(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1対の光学シート又は光学フィルムの間に、(A)ポリウレタン樹脂、(B)ポリイソシアネート化合物、及び(C)フォトクロミック化合物を含んでなる接着層が接合されてなるフォトクロミック積層シートの製造方法において、
該フォトクロミック積層シートを形成後に、30〜80℃の温度で1000Pa以下の真空下、6時間以上、該フォトクロミック積層シートを静置することにより、該フォトクロミック積層シート中の気泡を除去する脱気工程、
脱気工程後の積層シートを90〜110℃の雰囲気下にて加熱する加熱工程、
加熱工程後の積層シートを、40〜60℃、60〜80%RHの雰囲気下にて、12時間以上48時間以下、加湿する加湿工程、
加湿工程後の積層シートを、常圧もしくは真空下、40〜100℃の雰囲気下にて乾燥する乾燥工程を有し、
脱気工程、加熱工程、加湿工程、及び乾燥工程における雰囲気温度80℃以上の処理時間を20時間未満とするフォトクロミック積層シートの製造方法。
前記(C)フォトクロミック化合物の含有量が、前記(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部である請求項3記載のフォトクロミック積層シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造方法は、1対の光学シート又は光学フィルムの間に、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びフォトクロミック化合物を含む接着層を介在させた後に、積層シート中の気泡を除去する脱泡工程、脱泡工程後の積層シートを加熱する加熱工程、加熱工程後の積層シートを加湿する加湿工程、及び加湿工程後の積層シートを乾燥する乾燥工程を実施するフォトクロミック積層シートの製造方法である。先ず、フォトクロミック積層シートを構成する各成分について説明する。
【0018】
(光学シート又は光学フィルム)
本発明の製造方法に使用される光学シート又は光学フィルムとしては、光透過性を有する樹脂製シートが特に制限なく使用できる。光学シート又は光学フィルムの原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。その中でも、接着性が良好で射出成形法に対する適用性が高いという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、偏光シート(ポリビニルアルコール偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルム、またはポリカーボネートシートではさんだもの)も、本発明の光学シート又は光学フィルムとして使用することが可能である。さらには、着色されたシートも、本発明の光学シート又は光学フィルムとして使用することが可能である。また、着色に関しては、本発明の積層シートを作製した後に光学シート又は光学フィルムを染色することも可能である。また、光学シート又は光学フィルムは、異なる樹脂からなるシートであってもよいし、同じ樹脂からなるシートであってもよい。
【0019】
光学シート又は光学フィルムに使用されるポリカーボネート樹脂は、一般的なビスフェノールA骨格などを有する芳香族フェノール類を主体にする芳香族ポリカーボネート樹脂、さらには芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂などとのポリマーアロイなどを用いることが出来る。具体的には、以下のようなジオールに由来する構造単位を含んでなるポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
(式中、
R
1〜R
4 は、それぞれ独立に、炭素数1〜20アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、
Aは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホン基、カルボニル基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキリデン基、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数6〜20のアルキレンアリーレンアルキレン基である。)
【0023】
(式中、
R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表し、
Bは、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を表し、
m及びnは、それぞれ独立に0〜5の整数である。)
【0025】
(式中、
R
9は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、
R
10は、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基であり、
pは、1〜3の整数である。)
【0027】
(式中、
Yは、炭素数2〜10のアルキレン基、または炭素数2〜10のオキシアルキレン基であり、
qは、1〜10の整数である。)
【0029】
光学シート又は光学フィルムに使用されるポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、15,000〜80,000であることがより好ましい。
【0030】
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリエステル樹脂は、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のような多価カルボン酸と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのポリアルコールとの重縮合体であるものが、強度や透明性などの観点から好適である。その中でも、テレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0031】
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリアミド樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマーであり、n−ナイロン、n、m−ナイロンなどが好適に使用される。n−ナイロンは、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどの開環重縮合反応によって得ることが出来る。n、m−ナイロンは、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミンなどのジアミンと、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸との共重縮合反応によって得ることが出来る。その中でも、ε−カプロラクタムの開環重縮合反応によって得られるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重縮合反応によって得られるナイロン6,6などが好ましい。
【0032】
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるセルロース樹脂は、β−グルコース分子がグリコシド結合により直線状に重合した樹脂であり、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどを挙げることが出来る。
【0033】
