(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない前記部材が、カーボン、窒化ホウ素、タンタルカーバイド、タングステン、窒化アルミニウム、およびサファイアから選ばれる材質で製造された部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の三ハロゲン化アルミニウムガスの製造方法。
前記固体のアルミニウムと前記ハロゲン系ガスとを接触させる際の温度が、180〜660℃である請求項1〜3の何れかに記載の三ハロゲン化アルミニウムガスの製造方法。
請求項1〜5の何れかに記載の方法で三ハロゲン化アルミニウムガスを製造した後、得られた三ハロゲン化アルミニウムガスと窒素源ガスとを接触させることを特徴とするアルミニウム系窒化物結晶の製造方法。
前記原料収容部の外周に原料部外殻反応管が配置され、前記原料収容部と前記原料部外殻反応管とが二重管構造となり、前記第1ハロゲン系ガス供給管が該原料収容部と該原料部外殻反応管との隙間部である請求項8に記載の三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム系III族窒化物単結晶は、バンドギャップ(禁制帯幅)エネルギーが大きいため、紫外線領域の短波長発光を可能とし、白色光源用の紫外発光ダイオード、殺菌用の紫外発光ダイオード、高密度光ディスクメモリの読み書きに利用できるレーザー、通信用レーザーなどに利用することが期待されている。そのため、アルミニウム系III族窒化物単結晶が必要とされており、例えば、アルミニウム系III族窒化物単結晶を製造する方法としては、ハイドライド気相エピタキシー(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法が知られている。この方法は、三ハロゲン化アルミニウムガスと窒素源ガス(例えば、アンモニアガス)とをベース基板上で反応させて、結晶を製造する方法であり、厚膜の単結晶を成長させる方法に適している。
【0003】
このHVPE法に使用される三ハロゲン化アルミニウムガスは、以下のように製造されている。具体的には、アルミニウムとハロゲン化水素ガスとを700℃以下の温度で反応させる方法である(特許文献1参照)。この方法によれば、石英ガラスとの反応性が高い一ハロゲン化アルミニウム(例えば、一塩化アルミニウム(AlCl)、一臭化アルミニウム(AlBr))ガスの発生を抑制できる。そのため、HVPE法の結晶成長装置の材質である石英ガラスに悪影響を及ぼすことが少なく、優れた三ハロゲン化アルミニウムガスの製造方法である。この特許文献1には、上記方法で得られた三ハロゲン化アルミニウムガスを、700℃以上1300℃以下の温度に加熱された成長部に配置されたベース基板上へ流通させ、そこで窒素源ガスと反応させてアルミニウム系III族窒化物単結晶を製造することが記載されている。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の方法によれば、含有される一ハロゲン化アルミニウムの割合が低減された三ハロゲン化アルミニウムガスを製造することが出来る。しかしながら、特許文献1に記載されている通り、微量ながらも平衡状態に相当する一ハロゲン化アルミニウムガスが必ず発生し、発生温度が高いほど一ハロゲン化アルミニウムの存在量が相対的に多くなる。一ハロゲン化アルミニウムガスの発生量が多くなると、アルミニウム系III族窒化物単結晶の結晶品質が低下する場合があった。
【0005】
また、特許文献1に記載された装置では、三ハロゲン化アルミニウムガスの原料となる固体のアルミニウムが収容された原料部周辺には、一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しやすい石英ガラスを材質とする部材が露出している。そのため、微量ながらも原料部周辺で発生した一ハロゲン化アルミニウムガスが石英ガラスと反応し、アルミニウム系III族窒化物単結晶の結晶品質が低下、特にアルミニウム系III族窒化物単結晶に含まれる不純物の濃度が増加する場合があった。
【0006】
さらに、特許文献1では、三ハロゲン化アルミニウムガスの原料となる固体のアルミニウムをセラミックスであるアルミナ製ボートに配置することが開示されているが、アルミナ製ボートは、三ハロゲン化アルミニウムガスの原料となるハロゲン化水素ガスを透過しない。そのため、固体のアルミニウムとハロゲン化水素ガスの接触する面積が低下し、結果としてアルミニウム系III族窒化物単結晶の成長速度が低下する場合があり、改善の余地があった。
【0007】
このような問題点に対して、一ハロゲン化アルミニウムガスに対して耐腐食性材料で装置を構成したり(特許文献2参照)、三ハロゲン化アルミニウムガスの発生部の構造を改良したり(特許文献3参照)、一ハロゲン化アルミニウムガスの発生をより抑制したりする方法(特許文献4参照)等が様々提案されている。
【0008】
例えば、一ハロゲン化アルミニウムガスが発生する領域において、耐腐食性材料である窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タンタルをアルミニウム系III族窒化物単結晶の結晶成長装置の部材として使用することが提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載の方法では、700℃を超える温度領域で液体のアルミニウムとハロゲン化水素ガスを反応させ一ハロゲン化アルミニウムガスを生成し、該一ハロゲン化アルミニウムガスをアルミニウム系III族窒化物単結晶の原料ガスとして使用するアルミニウム系III族窒化物単結晶の製造方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、この方法は、一ハロゲン化アルミニウムガスを原料ガスに使用しているため、アルミニウムを収容している原料部周辺だけでなく、反応領域を含む結晶成長装置の全ての部材を一ハロゲン化アルミニウムガスに対して耐腐食性を有する材料で構成する必要があった。一般的に、耐腐食性を有する材料、例えば、サファイアは加工が困難で、結晶成長装置の構造を複雑化することが出来ないという問題があり、特許文献2に記載の方法では、上記点でも改良の余地があった。
