(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2つの側部の少なくとも一方は、前記底部から離間する方向において、前記2つの側部の間隔が近接するように他方の側部へと傾斜する傾斜部を一部に有する請求項1から5のいずれか一項に記載の電流センサ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る電流センサ100の第1構成例を示す。電流センサ100は、電流導体に流れる電流の値を非接触で検出する。
図1は、直交する3方向(X、Y、およびZ方向)のうち、Y方向に流れる電流の値を電流センサ100が検出する例を示す。電流センサ100は、導電部10と、検出部20と、シールド30と、を備える。
【0011】
導電部10は、第1方向に延伸し、当該第1方向に電流を流す電流導体である。ここで、第1方向は、
図1におけるY方向と略同一でよい。導電部10は、電流を流す導電性の材料を有する。導電部10は、電流が流れる値に応じて、周囲に磁場を発生させる。導電部10は、形成される材料および流れる電流の値に応じて、発熱する場合がある。
【0012】
検出部20は、導電部10に流れる電流によって生じる磁場を検出する。検出部20は、一方向の磁場を検出するセンサ素子を有することが望ましい。検出部20は、例えば、
図1におけるX方向と略平行な磁場を検出する。即ち、検出部20は、Y方向およびZ方向と略平行な磁場が入力しても、当該磁場を検出しなくてよい。
【0013】
シールド30は、導電部10および検出部20を囲う。シールド30は、XZ平面と略平行な面における断面形状がU字形状を有してよい。
図1は、シールド30のZ方向の高さをH、Y方向の奥行きをL、X方向の内側の幅をWとする。シールド30は、内側に導電部10および検出部20を配置させ、当該導電部10および検出部20に外部から入力する磁場を遮蔽して、検出部20に対する外乱の影響を低減させる。
【0014】
図2は、本実施形態に係る第1構成例の電流センサ100の断面の構成例を示す。
図2に示す第1構成例の電流センサ100において、
図1に示された電流センサ100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
図2は、
図1におけるXZ面と略平行な面における電流センサ100の断面の一例を示す。シールド30は、底部32と、第1側部34と、第2側部36と、を有する。
【0015】
底部32は、一方の面が導電部10に対向し、他方の面が電流センサ100の外部を向く。なお、底部32が導電部10に対向する側を、電流センサ100の内側とする。底部32は、XY平面と略平行に形成されてよい。
【0016】
第1側部34および第2側部36の2つの側部は、導電部10および検出部20を間に挟んで底部32から+Z方向に延伸する。第1側部34および第2側部36は、導電部10および検出部20を挟んで対向し、ZY面と略平行に形成されてよい。第1側部34の一方の面および第2側部36の一方の面は、導電部10および検出部20が設けられる電流センサ100の内側を向く。即ち、底部32、第1側部34、および第2側部36の一方の面によって形成されるシールド30の内壁が、導電部10および検出部20を囲うことになる。
【0017】
また、Z方向において、第1側部34および第2側部36の一端は底部32にそれぞれ接続され、他端は何も接続されなくてよい。即ち、シールド30の底部32の一方の面に対向する側は、シールド30の開口を形成する。
図2は、シールド30の開口のX方向の幅(間隔)が、シールドの内側の幅Wと略等しい例を示す。
【0018】
ここで、導電部10は、断面形状がX方向に長い長方形または楕円でよく、一方の面が底部32を向き、他方の面が検出部20を向く。なお、導電部10の断面形状はこれに限定されることはなく、円形、多角形等を有してよい。また、検出部20は、導電部10とシールド30の開口との間に設けられ、導電部10が発生する磁場のうち、X方向の磁場を検出する。検出部20は、例えば、導電部10が+Y方向に流れる電流に応じて発生する−X方向の磁場を検出する。また、検出部20は、導電部10が−Y方向に流れる電流に応じて発生する+X方向の磁場を検出してもよい。
【0019】
導電部10、検出部20、およびシールド30は、導電部10に流れる電流の方向に平行な面に対して対称な形状を有することが望ましい。例えば、
図2は、導電部10、検出部20、およびシールド30が、直線A−A'を通るZY面と略平行な面に対して対称な形状を有する例を示す。このような電流センサ100は、外乱の影響を低減させて、導電部10に流れる電流の値を検出することができる。
【0020】
