマスクMK2によって、開口OP1の幅よりも小さい幅の開口OP2が提供される。
【0083】
続く工程ST5では、反射防止膜ALがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、反射防止膜ALの全領域のうちマスクMK2から露出した領域をエッチングする。これにより、
図9の(a)に示すように、反射防止膜ALからマスクALMが形成される。この後、マスクMK2は除去されてもよい。
【0084】
続く工程ST6では、有機膜OLがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、酸素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、酸素ガスを含む処理ガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中の酸素の活性種は、有機膜OLの全領域のうちマスクALMから露出した領域をエッチングする。これにより、
図9の(b)に示すように、有機膜OLからマスクOLMが形成される。このマスクOLMが提供する開口OP3の幅は、開口OP2(
図7の(c)を参照)の幅と略同一となる。なお、有機膜OLをエッチングするガスとしては、窒素ガスと水素ガスを含む処理ガスを用いてもよい。
【0085】
続く、工程ST7では、被エッチング層ELがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、処理ガスが処理容器12内に供給される。処理ガスは、被エッチング層ELを構成する材料に応じて適宜選択され得る。例えば、被エッチング層ELが酸化シリコンから構成されている場合には、処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み得る。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、プラズマが生成される。生成されたプラズマ中の活性種は、被エッチング層ELの全領域のうち、マスクOLMから露出した領域をエッチングする。これにより、
図9の(c)に示すように、マスクOLMのパターンが被エッチング層ELに転写される。かかる方法MT1によれば、工程ST2〜工程ST7、即ち、レジストマスクに基づくマスクの作成から被エッチング層のエッチングまでの全工程を、単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能である。
【0086】
以下、方法MTA又は方法MTBを含む被処理体を処理する方法の別の実施形態について説明する。
図10は、
図1に示す方法又は
図5に示す方法を含む被処理体を処理する方法の別の実施形態を示す流れ図である。また、
図11及び
図12は、
図10に示す方法の各工程の実行後の被処理体の状態を示す断面図である。
【0087】
図10に示す方法MT2では、まず、工程ST21が実行される。工程ST21は、方法MT1の工程ST1と同様の工程である。したがって、工程ST21では、
図11の(a)に示すウエハW、即ち
図8の(a)に示すウエハと同様のウエハWが準備され、当該ウエハWが処理容器12内に収容されて、載置台PD上に載置される。
【0088】
次いで、方法MT2では、方法MT1の工程ST2と同様の工程ST22が実行される。即ち、ウエハWに二次電子が照射されマスクMK1が改質される。また、上部電極30に印加される負の直流電圧の絶対値のレベルが高い場合には、工程ST2に関して上述したように、電極板34のスパッタリングにより当該電極板34から放出されるシリコンとプラズマに晒されたプラズマ処理装置10の構成部品から放出される酸素との結合により酸化シリコン化合物が生成され、当該酸化シリコン化合物がウエハW上に堆積してマスクMK1を保護してもよい。
【0089】
続く工程ST23では、反射防止膜ALがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、反射防止膜ALの全領域のうちマスクMK1から露出した領域をエッチングする。これにより、
図11の(b)に示すように、反射防止膜ALからマスクALM2が形成される。
【0090】
続く工程ST24では、
図11の(b)に示すウエハWの表面上に保護膜PFが形成される。この保護膜PFは、後の方法MTA又は方法MTBの実行時に生成される酸素の活性種から有機膜OLを保護するために形成される。
【0091】
一実施形態では、上部電極30の電極板34はシリコンから構成される。この実施形態の工程ST24では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、例えば、水素ガス及び希ガスを含む混合ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、処理容器12内においてプラズマが生成される。さらに、電源70から上部電極30に負の直流電圧が印加される。これにより、プラズマ中の正イオンが電極板34に衝突し、当該電極板34からシリコンが放出される。また、プラズマに晒されたプラズマ処理装置10の部品から酸素が放出される。このように放出された酸素と電極板34から放出されたシリコンとが結合し、酸化シリコンが生成され、当該酸化シリコンがウエハW上に堆積して、
図11の(c)に示すように、保護膜PFが形成される。
【0092】
別の実施形態の工程ST24では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、ハロゲン化ケイ素ガス、及び酸素ガスを含む混合ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、酸化シリコンが生成され、当該酸化シリコンがウエハW上に堆積して、
図11の(c)に示すように、保護膜PFが形成される。
【0093】
更に別の実施形態では、上部電極30の電極板34は酸化シリコンから構成される。この実施形態の工程ST24では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、例えば、水素ガス及び希ガスを含む混合ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から上部電極30に高周波電力が供給される。また、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、処理容器12内においてプラズマが生成される。また、上部電極30の近傍で生成されるシース電圧により、プラズマ中の荷電粒子が電極板34に衝突する。これにより、酸化シリコンが電極板34から放出され、当該酸化シリコンがウエハW上に堆積して、
図11の(c)に示すように、保護膜PFが形成される。なお、この工程ST24では酸化シリコンを堆積させて保護膜を形成するため、第2の高周波電源64のバイアス電力は最小限にする必要がある。
【0094】
方法MT2では、次いで、工程ST25が実行される。工程ST25では、上述した方法MTA又は方法MTBが実行される。これにより、