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリアクリル樹脂としては、アクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステルの重合体であり、メチルメタアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート類を主成分にするメタクリレート系重合体、あるいは共重合体が、硬さや強度、透明性などの観点から好ましい。
【0034】
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるウレタン系樹脂は、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族イソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、及びポリエーテルポリオールなどのポリオール化合物、さらには低分子量のジオール、及びジアミン化合物などの鎖延長剤からなる市販のウレタン系樹脂を用いることが出来る。
【0035】
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やアルケンを単位分子として合成される樹脂であり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに加え、ポリシクロオレフィン樹脂も用いることが出来る。
【0036】
本発明において使用する光学シート又は光学フィルムの好適な厚みとしては、得られる積層シートの平滑性の観点から、100〜1500μmが好ましく、200〜1000μmがより好ましい。また、光学シート又は光学フィルムは、異なる厚みを組み合わせて使用することも可能である。光学シート又は光学フィルムとの総厚は、後述する熱曲げ加工後の形状安定性の観点から400μm以上であることが好ましく、熱曲げ加工の加工容易性の観点から2000μm以下であることが好ましい。
【0037】
(1対の光学シート又は光学フィルムの間に、(A)ポリウレタン樹脂、(B)ポリイソシアネート化合物、及び(C)フォトクロミック化合物を含む接着層)
本発明の製造方法に使用される接着層(以下「フォトクロミック接着層」とも言う)は、(A)ポリウレタン樹脂(以下、単に(A)成分ともいう。)、(B)ポリイソシアネート化合物(以下、単にB成分ともいう。)、及び(C)フォトクロミック化合物(以下、単にC成分ともいう。)を含んでなる。以下、これら各成分について説明する。
【0038】
((A)ポリウレタン樹脂)
上記フォトクロミック接着層の構成成分である(A)ポリウレタン樹脂は、1対の光学シート又は光学フィルムを貼り合わせるための接着層の主成分として使用される。該(A)ポリウレタン樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0039】
該(A)ポリウレタン樹脂は、分子内にウレタン結合を有する樹脂であって、1対の光学シート又はフィルムを接合できるものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、ジイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から得られるポリウレタン樹脂を使用することができる。その中でも特に、本発明の積層シートの接着(密着)強度を向上するために、鎖延長剤にジアミン、もしくはトリアミンを用いたポリウレタン−ウレア樹脂であることが好適である。鎖延長剤として、ジアミン、もしくはトリアミンを用いることによりポリウレタン樹脂中にウレア結合(−R−NH−CO−NH−)が導入され、ポリウレタン−ウレア樹脂となる。
【0040】
(ジイソシアネート化合物)
前記ジイソシアネート化合物は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であり、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からジイソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が脂肪族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0041】
具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物
などを挙げることができる。
【0042】
これらの中でも、良好な接着力、耐熱性、及び塗工性の観点から、上記の通り、イソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好ましい。好適な化合物を具体的に例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0043】
(ポリオール化合物)
上記(A)ポリウレタン樹脂の構成成分の一つであるポリオール化合物としては、生成するポリウレタン樹脂が高架橋体になり過ぎないという理由から分子中に含まれる水酸基数が2〜6であることが好ましく、有機溶剤への溶解性を考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数は2〜3であることがより好ましい。ポリオール化合物として具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオール、及びこれらの混合物が使用される。これらのポリオール化合物は、単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わないが、耐熱性、接着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、特にポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。
【0044】
上記ポリエーテルポリオールとしては、分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体である、ポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることが出来る。
【0045】
なお、上記分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの分子中に水酸基を1個以上有するグリコール、グリセリン等のポリオール化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0046】
また、上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0047】
上記ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0048】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上のホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等によるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。この低分子ポリオール類なかでも、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂の接着性、及び耐熱性の観点から、直鎖のアルキル鎖を有する低分子ポリオール類がより好ましく、側鎖にアルキル基を有する低分子ポリオールから合成されたポリカーボネートポリオールは、接着性が低下する傾向が見られる。
【0049】
上記ポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が使用できる。
【0050】
(鎖延長剤)
