特許第6559547号(P6559547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65595472つの調整モードを含む人間工学に基づいたマイクロメータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6559547
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】2つの調整モードを含む人間工学に基づいたマイクロメータ
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/18 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   G01B3/18 102
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-221039(P2015-221039)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-114595(P2016-114595A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】14/568,947
(32)【優先日】2014年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】キム ウェズレイ アサートン
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−9001(JP,A)
【文献】 特開2007−304052(JP,A)
【文献】 特開平7−103748(JP,A)
【文献】 実開昭59−97402(JP,U)
【文献】 国際公開第97/12507(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/305858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビルを含むフレームと、
スピンドル軸に沿って前記フレーム及び前記アンビルに対して移動可能であり、X軸方向と平行に移動するように案内されるスピンドルと、
前記X軸方向と平行な軸を有し、前記X軸方向に沿った動きに関して、前記スピンドルと共に移動するように連結されるねじ要素と、
前記X軸方向と平行な回転軸を有するシンブルと、
回転に関して、前記シンブルを前記ねじ要素に連結する回転式連結構成と、
前記アンビル又は前記フレームに対する前記スピンドルの位置を決定するために使用可能な位置インジケータと、
を含み、
前記回転式連結構成は、回転に関しては、前記シンブル及び前記ねじ要素を、一緒に移動するように拘束するが、前記X軸方向に沿った動きに関しては、前記ねじ要素の前記シンブルに対する位置は拘束しない、マイクロメータであって、
前記マイクロメータは更に、
前記X軸方向に直角な歯車軸の周りを回転するように、前記フレーム内に配置され、前記歯車軸から離れた円弧に沿って配置された歯車歯を含む第1の歯付き要素を少なくとも含む歯付き要素構成を含み、前記歯車歯は、前記ねじ要素のねじ山とかみ合い、前記X軸方向に沿って前記ねじ山上を転がるように形成され、
前記マイクロメータは更に、
前記マイクロメータのクイック調整状態を提供するために、前記歯付き要素構成の前記第1の歯付き要素が、前記ねじ要素の前記ねじ山とかみ合いながら、前記第1の歯付き要素の前記歯車軸の周りを回転することによって、前記ねじ要素を駆動することを可能にするようにロック解除されるように構成され、また、前記マイクロメータの微調整状態を提供するために、ナットを通るねじシャフトの如く前記ロックされたロック可能な歯付き要素の前記かみ合った歯を介して前記ねじ要素の前記ねじ山が前進するように前記ねじ要素が回転される場合を除き、前記ねじ要素の前記フレームに対する前記X軸方向に沿った動きを阻止するように、前記ねじ要素の前記ねじ山とかみ合った歯を有する、前記歯付き要素構成のロック可能な歯付き要素を固定するようにロックされるように構成されるロック構成を含み、
前記スピンドルは、前記クイック調整状態中は、前記第1の歯付き要素を前記歯車軸の周りを回転させて前記ねじ要素を駆動することによって、前進及び後退させられ、前記スピンドルは、前記微調整状態中は、前記ロックされたロック可能な歯付き要素の前記かみ合った歯を介して、前記シンブルを、前記ねじ要素の前記ねじ山にねじ込むように、回転させることによって前進及び後退させられる、マイクロメータ。
【請求項2】
前記回転式連結構成は、
前記シンブル及び前記ねじ要素のうちの一方に連結され、第1の嵌合回転拘束機構を含む穴横断面を有する穴又はボアを含む中心開口部を含むメス型回転式駆動部と、
前記シンブル及び前記ねじ要素のうちのもう一方に連結され、前記メス型回転式駆動部の前記中心開口部内又はその中を摺動するシャフトを含むオス型回転式駆動部と、
を含み、
前記シャフトは、前記第1の嵌合回転拘束機構と第2の嵌合回転拘束機構とが必ず一緒に回転するように前記第1の嵌合回転拘束機構と連動するように構成され、また、前記X軸方向に沿って前記第1の嵌合回転拘束機構に沿って又はその中を摺動するように構成された前記第2の嵌合回転拘束機構を含む、請求項1に記載のマイクロメータ。
【請求項3】
前記シャフトは、前記マイクロメータの最大測定範囲と少なくとも同じ大きさの前記X軸方向に沿った寸法を有する、請求項2に記載のマイクロメータ。
【請求項4】
前記オス型回転式駆動部は、前記シンブルに連結され、前記ねじ要素は、前記シャフトが、前記ねじ要素の内部を通過することを可能にする中空部を有する、請求項3に記載のマイクロメータ。
【請求項5】
前記第2の嵌合回転拘束機構は、前記マイクロメータの前記最大測定範囲と少なくとも同じ大きさの前記X軸方向に沿った寸法に亘って、前記シャフトに沿って延在し、前記メス型回転式駆動部は、前記ねじ要素に取り付けられたハブを含む、請求項4に記載のマイクロメータ。
【請求項6】
前記シンブルに連結される前記オス型回転式駆動部又は前記メス型回転式駆動部は、トルク制限クラッチ構成を介して連結される、請求項2に記載のマイクロメータ。
【請求項7】
前記メス型回転式駆動部は、前記第1の嵌合回転拘束機構を前記ねじ要素内のボアに形成することによって、前記ねじ要素に形成される、請求項2に記載のマイクロメータ。
【請求項8】
前記ロック可能な歯付き要素と前記第1の歯付き要素とは、同じ要素である、請求項1に記載のマイクロメータ。
【請求項9】
前記位置インジケータは、電子リニア位置センサを含む、請求項1に記載のマイクロメータ。
【請求項10】
前記電子リニア位置センサは、前記フレームに対して固定される部分と、前記X軸方向に沿った動きに関して、前記スピンドルと共に移動するように連結される部分とを含む、請求項9に記載のマイクロメータ。
【請求項11】
前記ロック構成は、前記クイック調整状態を提供するロック解除位置と、前記微調整状態を提供するロック位置との間で移動するように、ユーザによって操作されるボタン、スライド及びレバーのうちの1つを含む、請求項1に記載のマイクロメータ。