図11の(d)に示すように、ウエハWの表面上に、シリコン酸化膜SX2が形成される。シリコン酸化膜SX2は、領域R1、領域R2及び領域R3を含んでいる。領域R3は、マスクMK1及びマスクALM2の側面上で当該側面に沿って延在する領域である。領域R3は、有機膜OL上に形成された保護膜PFの表面から領域R1の下側まで延在している。領域R1は、マスクMK1の上面の上及び領域R3上で延在している。また、領域R2は、隣接する領域R3の間、且つ、有機膜OLの表面上(即ち、有機膜OL上の保護膜PF上)で延在している。
【0095】
次いで、方法MT2では、工程ST26が実行される。工程ST26では、領域R1及び領域R2を除去するように、シリコン酸化膜SX2がエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、高周波バイアス電力による鉛直方向への引き込みにより、領域R1及び領域R2を優先的にエッチングする。その結果、
図12の(a)に示すように、領域R1及び領域R2が除去され、残された領域R3からマスクMS2が形成される。マスクMS2はマスクALM2と共に、MK1の開口OP1の幅を縮小させるように構成されたマスクMK22を形成する。このマスクMK22によって、開口OP1の幅よりも小さい幅の開口OP2が提供される。
【0096】
続く工程ST27では、有機膜OLがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、酸素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、酸素ガスを含む処理ガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中の酸素の活性種は、有機膜OLの全領域のうちマスクMK22から露出した領域をエッチングする。これにより、
図12の(b)に示すように、有機膜OLからマスクOLMが形成される。このマスクOLMが提供する開口OP3の幅は、開口OP2(
図12の(a)を参照)の幅と略同一となる。
【0097】
続く、工程ST28では、被エッチング層ELがエッチングされる。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから、処理ガスが処理容器12内に供給される。処理ガスは、被エッチング層ELを構成する材料に応じて適宜選択され得る。例えば、被エッチング層ELが酸化シリコンから構成されている場合には、処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み得る。また、第1の高周波電源62から高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力が供給される。さらに、排気装置50を動作させることにより、処理容器12内の空間の圧力が所定の圧力に設定される。これにより、プラズマが生成される。生成されたプラズマ中の活性種は、被エッチング層ELの全領域のうち、マスクOLMから露出した領域をエッチングする。これにより、
図12の(c)に示すように、マスクOLMのパターンが被エッチング層ELに転写される。
【0098】
かかる方法MT2によれば、工程ST22〜工程ST28、即ち、レジストマスクに基づくマスクの作成から被エッチング層のエッチングまでの全工程を、単一のプラズマ処理装置10を用いて実行することが可能である。
【0099】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態では、容量結合型のプラズマ処理装置10が用いられているが、方法MT1及び方法MT2のそれぞれから、二次電子、シリコン、又は酸化シリコンを上部電極から放出させる工程を省略した方法であれば、任意のプラズマ源を有するプラズマ処理装置を用いて実施することが可能である。そのようなプラズマ処理装置としては、例えば、誘導結合型のプラズマ処理装置、マイクロ波といった表面波を用いるプラズマ処理装置が例示される。
【0100】
以下、上述した方法MTA及び方法MTBの評価のために行った種々の実験について説明する。
【0102】
実験例1では、方法MTAにより、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。また、実験例2では、方法MTBにより、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。さらに、比較実験例1では、方法MTAから工程STA2、工程STP2、工程STA4、及び工程STP4を省いた方法により、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。
【0103】
実験例1では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例1におけるシーケンスSQAの実行回数は60回であった。
<工程STA1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:14sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:2秒
<工程STA2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:10秒
<工程STA3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STA4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:1300sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:20秒
【0104】
また、実験例2では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例2におけるシーケンスSQBの実行回数は60回であった。
<工程STB1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:3sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:30秒
<工程STB2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:60秒
<工程STB3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STB4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:60秒
【0105】
また、比較実験例1では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、比較実験例1におけるシーケンスの実行回数は60回であった。
<工程STA1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:20sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STA3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccmsccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
【0106】
