(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量が、前記骨格に存在するフッ素原子の全体重量を基準にして、1重量%から10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
前記骨格が、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−co−CTFE)またはポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン/ポリフッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−co−CTFE/PVdF−co−HFP)を含むことを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
前記ビニル系モノマーが、アクリル酸、アクリル酸ブチル、トリエチレングリコールアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、無水マレイン酸、エチレングリコールビニルエーテル及びイタコン酸から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項6に記載のセパレータ。
前記バインダに含まれた前記グラフト共重合体の含量が、前記バインダの全体重量を基準にして、0.1重量%から100重量%であることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
前記セパレータに含まれた前記バインダの含量が、前記無機酸化物の全体重量を基準にして、1重量%から50重量%であることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態による電池用セパレータ、該電池、及びバインダ用グラフト共重合体の製造方法について詳細に説明する。それは、例示として提示されるものであり、それによって本発明が制限されるものではなく、本発明は、後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0033】
本明細書に記載された「バインダ」は、「バインダ組成物」を含む広義の概念を意味する。
【0034】
一態様として、バインダは、グラフト共重合体を含むことができる。グラフト共重合体は、フッ素原子のうち一部が、塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換されたポリフッ化ビニリデン(PVdF)系ポリマーまたはポリフッ化ビニリデン系共重合体から誘導された骨格を有することができる。ペンダント鎖は、骨格にグラフトされ、ペンダント鎖は、親水性反復単位を含むことができる。
【0035】
ポリフッ化ビニリデン系ポリマーは、バインダとして少ない含量で使用するとき、十分な接着力を提供することができなかったり、あるいは、電池、例えばリチウム電池の充放電時、電解液の含浸及びリチウムイオンの移動によって、コーティング層が安定するように維持することができない。多孔性基材に、強い接着力を有する化学構造を有する2相構造のバインダ、シランカップリング剤を利用したバインダ、及びポリフッ化ビニリデン系ポリマーと、(不飽和カルボン酸エステルのような)親水性ポリマーとの相互侵入高分子網目(IPN:Interpenetrating polymer network)のバインダは、多孔性基材または無機酸化物の隣接する粒子に対する接着力を満足することができるが、多孔性基材及び無機酸化物の両者いずれに対する接着力をも満足するには十分ではない。
【0036】
一実施形態において、上記のバインダは、親水性と疎水性とを同時に有し、多孔性基材及び隣接する無機酸化物の粒子に対する接着力をいずれも向上させることができる。さらに、そのような向上した接着力によって、上記のバインダを含むセパレータを含むリチウム電池は、寿命特性が向上するのである。
【0037】
フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量は、骨格に存在するフッ素原子の全体重量を基準にして、1重量%から10重量%とすることができる。例えば、フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量は、骨格に存在するフッ素原子の全体重量を基準にして、1重量%から9重量%であるが、あるいは1重量%から8重量%である。フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量が、上記の範囲内である場合、バインダは、多孔性基材及び無機酸化物の粒子に対する接着力を向上させるために、適切な親水性の特性を有することができる。
【0038】
一実施形態において、グラフト共重合体の骨格は、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−co−CTFE)、またはポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン/ポリフッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−co−CTFE/PVdF−co−HFP)から誘導されることができる。例えば、グラフト共重合体の骨格は、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレンである。グラフト共重合体の骨格は、分枝に塩素を有することができる。塩素によって、グラフト共重合体を含むバインダを容易に製造することができるようになる。