【0010】
また、結晶成長装置のメンテナンス性を向上させ、さらにアルミニウム系III族窒化物単結晶の結晶品質を向上させるために、以下のような方法が提案されている。具体的には、三ハロゲン化アルミニウムガスが発生する原料部と反応ゾーンを有する反応器本体を外殻ケーシングで覆い、アルミニウム系III族窒化物単結晶の原料ガスとなる三ハロゲン化アルミニウムガスを金属製の配管で接続して、反応ゾーンに導入しアルミニウム系III族窒化物単結晶を製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0011】
しかしながら、特許文献3では、三ハロゲン化アルミニウムガスが発生する周辺の部材に一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しやすい石英ガラスを材質とする部材が使用されている。そのため、特許文献1と同様にアルミニウム系III族窒化物単結晶の結晶品質が低下し、特にアルミニウム系III族窒化物単結晶に含まれる不純物の濃度が増加する場合があった。
【0012】
さらに、固体のアルミニウムを収容した部分において発生した一ハロゲン化アルミニウムガスの濃度を低減するために、以下の方法も提案されている。具体的には、三ハロゲン化アルミニウムガスを発生させた後、ハロゲン化ガスを固体のアルミニウムを収容した原料部の出口側に供給することで一ハロゲン化アルミニウムガスの濃度を低減する方法である(特許文献4参照)。この方法に従えば、アルミニウム系III族窒化物単結晶の結晶品質が改善することができる。
【0013】
しかしながら、特許文献4の記載の方法では、アルミニウム系III族窒化物単結晶の成長を繰り返し行うと、繰り返し回数に比例してアルミニウム系III族窒化物単結晶に含まれる不純物濃度が増加し、結晶品質が低下する場合があり、改善の余地があった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、アルミニウムとハロゲン系ガスとを接触させて、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する方法、及び三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置に関する。先ず、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する方法において、好適に使用できる装置の代表例について説明する。
【0024】
(三ハロゲン化アルミニウムガスの製造装置)
本発明においては、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造するための装置であって、ガスが流通するための導入口、および排出口を備え、一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材で製造され、固定のアルミニウムを直接充填するための原料収容部を備えた三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置を使用することができる。該装置においては、さらに、前記原料収容部の排出口にハロゲン系ガスを供給するための第1ハロゲン系ガス供給管を配置することが好ましい。
【0025】
具体的な三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置の構成の一例を、
図1を用いて説明する。
図1に示す気相成長装置100は、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する領域とアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長を行う領域の2つの領域からなっており、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する領域について説明する。なお、アルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長を行う領域は必須ではないが、本発明においては、
図1のような三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置とアルミニウム系III族窒化物結晶製造装置とが直結している構成の装置を使用することにより、高品質なアルミニウム系III族窒化物結晶を製造することができる。
【0026】
図1に示す気相成長装置100の三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する領域では、例えば、石英ガラス製の原料部上流反応管21と、上流側にハロゲン系ガスを供給するための第2ハロゲン系ガス導入管22と、原料となる固体のアルミニウムを充填する、一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材(下記に詳述するが、例えば、窒化ホウ素製(pBN製とする場合もある))の原料収容部23と、該原料収容部23を加熱するための原料部外部加熱手段16を備えた装置構造となっている。そして、第2ハロゲン系ガス導入管22を通して供給されたハロゲン系ガスを原料収容部23に配置されたアルミニウムと接触させることによって、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造できる。
