特許第6560704号(P6560704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6560704半導体装置の製造方法および基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6560704
(24)【登録日】2019年7月26日
(45)【発行日】2019年8月14日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20190805BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   H01L21/30 563
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-49002(P2017-49002)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-152517(P2018-152517A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 元
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一行
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−154829(JP,A)
【文献】 特開2006−313916(JP,A)
【文献】 特開2011−018778(JP,A)
【文献】 特開2014−196568(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する工程と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1処理工程と、
前記第1処理工程の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2処理工程と、
を有し、
前記第1処理工程では、等方的に処理を行い、
前記第2処理工程では、異方的に処理を行う
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2処理工程の後に、前記基板の面上の前記ガイドパターンが形成されていない部分に二種類以上の有機材料を含むフォトレジスト材料を塗付する工程と、
を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法
【請求項3】
前記第1処理ガスまたは前記第2処理ガスのいずれか一方は、前記基板に対する親水化処理を行う水素含有ガスであり、
前記第1処理ガスまたは前記第2処理ガスのいずれか他方は、前記基板に対する疎水化処理を行うフッ素含有ガスである
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法
【請求項4】
前記第1処理工程では、前記基板にバイアスを印加しない状態で処理を行い、
前記第2処理工程では、前記基板にバイアスを印加した状態で処理を行う
請求項1から3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2処理工程では、前記第1処理工程のときよりも前記処理室内の圧力を低くした状態で処理を行う
請求項1から4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1処理工程と前記第2処理工程の間に、前記処理室にパージガスを供給する工程を有する
請求項1からのいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
ガイドパターンが形成された基板を収容する処理室と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1ガス供給部と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2ガス供給部と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給して等方的に処理を行う第1処理手順の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給して異方的に処理を行う第2処理手順を行わせる様に前記第1ガス供給部と前記第2ガス供給部とを制御する制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項8】
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する手順と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給して等方的に処理を行う第1処理手順と、
前記第1処理手順の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給して異方的に処理を行う第2処理手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項9】
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する手順と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給して等方的に処理を行う第1処理手順と、
前記第1処理手順の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給して異方的に処理を行う第2処理手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の大集積化やダウンサイジング化等の進展に伴い、次世代のリソグラフィ技術として、ブロック共重合体の自己組織化現象を利用した自己組織化リソグラフィが注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−216368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、自己組織化リソグラフィによるパターニングを適切かつ効率的に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する工程と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1処理工程と、
前記第1処理工程の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2処理工程と、
前記第2処理工程の後に、前記基板の面上の前記ガイドパターンが形成されていない部分に二種類以上の有機材料を含むフォトレジスト材料を塗付する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る技術によれば、自己組織化リソグラフィによるパターニングを適切かつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】自己組織化リソグラフィによるパターニング処理の概要を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成例を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る基板処理装置が備えるコントローラの構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る基板処理工程における基板表面特性改質処理のシーケンス例を示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る基板処理工程における基板表面特性改質処理のシーケンス例を示すチャート図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるレジスト材料の塗布硬化処理に用いる装置の要部構成例を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る基板処理工程におけるレジスト材料の塗布硬化処理のシーケンス例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(1)自己組織化リソグラフィによるパターニング処理の概要