【0039】
ペンダント鎖の含量は、グラフト共重合体の全体重量を基準にして、1重量%から99.99重量%とすることができる。一実施形態において、ペンダント鎖の含量は、グラフト共重合体の全体重量を基準にして、1重量%から89.99重量%であるか、あるいは1重量%から79.99重量%である。
【0040】
ペンダント鎖の重量平均分子量は、100g/モルから1000,000g/モルとすることができる。一実施形態において、ペンダント鎖の重量平均分子量は、100g/モルから900,000g/モルであるか、あるいは100g/モルから800,000g/モルである。ペンダント鎖の含量及び重量平均分子量が、上記の範囲内にある場合、バインダは、多孔性基材と無機酸化物との間、及び隣接する無機酸化物の粒子間の接着力を向上させるために、適切な親水性を有することができる。
【0041】
ペンダント鎖の親水性反復単位は、ビニル系モノマーから誘導され得る。例えば、親水性反復単位は、アクリル酸ビニルモノマー、アクリル酸ブチルビニルモノマー、トリエチレングリコールアクリレートビニルモノマー、アクリロニトリルビニルモノマー、アクリルアミドビニルモノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレートビニルモノマー、無水マレイン酸ビニルモノマー、エチレングリコールビニルエーテルビニルモノマー、及びイタコン酸ビニルモノマーから選択された1種以上を含むことができる。ビニル系モノマーは、炭素二重結合を有しており、骨格に結合されたグラフトされたペンダント鎖を有するグラフト共重合体を容易に製造することができる。
【0042】
バインダに含まれたグラフト共重合体の含量は、バインダの全体重量を基準にして、0.1重量%から100重量%とすることができる。グラフト共重合体の含量が上記の範囲内である場合、バインダは、多孔性基材と無機酸化物との間、及び隣接する無機酸化物の粒子間の接着力を向上させることができ、バインダを含むセパレータを含んだリチウム電池の寿命特性を向上させることができる。一実施形態において、グラフト共重合体は、他のバインダと共にバインダ組成物内に含まれ得る。
【0043】
他の態様として、セパレータは、例えば、多孔性基材と、多孔性基材の少なくとも一面に形成されるコーティング層と、を含み、コーティング層は、無機酸化物を含み、多孔性基材と無機酸化物との間に、または隣接する無機酸化物の粒子間にバインダを含むことができる。バインダは、前述のグラフト共重合体を含むバインダを含むか、あるいはグラフト共重合体から形成されたバインダを含むことができる。セパレータを含むリチウム電池は、寿命特性が改善される。
図1は、一実施形態によるセパレータの模式図を示したものである。例えば、セパレータ10は、多孔性基材1、及び多孔性基材1上の無機酸化物2及びバインダ3を含むことができる。
【0044】
無機酸化物は、α−Al
2O
3、γ−Al(O)OH、TiO
2、ZrO
2及びSiO
2から選択された1種以上を含むことができる。例えば、無機酸化物は、α−Al
2O
3を含む。一実施形態において、無機酸化物は、ギブサイト(γ−Al(OH)
3)、BaTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1−xLaZr
1−yTi
yO
3(PLZT)、Pb(Mg
3Nb
2/3)O
3−PbTiO
3(PMN−PT)、HfO
2、SrTiO
3、SiC、SnO
2、CeO
2、またはそれらの混合物を追加して含むことができる。
【0045】
無機酸化物は、リチウムイオン伝導性セラミックスを追加で含むことができる。リチウムイオン伝導性セラミックスは、例えば、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、ジルコニウム、ハフニウム、またはラザホージウムをドーピングされたリチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
1+xAl
xTi
2−xM
α(PO
4+β)
3、0<x<0.5、0≦α≦0.1、0≦β≦0.1であり、Mは、Zr、HfまたはRfである)、シリコンをドーピングされたリチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
1+x+yAl
xTi
2−xSi
yP
3−yO
12、0≦x≦1、0≦y≦1)、またはそれらの混合物とすることができる。
【0046】
セパレータに含まれたバインダの含量は、無機酸化物の全体重量を基準にして、1重量%から50重量%とすることができる。一実施形態において、バインダの含量は、無機酸化物の全体重量を基準にして、1重量%から45重量%であるか、あるいは1重量%から40重量%である。バインダの含量が、上記の範囲内である場合、コーティング層において隣接する無機酸化物の粒子は、リチウムイオンの伝達を低下させず、適切な大きさの気孔を維持することができ、コーティング層で隣接する無機酸化物の粒子間に結着力を維持することができる。
【0047】
多孔性基材は、ポリオレフィン系多孔性基材とすることができる。多孔性基材は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどをそれぞれ単独で、あるいはそれらを混合して形成した膜(membrane)状の基材またはファイバ状の基材とすることができる。
【0048】
多孔性基材は、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜が使用され得る。
【0049】