そして、実験例1、実験例2、及び比較実験例1で形成したシリコン酸化膜の面内均一性(%)を求めた。なお、面内均一性は、(MAX−MIN)/(2×AVE)×100により定義される。ここで、「MAX」は、ウエハの複数の位置でシリコン酸化膜の膜厚を測定することにより得た複数の膜厚の最大値であり、「MIN」は、当該複数の膜厚の最小値であり、「AVE」は、当該複数の膜厚の平均値である。このように定義される面内均一性を求めた結果、実験例1で形成したシリコン酸化膜の面内均一性は2.5%であった。また、実験例2で形成したシリコン酸化膜の面内均一性は3.5%であった。一方、比較実験例1で形成したシリコン酸化膜の膜厚の面内均一性は、34%であった。これらの結果から、実験例1及び実験例2では、比較実験例1に比較して、シリコン酸化膜の膜厚の面内均一性を大幅に向上できることが確認された。即ち、前駆体の形成と前駆体の酸化との間において希ガスのプラズマにウエハを晒す方法MTA及び方法MTBによれば、形成されるシリコン酸化膜の膜厚の面内均一性を大幅に向上できることが確認された。
【0108】
実験例3では、方法MTAにより、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。また、比較実験例2では、方法MTAから工程STP1、工程STP2、工程STP3、及び工程STP4を省いた方法により、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。
【0109】
実験例3では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例3におけるシーケンスSQAの実行回数は60回であった。
<工程STA1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:14sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:2秒
<工程STA2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:10秒
<工程STA3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STA4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:1300sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:20秒
【0110】
また、比較実験例2では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、比較実験例2におけるシーケンスの実行回数は60回であった。
<工程STA1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:20sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STA3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.6Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
【0111】
そして、実験例3及び比較実験例2で形成したシリコン酸化膜の密度を、ウエハの中心位置において求めた。また、実験例3及び比較実験例2で形成したシリコン酸化膜の膜厚をウエハの中心位置において求めた。その結果、実験例3で形成したシリコン酸化膜の密度は2.65(g/cm
3)であり、当該シリコン酸化膜の膜厚は22.0nmであった。一方、比較実験例2で形成したシリコン酸化膜の密度は2.55(g/cm
3)であり、当該シリコン酸化膜の膜厚は28.6nmであった。これらの実験結果から、実験例3では、比較実験例2に比較して、密度が高い緻密なシリコン酸化膜を形成することが可能であることが確認された。
【0113】
実験例4では、方法MTAにより、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。実験例5及び実験例6では、方法MTBにより、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。但し、実験例5の工程STB4ではArガスの流量を200sccmに設定し、実験例6の工程STB4ではArガスの流量を1300sccmに設定した。比較実験例3では、方法MTAから工程STA2及び工程STA4を省いた方法により、直径300mmのウエハの平坦な表面上にシリコン酸化膜を形成した。なお、実験例4〜6及び比較実験例3では、シリコン酸化膜の膜厚が略同等となるように、各工程の条件を設定した。
【0114】
具体的に、実験例4では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例4におけるシーケンスSQAの実行回数は60回であった。また、工程STP1〜工程STP4の各々の実行時間は10秒であった。また、工程STA1〜工程STA4の各工程の実行前にプラズマの安定化のための期間として7秒の時間を確保した。
<工程STA1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:3sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:30秒
<工程STA2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:60秒
<工程STA3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STA4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:60秒
【0115】
また、実験例5では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例5におけるシーケンスSQBの実行回数は60回であった。
<工程STB1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:3sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:2秒
<工程STB2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:60秒
<工程STB3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STB4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:60秒
【0116】
また、実験例6では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例6におけるシーケンスSQBの実行回数は60回であった。
<工程STB1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:14sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:2秒