【0027】
本発明においては、原料収容部23は、ガスが流通するための導入口、および排出口を備えている。この導入口には、ハロゲン系ガス等が導入され、排出口からは、三ハロゲン化アルミニウムガスを含むガスが排出される。そして、原料収容部23には、固体のアルミニウムが直接充填される。そのため、この原料収容部23は、従来のアルミナ製のボートの原料収容部とは装置の構成が異なる。このような装置構成となることにより、固体アルミニウムとハロゲン系ガスとの接触効率を向上させることができる。さらには、原料収容部23が一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材、例えば、窒化ホウ素で作製されているため、原料収容部23内で発生した一ハロゲン化アルミニウムガスが反応することはない。その結果、三ハロゲン化アルミニウムガスをアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長の原料ガスに使用する際に、悪影響を与えないようにできると考えられる。
【0028】
(一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材)
一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない物質を例示すれば、カーボン、窒化ホウ素、タンタルカーバイド、タングステン、窒化アルミニウム、およびサファイアが好ましく、加工性、強度、重量の観点から、中でも窒化ホウ素がより好ましい。また、それらの部材を耐腐食性の保護材として使用してもよい。例えば、カーボンに対して窒化ホウ素で被覆することにより、加工性と耐腐食性を持つ部材とすることもできる。なお、本発明において、原料収容部23は、一ハロゲン化アルミニウムガスを反応しない前記部材、具体的には窒化ホウ素で作製することが特徴である。一ハロゲン化アルミニウムガスを反応しない前記部材で作製することによって、原料収容部23の周辺で一ハロゲン化アルミニウムガスと石英ガラスが反応せず、不純物濃度が低減された三ハロゲン化アルミニウムガスを製造することが可能となる。
【0029】
本発明においては、前記原料収容部の排出口にハロゲン系ガスを供給するための第1ハロゲン系ガス供給管を備えることが好ましい。
図1に示す実施形態では、原料収容部23に対して、原料収容部23と原料部外殻反応管20とが2重管構造となるように原料部外殻反応管20を配置する。2重管構造とすることにより、原料収容部23と原料部外殻反応管20の隙間部の空間にハロゲン系ガスを供給することが可能となる。このような態様とすることにより、原料収容部23の排出口周辺から排出されるガス(主に三ハロゲン化アルミニウムガスであるが、一ハロゲン化アルミニウムガスおよび二ハロゲン化アルミニウムガスも含まれる)が原料収容部排出口26においてハロゲン系ガスと混合されハロゲン系ガス存在下で移送することができる。そのため、三ハロゲン化アルミニウムガスに含まれる一ハロゲン化アルミニウムガスおよび二ハロゲン化アルミニウムガスの濃度をハロゲン系ガスの存在による平衡移動により低減することが出来る。
【0030】
なお、ハロゲン系ガスが存在することにより、一ハロゲン化アルミニウムガスおよび二ハロゲン化アルミニウムガスが低減できるのは、以下の平衡反応によるものと考えられる。つまり、
AlX(g)+ 2HX(g) = AlX
3(g)+ H
2(g)
AlX
2(g)+ HX(g) = AlX
3(g)+ 1/2H
2(g)
ここでXはハロゲン元素である。
【0031】
前述した平衡反応により、一ハロゲン化アルミニウムガスや二ハロゲン化アルミニウムガスが低減されるため、原料部外殻反応管20の材質が石英ガラスであっても、原料部外殻反応管20からのシリコン不純物成分の発生を低減することが可能になる。このように、2重管構造とすることにより、装置自体の製造が容易となり、第1ハロゲン系ガス供給管27よりハロゲン系ガスを供給した場合に最適な結晶成長装置の構造とすることができ、アルミニウム系III族窒化物結晶に含まれる不純物濃度を低減することが可能となる。その他の態様としては、単独のハロゲン系ガス供給管を原料収容部23の周囲に配置することもできる。
【0032】
さらに、原料収容部23に対しては、原料部上流反応管21を原料収容部23の排出口までを覆う構造としてもよいし、原料収容部23の一部を覆う構造としてもよい。なお、原料部上流反応管21は石英ガラス製の部材なので、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する場合に、原料収容部23で発生した一ハロゲン化アルミニウムガスは石英ガラス製の原料部上流反応管21と反応する。したがって、アルミニウム系III族窒化物結晶の結晶品質の観点からは、原料収容部23を覆う石英ガラス製の部材の面積が少ない方がより好ましい。
【0033】
なお、
図1に示す実施形態では、第2ハロゲン系ガス供給管22よりハロゲン系ガスを原料収容部23に導入する。三ハロゲン化アルミニウムガスの製造条件の詳細については、後述する三ハロゲン化アルミニウムガス製造方法において、詳細に説明する。
【0034】
