(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理チャンバ内に低湿度ガスを供給する低湿度ガス供給部をさらに備え、前記低湿度ガス供給部は、前記低湿度ガスとしてドライエアと窒素ガスとを選択的に供給することができるように構成され、前記処理チャンバ内で前記基板保持部により保持された基板が処理される場合に前記処理チャンバ内にドライエアを供給し、前記処理チャンバ内の前記洗浄対象部を洗浄する場合に前記処理チャンバ内に窒素ガスを供給するように、前記低湿度ガス供給部を制御する制御部をさらに備えた、請求項1記載の基板処理装置。
前記乾燥工程において、前記処理チャンバ内に設けられた基板保持部に洗浄用治具が保持されて回転させられ、これにより前記洗浄用治具の上方の空間に気流が形成され、この気流により前記溶剤または前記水が付着した前記洗浄対象部の乾燥を促進させる、請求項14記載の処理チャンバ洗浄方法。
前記乾燥工程において、回転している前記洗浄用治具の上方に、基板に処理流体を供給する処理流体ノズルを保持するノズルアームを位置させ、これにより前記溶剤または前記水が付着した前記ノズルアームの下面の乾燥を促進させる、請求項17記載の処理チャンバ洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0011】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0012】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0013】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0014】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0015】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0016】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0017】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0018】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0019】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0020】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0021】
次に、
図2を参照して、処理ユニット16の構成について説明する。処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、液受けカップ50とを備える。
【0022】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と液受けカップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。
【0023】
FFU21は、ダクト22と、ダクト22内に上流側から順に設けられたファン23およびダンパ24(流量制御弁)と、ULPAフィルタ等のフィルタ25を有する。ファン23を回転させることにより、クリーンルーム内の空気がダクト22内に流入し、フィルタ25によりパーティクルが除去された空気(清浄空気)が、チャンバ20内に下向きに吹き出される。
【0024】
チャンバ(処理チャンバ)20の上部には整流板26が設けられている。整流板26は多数の孔が形成された板からなる。チャンバ20内の整流板26の上方の空間27に、低湿度ガス例えばドライエア(DA)を供給する低湿度ガス供給部28が設けられている。低湿度ガス供給部28は、空間27内に設けられたノズル28aと、ノズル28aと低湿度ガス供給源28bとを連結するガス供給路28cと、ガス供給路28cに介設された流れ制御機器28dとを有する。流れ制御機器28dには開閉弁、流量調整弁等が含まれる。低湿度ガスは窒素ガスであってもよい。
【0025】
基板保持機構30は、基板保持部31と、軸部32と、回転駆動部33とを備える。基板保持部31は、ウエハWを水平に保持する。回転駆動部33により軸部32を介して基板保持部31を回転させることにより、基板保持部31に保持されたウエハWを鉛直方向軸線周りに回転させることができる。
【0026】
処理流体供給部40は、ウエハWに処理流体(処理液または処理ガス)を供給する複数のノズル(処理流体ノズル)41を有している。本実施形態では、複数のノズルには、薬液ノズル41a、リンスノズル41b、溶剤ノズル41cが含まれる。複数のノズル41には、別の薬液ノズル、別のリンスノズル、二流体ノズル、乾燥ガスノズル等を含めることもできる。
【0027】
処理流体供給部40は、複数(図示例では2本)のノズルアーム42を有している。図面の簡略化のため、
