特許第6561680号(P6561680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561680サファイア用研磨液、貯蔵液及び研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561680
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】サファイア用研磨液、貯蔵液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20190808BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190808BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20190808BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550M
   C09K3/14 550Z
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09G1/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-163584(P2015-163584)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-39884(P2017-39884A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】郷 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 恵介
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−142987(JP,A)
【文献】 特開2015−093931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 3/00 − 3/60
B24B 21/00 − 39/06
C09G 1/00 − 3/00
H01L 21/304
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7骨格を有する化合物と、シリカを含む砥粒と、液状媒体と、を含有し、
前記1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7骨格を有する化合物が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7である、サファイア用研磨液。
【請求項2】
前記1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7骨格を有する化合物の含有量が研磨液の全質量基準で0.02質量%以上である、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
前記砥粒が、シリカを含む平均一次粒径60〜150nmの第1の粒子と、シリカを含む平均一次粒径40nm以下の第2の粒子と、を混合して得られ、前記第2の粒子の配合量に対する前記第1の粒子の配合量の比率が質量基準で1を超える、請求項1又は2に記載の研磨液。
【請求項4】
pHが7.0〜10.5である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記砥粒の含有量が研磨液の全質量基準で1〜40質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨液を得るための貯蔵液であって、
液状媒体で希釈することにより前記研磨液が得られる、貯蔵液。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨液を用いて、サファイアを含む被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項8】
請求項6に記載の貯蔵液を液状媒体で希釈することにより得られる研磨液を用いて、サファイアを含む被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイアを研磨するために使用されるサファイア用研磨液、当該研磨液を得るための貯蔵液、及び、これらを使用した研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイアは、従来からLEDの基体用途に主に用いられてきたが、透明で高い硬度を有し、傷がつきにくいことから、近年、スマートフォンに代表される電子機器筐体等のフロントカバーガラスやカメラカバーガラス等にも用いられるようになり、年々その需要が増している。
【0003】
サファイア基体の製造方法としては、例えば、まずベルヌーイ法、チョクラルスキー法、EFG(Edge−defined Film−fed Growth Method)法等でサファイアの塊を作り、次に基体状にくりぬき、薄くスライスして製造する方法が挙げられる。スライスするときには、ダイヤモンド粒が付着した細いワイヤー等(例えばマルチワイヤーソー)を使用して切り出すため、切り出した表面には細かい傷が存在する。
【0004】
LED基体は、サファイア基体上にGaNを結晶成長させて製造されるため、その用途上、サファイア表面は非常に平滑であることが求められる。また、サファイア基体を電子機器筐体のカバーガラス等に用いる場合でも、サファイア表面に傷等があると意匠性が低下し、見た目にも美しくないことから、サファイア表面は、傷等が無く平滑であることが求められる。
【0005】