図3は、本実施形態に係る電流センサ100の第2構成例を示す。第2構成例の電流センサ100において、
図1および
図2に示された第1構成例の電流センサ100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の電流センサ100は、X方向におけるシールド30の開口の幅Gが、シールド30の内側の幅Wよりも小さい例を示す。
【0021】
図4は、本実施形態に係る第2構成例の電流センサ100の断面の構成例を示す。シールド30の第1側部34は、−Z方向側の一端が底部32に接続され、+Z方向側の他端が+X方向に延伸する第1頂部42に接続される。第2側部36は、−Z方向側の一端が底部32に接続され、+Z方向側の他端が−X方向に延伸する第2頂部44に接続される。第1頂部42および第2頂部44は、X方向において予め定められた間隔だけ離間して設けられ、当該間隔が、シールド30の開口幅Gとなる。
図4は、導電部10、検出部20、およびシールド30が、直線A−A'を通るZY面と略平行な面に対して対称な形状を有する例を示す。
【0022】
第2構成例の電流センサ100においても、検出部20は、導電部10が発生する磁場のX方向の磁場を検出する。また、電流センサ100は、シールド30を設けることで、外乱の影響を低減させて、導電部10に流れる電流の値を検出することができる。以上の本実施形態に係る電流センサ100が、導電部10に流れる電流の値を検出した結果について、次に説明する。
【0023】
図5は、本実施形態に係る電流センサ100の検出部20の位置と、当該検出部20に入力する磁束密度の変化の一例を示す。
図5は、X軸が導電部10の検出部20を向く面から検出部20までの距離を示す。即ち、X軸は、検出部20が配置された場合の導電部10および検出部20の間の距離を示す。また、
図5は、検出部20が配置された場合に、導電部10から発生した磁束密度のうち、当該検出部20に入力する磁束密度の変化量をパーセンテージで示す。
【0024】
例えば、横軸の導電部10および検出部20の間の距離の変化に伴い、縦軸が変化する場合、検出部20は、位置の変化に応じて、当該検出部20に入力する磁束密度が変化することになる。即ち、検出部20は、位置が変動すると、導電部10に略同一の電流が流れても異なる検出結果を出力することになる。
【0025】
図5は、第1構成例および第2構成例の電流センサ100について、検出部20の位置に対して入力する磁束密度の変化を、シミュレーションで算出した結果を示す。なお、
図5の縦軸の目盛りは、導電部10および検出部20の間の距離が2mmの場合に、当該検出部20に入力する磁束密度の値で規格化した結果を示す。即ち、
図5は、導電部10および検出部20の距離が2mmの場合の当該検出部20に入力する磁束密度を基準として、当該基準の磁束密度からの変化量を示す。ここで、第1構成例および第2構成例のシールド30は、高さHを12.5mm、奥行きLを12mm、内側の幅Wを10.5mmとした。また、第2構成例のシールド30は、開口幅Gを2mmとした。また、導電部10は、X方向の幅を8mm、Z方向の厚さを2mmとした。
【0026】
図5においてaで示すグラフは、第1構成例の電流センサ100のシミュレーション結果の一例を示す。第1構成例の電流センサ100は、検出部20の位置が導電部10から離間するに伴い、検出部20に入力する磁束密度が単調に低下する傾向が算出された。例えば、検出部20の位置が2mmから3mmに変化すると、−0.5%程度変化してしまう。したがって、第1構成例の電流センサ100は、検出部20の最適な位置を決定することが困難であり、また、検出部20の位置変動に応じて、検出結果も変動してしまうことがわかる。
【0027】
図5においてbで示すグラフは、第2構成例の電流センサ100のシミュレーション結果の一例を示す。第2構成例の電流センサ100は、検出部20の位置が導電部10から離間するに伴い、1.5mm程度の位置で極小点となり、当該極小点を超えると単調増加する傾向が算出された。したがって、第2構成例の電流センサ100は、導電部10から1.5mm程度離間した位置が検出部20の最適な位置と考えることができる。しかしながら、導電部10および検出部20の間隔が1.5mm程度の場合、導電部10が発熱すると、当該熱の影響を検出部20が受けやすく、検出部20が不安定になることがある。
【0028】
また、例えば、検出部20の位置が1.5mmから2.5mmに変化すると、+1%程度変化してしまい、3mmの位置では、+2.5%/mm程度の傾きとなってしまう。したがって、第2構成例の電流センサ100は、検出部20を最適な位置にしても、導電部10の発熱の影響で不安定な動作をする場合があり、また、検出部20の位置変動に応じて、検出結果が変動してしまうことがわかる。