前記鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する基を分子内に2つ以上有する化合物であり、前記ジイソシアネート基と反応する基としては水酸基、またはアミノ基であることが好ましい。具体的には、
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ビス(ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール;
イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等のアミノ化合物;
を挙げることができる。
【0051】
また、(A)ポリウレタン樹脂の末端には、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造などの機能性を有する基(以下、「末端を修飾する化合物」と称す)を導入することが好ましい。この末端を修飾する化合物としては、ピペリジン構造を有する1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどの化合物を挙げることができる。その他にも末端を修飾する化合物として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンなどのアミン類なども挙げることができる。
【0052】
上記本発明の製造方法における接着層の構成成分として用いられる(A)ポリウレタン樹脂の合成方法としては、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができる。合成に使用するジイソシアネート化合物、ポリオール化合物、鎖延長剤、および末端を修飾する化合物の量比は適宜決定すればよいが、得られる(A)ポリウレタン樹脂の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、ジイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、鎖延長剤に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3とし、末端を修飾する化合物に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基等)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.3〜0.89/1.0/0.1〜0.69/0.01〜0.2となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.45〜0.75/1.0/0.23〜0.53/0.02〜0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.65〜0.75/1.0/0.23〜0.33/0.02〜0.1となる量比とすることが最も好ましい。ここで、上記n1〜n4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
【0053】
本発明の(A)ポリウレタン樹脂においては、末端には反応性の基を有さないことが好ましい。特に、末端にイソシアネート基が残存しないように不活性化させることが好ましい。そのため、製造時には、n2=n1+n3+n4となるような配合割合で製造することが好ましい。n2よりもn1、n3、及びn4の合計モル数(n1+n3+n4)が大きい場合には、再沈殿等により、未反応のジイソシアネート化合物、鎖延長剤、および末端を修飾する化合物を除去してやればよい。
【0054】
また、好適な(A)ポリウレタン樹脂の物性としては、軟化点が80℃以上150℃以下となることが好ましい。この軟化点は、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した値である。
【0055】
〔測定条件〕 昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブ。
接着層に軟化点が80℃以上200℃以下の(A)ポリウレタン樹脂を使用することにより、積層シート又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合、熱曲げ加工を実施する場合、射出成型を行い光学物品とする場合において、優れた耐熱特性を発揮する。
【0056】
((B)ポリイソシアネート化合物)
上記フォトクロミック接着層の構成成分として用いられる(B)ポリイソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であり、このB成分を用いることによって、本発明の積層シートの密着強度をより向上させることができる。
【0057】
本発明における分子内に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、公知のイソシアネート化合物を何ら制限なく使用することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の(B)ポリイソシアネート化合物としては、前述のジイソシアネート化合物に加えて、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシル)ビュレット、(2,4,6−トリオキトリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)トリイル)トリス(ヘキサメチレン)イソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイルトリイソシアネート、4,4’,4’’−メチリジントリス(イソシアナトベンゼン)、メチルシラントリイルトリスイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸2−イソシアナトエチル、2,6−ビス[(2−イソシアナトフェニル)メチル]フェニルイソシアネート、トリス(3−メチル−6−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(4−メチル−3−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(3−イソシアナトフェニル)メタン、トリス(3−メチル−4−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(4−メチル−2−イソシアナトベンゾイル)メタン等の分子内に3つのイソシアネート基を有する化合物;
テトライソシアナトシラン、[メチレンビス(2,1−フェニレン)]ビスイソシアネート等の分子内に4つのイソシアネート基を有する化合物;
を挙げることができる。
【0059】
これらの中でも好適な(B)ポリイソシアネート化合物としては、2級炭素に結合したイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。具体的には、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物や、イソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。
【0060】
本発明の(B)ポリイソシアネート化合物の配合量は、耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などのバランスの観点から(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して、5〜20質量部の範囲となることが好ましい。
【0061】
((C)フォトクロミック化合物)
上記フォトクロミック接着層の構成成分として用いられる(C)フォトクロミッ化合物としては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0062】