図2には2本のノズルアーム42のうちの1本だけを示す。各ノズルアーム42の先端部に上記のノズル41のいくつかが取り付けられている。ノズルアーム42は、アーム駆動部43により、鉛直方向軸線周りに旋回可能であり(
図2の矢印SW)、かつ、鉛直方向に昇降可能である。ノズルアーム42を旋回させることにより、そのノズルアーム42に設けられたノズル41を、ウエハWの中心部の上方の位置と、平面視で液受けカップ50の外側の待機位置(
図3に示したホームポジション)との間の任意の位置に位置させることができる。
【0028】
各ノズル41には、対応する処理流体供給部(図示せず)から処理流体(処理液または処理ガス)が供給される。図示は省略するが、各処理流体供給部は、タンク、ボンベ、工場用力供給源等からなる処理流体供給源と、処理流流体供給源と対応するノズルとを接続する処理流体ラインと、処理流体ラインに介設された開閉弁、流量調整弁等の流れ制御機器とから構成されている。
【0029】
液受けカップ50は、保持部31を取り囲み、ノズル41から回転するウエハWに供給された後にウエハWから振り切られた液を回収する。液受けカップ50の底部には、排液口51が形成されており、液受けカップ50によって捕集された処理液は、排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、液受けカップ50の底部には、FFU21から供給される気体をチャンバ20(処理ユニット16)の外部へ排出する排気口52が形成されている。
【0030】
液受けカップ50の外周筒部50aからチャンバ20の側壁20aに向けて床板(底壁)53が延びている。床板53の表面は、側壁20aに近づくに従って低くなるように傾斜している。床板53と側壁20aとの間に、スリットの形態の排液口54が設けられている。
図3に示すように、排液口54は、シャッター付きのウエハ搬出入口20bが設けられている側壁20aを除く3つの側壁20aに沿って延びている。 排液口54の下方には排液チャネル55が設けられており、排液チャネル55には排液路56が接続されている。
【0031】
排液路56は、液受けカップ50の排液口51に接続された排液路57と合流する。排液路57には切替弁装置58が介設されており、切替弁装置58を切り替えることにより、排液路56、57を通って流れてきた排液を、酸系、アルカリ系および有機系の工場排液系(図示せず)のいずれか一つに導くことができる。
【0032】
排液口54の上方のチャンバ20の側壁20aに、前述した排液口54と平行に延びるスリットの形態の排気口59が設けられている。排気口59が排液口54よりも高い位置にあるので、排気口59には液体は殆ど流入しない。排気口59はチャンバ20の側壁20aを囲むダクト60に接続されている。ダクト60は、ダンパまたはバタフライ弁等からなる排気流量調整弁61aが介設された排気路61に接続されている。
【0033】
排気路61は、液受けカップ50の排気口52に接続された排気路62と合流する。排気路62にも、ダンパまたはバタフライ弁等からなる排気流量調整弁62aが介設されている。排気路62には切替弁装置63が介設されており、切替弁装置63を切り替えることにより、排気路61、62を通って流れてきた排気を、酸系、アルカリ系および有機系の工場排気系(図示せず)のいずれか一つに導くことができる。
【0034】
チャンバ20内の整流板26の下方には、複数例えば2〜4個の洗浄流体ノズル81が設けられている。洗浄流体ノズル81は、整流板26よりも下方の可能な限り高い位置に設けることが好ましい。洗浄流体ノズル81の高さ位置は、ノズル41及びノズルアーム42の高さ位置よりも高い(ノズル41及びノズルアーム42が上昇位置にあったとしても)。洗浄流体ノズル81は、
図3に示すように、平面視で矩形のチャンバ20の2つの隅部に設けられ、対角線方向に対面している。残りの2つの隅部にも洗浄流体ノズル81を設けてもよい。各洗浄流体ノズル81は、床板53から鉛直方向上方に延びる支柱82の上端部に支持されている。なお、
図2では図面の簡略化のため支柱82の下端部を表示していない。
【0035】
各洗浄流体ノズル81には、洗浄水供給部83から洗浄水としての純水を供給することができ、また、溶剤供給部84から溶剤を供給することができる。洗浄水供給部83は、純水供給源83cに接続されるとともに開閉弁83aが介設された純水供給路83bを有する。溶剤供給部84は、溶剤供給源84cに接続されるとともに開閉弁84aが介設された溶剤供給路84bを有する。開閉弁83a,84aを切り替えることにより、洗浄流体ノズル81から純水または溶剤を選択的に噴射することができる。洗浄流体ノズル81、洗浄水供給部83および溶剤供給部84により、洗浄流体噴射部が構成される。
【0036】
溶剤としては、純水よりも揮発性が高く、部材表面に付着した純水を置換する性質を持つものを用いることができる。溶剤としては、イソプロピルアルコール(IPA)を用いることが好ましい。IPAは、水よりも大幅に表面張力が低いので、マランゴニ効果により部材表面に付着した純水を排除することができる。IPAは半導体ウエハ等の基板の乾燥処理に最も良く用いられる有機溶剤であり、しかも、洗浄流体ノズル81から吐出する時のIPAにはウエハWに吐出する時ほどの清浄度が要求されないので、ウエハWに供給したものを回収して再利用することもできる。溶剤として、アセトンを用いることもできる。