このようなサファイア表面の傷等を除去し、平滑にするためにはCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)が必要不可欠である。CMPは、研磨液によって化学的に被加工物の表面を研磨し易く変質させながら、研磨液に含まれる砥粒と研磨パッド(研磨布)とにより機械的に研磨する技術である。しかし、サファイアは、化学的及び熱的に非常に安定であり、硬度も高いため、CMPが難しく、加工時間が長くかかり、生産コストが高いという問題がある。
【0006】
その生産コストを下げるため、研磨工程でのサファイアの研磨速度を向上させ、研磨時間を短縮することが望まれている。研磨速度は研磨時の圧力を上げることで高めることができる。しかし、必要とされるサファイア基体が、年々薄膜化していく傾向にあり、研磨定盤の回転数や圧力を一定以上に上げるとサファイア基体が割れたり欠けたりする原因となる。このため、研磨に用いられる研磨液を改善することで、研磨速度を向上させることが望まれている。
【0007】
サファイア用の研磨液はいくつか知られているが、その種類は豊富とは言えない。例えば、特許文献1には、高濃度のコロイダルシリカを含む研磨液によってサファイアを研磨することが記載されている。特許文献2には、アルカノールアミン化合物及びパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物の少なくとも一方と、シリカ粒子と、水とを含有してなるサファイア基体用研磨液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−44078号公報
【特許文献2】特開2014−39054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された研磨液を用いてサファイアを研磨したとしても、研磨速度は充分とはいえない。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、サファイアを速い研磨速度で研磨できるサファイア用研磨液、その貯蔵液、及び、これらを用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7骨格を有する化合物と、シリカを含む砥粒と、液状媒体と、を含有するサファイア用研磨液に関する。このような研磨液を用いることにより、サファイアを速い研磨速度で研磨することができる。さらに、上記研磨液を用いることにより、サファイアを速い研磨速度で平滑に研磨することもできる。
【0012】
本発明の一態様では、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7骨格を有する化合物の含有量が研磨液の全質量基準で0.02質量%以上であることが好ましい。この場合、サファイアを更に速い研磨速度で研磨することができる。
【0013】
本発明の一態様は、上記砥粒が、シリカを含む平均一次粒径60〜150nmの第1の粒子と、シリカを含む平均一次粒径40nm以下の第2の粒子と、を混合して得られ、上記第2の粒子の配合量に対する上記第1の粒子の配合量の比率が質量基準で1を超える態様であることが好ましい。この場合、サファイアを更に速い研磨速度で研磨することができる。
【0014】
本発明の一態様では、上記研磨液のpHが7.0〜10.5であることが好ましい。この場合、サファイアを更に速い研磨速度で研磨することができる。
【0015】
本発明の一態様では、砥粒の含有量が研磨液の全質量基準で1〜40質量%であることが好ましい。この場合、サファイアを更に速い研磨速度で研磨することができる。
【0016】
本発明の一態様は、上記研磨液を得るための貯蔵液であって、液状媒体で希釈することにより上記研磨液が得られる、貯蔵液に関する。このような貯蔵液によれば、研磨液の貯蔵・運搬等に係るコストを低減できる。
【0017】
本発明の一態様は、上記研磨液を用いて、サファイアを含む被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法に関する。このような研磨方法によれば、サファイアを速い研磨速度で平滑に研磨することができる。
【0018】
本発明の一態様は、上記貯蔵液を液状媒体で希釈することにより得られる研磨液を用いて、サファイアを含む被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法に関する。このような研磨方法によれば、サファイアを速い研磨速度で平滑に研磨することができる。また、研磨液の貯蔵・運搬・保管等に係るコストを抑制できるため、総合的な製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サファイアを速い研磨速度で研磨できるサファイア用研磨液、その貯蔵液、及び、これらを用いた研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0021】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、サファイア用研磨液であり、サファイアの研磨に用いられる。本実施形態に係る研磨液は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)骨格を有する化合物と、シリカを含む砥粒と、液状媒体と、を含有する。
【0022】
このような研磨液により研磨速度が向上される理由について、明確な知見は得られていないが、この理由を本発明者らは以下のように推定している。
【0023】
サファイアのCMPは、以下のように進行すると考えられる。シリカを含む砥粒が研磨パッド上でサファイアに押圧された際に、サファイアの水酸基とシリカの水酸基とが水素結合を形成し、当該結合部位が反応してアルミノシリケートが生成される。アルミノシリケートは軟質であるため、研磨パッド及びサファイア基体を相互に回転させると、アルミノシリケートが機械的に除去される。
【0024】