以上のような構成の三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置を採用することが好ましい。そして、該装置で製造された三ハロゲン化アルミニウムガスは、様々な用途で使用できる。中でも、該装置で製造した三ハロゲン化アルミニウムガスは、純度が非常に高いため、アルミニウム系III族窒化物結晶、特にアルミニウム系III族窒化物単結晶の原料として好適に使用できる。そして、アルミニウム系III族窒化物結晶を製造する場合には、
図1に示すような三ハロゲン化アルミニウムガス製造装置とアルミニウム系III族窒化物結晶製造装置とが直結している構成の装置とすることが好ましい。次に、アルミニウム系III族窒化物結晶製造装置について説明する。
【0035】
(アルミニウム系III族窒化物結晶の製造装置)
具体的なアルミニウム系III族窒化物結晶製造装置の構成の一例を、
図1を用いて説明する。
図1に示す気相成長装置100は、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する領域とアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長を行う領域の2つの領域からなっており、アルミニウム系III族窒化物結晶を製造する領域について説明する。
図1に示す気相成長装置100のアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長を行う領域では、例えば、ベース基板12と、ベース基板を支持する支持台13と、アルミニウム系III族窒化物結晶の原料となるガスを導入するハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28で構成されており、さらに、ベース基板12を加熱するための基板加熱装置18と結晶成長の領域全体を加熱する成長部外部加熱装置17で構成されている。加熱されたベース基板に原料ガスを供給することによって、アルミニウム系III族窒化物結晶を成長させる。
【0036】
すなわち、まず、第2ハロゲン系ガス導入管22から供給されたハロゲン系ガスと、原料収容部23に配置された固体のアルミニウムとを反応させることにより、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する。次に、得られた三ハロゲン化アルミニウムガスは、ハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28によりベース基板12上に供給される。このように原料ガスを加熱されたベース基板上に供給することによってアルミニウム系III族窒化物結晶を成長することが可能となる。
【0037】
本発明においては、原料収容部23に固体のアルミニウムを直接充填し、収容することを特徴とする。セラミックス製ボートで固体のアルミニウムを収容する場合と比較して、ハロゲン化水素ガスと接触する面積を大きくすることが出来るので、本発明で製造された三ハロゲン化水素ガスを原料として使用した場合に原料ガスの輸送効率が高まり、アルミニウム系III族窒化物単結晶の成長速度の低下を防ぐことが可能となる。
【0038】
(三ハロゲン化アルミニウムガスの製造方法)
また、本発明は、アルミニウムとハロゲン系ガスとを接触させて、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造する方法において、
ガスが流通するための導入口、および排出口を備え、一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材で製造された原料収容部に固体のアルミニウムを直接充填し、該導入口からハロゲン系ガスを導入することにより、該アルミニウムとハロゲン系ガスとを接触させて、得られた三ハロゲン化アルミニウムガスを該排出口から排出させることを特徴とする三ハロゲン化アルミニウムガスの製造する方法である。以下、三ハロゲン化アルミニウムガスを製造するために必要な製造条件について、説明する。
【0039】
(アルミニウム)
本発明において、三ハロゲン化アルミニウムガスの原料となるアルミニウムは、純度が99.9%以上の固体を使用することが好ましい。得られるハロゲン化アルミニウムガスをアルミニウム系III族窒化物結晶の原料に使用する場合には、より純度の高い99.99%以上の固体を使用することが好ましい。当然のことながら、最も好ましいアルミニウムの純度は100%である。なお、ハロゲン系ガスとアルミニウムとの接触効率を高くするために、本発明においては固体のアルミニウムの状態でハロゲン系ガスと接触させることを特徴とする。接触効率が改善された結果として、ベース基板上への三ハロゲン化アルミニウムガスの輸送効率が高まり、アルミニウム系III族窒化物結晶の成長速度を高めることが出来る。
固体のアルミニウムは、装置形状によって種々の形状を採用することができるが、実際に使用する装置において、ハロゲン系ガスとの接触効率、該ハロゲン系ガスの流通、および装置の圧力損失等を考慮すると、直径0.1mm以上10mm以下であって長さ0.1mm以上10mm以下の円柱状のもの、あるいは、これに類似の柱状のものが好適に使用できる。
【0040】
(ハロゲン系ガス)
本発明において、ハロゲン系ガスは、アルミニウムと反応させて三ハロゲン化アルミニウムガスを製造することに使用される。具体的には、塩素ガス、臭素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガス、が挙げられる。中でも、得られる三ハロゲン化アルミニウムガスの使用範囲の拡大、配管の腐食のし難さ、汎用性と経済性を考慮すると、塩化水素ガスを使用することが好ましい。なお、塩化水素ガスを使用した場合には、三塩化アルミニウムガス、二塩化アルミニウムガス、一塩化アルミニウムガス、三塩化アルミニウム二量体ガスが主に生成される。三塩化アルミニウムガスを発生する過程で生じた一塩化アルミニウムガスは、石英ガラスは反応しやすくアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶品質を低下させるため、本発明においては三塩化アルミニウムガスを発生させる原料収容部において、一塩化アルミニウムガスと反応しない部材を使用することを特徴とする。
