(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物およびアミノシラン化合物を反応させて得られる末端封止ポリアミック酸またはその誘導体以外の、その他の重合体をさらに含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の光配向膜用液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明で用いる用語について説明する。例えば、「式(I)で表されるジアミン」のことを「ジアミン(I)」のように記述することがある。式(I−1)で表される化合物を化合物(I−1)のように記述することがある。他の式で表される化合物についても同様に略記することがある。化学構造式を定義する際に用いる「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示す。化学構造式において、文字(例えばA)を円や六角形で囲った基は環構造の基(環A)であることを意味する。
【0030】
本発明のポリアミック酸およびその誘導体について説明する。
本発明のポリアミック酸およびその誘導体は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物およびアミノシラン化合物を反応させて得られる末端封止ポリアミック酸またはその誘導体である。前記ポリアミック酸の誘導体とは、溶剤を含有する後述する液晶配向剤としたときに溶剤に溶解する成分であり、その液晶配向剤を液晶配向膜としたときに、ポリイミドを主成分とする液晶配向膜を形成することができる成分である。このようなポリアミック酸の誘導体としては、例えば可溶性ポリイミド、ポリアミック酸エステル、およびポリアミック酸アミド等が挙げられ、より具体的には1)ポリアミック酸の全てのアミノとカルボキシルとが脱水閉環反応したポリイミド、2)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、3)ポリアミック酸のカルボキシルがエステルに変換されたポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸−ポリアミド共重合体、さらに5)該ポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部もしくは全部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。前記ポリアミック酸およびその誘導体は、1種の化合物であってもよいし、2種以上であってもよい。また前記ポリアミック酸およびその誘導体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物の構造を有する化合物であればよく、他の原料を用い、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応以外の他の反応による反応生成物を含有してもよい。
【0031】
本発明のポリアミック酸およびその誘導体を製造する為に使用するアミノシラン化合物について説明する。
本発明に使用されるアミノシラン化合物は、ポリアミック酸およびその誘導体の末端を封止するために用いられる。ポリアミック酸およびその誘導体を構成するジアミンにおいて、ジアミンに対するアミノシラン化合物の比率が40モル%以下の範囲で、ジアミンの一部がアミノシラン化合物に置き換えられる。このような置き換えによって、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のターミネーションを起こすことができ、ポリアミック酸およびその誘導体の末端を封止することができる。
【0032】
前記アミノシラン化合物としては、下記式(AS)で表される化合物から選択することができる。
【化13】
式(AS)において、nは0または1であり;
Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、前記アルキル基に存在する1つ以上の−CH
2−CH
2−構造を、−CH
2−NH−構造に置き換えてもよく;Xは−OCH
3、または−OCH
2CH
3である。
【0033】
さらに詳しくは、式(AS)で表されるアミノシラン化合物が、下記式(AS−1)〜式(AS−5)で表されるアミノシラン化合物が挙げられる。
【化14】
【0034】
置き換えられるアミノシラン化合物は、本発明の効果が損なわれなければ、1種でも2種以上でもよい。
【0035】
上記アミノシラン化合物おいて、配向膜の硬度および配向性を同時に向上させるには、式(AS−3)〜式(AS−5)で表される化合物が好ましく、式(AS−5)で表される化合物が特に好ましい。
【0036】
本発明の光配向膜用液晶配向剤を製造する為に使用する「架橋可能な化合物」について説明する。
【0037】
本発明の光配向膜用液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、およびアミノシラン化合物とを反応させて得られる末端封止ポリアミック酸またはその誘導体を含有するが、さらに配向膜の厚さ方向への強度を増加させ異物の発生を抑制する効果を得るため、下記(a)〜(d)で表される架橋可能な化合物からなる群から選択される1つ以上の架橋可能な化合物を含有することができる。
(a)分子内に1つ以上のエポキシ環を含有するシランカップリング剤
(b)分子内に2つ以上のエポキシ環を含有する化合物
(c)分子内に2つ以上のベンゾオキサジン構造を含有する化合物
(d)分子内に2つ以上のオキサゾリン構造を含有する化合物
【0038】
(a)分子内に1つ以上のエポキシ環を含有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(EPX−1)〜式(EPX−6)で表わされる、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられ、好適に用いることができる。中でも好ましいシランカップリング剤は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(EPX−5)および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(EPX−6)である。
【化15】
【0039】
(b)分子内に2つ以上のエポキシ環を含有する化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよび3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン(商品名「テクモアVG3101L」、(三井化学(株)製))、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、および下記式(EPX−7)で表わされるN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。好ましいエポキシ化合物は、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンである。
【化16】
【0040】
(c)分子内に2つ以上のベンゾオキサジン構造を含有する化合物としては、例えば下記式(BOX−1)〜式(BOX−5)に示す化合物が挙げられる。なお下記式において、環の中心に向けて表示されている結合は、環を構成しかつ置換基の結合が可能ないずれかの炭素に結合していることを示す。
【化17】
式(BOX−1)および式(BOX−2)において、L
3およびL
4は炭素数1〜30の有機基である。式(BOX−1)〜式(BOX−5)において、L
5〜L
8は水素または炭素数1〜6の炭化水素基である。式(BOX−2)、式(BOX−3)および式(BOX−5)において、Q
1は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO
2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−(CH
2)
v−、−O−(CH
2)
v−O−、−S−(CH
2)
v−S−である。ここで、vは1〜6の整数である。式(BOX−4)および式(BOX−5)において、Q
2はそれぞれ独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−または炭素数1〜3のアルキレンである。そして、式(BOX−1)〜式(BOX−5)において、ベンゼン環、ナフタレン環に結合している水素はそれぞれ独立して、−F、−CH
3、−OH、−COOH、−SO
3H、−PO
3H
2に置き換えられていてもよい。これらのうち、好ましい化合物として、下記式(BOX−2−1)および式(BOX−2−2)で表わされる化合物が挙げられる。
【化18】
【0041】
(d)分子内に2つ以上のオキサゾリン構造を含有する化合物としては、例えば2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,2,4−トリス−(2−オキサゾリニル−2)−ベンゼン、4−フラン−2−イルメチレン−2−フェニル−4H−オキサゾール−5−オン、1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(下記式(OX−1))、2,3−ビス(4−イソプロペニル−2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、2,2’−ビス−4−ベンジル−2−オキサゾリン、2,6−ビス(イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−tert−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−メチレンビス(4−tert−ブチル−2−オキサゾリン)、および2,2’−メチレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)が挙げられる。これらの他、エポクロス(商品名、(株)日本触媒製)のようなオキサゾリルを有するポリマーやオリゴマーも挙げられる。
【化19】
【0042】
本発明のポリアミック酸およびその誘導体を製造する為に使用するテトラカルボン酸二無水物について説明する。
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物は、公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。このようなテトラカルボン酸二無水物は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、および芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)の何れの群に属するものであってもよい。
【0043】
このようなテトラカルボン酸二無水物の好適な例としては、原料入手の容易さや、ポリマー重合時の容易さ、膜の電気特性の点から、式(AN−I)〜式(AN−VII)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【化20】
【0044】
式(AN−I)、式(AN−IV)および式(AN−V)において、Xはそれぞれ独立して単結合または−CH
2−である。式(AN−II)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、または−C(CF
3)
2−であり、このアルキレンの−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。式(AN−II)〜式(AN−IV)において、Yはそれぞれ独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり、結合手は任意の炭素に連結しており、この基の少なくとも1つの水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられてもよい。
【化21】
【0045】
式(AN−III)〜式(AN−V)において、環A
10は炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜30の縮合多環式炭化水素の基であり、この基の少なくとも1つの水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく、環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよい。式(AN−VI)において、X
10は炭素数2〜6のアルキレンであり、Meはメチルを表し、Phはフェニルを表す。式(AN−VII)において、G
10はそれぞれ独立して−O−、−COO−または−OCO−であり、rはそれぞれ独立して0または1である。
【0046】
さらに詳しくは以下の式(AN−1)〜式(AN−16−14)の式で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0047】
[式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化22】
式(AN−1)において、G
11は単結合、炭素数1〜12のアルキレン、1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンである。X
11はそれぞれ独立して単結合または−CH
2−である。G
12はそれぞれ独立して下記の3価の基のどちらかである。
【化23】
G
12が>CH−であるとき、>CH−の水素は−CH
3に置き換えられてもよい。G
12が>N−であるとき、G
11が単結合および−CH
2−であることはなく、X
11は単結合であることはない。そしてR
11は水素または−CH
3である。
【0048】
式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化24】
式(AN−1−2)および式(AN−1−14)において、mは1〜12の整数である。
【0049】
[式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化25】
式(AN−2)において、R
12はそれぞれ独立して水素、−CH
3、−CH
2CH
3、またはフェニルである。
【0050】
式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化26】
【0051】
[式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化27】
式(AN−3)において、環A
11はシクロヘキサン環もしくはベンゼン環である。
【0052】