多孔性基材に対するバインダの接着力は、40mN/mm以上であり、例えば、50mN/mm以上である。
【0050】
さらに他の態様として、該電池は、正極と、陰極と、正極及び陰極間に介在するセパレータと、を含み、セパレータは、前述のセパレータとすることができる。例えば、上記の電池は、リチウム電池である。
【0051】
図3は、一実施形態によるリチウム二次電池100の構造の分解斜視図を示したものである。
【0052】
図3で示したリチウム二次電池100は、円筒状電池の構成を図示した図面を提示しているが、上記の実施形態によるリチウム利他電池は、それに限定されるものではなく、角形やポーチ型が可能であるということは言うまでもない。
【0053】
リチウム二次電池は、使用するセパレータ及び電解質の種類によって、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池及びリチウムポリマー電池に分類され得る。形態によって、例えば、円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類され得る。サイズによって、例えば、バルクタイプと薄膜タイプとに分けられる。一実施形態によるリチウム二次電池は、適切な形態を有することができる。
【0054】
図3を参照してさらに詳細に説明すれば、リチウム二次電池100は、円筒状であり、負極112;正極114;負極112と正極114との間に配置されたセパレータ113;負極112、正極114及びセパレータ113に含浸された電解質(図示せず);電池容器120;及び電池容器120を封入する封入部材140;を主な構成要素として構成されている。そのようなリチウム二次電池100は、負極112、セパレータ113、及び正極114を順に積層した後、スパイラル状に巻き取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【0055】
負極112は、電流集電体、及び電流集電体に形成される負極活物質層を含むことができる。
【0056】
負極に使用される電流集電体は、例えば、銅を使用することができる。一実施形態において、電流集電体は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したもの、またはアルミニウム−カドミウム合金などが使用され得る。また、表面に微細な凹凸を形成し、負極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など、多様な形態で使用され得る。
【0057】
負極活物質層を形成するための負極活物質は、適切な負極活物質を含むことができる。負極活物質の例としては、リチウム金属、リチウムと合金化可能な金属、遷移金属酸化物、リチウムをドーピングしたり脱ドーピングしたりすることができる物質、またはリチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出させることができる物質などが使用され得る。
【0058】
遷移金属酸化物の例としては、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物またはリチウムバナジウム酸化物などである。
【0059】
リチウムをドーピングしたり脱ドーピングしたりすることができる物質は、例えば、Si、SiO
x(0<x≦2)、Si−Y合金(Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素から16族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn、SnO
2、Sn−Y合金(Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素から16族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでありそれらのうち少なくとも一つと、SiO
2とを混合して使用することもできる。元素Yは、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせである。
【0060】
リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出させることができる物質は、リチウム電池で使用される適切な炭素系負極活物質とすることができる。例えば、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物である。結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛、または人造黒鉛を含むことができる。非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(低温焼成炭素)またはハードカーボン、メゾ相ピッチ炭化物、または焼成されたコークスなどを含むことができる。
【0061】
負極活物質層はまた、バインダ及び導電材を含むことができる。
【0062】
バインダは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に望ましく付着させる役割が行うことができる。バインダの例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリル化スチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂またはナイロンを含むことができる。
【0063】