【0037】
洗浄流体ノズル81は、供給されてきた液体をミスト状に、少なくとも水平方向に関して比較的大きな噴射角度で(広角に)噴射することができるように構成されている(
図3の洗浄流体ノズル81に付けられた矢印を参照)。液体のミストはチャンバ内を漂いながら重力により徐々に落下してゆくので、洗浄流体ノズル81の上下方向の噴射角度は水平方向の噴射角度ほどに広くなくてもよい。例えば、
図2の洗浄流体ノズル81に付けられた矢印のように、洗浄流体ノズル81は、主に概ね水平方向に液体を噴射できればよい(液体の一部は、斜め上方および斜め下方に噴射される。)。
【0038】
洗浄流体ノズル81は、チャンバ20内の整流板26よりも下方の空間が満遍なく液体のミストにより満たされるように設けることが好ましく、洗浄流体ノズル81の数および配置位置は図示したものには限定されない。洗浄流体ノズル81は一流体方式、二流体方式のいずれの方式によりミストを形成するものであってもよい。
【0039】
図3には、洗浄対象部、例えば基板保持機構30の保持部31の上方近傍に位置する部材の乾燥を促進するための洗浄用治具90が、基板保持機構30に保持された状態で示されている。
図4に示すように、洗浄用治具90は、ウエハWと同じ直径の板状体91と、板状体91上面に設けられた複数のフィン92により構成されている。洗浄用治具90の板状体91の形状寸法がウエハWとほぼ同じであるため、基板搬送装置13,17により洗浄用治具90を搬送することが可能である。フィン92は、洗浄用治具90を基板保持機構30に保持させて回転させたときに(
図4の矢印Rを参照)、洗浄用治具90の近傍に気流(
図4の矢印AFを参照))が生じるようになっていればよい。
【0040】
ノズルアーム42を基板保持機構30に保持された洗浄用治具90の上方に位置させて洗浄用治具90を回転させてもよい。このときに、ノズルアーム42に下面の乾燥を促進するために、ノズルアーム42の下面に勢いよく気流が当たるようにフィン92が形成されていることが好ましい。洗浄用治具90が形成する気流は、上昇気流に限らず、旋回気流などであってもよい。
【0041】
洗浄用治具90を保管しておくために、搬入出ステーション2の搬送部12内、あるいは処理ステーション3内に、洗浄用治具90の保管場所である治具収納部93を設けることができる。例えば
図5に概略的に示すように、処理ステーション3の端の基板搬送装置17がアクセス可能な位置に治具収納部93を設けることができる。あるいは、処理ユニット16の一つが設けられている場所(例えば符号93が併記されている場所)を治具収納部とすることができる。
【0042】
次に、処理ユニット16の動作について説明する。
【0043】
ウエハWが基板搬送装置17により処理ユニット16内に搬入され、基板保持機構30により保持される。基板保持機構30によりウエハWを鉛直軸線周りに回転させた状体で、いずれか一つのノズルアーム42が処理に必要なノズル41をウエハWの上方に位置させ、ウエハWに処理流体(処理液、処理ガス)を供給する。
【0044】
例えば、まず、薬液ノズル41aによりウエハWに薬液(例えばDHF、BHF、SC−1、SPM等)を供給する薬液処理工程が実施される。次いで、リンスノズル41bによりウエハWにリンス液として純水(DIW)を供給するリンス工程が実行される。次いで、溶剤ノズル41cによりウエハWに乾燥用の溶剤(ここではIPA)を供給する溶剤置換工程が実行される。その後、ウエハWを高速回転させウエハWを乾燥させる乾燥工程が実行される。乾燥工程の後、処理済みのウエハWは基板搬送装置17により処理ユニット16外に搬出される。
【0045】
ウエハの搬出入時、並びに、薬液処理工程、リンス工程、溶剤置換工程が実行されている間、FFU21からチャンバ20内に予め定められた流量FL1で清浄空気が供給されている。また、液受けカップ50の排気口52を介して、予め定められた流量FL2で、液受けカップ50内の雰囲気が吸引されている。また、チャンバ20の側壁20aの排気口59を介して、予め定められた流量FL3で、チャンバ20内の雰囲気が吸引されている。
【0046】
乾燥工程が実行されている間、FFU21からチャンバ20内への清浄空気の供給が停止され、低湿度ガス供給部28から整流板26の上方の空間27にドライエアが予め定められた前述した流量FL1で供給される。排気口52を介した排気の流量、並びに排気口59を介した排気の流量は前述したFL2,FL3に維持される。
【0047】
乾燥工程が実行されている間、ウエハWに供給された後にウエハWから振り切られて液受けカップ50に回収されたIPAを、後述するチャンバ20内洗浄の溶剤置換工程で再利用してもよい。この目的のため、液受けカップ50の排液口51に接続された排液路57から排出されたIPAを回収する回収タンク65を設けることができる。開閉弁67a,67bを切り替えることにより、回収タンク65に回収されたIPAをIPA供給路66を介して溶剤供給部84の溶剤供給源84cに送る状態と、送らずに廃棄する状態とを切り替えることができる。乾燥工程が実行されている間、切替弁装置58は、排液路57を回収タンク65に接続する。
