特許第6561383号(P6561383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561383
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】光変調素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   G02F1/035
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-69820(P2017-69820)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173454(P2018-173454A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年3月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】本谷 将之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲也
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−269469(JP,A)
【文献】 特開平03−253815(JP,A)
【文献】 特開2015−197454(JP,A)
【文献】 米国特許第05949944(US,A)
【文献】 特開平07−064126(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/004139(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0270617(US,A1)
【文献】 米国特許第06480633(US,B1)
【文献】 特開2016−224315(JP,A)
【文献】 特開2000−323476(JP,A)
【文献】 特開2017−26972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御する電極と、を備え、当該電極に高周波信号を伝搬させて光変調を行う光変調素子であって、
前記電極は、
銅(Cu)又は銅合金で構成される導電層と、
銅及び銅合金以外の材料で構成される保護層と、
を含み、
前記電極の上部表面の少なくとも一部に、金(Au)で構成される表面層が形成さ
前記保護層は、CuN及び又はCrNで構成される、
光変調素子。
【請求項2】
前記保護層の少なくとも一部は、前記基板の上に設けられ、前記導電層は、前記基板の上に設けられた前記保護層の前記少なくとも一部の上に設けられる、
請求項1に記載の光変調素子。
【請求項3】
前記保護層の少なくとも一部は、前記導電層の表面を覆うように設けられている、
請求項1に記載の光変調素子。
【請求項4】
前記保護層の一部は、前記基板の上に設けられ、前記導電層は、前記保護層の前記一部の上に設けられ、
前記保護層の他の一部は、前記導電層の表面を覆うように設けられている、
請求項1に記載の光変調素子。
【請求項5】
前記保護層は、前記基板の基板面の領域のうち前記電極が設けられない領域の上には設けられていない、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路内を伝搬する光波を制御して光変調を行う光変調素子に関し、特に、広帯域の高周波信号により当該光波の制御を行う電極の設計自由度を向上し得る光変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信や光計測の分野においては、電気光学効果を有する基板に光導波路を配置した導波路型光変調素子が多く用いられている。導波路型光変調素子は、一般に、上記光導波路と共に当該光導波路内を伝搬する光波を制御するための制御電極を備える。
【0003】
このような導波路型光変調素子として、例えば強誘電体結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO)(「LN」とも称する)を基板に用いたマッハツェンダ型光変調素子が広く用いられている。マッハツェンダ型光変調素子は、外部から光波を導入するための入力光導波路と、当該入力光導波路により導入された光を2つの経路に分けて伝搬させるための光分岐部と、当該光分岐部の後ろに分岐されたそれぞれの光波を伝搬させる2本の並行光導波路と、当該2本の並行光導波路を伝搬した光波を合波して外部へ出力するための出力光導波路とにより構成される。また、マッハツェンダ型光変調素子は、電圧を印加することで、電気光学効果を利用して上記並行光導波路内を伝搬する光波の位相を変化させて制御するための制御電極を備える。当該制御電極は、一般に、上記並行光導波路の上部又はその近傍に配置された信号電極(高周波電極)と、当該信号電極に離間して配置された接地電極とで構成され、高周波信号を並行光導波路内の光波の伝搬速度と同じ速度で伝搬させる信号線路を構成している。
【0004】
従来、LN基板を用いたマッハツェンダ型光変調素子における上記制御電極の素材としては、素材の長期安定性、及びボンディング等の製造容易性の観点から、金(Au)が用いられている。一方、制御電極が構成する信号線路に高周波信号を伝搬させて行う光変調動作の観点からは、より高い導電性を有し導体損失の少ないことが望ましい。すなわち、制御電極における高周波伝搬損失と特性インピーダンスとのトレードオフの制約を軽減して、所望の特性インピーダンスにて広帯域化を図るには、制御電極の導体損失を低減することが必要となる。
【0005】
このため、従来、制御電極を厚くしたり、制御電極の一部の幅を広くして当該断面をキノコ状とすることにより、当該制御電極の断面積を大きくして導体損失を低減することが行われている(特許文献1、2参照)。
【0006】
しかしながら、制御電極の断面形状やサイズの工夫によって実現し得る導体損失の低減の程度には限界があり、さらなる広帯域化に向けて、上記トレードオフの制限をさらに軽減して制御電極の設計自由度を広げることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−91111号公報
