【実施例1】
【0015】
以下、
図1から
図7に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。
【0016】
本実施例に係るプラズマ処理装置を
図1に示す。
図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す図である。
【0017】
本実施例のプラズマ処理装置1は、真空容器内部に配置された真空処理室2と、その内側の下方に配置され処理対処の半導体ウエハ等の基板状の被処理材4が載せられて保持される試料台5とを備えている。
【0018】
真空処理室2内に図示を省略したガス導入手段から導入されたエッチングガスは、図示していない導波管や平板状またはコイル状のアンテナ等の電界形成手段により生成され処理室内に供給れるマイクロ波等の電界またはソレノイドコイル等の磁界形成手段により生成され処理室内の供給される磁界により励起、分離或いは分解されてプラズマ3が形成される。真空処理室2内に形成されたプラズマ3中の荷電粒子と励起されて高い活性を備えた粒子とにより試料台5上の半導体ウエハ等の被処理材4の上面に予め形成されたマスクを含む複数の膜層を有した膜構造の処理対象の膜がエッチング処理される。
【0019】
プラズマ4内の励起された粒子から放射される発光は、真空処理室2の側壁を構成する真空容器に配置された透過性の部材から構成された窓を通して、外部に配置された受光器で受光されこれに光学的に接続されたファイバ11を通して分光器12に導入される。分光器12では、入射したプラズマの発光は、例えば200nm〜800nmの範囲で所定の間隔の波長毎に分光された後、分けられた各波長毎の光を受けた図示しない光センサによってその波長の光の強度を示すデジタル信号に変換される。
【0020】
複数の波長毎の光の強度を示すこれらの信号は、スペクトル合成器14に送信され複数の波長のスペクトルの強度を用いて特定の波長のスペクトルの光の強度を合成して演算する。算出された当該波長の光の強度を含む複数波長のスペクトルの強度を示す信号は波長決定器15に送信され、これからあらかじめレシピなどで決められた終点の検出に使用する複数の波長のものが抽出される。当該波長決定器15においてサンプリング信号として出力された信号は、時系列データyiとして図示しないRAM等の記憶装置に収納される。
【0021】
この時系列データyiはデジタルフィルタ16により平滑化処理され平滑化時系列データYiとしてRAM等の記憶装置に収納される。この平滑化時系列データYiを微分器17により微係数値(1次微分値あるいは2次微分値)の時系列データdiが算出されRAM等の記憶装置に収納される。
【0022】
ここで、微係数時系列データdiの算出について説明する。デジタルフィルタ回路16としては、例えば2次バタワース型のローパスフィルタを用いる。2次バタワース型のローパスフィルタにより平滑化時系列データYiは式(1)により求められる。
【0023】
Yi=b1・yi+b2・yi−1+b3・yi−2−[a2・Yi−1+a3・Yi−2]…(1)
ここで、係数an,bn(n=1〜3)はサンプリング周波数およびカットオフ周波数により数値が異なる乗数である。例えば、本例例としてサンプリング周波数10Hz、カットオフ周波数1Hzの場合では、a2=−1.143,a3=0.4128,b1=0.067455,b2=−0.013491,b3=0.067455である。
【0024】
2次微係数値の時系列データdiは、微分器17において、例えば5点の時系列データYiの多項式適合平滑化微分法を用いて式(2)から以下のように算出される。
【0025】
j=2
di = Σwj・Yi+j ・・・(2)
j=-2
ここで、上記の例において、重み係数wj(j=−2〜2)は、w−2=2,w−1=−1,w0=−2,w1=−1,w2=2である。また、上記の例では微分器17の演算は多項式平滑化微分法を用いたものであるが、差分法を用いることもできる。
【0026】
微分器17で得られた2次微分値(あるいは1次微分値)がレシピ等で予め決められた条件を満たすかどうかが終点判定器18において判断される。条件を満たしていると判定された場合には、表示器19にて終点の検出を表示するとともにプラズマ処理装置1に備えられた検知器及び可動部分各々と通信可能に接続され可動部分の動作を調節する制御器7へ通知する。当該通信を受けた制御器7は、被処理体4の次の処理のステップもしくは被処理体4の処理を終了させるため必要な指令信号を算出しこれを図示を省略したガス導入手段やマイクロ波電源、ソレノイドコイル等のプラズマ形成手段に送信する。
【0027】