式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化28】
【0053】
[式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化29】
式(AN−4)において、G
13は単結合、−(CH
2)
m−、−O−、−S−、−C(CH
3)
2−、−SO
2−、−CO−、−C(CF
3)
2−、または下記の式(G13−1)で表される2価の基であり、mは1〜12の整数である。
【化30】
式(G13−1)において、G
13aおよびG
13bはそれぞれ独立して、単結合、−O−または−NHCO−で表される2価の基である。フェニレンは、1,4−フェニレンおよび1,3−フェニレンが好ましい。環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。G
13は環A
11の任意の位置に結合してよい。
【0054】
式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化31】
【化32】
式(AN−4−17)において、mは1〜12の整数である。
【化33】
【化34】
【0055】
[式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化35】
式(AN−5)において、R
11は水素、または−CH
3である。ベンゼン環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていないR
11は、ベンゼン環における結合位置が任意であることを示す。
【0056】
式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化36】
【0057】
[式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化37】
式(AN−6)において、X
11はそれぞれ独立して単結合または−CH
2−である。X
12は−CH
2−、−CH
2CH
2−または−CH=CH−である。nは1または2である。
【0058】
式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化38】
【0059】
[式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化39】
式(AN−7)において、X
11は単結合または−CH
2−である。
【0060】
式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化40】
【0061】
[式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化41】
式(AN−8)において、X
11は単結合または−CH
2−である。R
12は水素、−CH
3、−CH
2CH
3、またはフェニルであり、環A
12はシクロヘキサン環もしくはシクロヘキセン環である。
【0062】
式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化42】
【0063】
[式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化43】
式(AN−9)において、rはそれぞれ独立して0または1である。
【0064】
式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化44】
【0065】
[式(AN−10)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
式(AN−10)は下記のテトラカルボン酸二無水物である。
【化45】
【0066】
[式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化46】
式(AN−11)において、環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0067】
式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化47】
【0068】
[式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化48】
式(AN−12)において、環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0069】
式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化49】
【0070】
[式(AN−13)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化50】
式(AN−13)において、X
13は炭素数2〜6のアルキレンであり、Phはフェニルを表す。
【0071】
式(AN−13)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化51】
式(AN−13−1)において、Phはフェニルを表す。
【0072】
[式(AN−14)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化52】
式(AN−14)において、G
14はそれぞれ独立して−O−、−COO−または−OCO−であり、rはそれぞれ独立して0または1である。
【0073】
式(AN−14)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化53】
【0074】
[式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
【化54】
式(AN−15)において、wは1〜10の整数である。
【0075】
式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【化55】
【0076】
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の化合物が挙げられる。
【化56】
【0077】
上記テトラカルボン酸二無水物以外に、公知の感光性テトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。このような感光性テトラカルボン酸二無水物として、以下の式(PAN−1)〜式(PAN−9)を挙げることができる。
【化57】
【化58】
式(PAN−9)において、mは1〜12の整数である。
【0078】
上記酸二無水物において、各特性を向上させる好適な材料について述べる。液晶の配向性を向上させることを重視する場合には、式(AN−4−17)、式(AN−4−30)、および式(PAN−9)で表される化合物が好ましく、中でも式(AN−4−17)においては、m=4または8のときが好ましく、式(AN−4−30)においては、m=2、または4が好ましく、m=4が特に好ましい。
【0079】
液晶表示素子の透過率を向上させることを重視する場合には、上記の酸二無水物のうち、式(AN−1−13)および式(AN−4−30)が好ましい。
【0080】
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の1つとして有効である。この目的を重視する場合には、上記の酸二無水物のうち、式(AN−1−13)および式(AN−4−30)で表される化合物が好ましい。
【0081】
本発明のポリアミック酸およびその誘導体を製造する為に使用するジアミンおよびジヒドラジドについて説明する。本発明のポリアミック酸またはその誘導体を製造するにあたっては、公知のジアミンおよびジヒドラジドから制限されることなく選択することができる。
【0082】
ジアミンはその構造によって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、具体的な例として炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、炭素数3以上のアルコキシアルキル、およびステロイド骨格を有する基を挙げることができる。1つ以上の環を有する基であって、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシおよび炭素数2以上のアルコキシアルキルのいずれか1つを有する基も側鎖基としての効果を有する。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。
【0083】
非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、それぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。側鎖型ジアミンは、本発明の特性を損なわない程度に併用するのが好ましい。また側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンについて、液晶に対する垂直配向性、電圧保持率、焼き付き特性および配向性を向上させる目的で取捨選択して使用することが好ましい。
【0084】
非側鎖型ジアミンについて説明する。既知の側鎖を有さないジアミンとしては、以下の式(DI−1)〜式(DI−16)のジアミンを挙げることができる。
【化59】
【0085】
上記の式(DI−1)において、G
20は、−CH
2−であり、少なくとも1つの−CH
2−は−NH−、−O−に置き換えられてもよく、mは1〜12の整数であり、アルキレンの少なくとも1つの水素は−OHに置き換えられてもよい。式(DI−3)および式(DI−5)〜式(DI−7)において、G
21はそれぞれ独立して単結合、−NH−、−NCH
3−、−O−、−S−、−S−S−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONCH
3−、−CONH−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−(CH
2)
m’−、−O−(CH
2)
m’−O−、−N(CH
3)−(CH
2)
k−N(CH
3)−、−(O−C
2H
4)
m’−O−、−O−CH
2−C(CF
3)
2−CH
2−O−、−O−CO−(CH
2)
m’−CO−O−、−CO−O−(CH
2)
m’−O−CO−、−(CH
2)
m’−NH−(CH
2)
m’−、−CO−(CH
2)
k−NH−(CH
2)
k−、−(NH−(CH
2)
m’)
k−NH−、−CO−C
3H
6−(NH−C
3H
6)
n−CO−、または−S−(CH
2)
m’−S−であり、m’はそれぞれ独立して1〜12の整数であり、kは1〜5の整数であり、nは1または2である。式(DI−4)において、sはそれぞれ独立して0〜2の整数である。式(DI−6)および式(DI−7)において、G
22はそれぞれ独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、または炭素数1〜10のアルキレンである。式(DI−2)〜(DI−7)中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素は、−F、−Cl、炭素数1〜3のアルキレン、−OCH
3、−OH、−CF
3、−CO
2H、−CONH
2、−NHC
6H
5、フェニル、またはベンジルで置き換えられてもよく、加えて式(DI−4)においては、ベンゼン環の少なくとも1つの水素は下記式(DI−4−a)〜式(DI−4−e)で置き換えられていてもよい。環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。そして、シクロヘキサン環またはベンゼン環への−NH
2の結合位置は、G
21またはG
22の結合位置を除く任意の位置である。
【化60】
式(DI−4−a)および式(DI−4−b)において、R
20はそれぞれ独立して水素または−CH
3である。
【0086】
【化61】
式(DI−11)において、rは0または1である。式(DI−8)〜式(DI−11)において、環に結合する−NH
2の結合位置は、任意の位置である。
【0087】
【化62】
式(DI−12)において、R
21およびR
22はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、G
23はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり、wは1〜10の整数である。式(DI−13)において、R
23はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシまたは−Clであり、pはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。式(DI−14)において、環Bは単環の複素環式芳香族基であり、R
24は水素、−F、−Cl、炭素数1〜6のアルキル、アルコキシ、ビニル、アルキニルであり、qはそれぞれ独立して0〜4の整数である。式(DI−15)において、環Cは複素環式芳香族基または複素環式脂肪族基である。式(DI−16)において、G
24は単結合、炭素数2〜6のアルキレンまたは1,4−フェニレンであり、rは0または1である。そして、環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−13)〜式(DI−16)において、環に結合する−NH
2の結合位置は、任意の位置である。
【0088】
上記式(DI−1)〜式(DI−16)の側鎖を有さないジアミンとして、以下の式(DI−1−1)〜式(DI−16−1)の具体例を挙げることができる。
【0089】
式(DI−1)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化63】
式(DI−1−7)および式(DI−1−8)において、kはそれぞれ独立して、1〜3の整数である。
【0090】
式(DI−2)〜式(DI−3)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化64】
【0091】
式(DI−4)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【0092】
式(DI−5)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化69】
式(DI−5−1)において、mは1〜12の整数である。
【化70】
式(DI−5−12)および式(DI−5−13)において、mは1〜12の整数である。
【化71】
式(DI−5−16)において、vは1〜6の整数である。
【化72】
式(DI−5−30)において、kは1〜5の整数である。
【化73】