ここで、DBU骨格を有する化合物は、水酸基に直結した、サファイアのアルミニウム原子又はシリカのケイ素原子に作用し、水酸基上の電子密度を高める作用を有すると考えられる。そして、この作用により水素結合が形成され易くなることにより、続くアルミノシリケートの生成反応が速まり、研磨速度が向上すると考えられる。しかしながら、この研磨速度向上機構の真偽については、更なる研究を要する。
【0025】
(DBU骨格を有する化合物)
DBU骨格を有する化合物は、DBU骨格に結合する置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基等が挙げられる。サファイアの研磨速度が更に向上する観点から、DBU骨格を有する化合物は、DBUであることが好ましい。
【0026】
研磨液におけるDBU骨格を有する化合物の含有量は、サファイアの研磨速度が更に向上する観点から、研磨液の全質量基準で、0.02質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましい。DBU骨格を有する化合物の含有量は、サファイアの研磨速度が更に向上する観点から、2.0質量%未満であることが好ましく、1.0質量%未満であることがより好ましく、0.5質量%未満であることが更に好ましい。
【0027】
(砥粒)
砥粒は、シリカを含む。砥粒の構成成分としては、従来から、シリカ、アルミナ、セリアがよく知られているが、この中でも、シリカを用いることにより、サファイアを含む被研磨面を優れた研磨速度で平滑に研磨することができる。砥粒としては、平均粒径、形状、構成材料等の異なる二種以上の砥粒を混合して使用することができる。
【0028】
シリカとしては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられる。シリカの中でも、サファイアを更に優れた研磨速度で平滑に研磨する観点から、コロイダルシリカが好ましい。シリカは、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
砥粒におけるシリカの含有量は、砥粒の全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。砥粒は、例えば、シリカ粒子(シリカからなる粒子)であってもよい。
【0030】
前記砥粒は、サファイアを更に優れた研磨速度で平滑に研磨する観点から、シリカを含む平均一次粒径60〜150nmの第1の粒子(大きな粒子。シリカ粒子等)と、シリカを含む平均一次粒径40nm以下の第2の粒子(小さな粒子。シリカ粒子等)とを含有し、第2の粒子の含有量に対する第1の粒子の含有量の比率(第1の粒子の含有量/第2の粒子の含有量)が質量基準で1を超えることが好ましい。すなわち、前記砥粒は、平均一次粒径が60〜150nmである少なくとも一種の大きな粒子と、平均一次粒径が40nm以下である少なくとも一種の小さな粒子とを含有し、大きな粒子の含有量を小さな粒子の含有量で除した値が1を超過する値であることが好ましい。第1の粒子及び第2の粒子の含有量のそれぞれは、該当する粒子が複数存在する場合には、各粒子の含有量の合計量である。第1の粒子及び第2の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の配合量で調整することができる。前記砥粒は、前記第1の粒子と前記第2の粒子とを混合して得られ、前記第2の粒子の配合量に対する前記第1の粒子の配合量の比率が質量基準で1を超える態様であることが好ましい。
【0031】
平均一次粒径の測定方法としては、特に制限されるものではないが、BET法により測定した比表面積から換算する方法を用いることができる。例えば、JIS Z 8830に準じてBET法により測定した比表面積及びシリカ密度を用い、粒子が真球状であること及び細孔を有しないものであることを仮定して下記式(1)より算出した値を、粒子の平均一次粒径としてもよい。
平均一次粒径(nm)=6000/(比表面積(m/g)×シリカ密度(g/cm))
・・・式(1)
【0032】
大きな第1の粒子と小さな第2の粒子とを上記特定量含有することで研磨速度が向上する理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推定している。
【0033】
上述のとおり、サファイアのCMPは、研磨時にサファイアとシリカとが固層反応し、サファイアより比較的脆弱なアルミノシリケートが形成され、これが除去されることにより、研磨が進行すると考えられる。
【0034】
ここで、大きな第1の粒子のみが存在する場合には、小さな第2の粒子のみが存在する場合と比較して、粒子同士の隙間が大きくなることから、サファイアと粒子の接触面積が小さくなると考えられる。一方で、小さな第2の粒子のみが存在する場合には、大きな第1の粒子のみが存在する場合と比較して、サファイアと粒子の接触面積は大きくなるが、研磨パッドから粒子に伝わる荷重が小さくなると考えられる。
【0035】
これらに対し、研磨液が大きな第1の粒子と小さな第2の粒子とを上記特定量含有する場合には、大きな粒子間の隙間に小さな粒子が入り込むことでサファイアと粒子の接触面積が大きくなると共に、大きな粒子が隣接した小さな粒子に荷重を伝えることにより、小さな粒子であってもサファイアに対する荷重が大きくなるため、研磨速度が向上すると考えられる。
【0036】
第2の粒子の含有量に対する第1の粒子の含有量の前記比率は、サファイアの研磨速度が更に向上する観点から、1.01〜2.00であることが好ましく、1.03〜1.50であることがより好ましく、1.04〜1.20であることが更に好ましい。すなわち、第2の粒子の配合量に対する第1の粒子の配合量の前記比率は、1.01〜2.00であることが好ましく、1.03〜1.50であることがより好ましく、1.04〜1.20であることが更に好ましい。
【0037】