先ず、本発明の一実施形態におけるパターニング処理の概要を説明する。ここで説明するパターニング処理は、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として行われるもので、自己組織化リソグラフィ(Directed Self−Assembly:DSA)により行うものである。
【0010】
DSAによるパターニング処理は、例えば、図1(a)に示す手順で行われる。
【0011】
(ガイド形成基板の用意:S101)
DSAによるパターニング処理にあたっては、先ず、ガイド形成基板を用意する。ガイド形成基板は、図1(b)に示すように、シリコンウエハ等の基板11の表面上にガイドパターン12が形成されてなるものである。ガイドパターン12は、例えばラインアンドスペースパターンやホールパターン等を形成するためのガイドとなるもので、公知の化学増幅型レジスト組成物を用いて公知のレジストパターン形成方法と同様の手法により形成されたものである。
【0012】
(基板の表面特性改質:S102)
ガイド形成基板を用意したら、続いて、図1(c)に示すように、そのガイド形成基板の表面、特に少なくともガイド形成基板を構成する基板11の露出する表面11aおよび同じくガイド形成基板を構成するガイドパターン12の側面12aに対して、それぞれの表面の特性を改質する処理を行う。
【0013】
かかる表面特性改質処理は、後述するDSAレジスト材料13をガイドパターン12に沿って規則正しく並ばせるために行う。詳しくは、図1(d)に示すように、後述するDSAレジスト材料13は、2種類以上の有機材料13a,13bを含むものであり、基板11やガイドパターン12等の表面特性によっては、これらの有機材料13a,13bの配列が整い難く積層配列してしまうという問題がある。このような問題を解消すべく、表面特性改質処理を行って、基板11の表面11aとガイドパターン12の側面12aとの濡れ性を相違させ、各有機材料13a,13bがガイドパターン12に沿って規則性を持つ配列を形成し易くするのである。
【0014】
なお、ここで行う表面特性改質処理の具体的な内容については、詳細を後述する。
【0015】
(DSAレジスト材料の塗布・硬化:S103)
基板11およびガイドパターン12に対する表面特性改質処理の後は、次いで、図1(e)に示すように、基板11の面上のガイドパターン12が形成されていない部分に、フォトレジスト材料としてのDSAレジスト材料13を塗付する。
【0016】
DSAレジスト材料13は、互いに異なる2種類以上の有機材料(ポリマーブロック)13a,13bが共重合してなるブロックコポリマーであり、各有機材料13a,13bが互いに溶けにくい構造であるために熱処理を施すことでミクロな相分離を生じるように構成されたものである。このようなDSAレジスト材料13としては、代表的な一例として、分子量の異なる2種類の高分子を結合させてなるものであり、有機材料の一種としてのポリメチルメタクリレート(PMMA)13aと、有機材料の他の一種としてのポリスチレン(PS)13bと、を含むジブロックコポリマーであるポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)が挙げられる。なお、DSAレジスト材料13は、自己組織化により相分離構造を形成できるものであれば、特に限定されるものではないが、良好に相分離構造を形成することができる観点からは、ブロック共重合体が好ましく、スチレン単位−メタクリル酸エステル単位からなるブロック共重合体がより好ましく、スチレン単位−メチルメタクリレート単位からなるジブロック共重合体がさらに好ましい。DSAレジスト材料13を塗付する手法についても、特に限定されるものではないが、例えばスピンコート法を用いて行えばよい。
【0017】
DSAレジスト材料13を塗付した後は、所定時間を置いて乾燥させ、さらにベーク処理を行って、DSAレジスト材料13を硬化させる。ベーク処理の手法についても、特に限定されるものではないが、例えばオーブンやホットプレート等を用いて、80℃〜400℃程度の温度で、10秒〜120分程度の時間で、加熱を行うことが考えられる。
【0018】
このような処理を経ることで、DSAレジスト材料13は、PMMA13aとPS13bとの相分離が生じ、これらPMMA13aおよびPS13bがガイドパターン12に沿って規則正しく並んだ状態で硬化することになる。
【0019】
(DSAレジスト改質:S104)
DSAレジスト材料13が硬化した後は、必要に応じて、図1(f)に示すように、PMMA13aの部分を酸化アルミニウム(Al)に改質させる処理を行う。PMMA13aの部分をAlに改質させることで、PS13bに対するエッチング選択比を向上させることができる。Alへの改質処理は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスと酸化ガス(例えば、水(HO)や過酸化水素(H))とを交互に供給して行えばよい。なお、Alへの改質処理は、必須ではなく、省略しても構わない。
【0020】
(パターン形成:S105)
その後は、図1(g)に示すように、硬化したDSAレジスト材料13が有する相分離構造のうちの一部の相、具体的にはPS13bの部分を、自己組織化により相分離した各相のエッチングレートの差を利用しつつ、エッチング処理により除去する。このとき、ガイドパターン12を併せて除去するようにしても構わない。エッチング処理は、ケミカルドライエッチング、ケミカルウェットエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE)や、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等といった、公知の手法を用いればよい。
【0021】
これにより、基板11上には、PMMA13aの部分が残存するパターンが形成される。このパターンをマスクとして基板11に対するエッチング処理を行えば、その基板11にPMMA13aによるパターンを転写して、ラインアンドスペースパターンやホールパターン等を形成することができる。
【0022】
(2)基板処理装置の構成
次に、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成について説明する。
ここで説明する基板処理装置は、上述した一連のパターニング処理のうち、基板表面特性改質処理(S102)を行う際に用いられるものである。
【0023】
(処理容器)
図2に示すように、基板処理装置100は、処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば、アルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料または石英により、横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、上部容器202aと下部容器202bとを備えており、これらの間に仕切部204が設けられている。仕切部204よりも上方の上部容器202aに囲まれた空間は、表面特性改質処理(S102)の処理対象となるガイド形成基板(単にウエハともいう)200を処理する処理空間(処理室ともいう)201として機能する。一方、仕切部204よりも下方の空間の下部容器202bに囲まれた空間は、ウエハ200を移載するための搬送空間(移載室ともいう)203として機能する。移載室203として機能するために、下部容器202bの側面には、ゲートバルブ1490に隣接した基板搬入出口1480が設けられており、その基板搬入出口1480を介してウエハ200が図示しない搬送室との間を移動するようになっている。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。さらに、下部容器202bは、接地されている。
【0024】
(基板支持部)
処理室201内には、ウエハ200を支持する基板支持部(サセプタ)210が設けられている。サセプタ210は、ウエハ200を載置する載置面211を有した基板載置台212を備える。基板載置台212は、載置面211上のウエハ200の温度を調整する温度調整部213a,213bと、処理室201内にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極219a,219bと、を内蔵している。また、基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0025】