式(DI−5−35)〜式(DI−5−37)、および式(DI−5−39)において、mは1〜12の整数であり、式(DI−5−38)および式(DI−5−39)において、kは1〜5の整数であり、式(DI−5−40)において、nは1または2の整数である。
【0093】
式(DI−6)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化74】
【0094】
式(DI−7)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化75】
式(DI−7−3)および式(DI−7−4)において、mは1〜12の整数であり、nはそれぞれ独立して1または2である。
【化76】
【化77】
【0095】
式(DI−8)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化78】
【0096】
式(DI−9)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化79】
【0097】
式(DI−10)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化80】
【0098】
式(DI−11)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化81】
【0099】
式(DI−12)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化82】
【0100】
式(DI−13)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化83】
【化84】
【化85】
【0101】
式(DI−14)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化86】
【0102】
式(DI−15)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化87】
【化88】
【0103】
式(DI−16)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化89】
【0104】
ジヒドラジドについて説明する。既知の側鎖を有さないジヒドラジドとしては、以下の式(DIH−1)〜式(DIH−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0105】
【化90】
式(DIH−1)において、G
25は単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、または−C(CF
3)
2−である。
式(DIH−2)において、環Dはシクロヘキサン環、ベンゼン環またはナフタレン環であり、この基の少なくとも1つの水素はメチル、エチル、またはフェニルで置き換えられてもよい。式(DIH−3)において、環Eはそれぞれ独立してシクロヘキサン環、またはベンゼン環であり、この基の少なくとも1つの水素はメチル、エチル、またはフェニルで置き換えられてもよく、Yは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、または−C(CF
3)
2−である。式(DIH−2)および式(DIH−3)において、環に結合する−CONHNH
2の結合位置は、任意の位置である。
【0106】
式(DIH−1)〜式(DIH−3)で表される化合物の例を以下に示す。
【化91】
式(DIH−1−2)において、mは1〜12の整数である。
【化92】
【化93】
【0107】
このような非側鎖型ジアミンおよびヒドラジドは液晶表示素子のイオン密度を低下させる等、電気特性を改善する効果がある。本発明の液晶配向剤に用いられるポリアミック酸またはその誘導体を製造する為に使用するジアミンとして非側鎖型ジアミンおよび/またはヒドラジドを用いる場合、ジアミンおよびジヒドラジドの総量に占めるその割合を0〜90モル%とすることが好ましく、0〜50モル%とすることがより好ましい。
【0108】
側鎖型ジアミンについて説明する。側鎖型ジアミンの側鎖基としては、以下の基をあげることができる。
【0109】
側鎖基としてまず、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボニル、アルケニルカルボニルオキシ、アルケニルオキシカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニル、アルキニルオキシ、アルキニルカルボニル、アルキニルカルボニルオキシ、アルキニルオキシカルボニル、アルキニルアミノカルボニル等を挙げることができる。これらの基におけるアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、いずれも炭素数3以上の基である。但し、アルキルオキシアルキルにおいては、基全体で炭素数3以上であればよい。これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0110】
次に、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシまたは炭素数2以上のアルコキシアルキルを有することを条件に、フェニル、フェニルアルキル、フェニルアルキルオキシ、フェニルオキシ、フェニルカルボニル、フェニルカルボニルオキシ、フェニルオキシカルボニル、フェニルアミノカルボニル、フェニルシクロヘキシルオキシ、炭素数3以上のシクロアルキル、シクロヘキシルアルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルフェニル、シクロヘキシルフェニルアルキル、シクロヘキシルフェニルオキシ、ビス(シクロヘキシル)オキシ、ビス(シクロヘキシル)アルキル、ビス(シクロヘキシル)フェニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルアルキル、ビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、およびシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル等の環構造の基を挙げることができる。
【0111】
さらに、2個以上のベンゼン環を有する基、2個以上のシクロヘキサン環を有する基、またはベンゼン環およびシクロヘキサン環で構成される2環以上の基であって、結合基がそれぞれ独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−もしくは炭素数1〜3のアルキレンであり、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のフッ素置換アルキル、炭素数1以上のアルコキシ、または炭素数2以上のアルコキシアルキルを有する環集合基を挙げることができる。ステロイド骨格を有する基も側鎖基として有効である。
【0112】
側鎖を有するジアミンとしては、以下の式(DI−31)〜式(DI−35)で表される化合物を挙げることができる。
【化94】
式(DI−31)において、G
26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−(CH
2)
m’−であり、m’は1〜12の整数である。G
26の好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、および炭素数1〜3のアルキレンであり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−CH
2−および−CH
2CH
2−である。R
25は炭素数3〜30のアルキル、フェニル、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(DI−31−a)で表される基である。このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は−Fで置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。このフェニルの水素は、−F、−CH
3、−OCH
3、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシで置き換えられていてもよい。ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置はその環において任意の位置であることを示すが、その結合位置はメタまたはパラであることが好ましい。即ち、基「R
25−G
26−」の結合位置を1位としたとき、2つの結合位置は3位と5位、または2位と5位であることが好ましい。
【化95】
式(DI−31−a)において、G
27、G
28およびG
29は結合基であり、これらはそれぞれ独立して単結合、または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレンの1以上の−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−で置き換えられていてもよい。環B
21、環B
22、環B
23および環B
24はそれぞれ独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルまたはアントラセン−9,10−ジイルであり、環B
21、環B
22、環B
23および環B
24において、少なくとも1つの水素は−Fまたは−CH
3で置き換えられてもよく、s、tおよびuはそれぞれ独立して0〜2の整数であって、これらの合計は1〜5であり、s、tまたはuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、そして、2つの環は同じであっても異なっていてもよい。R
26は水素、−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH
2F、−OCHF
2、または−OCF
3であり、この炭素数1〜30のアルキルの少なくとも1つの−CH
2−は下記式(DI−31−b)で表される2価の基で置き換えられていてもよい。
【化96】
式(DI−31−b)において、R
27およびR
28はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルであり、vは1〜6の整数である。R
26の好ましい例は炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜30のアルコキシである。
【0113】
【化97】
式(DI−32)および式(DI−33)において、G
30はそれぞれ独立して単結合、−CO−または−CH
2−であり、R
29はそれぞれ独立して水素または−CH
3であり、R
30は水素、炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルである。式(DI−33)におけるベンゼン環の少なくとも1つの水素は、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルで置き換えられてもよい。そして、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−32)における2つの基「−フェニレン−G
30−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方はステロイド核の6位に結合していることが好ましい。式(DI−33)における2つの基「−フェニレン−G
30−O−」のベンゼン環への結合位置は、ステロイド核の結合位置に対して、それぞれメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(DI−32)および式(DI−33)において、ベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示す。
【0114】
【化98】
式(DI−34)および式(DI−35)において、G
31はそれぞれ独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり、G
32は単結合または炭素数1〜3のアルキレンである。R
31は水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルの少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。R
32は炭素数6〜22のアルキルであり、R
33は水素または炭素数1〜22のアルキルである。環B
25は1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、rは0または1である。そしてベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示すが、それぞれ独立してG
31の結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0115】
側鎖型ジアミンの具体例を以下に例示する。上記式(DI−31)〜式(DI−35)の側鎖を有するジアミンとして、下記の式(DI−31−1)〜式(DI−35−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0116】
式(DI−31)で表される化合物の例を以下に示す。
【化99】
式(DI−31−1)〜式(DI−31−11)において、R
34は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜25のアルキルまたは炭素数5〜25のアルコキシである。R
35は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。
【0117】
【化100】
式(DI−31−12)〜式(DI−31−17)において、R
36は炭素数4〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜25のアルキルである。R
37は炭素数6〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数8〜25のアルキルである。
【0118】
【化101】
【化102】
【化103】
【化104】
【化105】
式(DI−31−18)〜式(DI−31−43)において、R
38は炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜20のアルキルまたは炭素数3〜20のアルコキシである。R
39は水素、−F、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH
2F、−OCHF
2または−OCF