【0029】
そこで、本実施形態に係る電流センサ200は、導電部10から十分離間した位置に検出部20を配置させ、当該検出部20を安定に動作させる。このような電流センサ200について、次に説明する。
【0030】
図6は、本実施形態に係る電流センサ200の第1構成例を示す。電流センサ200は、電流導体に流れる電流の値を非接触で検出する。
図2は、直交する3方向(X、Y、およびZ方向)のうち、Y方向に流れる電流の値を電流センサ200が検出する例を示す。電流センサ200は、導電部210と、検出部220と、シールド230と、を備える。
【0031】
導電部210は、第1構成例および第2構成例の電流センサ100の導電部10と同様に動作する。即ち、導電部210は、Y方向と略同一の第1方向に延伸し、当該第1方向に電流を流す。導電部210は、銅、アルミ等の金属等を有してよく、また、銅合金、アルミ合金等でよい。
【0032】
検出部220は、第1構成例および第2構成例の電流センサ100の検出部20と同様に動作する。即ち、検出部220は、導電部210に流れる電流によって生じる磁場を検出する。検出部220は、一例として、ホール素子を有する。この場合、検出部220は、ホール素子対を有することが望ましい。これに代えて、検出部220は、磁気抵抗素子を有してよい。また、検出部220は、ホール素子および磁気抵抗素子の少なくとも一方を有してもよい。
【0033】
シールド230は、導電部210および検出部220を囲う。シールド230は、第1構成例および第2構成例の電流センサ100のシールド30と同様に、導電部10および検出部20へと外部から入力する磁場を遮蔽して、検出部20に対する外乱の影響を低減させる。シールド230は、透磁率の高い強磁性体材料を有する。シールド230は、Fe(鉄)およびNi(ニッケル)の一方を含んでよい。また、シールド230は、FeおよびNiの合金であってもよく、この場合、強磁性体材料はパーマロイであってよい。
【0034】
シールド230の側部の一部は、内側を向く傾斜部を有する。
図6は、シールド230のZ方向の高さをH、Y方向の奥行きをL、X方向の内側の幅をWとする。また、後述するが、シールド230の高さHのうち、傾斜部となる部分をh1とし、傾斜部によって形成される開口の幅をw1とする。
【0035】
図7は、本実施形態に係る第1構成例の電流センサ200の断面の構成例を示す。
図7に示す第1構成例の電流センサ200において、
図6に示された電流センサ200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
図7は、
図6におけるXZ面と略平行な面における電流センサ200の断面の一例を示す。シールド230は、底部232と、第1側部234と、第2側部236と、を有する。
【0036】
底部232は、一方の面が導電部210に対向し、他方の面が電流センサ200の外部を向く。なお、底部232が導電部210に対向する側を、電流センサ200の内側とする。底部232は、XY平面と略平行に形成されてよい。
【0037】
第1側部234および第2側部236の2つの側部は、導電部210および検出部220を間に挟んで底部232から+Z方向に延伸する。2つの側部の少なくとも一部は、底部232から離間すると共に、互いの間隔が近接する。例えば、2つの側部の少なくとも一方は、底部232から離間する方向において、2つの側部の間隔が近接するように他方の側部へと傾斜する傾斜部を一部に有する。
図7は、第1側部234の高さHのうち、h1で示す部分が、第2側部236との間隔が近接するように形成された傾斜部の例を示す。同様に、第2側部236のh1で示す部分が、第1側部234との間隔が近接するように形成された傾斜部を示す。
【0038】
第1側部234および第2側部236の傾斜部以外の残りの部分は、導電部210および検出部220を挟んで対向し、ZY面と略平行に形成されてよい。第1側部234の一方の面および第2側部236の一方の面は、導電部210および検出部220が設けられる電流センサ100の内側を向く。即ち、底部232、第1側部234、および第2側部236の一方の面によって形成されるシールド230の内壁が、導電部210および検出部220を囲うことになる。
【0039】
また、Z方向において、第1側部234および第2側部236の端部は底部232にそれぞれ接続され、底部232とは反対側の端部は、シールド230の開口238を形成する。
図7は、シールド230の開口238のX方向の幅w1(間隔)が、傾斜部によって狭まり、シールドの内側の幅Wよりも小さくなる例を示す。
【0040】
以上の導電部210、検出部220、およびシールド230は、導電部210に流れる電流の方向に平行な面に対して対称な形状を有することが望ましい。例えば、