基板載置台212に内蔵された温度調整部213a,213bは、熱媒体の供給による温度調整(加熱または冷却)によって、載置面211上のウエハ200を所定温度に維持するように構成されている。熱媒体としては、例えばエチレングリコールやフッ素系の熱媒体が用いられる。このような温度調整部213a,213bは、例えば載置面211の内周側と外周側といったように、載置面211の面内を複数領域に分割した場合の各領域のそれぞれに別個に設けられている。そして、各温度調整部213a,213bには、熱媒体の流量を調整する流量調整部213c,213dがそれぞれに個別に接続されている。各流量調整部213c,213dは、後述するコントローラ260からの指示に従い、それぞれが独立して制御される。これにより、温度調整部213a,213bは、載置面211上のウエハ200に対して、各領域別に独自の温度調整を行うゾーン制御が可能となるように構成されている。
【0026】
基板載置台212に内蔵されたバイアス電極219a,219bは、上述した温度調整部213a,213bと同様に、例えば載置面211の内周側と外周側といったように、載置面211の面内を複数領域に分割した場合の各領域のそれぞれに別個に設けられている。そして、各バイアス電極219a,219bには、印加するバイアス電圧を調整するためのインピーダンス調整部220a,220bおよびインピーダンス調整電源221a,221bが、それぞれに個別に接続されている。各インピーダンス調整部220a,220bは、後述するコントローラ260からの指示に従い、それぞれが独立して制御される。これにより、バイアス電極219a,219bからは、処理室201内に対して、印加するバイアス電圧を各領域別に独自に調整するゾーン制御が可能となるように構成されている。
【0027】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、さらには処理容器202の外部で昇降機構218に接続されている。そして、昇降機構218を作動させることで、基板載置台212を昇降させることが可能に構成されている。シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0028】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口1480の位置(ウエハ搬送位置)となるように下降し、ウエハ200の処理時には、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン207は、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナ等の材質で形成することが望ましい。
【0029】
(ガス導入口)
処理室201の上部には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口241が設けられている。ガス導入口241に接続されるガス供給ユニットの構成については後述する。
【0030】
ガス導入口241に連通する処理室201内には、ガス導入口241から供給されるガスを分散させて処理室201内に均等に拡散させるために、分散板234bを有したシャワーヘッド234が配されていることが望ましい。
【0031】
分散板234bの支持部材231bには、整合器251と高周波電源252が接続され、電磁波(高周波電力やマイクロ波)が供給可能に構成される。これにより、分散板234bを通じて、処理室201内に供給されるガスを励起してプラズマ化し得るようになっている。つまり、分散板234b、支持部材231b、整合器251および高周波電源252は、後述する第1処理ガスおよび第2処理ガスをプラズマ化するものであり、プラズマ化したガスを供給する第1ガス供給部(詳細は後述)の一部および第2ガス供給部(詳細は後述)の一部として機能する。
【0032】
(ガス供給部)
ガス導入口241には、共通ガス供給管242が接続されている。共通ガス供給管242には、第1ガス供給管243a、第2ガス供給管244a、第3ガス供給管245aが接続されている。第1ガス供給管243aを含む第1ガス供給部243からは第1処理ガス(詳細は後述)が主に供給され、第2ガス供給管244aを含む第2ガス供給部244からは第2処理ガス(詳細は後述)が主に供給される。第3ガス供給管245aを含む第3ガス供給部245からは、主にパージガスが供給される。
【0033】
(第1ガス供給部)
第1ガス供給管243aには、上流方向から順に、第1ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、および、開閉弁であるバルブ243dが設けられている。そして、第1ガス供給源243bから、第1元素を含有するガス(第1処理ガス)が、MFC243c、バルブ243d、第1ガス供給管243a、共通ガス供給管242を介して、処理室201に供給される。
【0034】
第1処理ガスは、例えば、水素(H)含有ガスである。具体的には、水素(H)ガスやアンモニア(NH)ガス等が用いられる。
【0035】
第1ガス供給管243aのバルブ243dよりも下流側には、第1不活性ガス供給管246aの下流端が接続されている。第1不活性ガス供給管246aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源246b、MFC246c、および、バルブ246dが設けられている。そして、不活性ガス供給源246bから、不活性ガスが、MFC246cおよびバルブ246dを介して、第1ガス供給管243aに供給される。
不活性ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。なお、不活性ガスとして、Nガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0036】
主に、第1ガス供給管243a、MFC243cおよびバルブ243dにより、第1ガス供給部(水素含有ガス供給部ともいう)243が構成される。なお、第1ガス供給源243bを、第1ガス供給部243に含めて考えてもよい。
また、主に、第1不活性ガス供給管246a、MFC246cおよびバルブ246dにより、第1不活性ガス供給部が構成される。なお、不活性ガス供給源246b、第1ガス供給管243aを、第1不活性ガス供給部に含めて考えてもよい。さらには、第1不活性ガス供給部を、第1ガス供給部243に含めて考えてもよい。
【0037】
(第2ガス供給部)
第2ガス供給管244aには、上流方向から順に、第2ガス供給源244b、MFC244c、および、バルブ244dが設けられている。そして、第2ガス供給源244bから、第2元素を含有するガス(第2処理ガス)が、MFC244c、バルブ244d、第2ガス供給管244a、共通ガス供給管242を介して、処理室201に供給される。
【0038】
第2処理ガスは、第1処理ガスが含有する第1元素(例えばH)とは異なる第2元素(例えばフッ素)を含有するもので、例えば、フッ素(F)含有ガスである。具体的には、フッ素(F)ガス、フッ化窒素(NF)ガス、炭フッ化ガス(CF,C,C)等が用いられる。
【0039】
第2ガス供給管244aのバルブ244dよりも下流側には、第2不活性ガス供給管247aの下流端が接続されている。第2不活性ガス供給管247aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源247b、MFC247c、および、バルブ247dが設けられている。そして、不活性ガス供給源247bから、不活性ガスが、MFC247cおよびバルブ247dを介して、第2ガス供給管244aに供給される。
不活性ガスについては、第1不活性ガス供給部の場合と同様である。
【0040】
主に、第2ガス供給管244a、MFC244cおよびバルブ244dにより、第2ガス供給部(フッ素含有ガス供給部ともいう)244が構成される。なお、第2ガス供給源244bを、第2ガス供給部244に含めて考えてもよい。
また、主に、第2不活性ガス供給管247a、MFC247cおよびバルブ247dにより、第2不活性ガス供給部が構成される。なお、不活性ガス供給源247b、第2ガス供給管244aを、第2不活性ガス供給部に含めて考えてもよい。さらには、第2不活性ガス供給部を、第2ガス供給部244に含めて考えてもよい。
【0041】
(第3ガス供給部)
第3ガス供給管245aには、上流方向から順に、第3ガス供給源245b、MFC245c、および、バルブ245dが設けられている。そして、第3ガス供給源245bから、パージガスとしての不活性ガスが、MFC245c、バルブ245d、第3ガス供給管245a、共通ガス供給管242を介して、処理室201に供給される。
【0042】