3であり、好ましくは炭素数3〜25のアルキル、または炭素数3〜25のアルコキシである。そしてG
33は炭素数1〜20のアルキレンである。
【0119】
【化106】
【化107】
【化108】
【化109】
【0120】
式(DI−32)で表される化合物の例を以下に示す。
【化110】
【0121】
式(DI−33)で表される化合物の例を以下に示す。
【化111】
【化112】
【0122】
式(DI−34)で表される化合物の例を以下に示す。
【化113】
【化114】
【化115】
【化116】
式(DI−34−1)〜式(DI−34−12)において、R
40は水素または炭素数1〜20のアルキル、好ましくは水素または炭素数1〜10のアルキルであり、そしてR
41は水素または炭素数1〜12のアルキルである。
【0123】
式(DI−35)で表される化合物の例を以下に示す。
【化117】
式(DI−35−1)〜式(DI−35−3)において、R
37は炭素数6〜30のアルキルであり、R
41は水素または炭素数1〜12のアルキルである。
【0124】
本発明におけるジアミンとしては、式(DI−1−1)〜式(DI−16−1)、式(DIH−1−1)〜式(DIH−3−6)および式(DI−31−1)〜式(DI−35−3)で表されるジアミン以外のジアミンも用いることができる。このようなジアミンとしては、例えば下記式(DI−36−1)〜式(DI−36−13)で表される化合物が挙げられる。
【化118】
式(DI−36−1)〜式(DI−36−8)において、R
42はそれぞれ独立して炭素数3〜30のアルキル基を表す。
【化119】
式(DI−36−9)〜式(DI−36−11)において、eは2〜10の整数であり、式(DI−36−12)中、R
43はそれぞれ独立して水素、−NHBocまたは−N(Boc)
2であり、R
43の少なくとも1つは−NHBocまたは−N(Boc)
2であり、式(DI−36−13)において、R
44は−NHBocまたは−N(Boc)
2であり、そして、mは1〜12の整数である。ここでBocはt−ブトキシカルボニル基である。
【0125】
液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、上記のジアミンおよびジヒドラジドのうち、式(DI−5−1)、式(DI−7−3)、式(DI−34−4)、および(DI−34−7)、で表されるジアミンを用いるのが好ましい。中でも式(DI−5−1)においては、m=2、4または6である化合物が好ましく、m=4である化合物がより好ましい。式(DI−7−3)においては、m=2または3であり、n=1または2である化合物が好ましく、m=3であり、n=1である化合物がより好ましい。
【0126】
透過率を向上させることを重視する場合には、上記のジアミンおよびジヒドラジドのうち、式(DI−5−1)、式(DI−5−17)、および式(DI−7−3)で表されるジアミンを用いるのが好ましい。式(DI−5−1)においては、m=2、4または6である化合物が好ましく、m=4である化合物がより好ましい。式(DI−7−3)においては、m=2または3であり、n=1または2である化合物が好ましく、m=3であり、n=1である化合物がより好ましい。
【0127】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、上記のジアミンおよびジヒドラジドのうち、式(DI−5−17)、式(DI−5−30)、および式(DI−13−1)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI−2−1)、式(DI−5−1)、および(DI−13−1)で表されるジアミンが特に好ましい。中でも式(DI−5−30)において、k=2が特に好ましい。
【0128】
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることにより、配向膜中の残留電荷(残留DC)の緩和速度を向上させることが、焼き付きを防ぐ方法の一つとして有効である。この目的を重視する場合には、上記のジアミンおよびジヒドラジドのうち、式(DI−5−13)で表されるジアミンを用いるのが好ましい。
【0129】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体は、公知の感光性ジアミンから制限されることなく選択することができる。例えば、アゾベンゼン誘導体、スチルベン誘導体、アセチレン誘導体、クマリン誘導体、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体から選択することができる。このような感光性ジアミン化合物として、以下の式(PDI−1)〜式(PDI−13)を挙げることができる。
【化120】
【化121】
【化122】
【化123】
式(PDI−7)において、R
51はそれぞれ独立して−CH
3、−OCH
3、−CF
3、または−COOCH
3であり、sはそれぞれ独立して0〜2の整数である。式(PDI−8)において、R
52は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1〜20の直鎖アルキレン、−COO−、−OCO−、または−CONH−であり、直鎖アルキレンの少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置換されてもよい。R
53は、それぞれ独立して、−F、−CH
3、−OCH
3、−CF
3、または−OHであり、qは、それぞれ独立して、0〜4の整数である。式(PDI−12)において、R
54は炭素数1〜10のアルキルまたはアルコキシであり、少なくとも1つの水素はフッ素に置き換えられてもよい。式(PDI−1)〜式(PDI−8)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。
【0130】
上記感光性ジアミンのうち、液晶の配向性をさらに向上させることを重視すると、式(PDI−1)、式(PDI−6)、および式(PDI−7)が好ましく、下記式(PDI−7−1)、および式(PDI−7−2)で表されるジアミンが特に好ましい。また、電気特性、残像特性等、前述した諸般の特性を改善するために、感光性ジアミンを2つ以上併用してもよい。
【化124】
【0131】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体は、そのモノマーにモノイソシアネート化合物をさらに含んでいてもよい。モノイソシアネート化合物をモノマーに含むことによって、得られるポリアミック酸またはその誘導体の末端が修飾され、分子量が調節される。この末端修飾型のポリアミック酸またはその誘導体を用いることにより、例えば本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性を改善することができる。モノマー中のモノイソシアネート化合物の含有量は、モノマー中のジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の総量に対して1〜10モル%であることが、前記の観点から好ましい。前記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、およびナフチルイソシアネートが挙げられる。
【0132】
本発明のポリアミック酸およびその誘導体は、上記のテトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物およびアミノシラン化合物を溶剤中で反応させることによって得られる。この合成反応においては、原料の選択以外に特別な条件は必要でなく、通常のポリアミック酸合成における条件をそのまま適用することができる。使用する溶剤については後述する。
【0133】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物およびアミノシラン化合物を反応させて得られる末端封止ポリアミック酸またはその誘導体以外の、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分として、例えば後述するその他のポリマーや化合物などが挙げられる。
【0134】
その他のポリマーとしては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体(以下、“その他のポリアミック酸またはその誘導体”という。)、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げる事ができる。これらのポリマーは1種で用いてもよく、も2種以上用いてもよい。これらのうち、その他のポリアミック酸またはその誘導体およびポリシロキサンが好ましく、その他のポリアミック酸またはその誘導体がより好ましい。
【0135】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体とその他のポリアミック酸またはその誘導体をブレンドした配向剤において、それぞれのポリマーの構造や分子量を制御し、後述するように、基板に塗布し、予備乾燥を行うことによって、本発明のポリアミック酸またはその誘導体成分[A]と、その他のポリアミック酸またはその誘導体成分[B]に分離することができる。これは、混在するポリマーにおいて、表面エネルギーの小さなポリマーは上層に、表面エネルギーの大きなポリマーは下層に分離する現象を用いることにより、制御することができる。層分離の確認は形成された配向膜の表面エネルギーが[A]成分のみを含有する液晶配向剤によって形成された膜の表面エネルギーと同じまたは近い値であることで確認できる。
【0136】
その他のポリアミック酸またはその誘導体を合成するために用いられるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して、30モル%以上含むものである事が好ましく、50%以上含むものであることがより好ましい。
【0137】
その他のポリアミック酸またはその誘導体は、それぞれ、本発明の液晶配向剤の必須成分であるポリアミック酸またはその誘導体の合成方法として下記に記載したところに準じて合成することができる。
【0138】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体(前記[A]成分)およびその他のポリアミック酸またはその誘導体(前記[B]成分)の合計量に対する[A]成分の割合としては、10重量%〜100重量%が好ましく、20重量%〜100重量%がさらに好ましい。
【0139】
前記ポリシロキサンとしては、特開2009−036966、特開2010−185001、特開2011−102963、特開2011−253175、特開2012−159825、国際公開2008/044644、国際公開2009/148099、国際公開2010/074261、国際公開2010/074264、国際公開2010/126108、国際公開2011/068123、国際公開2011/068127、国際公開2011/068128、国際公開2012/115157、国際公開2012/165354等に開示されているポリシロキサンをさらに含有することができる。
【0140】
<アルケニル置換ナジイミド化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して1〜100重量%であることが好ましく、1〜70重量%であることがより好ましく、1〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0141】
以下にナジイミド化合物について具体的に説明する。
アルケニル置換ナジイミド化合物は、本発明で用いられるポリアミック酸またはその誘導体を溶解する溶剤に溶解させることができる化合物であることが好ましい。このようなアルケニル置換ナジイミド化合物の例は、下記の式(NA)で表される化合物が挙げられる。
【化125】
式(NA)において、L
1およびL
2はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルであり、nは1または2である。
【0142】
式(NA)において、n=1のとき、Wは炭素数1〜12のアルキル、炭素数2〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−Z
1−(O)
r−(Z
2O)
k−Z
3−H(ここで、Z
1、Z
2およびZ
3はそれぞれ独立して炭素数2〜6のアルキレンであり、rは0または1であり、そして、kは1〜30の整数である。)で表される基、−(Z
4)
r−B−Z
5−H(ここで、Z
4およびZ
5はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレンまたは炭素数5〜8のシクロアルキレンであり、Bはフェニレンであり、そして、rは0または1である。)で表される基、−B−T−B−H(ここで、Bはフェニレンであり、そして、Tは−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、−CO−、−S−、または−SO
2−である。)で表される基、またはこれらの基の1〜3個の水素が−OHで置換された基である。
【0143】
このとき、好ましいWは、炭素数1〜8のアルキル、炭素数3〜4のアルケニル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、炭素数4〜10のポリ(エチレンオキシ)エチル、フェニルオキシフェニル、フェニルメチルフェニル、フェニルイソプロピリデンフェニル、およびこれらの基の1個または2個の水素が−OHで置き換えられた基である。
【0144】
式(NA)において、n=2のとき、Wは炭素数2〜20のアルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、炭素数6〜12のアリーレン、−Z
1−O−(Z
2O)
k−Z
3−(ここで、Z
1〜Z
3、およびkの意味は前記の通りである。)で表される基、−Z
4−B−Z
5−(ここで、Z
4、Z
5およびBの意味は前記の通りである。)で表される基、−B−(O−B)
r−T−(B−O)
r−B−(ここで、Bはフェニレンであり、Tは炭素数1〜3のアルキレン、−O−または−SO
2−であり、rの意味は前記の通りである。)で表される基、またはこれらの基の1〜3個の水素が−OHで置き換えられた基である。
【0145】
このとき、好ましいWは炭素数2〜12のアルキレン、シクロヘキシレン、フェニレン、トリレン、キシリレン、−C
3H
6−O−(Z
2−O)
n−O−C
3H
6−(ここで、Z
2は炭素数2〜6のアルキレンであり、nは1または2である。)で表される基、−B−T−B−(ここで、Bはフェニレンであり、そして、Tは−CH
2−、−O−または−SO
2−である。)で表される基、−B−O−B−C
3H