【0041】
ハロゲン系ガスを原料配収容部23のアルミニウムへ供給する際の供給量は、装置の形状、使用するアルミニウムの量等に応じて適宜決定すればよい。具体的には、供給するハロゲン系ガス濃度として0.0001体積%以上100体積%以下の範囲から実用的な濃度を選択すればよい。ただし、三ハロゲン化アルミニウムガスを主成分として、アルミニウム系III族窒化物単結晶を製造する場合には、キャリアガスに希釈して使用することが好ましい。そのため、アルミニウムへ接触させる際のハロゲン系ガスの供給量は、0.0001体積%以上10体積%以下の範囲とすることが特に好ましい。ハロゲン系ガスの供給量としては0.005〜100sccmが適当である。前記ハロゲン系ガスと接触させるアルミニウムは、原料収容部23に配置される。sccmとは標準状態における1分あたりの流量(cc)のことである。
【0042】
(アルミニウムとハロゲン系ガスの反応温度)
また、原料配収容部23に配置された固体のアルミニウムは、原料部外部加熱手段5により、アルミニウムの融点まで、具体的には、180℃以上660℃以下の温度に加熱される。原料部外部加熱手段16は、特に制限されるものではなく、抵抗加熱方式や光加熱方式,高周波誘導加熱方式のものが使用できる。
【0043】
原料収容部23における固体のアルミニウムの温度が180℃未満の場合には、アルミニウム反応率が低くなり、ハロゲン化アルミニウムガス自体の生成量が低下する傾向にある。一方、660℃を超えると、固体のアルミニウムが融解し、液体のアルミニウムとなるので、ハロゲン化水素ガスとの接触効率が低下する。また、原料収容部23より液体となったアルミニウムが漏洩し、液体となったアルミニウムに結晶成長装置が汚染されるので、結晶成長装置のメンテナンス性も低下する。
【0044】
図1に示す原料収容部23において、ハロゲン系ガスとアルミニウムの反応によりハロゲン化アルミニウムガスを生成させる。ハロゲン系ガスは、それ単独でも供給することができるが、一般的には、水素ガス、または不活性ガスをキャリアガスとして希釈して供給することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。キャリアガスは、これらの内の1種類のガスを使用することもできるし、2種類以上のガスを混合して使用することもできる。
【0045】
(ハロゲン系ガスを追加する場合)
次に、本発明の三ハロゲン化アルミニウムガス製造方法に好適に使用できるハロゲン系ガスを原料収容部の排出口周辺にハロゲン系ガスを追加で供給する場合について、説明する。
【0046】
本発明において、原料収容部23の排出口周辺とは、原料部外殻反応管20と原料収容部23の隙間部の空間を含む原料収容部23の排出口である。すなわち、原料収容部23に収納されたアルミニウムと導入されたハロゲン系ガスと接触し、発生した三ハロゲン化アルミニウムガスが原料収容部23の排出口から排出されてから、ハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28に導入されるまでの原料部外殻反応管20内部の空間である。
【0047】
本発明において、第1ハロゲン系ガス導入管よりハロゲン系ガスを原料収容部23の排出口周辺に供給すると、一ハロゲン化アルミニウムガスおよび二ハロゲン化アルミニウムガスの濃度を低減することが可能となり、アルミニウム系III族窒化物結晶の原料ガスとして使用した場合に、アルミニウム系III族窒化物結晶に含まれる不純物濃度が低減することが可能となり、より好ましい。
【0048】
ハロゲン系ガスを追加で原料収容部23の排出口周辺に供給する場合において、三ハロゲン化アルミニウムガスが原料収容部23の排出口から排出される前に供給してもよいし、ハロゲン化アルミニウムガスが原料収容部23の排出口から排出されると同時に供給してもよいし、ハロゲン化アルミニウムガスが原料収容部23の排出口から排出された後から供給してもよい。安定して一ハロゲン化アルミニウムガス、および二ハロゲン化アルミニウムが低減された三ハロゲン化アルミニウムガスを製造するためには、該三ハロゲン化アルミニウムガスが原料収容部23の排出口から排出される前に供給することが好ましい。排出される前に排出口周辺に供給することで、一ハロゲン化アルミニウムガス、および二ハロゲン化アルミニウムの発生をさらに低減することが可能となる。
【0049】
ハロゲン化アルミニウムガスが原料収容部23の排出口周辺26において第1のハロゲン系ガスと混合する空間の容積は、両ガスが混合できる滞在時間を確保しておくことが好ましい。滞在時間は、排出口26からハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28の根元までの容積を、加熱によるガスの膨張を考慮したハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28に供給する第1のハロゲン系ガスとハロゲン化アルミニウムガス、キャリアガスの和で除することにより算出することができる。ハロゲン化アルミニウムガスと第1のハロゲン系ガスの混合ガスの滞在時間は0.01〜30秒、さらには0.1〜10秒であることが好ましい。また、ハロゲン化アルミニウムガスと第1のハロゲン系ガスの混合を促進させるために前記の空間内に充填材を設置してもよい。充填材の材質は塩化水素や石英ガラスとの反応性しにくく耐熱性のあるものであればよく、たとえば、アルミナ、サファイア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化タンタルなどの化合物の他、タングステン、タンタル、金、白金等の金属類、貴金属類を用いることができる。充填材を設置し、滞在時間を算出する場合には、第1のハロゲン系ガスと混合する空間の容積から充填材の容積を除外し、滞在時間を算出する。