図7は、導電部210、検出部220、およびシールド230が、直線A−A'を通るZY面と略平行な面に対して対称な形状を有する例を示す。このような電流センサ200は、外乱の影響を低減させて、導電部210に流れる電流の値を検出することができる。
【0041】
図8は、本実施形態に係る第2構成例の電流センサ200の断面の構成例を示す。第2構成例の電流センサ200において、
図7に示された第1構成例の電流センサ200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の電流センサ200は、第1側部234および第2側部236の2つの側部に形成される傾斜部の部分h1が、第1構成例の電流センサ200の傾斜部の部分h1よりも大きい例を示す。傾斜部の部分h1は、検出部220の開口を向く側の面と比較して、より底部232側まで形成されることが望ましい。
【0042】
また、第2構成例の電流センサ200は、開口幅w1が第1構成例の電流センサ200の開口幅w1よりも大きい例を示す。例えば、開口部の開口幅w1は、検出部220の電流が流れる方向に対する幅よりも大きいことが望ましい。また、開口部の開口幅w1は、導電部210の電流を流す方向に対する幅(
図8においては導電部210のX軸方向の長さ)よりも大きいことが更に望ましい。このように、第2構成例の電流センサ200は、開口幅w1を大きくすることで、後述するが、製造工程等を簡略化させることができる。
【0043】
第2構成例の電流センサ200においても、検出部220は、導電部210が発生する磁場のX方向の磁場を検出する。また、電流センサ200は、シールド230を設けることで、外乱の影響を低減させて、導電部210に流れる電流の値を検出することができる。なお、
図7および
図8において、導電部210および検出部220の間の距離をDで示す。以上の本実施形態に係る電流センサ200が、導電部210に流れる電流の値を検出した結果について、次に説明する。
【0044】
図9は、本実施形態に係る電流センサ200の検出部220の位置と、当該検出部220に入力する磁束密度の変化の一例を示す。
図9は、X軸が導電部210の検出部220を向く面から検出部220までの距離Dを示す。なお、
図9の横軸および縦軸は、
図5で示した横軸および縦軸と略同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
図9は、第1構成例および第2構成例の電流センサ200について、検出部220の位置に対して入力する磁束密度の変化を、シミュレーションで算出した結果を示す。即ち、
図9は、
図5と同様に、距離Dが2mmの場合の検出部220に入力する磁束密度を基準として、当該基準の磁束密度からの変化量を示す。
【0046】
ここで、第1構成例および第2構成例のシールド230は、高さHを12.5mm、奥行きLを12mmとした。また、第1構成例のシールド230は、内側の幅Wを10.5mm、開口幅w1を6.5mm、傾斜部高さh1を2.5mmとした。また、第2構成例のシールド230は、内側の幅Wを12.5mm、開口幅w1を8.5mm、傾斜部高さh1を9mmとした。また、導電部210は、X方向の幅を8mm、Z方向の厚さを2mmとした。
【0047】
図9においてcで示すグラフは、第1構成例の電流センサ200のシミュレーション結果の一例を示す。第1構成例の電流センサ200は、検出部220の位置が導電部210から離間するに伴い、3mm程度の位置で極小点となり、当該極小点を超えるとわずかに増加して極大点となってから、再び減少する傾向が算出された。したがって、第1構成例の電流センサ200は、導電部210から3mm程度離間した位置が検出部220の最適な位置と考えることができる。
【0048】
以上のように、第1構成例の電流センサ200は、電流センサ200の最適位置が、
図5で説明した第2構成例の電流センサ100の最適位置(1.5mm程度)と比較して、導電部210から略2倍離間した位置となり、当該導電部210の発熱による検出部220への影響を低減できる。また、第1構成例の電流センサ200は、例えば、検出部220の位置が3mmから±1mm程度変化しても、検出部220に入力する磁束密度の変化は±0.2%程度の範囲内である。
【0049】
図9においてdで示すグラフは、第2構成例の電流センサ200のシミュレーション結果の一例を示す。第2構成例の電流センサ200は、第1構成例の電流センサ200と同様に、検出部220の位置が導電部210から離間するに伴い、3mm程度の位置で極小点となり、当該極小点を超えるとわずかに増加して極大点となってから、再び減少する傾向が算出された。したがって、第2構成例の電流センサ200も、導電部210から3mm程度離間した位置が検出部220の最適な位置と考えることができる。