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
【0063】
これらのフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ(2,1−f)ナフト(2,1−b)ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるため好適である。
【0064】
本発明におけるフォトクロミック化合物の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好適である。
【0065】
上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向があり、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、フォトクロミック化合物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、ポリマーシートなどの光学基材との接着性を十分に保持するためには、(C)フォトクロミック化合物の添加量は(A)ポリウレタン系樹脂100質量部に対して0.5〜10重量、特に1〜7質量部とすることがより好ましい。
【0066】
以下、上記各成分を用いた本発明のフォトクロミック積層シートの製造方法について説明する。
【0067】
(フォトクロミック積層シートの製造方法)
(フォトクロミック積層シート形成)
本発明のフォトクロミック積層シートの製造方法では、先ず最初に1対の光学シート又は光学フィルムの間に、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びフォトクロミック化合物を含む接着層を介在させてフォトクロミック積層シートを形成する。
【0068】
上記フォトクロミック積層シートにおけるフォトクロミック接着層は、単層であってもよいし、複数層から形成されてもよい。単層である場合には、上記のA成分、B成分、及びC成分を含む接着層とすればよい。
【0069】
(フォトクロミック接着層が単層であるフォトクロミック積層シートの形成)
フォトクロミック接着層を単層(以下、第一接着層とする場合もある)とする場合には、(A)ポリウレタン樹脂、(B)ポリイソシアネート化合物、及び(C)フォトクロミック化合物とを混合し、直接シート状に成形してもよいが、中でも、A成分、B成分、及びC成分に加えて、必要により配合される添加剤、有機溶媒を混合した第一接着層用塗工液を準備し、本発明の光学シート又はフィルム、または、それ以外の基材上に該塗工液を塗布した後、乾燥させることにより、接着層を形成することが好ましい。
【0070】
この第一接着層用塗工液において、必要に応じて配合される添加剤は、公知の添加剤、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等が挙げられる。これら添加剤は、(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネート樹脂製の光学シート又はフィルムなどへのフォトクロミック組成物の接着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
【0071】
また、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、n−ブチルメチルケトンなどのケトン類;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート類;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタン及びこれらの組み合せを挙げることができる。
【0072】
以上のような第一接着層用塗工液を、本発明の光学シート又はフィルム上に塗布した後、乾燥させた場合には、得られたシート同士を下記に詳述する方法で接合すればよい。また、本発明の光学シート又はフィルム以外の基材に塗布した場合には、基材と第一接着層とを剥離し、得られた第一接着層を本発明の光学シート又はフィルムの間に介在させて、下記に詳述する方法で接合すればよい。
【0073】
第一接着層用塗工液を塗布する方法は、公知の方法を採用すればよく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップ−スピンコート法、ドライラミネート法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。中でも、生産効率の観点からロール状の第一ポリマーシート、及び第二ポリマーシートを使用することが望まれるため、塗工機としては、ナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、バーコーターなど、ロール状シートに塗工可能な一般的な塗工機を用いることが好適である。その中でも、塗工液粘度の許容範囲が比較的広いナイフコーター、ダイコーターが好適に用いられる。
【0074】
また、本発明の光学シート又はフィルム以外の基材を使用する場合には、平滑なもの使用することが好ましく、基材の材質としては、本発明で使用する溶剤に耐性があるもの、また接着層が剥離しやすいものが好ましい。具体的に例示すれば、ガラス、ステンレス、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、さらにはシリコン系やフッ素系などの剥離性を向上させるコート層を積層させたプラスチックフィルムなどが挙げられる。基材を使用する場合には、有機溶媒の種類、及びポリマーシートの種類によらず、溶媒の使用に起因する悪影響を排除することが可能である。
【0075】
接着層が単層である場合には、得られる積層シートにおける接着層の厚みは、特に制限されるものではないが、5〜100μmであることが好ましい。
【0076】
(フォトクロミック接着層が複数層であるフォトクロミック積層シートの形成)
また、フォトクロミック接着層を複数層とする場合には、フォトクロミック化合物が配合された上記第一の接着層の両面に、第二の接着層を積層した、第二接着層/第一接着層/第二接着層とからなる3層構造とすることが好ましい。この場合、第二接着層と本発明の光学シート又はフィルムが接することになる。そして、第一接着層に、フォトクロミック化合物を配合することにより、接着性をより向上することができる。
この第一接着層は、前記の単層の接着層と同じ構成からなることが好ましい。
【0077】
一方、第二接着層は、特に制限されるものではないが、本発明のA成分から選ばれるポリウレタン−ウレア樹脂を使用することが好ましい。この第二接着層は、フォトクロミック化合物を含むこともできるが、より優れた効果を発揮するためには、第一接着層のみがフォトクロミック化合物を含むことが好ましい。
【0078】
このような3層構造の接着層を形成する場合には、共押出成形により第二接着層/第一接着層/第二接着層を形成することもできるが、以下の方法で形成することが好ましい。先ず、第一接着層は、本発明の光学シート又はフィルム以外の基材上に、前記第一接着層用塗工液を塗布して、前記の方法に従い成形する。
【0079】
第二接着層は、ポリウレタン−ウレア樹脂、必要に応じて配合される添加剤、有機溶媒を含む第二接着層用塗工液を準備し、本発明の光学シート又はフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第二接着層を本発明の光学シート又はフィルム上に形成する。なお、第二接着層用塗工液に含まれる添加剤、有機溶媒は、第一接着用塗工液で説明したものと同様のものを使用することができる。なお、第二接着層は、第一接着層と同じく、本発明の光学シート又はフィルム以外の基材上で作製することもできるが、接着性を向上させるためには、本発明の光学シート又はフィルム上に直接作製することが好ましい。