【請求項12】
前記ロック構成は、前記ユーザが前記ボタン、前記スライド又は前記レバーを前記ロック位置に移動させると、前記ロック可能な歯付き要素を、回転に対して摩擦ロックする表面に対して押し付けられるテーパ要素を含む、請求項11に記載のマイクロメータ。
【請求項13】
前記第1の歯付き要素に連結されるクイック駆動要素を更に含み、前記クイック駆動要素は、前記クイック調整状態中に、前記第1の歯付き要素を前記歯車軸の周りを回転させて前記ねじ要素を駆動するように、ユーザによって操作されるように構成される、請求項1に記載のマイクロメータ。
【請求項14】
前記クイック駆動要素は、トルク制限クラッチを介して、前記第1の歯付き要素に連結される、請求項13に記載のマイクロメータ。
【請求項15】
前記第1の歯付き要素は、第1の円形歯車を含み、前記クイック駆動要素は、前記ユーザの指、即ち、親指で回転するためにアクセス可能なホイールを含む、請求項13に記載のマイクロメータ。
【請求項16】
前記クイック駆動要素は、第2の円形歯車を介して、前記第1の歯付き要素に連結される、請求項15に記載のマイクロメータ。
【請求項17】
前記ロック構成は、前記第1の歯付き要素に連結される自動ロック機構を含み、前記自動ロック機構は、前記クイック調整状態中に、スピンドル閉鎖力が前記クイック駆動要素を介してユーザによって加えられ、該スピンドル閉鎖力が前記スピンドルを前記アンビルに向けて移動させるように、前記自動ロック機構を介して、前記第1の歯付き要素に伝達され、そして、前記スピンドルが、前記閉鎖力に対抗するように、前記第1の歯付き要素を介して伝達し返される反力を生じる物体に接触すると、前記ロック位置となるように構成され、また、前記自動ロック機構は、前記自動ロック機構の変形状態を提供するように、相対する前記閉鎖力と前記反力とによって変形される可撓性要素を含み、これにより、前記自動ロック機構は、前記微調整状態を提供する前記ロック位置になる、請求項15に記載のマイクロメータ。
【請求項18】
前記ロック構成は更に、前記自動ロック機構を解放し、前記自動ロック機構を、前記クイック調整状態を提供する前記ロック解除位置に戻すように、ユーザによって操作される解放要素を含む、請求項17に記載のマイクロメータ。
【請求項19】
前記解放要素は、前記クイック駆動要素を含み、前記自動ロック機構は、前記微調整状態中に、前記ユーザによって、スピンドル開離力が、前記クイック駆動要素に加えられると、前記スピンドル開離力が前記自動ロック機構を前記ロック解除位置に戻すように前記自動ロック機構に伝達されるように構成される、請求項18に記載のマイクロメータ。
【請求項20】
前記スピンドルが回転しないようにするスピンドル回転防止構成と、
前記非回転スピンドルの連結部に連結される第1の部分と、前記ねじ要素の連結部に連結される第2の部分とを有する回転式軸受連結器と、
を含み、
前記第1の部分及び前記第2の部分のうちの少なくとも一方は、前記ねじ要素が回転することを可能にしながら、前記スピンドル及び前記ねじ要素を前記X軸方向に沿って固定の間隔において保持するように予荷重が加えられた回転軸受を介して、対応する連結部又は互いに連結される、請求項1に記載のマイクロメータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、手持ち型マイクロメータ、より具体的には、2つの調整モードを有する手持ち型マイクロメータに関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち型機構を使用してワークの高精度測定を行う様々なマイクロメータデバイスが、当技術分野において知られている。例えば米国特許第1,132,704号、同第3,849,890号、同第4,485,556号、同第4,561,185号及び同第8,091,251号(本明細書ではそれぞれ、第‘704号特許、第‘890号特許、第‘556号特許、第‘185号特許及び第‘251号特許と呼ぶ)に、マイクロメータデバイスが開示されている。各特許は、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。特に米国特許第5,495,677号(第‘677号特許)に開示されるような最新式マイクロメータは、回転式位置検知デバイスと組み合わされたマイクロメータの精密なねじ山に依存することなく、測定値を求めるリニアデジタルセンサを含む。リニアデジタルセンサを用いることで、マイクロメータを駆動するために、非常に精密な駆動又は微細ピッチねじ山を使用する必要がなくなる。例えば第‘677号特許は、非常に粗い駆動ねじ山を使用し、第‘251号特許は、駆動ねじ山を使用しない既知のばね荷重ゲージデザインの特徴を真似ている。
【0003】
上記のマイクロメータデザインは、マイクロメータを素早く調整することを可能にする。しかし、これらのデザインは、従来のファインピッチねじ山駆動マイクロメータにおいて望ましい幾つかの特徴を欠いている。例えば従来のファインピッチねじ山駆動マイクロメータは、非常に微細な調整を制御するための優れた人間工学的要素及び感触を可能にする。人間工学的要素及び感触の1つの特徴は、当該マイクロメータは、片手で持って操作できる一方で、もう片手は、自由にワークを保持できる点である。1つの一般的な技術では、マイクロメータフレームは、親指及び人差し指以外の2又は3本の指で握られ又は2又は3本の指に引っ掛けられ、親指及び人差し指は伸ばされて、シンブルを回すために使用される。ファインピッチのねじ山は、この位置での調整の優れた制御及び安定性を可能にする一方で、上記の「素早く調整できるマイクロメータ」のデザインの多くは、その制御及び/又は安定性の信頼性では劣っている。ファインピッチねじ山駆動マイクロメータに関連する人間工学的要素及び感触のもう1つの特徴は、スピンドル位置の固有の剛性及び/又は安定性であり、これによって、ユーザは、測定間隙においてワークを少し引いたり又は移動させたりして、当該測定間隙におけるワークの引いた量又は「遊び」量を検知することによって、ワーク表面に掛かる測定力又は接触量を検出又は調整することができる。このようにすると、ユーザは、大抵の場合、意識的又は無意識的に、微妙な動きと触覚のフィードバックを使用して、測定設定に自信を持つことができる。しかし、上記「クイック調整マイクロメータ」デザインの多くは、この点についても、幾分、剛性、制御及び/又は安定性が幾分劣っている。
【0004】