【0050】
以上のように、第2構成例の電流センサ200も、電流センサ200の最適位置が、第2構成例の電流センサ100の最適位置と比較して、導電部210から略2倍離間した位置となり、導電部210の発熱による検出部220への影響を低減できる。また、第2構成例の電流センサ200は、例えば、検出部220の位置が3mmから±1mm程度変化しても、検出部220に入力する磁束密度の変化は±0.2%程度の範囲内である。
【0051】
したがって、第1構成例および第2構成例の電流センサ200は、検出部220を導電部210の発熱の影響を低減できる程度に離間させた位置に配置させ、当該検出部220を安定に動作させることができる。また、第1構成例および第2構成例の電流センサ200は、検出部220の位置が1mm程度変動しても、電流値の検出結果を±0.2%程度の範囲内にできることがわかる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る電流センサ200は、シールド230の導電部210および検出部220を囲う領域内の、底部232から離間する方向において、導電部210に流れる電流によって生じる磁場の磁束密度の変化が、極小値を有するように、2つの側部の間隔を近接させる。そして、電流センサ200は、当該2つの側部の間隔を徐々に近接させることにより、極小値を形成する曲線を緩やかにし、また、極小値の位置を、導電部210からより離間させることができる。
【0053】
これにより、電流センサ200は、例えば、検出部220を導電部210よりも2mm以上離間した位置に配置することができる。また、電流センサ200は、例えば、シールド230の導電部210および検出部220を囲う領域内において、導電部210からの離間距離に対する磁場の磁束密度の変化率の絶対値が略0.2%/mm以下の領域に、検出部220を配置することができる。即ち、電流センサ200は、導電部210および検出部220の間の熱的な絶縁性を向上させ、安定な電流検出動作を保つことができる。また、電流センサ200は、比較的高い電圧(例えば500V)が発生する導電部210と、比較的低い電源電圧(例えば5V)で動作させる検出部220とを離間させることができ、電気的な絶縁性(絶縁耐圧)を向上させ、安定な電流検出動作を保つことができる。
【0054】
以上の本実施形態に係る電流センサ200のシールド230は、特に、開口幅w1を導電部210および/または検出部220の幅と比較して大きくすることで、容易に組み立てることができる。
図10から
図12には、第2構成例の電流センサ200を組み立てる過程の一例を示す。
【0055】
図10は、本実施形態に係る第2構成例の電流センサ200のシールド230が形成された例を示す。シールド230は、予め定められた大きさに切削された1のシールド板を、折り曲げることにより、形成されてよい。また、
図10のシールド230のXZ平面に平行な断面形状に形成された薄板をY方向に積層することにより、形成されてもよい。そして、このように形成されたシールド230の内部に、導電部210を配置する。
【0056】
図11は、本実施形態に係る第2構成例の電流センサ200のシールド230で導電部210を囲った例を示す。
図11は、形成したシールド230および導電部210のZ方向における相対的な位置を移動させて、形成したシールド230で導電部210を囲った例を示す。なお、シールド230の開口幅w1が導電部210の幅(
図11においては導電部210のX軸方向の長さ)と比較して大きく形成される場合、シールド230または導電部210を位置合わせしてから、Z方向に移動させるだけで、シールド230の内部に導電部210を配置させることができる。
【0057】
これに代えて、シールド230の開口幅w1が導電部210の厚さ(
図11においては導電部210のZ軸方向の長さ)と比較して大きく形成されてもよい。この場合、例えば、シールド230の開口が導電部210の厚さ方向に向くように位置合わせしてから、シールド230内部に導電部210を相対的に移動させ、その後、導電部210のY方向を中心に、シールド230を相対的に90°回転させることで、シールド230の内部に導電部210を配置させることができる。そして、このようなシールド230の内部に、更に検出部220を配置する。
【0058】
図12は、本実施形態に係る第2構成例の電流センサ200の構成例を示す。
図12は、検出部220を基板240に実装させてから、当該基板240を相対的に移動させることで、磁場を検出する位置に検出部220を配置する例を示す。即ち、検出部220は、基板240の一方の面に実装されてよい。この場合、検出部220は、表面実装型のデバイスであることが望ましい。