【0050】
(アルミニウム系III族窒化物結晶の製造方法)
また、本発明の方法は、ハロゲン化アルミニウムガスと該窒素源ガスとを反応させてアルミニウム系III族窒化物結晶を製造する方法である。以下、アルミニウム系III族窒化物結晶を製造するために必要な製造条件について、説明する。
【0051】
(ベース基板)
本発明において、アルミニウム系III族窒化物結晶をその上に成長させるベース基板12は、特に制限されるものではなく、公知の基板を使用することができる。具体的には、たとえば、サファイア、シリコン、シリコンカーバイド、酸化亜鉛、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、ガリウム砒素、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタニウムなどが用いられる。また、ベース基板の厚みも、特に制限されるものではなく、50〜1000μmの範囲である。
【0052】
(三ハロゲン化アルミニウムガス)
本発明においてアルミニウム系III族窒化物結晶を得るために、ハロゲン化アルミニウム供給ノズル28から三ハロゲン化アルミニウムガスを供給する。前述したように本発明で製造された三ハロゲン化アルミニウムガスは、一ハロゲン化アルミニウムガスと石英ガラスの反応に由来する不純物が少なく、また、一ハロゲン化アルミニウムガスおよび二ハロゲン化アルミニウムガスの濃度が低減されており、アルミニウム系III族窒化物結晶の成長に好適に使用することが出来る。
【0053】
アルミニウム系III族窒化物結晶を成長する場合には、原料ガスとなるハロゲン化アルミニウムガスは、三ハロゲン化アルミニウムガスが主成分になることが好ましく、窒素源ガスと反応させるハロゲン化アルミニウムガスは、一ハロゲン化アルミニウムガス、および二ハロゲン化アルミニウムが低減されたものであることが好ましい。本発明においては、原料収容部23の排出口周辺に、さらにハロゲン系ガスを第1ハロゲン系ガス導入管27より供給することで、三ハロゲン化アルミニウムガスに含まれる一ハロゲン化アルミニウムガス、および二ハロゲン化アルミニウムを低減することが出来る。
【0054】
このハロゲン化アルミニウムガスは、ハロゲン系ガスがキャリアガスと共に供給される場合には、キャリアガスと共にベース基板12上へ供給される。また、ハロゲン系ガスのキャリアガスとは別に、キャリアガスを追加することもできる。キャリアガスとしては、ハロゲン系ガスのキャリアガスと同じく、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の公知のガスから適宜選択され、これらを単独もしくは混合して使用することが可能である。キャリアガスと共にベース基板上へ供給する場合は、装置の大きさ等により、ハロゲン化アルミニウムガスの供給量、キャリアガスの供給量を決定してやればよい。ただし、アルミニウム系III族窒化物単結晶の製造のし易さ等を考慮すると、キャリアガスの供給量は50〜10000sccmの範囲とすることが好ましく、さらに、100〜5000sccmの範囲とすることが好ましい。ハロゲン化アルミニウムガスの濃度は、該キャリアガスに対して、0.0001体積%以上10体積%以下の範囲から実用的な濃度を選択すればよい。また、ハロゲン化アルミニウムガスの供給量は0.001〜100sccmとすることが好ましい。
【0055】
(窒素源ガス)
また、本発明においてアルミニウム系III族窒化物結晶を得るために、三ハロゲン化アルミニウムガスと同様に、窒素源ガス導入管31から窒素源ガスを供給する。当該窒素源ガスとしては窒素を含有する反応性ガスが採用されるが、コストと取り扱いやすさの点でアンモニアガスを使用することが好ましい。
【0056】
この窒素源ガスは、通常、キャリアガスに適宜希釈して、ベース基板12上へ供給される。窒素源ガスがキャリアガスと共に供給される場合、キャリアガスとしては、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の公知のガスから適宜選択され、これらを単独もしくは混合して使用することが可能である。キャリアガスと共にベース基板12上へ供給する場合は、装置の大きさ等により、窒素源ガスの供給量、キャリアガスの供給量を決定してやればよい。ただし、アルミニウム系III族窒化物単結晶の製造のし易さ等を考慮すると、キャリアガスの供給量は50〜10000sccmの範囲とすることが好ましく、さらに、100〜5000sccmの範囲とすることが好ましい。窒素源ガスの濃度は、該キャリアガスに対して、0.0001体積%以上10体積%以下の範囲から実用的な濃度を選択すればよい。また、窒素源ガスの供給量は0.01〜1000sccmの範囲とすることが好ましい。
【0057】
前述した三ハロゲン化アルミニウムガスと窒素源ガスを
図1に示す支持台13上に設置されたベース基板12上に供給することで、アルミニウム系III族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
【0058】