導電材は、負極に導電性を付与するために使用され得る。適切な導電材は、構成される電池において化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であるならば、いかなるものでも使用可能である。導電材の例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ、銅・ニッケル・アルミニウム・銀などの金属粉末または金属ファイバなどを使用することができ、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料の1種、あるいはその1種以上を混合するものとすることができる。
【0064】
このとき、負極活物質、バインダ及び導電材の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルを使用することができる。例えば、負極活物質と、導電材とバインダとの混合重量との重量比は、98:2から92:8である。導電材及びバインダの混合比は1:1.0から3とすることができる。
【0065】
正極114は、電流集電体、及び電流集電体に形成される正極活物質層を含むことができる。
【0066】
電流集電体は、Alを使用することができる。また、負極に使用される電流集電体と同様に、正極電流集電体は、表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など、多様な形態で使用され得る。
【0067】
上記の正極活物質は、適切な正極活物質を含むことができる。例えば、正極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵/放出させることができる化合物が使用される。その具体的な例としては、Li
aA
1−bB1
bD
2(0.90≦a≦1.8、及び0≦b≦0.5);Li
aE
1−bB1
bO
2−cD
c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiE
2−bB1
bO
4−cD
c(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);Li
aNi
1−b−cCo
bB1
cD
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);Li
aNi
1−b−cCo
bB1
cO
2−αF1
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);Li
aNi
1−b−cCo
bB1
cO
2−αF1
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);Li
aNi
1−b−cMn
bB1
cD
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);Li
aNi
1−b−cMn
bB1
cO
2−αF1
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);Li
aNi
1−b−cMn
bB1
cO
2−αF1
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);Li
aNi
bE
cG
dO
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);Li
aNi
bCo
cMn
dG
eO
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);Li
aNiG
bO
2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);Li
aCoG
bO
2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);Li
aMnG
bO
2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);Li
aMn
2G
bO
4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiQO
2;LiQS
2;LiV
2O
5;LiZO
2;LiNiVO
4;Li
3−fJ
2(PO
4)
3(0≦f≦2);Li
3−fFe
2(PO
4)
3(0≦f≦2);LiFePO
4の化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物を使用することができる。
【0068】
例えば、正極活物質は、LiMn
2O
4、LiNi
2O
4、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、Li
2MnO
3、LiFePO
4またはLiNi
xCo
yO
2(0<x≦0.15、0<y≦0.85)である。
【0069】
上記の化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B1は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F1は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Zは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0070】
例えば、リチウムを可逆的に吸蔵/放出させることができる化合物は、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組み合わせのうちから選択される金属、並びにリチウムの複合酸化物のうち1種以上である。
【0071】