【0059】
また、検出部220は、半導体基板等に形成されることが望ましい。この場合、検出部220は、半導体基板に略垂直な磁束密度の成分を検出する平面型ホール素子等を有してよい。また、当該検出部220は、半導体基板に略平行な方向の磁束密度の成分を、当該半導体基板に略垂直な方向に変換する磁気収束板等を更に有してよい。これにより、検出部220は、X方向に略平行な方向の磁束密度の成分を検出することができる。また、検出部220が、半導体基板に略平行な磁束密度の成分を検出する縦型ホール素子および/または磁気抵抗素子等を有する場合、当該検出部220は、このような磁気収束板を有さなくてもよい。
【0060】
基板240は、第1貫通孔242および第2貫通孔244が形成される。第1貫通孔242および第2貫通孔244は、Y方向と略平行で長さがシールド230の奥行きLよりも大きい2辺と、X方向と略平行で長さがシールド230の厚さよりも大きい2辺とを有する、長方形の形状でそれぞれ形成されることが望ましい。第1貫通孔242は、シールド230の第1側部234が挿入される。また、第2貫通孔244は、シールド230の第2側部236が挿入される。
【0061】
第1貫通孔242および第2貫通孔244のX方向における第1距離d1は、シールド230の開口幅w1未満でよい。ここで、第1距離d1は、第1貫通孔242および第2貫通孔244の最短距離でよい。即ち、第1距離d1は、第1貫通孔242のY方向と略平行な2辺のうちの第2貫通孔244側の辺と、第2貫通孔244のY方向と略平行な2辺のうちの第1貫通孔242側の辺と、の間の距離でよい。
【0062】
これにより、検出部220をシールド230の底部232に対向させつつ、検出部220が搭載された基板240と、シールド230および導電部210との相対的な位置を移動させることができる。即ち、基板240を位置決めして、シールド230に対して相対的にZ方向に移動させることで、第1貫通孔242および第2貫通孔244は、シールド230の対応する第1側部234および第2側部236にそれぞれ挿入することができる。
【0063】
また、第1貫通孔242および第2貫通孔244のX方向における第2距離d2は、シールド230の外側の幅W2よりも小さい長さで形成されることが望ましい。ここで、第2距離d2は、第1貫通孔242および第2貫通孔244の最長距離でよい。即ち、第2距離d2は、第1貫通孔242のY方向と略平行な2辺のうちの第2貫通孔244側とは反対側の辺と、第2貫通孔244のY方向と略平行な2辺のうちの第1貫通孔242側とは反対側の辺と、の間の距離でよい。
【0064】
第2距離d2がシールド230の外側の幅W2よりも小さく形成されるので、Z方向において基板240をシールド230の方向に相対的に移動させると、基板240は傾斜部に接触して位置決めされる。即ち、第1側部234の外側の面は、第1貫通孔242のY方向と略平行な2辺のうちの第2貫通孔244側とは反対側の辺に接触し、また、第2側部236の外側の面は、第2貫通孔244のY方向と略平行な2辺のうちの第1貫通孔242側とは反対側の辺に接触する。このように基板240が位置決めされた場合に、導電部210および検出部220の間の距離Dが、
図9で説明したように、検出部220に入力する磁束密度の変化が極小となる距離となることが望ましい。
【0065】
即ち、第2距離d2は、導電部210および検出部220の間の距離Dが磁束密度の変化の極小点に対応するように、基板240を位置決めする長さに予め定められる。これにより、Z方向において基板240をシールド230の方向に相対的に移動させることで、導電部210が発生させる磁場を検出する最適な位置に検出部220を位置決めすることができる。
【0066】
以上のように、第2構成例の電流センサ200は、導電部210、シールド230、基板240を、XY平面と略平行な面上において位置決めしてからZ方向で相対的に移動させることで、簡便に製造することができる。したがって、既に敷設された導電部210、また、Y方向に長い導電部210等に対しても、容易に電流センサ200を組み立てることができる。
【0067】
以上の本実施形態に係る電流センサ200は、シールド230の2つの側部の少なくとも一部が、底部232から離間すると共に、互いの間隔が近接する例を説明した。なお、シールド230の2つの側部は、底部232から離間した第1箇所における距離が、第1箇所と比較して底部232により近い第2箇所における距離よりも小さく形成されていれば、更に他の構造が形成されてもよい。なお、シールド230の2つの側部は、当該第2箇所における2つの側部の距離が、当該第2箇所と比較して底部232により近い第3箇所における距離よりも小さく形成されることが望ましい。例えば、