その他の結晶成長条件については、公知の方法を採用することができる。例えば、アルミニウム系III族窒化物結晶の成長前には、ベース基板12に水素を含むキャリアガスを流通して加熱し、基板に付着した有機物を除去するため、サーマルクリーニングを行うことが好ましい。また、ベース基板12がサファイア基板の場合、一般的には、1000℃以上で10分間程度保持することが好ましい。このサーマルクリーニングの後、ハロゲン系ガスの存在下、ハロゲン化アルミニウムガスと窒素源ガスの供給を開始して、好ましくは1000〜1700℃、より好ましくは1200〜1600℃に加熱されたベース基板8上にアルミニウム系III族窒化物結晶を成長させることが好ましい。この際、ハロゲン化アルミニウムガスの供給量は、前記の濃度範囲であることが好ましい。
【0059】
また、窒素源ガス供給量(sccm)は、一般的に供給する上記ハロゲン化アルミニウムガス供給量(sccm)の0.5〜200倍とすることが好ましい。
【0060】
なお、ハロゲン化アルミニウムガスおよび窒素源ガスは、上記の通り、適宜キャリアガスにより希釈されて供給されることが好ましい。また、アルミニウム系III族窒化物単結晶の成長時間は、意図する膜厚になるように適宜調節される。一定時間、アルミニウム系III族窒化物単結晶を成長した後、ハロゲン化アルミニウムガスの供給を停止して成長を終了し、基板を室温まで降温する。
【0061】
以上のようにして、前記ハロゲン化アルミニウムガスと窒素源ガスとを反応させてアルミニウム系III族窒化物結晶を成長することができる。そして、一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材で製造された原料収容部に固体のアルミニウムを直接充填し、該導入口からハロゲン系ガスを導入することにより、原料収容部周辺での一ハロゲン化アルミニウムガスと石英ガラスとの反応を大幅に低減することができるので、例えばハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル6内部における固体析出を低減することができる。また、アルミニウム系III族窒化物結晶の成長表面への析出物の飛来を低減して該アルミニウム系III族窒化物結晶の結晶品質を向上させることできる。
【0062】
さらに、本発明においては、アルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長を繰り返し行ったとしても、製造されるアルミニウム系III族窒化物結晶に含まれる不純物濃度が低減されるという効果も有する。工業的な製造を考慮した場合に、繰り返しアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶成長を行ったとしても、良好なアルミニウム系III族窒化物結晶の結晶品質が製造出来ることは工業的な製造にとって非常に重要である。
【0063】
以上、一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない部材で製造された原料収容部に固体のアルミニウムを直接充填し、該導入口からハロゲン系ガスを導入することに製造された三ハロゲン化アルミニウムガスを原料としてアルミニウム系III族窒化物単結晶の製造の一例について説明した。さらに高品質なアルミニウム系III族窒化物単結晶を得るために、成長初期にベース基板上に100nm以下の膜厚のバッファー層を成長してその上にHVPE法で厚膜を形成する方法、基板上にHVPE法以外の方法によって結晶品質の良好なテンプレート膜を形成してその上にHVPE法で厚膜を形成する方法、基板をストライプ状もしくはドット状に加工してその上にHVPE法で横方向成長させながら厚膜を形成する方法等、様々な成長手法が適用可能である。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、原料収容部23および/または成長部は、水平設置以外に、垂直設置、あるいは、斜め設置でもよい。また、
図1に示す実施形態では、単一の反応管内に原料収容部(ハロゲン化アルミニウムガスの発生箇所)と成長部(アルミニウム系III族窒化物単結晶の製造箇所)が配置されているが、原料部と成長部が分離された形態であってもよい。この場合、原料部からのハロゲン化アルミニウムガスの輸送は原料部と成長部を連結した配管を通して行われる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の具体的な実施例、比較例について図を参照しながら説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例)
図1に示すような気相成長装置100を使用してハロゲン化アルミニウムガスを発生させ、さらに該ハロゲン化アルミニウムガスを原料ガスとして、アルミニウム系窒化物結晶を成長させた例について説明する。
【0067】
原料部外殻反応管20は、石英ガラス製の原料部上流反応管21と窒化ホウ素製の原料収容部23を内部に設置できる二重構造とし、原料部外殻反応管20の上流より第二のハロゲン系ガスがキャリアガスともに供給できる構造とした。さらに、原料部上流反応管21の上流より第一のハロゲン系ガスがキャリアガスとともに供給できる構造とした。原料部外殻反応管20と原料部内側上流反応管21は石英ガラスからなり、原料部収容部23は一ハロゲン化アルミニウムガスと反応しない窒化ホウ素製で作製した。
【0068】
原料部上流反応管21には先端に原料収容部23を接続可能な内側反応管接合部を設け、その内側反応管接合部は内径32mm、長さ20mmの円筒形状とした。一方、原料部収容部23は、内径30mm、長さ600mmの円筒形状であり、上流側に外径32mm、長さ20mmの円筒形状の内側反応管接合部を設けたものを使用した。原料部上流反応管21内部に原料収容部23を挿入し、石英ガラス反応管接合部内壁と熱分解窒化ホウ素反応管接合部外壁が接触することにより、原料部上流反応管21と原料収容部23を接合した。この構造により、原料部上流反応管21から供給する第一のハロゲン系ガスの98体積%以上を原料収容部23の内部に供給した。