ここで、不活性ガスは、例えば、Nガスである。なお、不活性ガスとして、Nガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることができる。
【0043】
主に、第3ガス供給管245a、MFC245cおよびバルブ245dにより、第3ガス供給部(パージガス供給部ともいう)245が構成される。なお、第3ガス供給源245bを、第3ガス供給部245に含めて考えてもよい。
【0044】
好ましくは、上述の各ガス供給部に設けられた、流量制御部(MFC)としては、ニードルバルブやオリフィスなどの、ガスフローの応答性が高い構成がよい。例えば、ガスのパルス幅がミリ秒オーダーになった場合は、MFCでは応答できないことがあるが、ニードルバルブやオリフィスの場合は、高速なON/OFFバルブと組み合わせることで、ミリ秒以下のガスパルスに対応することが可能となる。
【0045】
(排気系)
処理室201(上部容器202a)の内壁上面には、処理室201の雰囲気を排気する第1排気部としての排気口221が設けられている。排気口221には、第1排気管としての排気管224が接続されており、排気管224には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器227、真空ポンプ223が順に直列に接続されている。主に、排気口221、排気管224、圧力調整器227により、第1排気部(排気ライン)が構成される。なお、真空ポンプ223を第1排気部に含めるように構成してもよい。
【0046】
移載室203の側面下部には、移載室203の雰囲気を排気する第2排気部としての移載室排気口304が設けられている。移載室排気口304には、第2排気管としての排気管306が接続されており、排気管306には、バルブ308、移載室203内を所定の圧力に制御するAPC等の圧力調整器310、真空ポンプ(ただし不図示)が順に直列に接続されている。主に、移載室排気口304、バルブ308、排気管304、圧力調整器310により、第2排気部(排気ライン)が構成される。なお、図示しない真空ポンプを第2排気部に含めるように構成してもよい。
【0047】
(制御部)
基板処理装置100は、その基板処理装置100を構成する各部の動作を制御するために、制御部(制御手段)としてのコントローラ260を有している。
【0048】
図3に示すように、コントローラ260は、CPU(Central Processing Unit)260a、RAM(Random Access Memory)260b、記憶装置260c、I/Oポート260dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM260b、記憶装置260c、I/Oポート260dは、内部バス260eを介して、CPU260aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ260には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置261や、外部記憶装置262が接続可能に構成されている。
【0049】
記憶装置260cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置260c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ、ウエハ200への処理に用いるプロセスレシピを設定するまでの過程で生じる演算データや処理データ等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ260に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM260bは、CPU260aによって読み出されたプログラム、演算データ、処理データ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0050】
I/Oポート260dは、ゲートバルブ1490、昇降機構218、流量調整部213c,213d、インピーダンス調整部220a,220b、整合器251、高周波電源252、MFC243c,244c,245c,246c,247c、バルブ243d,244d,245d,246d,247d,308、圧力調整器227,310、真空ポンプ、等に接続されている。
【0051】
演算部としてのCPU260aは、記憶装置260cからの制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置261からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置260cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。また、受信部285から入力された設定値と、記憶装置260cに記憶されたプロセスレシピや制御データとを比較・演算して、演算データを算出可能に構成されている。また、演算データから対応する処理データ(プロセスレシピ)の決定処理等を実行可能に構成されている。そして、CPU260aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ1490の開閉動作、昇降機構218の昇降動作、流量調整部213c,213dの媒体供給、インピーダンス調整部220a,220bの電圧調整、整合器251の電力の整合動作、高周波電源252のオンオフ制御、MFC243c,244c,245c,246c,247cの動作制御、バルブ243d,244d,245d,246d,247d,308のガスのオンオフ制御、圧力調整器227,238の圧力調整動作、真空ポンプのオンオフ制御、等を制御するように構成されている。
【0052】
なお、コントローラ260は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)262を用意し、かかる外部記憶装置262を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ260を構成することができる。ただし、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置262を介して供給する場合に限らない。例えば、ネットワーク263(インターネットや専用回線)等の通信手段を用い、外部記憶装置262を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置260cや外部記憶装置262は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置260c単体のみを含む場合、外部記憶装置262単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。
【0053】
(3)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置100を用いて、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、DSAによるパターニング処理における基板表面特性改質処理(S102)を行う際のシーケンス例について、図4および図5を参照して説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ260により制御される。
【0054】
なお、本明細書において、「ウエハ」という文言を用いた場合には、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等とその積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という文言を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハに形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
したがって、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハに形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。
また、本明細書において「基板」という文言を用いた場合も「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0055】
以下に、本実施形態における基板表面特性改質処理(S102)の手順を説明する。