米国特許第809,272号に、スプリットナット内のファインピッチねじ山を使用して1つの従来モードで調整可能なクイック調整マイクロメータが開示されている。スプリットナットのセクションは、変形可能なアーム上に担持されるか又は形成される。この変形可能なアームは、ナットがファインピッチねじ山から外れるように半径方向に歪み、又は開き、これにより、摺動「クイック調整」モードが可能となる。このモードでは、ねじ山は、開いたスプリットナットを介して軸方向に摺動して、スピンドルを素早く動かす。しかし、このようなデザインは、クイックモードにおける調整制御は不十分である。また、その測定位置は、スプリットナットが、部分的に軸方向に位置ずれしたねじ山上に係止されるとずれる。更に、スプリットナットとねじ山との間の距離間隔が可変であることにより、マイクロメータは、精密ねじ山が互いに摺動することにより剥離及び摩耗の影響を受ける可能性があるので、ユーザは、操作時に、非常に注意を払わなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ユーザに、人間工学に基づいており、迅速で、使い勝手の良い機能を提供するためには、スピンドルを所望の位置に素早く駆動するために使用でき、また、容易に操作可能で安定した高剛性の微調整モード及び他の所望の特徴も提供するマイクロメータが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の概要は、以下の詳細な説明において更に説明される簡略化された形式の幾つかの概念の抜粋を紹介するために提供される。この概要は、請求項に係る主題の重要な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求項に係る主題の範囲を決定する助けとして使用されることも意図していない。
【0007】
本明細書において、人間工学的に好ましい構成を有する、2つの代替調整モードを提供する手持ち型マイクロメータ用のマイクロメータ駆動構成が開示される。微調整モードは、望ましいレベルの係合剛性及び/又は測定の「感触」を提供する一方で、クイック調整モードは、ユーザ側での限られた動き及び/又は時間で、スピンドルを所望の位置に素早く駆動する機能を提供する。様々な実施形態において、マイクロメータは、いずれのモードに入っても入らなくてもよく、また、測定調整がいずれのモードにおいても、ユーザのマイクロメータの握りを著しく変えることなく、片手で行うことができるように構成されている。様々な実施形態において、本明細書に開示される原理によるマイクロメータは、アンビルを含むフレームと、スピンドル軸に沿ってフレーム及びアンビルに対して移動可能であり、X軸方向と平行に移動するように案内されるスピンドルと、X軸方向と平行な軸を有し、X軸方向に沿った動きに関して、スピンドルと共に移動するように連結されるねじ要素と、X軸方向と平行な回転軸を有するシンブルと、回転に関して、シンブルをねじ要素に連結する回転式連結構成と、アンビル又はフレームに対するスピンドルの位置を決定するために使用可能な位置インジケータとを含む。回転式連結構成は、回転に関しては、シンブル及びねじ要素を、一緒に移動するように拘束するようにデザインされるが、X軸方向に沿った動きに関しては、ねじ要素のシンブルに対する位置は拘束しない。例えばスプラインシャフト及びスプラインナット又はハブは、この説明に当てはまる回転式連結構成の一例である。しかし、この例は、限定ではない。上記機能説明に当てはまる他の回転式連結構成を使用してもよい。
【0008】
マイクロメータは更に、X軸方向に直角な歯車軸の周りを回転するように、フレーム内に配置され、歯車軸から離れた円弧に沿って配置された歯車歯を含む第1の歯付き要素を少なくとも含む歯付き要素構成を含み、歯車歯は、ねじ要素のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿ってねじ山上を転がるように形成される。マイクロメータは更に、ロック構成を含む。このロック構成は、マイクロメータのクイック調整状態を提供するために、歯付き要素構成の第1の歯付き要素が、ねじ要素のねじ山とかみ合いながら、第1の歯付き要素の歯車軸の周りを回転することによって、ねじ要素を駆動することを可能にするようにロック解除されるように構成される。また、このロック構成は、マイクロメータの微調整状態を提供するために、ナットを通るねじシャフトの如くロックされたロック可能な歯付き要素のかみ合った歯を介してねじ要素のねじ山が前進するようにねじ要素が回転される場合を除いて、ねじ要素のフレームに対するX軸方向に沿った動きを阻止するように、ねじ要素のねじ山とかみ合った歯を有する、歯付き要素構成のロック可能な歯付き要素を固定するようにロックされるように構成される。スピンドルは、クイック調整状態中は、第1の歯付き要素を歯車軸の周りを回転させてねじ要素を駆動することによって、前進及び後退させられ、スピンドルは、微調整状態中は、ロックされたロック可能な歯付き要素のかみ合った歯を介して、シンブルを、ねじ要素のねじ山にねじ込むように、回転させることによって前進及び後退させられる。幾つかの実施形態では、ロック可能な歯付き要素と第1の歯付き要素とは同じ要素である。
【0009】
様々な実施形態において、回転式連結構成は、シンブル及びねじ要素のうちの一方に連結され、第1の嵌合回転拘束機構を含む穴横断面を有する穴又はボアを含む中心開口部を含むメス型回転式駆動部と、シンブル及びねじ要素のうちのもう一方に連結され、メス型回転式駆動部の中心開口部内又はその中を摺動するシャフトを含むオス型回転式駆動部とを含む。シャフトは、第1の嵌合回転拘束機構と第2の嵌合回転拘束機構とが必ず一緒に回転するように第1の嵌合回転拘束機構と連動するように構成され、また、X軸方向に沿って第1の嵌合回転拘束機構に沿って又はその中を摺動するように構成された第2の嵌合回転拘束機構を含む。様々な実施形態において、ねじ要素は、シャフトが、ねじ要素の内部を通過することを可能にする中空部を有する。少なくとも1つの実施形態において、シャフトは、スプラインシャフトを含み、メス型要素は、ねじ要素に固定されるスプラインハブ又はナットを含んでもよい。
【0010】
幾つかの実施形態では、シンブルに連結されるオス又はメス型回転式駆動部は、トルク制限クラッチ構成を介して連結される。
【0011】
様々な実施形態において、位置インジケータは、電子リニア位置センサを含む。幾つかの実施形態では、電子リニア位置センサは、フレームに対して固定される部分と、X軸方向に沿った動きに関して、スピンドルと共に移動するように連結される部分とを含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、クイック駆動要素が、第1の歯付き要素に連結され、クイック駆動要素は、クイック調整状態中に、第1の歯付き要素を歯車軸の周りを回転させてねじ要素を駆動するように、ユーザによって操作されるように構成される。幾つかの実施形態では、クイック駆動要素は、トルク制限クラッチを介して、第1の歯付き要素に連結される。幾つかの実施形態では、第1の歯付き要素は、第1の円形歯車を含み、クイック駆動要素は、ユーザの指、即ち、親指で回転するためにアクセス可能なホイールを含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、ロック構成は、クイック調整状態を提供するロック解除位置と、微調整状態を提供するロック位置との間で移動するように、ユーザによって操作されるボタン、スライド及びレバーのうちの1つを含む。
【0014】