【0048】
薬液処理工程を実行している間、ウエハWに供給された薬液の大半は液受けカップ50に回収されるが、ウエハWとの衝突等によりミスト化された薬液が液受けカップ50を越えて飛散する。この飛散した薬液のミストは、チャンバ20の側壁20aおよび床板53の表面、並びにノズルアーム42(特にノズルアーム42の下面)等のチャンバ20内の機器の表面に付着する。付着した薬液は、チャンバ20内の雰囲気を好ましくない雰囲気(例えば、酸またはアルカリ雰囲気)にするおそれがある。また、上記の様々な表面に付着した薬液が固化して脱落すると、パーティクル発生の原因となる。このため、1枚のウエハWの処理が終了する毎に、または定期的に(例えば、予め定められた枚数例えば20枚のウエハWの処理が終了する毎に、あるいは処理ユニット16を予め定められた時間運転する毎に)に、またはチャンバ20内の汚染レベルが予め定められたレベルとなった時に、チャンバ20内の洗浄が行われる。
【0049】
チャンバ20内の洗浄方法について以下に説明する。液受けカップ50の内部の洗浄は、チャンバ20内の洗浄と同時または別の時期に行うことができるが、本明細書ではこれについての説明は行わない。下記のチャンバ20内の洗浄方法は、記憶部19に記憶された洗浄レシピに基づいて制御装置4が処理ユニット16の各種機器を制御することにより自動的に行われる。
【0050】
[チャンバ内洗浄工程(洗浄工程)]
まず、洗浄流体ノズル81から洗浄液としてのDIWのミストをチャンバ20内に噴噴射する。DIWの噴射は、予め定められた時間だけ継続的に行われ、その後、停止される。このときも、FFU21からチャンバ20内に前述した流量FL1で清浄空気が供給される。また、液受けカップ50の排気口52を介した排気流量、並びにチャンバ20の側壁20aの排気口59を介した排気流量も、それぞれ前述したFL2,FL3に設定される。チャンバ20の内部空間がDIWのミストで満たされると、チャンバ20の内部空間に面した壁体(例えば側壁20a、床板53)およびチャンバ20内の機器(例えばノズルアーム42など)等の部材(以下、「洗浄対象部」と呼ぶ)の表面にDIWのミストが付着する。チャンバ20の内部空間をDIWのミストで満たすことにより、ノズルアーム42の下面等の下向きの面にもDIWのミストを付着させることができる。
【0051】
チャンバ20内の洗浄対象部の表面がDIWで濡らされた状態を維持することにより、表面に付着している薬液および薬液由来の固体がDIWに溶解する。DIWは洗浄対象部の表面に付着しうる物体の殆どを溶解することができる。床板53に付着したDIWは床板53の傾斜に沿って流れ、排液口54に流入する。側壁20aに付着したDIWは重力により下方に落ちてゆき、傾斜した床板53の表面を通って、あるいは直接的に、排液口54に流入する。ノズルアーム52に付着したDIWは、液受けカップ50内に落ちた後に排液口51に流入するか、あるいは、カップ50の外側表面上に落ちるか床板53の表面に落ち、その後、傾斜した床板53の表面を通って排液口54に流入する。つまり、洗浄流体ノズル81から噴射されたDIWの大部分は、カップ50の排液口51または床板53の排液口54を通って、処理ユニット16外に排出される。
【0052】
チャンバ内洗浄工程を行っているとき、例えばチャンバ内洗浄工程の後期に、基板保持機構30の保持部31を回転させ、保持部31に付着したDIWを振り切ってもよい。
【0053】
[チャンバ内溶剤供給工程(溶剤供給工程)]
洗浄流体ノズル81からのDIWの噴射を停止した後、側壁20a、床板53、ノズルアーム52等のチャンバ20内機器の表面にはDIWが付着した状態で残される。このDIWの乾燥を促進させるため、チャンバ内溶剤供給工程が行われる。チャンバ内溶剤供給工程を行うに先立ち、ウエハ搬出入口20bが開かれ、洗浄用治具90がチャンバ20内に搬入され、保持部31により保持される。
【0054】
次に、洗浄流体ノズル81からIPAのミストが噴射され、これにより、洗浄対象部の表面に付着したDIWに向けてIPAが供給されることになる。IPAのミストの噴射は、予め定められた時間だけ継続的に行われ、その後、停止される。チャンバ内溶剤供給工程を行うときのFFU21からの清浄空気の供給、液受けカップ50の排気口52を介した排気、およびチャンバ20の側壁20aの排気口59を介した排気の条件は、チャンバ内洗浄工程のときと同じでよい。但し、排気は、有機系の工場排気系に廃棄される。
【0055】
チャンバ内溶剤供給工程において噴射されたIPAの回収経路は、チャンバ内洗浄工程における噴射されたDIWの回収経路と同じである。但し、回収されたIPAは有機系の工場廃液系に、回収されたDIWは酸またはアルカリ系の工場廃液系に廃棄される。
【0056】
噴射されたIPAが洗浄対象部の表面に付着したDIWに供給されると、元から付着していたDIWがIPAにより追い出され、洗浄対象部の表面に付着ていたDIWのうちの少なくとも大部分がIPAに置換される。洗浄流体ノズル81からのIPAの噴射を停止した後、洗浄対象部の表面にはIPAが付着した状態で残される。