【0056】
(基板搬入工程:S201)
基板表面特性改質処理(S102)に際しては、先ず、処理対象となるウエハ200を基板処理装置100の処理室201に搬入させる。具体的には、基板載置台212を昇降機構218によって下降させ、リフトピン207が貫通孔214から基板載置台212の上面側に突出させた状態にする。その状態で、処理室201内を所定の圧力に調圧した後、ゲートバルブ1490を開放し、ゲートバルブ1490の開口からリフトピン207上にウエハ200を載置させる。そして、ウエハ200をリフトピン207上に載置させた後、昇降機構218によって基板載置台212を上昇させて、ウエハ200を基板載置面211上に載置させるとともに、そのウエハ200を処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)に位置させる。
【0057】
(減圧・昇温工程:S202)
続いて、処理室201内が所定圧力(真空度)となるように、処理室排気管224を介して処理室201内を排気する。この際、圧力センサ(不図示)が測定した圧力値に基づき、圧力調整器227としてのAPCバルブの弁の開度をフィードバック制御する。なお、処理室201内を所定の圧力に排気する際には、一度、到達可能な真空度まで真空排気してもよい。
また、温度センサ(不図示)が検出した温度値に基づき、載置面211上のウエハ200が所定温度となるように、流量調整部213c,213dが熱媒体の流量をフィードバック制御しつつ、温度調整部213a,213bに熱媒体を供給する。このときの所定温度は、例えば、室温(RT)〜150℃の範囲内、好ましくはRT〜100℃の範囲内とすることが考えられる。RT以下であると結露する可能性があり、150℃を超えるとガイドパターン12の形成材料(レジスト材料)が変質してしまう可能性が生じるからである。
この間、処理室201内に残留している水分あるいは部材からの脱ガス等が有る場合は、真空排気やNガスの供給によるパージによって除去してもよい。
そして、処理室201内の雰囲気が安定したら、次工程に移る。
【0058】
(第1処理工程:S203)
第1処理工程(S203)では、第1ガス供給部243から処理室201内に第1処理ガスとしてのH含有ガスを供給する。H含有ガスとしては、例えばHガスやNHガス等が挙げられる。以下の説明ではH含有ガスがHガスである場合を例に挙げる。具体的には、バルブ243dを開き、MFC243cで所定流量に調整しつつ、第1ガス供給源243bからHガスを供給する。所定流量は、例えば、100sccm以上10000sccm以下である。流量調整されたHガスは、シャワーヘッド234の分散板234bを通り、処理室201内に到達する。このとき、排気系による処理室201内の排気を継続し、処理室201内を所定の圧力範囲(第1圧力)となるように制御する。これにより、Hガスは、所定の圧力(第1圧力:例えば100Pa以上20000Pa以下)で処理室201内に供給されることになる。
【0059】
また、第1処理工程(S203)では、整合器251および高周波電源252を利用して、分散板234bを通じて処理室201内に高周波電力等を供給する。これにより、分散板234bを通過するHガスをプラズマ化し、処理室201内にHガスのプラズマを発生させる。このとき、プラズマはウエハ200の外周側に発生し易く、そのために外周側のほうが内周側よりも温度が高くなる傾向にある。その場合には、温度調整部213a,213bに供給する熱媒体を流量調整部213c,213dがそれぞれに個別に調整するゾーン制御を行うことで、温度分布のばらつきを是正することができる。
【0060】
水素プラズマは、ウエハ200を構成する基板11およびガイドパターン12の表面の親水性を増長させる作用を奏する。したがって、第1処理工程(S203)では、処理室201内にHガスのプラズマを発生させることで、少なくとも基板11の表面11aおよびガイドパターン12の側面12aが親水化する。
【0061】
つまり、第1処理工程(S203)では、ウエハ200に対する親水化処理を行うHガスのプラズマを処理室201に供給することで、ウエハ200の表面特性について親水性が増長するように改質処理を行うのである。
なお、親水性を増長させる改質処理(すなわち親水化処理)は、例えば、処理室201内の圧力、Hガスの流量、ウエハ200の温度、高周波電力等の供給具合に応じて、所定の厚さ、所定の分布、所定の侵入深さで行われる。
【0062】
このような第1処理工程(S203)では、等方的に処理を行うことが好ましい。等方的に処理を行えば、基板11の表面11aおよびガイドパターン12の側面12aのそれぞれに対して、親水化処理の効果が同等に及ぶからである。
【0063】
等方的に処理を行うためには、第1処理工程(S203)を、例えば、ウエハ200にバイアスを印加しない状態で行うことが考えられる。バイアスを印加しなければ、Hガスのプラズマを構成するHイオンの移動方向が規制されず、Hイオンが等方的に運動し得るようになるからである。具体的には、バイアス電極219a,219bがバイアスを発生させないように、バイアス電極219a,219bへの印加電圧をインピーダンス調整部220a,220bで調整する。このとき、ウエハ200の面内での均一性を確保すべく、各インピーダンス調整部220a,220bが各領域別のゾーン制御を行ってもよい。
【0064】
また、等方的に処理を行うためには、第1処理工程(S203)を、後述する第2処理工程(S205)のときよりも処理室201内の圧力を高くした状態で行うことが考えられる。高圧な状態であれば、平均自由工程が相対的に小さくなり、Hガスのプラズマを構成するHイオンが散乱する傾向が強くなるからである。具体的には、第1ガス供給部243によるHガスの供給流量および排気系による処理室201内の圧力調整量を制御して、後述する第2処理工程(S205)のときよりも相対的に高圧な状態とする。
【0065】
(第1パージ工程:S204)
第1処理工程(S203)を所定時間行った後は、第1ガス供給部243によるHガスの供給を停止するとともに、整合器251および高周波電源252を利用した高周波電力等の供給を停止する。そして、処理室201中に存在する残留ガスを排気管224から排気しつつ、第1パージ工程(S204)を行う。
【0066】
第1パージ工程(S204)では、排気管224からの排気を継続しつつ、第3ガス供給部245から処理室201内にパージガスとしての不活性ガスを供給する。パージガスとしての不活性ガスは、例えばNガスを用いるが、Nガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。以下の説明では不活性ガスがNガスである場合を例に挙げる。具体的には、バルブ245dを開き、MFC245cで所定流量に調整しつつ、第3ガス供給源245bからNガスを供給する。このときのNガスの供給流量は、例えば100〜20000sccmの範囲内の流量とする。流量調整されたNガスは、処理室201内に到達する。
【0067】
つまり、第1パージ工程(S204)では、第1処理工程(S203)の終了後から後述する第2処理工程(S205)の開始前までの間に、処理室201内にパージガスとしての不活性ガス(例えばNガス)を供給するのである。したがって、第1処理工程(S203)と後述する第2処理工程(S205)とは、これらの間に第1パージ工程(S204)が介在することで、それぞれが時間軸上で完全にセパレート(分離)される。
【0068】
このように、第1パージ工程(S204)でパージガスを処理室201内に供給すれば、第1処理工程(S203)で供給するHガスと後述する第2処理工程(S205)で供給するFガスとの処理室201内での反応を抑制することができる。これにより、ウエハ200の形成材料として用いられることがあるシリコン(Si)や酸化シリコン(SiO)等をエッチングしてしまうフッ化水素ガスに関して、処理室201内での生成を抑制することができる。
【0069】
(第2処理工程:S205)
第1パージ工程(S204)を所定時間行った後は、第3ガス供給部245によるNガスの供給を停止して、第2処理工程(S205)を行う。
【0070】