被処理体4として低開口率のウエハ上の膜構造をエッチングする処理では、エッチングの終点でのプラズマからの発光の強度の変化が相対的に小さくなる。さらには、場合によってはノイズとの強度の比率(SN比)が発光の強度の変化を検出困難となる程度に小さいものとなる。
【0028】
また、エッチングの終点では、被処理体4上のエッチング処理対称の膜材料がエッチングされ発生する反応生成物の波長の発光の強度も減少する。一方、エッチングガス(エッチャント)の波長の発光強度は増加する。反応生成物の波長の発光強度とエッチャントの波長の発光強度を除算することによりエッチング終点での波形変化を大きくできることが一般的に知られている。
【0029】
ここで、従来の技術における終点を検出する構成について、
図2、
図3、
図6を用いて説明する。
図2は、
図1に示す実施例および従来技術の分光器が処理室内部からの光を受光する時間の設定を示した図である。
図3は、
図1に示す実施例および従来技術の分光器が処理室内部からの光を用いて検出したスペクトルの一例を示したグラフである。
図6は、従来技術において得られた処理の終点の前後における複数の波長の光波形を模式的に示すグラフである。
【0030】
図2(B)は,従来の技術の分光器が処理室内部からの光を受光する時間の設定を示した図である。つまり、従来の技術では、期間を区切って分光器12において発光のスペクトルデータを連続して受光した結果得られた発光に関するデータを検出しており、
図2(b)は、被処理体4の処理中において、処理時間の経過に伴って変動する、分光器の受光センサが発光を受光する1つの単位としての期間(図上は「蓄積時間」と呼称)の連なりを模式的に示している。
【0031】
図2(B)に示す通り、従来の技術では同じ蓄積時間Bで連続的に受光して、蓄積時間B毎に発光スペクトルを連続して取得することで、プラズマの発光スペクトルの変化を検出する。ここで、CCDセンサ等を利用したマルチチャンネル分光器の蓄積時間について説明する。
【0032】
マルチチャンネル分光器12では、光センサが蓄積時間の間分光されたプラズマの発光の所定の波長の光を受けることで当該センサまたは回路の内部に電荷が蓄積され、当該チャージされた電荷量は蓄積時間の終了後に出力される。このような予め定められた波長毎の電荷量は、例えば
図3(A)、
図3(B)に示す発光スペクトルとして波長をパラメータとして示すことができる。蓄積時間と出力される電荷量との関係はおおよそ比例する関係にあり蓄積時間を倍にすると出力電荷量も倍となる。
【0033】
図3(B)に、従来技術におけるエッチング処理中の発光からに得られたスペクトルの一例を示す。
図3(B)中の波長1がエッチング終点で発光強度が増加し、波長2がエッチング終点で発光強度が減少している。
【0034】
図6は、
図2,3に示した従来技術において得られた処理の終点の前後における複数の波長の光波形を模式的に示すグラフである。これらの図において、左側の図は発光強度を示す値のグラフであり、右側の図は、左図のデータを2次微分して得られた値を示すグラフである。
【0035】
図6(a)に示すように、波長1のスペクトルの光強度はノイズを含んでおり時間の変化に伴って増減し、その値はエッチングの終点でわずかに増加する。一方、
図6(b)に示すように、波長2のスペクトルの強度はノイズを含んで時間の変化に伴なって増減するとともにエッチング終点でわずかに減少する。
【0036】
これらの2つの波長の光の強度を時刻毎に除算した場合の時間的変化を
図6(c)の左図に示す。便宜上、除算データは
図6(c)に示す通り、30000カウントに規格化している。この除算したデータの2次微分値を
図6(c)右図に示す。
【0037】
これらの図では、平滑化された矢印の線に示されるようにエッチング終点の変化は10秒で発生していると見做すことができる。このようなエッチング終点での2次微分の最大値をシグナルと定義すると、シグナルは273.9である。また、10秒以前の値はノイズ量として定義でき、そのノイズ量は170.6である。従って、このエッチング処理での2次微分値のS/N(SN比)は1.6である。
【0038】
これらのパラメータを
図6(d)として纏めて表に示した。通常、発明者らの検討によれば、終点検出を安定的に実施できるS/N(SN比)の目安は4.0以上であり、この目安に拠れば従来の技術においてはこのような安定した終点検出は不可能であることになる。
【0039】
次に、本実施例におけるエッチング処理の終点の検出の構成について
図2(a)、
図3、
図4、
図5、
図7を用いて説明する。
【0040】
繰り返しになるが、
図3(b)にエッチング処理中のプラズマ発光から検出されたスペクトルを示す。