6−B−O−B−(ここで、Bはフェニレンである。)で表される基、およびこれらの基の1個または2個の水素が−OHで置き換えられた基である。
【0146】
このようなアルケニル置換ナジイミド化合物は、例えば特許2729565に記載されているように、アルケニル置換ナジック酸無水物誘導体とジアミンとを80〜220℃の温度で0.5〜20時間保持することにより合成して得られる化合物や市販されている化合物を用いることができる。
【0147】
<ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。なお、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物にはアルケニル置換ナジイミド化合物は含まれない。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して1〜100重量%であることが好ましく、1〜70重量%であることがより好ましく、1〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0148】
なお、アルケニル置換ナジイミド化合物に対するラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の比率は、液晶表示素子のイオン密度を低減し、イオン密度の経時的な増加を抑制し、さらに残像の発生を抑制するために、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物/アルケニル置換ナジイミド化合物が重量比で0.1〜10であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましい。
【0149】
以下にラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物について具体的に説明する。
ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド等の(メタ)アクリル酸誘導体、およびビスマレイミドが挙げられる。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は、ラジカル重合性不飽和二重結合を2つ以上有する(メタ)アクリル酸誘導体であることがより好ましい。
【0150】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、および(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0151】
2官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えばエチレンビスアクリレート、東亜合成化学工業(株)の製品であるアロニックスM−210、アロニックスM−240およびアロニックスM−6200(いずれも商品名)、日本化薬(株)の製品であるKAYARADHDDA、KAYARADHX−220、KAYARADR−604およびKAYARADR−684(いずれも商品名)、大阪有機化学工業(株)の製品であるV260、V312およびV335HP(いずれも商品名)、並びに共栄社油脂化学工業(株)の製品であるライトアクリレートBA−4EA、ライトアクリレートBP−4PAおよびライトアクリレートBP−2PA(いずれも商品名)が挙げられる。
【0152】
3官能以上の多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば4,4’−メチレンビス(N,N−ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)、東亜合成化学工業(株)の製品であるアロニックスM−400、アロニックスM−405、アロニックスM−450、アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060(いずれも商品名)、日本化薬(株)の製品であるKAYARADTMPTA、KAYARADDPCA−20、KAYARADDPCA−30、KAYARADDPCA−60、KAYARADDPCA−120(いずれも商品名)、および大阪有機化学工業(株)の製品であるVGPTが挙げられる。
【0153】
(メタ)アクリル酸アミド誘導体の具体例としては、例えばN−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチル−N−メチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリディン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−(iso−ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−(メトキシメチル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)−2−メタクリルアミド、N−ベンジル−2−メタクリルアミド、およびN,N’−メチレンビスメタクリルアミドが挙げられる。
【0154】
上記の(メタ)アクリル酸誘導体のうち、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、および4,4’−メチレンビス(N,N−ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)が特に好ましい。
【0155】
ビスマレイミドとしては、例えばケイ・アイ化成(株)製のBMI−70およびBMI−80(いずれも商品名)、並びに大和化成工業(株)製のBMI−1000、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5000およびBMI−7000(いずれも商品名)が挙げられる。
【0156】
<エポキシ化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、前記(a)分子内に1つ以上のエポキシ環を含有するシランカップリング剤および(b)分子内に2つ以上のエポキシ環を含有する化合物以外のエポキシ化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。エポキシ化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0157】
以下にエポキシ化合物について具体的に説明する。
分子内にエポキシ環を1つ有する化合物としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、3,3,3−トリフルオロメチルプロピレンオキシド、スチレンオキシド、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、N−グリシジルフタルイミド、(ノナフルオロ−n−ブチル)エポキシド、パーフルオロエチルグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、N,N−ジグリシジルアニリン、および3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパンが挙げられる。
【0158】
上記の他、分子内にエポキシ環を有する化合物の例として、エポキシ環を有するオリゴマーや重合体も挙げられる。エポキシ環を有するモノマーとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびメチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0159】
エポキシ環を有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0160】
エポキシ環を有するモノマーの重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、エポキシ環を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、N−フェニルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体およびスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0161】
また例えば、本発明の液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤としては、例えばポリアミック酸およびその誘導体以外の高分子化合物、および低分子化合物が挙げられ、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。
【0162】
例えば、前記高分子化合物としては、有機溶媒に可溶性の高分子化合物が挙げられる。このような高分子化合物を本発明の液晶配向剤に添加することは、形成される液晶配向膜の電気特性や配向性を制御する観点から好ましい。該高分子化合物としては、例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタン、およびシリコーン変性ポリエステルが挙げられる。
【0163】
また、前記低分子化合物としては、例えば1)塗布性の向上を望むときにはかかる目的に沿った界面活性剤、2)帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、3)基板との密着性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、また、4)低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒、が挙げられる。
【0164】
シランカップリング剤としては、前記式(AS−1)〜式(AS−5)に記載のアミノシラン化合物以外のシランカップリング剤をさらに含有していてもよい。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンが挙げられる。
【0165】
イミド化触媒としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン類;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、メチル置換アニリン、ヒドロキシ置換アニリン等の芳香族アミン類;ピリジン、メチル置換ピリジン、ヒドロキシ置換ピリジン、キノリン、メチル置換キノリン、ヒドロキシ置換キノリン、イソキノリン、メチル置換イソキノリン、ヒドロキシ置換イソキノリン、イミダゾール、メチル置換イミダゾール、ヒドロキシ置換イミダゾール等の環式アミン類が挙げられる。前記イミド化触媒は、N,N−ジメチルアニリン、o−,m−,p−ヒドロキシアニリン、o−,m−,p−ヒドロキシピリジン、およびイソキノリンから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0166】
シランカップリング剤の添加量は、通常、ポリアミック酸またはその誘導体の総重量を100部としたとき、0〜20重量部であり、0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0167】
イミド化触媒の添加量は、通常、ポリアミック酸またはその誘導体のカルボニル基に対して0.01〜5等量であり、0.05〜3等量であることが好ましい。
【0168】
その他の添加剤の添加量は、その用途に応じて異なるが、通常、ポリアミック酸またはその誘導体の総重量を100部としたとき、0〜100重量部であり、0.1〜50重量部であることが好ましい。
【0169】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体は、ポリイミドの膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸またはその誘導体と同様に製造することができる。テトラカルボン酸二無水物の総仕込み量は、ジアミンの総モル数とほぼ等モル(モル比0.9〜1.1程度)とすることが好ましい。
【0170】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、7,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましい。前記ポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
【0171】
本発明のポリアミック酸またはその誘導体は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR、NMRで分析することによりその存在を確認することができる。またKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液による前記ポリアミック酸またはその誘導体の分解物の有機溶剤による抽出物をGC、HPLCもしくはGC−MSで分析することにより、使用されているモノマーを確認することができる。
【0172】
また例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性や前記ポリアミック酸またはその誘導体の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。前記溶剤は、高分子成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。前記溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド等の高分子成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。前記溶剤は1種でも2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0173】
溶剤としては、前記ポリアミック酸またはその誘導体の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
【0174】
ポリアミック酸またはその誘導体に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等のラクトンが挙げられる。
【0175】
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルまたはフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、これらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。
【0176】