図13、
図14、および
図15のようなシールド230であってもよい。
【0068】
図13は、本実施形態に係るシールド230の第1変形例の断面構成を示す。
図13は、
図8に示す本実施形態に係る第2構成例の電流センサ200のシールド230に、第1端部302および第2端部304が更に形成された例を示す。第1端部302は第1側部234に、第2端部304は第2側部236に、それぞれ形成されてよい。第1端部302および第2端部304は、一例として、YZ面に略平行に形成されてよい。
図13は、第1端部302および第2端部304が、シールド230の高さHのうち、h2の部分に形成された例を示す。
【0069】
なお、
図12において、基板240がシールド230の傾斜部の予め定められた位置に位置決めされるように、第1貫通孔242および第2貫通孔244の第2距離d2を予め定められた距離に定めることを説明した。これに代えて、または、これに加えて、シールド230は、第1ストッパ306および第2ストッパ308が外壁に設けられてもよい。第1ストッパ306および第2ストッパ308は、樹脂等で形成されてよい。また、第1ストッパ306および第2ストッパ308は、シールド230の第1側部234および第2側部236をそれぞれ囲むように、リング状の樹脂で形成されてよい。また第1ストッパ306および第2ストッパ308は、シールド230本体の切削等により形成されてもよい。第1ストッパ306および第2ストッパ308は、基板240の第1貫通孔242および第2貫通孔244がシールド230の第1側部234および第2側部236にそれぞれ挿入された場合に、当該基板240をシールド230の傾斜部の予め定められた位置に位置決めする。
【0070】
図14は、本実施形態に係るシールド230の第2変形例の断面構成を示す。
図14は、
図13に示した第1変形例のシールド230と同様に、第2構成例の電流センサ200のシールド230に、第1端部302および第2端部304が更に形成された例を示す。
図14は、第1端部302および第2端部304が、底部232から離間すると共に、互いの間隔が離間する例を示す。これに代えて、第1端部302および第2端部304は、底部232から離間すると共に、互いの間隔が近接してもよい。
【0071】
図15は、本実施形態に係るシールド230の第3変形例の断面構成を示す。
図15は、
図13に示した第1変形例のシールド230と同様に、第2構成例の電流センサ200のシールド230に、第1端部302および第2端部304が更に形成された例を示す。第1側部234は、Z方向における底部232とは反対側の端部に、+X方向に延伸する第1端部302と接続される。第2側部236は、Z方向における底部232とは反対側の端部に、−X方向に延伸する第2端部304と接続される。第1端部302および第2端部304は、X方向において予め定められた間隔だけ離間して設けられ、当該間隔が、シールド30の開口幅Gとなる。
【0072】
以上の本実施形態に係るシールド230の2つの側部は、連続的に互いの距離が近接する傾斜部を有する例を説明した。これに代えて、2つの側部の少なくとも一方は、底部232から離間する方向において、2つの側部の間隔が段階的に近接するように複数の段差部を一部に有してもよい。
【0073】
図16は、本実施形態に係るシールド230の第4変形例の断面構成を示す。第4変形例のシールド230は、第1側部234および第2側部236の2つの側部が、段階的に異なる例を示す。
図16は、2つの側部がそれぞれ2つの段差部を有し、底部232から離間する方向において、当該2つの側部の間隔がW、w1、w3と、段階的に近接する例を示す(W>w1>w3)。なお、第1側部234の第1端部302および第2側部236の第2端部304は、開口を形成してよく、
図16は、開口幅がw3の例を示す。
【0074】
以上の変形例に係るシールド230を有する電流センサ200であっても、第1構成例および/または第2構成例の電流センサ200と略同様に、検出部220に入力する磁束密度の変化の極小値を形成する曲線を緩やかにし、また、極小値の位置を、導電部210からより離間させることができる。これにより、本実施形態に係る電流センサ200は、検出部220の組み立て誤差、検出部220固定部材の変形、検出部220への振動および衝撃等が加わること等により、検出部220の位置が変動しても、電流検出動作を安定に実行することができる。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0076】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。