【0057】
[チャンバ内乾燥工程(乾燥工程)]
洗浄対象部の表面に付着したIPAは、自然乾燥により乾燥させることができる。IPAの揮発性は、DIWよりも大幅に高いため、表面に付着しているIPAを短時間で乾燥させることができる。
【0058】
洗浄流体ノズル81からのIPAの噴射を停止した後、あるいはその少し前に、FFU21からの清浄空気(この清浄空気の湿度はクリーンルーム内空気の湿度と同じである)の供給を停止し、その代わりに、低湿度ガス供給部28から整流板26の上方の空間27を介してチャンバ20内にドライエアを供給する。これによりチャンバ20内の湿度が低下し、洗浄対象部の乾燥を促進することができる。なお、このチャンバ内乾燥工程を実行しているときも、液受けカップ50の排気口52を介した排気、およびチャンバ20の側壁20aの排気口59を介した排気の条件は、チャンバ内溶剤供給工程を実行しているときと同じに維持することができる。
【0059】
ノズルアーム42の下面には、IPAにより追い出されたDIWが塊となって付着したり、IPAが塊となって付着することがある。このような液の塊が残っていると、乾燥が遅れる。このような液の塊を除去するためには、ノズルアーム42を旋回させて洗浄用治具90の上方に位置させ、洗浄用治具90を回転させればよい。これにより、洗浄用治具90の近傍かつ上方の空間に気流が生じ、この気流によりノズルアーム42下面に付着した液の塊を吹き飛ばして、ノズルアーム42の乾燥を促進することができる。なお、ノズルアーム42下面に液の塊が付着しておらず単に液で濡れている場合でも、気流により乾燥が促進される。
【0060】
洗浄対象部の表面が乾燥したら、洗浄用治具90を基板搬送装置17により処理ユニット16から取り出し、再び保管場所93に収納する。その後直ちに、処理ユニット16内にウエハWを搬入してウエハWの処理を開始することができる。
【0061】
上記実施形態によれば、チャンバ20内の洗浄対象部の表面をDIWで洗浄した後、DIWを高揮発性の溶剤により置換するため、洗浄対象部の表面を迅速に乾燥させることができる。このため、処理ユニット16のダウンタイムを大幅に短縮することができ、基板処理システム1の効率的な運用を実現することができる。
【0062】
なお、上記実施形態を下記のように改変することが可能である。
【0063】
上記実施形態ではDIWとIPAとを同じノズル(81)から噴射したが、別々のノズルから噴射してもよい。
【0064】
チャンバ内洗浄工程の開始前に、洗浄用治具90をチャンバ20内に搬入し、保持部31により保持させてもよい。この場合、チャンバ内洗浄工程を行う際に、ノズルアーム42を旋回させて洗浄用治具90の上方に位置させて、洗浄用治具90を回転させる。すると、洗浄用治具90が形成する気流に乗ってDIWのミストがノズルアーム42の下面に向かって流れるため、薬液のスプラッシュにより汚れやすいノズルアーム42の下面をより確実に洗浄することが可能となる。
【0065】
なお、チャンバ内洗浄工程の後であってかつチャンバ内溶剤置換工程の前に洗浄用治具90をチャンバ20内に搬入すると、例えば整流板26に付着しているDIWが液滴となって垂れ落ちて、基板搬送装置17のアームが濡れるおそれがある。しかしながら、チャンバ内洗浄工程の開始前に、洗浄用治具90をチャンバ20内に搬入すれば、そのようなことはない。
【0066】
洗浄用治具90はチャンバ内溶剤供給工程を実行しているときにも回転させてもよい。そうすることにより、IPAのミストが付着し難い場所にもより容易にミストを付着させることができ、置換効率を向上させることができる。
【0067】
チャンバ内溶剤供給工程において、洗浄流体ノズル81から加熱したIPAを噴射してもよい。これにより、より短時間で乾燥工程を完了させることができる。この目的のため、
図6に概略的に示すように、溶剤供給部84の溶剤供給路84bにヒータ84dを設けることができる。ヒータ84dは溶剤供給源84cとなるタンク(図示せず)に設けてもよい。
【0068】
チャンバ内洗浄工程において、洗浄流体ノズル81から加熱したDIWを噴射して、洗浄対象部を暖めておいてもよい。これにより、より短時間で乾燥工程を完了させることができる。この目的のため、
図6に概略的に示すように、洗浄水供給部83の洗浄水供給路83bにヒータ83dを設けることができる。ヒータ83dは洗浄水供給源83cとなるタンク(図示せず)に設けてもよい。また、加熱したDIWを用いることにより除去対象物をより効率よく溶解させることができる。
【0069】
チャンバ内乾燥工程において、低湿度ガス供給部28から加熱したドライエアを供給してよい。これにより、より短時間で乾燥を完了させることができる。この目的のため、
図7に概略的に示すように、低湿度ガス供給部28のガス供給路28cにヒータ28eを設けることができる。
【0070】