これらの中で、前記溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0177】
本発明の配向剤中のポリアミック酸の濃度は0.1〜40重量%であることが好ましい。この配向剤を基板に塗布するときには、膜厚の調整のために、含有されているポリアミック酸を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。
【0178】
本発明の配向剤における固形分濃度は特に限定されるものではなく、下記の種々の塗布法に合わせ最適な値を選べばよい。通常、塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、ワニス重量に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0179】
本発明の液晶配向剤の粘度は、塗布する方法、ポリアミック酸またはその誘導体の濃度、使用するポリアミック酸またはその誘導体の種類、溶剤の種類と割合によって好ましい範囲が異なる。例えば、印刷機による塗布の場合は5〜100mPa・s(より好ましくは10〜80mPa・s)である。5mPa・sより小さいと十分な膜厚を得ることが難しくなり、100mPa・sを超えると印刷ムラが大きくなることがある。スピンコートによる塗布の場合は5〜200mPa・s(より好ましくは10〜100mPa・s)が適している。インクジェット塗布装置を用いて塗布する場合は5〜50mPa・s(より好ましくは5〜20mPa・s)が適している。液晶配向剤の粘度は回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE−20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
【0180】
本発明の液晶配向膜について、詳細に説明する。本発明の液晶配向膜は、前述した本発明の液晶配向剤の塗膜を加熱することによって形成される膜である。本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができる。例えば本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、加熱乾燥する工程と、加熱焼成する工程を経ることによって得ることができる。本発明の液晶配向膜については、必要に応じて後述の通り、加熱乾燥工程、加熱焼成工程を経て得られる膜をラビング処理して異方性を付与してもよい。または、必要に応じて、塗膜工程、加熱乾燥工程の後に光を照射して、または加熱焼成工程の後に光を照射して異方性を付与してもよい。またラビング処理をしないVA用液晶配向膜としても使用してもよい。
【0181】
塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。基板には、ITO(IndiumTinOxide)、IZO(In
2O
3−ZnO)、IGZO(In−Ga−ZnO
4)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製の基板が挙げられる。
【0182】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
【0183】
前記加熱乾燥工程は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。加熱乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、加熱焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。具体的には加熱乾燥温度は30℃〜150℃の範囲であること、さらには50℃〜120℃の範囲であることが好ましい。
【0184】
前記加熱焼成工程は、前記ポリアミック酸またはその誘導体が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。前記塗膜の焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に100〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うことが好ましく、120〜280℃がより好ましく、150〜250℃がさらに好ましい。
【0185】
光配向法による本発明の液晶配向膜の形成方法について、詳細に説明する。光配向法を用いた本発明の液晶配向膜は、塗膜を加熱乾燥した後、放射線の直線偏光または無偏光を照射することにより、塗膜に異方性を付与し、その膜を加熱焼成することにより形成することができる。または、塗膜を加熱乾燥し、加熱焼成した後に、放射線の直線偏光または無偏光を照射することにより形成する事ができる。配向性の点から、放射線の照射工程は加熱焼成工程前に行うのが好ましい。
【0186】
さらに、液晶配向膜の液晶配向能を上げるために、塗膜を加熱しながら放射線の直線偏光または無偏光を照射することもできる。放射線の照射は、塗膜を加熱乾燥する工程、または加熱焼成する工程で行っても良いし、加熱乾燥工程と加熱焼成工程の間に行っても良い。該工程における加熱乾燥温度は、30℃〜150℃の範囲であること、さらには50℃〜120℃の範囲であることが好ましい。また該工程における加熱焼成温度は、30℃〜300℃の範囲であること、さらには50℃〜250℃の範囲であることが好ましい。
【0187】
放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線または可視光を用いることができるが、300〜400nmの光を含む紫外線が好ましい。また、直線偏光または無偏光を用いることができる。これらの光は、前記塗膜に液晶配向能を付与することができる光であれば特に限定されないが、液晶に対して強い配向規制力を発現させたい場合、直線偏光が好ましい。
【0188】
本発明の液晶配向膜は、低エネルギーの光照射でも高い液晶配向能を示すことができる。前記放射線照射工程における直線偏光の照射量は0.05〜20J/cm
2であることが好ましく、0.5〜10J/cm
2がより好ましい。また直線偏光の波長は200〜400nmであることが好ましく、300〜400nmであることがより好ましい。直線偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。また、本発明の液晶配向膜は、直線偏光を照射することにより、直線偏光の偏光方向に対して垂直な方向に液晶を配向させることができる。
【0189】
プレチルト角を発現させたい場合に前記膜に照射する光は、前述同様直線偏光であっても無偏光であってもよい。プレチルト角を発現させたい場合に前記膜に照射される光の照射量は0.05〜20J/cm
2であることが好ましく、0.5〜10J/cm
2が特に好ましく、その波長は250〜400nmであることが好ましく、300〜380nmが特に好ましい。プレチルト角を発現させたい場合に前記膜に照射する光の前記膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、30〜60度であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。
【0190】
放射線の直線偏光または無偏光を照射する工程に使用する光源には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、Deep UVランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、エキシマランプ、KrFエキシマレーザー、蛍光ランプ、LEDランプ、ナトリウムランプ、マイクロウェーブ励起無電極ランプ、などを制限なく用いることができる。
【0191】
本発明の液晶配向膜は、前述した工程以外の他の工程をさらに含む方法によって好適に得られる。例えば、本発明の液晶配向膜は焼成または放射線照射後の膜を洗浄液で洗浄する工程は必須としないが、他の工程の都合で洗浄工程を設けることができる。
【0192】
洗浄液による洗浄方法としては、ブラッシング、ジェットスプレー、蒸気洗浄または超音波洗浄等が挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、併用してもよい。洗浄液としては純水または、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、これらの洗浄液は十分に精製された不純物の少ないものが用いられる。このような洗浄方法は、本発明の液晶配向膜の形成における前記洗浄工程にも適用することができる。
【0193】
本発明の液晶配向膜の液晶配向能を高めるために、加熱焼成工程の前後、ラビング工程の前後、または、偏光または無偏光の放射線照射の前後に、熱や光によるアニール処理を用いることができる。該アニール処理において、アニール温度が30〜180℃、好ましくは50〜150℃であり、時間は1分〜2時間が好ましい。また、アニール処理に使用するアニール光には、UVランプ、蛍光ランプ、LEDランプなどが挙げられる。光の照射量は0.3〜10J/cm
2であることが好ましい。
【0194】
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
【0195】
本発明の液晶配向膜は特に大きな配向の異方性を持つことを特徴とする。このような異方性の大きさは特開2005−275364等に記載の偏光IRを用いた方法で評価する事ができる。また以下の実施例に示すようにエリプソメトリーを用いた方法によっても評価することができる。詳しくは、分光エリプソメータによって液晶配向膜のリタデーション値を測定することができる。膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。すなわち、大きなリタデーション値を持つものは、大きな配向度を持ち、液晶配向膜として使用した場合、より大きな異方性を持つ配向膜が液晶組成物に対し大きな配向規制力を持つと考えられる。
【0196】
本発明の液晶配向膜は着色が少なく、透過率が高いことを特徴とする。透過率は、紫外可視分光光度計を用いて評価することができる。良好な表示特性を示すには、380nm〜780nmの吸光度の平均値から算出する透過率が85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましい。
【0197】
本発明の液晶配向膜は横電界方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。横電界方式の液晶表示素子に用いる場合、Pt角が小さいほど、また液晶配向能が高いほど暗状態での黒表示レベルは高くなり、コントラストが向上する。Pt角は0.1°以下が好ましい。
【0198】
本発明の配向膜は、液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向用途以外に、光学補償材やその他すべての液晶材料の配向制御に用いることができる。また本発明の配向膜は大きな異方性を有するので、単独で光学補償材用途に使用することができる。
【0199】
本発明の液晶表示素子について、詳細に説明する。
本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の配向膜である液晶表示素子を提供する。
【0200】
前記電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0201】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。
【0202】
液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許3086228、特許2635435、特表平5−501735、特開平8−157826、特開平8−231960、特開平9−241644(EP885272A1)、特開平9−302346(EP806466A1)、特開平8−199168(EP722998A1)、特開平9−235552、特開平9−255956、特開平9−241643(EP885271A1)、特開平10−204016(EP844229A1)、特開平10−204436、特開平10−231482、特開2000−087040、特開2001−48822等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0203】
前記負の誘電率異方性を有する液晶組成物の好ましい例として、特開昭57−114532、特開平2−4725、特開平4−224885、特開平8−40953、特開平8−104869、特開平10−168076、特開平10−168453、特開平10−236989、特開平10−236990、特開平10−236992、特開平10−236993、特開平10−236994、特開平10−237000、特開平10−237004、特開平10−237024、特開平10−237035、特開平10−237075、特開平10−237076、特開平10−237448(EP967261A1)、特開平10−287874、特開平10−287875、特開平10−291945、特開平11−029581、特開平11−080049、特開2000−256307、特開2001−019965、特開2001−072626、特開2001−192657、特開2010−037428、国際公開第2011/024666、国際公開2010/072370、特表2010−537010、特開2012−077201、特開2009−084362等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0204】
また例えば、本発明の素子に用いる液晶組成物は、例えば配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加しても良い。このような添加物は、光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。
【実施例】
【0205】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、実施例において用いた評価法および化合物は次の通りである。
【0206】
実施例において用いる溶剤、液晶組成物は次の通りである。
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DMI:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
GBL:γ−ブチロラクトン
BC:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0207】
<液晶組成物>
ポジ液晶組成物:
【化126】
物性値:NI 100.1℃; Δε 5.1; Δn 0.093; η 25.6mPa・s.