【0080】
そして、第二接着層を有す本発明の光学シート又はフィルムと、上記第一接着層を有する基材とを、第二接着層と第一接着層が接合するように、下記に詳述する方法で圧着する。次いで、該基材を剥離して現れる第一接着層と、第二接着層を有す本発明の光学シート又はフィルムとを、第一接着層と第二接着層が接合するように、前述の本発明の方法により圧着すればよい。
【0081】
第二接着層を有す本発明の光学シート又はフィルムと、上記第一接着層を有する基材とを圧着する方法としては、第二接着層を有する一方の光学シート又はフィルム、例えば、第二接着層を有する光学シート又はフィルム上に第一接着層を配置し、一対のラミネートロール温度50℃以上120℃以下、線圧4〜200N/mmの条件で接合させることができる。この場合、本発明の光学シート又はフィルム/第二接着層/第一接合層との順に形成された構造体を一旦準備し、次いで、本発明の光学シート又はフィルム、または本発明の光学シート又はフィルム上に第二接着層を形成した積層体を接合すればよい。
【0082】
なお、第二接着層/第一接着層/第二接着層の構成にした場合には、得られる積層シートの厚みは、特に制限されるものではないが、第一接着層が5〜100μm、10〜50μm、第二接着層が2〜40μm、5〜15μmとなることが好ましい。
【0083】
(フォトクロミック積層シート形成後の処理)
上記方法にて形成されたフォトクロミック積層シートは、次いで、
積層シート中の気泡を除去する脱気工程、
脱泡工程後の積層シートを90〜130℃の雰囲気下にて加熱する加熱工程、
加熱工程後の積層シートを、40〜90℃、60〜90%RHの雰囲気下にて加湿する加湿工程、及び
加湿工程後の積層シートを、常圧もしくは真空下、40〜100℃の雰囲気下にて乾燥する乾燥工程
を実施する。本発明の製造方法では、脱気工程、加熱工程、加湿工程、及び乾燥工程における雰囲気温度80℃以上の処理時間を20時間未満とすることが特徴である。
【0084】
上記脱気工程、加熱工程、加湿工程、及び乾燥工程は、前述のとおりフォトクロミック積層シートの接着性を安定化させるために行う工程であるが、80℃以上の処理時間の合計が20時間以上の場合には、最終的に得られる積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する。このハードコート層の密着性が低下する理由は定かではないが、フォトクロミック積層シートに対する加熱温度、及び加熱時間が過剰の場合には、光学シート又はフィルムの接着層と介していない面への熱的なダメージ、もしくは光学シート又はフィルムに含まれる添加剤のブリードアウトなどが誘発されるために、フォトクロミック積層シート上に形成されるハードコート層との密着性が低下すると推測される。
以下、各後処理工程の条件について詳述する。
【0085】
(脱気工程)
本発明の製造方法における脱気工程は、接合したばかりのフォトクロミック積層シート、特にフォトクロミック接着層に含有する空気、更には水分を除去することを目的に実施する。該脱気工程を実施しせずに、次の加熱工程を実施した場合には、フォトクロミック積層シート中に気泡が発生し、外観不良となってしまう。
【0086】
上記脱気工程は、30℃以上80℃以下の温度で6時間以上静置し、脱気することが好ましい。温度が30℃未満の場合には本工程の脱気の効果が不十分であり、次工程の加熱工程で、フォトクロミック積層シート中に気泡が発生してしまう。また、温度が80℃を超える場合には、該脱気工程においてフォトクロミック積層シート中に気泡が発生しやすくなる。脱気温度としては、40℃以上70℃以下がより好ましい。また、脱気時間が6時間未満の場合には、次工程の加熱工程で、フォトクロミック積層シート中に気泡が発生してしまう。脱気時間の上限については特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。脱気時間としては、6時間以上48時間以下がより好ましい。
【0087】
また、該脱気工程においてフォトクロミック積層シートは、前述の通り静置されるが、好ましくは5000Pa以下の真空下、より好ましくは1000Pa以下の真空下で、静置される。該脱気工程においては、本発明のフォトクロミック積層シートを複数枚重ねて処理することも可能であるが、内側に存在するフォトクロミック積層シートの脱気効率を考え、500枚以下であることが好ましく、100枚以下であることがより好ましい。
【0088】
(加熱工程)
本発明の製造方法における加熱工程は、前述の脱気工程後に実施される。該加熱工程を実施することにより、B成分のイソシアネート基の一部が、反応に供されるものと考える。その結果、このイソシアネート基がA成分のウレタン結合、又はウレア結合に結合し、アロファネート結合、又はビュレット結合を形成することを推進するものと考えられる。そして、この加熱処理して得られたフォトクロミック積層シートは、その状態が非常に安定なものとなる。
【0089】
上記反応を促進するためには、本発明の加熱工程は、90〜130℃の温度で、0.5〜5時間の時間で実施されるのが好適である。温度が90℃未満の場合には、最終的に得られる積層シートの接着性が不十分となり、また温度が130℃を超える場合には最終的に得られるフォトクロミック積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する。時間に関しては、0.5時間未満の場合には、最終的に得られるフォトクロミック積層シートの接着性が不十分となり、また5時間を超える場合には最終的に得られる積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する。特にハードコート層の密着性不良に関しては、他工程よりも高温で実施される可能性が高い加熱工程における影響が大きいため、加熱工程における雰囲気温度、及び処理時間を、(温度)×(時間)=100〜230℃・hの範囲で行うことが好ましく、100〜170℃・hの範囲で行うことがより好ましい。
【0090】
また、該加熱工程においては、本発明のフォトクロミック積層シートを複数枚重ねて処理することも可能であるが、内側に存在するフォトクロミック積層シートへの熱の拡散を考え、100枚以下であることが好ましく、20枚以下であることがより好ましい。
【0091】
(加湿工程)
本発明の製造方法における加湿工程は、前述の加熱工程後に実施される。該加湿工程を実施することにより、B成分によるA成分どうしの橋架け構造を完結させるとともに、フォトクロミック積層シート中に存在するB成分由来のイソシアネート基を完全に消失させることができ、フォトクロミック特性、及び接着性をより安定化させることが可能となると考えている。
【0092】
上記反応を促進するためには、本発明の加湿工程は、40〜90℃の温度、及び60〜90%RHの湿度下で加湿処理されることが好ましい。温度が40℃未満の場合には、最終的に得られるフォトクロミック積層シートの接着性が不十分となり、また温度が90℃を超える場合には最終的に得られるフォトクロミック積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する。湿度に関しては、60%RH未満の場合には、最終的に得られるフォトクロミック積層シートの接着性が不十分となり、また90%RHを超える場合には最終的に得られるフォトクロミック積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する。加湿工程の処理条件としては、40〜60℃の温度で、60〜80%RHの範囲で実施されることがより好ましい。
【0093】
該加湿処理工程の時間は、B成分由来のイソシアネート基が消失すれば良いため、設定する温度及び湿度によって変わってくるが、12時間以上48時間以下であることが好ましく、12時間以上30時間以下であることがより好ましい。