【特許文献2】特開平8−122722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景より、光導波路上に形成された制御電極に高周波信号を伝搬させて光変調を行う導波路型光変調素子において、制御電極の設計自由度を広げて、更なる広帯域化を実現し得るようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様は、基板に設けられた光導波路と、当該光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、を備え、当該制御電極に高周波信号を伝搬させて光変調を行う光変調素子であって、前記電極は、銅(Cu)又は銅合金で構成される導電層と、銅及び銅合金以外の材料で構成される保護層と、を含み、前記電極の上部表面の少なくとも一部に、金(Au)で構成される表面層が形成さ前記保護層は、CuN及び又はCrNで構成される
本発明の他の態様によると、前記保護層の少なくとも一部は、前記基板の上に設けられ、前記導電層は、前記基板の上に設けられた前記保護層の前記少なくとも一部の上に設けられる。
本発明の他の態様によると、前記保護層の少なくとも一部は、前記導電層の表面を覆うように設けられている。
本発明の他の態様によると、前記保護層の一部は、前記基板の上に設けられ、前記導電層は、前記保護層の前記一部の上に設けられ、前記保護層の他の一部は、前記導電層の表面を覆うように設けられている。
本発明の他の態様によると、前記保護層は、前記基板の表面のうち前記導電層が設けられない領域の上には設けられていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
図2図1に示す光変調素子のAA断面矢視図である。
図3】光変調素子を構成する制御電極の第1の変形例の構成を示す図である。
図4】光変調素子を構成する制御電極の第2の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。また、図2は、図1に示す光変調素子のAA断面矢視図である。本光変調素子10は、基板100上にマッハツェンダ(MZ、Mach-Zehnder)型光導波路102が配置された、マッハツェンダ型光変調素子である。
【0012】
基板100は、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LN)から成る基板であり、例えばZカットのLN基板である。基板100上には、非導電性の材料から成る非導電層120が配置されている。この非導電層120は、例えば、MZ型光導波路102を伝搬する光波が後述する信号電極108等により吸収されて光損失を生ずるのを避けること等を目的として設けられる、いわゆるバッファ層であるものとすることができ、例えば基板100よりも誘電率の低い材料(具体的な材料については後述する)により構成される。
【0013】
MZ型光導波路102は、並行光導波路である光導波路104、106を有する。光導波路104、106の直上部には、それぞれ、当該光導波路104、106に沿って高周波信号が印加される信号電極108、110が配置されており、信号電極108、110のそれぞれから所定の離間距離だけ離れて当該信号電極108、110を挟むように、接地電極112、114、116が配置されている。信号電極108と接地電極112、114、及び信号電極110と接地電極114、116は、それぞれ高周波信号が伝搬する信号線路(高周波信号線路)を構成しており、MZ型光導波路102の図示左端から入力された光波は、これらの高周波信号により変調(例えば、強度変調)されて、図示右端から出力する。
【0014】
特に、本実施形態の光変調素子10では、信号電極108、110、及び接地電極112、114、116は、それぞれ、銅(Cu)又は銅合金で構成された導電層108a、110a、112a、114a、116aを含む。銅合金としては、例えば、Al−Cu合金、Ni−Cu合金、Be−Cu合金、Sn−Cu合金を用いることができる。これらの銅(Cu)又は銅合金の導電率は、従来の光変調素子において電極材料として用いられている金(Au)よりも高いため、光変調素子10では、信号電極108、110及び接地電極112、114、116が構成する高周波信号線路の導体損失が効果的に低減される。
【0015】
そして、この導体損失の低減により、信号電極108、110等が構成する高周波信号線路における高周波伝搬損失と特性インピーダンスとのトレードオフの制約を軽減して(すなわち、当該信号線路を構成する信号電極108、110及び接地電極112、114、116の設計自由度を広げて)、所望の特性インピーダンスにて更なる広帯域化を図ることが容易となる。
【0016】
さらに、本実施形態の光変調素子10では、信号電極108、110、及び接地電極112、114、116は、それぞれ、その上部に導電層108a、110a、112a、114a、116aが設けられた保護層108b、110b、112b、114b、116bを有する。これらの保護層108b、110b、112b、114b、116bは、銅(Cu)及び銅合金以外材料で構成され、例えば、金属窒化物及び又はケイ素(Si)で構成される。当該金属窒化物は、例えばSiN、CrN、TiN、及び又はCuNであるものとすることができる。ここで、保護層130等は、これらの材料のいずれか一つを用いて構成される単一の層で構成されていてもよいし、互いに異なる材料を用いてそれぞれ構成された複数の層で構成されていてもよい。
【0017】
一般に、銅(Cu)で構成された電極(銅電極)と他の電極とを基板上に近接して配置し、当該銅電極と当該他の電極との間に電位差を発生させると、銅電極から銅イオンが当該基板の表面を伝って移動し、いわゆるエレクトロマイグレーションが発生し得る。このようなエレクトロマイグレーションが発生すると、移動した銅イオンは、基板表面で銅を次々と析出させ、銅電極と他の電極との間に短絡路を形成することとなり得る。
【0018】