【0069】
原料収容部23の内部には、純度が99.9999%であり、直径4mmで長さ6mmの固体のアルミニウムペレットを総量500g、充填率が55%となるように、原料収容部23に対して直接充填した。原料収容部23の外部には原料部外部加熱装置16として抵抗加熱方式の電気炉が設置されており、原料収容部23が400℃になるように加熱した。
【0070】
次いで、第2のハロゲン系ガスとして塩化水素ガス30sccmをキャリアガス(水素ガス1450sccmと窒素ガス70sccmからなる)に混合して原料部上流反応管21に供給した。第1のハロゲン系ガスである塩化水素ガスは原料収容部23の内部に輸送された後、塩化水素ガスとアルミニウムの反応により三塩化アルミウムガス発生させた。発生した三塩化アルミニウムガスは、原料収容部23下流の排出口より原料部外殻反応管20の内部に排出させた。一方、原料部外殻反応管20の上流部より、第1のハロゲン系ガスとして塩化水素ガス90sccmをキャリアガス(水素ガス110sccmと窒素ガス50sccmからなる)に混合して供給し、原料収容部23の出口である原料収容部排出口26周辺において、原料収容部23から排出された三塩化アルミニウムガスと混合し、三塩化アルミニウムと塩化水素の混合原料ガスとした。原料収容部排出部26からハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28までの原料部外殻反応管内の空間は、内径40mm、長さ120mmであるので容積は約151cm
3であった。一方、この部分に供給されるガスは三塩化アルミニウムガス(10sccm)と塩化水素ガス(90sccm)、水素と窒素を含むキャリアガス(1680sccm)の合計は1780sccmであり、400℃に加熱された前記空間における滞在時間は、約2.1秒と算出された。
【0071】
原料部外殻反応管20において生成させた前記混合原料は、ハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28を介して支持台13上に設置したベース基板12に供給した。ベース基板12には市販の物理的気相輸送法により成長した直径25mmの単結晶窒化アルミニウム基板を使用した。また、窒素源ガス供給ノズル32を介して水素キャリアガス100sccmで希釈したアンモニアガス40sccmを供給し、さらに、窒素源ガス追加ハロゲン系ガス導入管を介して水素キャリアガス40sccmで希釈した窒素源ガス追加ハロゲン系ガスとしての塩化水素ガス20sccmを供給した。これらのガスは、窒素源ガス追加ハロゲン系ガス合流部34にて合流した後、窒素源ガス供給ノズル32を介して支持台13上に設置したベース基板12に供給した。
【0072】
また、ハロゲン化アルミニウムガス供給ノズル28と窒素源ガス供給ノズル32の外周からは反応器11の全体を押し流すためのガスとして、水素ガス5600sccmと窒素ガス2400sccmを供給した。ベース基板12の局所加熱手段には窒化ホウ素コートグラファイト製サセプタを高周波により誘導加熱する方式を用いて当該ベース基板12を1450℃に加熱した。この状態で窒化アルミニウムの成長を10時間行い、厚さ約300μmの単結晶窒化アルミニウムを成長した。成長終了後、第一のハロゲン系ガス、第二のハロゲン系ガス、窒素源ガス追加ハロゲン系ガス、窒素源ガスの供給を停止し、室温まで冷却した後、結晶成長装置から単結晶窒化アルミニウムを取出した。成長部リアクタや基板外周のサセプタ、成長部排気部への析出物を除去した後、再び同様の条件で単結晶窒化アルミニウムの結晶成長を30回繰り返した。
【0073】
成長した単結晶窒化アルミニウムは、加速電圧15kVのセシウムイオンを1次イオンに用いた2次イオン質量分析法(CAMECA製IMS−f6)により単結晶窒化アルミニウムに含まれるシリコン濃度の定量分析を行った。単結晶窒化アルミニウムに含まれるシリコン濃度、酸素濃度は、該単結晶窒化アルミニウムの表面側から深さ1μm位置の2次イオン強度を測定し、窒化アルミニウム標準試料を用いた検量線に基づき定量した。その結果は、表1と
図2に示す通り、単結晶窒化アルミニウムのシリコン濃度は成長回数を重ねても5×10
17個/cm
−3を超えることはなく、長期にわたって安定した結晶品質を維持できることが明らかとなった。また、単結晶窒化アルミニウムを30回実施した後に、原料収容部23の内部に残留した三塩化アルミニウムガスの原料として使用したアルミニウムをサンプリングし、エネルギー分散型X線分析によりアルミニウムの元素分析を行い、シリコン不純物の有無を確認したところ、アルミニウム表面ではアルミニウムが100atom%であり、シリコン不純物は検出されなかった。
【0074】
(比較例)
図1において、原料収容部23を石英ガラス製にした以外は、実施例1と同じ装置を使用して、実施例と同様に単結晶窒化アルミニウムを繰り返し成長した比較例である。成長した単結晶窒化アルミニウムに含まれる不純物であるシリコン濃度は、成長回数を重ねるとともに徐々に増加していることが明らかであった。
【0075】
また、単結晶窒化アルミニウムを30回実施した後に、石英ガラス製原料収容部29の内部に残留したアルミニウムをサンプリングし、エネルギー分散型X線分析により元素分析を行ったところ、アルミニウムが99.5atom%、シリコンが0.5atom%であった。この結果から、単結晶窒化アルミニウムに含まれる不純物源が、石英ガラス製原料収容部29と一塩化アルミニウムガスとの反応によるシリコン汚染であることが明らかとなった。
【0076】
【表1】