当該化合物表面に、コーティング層を有するものを使用することもできるということは言うまでもない。一実施形態において、上記の化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできる。該コーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング物質のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートなどのコーティング元素化合物を含むことができる。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、例えば、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。コーティング層は、上記の化合物にそのような元素を使用し、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法でコーティングすることができるのであれば、いかなるコーティング方法を使用してもよい。例えば、コーティング層は、スプレーコーティング法または浸漬法などを利用して形成される。
【0072】
正極活物質層はまた、バインダ及び導電材を含むことができる。
【0073】
バインダは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に望ましく付着させる役割が行うことができる。バインダの例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリル化スチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂またはナイロンなどとすることができる。
【0074】
導電材は、正極に導電性を付与するために使用され得る。構成される電池において、化学変化を引き起こさない適切な導電材が使用され得る。導電材の例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ、銅・ニッケル・アルミニウム・銀などの金属粉末または金属ファイバなどを使用することができ、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種、またはその1種以上を混合して使用するものとすることができる。
【0075】
そのとき、正極活物質、バインダ及び導電材の含量は、リチウム電池で適切に使用されるレベルとすることができる。例えば、正極活物質と、導電材とバインダとの混合重量との重量比は、98:2から92:8である。導電材及びバインダの混合比は、1:1.0から3である。
【0076】
負極112と正極114は、活物質、バインダ及び導電材を、溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、その組成物を電流集電体に塗布することによって製造され得る。一実施形態において、溶媒は、N−メチルピロリドンなどが使用され得る。溶媒の含量は、負極活物質100重量部に対して、または正極活物質100重量部に対して、1から10重量部とすることができる。
【0077】
正極114と負極112との間に、セパレータ113を含むことができる。そのようなセパレータ113は、前述のバインダ(グラフト共重合体を含み、グラフト共重合体は、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーまたはポリフッ化ビニリデン系共重合体の骨格、及び骨格に結合されたグラフトされたペンダント鎖を含み、ペンダント鎖は、親水性反復単位を含み、グラフト共重合体の骨格に存在するフッ素原子のうち一部が、塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換されたバインダ)を含むことができる。セパレータは、多孔性基材と無機酸化物との間、及び隣接する無機酸化物の粒子間の接着力を向上させることができるバインダを含み、寿命特性が向上したリチウム電池を提供することができる。
【0078】
セパレータ113は、フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量が、骨格に存在するフッ素原子の全体重量を基準に、1重量%から10重量%であるバインダを含むことができる。例えば、セパレータ113は、フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量が、骨格の全体重量を基準に、1重量%から9重量%、または1重量%から8重量%であるバインダを含む。バインダにおいて、フッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された量が上記の範囲内である場合、バインダは、多孔性基材と無機酸化物との間、及び隣接する無機酸化物の粒子間の接着力を向上させるための適切な親水性の特性を有することができる。
【0079】
バインダの骨格の種類、ペンダント鎖の含量及び重量平均分子量、親水性反復単位の種類、並びにグラフト共重合体の含量については、前述のところと同様であるので、以下説明を省略する。
【0080】
さらに他の態様として、バインダ用グラフト共重合体の製造方法は、骨格形成用ポリフッ化ビニリデン系ポリマーまたはポリフッ化ビニリデン系共重合体のフッ素原子のうち一部が塩素、臭素及びヨウ素のうち少なくとも1つの元素で置換された部分に対して、触媒ラジカル化を行う段階と、骨格のラジカル化された部分及び炭素−炭素二重結合をグラフト重合し、骨格に、親水性反復単位を有するペンダント鎖がグラフトされたグラフト共重合体を形成する段階と、を含むことができる。