図3(b)中の波長1がエッチング終点で発光強度が増加し、波長2がエッチング終点で発光強度が減少している。また、波長1の発光強度は高く波長2は相対的に低い。分光器12内の回路におけるノイズはプラズマの発光の強度には依存しないため、光センサが検出して分光器12において出力された当該発光の強度が低い波長のスペクトルの信号にはノイズの割合が多くなりS/Nが低いことが知られている。
【0041】
そこで、本例では、波長2の発光強度を上げるため、異なる複数の値の蓄積時間を交互に繰り返して分光器12において発光の強度を検出する。すなわち、
図2(a)に示すように、分光器12において、相対的に長い蓄積時間Aと短い蓄積時間Bとが交互に連続的に繰り返されて光センサで処理室内からの光を受光させる。
【0042】
図2(a)に示す受光のパターンを用いて発光を検出した結果を
図3(a)に示す。
図3(a)に示すように、検出される発光のスペクトルは波長2において発光の強度が高くなりS/Nは良くなることが判る。しかし、蓄積時間Aの期間が所定値より長くなると、同図に示す通り波長1のスペクトルの値は光センサにおいて蓄積可能な電荷の限度を超えてしまい出力が飽和してしまうことがわかった。
【0043】
飽和した出力は、図上示されるように、出力のデータ上は最大限の値で一定の値を示す周波数または波長の領域のデータとなり、当該最大値以上の値を示しているはずの波長の光の強度の値は出力されず表示されない。本実施例では、この表示されていない出力、あるいは出力されていない値を、分光器12において異なる蓄積時間、例えばより短い期間に受光した光を分光した結果を用いて検出したデータを用いて補う、あるいは合成して形成することを考えた。
【0044】
そこで、本実施例では、蓄積時間Aと蓄積時間Bとを交互に繰り返して連続的に発光を受光して検出して、各々の蓄積時間に対応したスペクトルの強度の分布を取得する。すなわち、
図3(a),(b)各々に示されるスペクトルの分布のデータを検出する。
【0045】
本実施例では、スペクトル合成器14において、このような同じ処理中に得られた異なる期間の発光の強度のスペクトルのデータから、発光強度が強い波長1と発光強度が強い波長2といった異なる波長の各々の同一の処理中での発光の異なる値の強度の信号が検出される。さらに、これらの発光スペクトルを用いて蓄積時間Aにおいて波長1の強度の信号がが飽和してしまった発光スペクトル(スペクトルA)の飽和した領域を補って合成した合成スペクトルが算出される。
【0046】
図4を用いて、合成スペクトルの算出アルゴリズムを説明する。
図4は、
図1に示す実施例において検出したスペクトルを補って合成する処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【0047】
まず、ステップ401で処理を開始した後、蓄積時間Aの期間で処理室内のプラズマからの発光を受光器14で受光して発光スペクトルAを検出する(ステップ402)。次に、蓄積時間Aに引き続いた蓄積時間Bの期間で発光スペクトルBを検出する(ステップ403)。
【0048】
次に、発光スペクトルA,Bで飽和している領域を検出する(ステップ404)。その後、ステップ405において、発光スペクトルA、Bから両者のスペクトル比を求める。
【0049】
スペクトル比の算出方法は発光スペクトルA,Bで飽和していない発光強度の高いピークの比を用いる。または、発光スペクトルA,Bで飽和していない領域の各発光強度の全部もしくは一部の平均値の比を用いることもできる。
【0050】
ステップ406において発光スペクトル強度A,Bの強度を比較し、強度が強いスペクトルの飽和領域を強度の低いスペクトルに405で求めたスペクトル比を乗算した値で合成することにより、
図5に示す合成スペクトルを算出する(ステップ407,408)。
【0051】
図7に、合成スペクトルでの複数の波長の発光の各強度及びこれらの比を示す。
図7は、
図1に示す実施例に係るスペクトルを合成して得られた処理の終点の前後における複数の波長の光波形を模式的に示すグラフである。
図7(a)は、波長1の
図7(b)は波長2の、
図7(c)は波長1/波長2の発光の強度値の時間的変化(左図)とその2次微分値の時間変化(右図)とを示す。
【0052】
本図に、波長1の2次微分値(
図7(a)右図)、波長2の2次微分値(
図7(b)右図)、波長1/波長2の2次微分値(
図7(c)右図)を図示する。
図7(c)左図および右図に、エッチング終点の変化は10秒で発生している。このエッチング終点での2次微分の最大値をシグナルと定義すると、シグナルは236.2である。また、10秒以前の値はノイズ量として定義でき、そのノイズ量は45.3である。従ってこのエッチング時の2次微分値のS/Nは5.2である。