第1の粒子の平均一次粒径は、65nm以上であることが好ましく、70nmであることがより好ましく、75nm以上であることが更に好ましい。第1の粒子の平均一次粒径は、140nm以下であることが好ましく、130nm以下であることがより好ましい。
【0038】
第2の粒子の平均一次粒径は、2nm以上であることが好ましく、4nm以上であることがより好ましく、6nm以上であることが更に好ましい。第2の粒子の平均一次粒径は、35nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。
【0039】
研磨液における砥粒の含有量は、サファイアの研磨速度が更に向上する観点から、研磨液の全質量基準で、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、7質量%以上が特に好ましい。砥粒の含有量は、研磨液内で砥粒が凝集しにくくなる等により貯蔵安定性が向上する観点から、研磨液の全質量基準で、40質量%以下が好ましく、40質量%未満がより好ましく、35質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。砥粒の含有量は、研磨液のコストに直接影響する因子であるため、砥粒の含有量が少ないほどコストを低減することができる。
【0040】
研磨液におけるシリカ粒子の含有量は、サファイアの研磨速度が更に向上する観点から、研磨液の全質量基準で、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、7質量%以上が特に好ましい。シリカ粒子の含有量は、研磨液内で砥粒が凝集しにくくなる等により貯蔵安定性が向上する観点から、研磨液の全質量基準で、40質量%以下が好ましく、40質量%未満がより好ましく、35質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。シリカ粒子の含有量は、研磨液のコストに直接影響する因子であるため、砥粒の含有量が少ないほどコストを低減することができる。シリカ粒子の含有量は、研磨液を調製する際のシリカ粒子の添加量により調整することができる。
【0041】
(副添加剤)
本実施形態に係る研磨液は、必要に応じて、本発明の効果(サファイアを含む被研磨面を速い研磨速度で研磨すること)を阻害しない範囲で、pH調整剤、界面活性剤、清浄剤、防錆剤、表面改質剤、粘度調製剤、抗菌剤、分散剤等の副添加剤を含有してもよい。
【0042】
[pH調整剤]
pH調整剤としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、ピコリン酸等の有機酸;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、イミダゾール等のアルカリ成分などが挙げられる。これらのpH調整剤によって研磨液のpHを調整することができる。また、pHを安定化させるため、研磨液は緩衝液を含有してもよい。このような緩衝液としては、例えば、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0043】
(液状媒体)
本実施形態に係る研磨液は、液状媒体を含有する。液状媒体は、砥粒の分散媒として作用する。液状媒体としては、例えば、水、及び、水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水としては、より具体的には、脱イオン水、イオン交換水、超純水等が好ましい。水溶性の有機溶媒としては、例えば、アルコール類が挙げられる。アルコール類としては、例えば、エチルアルコール及びエチレングリコールが挙げられる。液状媒体が混合溶媒である場合、研磨液の貯蔵安定性を向上する観点から、有機溶媒の含有量は、液状媒体の総質量に対して、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。同様の観点から、液状媒体は水であってもよい。
【0044】
(pH)
本実施形態に係る研磨液のpHは、サファイアの研磨速度が向上し易い観点、及び、研磨液の貯蔵安定性に優れる観点から、7.0〜10.5が好ましく、7.3〜10.2がより好ましく、7.5〜10.0が更に好ましく、8.0〜9.8が特に好ましい。pHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0045】
研磨液のpHは、pHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、型番:pH METE F−50)で測定することができる。pHの測定値としては、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、ホウ酸塩pH緩衝液 pH:9.18(25℃))を用いて、3点校正した後、電極を研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を採用する。
【0046】
<貯蔵液>
本実施形態に係る研磨液は、使用時に水等の液状媒体で希釈されて使用される貯蔵液として保管することができる。すなわち、本実施形態に係る貯蔵液は、上述の研磨液を得るための貯蔵液であり、液状媒体で希釈する(例えば、質量基準で2倍以上に希釈する)ことにより研磨液が得られる。研磨液を貯蔵液として保管することにより、貯蔵・運搬・保管等に係るコストを抑制できる。貯蔵液は、研磨の直前に液状媒体で希釈して研磨液としてもよいし、研磨定盤上に貯蔵液と液状媒体とを供給し、研磨定盤上で研磨液を調製するようにしてもよい。
【0047】