【0208】
ネガ型液晶組成物:
【化127】
物性値:NI 75.7℃; Δε −4.1; Δn 0.101; η 14.5mPa・s.
【0209】
<評価法>
1.重量平均分子量(Mw)
ポリアミック酸の重量平均分子量は、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters製)を用いてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。得られたポリアミック酸をリン酸−DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)で、ポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈した。カラムはHSPgel RT MB−M(Waters製)を使用し、前記混合溶液を展開剤として、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定を行った。標準ポリスチレンは東ソー(株)製TSK標準ポリスチレンを用いた。
2.配向膜の膜厚測定
分光エリプソメータM−2000U(J. A. Woollam Co. Inc.製)を使用して求めた。
3.鉛筆硬度測定
配向膜の硬度測定は、鉛筆引っかき試験機C221(ヨシミツ精機製)を用いて、JIS K 5600−5−4規格に従い、鉛筆硬度を求めた。鉛筆硬度は、H以上であることが好ましい。
4.異物試験
後述する液晶表示素子の異物試験は、FORCE MEASUREMENT、DS2−50N(株式会社 イマダ製)を用いて行った。作製した液晶表示素子に9.8Nの力を60回/分で1分間加圧した。顕微鏡にて液晶表示素子を観察し、加圧後に異物の有無を確認した。
5.コントラスト
後述する液晶素子のコントラストは、輝度計(YOKOGAWA 3298F)を用いて評価を行った。クロスニコル状態の偏光顕微鏡下に液晶表示素子を配置し、最小となる輝度を黒輝度として測定した。次に素子に任意の矩形波電圧を印加し、最大となる輝度を白輝度として測定した。この白輝度/黒輝度の値をコントラストとした。コントラストは2500未満で不良、2500以上で良、3000以上で最良と判断する。
6.AC残像測定
後述する液晶表示素子の輝度−電圧特性(B−V特性)を測定した。これをストレス印加前の輝度−電圧特性:B(before)とする。次に、素子に4.5V、60Hzの交流を20分間印加した後、1秒間ショートし、再び輝度−電圧特性(B−V特性)を測定した。これをストレス印加後の輝度−電圧特性:B(after)とする。これらの値をもとに、輝度変化率ΔB(%)を、
ΔB(%)=[B(after)−B(before)]/B(before) (式1)
の式を用いて見積もった。これらの測定は国際公開2000/43833号パンフレットを参考に行った。電圧0.75VにおけるΔB(%)の値が小さいほど、AC残像の発生を防止できるといえ、3.0%以下が好ましい。
【0210】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例A−1]
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた100mLの褐色四つ口フラスコに式(PDI−7−1)であるジアミン0.992g、式(DI−5−1)においてmが4であるジアミン1.011g、式(AS−5)であるアミノシラン0.199g、および脱水NMP24.0gを入れ、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。次いで式(AN−4−17)においてmが8であるテトラカルボン酸二無水物3.798gおよび脱水NMP20.0gを入れ、室温で24時間攪拌を続けた。この反応溶液に脱水NMP30.0gおよびBC20.0gを加えて、ポリマー固形分濃度が6重量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液をPA−1とする。PA−1に含まれるポリアミック酸の重量平均分子量は26,300であった。
【0211】
[合成例A−2〜A−30および合成例B−1〜B−14]
表1および表2に示したようにテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、および溶剤組成を変更した以外は、合成例1に準拠してポリマー固形分濃度が6重量%のポリアミック酸溶液(PA−2)〜(PA−30)および(PB−1)〜(PB−14)を調製した。
【0212】
【表1】
【0213】
【表2】
【0214】
【表3】
【0215】
<ポリマーブレンド>
[A]合成例A−1で調製したポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA−1)と、[B]合成例B−1で調製したポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PB−1)とを重量比[A]/[B]=3.0/7.0の混合比で混合した。得られたポリアミック酸溶液をPC−1とする。
【0216】
混合するポリアミック酸[A]および[B]の種類を変更した以外は、PC−1に準拠してポリマー固形分濃度が6重量%のポリアミック酸溶液(PC−2)〜(PC−36)を調製した。PC−1を含めて、表3に記載した。
【0217】
【表4】
【0218】
ポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA−1)に、添加剤(EPX−1)をポリマー100重量部当たり20重量部の割合で添加した。得られたポリアミック酸溶液をPD−1とする。
【0219】
混合するポリアミック酸と添加剤の種類および量を変更した以外は、PD−1に準拠してポリマー固形分濃度が6重量%のポリアミック酸溶液(PD−2)〜(PD−39)を調製した。PD−1を含めて、表4に記載した。
【0220】
【表5】
【0221】
<測定用基板の作製方法、および鉛筆硬度測定>
[実施例1]
合成例1で調製したポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PA−1)に、NMP/BC=77/20(重量比)の混合溶剤を加え、ポリマー固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤をガラス基板にスピンナー(ミカサ株式会社製、スピンコーター(1H−DX2))にて塗布した。なお、以降の実施例、比較例をも含めて、液晶配向剤の粘度に応じてスピンナーの回転速度を調整し、配向膜が下記の膜厚になるようにした。塗膜後、ホットプレート(アズワン株式会社製、ECホットプレート(EC−1200N))上で70℃にて80秒間加熱乾燥した。次いで、ウシオ電機(株)製マルチライトML−501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時の露光エネルギーは、ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT−150(受光器UVD−S365)を用いて光量を測定し、波長365nmで1.0±0.1J/cm
2になるよう、露光時間を調整した。続いて、クリーンオーブン(エスペック株式会社製、クリーンオーブン(PVHC−231))中で、230℃にて15分間加熱処理して、膜厚100±10nmの配向膜を形成した。得られた基板の鉛筆硬度を測定したところ、Hであった。
【0222】
<FFSセルの作製方法、流動配向の確認、異物発生の確認、およびAC残像測定>
基板上に配向膜が形成された基板2枚の配向膜が形成されている面を対向させ、それぞれの配向膜にラビング方向が平行になるように、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して貼り合わせ、セル厚4μmの空FFSセルを組み立てた。作製した空FFSセルに上記ポジ型液晶組成物を真空注入して、FFS液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子中の液晶の配向を確認したところ、流動配向は見られなかった。続いて異物試験後の液晶表示素子を顕微鏡で観察したところ、異物の発生は見られなかった。また、コントラストの値を測定したところ2750であり、AC残像を測定したところΔBは2.6%であった。
【0223】
[実施例2〜35]
表5−1に示したポリアミック酸溶液を用いた以外は、実施例1に準じた方法で測定用基板を作製し、鉛筆硬度を測定した。また、実施例1に準じた方法でFFSセルを作製し、流動配向の確認、異物試験、コントラスト測定およびAC残像測定を行った。測定結果を表5−1に記載した。
【0224】
[比較例1〜4]
表5−1に示したポリアミック酸溶液を用いた以外は、実施例1に準じた方法で測定用基板を作製し、鉛筆硬度を測定した。また、実施例1に準じた方法でFFSセルを作製し、流動配向の確認、異物試験、コントラスト測定およびAC残像測定を行った。測定結果は実施例1〜32とともに、表5−1に記載した。
【0225】
【表6】
【0226】
表5−1で示した通り、実施例1〜35と比較例1〜4を比較すると、本発明をFFS液晶表示素子に適用すれば、異物発生を制御しつつ、その液晶配向性、配向安定性、コントラスト、AC残像特性を維持できることが示された。
【0227】
[実施例36〜53]
表5−2に示したポリアミック酸溶液を用いた以外は、実施例1に準じた方法で測定用基板を作製し、鉛筆硬度を測定した。得られた鉛筆硬度の結果は表5−2に記載した。