【0053】
これらのパラメータを纏めて表として
図7(d)として示す。上記の通り、通常終点検出を安定的に実施できるS/Nの目安は4.0以上であり、本エッチングは安定して終点検出が可能であることがわかる。
【0054】
上記の実施例では、分光器12において発光のスペクトルを検出しているが、本発明はこのような構成に限られず、分光器12の光センサが蓄積時間に蓄積して出力した電荷の量を示す信号を受信したスペクトル合成器14がこれに基づいて合成前のスペクトルを検出する機能を有していても良い。また、蓄積時間はプラズマ処理装置1の使用者が図示しない表示器付きのコンピュータ端末等の指示装置を用いて任意に設定可能としても処理の条件(所謂レシピ)の情報を受信した装置制御器7がこれ応じて予め定められたアルゴリズム或いは表等のデータに応じて設定しても良い。
【0055】
以上のように、発光強度が異なる2つ以上の波長を使用して終点検出する場合において各々の波長の発光強度が大きくなる(おおむね飽和容量の半分以上)ようにCCDセンサの積時間を各々設定することにより、各々の波長の発光強度の時間的変化におけるS/N(SN比)が向上し、さらにそれらを除算することにより高いS/N(SN比)で終点検出することができる。
【0056】
また、スペクトルを合成して算出することにより、エッチング処理中の発光スペクトルA,Bを1つのスペクトルにまとめることができる。これにより図示していないがHD等の主記憶装置への記憶領域を少なくすることができる。
【実施例2】
【0057】
次に、本発明の別の実施例について、
図8,9を用いて説明する。
図8は、本発明の別の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図9は、
図8に示す実施例に係るスペクトルを合成して得られた処理の終点の前後における複数の波長の光波形を模式的に示すグラフである。
【0058】
図8に示すプラズマ処理装置801は、
図1に示したプラズマ処理装置1とその構成の主要な部分を同じくしている。
図1に示した実施例では、スペクトル合成器14からの出力は波長決定器15に送信されて後その送信されたデータが微分された結果が終点判定器18に送信されて終点が判定され当該判定の結果が表示器に表示されるが、本実施例では、スペクトル合成器14と通信可能に接続され内部にハードディスクドライブやCD−ROM等のリムーバブルディスクドライブ或いはRAM、フラッシュROM等のメモリデバイスといった記憶装置を有するデータ保存器802を備え、スペクトル合成器14からの出力はデータ保存器802に送信されて、受信された信号のデータは内部の記憶装置内に記憶される。
【0059】
本例においても、スペクトル合成器14では、光またはその強度を示す信号を蓄積する時間を異ならせて受光して検出した複数の波長のスペクトルを用いて1つの合成スペクトルを算出する。スペクトル合成器14から出力された当該合成スペクトルを示す信号を受信したデータ保存器15では、当該信号のデータをハードディスク等の補助記憶装置やRAM等の記憶装置に記憶して保存する。
【0060】
本例では、分光器12からの複数波長データを時系列で取得したデータをOESデータと呼称し、このOESデータ内の合成スペクトルの予め定められた波長のデータを用いて、処理中の真空処理室2内部の状態やプラズマを用いた処理の特性や条件について解析が行われる。半導体デバイスの高集積化、複雑化に伴い半導体ウエハ上の被処理材の面積(開口)はますます少なくなっており、プラズマ処理中の被処理材の処理の終点を含むその前後の期間でのプラズマの発光の強度やその波長毎の分布の変化は非常に小さいものとなる。このような条件において、特に微小な変化を検出するためにOESデータの解析を行うものでは、各波長の発光のデータのS/Nがその精度を高くするうえで非常に重要である。
【0061】
本例においても、
図1に示した実施例と同様に、分光器12は指定された蓄積時間だけ分光されたプラズマ光によりチャージされた電荷量を出力する。この電荷量が例えば
図3(A)、
図3(B)に示す発光スペクトルとして示される。
【0062】
この蓄積時間と出力電荷量の関係はおおよそ比例関係にあり、蓄積時間を倍にすると出力電荷量も倍となる。本例でも、分光器12において分光され得られる複数の波長の光の各々について、異なる長さの蓄積時間A,Bを所定の回数繰り返して受光して、各々に対応するスペクトルA,Bを検出する。