第2処理工程(S205)では、第2ガス供給部244から処理室201内に第2処理ガスとしてのF含有ガスを供給する。F含有ガスとしては、例えばFガスが挙げられる。以下の説明ではF含有ガスがF)ガスである場合を例に挙げる。具体的には、バルブ244dを開き、MFC244cで所定流量に調整しつつ、第2ガス供給源244bからFガスを供給する。所定流量は、例えば、100sccm以上10000sccm以下である。流量調整されたFガスは、シャワーヘッド234の分散板234bを通り、処理室201内に到達する。このとき、排気系による処理室201内の排気を継続し、処理室201内を所定の圧力範囲(第2圧力)となるように制御する。第2圧力は、後述するように、第1処理工程(S203)における第1圧力よりも低圧であることが好ましい。これにより、Fガスは、所定の圧力(第2圧力:例えば100Pa以上20000Pa以下で、好ましくは第1圧力よりも低圧)で処理室201内に供給されることになる。
【0071】
また、第2処理工程(S205)では、整合器251および高周波電源252を利用して、分散板234bを通じて処理室201内に高周波電力等を供給する。これにより、分散板234bを通過するFガスをプラズマ化し、処理室201内にFガスのプラズマを発生させる。このとき、プラズマはウエハ200の外周側に発生し易く、そのために外周側のほうが内周側よりも温度が高くなる傾向にある。その場合には、温度調整部213a,213bに供給する熱媒体を流量調整部213c,213dがそれぞれに個別に調整するゾーン制御を行うことで、温度分布のばらつきを是正することができる。
【0072】
フッ素プラズマは、ウエハ200の表面の疎水性を増長させる作用を奏する。したがって、第2処理工程(S205)では、処理室201内にFガスのプラズマを発生させることで、ウエハ200の表面が疎水化する。
【0073】
つまり、第2処理工程(S205)では、ウエハ200に対する疎水化処理を行うFガスのプラズマを処理室201に供給することで、ウエハ200の表面特性について疎水性が増長するように改質処理を行うのである。
なお、疎水性を増長させる改質処理(すなわち疎水化処理)は、例えば、処理室201内の圧力、Fガスの流量、ウエハ200の温度、高周波電力等の供給具合に応じて、所定の厚さ、所定の分布、所定の侵入深さで行われる。
【0074】
ところで、第2処理工程(S205)での疎水化処理は、第1処理工程(S203)での親水化処理の後に、その親水化処理が行われたウエハ200の表面に重ねて行う。したがって、第1処理工程(S203)での親水化処理と第2処理工程(S205)での疎水化処理とが重複して行われたウエハ200の表面は、親水化された後に疎水化されるので、結果として濡れ性が中性に近づくことになる。つまり、親水化処理と疎水化処理とを重複して行うことで、表面の濡れ性が中性化する。
【0075】
ただし、基板表面特性改質処理(S102)の目的は、既に説明したように、基板11の表面11aとガイドパターン12の側面12aとの濡れ性を相違させ、DSAレジスト材料13の各有機材料13a,13bが規則的に配列し易くすることである(図1(d)参照)。そのため、ウエハ200の表面の全域、すなわち基板11の表面11aとガイドパターン12の側面12aとのそれぞれの濡れ性を中性化してしまうと、上述した目的が達成できなくなってしまう。
【0076】
このことから、第2処理工程(S205)での疎水化処理については、異方的に処理を行うことが好ましい。異方的に処理を行えば、例えば、基板11の表面11aには疎水化処理の効果を及ばせる一方で、ガイドパターン12の側面12aには疎水化処理の効果を及ばせないようにする、といったことが実現可能となり、これにより表面11aと側面12aとの濡れ性を相違させ得るようになるからである。つまり、ガイドパターン12の側面12aについては親水性を維持しつつ、基板11の表面11aについては親水化処理と疎水化処理とを重複して行って中性化させるようにする。
【0077】
異方的に処理を行うためには、第2処理工程(S205)を、例えば、ウエハ200にバイアスを印加した状態で行うことが考えられる。バイアスを印加すれば、Fガスのプラズマを構成するFイオンの移動方向がバイアス方向に沿うように規制され、ガイドパターン12の側面12aへのFイオンの到達量を基板11の表面11aへのFイオンの到達量よりも減らすことができ、結果として表面11aと側面12aとの濡れ性を相違させ得るからである。具体的には、バイアス電極219a,219bがバイアスを発生させるように、バイアス電極219a,219bへの印加電圧をインピーダンス調整部220a,220bで調整する。このとき、ウエハ200の面内での均一性を確保すべく、各インピーダンス調整部220a,220bが各領域別のゾーン制御を行ってもよい。
【0078】
また、異方的に処理を行うためには、第2処理工程(S205)を、第1処理工程(S203)のときよりも処理室201内の圧力を低くした状態で行うことが考えられる。低圧な状態であれば、平均自由工程が相対的に大きくなり、Fガスのプラズマを構成するFイオンが散乱する傾向が弱くなるので、これによりガイドパターン12の側面12aへのFイオンの到達量を基板11の表面11aへのFイオンの到達量よりも減らすことができ、結果として表面11aと側面12aとの濡れ性を相違させ得るからである。具体的には、第2ガス供給部244によるFガスの供給流量および排気系による処理室201内の圧力調整量を制御して、第1処理工程(S203)のときよりも相対的に低圧な状態とする。
【0079】
(第2パージ工程:S206)
第2処理工程(S205)を所定時間行った後は、第2ガス供給部244によるFガスの供給を停止するとともに、整合器251および高周波電源252を利用した高周波電力等の供給を停止する。そして、処理室201中に存在する残留ガスを排気管224から排気しつつ、第2パージ工程(S206)を行う。
【0080】
第2パージ工程(S206)は、上述した第1パージ工程(S204)と同様の処理を行えばよいため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0081】
(搬送圧力調整工程:S207)
第2パージ工程(S206)を所定時間行った後は、第3ガス供給部245によるNガスの供給を停止して、搬送圧力調整工程(S207)を行う。
【0082】
搬送圧力調整工程(S207)では、処理室201および移載室203が所定圧力(真空度)となるように、排気管224および排気管306を介して処理室201内および移載室203内を排気する。このときの処理室201内や移載室203内の圧力は、基板搬入出口1480を介して連通する図示せぬ真空搬送室内の圧力以下に調整される。
【0083】
なお、搬送圧力調整工程(S207)の間またはその前後で、ウエハ200の温度が所定の温度まで冷却するようにリフトピン207で保持するように構成してもよい。また、プラズマによってウエハ200が加熱されている場合には、温度調整部213a,213bへの熱媒体の供給によって冷却するようにしてもよい。さらには、ウエハ200が過冷却(室温以下)になった場合は、温度調整部213a,213bへの熱媒体の供給によって、少なくとも室温程度となるように加熱するようにしてもよい。
【0084】
(基板搬出工程:S208)
搬送圧力調整工程(S207)で処理室201内と移載室203内が所定圧力になった後は、ゲートバルブ1490を開き、基板搬入出口1480を介して、図示せぬ真空搬送室にウエハ200を搬出する。
【0085】
以上に説明した一連の各工程を経ることで、ウエハ200に対する基板表面特性改質処理(S102)が行われる。
【0086】
(4)レジスト材料の塗布硬化工程
次に、上述の改質処理を行った後のウエハ200に対して、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、DSAによるパターニング処理におけるレジスト材料の塗布・硬化処理(S103)を行う際のシーケンス例について、図6および図7を参照して説明する。
【0087】
(装置構成)
レジスト材料の塗布・硬化処理(S103)は、処理対象となるウエハ200を収容する処理室と、処理室内の温度を調整する温度調整機構と、処理室内のウエハ200の面上にレジスト材料を塗布する塗布機構と(ただし、いずれも不図示)、を備えた塗布装置を用いて行う。塗布装置における各機構は、公知技術を利用して構成されたものであればよい。
【0088】
塗布装置における塗布機構としては、様々な手法を用いたものが存在するが、その代表的な一例として、スピンコート法を利用するものがある。スピンコート法による塗布機構は、図6に示すように、少なくとも、ウエハ200を支持した状態で回転可能に構成される回転台401と、その回転台401上のウエハの面上にフォトレジスト材料を滴下する滴下ノズル402と、を備えている。
【0089】
(処理手順)
続いて、上述の塗布装置を用いて行うレジスト材料の塗布・硬化処理(S103)の手順について、図7を参照しながら説明する。
【0090】