幾つかの実施形態では、ロック構成は、第1の歯付き要素に連結される自動ロック機構を含み、自動ロック機構は、クイック調整状態中に、スピンドル閉鎖力が、クイック駆動要素を介してユーザによって加えられ、また、スピンドルをアンビルに向けて移動させるように、自動ロック機構を介して、第1の歯付き要素に伝達され、また、スピンドルが、閉鎖力に対抗するように、第1の歯付き要素を介して戻るように伝達される反力を提供する物体に接触すると、ロック位置となるように構成される。幾つかの実施形態では、自動ロック機構は、自動ロック機構の変形状態を提供するように、相対する閉鎖力と反力とによって変形される可撓性要素を含み、これにより、自動ロック機構は、微調整状態を提供するロック位置になる。幾つかの実施形態では、ロック構成は更に、自動ロック機構を解放し、自動ロック機構を、クイック調整状態を提供するロック解除位置に戻すように、ユーザによって操作される解放要素を含んでもよい。
【0015】
幾つかの実施形態では、マイクロメータは、スピンドルが回転しないようにするスピンドル回転防止構成と、非回転スピンドルの連結部に連結される第1の部分と、ねじ要素の連結部に連結される第2の部分とを有する回転式軸受連結器とを含み、第1の部分及び第2の部分のうちの少なくとも一方は、ねじ要素が回転することを可能にしながら、スピンドル及びねじ要素をX軸方向に沿って固定の間隔において保持するように予荷重が加えられた回転軸受を介して、対応する連結部又は互いに連結される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の上記態様及び付随する利点の多くは、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってそれらがより深く理解されるにつれて、より容易に認識できるであろう。
【0017】
図1図1は、本明細書に開示される原理に従って構成されたマイクロメータの第1の実施形態の関連態様を含む断面図である。
図2図2は、本明細書に開示される原理に従って構成されたマイクロメータの第2の実施形態の関連態様を含む断面図である。
図3A図3Aは、本明細書に開示される原理に従って、マイクロメータシンブルをねじ要素に連結する回転式連結構成の一つの代替実施形態を示す断面図及び横断面を含む。
図3B図3Bは、本明細書に開示される原理に従って、マイクロメータシンブルをねじ要素に連結する回転式連結構成の一つの代替実施形態を示す断面図及び横断面を含む。
図3C図3Cは、本明細書に開示される原理に従って、マイクロメータシンブルをねじ要素に連結する回転式連結構成の一つの代替実施形態を示す断面図及び横断面を含む。
図3D図3Dは、本明細書に開示される原理に従って、マイクロメータシンブルをねじ要素に連結する回転式連結構成の一つの代替実施形態を示す断面図及び横断面を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本明細書に開示される原理に従って構成されたマイクロメータの第1の実施形態の関連態様を含む断面図である。電子デジタルマイクロメータの多くの従来の特徴に適用できるデザイン及び製造代替案は、多数の特許及び市販デバイスにおいて具現化されているように、当業者には知られている。したがって、センサ、回路、デジタルディスプレイ、カバー及び操作ボタン等に関する詳細は、本明細書における新規の態様をより明確に示すために、図1の断面図からは省略されている。しかし、当然ながら、このような省略された特徴は、要望に応じて、マイクロメータの様々な実施形態に含められてもよい。例えば図1又は図2のマイクロメータは、本発明の譲受人に譲渡された第‘677号特許及び/若しくは本明細書に組み込まれた若しくは本明細書において引用された他の参考文献の要素、又は、当技術分野において知られている他の要素及び技術を、当該要素及び技術が本明細書に開示される様々な原理と両立しうる限りにおいて、組み込んでもよい。当然ながら、図1及び図2は、説明された要素のうちの幾つかの部分的に概略的な表現を含む。
【0019】
図1は、メインフレーム2を有するデジタルマイクロメータゲージ1を示す。メインフレーム2の前面には、電池と、概略的に示される接続部9を介して位置センサ7の読取りヘッド7Aに接続される電子機器とを収容する箱型の防水/防塵構造体を形成するように、カバー部材(図示せず)が設けられてもよい。デジタルディスプレイ及び複数の操作スイッチ(図示せず)が、カバー部材に設けられ、電子機器に接続されうる。電子機器は、CPU等(図示せず)といった従来の回路及び処理部を含みうる。位置センサ7は、例えば容量型若しくは誘導型エンコーダ、又は、米国特許第5,026,164号に開示されるような光電子型エンコーダ等に見られるように、その位置を決定するために、読取りヘッド7Aによって検知されるスケール7Bを使用する。
【0020】
スピンドル3は、メインフレーム2から前進する及びメインフレーム2内へと後退するように適応されている。メインフレーム2のU字形部分4には、本明細書においてX軸方向とも呼ぶ測定軸方向に沿って測定範囲MRに広がる開口が画成されている。アンビル5が、図1において見られるように、開口の一端に配置される。開口のもう一端において、スピンドル3が、スリーブ又は軸受部8内で支持され、スピンドル3が軸方向に移動できるように案内される。スピンドル3の露出端は、(例えばスピンドルのゼロ測定位置において)アンビル5に当接するように適応されている。スピンドル3のもう一端は、ねじ要素12に連結されている。
【0021】
幾つかの実施形態では、スピンドル3は、以下に、より詳細に説明されるように、回転式軸受連結器11を介して、ねじ要素12に連結される非回転式スピンドルである。図示される非回転式実施形態では、スピンドルは、スピンドル回転防止構成10によって拘束されている。スピンドル回転防止構成10は、ショルダ又は溝10Bに沿って摺動するスピンドルのピン10Aを含む。より一般的には、任意の使用可能な回転防止構成を使用してもよい。図1は更に、取付け要素6を介して、非回転式スピンドル3と共に移動するように取り付けられるスケール7Bも示している。他の実施形態では、スピンドルが、回転し、ねじ要素12に堅く連結されていてもよい。ただし、その回転式スピンドルの測定位置が決定できるように、それに応じた位置センサ及び/又は取付け構成が、図示されたものと置換される。いずれの場合にも、ねじ要素12は、X軸方向に沿った動きに対してスピンドル3と共に移動するように連結される。
【0022】
図1は更に、X軸方向と平行な回転軸を有するシンブル16を示す。シンブル16は、円周方向に回転可能であるように内側スリーブ18の外周面にフィットする。内側スリーブ18の一端は、メインフレーム2に固定される。内側スリーブ18は、中空部19を含み、当該中空部19内に、ねじ要素12が、その付属コンポーネントと共に引き込められうる。回転式連結構成14が、回転に関して、シンブル16をねじ要素12に連結する。具体的には、回転式連結構成14は、回転に関しては、シンブル及びねじ要素を、一緒に動くように拘束するようにデザインされているが、X軸方向に沿った動きに関しては、ねじ要素のシンブルに対する位置は拘束しない。これは、上記され、また、以下に、より詳細に説明されるように、マイクロメータ1が、2つの調整モードを提供できるようにする特徴の組み合わせの1つの態様である。