【0094】
また、該加湿工程においては、本発明のフォトクロミック積層シートを複数枚重ねて処理することも可能であるが、フォトクロミック積層シート内部への水分の浸透を考えた場合、最大でも2枚重ねであることが好ましく、それぞれのフォトクロミック積層シートが重なり合うことなく1枚ずつ単独で処理することがより好ましい。
【0095】
(乾燥工程)
本発明の製造方法における乾燥工程は、前述の加湿工程後に実施される。該乾燥工程を実施することにより、前述の加湿工程でフォトクロミック積層シートが吸収した水を除去することができる。該乾燥工程を実施しない場合には、本発明のフォトクロミック積層シートが、過剰の水分を含有することになり、フォトクロミック積層シートの2次加工(熱曲げ加工、射出成形)を行う際に、気泡が発生し不良となってしまう。
【0096】
本発明の乾燥工程は、常圧下、もしくは真空下において、40〜100℃の温度で、3時間以上実施することで、フォトクロミック積層シート中に存在する過剰の水分を除去することができる。
【0097】
該乾燥工程においてフォトクロミック積層シートは、好ましくは5000Pa以下の真空下、より好ましくは1000Pa以下の真空下で、静置される。
【0098】
該乾燥工程においては、フォトクロミック積層シートを複数枚重ねて処理することも可能であるが、内側に存在するフォトクロミック積層シートからの水分除去の効率を考え、500枚以下であることが好ましく、100枚以下であることがより好ましい。
【0099】
また、上記乾燥工程における温度が40℃以下の場合にはフォトクロミック積層シートからの水分の除去が不十分であり、2次加工で、フォトクロミック積層シート中に気泡が発生してしまう。また、温度が100℃以上の場合には、最終的に得られるフォトクロミック積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する。真空下における乾燥温度としては、60℃以上90℃以下がより好ましい。また、脱気時間が3時間未満の場合には、フォトクロミック積層シートからの水分の除去が不十分であり、2次加工で、フォトクロミック積層シート中に気泡が発生してしまう。乾燥時間の上限については、フォトクロミック積層シートから水分が除去出来れば構わないので特に制限されるものではないが、乾燥時間が50時間以上の場合には、最終的に得られるフォトクロミック積層シート上に実用上形成されるハードコート層の密着性が低下する傾向が見られるため、48時間以下であることが好ましい。乾燥時間は、特に4時間以上12時間以下であることがより好ましい。
【0100】
上記のとおり本発明のフォトクロミック積層シートの製造方法では、上記各工程の条件に加えて、脱気工程、加熱工程、加湿工程、及び乾燥工程における雰囲気温度80℃以上の処理時間を20時間未満とすることが必要である。
【0101】
(フォトクロミック積層シート製造後の工程)
本発明の製造方法によって得られるフォトクロミック積層シートは、必要に応じて、下記の2次加工(熱曲げ加工、射出成型)を実施することも可能である。
【0102】
(加工シートの製造:熱曲げ加工)
本発明の製造方法によって得られるフォトクロミック積層シートは、熱曲げ加工を実施することにより、レンズ状の球面形状に加工(加工シートを製造)することもできる。フォトクロミック積層シートを球面形状に熱曲げ加工する方法は、例えば、熱プレス加工、加圧加工、減圧吸引加工などが挙げられる。
【0103】
熱プレス加工は、先ず、熱プレス機に、所望する球面形状の凸型の金型と凹型の金型を装着し、両金型の間に該積層シートを固定治具で押さえつけ、凸型及び凹型の金型を加熱する。次いで、積層シートの両側から、この加熱した金型でプレスすることで、所望の球面形状に曲げ加工することができる。また、熱プレスする場合には、凹型の金型を用いず、凸型の金型のみを用いて、曲げ加工することも可能である。熱プレス加工する場合には、金型のみではなく、フォトクロミック積層シートを含めた熱プレスを行う雰囲気全体を加熱して実施してもよい。
【0104】
加圧加工は、所望の球面形状の凹型金型を有する装置を用いる。この凹型金型に対して本発明の積層シートを固定治具で固定化し、フォトクロミック積層シートの下面側に圧縮空気を注入できる金型をかぶせ、これら全体をヒータで加熱する。次いで、圧縮空気をフォトクロミック積層シート下面側から注入し、凹型金型の形状に変形させる。
【0105】
減圧吸引加工は、加圧加工と同様に所望の球面形状の凹型金型を有する装置を用いる。この凹型金型に本発明のフォトクロミック積層シートを設置するか、もしくは固定治具で固定化し、これら全体をヒータで加熱する。次いで、凹型金型内部から減圧吸引することで、凹型金型の形状にフォトクロミック積層シートを変形させる。
【0106】
また、加圧加工と減圧吸引加工を併用して、本発明のフォトクロミック積層シートを変形させることも出来る。
【0107】
熱曲げ加工する際の温度は、本発明のフォトクロミック積層シートに使用されている光学シート又はフィルムの種類によって適宜、決定すれば良いが、120℃を超え200℃以下で実施することが好ましい。
【0108】
また、本発明の方法により得られるフォトクロミック積層シートは、熱曲げ加工を行う前処理として、予備加熱処理を行うことが好ましい。フォトクロミック積層シートは、大気中の水又は空気を含んだ状態で熱曲げ加工を行うと、フォトクロミック積層シート内部の水又は空気が膨張し、気泡などの不良が発生することがある。そのため、予備加熱処理に行った後、熱曲げ加工を行うことで、気泡などの発生を抑制することができる。予備加熱処理は、40℃〜120℃の温度下で、5分〜24時間放置すればよい。また、減圧下であれば、例えば1〜10kPa程度の減圧下であれば、40〜60℃の温度で10分から1時間放置すればよい。また、常圧下であれば、50〜120℃の温度下、5分間から3時間放置することが好ましく、さらに、70〜110℃の温度下、10分間から60分間放置することが好ましい。
【0109】
(射出成型による光学基材の接合(光学物品の製造))
熱曲げ加工したフォトクロミック積層シート(加工シート)は、射出成型機の金型内に取り付けられ、曲げ加工した加工シートの凹面側に、熱可塑性樹脂を射出成型することにより、熱可塑性樹脂からなる光学基材と該加工シートとを一体化して、光学物品、例えば、プラスチックレンズとすればよい。
【0110】
射出成型に使用する熱可塑性樹脂としては、透明性の高い樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル樹脂またはこれらの混合物や共重合体が挙げられる。その中でも、耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂がより好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂には、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などが添加されていてもよい。以下、ポリカーボネート樹脂を用いた際の射出条件について説明する。
【0111】
ポリカーボネート樹脂と上述のような各種の添加剤との配合は、例えばタンブラー、V 型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法などがあり、通常用いられるポリマーブレンド方法であればどのような方法を用いてもよい。
【0112】
光学物品(プラスチックレンズ)を製造する際の射出成型には、一般の射出成型機や射出圧縮成型機等を用いることができる。射出成型の成型条件は、光学物品を形成する樹脂の種類、物性に応じて適宜決定すればよい。ポリカーボネート樹脂を射出成型する際の条件としては、射出成型シリンダー温度は200〜380℃、好ましくは220〜350℃である。射出成型機の金型温度は、40〜130℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。射出圧力は、2900〜17000N/cm