チャンバ内洗浄工程またはチャンバ内溶剤供給工程において、液受けカップ50の排気口52を介した排気の流量およびチャンバ20の側壁20aの排気口59を介した排気の流量を、両者の合計を前述したFL2+FL3に維持したまま変動させてもよい。そうすることにより、チャンバ20内の内圧を実質的に一定に維持したまま、チャンバ20内の気流を変化させることができる。この場合、洗浄対象部のミストが付着し難い部分にもミストを付着させ易くなる可能性がある。
【0071】
また、チャンバ内洗浄工程またはチャンバ内溶剤供給工程において、チャンバ20内の気流を変化させるため、洗浄用治具90の回転速度を変化(回転速度ゼロも含む)させてもよい。チャンバ内洗浄工程またはチャンバ内溶剤供給工程において、チャンバ20内の可動部材を移動させてもよい。例えば、ノズルアーム42を旋回させること、あるいは昇降させることにより、ノズルアーム42全体へのミストの付着を促進させることができる。
【0072】
チャンバ20の壁体(側壁20a、床板53等)の表面を親水性材料で形成するか、あるいは上記壁体の表面に親水性皮膜を設けるか親水化処理を施してもよい。親水性の表面に対する液体の接触角は小さくなるため、表面張力の低いIPAが表面で一層広がり易くなり、IPAの蒸発を促進することができる。壁体以外の洗浄対象部の表面を親水性としてもよい。
【0073】
図8に概略的に示すように、チャンバ20の壁体(側壁20a、床板53等)にヒータ95を取り付けてもよい。このヒータ95は、例えば、自動車用ガラスの結露を取り除くためのプリントされた電熱線と類似したものを用いることができる。壁体を加熱することによりIPAの蒸発を促進することができる。
【0074】
基板処理装置の処理対象の基板は、半導体ウエハに限定されるものではなく、他の種類の基板、例えばガラス基板、セラミック基板等であってもよい。
【0075】
次に、他の実施形態(以下において「第2実施形態」と呼ぶ)に係る処理ユニット(区別のために「処理ユニット16A」と呼ぶ)について、
図9〜
図11を参照して説明する。なお、ここまで説明してきた実施形態は、説明の便宜上、以下において「第1実施形態」と呼ぶこととする。第2実施形態を示す
図9〜
図11において、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0076】
この第2実施形態に係る処理ユニット16Aでは、液受けカップ50が、最も外側にある不動の(固定された)排気カップ501と、その内側にある処理液案内用の排液カップ502とを有する。
【0077】
排液カップ502は、排液カップ本体5021と、図示しない昇降駆動機構により昇降させることができる第1可動カップ要素5022及び第2可動カップ要素5023とを有している。また、保持部31には、リング状の第1回転カップ34及び第2回転カップ35が保持部31と一緒に回転するように取り付けられている。第1可動カップ要素5022及び第2可動カップ要素5023の上下方向位置を切り替えることにより、排液カップ本体5021の外周部5021aと第1可動カップ要素5022との間の有機液用の第1排液通路502a、第1可動カップ要素5022と第2可動カップ要素5023との間の酸性液用の第2排液通路502b、及び第2可動カップ要素5023と排液カップ本体5021の内周部5021bとの間のアルカリ性液用の第3排液通路502cのうちのいずれか一つの入口を開くことができる。ウエハWから飛散した後に第1回転カップ34及び第2回転カップ35との隙間を通って外方に飛散する処理液は、入口が開かれた排液通路(502a−cのいずれか)に流入する。これらの排液通路の底部にはそれぞれ排液路が接続され、これらの排液路は合流して排液路57となりその後に排液路56に合流する。
【0078】
排気カップ501は、外周筒部5011と、外周筒部5011の上端部から外周筒部5011半径方向内側に張り出す張出部5012とを有している。排気カップ501と排液カップ本体5021の外周部5021aとの間に、排気通路501aが形成される。排気通路501aの底部には排気口52が設けられ、この排気口52に排気ダクト(排気路)62が接続されている。第1回転カップ体34は、回転するウエハWから飛散した処理液が直接的に排気通路501a内に飛び込むことを防止する。
【0079】
回転するウエハWから飛散した処理液特に微細なミスト状の処理液がチャンバ20の側壁20aに到達することを防止するか少なくとも大幅に抑制するために、液受けカップ50の外側(排気カップ501の外側)にミストガード100が設けられている。ミストガード100は、外周筒部101と、この外周筒部101の上端部から外周筒部101の(半径方向)内側に向かって延びて排気カップ51の上方に張り出す張出部102とを有している。ミストガード100は、図示しない昇降機構により昇降させられて、高位置HG、低位置LG(
図10参照)をとることができる。
【0080】
排気カップ51の外周筒部5011の外側に、ミストガード100の外周筒部101を収容する円筒状のガードポケット103(ミストガード収容部)が設けられている。床板53はガードポケット103から外側に向かって延びている。
【0081】