貯蔵液の希釈倍率が高いほど貯蔵・運搬・保管等に係るコストの抑制効果が高いため、貯蔵液の希釈倍率の下限は、質量基準で、2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。また、貯蔵液の希釈倍率の上限は、特に制限はないが、質量基準で、10倍以下が好ましく、7倍以下がより好ましく、5倍以下が更に好ましい。希釈倍率がこれらの上限値以下である場合、貯蔵液に含まれる砥粒の含有量が高くなり過ぎることを抑制し、保管中の貯蔵液の安定性を維持し易い傾向がある。なお、希釈倍率をdとするとき、貯蔵液中の砥粒及びDBU骨格を有する化合物の各含有量は、研磨液中の砥粒及びDBU骨格を有する化合物の各含有量のd倍である。
【0048】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法(サファイアの研磨方法)は、上述した研磨液を用いて、サファイアを含む被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程は、上述した貯蔵液を液状媒体で希釈することにより得られる研磨液を用いて、サファイアを含む被研磨面を研磨する工程を備える工程であってもよい。
【0049】
本実施形態に係る研磨方法では、公知の研磨装置を広く用いることができる。例えば、サファイアを含む被研磨面を有する基体(サファイア基体)を研磨する場合、使用できる研磨装置としては、ヘッドにサファイア基体を保持するためのホルダーと、回転数が変更可能なモータ等と接続され且つ研磨パッドを貼り付けた定盤と、を有する一般的な研磨装置を使用できる。
【0050】
研磨パッドとしては、特に限定されないが、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等が挙げられる。基体の研磨条件に制限はないが、基体の飛び出しを防止し易い観点から、定盤の回転数は200min−1以下であることが好ましい。研磨後の基体表面における傷の発生を抑制し易い観点から、研磨圧力は700gf/cm以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る研磨方法では、例えば、定盤に貼り付けられた研磨パッドに、サファイア基体を押圧した状態で、研磨液を被研磨面と研磨パッドとの間にポンプ等により供給しながら、基体と定盤とを相対的に動かす。これらの操作により、サファイアを含む被研磨面を研磨する。研磨液を研磨装置に供給する方法は、研磨の間、研磨液を研磨パッドに連続的に供給できる方法であれば、特に限定されない。研磨液の供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。貯蔵液と水等の液状媒体とを被研磨面と研磨パッドとの間に供給し、研磨定盤上で貯蔵液を希釈(例えば、質量基準で2倍以上に希釈)しながら研磨を行ってもよい。また、供給した研磨液を回収して再度研磨パッドに供給し、循環して使用してもよい。
【0052】
研磨終了後の基体は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、その他洗浄剤等で洗浄後、スピンドライヤ等を用いて、基体上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0054】
<砥粒>
砥粒の分散液として、真球状のシリカ粒子Aを含む分散液、真球状のシリカ粒子Bを含む分散液、真球状のシリカ粒子Cを含む分散液、及び、真球状のシリカ粒子Dを含む分散液を、以下のとおりに作製した。
シリカ粒子Aを含む分散液:カタロイドSI−30(「カタロイド」は登録商標、以下同じ。日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Aの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
シリカ粒子Bを含む分散液:カタロイドSI−40(日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Bの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
シリカ粒子Cを含む分散液:カタロイドSI−50(日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Cの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
シリカ粒子Dを含む分散液:カタロイドSI−80P(日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Dの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
【0055】
<平均一次粒径の算出>
下記の方法により、シリカ粒子A、B、C及びDの平均一次粒径を算出した。
【0056】
砥粒の分散液のpHを硝酸で3.5に調整した後、n−プロパノールを加えて110℃で18〜24時間乾燥した。乾燥させた砥粒を500℃で1時間焼成した後、室温になるまで放冷して、粒径測定用の砥粒を得た。その後、JIS Z 8830に準じてBET法により砥粒の比表面積を測定した。シリカ粒子A、B、C及びDはいずれも真球状であることから、細孔の無い粒子と仮定して、求めた比表面積とシリカの密度から、下記式(1)により平均一次粒径を算出した。結果を表1に示す。
平均一次粒径(nm)=6000/(比表面積(m/g)×シリカ密度(g/cm))
・・・式(1)
【0057】
【表1】
【0058】
<実施例1>
(貯蔵液1)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.056質量部とを溶解混合し貯蔵液1を作製した。
【0059】
(研磨液1)
1質量部の貯蔵液1と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液1を3倍に希釈して研磨液1を調製した。研磨液1におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。なお、「含有量」とは研磨液の全質量基準の含有量である(以下同じ)。