(基板搬入工程:S301)
レジスト材料の塗布・硬化処理(S103)に際しては、先ず、処理対象となる改質処理後のウエハ200を、塗布装置の処理室内に搬入して塗布機構の回転台401上に載置する。なお、基板搬入工程(S301)は、回転台401上のウエハ200が所定温度となるようにする温度調整処理を含んでいてもよい。そして、処理室内の温度が安定したら、次工程に移る。
【0091】
(塗布工程:S302)
塗布工程(S302)では、回転台401上のウエハ200に対して、回転台401を回転させながら滴下ノズル402からフォトレジスト材料を滴下して、ウエハ200の面上へのフォトレジスト材料の塗布を行う。
このとき、フォトレジスト材料としてDSAレジスト材料を滴下する。DSAレジスト材料は、既に説明したように、2種類以上のポリマーブロックが共重合してなるブロックコポリマーであり、代表的な一例としてジブロック共重合体であるPS−PMMAが挙げられる。
DSAレジスト材料の滴下位置は、ウエハ200の面上のガイドパターンが形成されていない部分、すなわち基板表面特性改質処理(S102)で中性化された部分である。
そして、所定量(例えばウエハ200の面上に所望膜厚が形成される量)のDSAレジスト材料を滴下したら、塗布工程(S302)を終了する。
【0092】
(分離工程:S303)
分離工程(S303)では、ウエハ200の面上に塗布されたDSAレジスト材料を構成する各種ポリマーブロック(例えばPMMA13aとPS13bのそれぞれ)が規則正しく並ばせる。具体的には、塗布工程(S302)の終了後、各種ポリマーブロックが並ぶのに必要な所定時間が経過するのを待つ。このときの所定時間は、使用したDSAレジスト材料の種類に応じて決定される。なお、上述のように、オーブンやホットプレート等を用いて、80℃〜400℃程度の温度で、10秒〜120分程度の時間で、加熱を行ってもよい。
【0093】
(乾燥工程:S304)
その後は、乾燥工程(S304)を行って、ウエハ200の面上に塗布されたDSAレジスト材料が乾燥するのを待つ。具体的には、分離工程(S303)の終了後、各種ポリマーブロックが乾燥するのに必要な所定時間が経過するのを待つ。このときの所定時間は、使用したDSAレジスト材料の種類に応じて決定される。
【0094】
(ベーク工程:S305)
さらにその後は、ベーク工程(S305)を行って、ウエハ200の面上に塗布されたDSAレジスト材料を硬化させる。具体的には、乾燥工程(S304)の終了後、例えばオーブンやホットプレート等を用いて、80℃〜400℃程度の温度で10秒〜120分程度の時間で加熱を行う。
【0095】
これらの各工程(S302〜S305)を経ることで、ウエハ200の面上に塗布されたDSAレジスト材料は、各種ポリマーブロック(例えばPMMA13aとPS13b)の相分離が生じ、それぞれのポリマーブロックがガイドパターンに沿って規則正しく並んだ状態で硬化することになる。
【0096】
(基板搬出工程:S308)
DSAレジスト材料の硬化後は、基板搬出工程(S308)を行って、塗布装置の処理室内からウエハ200を搬出する。なお、基板搬出工程(S308)は、処理室内の温度や圧力等を調整する処理を含んでいてもよい。そして、DSAレジスト材料が硬化した状態のウエハ200を搬出したら、レジスト材料の塗布・硬化処理(S103)を終了して、次工程であるDSAレジスト改質工程(S104)やパターン形成工程(S105)等に移る。
【0097】
(5)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0098】
(a)本実施形態では、ウエハ200に対して基板表面特性改質処理(S102)を行うので、その後に行うレジスト材料の塗布・硬化処理(S103)においてDSAレジスト材料13をガイドパターン12に沿って規則正しく並ばせることができる。つまり、基板表面特性改質処理(S102)でウエハ200の表面の濡れ性を部分的に相違させるので、DSAレジスト材料13を構成する各有機材料13a,13bが積層配列してしまう問題を解消することができ、各有機材料13a,13bがガイドパターン12に沿って規則性を持って配列させることができる。
【0099】
(b)本実施形態では、基板表面特性改質処理(S102)が、H含有ガスのプラズマによる親水化処理を行う第1処理工程(S203)と、F含有ガスのプラズマによる疎水化処理を行う第2処理工程(S205)と、を含む。つまり、イオン照射による物理的な親水化処理と疎水化処理とを重複して行い、これにより一部表面の濡れ性を中性化させることで、ウエハ200の表面の濡れ性を部分的に相違させる。したがって、その後に塗布するDSAレジスト材料13について、高分子材料の縦型配列を整え易くなり、DSAによるパターニング処理を適切に行うことができる。しかも、親水化処理と疎水化処理とを重複して行うことで濡れ性の部分的な相違を実現するので、例えば濡れ性を相違させるために予め中性化層等を設けておくといった必要がなく、DSAによるパターニング処理を効率的に行えるようになる。このように、本実施形態によれば、DSAによるパターニング処理を適切かつ効率的に行うことができる。
【0100】
(c)本実施形態では、フォトレジスト材料として、分子量の異なる2種類の高分子を結合させたDSAレジスト材料を用いる。したがって、レジスト材料の塗布・硬化処理(S103)において良好に相分離構造を形成することができ、半導体装置の大集積化やダウンサイジング化等に対応し得る次世代のリソグラフィ技術として非常に好適なものとなる。
【0101】
(d)本実施形態では、第1処理工程(S203)で等方的に処理を行い、第2処理工程(S205)で異方的に処理を行う。つまり、第1処理工程(S203)で等方的に処理を行うことでウエハ200の表面全域に親水化処理の効果が同等に及ぶようにする一方で、第2処理工程(S205)で異方的に処理を行うことでウエハ200の表面の一部のみに疎水化処理の効果を及ばせつつ、他部には疎水化処理の効果を及ばせないようにする、といったことが実現可能となる。したがって、親水化処理と疎水化処理とを重複して行った場合でも、例えば、ガイドパターン12の側面12aについては親水性を維持しつつ、その他の部分については中性化させるといったように、それぞれの表面の濡れ性を相違させることができる。このように、本実施形態では、等方的処理と異方的処理とを適切に選択して使い分けているので、DSAによるパターニング処理を適切かつ効率的に行う上で非常に好適なものとなる。
【0102】
(e)本実施形態では、第1処理工程(S203)でウエハ200にバイアスを印加しない状態で処理を行い、第2処理工程(S205)でウエハ200にバイアスを印加した状態で処理を行う。つまり、第2処理工程(S205)でバイアスを印加した状態とすることで、例えば、ガイドパターン12の側面12aへのF含有ガスのプラズマ(Fイオン)の到達量をその他の基板表面部分に到達する量よりも減らし、これによりそれぞれの表面の濡れ性を相違させる。このように、本実施形態では、バイアス印加状態を利用することで、表面濡れ性を部分的に相違させるための等方的処理と異方的処理との切り替えを容易かつ確実に行うことができる。しかも、バイアス印加状態を利用した場合であれば、例えば、DCバイアスの電圧を可変させることによって、親水化処理と疎水化処理とを重複して行った際の中性化の程度をコントロールする、といったことが実現可能となる。このことは、ウエハ200の表面濡れ性の状態について、バイアス印加状態によってコントロールし得ることを意味し、DSAによるパターニング処理の適切化を図る上で非常に好適なものとなる。
【0103】
(f)本実施形態では、第2処理工程(S205)について、第1処理工程(S203)のときよりも処理室201内の圧力を低くした状態で処理を行う。つまり、第2処理工程(S205)を低圧な状態とすることで、例えば、ガイドパターン12の側面12aへのF含有ガスのプラズマ(Fイオン)の到達量をその他の基板表面部分に到達する量よりも減らし、これによりそれぞれの表面の濡れ性を相違させる。このように、本実施形態では、相対的な圧力状態を利用することで、表面濡れ性を部分的に相違させるための等方的処理と異方的処理との切り替えを容易かつ確実に行うことができる。しかも、相対的な圧力状態を利用した場合であれば、例えば、処理室201内の圧力調整量を制御することによって、親水化処理と疎水化処理とを重複して行った際の中性化の程度をコントロールする、といったことが実現可能となる。このことは、ウエハ200の表面濡れ性の状態について、圧力調整量によってコントロールし得ることを意味し、DSAによるパターニング処理の適切化を図る上で非常に好適なものとなる。