2であることが好ましく、4900N/cm
2〜15000N/cm
2であることがより好ましい。射出速度は、50〜800mm/sであることが好ましく、100〜700mm/sであることがより好ましい。また、ポリカーボネート樹脂は、射出成型前に100〜150℃の温度範囲で、4時間以上乾燥させておくことが好ましい。
【0113】
(ハードコート層の積層)
上記の方法によって得られるプラスチックレンズは、そのまま研磨や縁取りなどの加工工程を経て使用に供することができるが、着用時の傷の発生を防止することを目的として、さらにハードコート層で被覆して使用することもできる。
【0114】
ハードコート層を形成するためのコーティング剤(ハードコート剤)としては、公知のものがなんら制限なく使用できる。具体的には、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、チタン等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤や、有機高分子体を主成分とするハードコート剤が使用できる。
【0115】
本発明の製造方法によって得られるフォトクロミック積層体は、ハードコート層形成前に公知の前処理を行わずとも、十分な密着性を有するハードコート層を形成することができるが、本発明のフォトクロミック積層体とハードコート層の密着性をより強固に向上させる目的で、該フォトクロミック積層体表面をアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、UVオゾン処理、無機あるいは有機物の微粒子による研磨処理、プライマー処理又はプラズマもしくはコロナ放電処理を行うことが効果的である。
【0116】
また、塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法あるいはフロー法等によりハードコート剤を塗布することができる。
【0117】
塗布後の硬化方法として、乾燥空気あるいは空気中で風乾して、通常フォトクロミック積層体が変形しない程度の温度で加熱処理することによって硬化し、ハードコート層が形成される。
【0118】
また、本発明のフォトクロミック積層体の表面には、ハードコート層以外にも、さらに必要により、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工や2次処理を施すこともできる。
【実施例】
【0119】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
PC1:下記式で示される化合物
【0120】
【化6】
【0121】
また、実施例にて使用した第一接着層用塗工液、第二接着層用塗工液、プライマー組成物、ハードコート組成物は以下の方法にて調製した。
【0122】
(第一接着層用塗工液の調製)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートジオール251.9g、イソホロンジイソシアネート100gを仕込み、窒素雰囲気下、110℃で7時間反応させ、プレポリマーを合成した。反応終了後、反応液を30℃付近まで冷却し、THF1515gに溶解させ、次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン23.6gを滴下し、25℃で1時間反応させた。その後さらに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン7.7gを滴下し、25℃で1時間反応させることにより、ウレタン系樹脂のTHF溶液を得た。ここに、下記フォトクロミック化合物(PC1)11.5g、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物40g、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]4g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.6gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、第一接着層用塗工液を得た。この第一接着層用塗工液に含まれるポリウレタン樹脂は、軟化点が105℃であった。
【0123】
(第二接着層用塗工液の調製)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、数平均分子量1000のポリカーボネートジオール220g、イソホロンジイソシアネート100gを仕込み、窒素雰囲気下、110℃で7時間反応させ、プレポリマーを合成した。反応終了後、反応液を30℃付近まで冷却し、プロピレングリコール−モノメチルエーテル1550gに溶解させ、次いで、鎖延長剤であるイソホロンジアミン36gを滴下し、25℃で1時間反応させた。その後さらに、n−ブチルアミン2gを滴下し、25℃で1時間反応させることにより、ウレタン系樹脂のプロピレングリコール−モノメチルエーテル溶液を得た。ここに、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 2.0gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、第二接着層用塗工液を得た。この第二接着層用塗工液に含まれるポリウレタン樹脂は、軟化点が150℃であった。
【0124】
(プライマー組成物の調製)
第一工業製薬株式会社製のウレタン樹脂水分散体;スーパーフレックス420 100g、プロピレングリコールモノメチルエーテル 110g、t−ブタノール 200g、水 300g及びシリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「L−7001」) 0.2gを混合し、1時間室温にて撹拌し、プライマー組成物を得た。
【0125】
(ハードコート組成物の調製)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン104.0g、テトラエトキシシラン41.0g、t−ブチルアルコール100.0g、アセチルアセトン22.5g、メタノール75.8g、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル17.0g、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「L−7001」 0.5gを混合した。この液を十分に撹拌しながら、水45.0gとスノーテックスO−40 90.0gの混合物を添加し、添加終了後から20時間撹拌を継続した。次いで、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III) 4.2gを混合し、1時間撹拌させてハードコート組成物を得た。
【0126】
実施例1
コーター(テスター産業製)を用いて、第一接着層用塗工液を、50μmのOPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)上に塗工速度0.3m/minで塗工し、乾燥温度100℃で5分間乾燥させた後、第一接着層側を厚み400μmのポリカーボネートシート(反対側にオレフィン系の保護フィルム付き)上に配置し、ラミネートロールで張り合わせた。第一接着層の厚みは40μmであった。
【0127】
次いで、上記方法で準備したポリカーボネートシート/第一接着層/OPPフィルムがこの順で積層されたものからOPPフィルムを剥離した構造体と、厚み400μmのポリカーボネートシート単体(片面にオレフィン系の保護フィルム付き)とを、第一接着層とポリカーボネートシート単体とが接合するように、ラミネートロールに通して圧接した。