第2実施形態における低湿度ガス供給部(区別のために「低湿度ガス供給部28A」と呼ぶ)は、低湿度かつ低酸素濃度のガスとしての窒素ガス及び低湿度のガスとしてのドライエアのうちのいずれか一方を選択的に供給することができるようになっている。流れ制御機器28d(開閉弁等)の下流側で、ガス供給路28cに別のガス供給路28eが合流している。ガス供給路28eには流れ制御機器28f(開閉弁等)が介設されている。ガス供給路28cにはドライエア供給源28bが接続され、ガス供給路28eには窒素ガス供給源28gが接続されている。流れ制御機器28d,28fを切り替えることにより、ノズル28aにドライエア及び窒素ガスのいずれか一方を供給することができる。
【0082】
チャンバ20内の雰囲気に晒される部材、特に、チャンバ20の側壁20aの内側面、床板53の上面、ミストガード100の張出部102の上面、ノズルアーム42の全表面、アーム駆動部(支柱、駆動機構収容部)の全表面にブラスト処理が施されている。物質の表面にブラスト処理を行うことにより、表面に微細凹凸が生じ、その結果、表面が親水化することは良く知られている。上記の各表面にブラスト処理を施して親水化させることにより、表面に付着した液体(液滴)を広範囲に広げることができ、容易に蒸発させることができる。
【0083】
ブラスト処理は洗浄流体ノズル81から吐出された液滴が付着しうる部位、つまり、床板53及びそれよりも上方にある部材の表面のなるべく多くの部位に施すことが好ましいが、特に乾燥遅れが問題となる部位のみ(すなわち、床板53及びそれよりも上方にある部材の表面の一部のみ)に施してもよい。
【0084】
図12に示すように、固体表面上での平衡接触角がθであるときに2つの固体表面が角張った稜(角部)(参照符号RDを付けた)において屈曲角αで交差している場合、稜に向かって進行してきた液滴は、稜における接触角がθ+αを越えるまで稜よりも先へ進めないという「濡れのピン留め効果」という現象が知られている。濡れのピン留め効果により稜に液滴が滞留すると、当該液滴の蒸発に長時間を要するため、チャンバ20内の乾燥が遅れることになる。濡れのピン留め効果による液滴滞留が問題となりそうな部位としては、例えば、ミストガード100の外周筒部101と張出部102とが交差する稜(
図10において一点鎖線で囲んだ部位100a)及び床板53の排液口54に臨む稜すなわち縁(
図10において一点鎖線で囲んだ部位53a)などが例示される。これらの稜は傾斜面の下端にあるため、液滴が集まりやすい。また、濡れのピン留め効果による液滴滞留が問題となりそうな他の部位として、ノズルアーム42に存在する角部及びアーム駆動部43に存在する角部(
図11も参照)等が例示される。この第2実施形態では、上述した部位にR面取りを施し、濡れのピン留め効果が生じないようにしている。
【0085】
なお、もし、
図9及び
図10に示す構成からミストガード100を除いた場合には、液受けカップ50の最も外側かつ最も上方にある構成要素、つまり排気カップ501の外周筒部5011と張出部5012とが交差する稜線にR面取りを施すことが考えられる。
【0086】
R面取りは、洗浄流体ノズル81から吐出された液滴が流れてきて留まりうる稜(角部)のなるべく多くの部位に施すことが好ましいが、特に乾燥遅れが問題となる部位のみに施してもよい。
【0087】
濡れのピン留め効果を効果的に防止するためのR面取りの曲率半径は2mm以上であり、この2mm以上という曲率半径は、機械加工のバリの除去のために行われる面取り、あるいは作業者の安全のためにシャープエッジを丸めるための面取りの曲率半径より大幅に大きい。
【0088】
ブラスト処理及びR面取りが適用されたノズルアーム42及びアーム駆動部43の一例を
図11に示す。このノズルアーム42は、ベース部421及び棒状部422を有する。各棒状部422の基端部はベース部421に固定されている。各棒状部422は先端部において概ね90度下向きに屈曲しており、下向きに延びる部分の下端部にノズル423(
図9の概略図におけるノズル41に相当)が設けられている。各棒状部422の内部には、各棒状部422の軸線方向に延びて対応するノズル423に処理液を供給する図示しない処理液流路が設けられている。
【0089】
アーム駆動部43は、概ね円柱状のベース部431と概ね円柱状の軸部432とを有する。ベース部431は床板53に設けられた穴に挿入されており、床板53の下方で処理ユニット16Aの図示しないフレームに固定されている。ベース部431に内蔵された図示しないアクチュエータにより、軸部432は昇降可能かつ鉛直軸線周りに回転可能である。
【0090】
ノズルアーム42のベース部421の側面と上面とが交わる稜42RDの部分にはR面取りが施されている。隣接する側面同士が交わる稜の部分にもR面取りを設けてもよい。ノズルアーム42の棒状部422は円柱状であり角部を殆ど有していない。アーム駆動部43の円柱状のベース部431の側周面と上面とが交わる稜43RDの部分にはR面取りが施されている。このようにR面取り(曲率半径2mm以上)を設けることにより、稜または角部において濡れのピン留め効果が生じることを防止することができる。
【0091】