【0023】
図1に示される実施形態では、回転式連結構成14は、嵌合スプラインシャフト14Aとスプラインナット又はハブ14A’とを含み、それぞれ、スプライン駆動要素について知られているように、回転に関して互いをロックする嵌合界接面を含む。スプラインシャフト14Aは、シンブル16と共に回転するように連結される。図1に示される実施形態では、スプラインハブ14A’は、ねじ要素12を回転させながら駆動するようにねじ要素12に連結される一方で、スプライン駆動要素について知られているように、スプラインシャフト14Aに沿って自由に摺動できる。スプラインハブ14A’は更に、ねじ要素12及びその付属コンポーネントのための内側スリーブ18の中空部19内の滑り軸受及びガイドとして機能を果たしてもよい。様々な実施形態において、ねじ要素12は中空部12Aを有してもよく、これにより、ねじ要素12は、干渉されることなく、スプラインシャフト14A上に引き込まれる。当然ながら、回転式連結構成の上記例は、例示に過ぎず、限定ではない。上記機能の説明において要点が述べられた、及び/又は、そうでなければ本明細書において開示されまた請求項に記載された原理に従って動作する他の回転式連結構成を使用してもよい。例えば多くの他の可能な回転式連結構成の例のうちの幾つかは、図3A乃至図3Dを参照して、以下に説明される。
【0024】
図1に示される実施形態では、スプラインシャフト14Aは、エンドキャップ17を介して、シンブル16に連結される。一実施形態では、エンドキャップ17及び/又はシンブル16は、図1に概略的に示されるトルク制限クラッチ20を含んでもよい。このトルク制限クラッチ20は、シンブル16を使用してスプラインシャフト14Aに印加されうるトルクが制限されるように、エンドキャップ17を、スプラインシャフト14A及び/又はシンブル16に連結する。これは、マイクロメータ部品に過剰な応力がかかることを回避すること、若しくは、シンブルを使用してマイクロメータを閉じる際に予測可能な測定力を提供すること、又は、これらの両方に役立つ。トルク制限クラッチ20の概略的な説明は、例示に過ぎず、限定ではない。例えば本明細書に組み込まれている第‘677号特許に開示されているように、様々な使用可能なトルク制限クラッチデザインが、当技術分野において知られている。
【0025】
マイクロメータ1は更に、歯付き要素構成30を含む。図示される実施形態では、歯付き要素構成30は、メインフレーム2内に配置された単一の歯付き要素40を含む。歯付き要素40は、メインフレーム2に固定されるアクスル45を中心に、X軸方向に直角な歯車軸の周りを回転しうる。歯付き要素40は、クイック調整操作モード中に、ねじ要素12をX軸方向に沿って駆動するために、ねじ要素のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿ってねじ山上を「転がる」ように形成された歯車歯を含む。歯付き要素40は、図示される実施形態では、円形歯車であることが有利である。しかし、この例は限定ではない。例えば幾つかの代替実施形態では、歯車の「円弧セグメント」が使用されてもよい(しかし、このような実施形態は、様々なスピンドル位置におけるクイック調整モードと微調整モードとの切替えの幾つかの組み合わせ又は順番にはあまり操作し易くない)。したがって、より一般的には、様々な実施形態において、歯車軸から離れた円弧に沿って配置された歯車歯を含む歯付き要素が使用される。ただし、当該歯車歯は、ねじ要素のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿ってねじ山上を「転がる」ように形成される。
【0026】
当然ながら、上記されたようにかみ合うには、歯付き要素構成の歯車歯及び/又はねじ要素のねじ山は、相補的な複合形状を有するように形成されることが最も有利である。これにより、歯車歯がねじ山に衝突することが回避される一方で、歯車歯がねじ山上で回転し、「転がり」、ねじ山を駆動する各係合角における表面接触面積及び歯車の感触が最適化又は最大化される。このような形状は、既知の歯車デザイン方法に従って決定されてよい。
【0027】
マイクロメータ1は更に、ロック構成60を含む。図示される実施形態では、ロック構成60は、スロット62内で摺動するウェッジボタン61を含む。ウェッジボタン61は、1つの方向(例えばシンブル16から離れる方向)に押されると、アクスル65上に取り付けられる摩擦板63を歯付き要素40の外面42に対して押し付けて、歯付き要素40を回転しないように摩擦でロックし、マイクロメータの微調整状態又はモードを提供する。摩擦板63の目的は、ウェッジボタン61の動きが、歯付き要素40を回転させないようにする「固定」面又はバッファとしての機能を果たすことである。
【0028】
上記の説明から、本実施形態では、歯付き要素40は、ロック可能な歯付き要素として機能することが理解されよう。なお、歯付き要素40がこのようにロックされて、マイクロメータの微調整状態又はモードが提供される場合、その歯車歯は、ねじ要素12のねじ山とかみ合ったままであることは理解されよう。したがって、歯付き要素は、ナットを通るねじシャフトの如く「ロックされた」歯付き要素40のかみ合った歯を介してねじ要素のねじ山が前進するようにねじ要素が回転される場合を除いて、微調整モード中に、ねじ要素12のX軸方向に沿った動きを阻止する。
【0029】
反対に、ウェッジボタン61は、もう1つの方向(例えばシンブル16に向かう方向)に押されると、摩擦板63から外れ、摩擦板63を歯付き要素40の外面42との摩擦係合から解放し、歯付き要素40が自由に回転し、ねじ要素12をX軸方向に沿って駆動できるように歯付き要素40をロック解除し、上記マイクロメータのクイック調整状態又はモードを提供する。
【0030】
当然ながら、上記ロック構成60の図示された実施形態は例示に過ぎず、限定ではない。多数の代替実施形態及び/又は追加の特徴を、本明細書に開示される原理に係るロック構成に使用してもよい。より一般的には、幾つかの実施形態において、手動型のロック構成が、ボタン、スライド及びレバー等のうちの1つを含み、当該1つは、本明細書において説明されたクイック調整状態又はモードを提供するロック解除位置と、本明細書において説明された微調整状態又はモードを提供するロック位置との間を移動するように、ユーザによって操作される。
【0031】