【0060】
<実施例2>
(貯蔵液2)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.2質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.053質量部とを溶解混合し貯蔵液2を作製した。
【0061】
(研磨液2)
1質量部の貯蔵液2と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液2を3倍に希釈して研磨液2を調製した。研磨液2におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.030質量%であり、DBUの含有量は0.050質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0062】
<実施例3>
(貯蔵液3)
シリカ粒子Bを含む分散液64質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.056質量部とを溶解混合し貯蔵液3を作製した。
【0063】
(研磨液3)
1質量部の貯蔵液3と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液3を3倍に希釈して研磨液3を調製した。研磨液3におけるシリカ粒子Bの含有量は4.800質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。
【0064】
<実施例4>
(貯蔵液4)
シリカ粒子Bを含む分散液67質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液64質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.057質量部とを溶解混合し貯蔵液4を作製した。
【0065】
(研磨液4)
1質量部の貯蔵液4と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液4を3倍に希釈して研磨液4を調製した。研磨液4におけるシリカ粒子Bの含有量は5.020質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は4.800質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。
【0066】
<実施例5>
(貯蔵液5)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部とを溶解混合し貯蔵液5を作製した。
【0067】
(研磨液5)
1質量部の貯蔵液5と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液5を3倍に希釈して研磨液5を調製した。研磨液5におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であった。
【0068】
<比較例1>
(貯蔵液X1)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.050質量部とを溶解混合し貯蔵液X1を作製した。
【0069】
(研磨液X1)
1質量部の貯蔵液X1と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X1を3倍に希釈して研磨液X1を調製した。研磨液X1におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.610質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.040質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0070】
<比較例2>
(貯蔵液X2)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、チオ尿素0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.049質量部とを溶解混合し貯蔵液X2を作製した。
【0071】
(研磨液X2)
1質量部の貯蔵液X2と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X2を3倍に希釈して研磨液X2を調製した。研磨液X2におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、チオ尿素の含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.012質量%であった。
【0072】
<比較例3>
(貯蔵液X3)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、エチレンチオ尿素0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.058質量部とを溶解混合し貯蔵液X3を作製した。
【0073】
(研磨液X3)
1質量部の貯蔵液X3と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X3を3倍に希釈して研磨液X3を調製した。研磨液X3におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、エチレンチオ尿素の含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。
【0074】
<比較例4>
(貯蔵液X4)
シリカ粒子Bを含む分散液64質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.051質量部とを溶解混合し貯蔵液X4を作製した。