【0228】
実施例1において、ポジ型液晶組成物の代わりに前記のネガ型液晶組成物を真空注入した以外は、実施例1に準じた方法でFFS液晶表示素子を作製した。流動配向の確認、異物試験、コントラスト測定およびAC残像測定の結果を表5−2に記載した。
【0229】
【表7】
【0230】
表5−2で示した通り、ネガ型液晶組成物を用いても、本発明をFFS液晶表示素子に適用すれば、異物発生を制御しつつ、その液晶配向性、配向安定性、コントラスト、AC残像特性を維持できることが示された。
【0231】
[実施例54]
ブレンド調製したポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PC−5)に、DMI/BC=74/20(重量比)の混合溶剤を加え、ポリマー固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤をガラス基板にスピンナー(ミカサ株式会社製、スピンコーター(1H−DX2))にて塗布した。なお、以降の実施例、比較例をも含めて、液晶配向剤の粘度に応じてスピンナーの回転速度を調整し、配向膜が下記の膜厚になるようにした。塗膜後、ホットプレート(アズワン株式会社製、ECホットプレート(EC−1200N))上で70℃にて80秒間加熱乾燥した。次いで、ウシオ電機(株)製マルチライトML−501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時の露光エネルギーは、ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT−150(受光器UVD-S365)を用いて光量を測定し、波長365nmで0.5±0.1J/cm
2になるよう、露光時間を調整した。紫外線露光中、基板の温度は50℃に加熱した。続いて、クリーンオーブン(エスペック株式会社製、クリーンオーブン(PVHC−231))中で、230℃にて15分間加熱焼成して、膜厚100±10nmの配向膜を形成した。得られた基板の鉛筆硬度を測定したところ、2Hであった。
【0232】
基板上に配向膜が形成された基板2枚の配向膜が形成されている面を対向させ、それぞれの配向膜に照射された紫外線の偏光方向が平行になるように、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して貼り合わせ、セル厚4μmの空FFSセルを組み立てた。作製した空FFSセルに前記のポジ型液晶組成物を真空注入して、FFS液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子中の液晶の配向を確認したところ、流動配向は見られなかった。続いて異物試験後の液晶表示素子を顕微鏡で観察したところ、異物の発生は見られなかった。また、コントラストの値を測定したところ3270であり、AC残像を測定したところΔBは1.9%であった。
【0233】
[実施例55〜69]
表5−3に示したポリアミック酸溶液を用いた以外は、実施例54に準じた方法で測定用基板を作製し、鉛筆硬度を測定した。また、実施例54に準じた方法でFFSセルを作製し、流動配向の確認、異物試験、コントラスト測定およびAC残像測定を行った。測定結果を実施例54も含めて表5−3に記載した。
【0234】
【表8】
【0235】
表5−3で示した通り、紫外線露光中、基板の温度は50℃に加熱しても、本発明を液晶表示素子に適用すれば、FFS液晶表示素子において、異物発生を制御しつつ、その液晶配向性、配向安定性、コントラスト、AC残像特性を維持できることが示された。
【0236】
[実施例70]
ブレンド調製したポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PC−6)に、NMP/BC=74/20(重量比)の混合溶剤を加え、ポリマー固形分濃度4重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤をガラス基板にスピンナー(ミカサ株式会社製、スピンコーター(1H−DX2))にて塗布した。なお、以降の実施例、比較例をも含めて、液晶配向剤の粘度に応じてスピンナーの回転速度を調整し、配向膜が下記の膜厚になるようにした。塗膜後、ホットプレート(アズワン株式会社製、ECホットプレート(EC−1200N))上で70℃にて80秒間加熱乾燥した。次いで、ウシオ電機(株)製UVランプ(UVL−1500M2−N1)を用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時の露光エネルギーは、ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT−150(受光器UVD−S365)を用いて光量を測定し、波長365nmで1.0±0.1J/cm
2になるよう、露光時間を調整した。続いて、クリーンオーブン(エスペック株式会社製、クリーンオーブン(PVHC−231))中で、230℃にて15分間加熱焼成して、膜厚100±10nmの配向膜を形成した。最後に、加熱後の基板をクリーンオーブン中で、120℃にて30分間の加熱アニールを行った。得られた基板の鉛筆硬度を測定したところ、2Hであった。
【0237】
基板上に配向膜が形成された基板2枚の配向膜が形成されている面を対向させ、それぞれの配向膜に照射された紫外線の偏光方向が平行になるように、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して貼り合わせ、セル厚4μmの空FFSセルを組み立てた。作製した空FFSセルに上記ポジ型液晶組成物を真空注入して、FFS液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子中の液晶の配向を確認したところ、流動配向は見られなかった。続いて異物試験後の液晶表示素子を顕微鏡で観察したところ、異物の発生は見られなかった。また、コントラストの値を測定したところ3230であり、AC残像を測定したところΔBは1.7%であった。
【0238】
[実施例71〜81]
表5−4に示したポリアミック酸溶液を用いた以外は、実施例70に準じた方法で測定用基板を作製し、鉛筆硬度を測定した。また、実施例70に準じた方法でFFSセルを作製し、流動配向の確認、異物試験、コントラスト測定およびAC残像測定を行った。測定結果を実施例70も含めて表5−4に記載した。
【0239】
【表9】
【0240】
表5−4で示した通り、紫外線照射時にウシオ電機(株)製UVランプ(UVL−1500M2−N1)を用いても、本発明を液晶表示素子に適用すれば、FFS液晶表示素子において、異物発生を制御しつつ、その液晶配向性、配向安定性、コントラスト、AC残像特性を維持できることが示された。
【0241】
[実施例82]
ブレンド調製したポリマー固形分濃度6重量%のポリアミック酸溶液(PC−1)に、NMP/BC=77/20(重量比)の混合溶剤を加え、ポリマー固形分濃度3.5重量%に希釈して液晶配向剤とした。液晶配向剤をガラス基板にインクジェット塗布装置(富士フィルム株式会社製、DMP−2831)にて塗布した。なお、液滴間隔、カートリッジ印加電圧を調整し、配向膜が下記の膜厚になるようにした。塗膜後、ホットプレート(アズワン株式会社製、ECホットプレート(EC−1200N))上で60℃にて80秒間加熱乾燥した。次いで、ウシオ電機(株)製マルチライトML−501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時の露光エネルギーは、ウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT−150(受光器UVD-S365)を用いて光量を測定し、波長365nmで1.0±0.1J/cm
2になるよう、露光時間を調整した。続いて、クリーンオーブン(エスペック株式会社製、クリーンオーブン(PVHC−231))中で、230℃にて15分間加熱処理して、膜厚80±10nmの配向膜を形成した。得られた基板の鉛筆硬度を測定したところ、3Hであった。
【0242】
基板上に配向膜が形成された基板2枚の配向膜が形成されている面を対向させ、それぞれの配向膜に照射された紫外線の偏光方向が平行になるように、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して貼り合わせ、セル厚4μmの空FFSセルを組み立てた。作製した空FFSセルに上記ポジ型液晶組成物を真空注入して、FFS液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子中の液晶の配向を確認したところ、流動配向は見られなかった。続いて異物試験後の液晶表示素子を顕微鏡で観察したところ、異物の発生は見られなかった。また、コントラストの値を測定したところ3100であり、AC残像を測定したところΔBは1.9%であった。
【0243】
[実施例83〜88]
表5−5に示したポリアミック酸溶液を用いた以外は、実施例82に準じた方法で測定用基板を作製し、鉛筆硬度を測定した。また、実施例82に準じた方法でFFSセルを作製し、流動配向の確認、異物試験、コントラスト測定およびAC残像測定を行った。測定結果を実施例82も含めて表5−5に記載した。
【0244】
【表10】
【0245】
表5−5で示した通り、インクジェット方式で配光剤を印刷しても、本発明を液晶表示素子に適用すれば、FFS液晶表示素子において、異物発生を制御しつつ、その液晶配向性、配向安定性、コントラスト、AC残像特性を維持できることが示された。