幾つかの実施形態において、ロック構成は、第1の歯付き要素に連結される自動ロック型機構を含んでもよい。例えば自動ロック機構は、クイック調整状態中に、スピンドル閉鎖力がクイック駆動要素を介してユーザによって加えられ、そのスピンドル閉鎖力がスピンドルをアンビルに向けて動かすように、自動ロック機構を介して、第1の歯付き要素に伝達され、そして、スピンドルが、当該閉鎖力に対抗するように、第1の歯付き要素を介して伝達し返される反力を生じる物体に接触すると、ロック位置となるように構成される。幾つかの実施形態では、自動ロック機構は、当該自動ロック機構の変形状態を提供するように、相対する閉鎖力と反力との結果、変形する可撓性要素を含む。これにより、自動ロック機構は、微調整状態を提供するロック位置となる。このような自動ロック機構に使用可能な要素及び原理は、当技術分野において知られており、本明細書では詳細に説明する必要はない。例えば米国特許第8,322,246号、同第5,404,975号、同第2,905,021号、米国特許出願公開第2012/0111993号、及び、欧州特許第0478931号のいずれにおいても、上記されたように動作する歯車アセンブリ、戻り止め等を製造するために組合されうる要素及び原理(例えば歯車、シャフト、付勢ばね、戻り止め構成、歯止め等)が開示されている。幾つかの実施形態では、ロック構成は更に、自動ロック機構を解放し、当該自動ロック機構を、クイック調整状態を提供するロック解除位置に戻すように、ユーザによって操作される解放要素を含んでもよい。
【0032】
図1に示される実施形態では、歯付き要素40は、輪郭が破線で概略的に示されるクイック駆動要素80に連結されている。クイック駆動要素80は、クイック調整状態中に、歯付き要素40を歯車軸の周りを回転させてねじ要素12を駆動するように、ユーザによって操作されるように構成される。この特定の実施形態では、クイック駆動要素80は、ユーザの指、即ち、親指で回転するためにアクセス可能なホイールを含む。つまり、クイック駆動要素80のホイールは、カバー(図示せず)及びメインフレーム2の外側で、ユーザによる操作のために少なくとも部分的に露出されていることは理解されよう。幾つかの実施形態では、ユーザが、親指の指先をホイールの円周ゾーンにおいて円形に動かすことによって、どちらの方向においてもホイールを360度よりも多く連続的に回せるように、ホイールの表面全体が露出していてもよい。この場合、ホイールは、この親指の下で、連続的に旋回する。
【0033】
図1に示される特定の実施形態では、クイック駆動要素80は、メインフレーム2に固定されるアクスル55を中心に回転する中間歯車50を介して、歯付き要素40に連結される。中間歯車50は、クイック調整操作モード中に、ユーザ制御下で、ねじ要素12をX軸方向に沿って駆動するために、クイック駆動要素80が一体型の四角形ハブ52(輪郭が破線で示されている)上に取り付けられ、当該ハブ52を駆動して中間歯車50及び歯付き要素40が回るように、マイクロメータ1のカバー(図示せず)の孔又はシールを通り突き出る当該一体型の四角形ハブ52を含んでもよい。当然ながら、中間歯車50及び/又は他の連結要素(例えば追加又は代替の歯車、ベルト等)によって、クイック駆動要素80を歯付き要素40に対して特定の所望の人間工学的な場所に設置し、及び/又は、2つの要素間に所望の歯車比を提供することについて、幾らかの柔軟性が許容される。しかし、他の実施形態では、中間歯車50は省略されてもよく、その場合、歯付き要素40は、同様に駆動されるが、異なる場所に設置されたクイック駆動要素80の実施形態に直接連結される。したがって、クイック駆動要素80と歯付き要素40との説明される連結方法は、例示に過ぎず、限定ではないことは理解されよう。
【0034】
様々な実施形態において、クイック駆動要素80は、クイック駆動要素80を使用して歯付き要素40に印加されるトルクが制限されるように、トルク制限クラッチ21を介して、歯付き要素40に連結されてもよい。これは、マイクロメータ部品に過剰な応力がかかることを回避すること、若しくは、クイック駆動要素80を使用してマイクロメータを閉じる際に予測可能な測定力を提供すること、又は、これらの両方に役立つ。トルク制限クラッチ21の概略表現は、例示に過ぎず、限定ではない。当然ながら、このようなクラッチは、要望に応じて、中間歯車50ではなく、歯付き要素40に関連して提供されてもよい。例えば本明細書に組み込まれている第‘677号特許、又は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,878,889号若しくは同第5,000,721号に開示されているように、様々な使用可能なトルク制限クラッチデザインが、当技術分野において知られている。
【0035】
要約するに、マイクロメータ1における上記要素及び特徴の組み合わせの結果、回転式連結構成は、回転に関しては、シンブル及びねじ要素を、一緒に動くように拘束するが、X軸方向に沿った動きに関しては、ねじ要素のシンブルに対する位置は拘束しない。マイクロメータ1は、歯付き要素構成30を含む。当該歯付き要素構成30は、少なくとも、X軸方向に直角な歯車軸の周りを回転するようにメインフレーム2に配置され、歯車軸から離れた円弧に沿って配置された歯車歯を含む第1の歯付き要素40を含む。歯車歯は、ねじ要素12のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿って、ねじ山上を転がるように形成される。マイクロメータ1は、マイクロメータ1のクイック調整状態を提供するために、歯付き要素構成30の第1の歯付き要素40が、ねじ要素12のねじ山とかみ合いながら、その歯車軸の周りを回転することによって、ねじ要素12を駆動することを可能にするようにロック解除されるロック構成60を含む。ロック構成60は更に、マイクロメータ1の微調整状態を提供するために、ナットを通るねじシャフトの如くロックされたロック可能な歯付き要素40のかみ合った歯を介してねじ要素のねじ山が前進するように、ねじ要素が回転される場合を除いて、ねじ要素12のメインフレーム2に対するX軸方向に沿った動きを阻止するように、歯付き要素構成30の、ねじ要素12のねじ山とかみ合った歯を有するロック可能な歯付き要素40を固定するようにロックされる。したがって、ねじ要素12に連結されるスピンドル3は、クイック調整状態中は、第1の歯付き要素40をその歯車軸の周りを回転させてねじ要素12を駆動することによって、前進及び後退させられうる。また、スピンドルは、微調整状態中は、ロックされたロック可能な歯付き要素40のかみ合った歯を介して、シンブル16を、ねじ要素12のねじ山にねじ込むように、回転させることによって前進及び後退させられうる。
【0036】
図2は、本明細書に開示される原理に従って構成されたマイクロメータ1’の第2の実施形態の関連態様を含む断面図である。なお、マイクロメータ1’の要素の多くは、図1に示されたマイクロメータ1を参照して説明された要素に類似するか又は同一であることは理解されよう。多くの場合、図2においてXX’と番号付けられた要素は、図1においてXXと番号付けられた要素と類似した機能を提供し、また、類推によって理解されてよく、本明細書では、顕著な相違点のみが説明される。
【0037】