【0075】
(研磨液X4)
1質量部の貯蔵液X4と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X4を3倍に希釈して研磨液X4を調製した。研磨液X4におけるシリカ粒子Bの含有量は4.810質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.040質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0076】
<比較例5>
(貯蔵液X5)
シリカ粒子Bを含む分散液67質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液64質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.052質量部とを溶解混合し貯蔵液X5を作製した。
【0077】
(研磨液X5)
1質量部の貯蔵液X5と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X5を3倍に希釈して研磨液X5を調製した。研磨液X5におけるシリカ粒子Bの含有量は5.040質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は4.810質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0078】
<比較例6>
(貯蔵液X6)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、脱イオン水2質量部とを溶解混合し貯蔵液X6を作製した。
【0079】
(研磨液X6)
1質量部の貯蔵液X6と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X6を3倍に希釈して研磨液X6を調製した。研磨液X6におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.610質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.040質量%であった。
【0080】
<研磨液のpH測定>
実施例及び比較例の研磨液の25℃におけるpHを、株式会社堀場製作所製のpHメーター「pH METE F−50」を用いて測定した。具体的には、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、ホウ酸塩pH緩衝液 pH:9.18(25℃))で3点校正した後、電極を研磨液に入れ、2分以上経過して安定した後の値を測定した。評価結果を表2に示す。
【0081】
<CMP評価に用いるサファイア基体>
CMP評価では、サファイア基体として、直径101.6mm(4インチ)、厚さ0.65mmの面方位A面サファイアウエハを使用した。研磨前の平均表面粗さ(Ra)は0.2nmであった。平均表面粗さ(Ra)は、走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製「SPI3800N/SPA500」を用い、測定領域1ミクロンで測定した。
【0082】
<CMPによるサファイア研磨速度及び平均表面粗さ(Ra)の評価>
上記で得た研磨液1〜5、X1〜X6を、定盤に貼り付けたパッドに滴下しながら、下記に示す研磨条件でCMP処理を行い、研磨速度及び平均表面粗さ(Ra)の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0083】
(研磨条件)
研磨装置:不二越機械工業株式会社製、RDP−500
研磨パッド:ローム・アンド・ハース社製、SUBA800 XY−Groove
研磨圧力:500gf/cm
研磨液の流量:500ml/min(研磨液1000mlを循環させた。)
研磨時間:20分
サファイア基体:1枚
研磨定盤の回転速度(回転数):110min−1
【0084】
(研磨速度)
研磨速度は、CMP処理前後のサファイア基体の質量を測定することで、研磨されたサファイアの質量を求め、そこから基体の被研磨面の面積とサファイアの密度3.97g/cmとを用いて膜厚に換算し、減少した膜厚と研磨時間との関係から算出した。結果を表2に示す。研磨速度は、1.80μm/h以上を良好であるとした。
【0085】
(平均表面粗さ(Ra))
上記<CMP評価に用いるサファイア基体>に記載した方法と同様の方法で、CMP処理後のサファイア基体における研磨した面の平均表面粗さ(Ra)を測定した。結果を表2に示す。平均表面粗さ(Ra)は0.3nm未満を良好であるとした。
【0086】
【表2】
【0087】
表2の結果から、実施例1〜5の研磨液は、サファイアを含む被研磨面を速い研磨速度で平滑に研磨できることがわかる。
【0088】
実施例1、3及び4の結果から明らかなように、平均一次粒径が60nm以上150nm以下である大きなシリカ粒子(シリカ粒子D)の含有量が、平均一次粒径が40nm以下である小さなシリカ粒子(シリカ粒子A、B及びC)の含有量を超える研磨液、すなわち(シリカ粒子Dの含有量)/(シリカ粒子A、B及びCの合計含有量)が1を超える研磨液では、サファイアを含む被研磨面を更に速い研磨速度で研磨できる。
【0089】
実施例1及び5の結果から明らかなように、研磨液のpHが10.5以下であると、サファイアを含む被研磨面を更に速い研磨速度で研磨できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るサファイア用研磨液(CMP用研磨液)、貯蔵液、及び、これらを用いた研磨方法は、サファイアを含む被研磨面のCMPに好適であり、LED基体、スマートフォン等の電子機器表示部カバーに用いられるサファイア基体(サファイアを含む被研磨面を有する基体)のCMPに好適である。