これに対し、本実施形態の光変調素子10では、信号電極108、110、及び接地電極112、114、116の導電層108a、110a、112a、114a、116aは、それぞれ、保護層108b、110b、112b、114b、116bの上に形成されているので、導電層108a、110a、112a、114a、116aを構成する銅(Cu)又は銅合金の銅イオンは、これら保護層108b、110b、112b、114b、116bによりその移動が阻まれることとなり、エレクトロマイグレーションの発生が防止される。
【0019】
以上の構成により、本実施形態の光変調素子10では、電極を構成する金属のマイグレーションを抑制して長期信頼性を高く維持しつつ、電極の設計自由度を広げて、更なる広帯域化を実現することができる。
【0020】
なお、銅(Cu)及び銅合金を含まず、金属窒化物又はSiで構成される保護層は、基板100の基板面の領域のうち、信号電極108等や接地電極112等の電極が設けられていない領域には設ける必要はない。
【0021】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
〔第1の変形例〕
図3は、図2に示す信号電極108、110及び接地電極112、114、116に代えて用いることのできる信号電極108´、110´及び接地電極112´、114´、116´の構成を示す図である。
【0022】
信号電極108´、110´及び接地電極112´、114´、116´は、それぞれ、信号電極108、110及び接地電極112、114、116と同様に、導電層108a、110a、112a、114a、116aを有する。ただし、信号電極108´、110´及び接地電極112´、114´、116´は、保護層108b、110b、112b、114b、116bを含まず、これらに代えて、導電層108a、110a、112a、114a、116aを覆う保護層108c、110c、112c、114c、116cを有している。
【0023】
すなわち、本変形例では、導電層108a、110a、112a、114a、116aを覆う保護層108c、110c、112c、114c、116cにより、導電層108a、110a、112a、114a、116aからの銅イオンのエレクトロマイグレーションが防止される。
【0024】
〔第2の変形例〕
図4は、図2に示す信号電極108、110及び接地電極112、114、116に代えて用いることのできる信号電極108´´、110´´及び接地電極112´´、114´´、116´´の構成を示す図である。
【0025】
信号電極108´´、110´´、及び接地電極112´´、114´´、116´´は、それぞれ、導電層108a、110a、112a、114a、116a、及び保護層108b、110b、112b、114b、116bを含み、更に、導電層108a、110a、112a、114a、116aを覆う保護層108c、110c、112c、114c、116cを有している。
【0026】
これにより、本変形例では、導電層108a、110a、112a、114a、116aを構成する銅(Cu)又は銅合金からの銅イオンのエレクトロマイグレーションの発生を更に低減して、光変調素子10の信頼性を更に向上することができる。
【0027】
以上、説明したように、本実施形態に係る光変調素子10は、光導波路104、106を伝搬する光波を変調する信号電極108、110及び接地電極112、114、116が、それぞれ、金属窒化物又はケイ素(Si)から成る保護層108b、110b、112b、114b、116bと、これらの保護層の上に設けられた銅(Cu)又は銅合金より成る導電層108a、110a、112a、114a、116aと、で構成されている。
【0028】
これにより、光変調素子10では、銅イオンのエレクトロマイグレーションの発生を防止もしくは低減することができるため、信頼性が向上し、かつ、信号電極108、110等が構成する高周波信号線路の高周波伝搬損失と特性インピーダンスとのトレードオフの制約を軽減し、当該信号電極108、110等の設計自由度を広げることができ、所望の特性インピーダンスにて更なる広帯域化を図ることができる。
【0029】
なお、上述の実施形態では、信号電極108、110、及び接地電極112、114、116を構成する導電層108a、110a、112a、114a、116aは、それぞれ、その全体が銅(Cu)又は銅合金で構成されるものとしたが、これに限らず、各導電層は、その断面の少なくとも一部が銅(Cu)又は銅合金で構成されていてもよい。その場合でも、従来のような銅(Cu)又は銅合金の部分を含まない金(Au)を主体とする電極に比べて高い導電率が実現でき、電極の設計自由度を広げることができる。
【0030】
また、上述の実施形態では、一例として、ZカットのLN基板である基板100を用いた光変調素子を示したが、これに限らず、本実施形態において説明した信号電極108等の電極の構成は、XカットのLN基板を用いて構成された光変調素子においても同様に用いることができる。さらに、当該電極の構成は、LN基板を用いる光変調素子に限らず、電気光学効果を有する他の材料(例えば、LiTaO、SrTiO、SrBi Ta、BaTiO、KTiOPO、PLZT)を基板として用いる光変調素子や、電流注入により光導波路の屈折率を制御して光変調を行う半導体基板を用いた光変調素子にも、同様に適用するができる。
【0031】
ところで、上述の実施形態では、導電層108a、110a、112a、114a、116aを銅(Cu)又は銅合金で構成するので、これら導電層にワイヤボンディング(例えば、金ワイヤのボンディング)を行う場合には、ボンディング強度を実用的な水準で実現することが困難となり得る。その場合には、信号電極108、110及び接地電極112、114、116の上部表面の一部(本実施形態では、)に、金(Au)で構成される表面層を設け、当該表面層にワイヤボンディングを行うものとすれば良い。これにより、信頼性の高いワイヤボンディングを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
10・・・光変調素子、100・・・基板、102・・・MZ型光導波路、104、106・・・光導波路、108、110・・・信号電極、112、114、116・・・接地電極、120・・・非導電層、108a、110a、112a、114a、116a・・・導電層、108b、110b、112b、114b、116b、108c、110c、112c、114c、116c・・・保護層。
図1
図2
図3
図4