具体的には、マイクロメータ1’は、主に、歯付き要素構成30’に関して、マイクロメータ1とは異なる。歯付き要素構成30’は、図示される実施形態では、歯付き要素40’と別個のロック可能な歯付き要素70とを含み、メインフレーム2に配置されている。当然ながら、歯付き要素40’とロック可能な歯付き要素とは、互いにかみ合わない(例えば互いから間隔がある)。歯付き要素40と同様に、歯付き要素40’は、メインフレーム2に固定されているアクスル45’を中心に回転し、また、クイック調整操作モード中に、ねじ要素12をX軸方向に沿って駆動するために、ねじ要素12のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿ってねじ山上を「転がる」ように形成される歯車歯を含む。歯付き要素40’は、図示される実施形態では、円形歯車であることが有利である。
【0038】
マイクロメータ1’は更に、ロック構成60’を含む。本実施形態では、ロック構成60’は、歯付き要素40’を直接ロックするのではなく、ロック可能な歯付き要素70をロックする。ロック可能な歯付き要素70は、メインフレーム2に固定されたアクスル75を中心に回転し、また、ロック可能な歯付き要素70がロック構成60’によってロックされる場合を除き、ねじ要素12のX軸方向に沿った自由な動きを可能とするために、ねじ要素12のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿ってねじ山上を自由に「転がる」ように形成される歯車歯を含む。歯付き要素70も、図示される実施形態では、円形歯車であることが有利である。しかし、当然ながら、歯付き要素構成30’の本実施形態は、(例えば歯付き要素40を参照して説明されたように)例示に過ぎず、限定ではない。
【0039】
図示される実施形態では、ロック構成60’は、スロット62’内で摺動するウェッジボタン61’を含む。ウェッジボタン61’は、1つの方向(例えばシンブル16に向かう方向)に押されると、アクスル65’上に取り付けられる摩擦板63’をロック可能な歯付き70の外面72に押し付けて、ロック可能な歯付き要素70を回転しないように摩擦でロックし、マイクロメータの微調整状態又はモードを提供する。摩擦板63’の目的は、ウェッジボタン61’の動きが、ロック可能な歯付き要素70を回転させないようにする「固定」面又はバッファとしての機能を果たすことである。なお、ロック可能な歯付き要素70がこのようにロックされて、マイクロメータの微調整状態又はモードが提供される場合、その歯車歯は、ねじ要素12のねじ山とかみ合ったままであることは理解されよう。したがって、ロック可能な歯付き要素は、ナットを通るねじシャフトの如く「ロックされた」ロック可能な歯付き要素70のかみ合った歯を介してねじ要素のねじ山が前進するように、ねじ要素12が回転される場合を除いて、微調整モード中、ねじ要素12のX軸方向に沿った動きを阻止する。
【0040】
反対に、ウェッジボタン61’は、もう1つの方向(例えばシンブル16から離れる方向)に押されると、摩擦板63’から外れ、摩擦板63’をロック可能な歯付き要素70の外面72との摩擦係合から解放し、ロック可能な歯付き要素70が自由に回転するようにロック可能な歯付き要素70のロックを解除し、これにより、歯付き要素40’が、ねじ要素12をX軸方向に沿って駆動させることを可能にし、マイクロメータのクイック調整状態又はモードが提供される。
【0041】
当然ながら、上記ロック構成60’の図示された実施形態は例示に過ぎず、限定ではない。多数の代替実施形態及び/又は追加の特徴を、ロック構成60を参照して説明されたように、本明細書に開示される原理によるロック構成に使用してもよい。
【0042】
図2に示される実施形態では、歯付き要素40’は、輪郭が破線で概略的に示されるクイック駆動要素80’に連結されている。図1の類似する特徴と同様に、クイック駆動要素80’は、クイック調整状態中に、歯付き要素40’を歯車軸の周りを回転させ、ねじ要素12を駆動するように、ユーザによって操作されるように構成される。図1に示される特定の実施形態では、クイック駆動要素80’は、メインフレーム2に固定されているアクスル55’を中心に回転する中間歯車50’を介して、歯付き要素40’に連結される。中間歯車50’は、クイック調整操作モード中に、ユーザ制御下で、ねじ要素12をX軸方向に沿って駆動するために、クイック駆動要素80’が一体型の四角形ハブ52’(輪郭が破線で示されている)上に取り付けられ、当該ハブ52’を駆動して中間歯車50’及び歯付き要素40’が回るように、マイクロメータ1’のカバー(図示せず)の孔又はシールを通り突き出る当該一体型の四角形ハブ52’を含んでもよい。なお、要素80及び40について上記説明と同様に、クイック駆動要素80’と歯付き要素40’との説明される連結方法は、例示に過ぎず、限定ではないことは理解されよう。
【0043】
要約するに、マイクロメータ1’における上記要素及び特徴の組み合わせの結果、回転式連結構成は、回転に関しては、シンブル16及びねじ要素12を、一緒に動くように拘束するが、X軸方向に沿った動きに関しては、ねじ要素12のシンブル16に対する位置は拘束しない。マイクロメータ1’は、歯付き要素構成30’を含む。歯付き要素構成30’は、第1の歯付き要素40’とロック可能な歯付き要素70とを含み、それぞれ、メインフレーム2内に配置され、X軸方向に直角な歯車軸の周りを回転し、歯車軸から離れた円弧に沿って配置された歯車歯を含む。歯車歯は、ねじ要素12のねじ山とかみ合い、X軸方向に沿って、ねじ山上を転がるように形成される。
【0044】
マイクロメータ1’は、マイクロメータ1’のクイック調整状態を提供するために、歯付き要素構成30’の第1の歯付き要素40’が、ねじ要素12のねじ山とかみ合いながら、その歯車軸の周りを回転することによって、ねじ要素12を駆動することを可能にするようにロック解除されるロック構成60’を含む。ロック構成60’は更に、マイクロメータ1’の微調整状態を提供するために、ナットを通るねじシャフトの如くロックされたロック可能な歯付き要素70のかみ合った歯を介してねじ要素のねじ山が前進するようにねじ要素が回転される場合を除いて、ねじ要素12のメインフレーム2に対するX軸方向に沿った動きを阻止するように、歯付き要素構成30’の、ねじ要素12のねじ山とかみ合った歯を有するロック可能な歯付き要素70を固定するようにロックされる。したがって、ねじ要素12に連結されるスピンドル3は、クイック調整状態中は、第1の歯付き要素40’をその歯車軸の周りを回転させてねじ要素12を駆動することによって、前進及び後退させられうる。また、スピンドル3は、微調整状態中は、ロックされたロック可能な歯付き要素70のかみ合った歯を介して、シンブル16を、ねじ要素12のねじ山にねじ込むように、回転させることによって前進及び後退させられうる。
【0045】
図3A乃至図3Dは、本明細書に開示される原理に従って、マイクロメータシンブル16をねじ要素12に連結する回転式連結構成の4つの代替実施形態を示す断面図及び横断面をそれぞれ含む。当然のことながら、図3A乃至図3Dの要素の多くは、図1に示されるマイクロメータ1を参照して説明された要素に類似するか又は同一である。図1及び図3A乃至図3Dにおいて同様の番号が付けられた要素は、同様であるか又は同一であり、また、類推によって理解されてよく、本明細書では、顕著な相違点のみが説明される。