<工程STB2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:10秒
<工程STB3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STB4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:1300sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:20秒
【0117】
また、比較実験例3では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、比較実験例3におけるシーケンスの実行回数は60回であった。また、比較実験例3においては、工程STP1及び工程STP3の各々の実行時間は30秒であった。また、工程STA1と工程STA3の各工程の実行前に、プラズマの安定化のための期間として7秒の時間を確保した。
<工程STA1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:3sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STA3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量:200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
【0118】
図13に、実験例4〜6及び比較実験例3のシーケンス1回あたりの処理時間のグラフを示す。
図13に示すように、方法MTAに基づく実験例4では、希ガスのプラズマを生成する工程STA2及びSTA4が含まれる影響により、シーケンス1回あたりの処理時間が、比較実験例3に比して大きくなった。一方、方法MTBに基づく実験例5では、シーケンス1回当りの処理時間が、実験例4に比して大きく短縮された。さらに、方法MTBに基づき、且つ、工程STB4において大流量の希ガスを用いる実験例6では、シーケンス1回当りの処理時間が、実験例5に比して大幅に短縮された。
【0120】
実験例7〜11では、方法MTBにより、
図14に示すように、下地領域UR上にレジストマスクRMを有するウエハ上にシリコン酸化膜SXを形成した。レジストマスクRMはライン・アンド・スペースパターンを有し、ラインの幅W1は45nmであった。また、レジストマスクRMのラインの高さH1は、90nmであった。また、実験例7〜11では、ラインの幅W1とスペースの幅W2の比、即ちW1:W2はそれぞれ、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5であった。
【0121】
実験例7〜11では、各工程の条件を、以下に示す条件に設定した。なお、実験例7〜11におけるシーケンスSQBの実行回数は60回であった。
<工程STB1の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・SiCl
4ガス流量:14sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:2秒
<工程STB2の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:10秒
<工程STB3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STB4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:1300sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:20秒
【0122】
そして、レジストマスクRMの上面の上に形成されたシリコン酸化膜SXの膜厚T1、下地領域UR上に形成されたシリコン酸化膜SXの膜厚T2、及び、レジストマスクRMの側面上に形成されたシリコン酸化膜SXの膜厚(幅)T3を、実験例7〜11のそれぞれのそれぞれで形成したシリコン酸化膜に対して求めた。なお、膜厚T1、膜厚T2、及び膜厚T3は、ウエハの中心、及びエッジにおいて求めた。その結果を、表1に示す。
【表1】
表1から明らかなように、実験例7〜11では、レジストマスクRMのパターンの粗密によらず、ウエハの中心及びエッジの何れの位置においても略同様の膜厚を有するシリコン酸化膜SXが形成された。即ち、実験例7〜11では、レジストマスクRMのパターンの粗密によらず、高い面内均一性を有するシリコン酸化膜SXが形成されることが確認された。また、実験例7〜11では、レジストマスクRMのパターンの粗密によらず、ウエハの中心及びエッジの何れの位置においてもシリコン酸化膜の膜厚T1、膜厚T2、及び膜厚T3の互いの差異が小さかった。即ち、実験例7〜11では、高いアスペクト比の開口を提供するレジストマスクRMを有するウエハであっても、当該ウエハの表面上にコンフォーマルな被覆性をもってシリコン酸化膜を形成することが可能であることが確認された。
【0124】
実験例12では、工程STB3において用いられた酸素ガスに基づく発光が工程STB4において観察されなくなる時間と、工程STB4において用いられるArガスの流量との関係について調査した。具体的には、下記に示す条件で工程STB3及び工程STB4を実行し、工程STB4の実行時に処理容器内の発光をOESで観察して、酸素ガスに基づく発光が観察されなくなる時間を求めた。
【0125】
<工程STB3の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・O
2ガス流量200sccm
・Arガス流量:200sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、500W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:5秒
<工程STB4の条件>
・処理容器内圧力:200mTorr(26.66Pa)
・Arガス流量:1300sccm
・第1の高周波電源62の高周波電力(上部電極30に供給):60MHz、100W
・第2の高周波電源64の高周波バイアス電力:13.56MHz、0W
・処理時間:可変パラメータ
【0126】
図15に実験例12の結果を表すグラフを示す。
図15において横軸は工程STB4におけるArガスの流量を示しており、縦軸は工程STB4の開始時点から、酸素ガスに基づく発光が観察されなくなる時点までの時間を示している。即ち、縦軸は、工程STB4に必要な処理時間を示している。
図15に示すように、工程STB4のArガスの流量が200sccmより大きくなるにつれて、即ち、工程STB4のArガスの流量が工程STB3のArガスの流量よりも大きくなるにつれて、工程STB4中に酸素ガスが排出される時間、即ち、工程STB4に必要な処理時間が短縮されることが確認された。また、工程STB4のArガスの流量が1000sccm以上、即ち、工程STB4のArガスの流量が工程STB3のArガスの流量の5倍以上の流量に設定されることにより、工程STB4中に酸素ガスが排出される時間、即ち、工程STB4に必要な処理時間が短縮されることが確認された。