次いで、得られた積層シートを40℃、真空下(500Pa)で12時間静置(脱気工程)した後、110℃で1時間加熱処理(加熱工程)し、次いで60℃、80%RHで20時間の加湿処理(加湿工程)を行い、最後に80℃、真空下(500Pa)で5時間静置(乾燥工程)することにより、目的のフォトクロミック積層シートを得た。得られたフォトクロミック積層シートは、外観の評価結果がA、剥離強度は初期140N/25mm、煮沸試験後が110N/25mmであり、またフォトクロミック特性に関しては最大吸収波長585nm、発色濃度1.0、退色速度45秒、耐久性93%であり、ハードコート密着性は初期が100で、煮沸試験5時間まで密着性を保持した。外観、剥離強度、フォトクロミック特性、及びハードコート密着性の評価は、以下の方法により実施した。
【0128】
〔評価方法〕
(外観)
得られたフォトクロミック積層シートに、気泡が存在するかどうかを目視にて確認した。評価は、フォトクロミック積層シート10cm×10cmのサイズあたりに、気泡が0個の場合にはA、1〜2個存在する場合にはB、3個以上存在する場合にはCとした。
【0129】
(剥離強度)
得られたフォトクロミック積層シートを、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験機(オートグラフAGS−500NX、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、それぞれ下記1)、及び2)の剥離強度を測定した。
1)初期の剥離強度は、上記の通り試験を実施した。
2)煮沸試験後の剥離強度は、上記にサイズに切り出した試験片を、沸騰した蒸留水中に1時間浸漬させた後、上記のようにして測定した。
【0130】
(フォトクロミック特性)
得られたフォトクロミック積層シートを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層シート表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2、245nm=24μW/cm
2で120秒間照射して発色させ、フォトクロミック積層シートのフォトクロミック特性を測定した。
【0131】
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0132】
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0133】
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0134】
4)耐久性(%)=〔(A96/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層シートをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により96時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A96)を測定し、〔(A96)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0135】
(ハードコート層密着性)
得られたフォトクロミック積層シートをメタノールで十分に脱脂し、プライマー組成物を、ディップコーティングし、80℃で10分間乾燥させることにより、0.5μmの膜厚を有するプライマーコート層を形成した。このフォトクロミック積層シートを室温まで冷却した後、ハードコート組成物を、ディップコーティングし、110℃で2時間硬化させることにより、0.5μmの膜厚を有するプライマーコート層と2μmの膜厚を有するハードコート層からなるフォトクロミック積層シートを得た。
【0136】
次いで、プライマーコート層及びハードコート層のフォトクロミック積層シートに対する密着性をJISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって評価した。即ち、カッターナイフを使い、ハードコート層表面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、ハードコート層が残っているマス目を測定した。評価結果は、(残っているマス目数)/100で表した。
【0137】
(ハードコート層煮沸密着性)
沸騰した蒸留水中に、試験片であるプライマーコート層及びハードコート層を塗布した積層シートを1時間毎に浸漬した後、該フォトクロミック積層シートを取り出し、水滴を拭き取り、室温で1時間放置した後に、前記密着性と同様にして密着性を評価した。密着性を保持しているフォトクロミック積層シートに関しては、煮沸時間が合計5時間になるまで試験を実施した。評価結果は、ハードコート層の密着性が98/100以上保持している時間で表した。
【0138】
実施例2
コーター(テスター産業製)を用いて、ポリカーボネートシート(片面にオレフィン系の保護フィルム付き)上に第二接着層を作製した。第二接着層用塗工液を厚み400μmのポリカーボネートシート上に、塗工速度0.5m/minで塗工し、乾燥温度110℃で3分間乾燥させることにより、膜厚5μmの第二接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
【0139】
第一接着層用塗工液を、50μmのOPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)上に塗工速度0.3m/minで塗工し、乾燥温度100℃で5分間乾燥させた後、第一接着層側を第二接着層を有するポリカーボネートシートの第二接着層上に配置し、ラミネートロールを用いて張り合わせた。第一接着層の厚みは40μmであった。
【0140】
次いで、上記方法で準備したポリカーボネートシート/第二接着層/第一接着層/OPPフィルムがこの順で積層されたものからOPPフィルムを剥離した構造体と、第二接着層を有するポリカーボネートシートとを、第一接着層とポリカーボネートシート上の第二接着層とが接合するように、ラミネートロールを用いて圧接した。次いで、得られた積層シートを40℃、真空下(500Pa)で12時間静置(脱気工程)した後、110℃で1時間加熱処理(加熱工程)し、次いで60℃、80%RHで20時間の加湿処理(加湿工程)を行い、最後に80℃、真空下(500Pa)で5時間静置(乾燥工程)することにより、目的のフォトクロミック積層シートを得た。その後、実施例1と同様の方法で評価を行った。その結果を、表2に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
比較例1
表1に示す後処理条件を採用した以外は、実施例1と同様の方法でフォトクロミック積層シートを作製した。その結果を、表2に示す。
【0144】
実施例7、8、11、14、参考例1〜8、比較例2〜6
表1に示す後処理条件を採用した以外は、実施例2と同様の方法でフォトクロミック積層シートを作製した。その結果を、表2に示す。
【0145】
上記実施例1、2、7、8、11、14、参考例1〜8から明らかなように、フォトクロミック積層シートを製造する際に、本発明の製造条件を満たすように製造した場合には、得られるフォトクロミック積層シートが優れた外観、接着性、フォトクロミック特性、及びハードコート層密着性を有していることが分かる。
【0146】
一方、比較例1〜6に示すように、フォトクロミック積層シートを製造する際の製造条件が適当でない場合、例えば比較例1のように後処理工程における温度が80℃以上の時間が26時間の場合には、得られるフォトクロミック積層シートのハードコート密着性が不十分であった。比較例2〜6においても、剥離強度、またはハードコート密着性の少なくともいずれかが不十分であった。