【0081】
バインダの製造方法は、原子移動ラジカル重合(ATRP:atom transfer radical polymerization)反応であり、自由ラジカル濃度が低く維持され、主に骨格上に集中する。バインダの製造方法は、制御が容易であり、所望しない反応の発生を未然に防止することができる。
図2は、一実施形態による共重合体を製造する反応スキームを示したものである。
【0082】
触媒ラジカル化の触媒は、リガンド及び金属ハライドを含むことができる。例えば、リガンドは、ビピリジンを含み、金属ハライドは、Cu(I)Cl及びCu(II)Cl
2のうち少なくとも1種を含むことができる。原子移動ラジカル重合(ATRP)反応に使用可能な適切な触媒が使用され得る。
【0083】
骨格形成用ポリビニリデン系共重合体は、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン共重合体、またはポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン/ポリフッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を含むことができる。
【0084】
親水性反復単位は、ビニル系モノマーから誘導され得る。
【0085】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記で記載された実施例は、本発明を具体的に例示したり、あるいはそれについて説明したりするためのものに過ぎず、それによって本発明が制限されるものではない。
【0086】
また、ここに記載されていない内容は、その技術分野で当業者であるならば、十分に技術的に類推することができるものであるので、その説明を省略する。
【実施例】
【0087】
[実施例1:バインダの製造]
反応容器に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解させた固形粉含量が9.9gであるポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−co−CTFE、(株)クレハ、Kureha#7500、重量平均分子量700,000g/モル、CTFEは、4.3mmolである)100gを入れ、Aldrich Chemical Co.から購入したアクリル酸124g(1.73mol、405eq)、ビピリジン30.0g(0.19mol、45eq)、Cu(I)Cl 6.33g(64mmol、15eq)、及びCu(II)Cl
2 0.86g(6.4mmol、1.5eq)を添加し、N−メチル−2−ピロリドンと共に溶解させた後、ゴム隔膜で反応容器を密封した。
混合物を10分間撹拌させた後、アルゴンガスでパージした。次に、混合物に対して、140℃で24時間反応を進行させた後、水にグラフト共重合体を沈澱させた後で乾燥させた。
【0088】
次に、グラフト共重合体を、N−メチル−2−ピロリドンに再溶解させ、水に再沈殿させた後で精製し、真空オーブンで一晩乾燥させ、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン骨格にアクリル酸ビニルモノマーがペンダント鎖としてグラフトされたグラフト共重合体のバインダを製造した。
そのとき、ペンダント鎖の含量は、グラフト共重合体の全体重量を基準に、6.3重量%であった。
【0089】
[実施例2:バインダの製造]
反応容器に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解させた固形粉含量が9.9gであるポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−co−CTFE、(株)クレハ、Kureha#7500、重量平均分子量700,000g/モル、CTFEは、4.3mmolである)100gを入れ、Aldrich Chemical Co.から購入したアクリル酸124g(1.73mol、405eq)、ビピリジン30.0g(0.19mol、45eq)、Cu(I)Cl 6.33g(64mmol、15eq)、及びCu(II)Cl
2 0.86g(6.4mmol、1.5eq)を添加し、N−メチル−2−ピロリドンと共に溶解させた後、ゴム隔膜で反応容器を密封した。
混合物を10分間撹拌させた後、アルゴンガスでパージした。次に、混合物に対して、140℃で12時間反応を進行させた後、水にグラフト共重合体を沈澱させた後で乾燥させた。
【0090】
次に、グラフト共重合体を、N−メチル−2−ピロリドンに再溶解させて水に再沈殿させた後で精製し、真空オーブンで一晩乾燥させ、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン骨格にアクリル酸ビニルモノマーがペンダント鎖としてグラフトされたグラフト共重合体のバインダを製造した。
そのとき、ペンダント鎖の含量は、グラフト共重合体の全体重量を基準に、3重量%であった。
【0091】
[比較例1:バインダの製造]
反応容器に、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−co−CTFE、(株)クレハ、Kureha#7500、重量平均分子量700,000g/モル)をバインダとして準備した。
【0092】
[比較例2:バインダの製造]
反応容器に、N−メチル−2−ピロリドンに、固形粉含量が9.9gであるポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−co−CTFE、(株)クレハ、Kureha#7500、重量平均分子量700,000g/モル、CTFEは、4.3mmolである)100gと共に、Aldrich Chemical Co.から購入したポリアクリル酸(重量平均分子量130,000g/モル)10gを溶解させた。