ノズルアーム42のベース部421の表面の少なくとも一部例えば上面、好ましくはベース部421の全表面にはブラスト処理が施されている。ノズルアーム42の棒状部422の表面の少なくとも一部、好ましくは全表面にもブラスト処理が施されている。アーム駆動部43の円柱状のベース部431の側周面と上面の少なくとも一部、好ましくはベース部431の全表面にはブラスト処理が施されている。これにより、ブラスト処理が施された表面に付着した液(例えばIPA)が広がり、蒸発し易くなる。
【0092】
次に、第2実施形態に係る処理ユニット16Aの動作について説明する。
【0093】
この第2実施形態におけるウエハWに対する処理(薬液処理工程、リンス工程、溶剤置換工程、乾燥工程)は、先に説明した第1実施形態におけるウエハWに対する処理と概ね同じである。相違点のみ以下に述べる。まず、使用する処理液(酸性薬液、アルカリ性薬液、純水、有機溶剤)に応じて、第1可動カップ要素5022及び第2可動カップ要素5023の高さ位置が切り替えられ、排液カップ502の使用する処理液に対応する排液通路(有機液用の第1排液通路502a、酸性液用の第2排液通路502b及びアルカリ性液用の第3排液通路502cのいずれか一つ)を介した排液が行われる。また、薬液処理工程、リンス工程及び溶剤置換工程においてミストガード100が高位置HGに位置し、回転するウエハWから飛散する処理液がチャンバ20の側壁20aに到達することを抑制する。ミストガード100は、乾燥工程が実行されるときには低位置LGに位置する。
【0094】
この第2実施形態に係るチャンバ内の洗浄方法を構成する工程(チャンバ内洗浄工程、チャンバ内溶剤供給工程、チャンバ内乾燥工程)は、第1実施形態に係るチャンバ20内の洗浄方法と概ね同じである。相違点のみ以下に述べる。
【0095】
ミストガード100は、チャンバ内洗浄工程、チャンバ内溶剤供給工程及びチャンバ内乾燥工程の全工程において、低位置LGに位置させておく。ミストガード100を高位置HGに上げておくと、洗浄流体ノズル81から吐出されるDIW及びIPAのミストがチャンバ20内に行き渡らなくなるためである。
【0096】
チャンバ内洗浄工程が実行されるときには、第1可動カップ要素5022及び第2可動カップ要素5023の高さ位置を適宜設定することにより、酸性液用の第2排液通路502b又はアルカリ性液用の第3排液通路502cを開き、開いた排液通路を介して排液カップ502内に入り込んでくる洗浄流体ノズル81からの洗浄液(DIW)を排出する。このチャンバ内洗浄工程においては、チャンバ20内が低湿度雰囲気であると、洗浄液が蒸発しチャンバ20内に行き渡らなくなるおそれがあるため、第1実施形態と同様に、FFU21からチャンバ20内に清浄空気(低湿度ではない)が供給される。
【0097】
チャンバ内溶剤供給工程が実行されるときには、第1可動カップ要素5022及び第2可動カップ要素5023の高さ位置を適宜設定することにより、有機液用の第1排液通路502aを開き、この第1排液通路502aを介して排液カップ502内に入り込んでくる洗浄流体ノズル81からのIPAを排出する。この排出されたIPAを回収タンク65に回収し、回収したIPAをIPA供給路66を介して溶剤供給部84の溶剤供給源84cに送り再利用してもよい。このチャンバ内溶剤供給工程が実行されるとき、並びにチャンバ内乾燥工程が実行されるときには、FFU21からの清浄空気の供給が停止され、低湿度ガス供給部28Aからノズル28aを介して窒素ガスがチャンバ20内に供給される。チャンバ20内が酸素雰囲気であると酸素起因のしみがチャンバ20内に生じてしまうおそれがあるため、窒素ガスをチャンバ20内に供給することによりチャンバ20内の酸素濃度を下げている。
【0098】
なお、窒素ガスはドライエアよりも高価なため、ウエハWに対する液処理が行われる場合に低湿度ガス供給部28Aから供給される低湿度ガスとしては、第1実施形態と同様にドライエアが用いられる。
【0099】
この第2実施形態においては、洗浄流体ノズル81から吐出される液滴が付着する部材の表面にブラスト処理が施されている。一般に、チャンバ内部材の多くは親水性が高くない高分子材料部品であるため、液滴は広がり難く、液が蒸発(乾燥)するまでに時間がかかる傾向にある。しかしながら、部材表面にブラスト処理を施すことにより、部材表面が親水化し、液が広がり易くなるため、液が蒸発(乾燥)するまでに必要な時間を短縮することができる。つまり、チャンバ内溶剤供給工程で供給されたIPAのミストをチャンバ内乾燥工程中に短時間で蒸発させることができる。このため、チャンバ内の洗浄方法を実行するために必要な時間を短縮することができ、処理ユニット16Aのダウンタイムを短縮することができる。
【0100】
また、第2実施形態においては、稜(角部、縁)に曲率半径2mm以上のR面取りがされているため、濡れのピン留め効果により稜に液(洗浄流体ノズル81からのIPAのミスト)が液滴となって滞留することが防止または抑制される。このことによっても、チャンバ内溶剤供給工程で供給されたIPAのミストをチャンバ内乾燥工程中に短時間で蒸発させることができ、チャンバ内の洗浄方法を実行するために必要な時間を短縮することができる。