【0046】
4つの実施形態の各々において、回転式連結構成(14、14’、14’’、14’’’)は、シンブル16及びねじ要素12のうちの一方に連結されるメス型回転式駆動部(14A’、14B’、14C’又は14D’)を含む。メス型回転式駆動部は、第1の嵌合回転拘束機構(15A’、15B’、15C’又は15D’)を含む穴横断面を有する穴又はボアを含む中心開口部を含む。オス型回転式駆動部(14A、14B、14C又は14D)が、シンブル及びねじ要素のうちのもう一方に連結される。オス型回転式駆動部は、メス型回転式駆動部の中心開口部又は孔内又はその中を通り摺動するシャフトを含む。シャフトは、第2の嵌合回転拘束機構(15A、15B、15C又は15D)を含む。第2の嵌合回転拘束機構は、第1の嵌合回転拘束機構(15A’、15B’、15C’又は15D’)と第2の嵌合回転拘束機構とが必ず一緒に回転するように第1の嵌合回転拘束機構(15A’、15B’、15C’又は15D’)と連動するように構成され、また、X軸方向に沿って第1の嵌合回転拘束機構(15A’、15B’、15C’又は15D’)に沿って又はその中を摺動する。様々な実施形態において、ねじ要素12は、シャフトがねじ要素12の内部に入ることをできるようにする中空部12Aを有する。
【0047】
図3Aは、図1を参照して説明された実施形態を示す。オス型回転式駆動部14Aは、エンドキャップ17を介してシンブル16に連結されるスプラインシャフトを含み、メス型回転式駆動部14A’は、ねじ要素12の端に固定されるスプラインハブ又はナットを含む。スプラインナットは、メス型回転式駆動部14A’における穴の輪郭を描く波状パターンという形の第1の嵌合回転拘束機構15A’を提供する。スプラインシャフトは、オス型回転式駆動部14Aの横断面の輪郭を描く、一致する波状パターンという形の第2の嵌合回転拘束機構15Aを提供する。
【0048】
図3Bは、より単純な嵌合回転拘束機構を有する実施形態を示す。オス型回転式駆動部14Bは、エンドキャップ17を介してシンブル16に連結される長方形シャフトを含み、メス型回転式駆動部14B’は、ねじ要素12の端に固定されるハブ又はプレートを含む。ハブ又はプレートは、メス型回転式駆動部14B’における穴の輪郭を描く長方形パターンという形の第1の嵌合回転拘束機構15B’を提供する。長方形シャフトは、オス型回転式駆動部14Bのシャフトの一致する長方形の横断面という形の第2の嵌合回転拘束機構15Bを提供する。
【0049】
図3Cは、メス型回転式駆動部14C’が、ねじ要素12の内面を含む実施形態を示す。ねじ要素12の内面は、その内壁に形成される2つの対向するキー溝又はスロットという形の第1の嵌合回転拘束機構15C’を提供する。オス型回転式駆動部14Cは、エンドキャップ17を介してシンブル16に連結される丸シャフトを含む。丸シャフトは、その外面に取り付けられた又は形成された2つの一致するキー又はタブ15Cという形の第2の嵌合回転拘束機構15Cを提供する。キー又はタブ15Cは、ねじ要素12の内壁にあるキー溝又はスロット内に嵌り、摺動する。滑り軸受91が、ねじ要素12とその付属コンポーネントとを、内側スリーブ18の中空部19内で支持案内してもよい。
【0050】
図3Dは、単純な嵌合回転拘束機構を有する別の実施形態を示す。オス型回転式駆動部14Dは、ねじ要素12の内部穴12Aの内部端又は底部に連結されるか又は埋め込まれる長方形シャフトを含む。或いは、シャフトは、図示されるように、ねじ要素12の一端に連結されるか又は留められる回転軸受連結器11の一部に連結されるか又は埋め込まれてもよい。メス型回転式駆動部14D’は、図示されるように、エンドキャップ17に留められた管92を介してシンブル16に連結されるハブ又はプレートを含む。図示される実施形態では、ハブ又はプレートは、管92の内側端において留められる。ハブ又はプレートは、メス型回転式駆動部14D’における穴の輪郭を描く長方形パターンという形の第1の嵌合回転拘束機構15D’を提供する。長方形シャフトは、オス型回転式駆動部14Dのシャフトの一致する長方形の横断面という形の第2の嵌合回転拘束機構15Dを提供する。管92は、長方形シャフトが管の内部に入ることをできるようにする中空部を有し、ねじ要素12は、シャフトがねじ要素12の内部に入ることをできるようにする中空部12Aを有する。
【0051】
図1を参照して説明されたように、幾つかの実施形態では、マイクロメータは、スピンドルが回転しないようにするスピンドル回転防止構成と、非回転スピンドルを回転ねじ要素に接合する回転式軸受連結器とを含む。図3A乃至図3Dは、それぞれ、図1及び図2にも示されている回転式軸受連結器11の実施形態を示す。回転式軸受連結器11は、非回転スピンドル3の連結部に連結される第1の部分11B(図1及び図2において最も良好に見える)と、ねじ要素12の連結部に連結される第2の部分11Aとを有する。様々な実施形態において、第1の部分11A及び第2の部分11Bのうちの少なくとも一方が、ねじ要素12が回転することを可能にしながら、スピンドル3及びねじ要素12をX軸方向に沿って固定の間隔において保持するように予荷重が加えられた回転軸受11Cを介して、対応する連結部又は互いに連結される。図3A乃至図3Dに示される実施形態では、予荷重が加えられた軸受は、面取りが施された部分11Bを掴み、予荷重が加えられた軸受の外輪は、スピンドル3にある凹部に固定される(図1及び図2において最も良好に見える)。例えば参照することによりその全体を本明細書に組み込む米国特許第4,553,330号に開示されるように、様々な形の予荷重が加えられた軸受要素が、当技術分野において知られている。ボール軸受を含む説明された実施形態は、例示に過ぎず、限定ではない。例えば幾つかの実施形態では、予荷重された軸受は、当接面に対して予荷重が加えられ、当該当接面を中心に旋回する中心ボール、コーン又は先端を含んでもよい。
【0052】
本発明の様々な好適な実施形態が例示され、説明されたが、当業者には、本開示に基づいて、例示され説明された構成、並びに、特徴及び動作の順序の組み合わせにおける多数の変形態様が明らかであろう。例えば上で説明されたように、幾つかの実施形態では、スピンドルは回転し、ねじ要素12に堅く連結されてもよい。ただし、回転式スピンドルの測定位置が決定できるように、それに応じた位置センサ及び/又は取付け構成が使用される。この場合、回転式軸受連結器は省略されてよい。当然ながら、幾つかのこのような実施形態では、スピンドル3を介して(例えば適切な連結要素を用いて)、ねじ要素12をシンブル16に連結することも可能である。このような実施形態では、ねじ要素は、エンドキャップ17を介して、シンブル16に連結される必要はない。したがって、当然ながら、この変更及び様々な他の変更を、本発明の精神及び範囲から離れることなく、本明細書に開示される実施形態に行ってもよい。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D