混合物を40℃で30分間撹拌させた後で精製し、真空オーブンで一晩乾燥させ、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレンとポリアクリル酸とのブレンドのバインダを製造した。
【0093】
[実施例3:セパレータの製造]
厚み9μmのポリエチレン多孔性基材(Asahi社)を準備した。平均粒径が50nmであるα−Al
2O
3粉末、及び実施例1によって製造されたバインダを5:1の重量比で混合して分散液を製造した。分散液を、ポリエチレン多孔性基材の一面に、バーコータを利用して塗布した。塗布層を50℃のオーブンで4時間加熱乾燥させ、ポリエチレン多孔性基材の一面に、コーティング層が形成された12.1μm厚ほどのセパレータを製造した。そのとき、セパレータのコーティング層の厚みは、3.1μm±0.3μmほどであった。
【0094】
[実施例4:セパレータの製造]
実施例1によって製造されたバインダを使用した代わりに、実施例2によって製造されたバインダを使用したことを除いては、実施例3と同一の方法を利用してセパレータを製造した。そのとき、セパレータのコーティング層の厚みは、3μm±0.3μmほどであった。
【0095】
[比較例3,4:セパレータの製造]
実施例1によって製造されたバインダを使用した代わりに、比較例1及び比較例2によって製造されたバインダをそれぞれ使用したことを除いては、実施例3と同一の方法を利用して、12.0μm厚ほどのセパレータを製造した。そのとき、比較例1によって準備したバインダを使用して形成されたコーティング層の厚みは、3.0μmほどであり、比較例2によって製造されたバインダを使用した場合には、ポリマー間に相分離が起きてコーティング層が形成されなかった。
【0096】
[実施例5:リチウム電池の製造]
(5−1.正極の製造)
LiCoO
2粉末97.2重量部、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン1.5重量部、及び導電材としてのカーボンブラック1.3重量部を、N−メチルピロリドン溶媒中に分散させてスラリーを製造した。スラリーを、ドクターブレード(ギャップ:170mm)を使用して、アルミニウム電極基材上に145μm厚ほどに塗布し、真空中において、100℃で5.5時間熱処理して乾燥させた後、ロールプレスで圧延し、正極活物質層が形成された正極板を製造し、正極板を切り取り、横457mm及び縦65.5mmである帯状の正極を製造した。
【0097】
(5−2.負極の製造)
グラファイト98重量部、バインダとしてのスチレン−ブタジエンラバー1重量部、及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース1重量部を、N−メチルピロリドン溶媒中に分散させ、メノウ乳鉢で混合してスラリーを製造した。スラリーを、ドクターブレード(ギャップ:160mm)を使用して、銅集電体上に140μm厚ほどに塗布し、145℃の真空オーブンで6.5時間熱処理して乾燥させた後、ロールプレスで圧延し、負極活物質層が形成された負極板を製造し、負極板を切り取り、横448mm及び縦66.5mmである帯状の負極を製造した。
【0098】
(5−3.セパレータの準備)
実施例3によって製造されたセパレータを準備した。
【0099】
(5−4.リチウム電池の製造)
5−1によって製造された正極、5−2によって製造された負極、及び正極及び負極間に、実施例3によって製造されたセパレータを介在させ、電極組立体を製造した。その後、電極組立体をケースに内蔵させた後、1.13M LiPF
6が、エチレンカーボネート(EC)+ジメチレンカーボネート(DMC)+ジエチレンカーボネート(DEC)(3:5:2体積比)に溶解されている電解液を注入した後、真空に密封してリチウム電池を製造した。
【0100】
[実施例6:リチウム電池の製造]
実施例3によって製造されたセパレータの代わりに、実施例3によって製造されたセパレータを使用したことを除いては、実施例5と同一の方法でリチウム電池を製造した
【0101】
[比較例5,6:リチウム電池の製造]
実施例3によって製造されたセパレータの代わりに、比較例3,4によって製造されたセパレータをそれぞれ使用したことを除いては、実施例5と同一の方法でリチウム電池を製造した
【0102】
[評価例1:グラフト共重合体バインダの識別実験]
実施例1及び比較例1によって製造されたバインダに対して、グラフト共重合体バインダであるか否かということに係わる識別実験を下記のように行った。
【0103】
(1−1.赤外線分光法(IR:infrared spectroscopy)実験)
実施例1及び比較例1によって製造されたバインダに対して、赤外線分光法(IR)スペクトルを実施した。その結果を
図4A及び
図4Bにそれぞれ示した。
図4Aを参照すれば、実施例1によって製造されたバインダは、波長数1,500cm
−1〜2,000cm
−1ほどで、下側にカルボニルピークが存在したが、
図4Bを参照すれば、比較例1によって製造されたバインダは、上記のようなカルボニルピークが存在しなかった。それにより、実施例1によって製造されたバインダは、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン骨格に、アクリル酸ビニルモノマーがペンダント鎖としてグラフトされたグラフト共重合体のバインダであるということが分かる。
【0104】
(1−2.