図3に示したものと同様に、検出されるスペクトルAは波長1の光の強度が飽和し波長2が飽和していないもの、スペクトルBは波長1,2ともにその光の強度は飽和していないものとなる。
【0063】
図9を用いて、本実施例が検出するスペクトルを構成する複数の波長のうち波長2の光の強度を示すデータの時間的変化を説明する。
図9は、
図8に示す実施例に係るプラズマ処理装置がスペクトルの任意の波長の光について検出した処理の終点の前後における光波形の例を模式的に示すグラフである。
【0064】
蓄積時間Aで受光された予め定められた波長2の光の強度の時間的変化の例を
図9の左側に示す。蓄積時間Bで受光された波長2の光の強度の時間的な変化を右側に示す。
図9(a),(b)は各々プラズマの発光の強度を示すグラフ及びその2次微分値を示すグラフである。
【0065】
これらの図において、横軸の10秒付近の変化がエッチングの終了点(終点)である。この終点を含む前後の期間での発光の変化と10秒以前の揺らぎ(ノイズ)成分との比を評価するため、2次微分を算出した。2次微分値での10秒以前の揺らぎをノイズ成分、10秒以後の変化を信号成分としてS/Nを算出した結果が
図9(c)の左右各々に表901,902として纏められて示されている。本図の表901,902に示されるように、蓄積時間Aに係るデータのS/Nは2.6となり、蓄積時間BでのS/Nは1.6となった。
【0066】
波長1と波長2を解析に使用する場合を検討する。分光器12内の回路のノイズは発光強度に依存しないため、発光強度が低い信号はノイズの割合が多くS/Nが低い。そこで、波長2の発光強度を上げるため、分光器の蓄積時間をより長くして発光スペクトルAを取得すると波長2の発光強度は高くなり発光スペクトルBの波長2と比較するとS/Nが向上する一方で波長1が飽和してしまう場合が生じる。
【0067】
そこで、本実施例においても
図2(A)のに示す通り、蓄積時間Aと蓄積時間Bを繰り返し、
図3に示すものと同様に各々の蓄積時間に対応した2つの発光スペクトルAと発光スペクトルBとを検出する。これにより発光強度が強い波長1のデータとS/Nが高い波長2のデータとの両方を有するOESデータを検出することができる。
【0068】
上記のように取得した2つのOESデータをそれぞれデータ保存する場合には保存データ容量は倍になる。さらに、OESデータ内の合成スペクトルの予め定められた波長のデータを用いて処理中の真空処理室2内部の状態やプラズマを用いた処理の特性や条件について解析が行われる場合には、波長1,2の光に係るデータを同一の強度レンジで解析することが必要になる。
【0069】
そこで、本実施例では、上記のように分光器12において異なる蓄積時間で検出された2つ以上のOESデータから1つの合成したOESデータを作成する。このような合成されたOESデータを算出する処理の流れは、
図4に示したフローチャートと同様のものとなる。
【0070】
すなわち、ステップ401で処理を開始した後、蓄積時間Aの期間で処理室内のプラズマからの発光を受光器14で受光して発光スペクトルAを検出する(ステップ402)。次に、蓄積時間Aに引き続いた蓄積時間Bの期間で発光スペクトルBを検出する(ステップ403)。
【0071】
次に、発光スペクトルA,Bで飽和している領域を検出する(ステップ404)。その後、ステップ405において、発光スペクトルA、Bから両者のスペクトル比を求める。
【0072】
スペクトル比の算出方法は発光スペクトルA,Bで飽和していない発光強度の高いピークの比を用いる。または、発光スペクトルA,Bで飽和していない領域の各発光強度の全部もしくは一部の平均値の比を用いることもできる。
【0073】
ステップ406において発光スペクトル強度A,Bの強度を比較し、強度が強いスペクトルの飽和領域を強度の低いスペクトルに405で求めたスペクトル比を乗算した値で合成することにより、
図5に示す合成スペクトルを算出する(ステップ407,408)。
【0074】
以上説明したように、プラズマ発光の強度が大きく異なる2つ以上の波長を用いて処理の特性や処理室内部の状態の解析に使用する場合において、当該複数の波長の発光強度が大きくなる(おおむね飽和容量の半分以上)ようにCCDセンサの蓄積時間を設定した複数の発光スペクトル強度を取得する。この構成により、解析に使用する複数の波長の発光強度の時間的変化におけるS/Nが向上した合成スペクトルをOESデータとして記録する。
【0075】
この合成スペクトルを使用して発光解析を行うことでより精度の良い解析結果を得ることができる。また合成スペクトルをOESデータとして記録することにより図示していないがハードディスク等の記憶装置への記憶領域を少なくすることができる。