【0104】
(g)本実施形態では、プラズマ発生に伴う処理室201内の温度分布のばらつきを是正すべく温度調整のゾーン制御を行ったり、ウエハ200にバイアスを印加する際の面内均一性を確保すべく印加電圧のゾーン制御を行ったりする。したがって、例えば、処理対象となるウエハ200の大型化が進んでも、これにより処理の程度について面内ばらつきが生じてしまうといったことを抑制でき、DSAによるパターニング処理の適切化を図る上で非常に好適なものとなる。
【0105】
(h)本実施形態では、少なくとも第1処理工程(S203)と第2処理工程(S205)との間に、処理室201内にパージガスを供給するパージ工程(S204)を行うので、第1処理工程(S203)で供給するH含有ガスと第2処理工程(S205)で供給するF含有ガスとが処理室201内で反応してしまうことがない。つまり、親水化処理と疎水化処理とを重複して行うべく、H含有ガスとF含有ガスとのそれぞれを処理室201内に供給する場合であっても、パージ工程(S204)でのパージガス供給を介在させることで、ウエハ200の形成材料であるSiやSiO等をエッチングしてしまうフッ化水素ガスが処理室201内で生成されてしまうのを抑制することができる。
【0106】
<他の実施形態>
以上に、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本開示が上述の実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0107】
上述した実施形態では、第1処理工程(S203)でウエハ200に対する親水化処理を行った後に、第2処理工程(S205)でウエハ200に対する疎水化処理を行う場合を例に挙げたが、これに限定されることはない。例えば、先ず親水化処理を行った後に疎水化処理を行ってウエハ200の表面を部分的に中性化し、これによりウエハ200の表面濡れ性を部分的に相違させるようにしても構わない。つまり、第1処理工程(S203)は、ウエハ200に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行うものであればよく、第2処理工程(S205)は、ウエハ200に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行うものであればよい。
【0108】
また、上述した実施形態では、ウエハ200に対する親水化処理をH含有ガスの一例であるHガスを用いて行い、ウエハ200に対する疎水化処理をF含有ガスの一例であるFガスを用いて行う場合を例に挙げたが、これに限定されることはない。すなわち、親水化処理または疎水化処理を行うことが可能であれば、第1処理工程(S203)で用いる第1処理ガスおよび第2処理工程(S205)で用いる第2処理ガスは、それぞれ上述した実施形態で例示したもの以外を用いても構わない。
【0109】
また、上述した実施形態では、DSAレジスト材料13の代表的な一例としてPS−PMMAを例に挙げたが、これに限定されることはない。すなわち、DSAレジスト材料13は、分子量の異なる2種類の高分子を結合させたものであり、自己組織化によりミクロな相分離構造を形成できるものであれば、PS−PMMA以外を用いても構わない。
【0110】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0111】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する工程と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1処理工程と、
前記第1処理工程の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2処理工程と、
前記第2処理工程の後に、前記基板の面上の前記ガイドパターンが形成されていない部分に二種類以上の有機材料を含むフォトレジスト材料を塗付する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0112】
[付記2]
好ましくは、
前記フォトレジスト材料は、分子量の異なる2種類の高分子を結合させた自己組織化レジスト材料である
付記1に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0113】
[付記3]
好ましくは、
前記第1処理ガスまたは前記第2処理ガスのいずれか一方は、前記基板に対する親水化処理を行う水素含有ガスであり、
前記第1処理ガスまたは前記第2処理ガスのいずれか他方は、前記基板に対する疎水化処理を行うフッ素含有ガスである
付記1または2に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0114】
[付記4]
好ましくは、
前記第1処理工程は、等方的に処理を行い、
前記第2処理工程は、異方的に処理を行う
付記1から3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
[付記5]
好ましくは、
前記第1処理工程は、前記基板にバイアスを印加しない状態で処理を行い、
前記第2処理工程は、前記基板にバイアスを印加した状態で処理を行う
付記4に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0116】
[付記6]
好ましくは、
前記第2処理工程は、前記第1処理工程のときよりも前記処理室内の圧力を低くした状態で処理を行う
付記4または5に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0117】
[付記7]
好ましくは、
前記第1処理工程と前記第2処理工程の間に、前記処理室にパージガスを供給する工程
を有する付記1から6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0118】
[付記8]
本発明の他の一態様によれば、
ガイドパターンが形成された基板を収容する処理室と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1ガス供給部と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2ガス供給部と、を有し、
前記第1ガス供給部および前記第2ガス供給部が、少なくとも前記基板の面上と前記ガイドパターンの壁面とについて、異なる濡れ性を付与するように構成された
基板処理装置が提供される。
【0119】
[付記9]
本発明のさらに他の一態様によれば、
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する手順と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1処理手順と、
前記第1処理手順の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2処理手順と、
前記第2処理手順の後に、前記基板の面上の前記ガイドパターンが形成されていない部分に二種類以上の有機材料を含むフォトレジスト材料を塗付する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【0120】
[付記10]
本発明のさらに他の一態様によれば、
ガイドパターンが形成された基板を処理室に収容する手順と、
前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか一方を行う第1処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第1処理手順と、
前記第1処理手順の後に、前記基板に対する親水化処理または疎水化処理のいずれか他方を行う第2処理ガスのプラズマを前記処理室に供給する第2処理手順と、
前記第2処理手順の後に、前記基板の面上の前記ガイドパターンが形成されていない部分に二種類以上の有機材料を含むフォトレジスト材料を塗付する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0121】
11…基板、12…ガイドパターン、13…DSAレジスト材料、13a…PMMA(有機材料)、13b…PS(有機材料)、100…基板処理装置、200…ウエハ(ガイド形成基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7