19F−NMR(nuclear magnetic resonance)実験)
実施例1及び比較例1によって製造されたバインダに対して、
19F−NMR実験を実施した。その結果を
図5に示した。
図5を参照すれば、実施例1及び比較例1によって製造されたバインダは、いずれも化学シフト(δ)値として、−120ppm近傍で、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン骨格に存在するフッ素原子のピークが存在するが、比較例1によって製造されたバインダのフッ素原子のピーク強度に比べ、実施例1によって製造されたバインダのフッ素原子のピーク強度が弱かった。実施例1によって製造されたバインダはまた、化学シフト(δ)値で−160ppm〜−170ppmほどのところで、新たなフッ素原子のピークを示している。それにより、実施例1によって製造されたバインダは、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン骨格に、アクリル酸ビニルモノマーがペンダント鎖としてグラフトされたグラフト共重合体のバインダであるということが分かる。
【0105】
(1−3.ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)実験)
実施例1及び比較例1によって製造されたバインダに対して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)実験を実施した。その結果を
図6に示した。
図6を参照すれば、実施例1によって製造されたバインダの溶出時間が、比較例1によって製造されたバインダの溶出時間に比べ、若干速いということを確認することができる。それにより、実施例1によって製造されたバインダの分子量が、比較例1によって製造されたバインダの分子量より大きいということが分かり、実施例1によって製造されたバインダは、ポリフッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン骨格に、アクリル酸ビニルモノマーがペンダント鎖としてグラフトされたグラフト共重合体のバインダであるということが分かる。
【0106】
[評価例2:接着力評価]
実施例1及び比較例1,2によって製造されたバインダを、9μm厚のポリエチレン多孔性基材(GC0910、東レバッテリーセパレータフィルム(株)製)表面に塗布し、コーティング層を形成した。接着力評価のために、一定の長さと幅とを有する3Mテープを、コーティング層表面に付着させた後、(株)島津製作所の引っ張り強度試験機を利用した180°剥離試験を行い、コーティング層をポリエチレン多孔性基材から引き離す力(mN/mm)、すなわち、ポリエチレン多孔性基材に対する接着力を測定した。そのような測定方法については、
図7に示した。その結果を下記表1に示した。
【0107】
【表1】
【0108】
表1を参照すれば、実施例1及び比較例1によって製造されたバインダの接着力は、それぞれ58.1mN/mm及び28.2mN/mmであった。それにより、実施例1によって製造されたバインダのポリエチレン多孔性基材に対する接着力が、比較例1によって製造されたバインダのポリエチレン多孔性基材に対する接着力に比べ、2倍以上向上した。一方、比較例2によって製造されたバインダは、ポリマー間に相分離が起き、コーティング層形成に困難さが伴った。
【0109】
[評価例3:耐熱性評価]
実施例1及び比較例1,2によって製造されたバインダを、9μm厚のポリエチレン多孔性基材(GC0910、東レバッテリーセパレータフィルム(株)製)表面に塗布してコーティング層を形成した。耐熱性評価、すなわち、ポリエチレン多孔性基材に対する耐熱性評価のために、熱機械分析装置(TMA:thermomechanical analyzer)、Q400EM/Q400)を利用して、130℃及び150℃で、それぞれTD(transverse direction)及びMD(machine direction)の熱収縮率(%)を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0110】
【表2】
【0111】
表2を参照すれば、130℃及び150℃で、実施例1によって製造されたバインダのポリエチレン多孔性基材に係わるTD方向及びMD方向の熱収縮率は、比較例1によって製造されたバインダのポリエチレン多孔性基材に係わるTD方向及びMD方向の熱収縮率とほぼ類似する結果を示した。一方、比較例2によって製造されたバインダは、ポリマー間に相分離が起き、コーティング層形成に困難さが伴った。
【0112】
[評価例4:寿命特性評価]
実施例5,6及び比較例5によって製造されたリチウム電池に対して、25℃で0.2C rateの電流で、電圧が4.2Vに至るまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら、電流が0.01Cになるまで定電圧充電した。次に、放電時に、電圧が3.05Vに至るまで、0.2Cの定電流で放電した(化成段階)。
【0113】
化成段階を経たリチウム電池に対し、25℃で0.5C rateの電流で、電圧が4.2Vに至るまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら、電流が0.01Cになるまで定電圧充電した。次に、放電時に、電圧が3.0Vに至るまで、0.5Cの定電流で放電するサイクルを120回反復した。充放電実験の結果を下記表3及び
図8に示した。容量維持率は、下記数式1から計算した。
数式1:容量維持率(%)=[120回目のサイクルでの放電容量/最初のサイクルでの放電容量]×100
【0114】
【表3】
【0115】
表3及び
図8を参照すれば、実施例5,6によって製造されたリチウム電池は、比較例5によって製造されたリチウム電池に比べ、容量維持率が向上している。それにより、実施例5,6によって製造されたリチウム電池が、比較例5によって製造されたリチウム電池に比べ、寿命特性が改善されているということを確認することができる。