【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0054】
<砥粒>
砥粒の分散液として、真球状のシリカ粒子Aを含む分散液、真球状のシリカ粒子Bを含む分散液、真球状のシリカ粒子Cを含む分散液、及び、真球状のシリカ粒子Dを含む分散液を、以下のとおりに作製した。
シリカ粒子Aを含む分散液:カタロイドSI−30(「カタロイド」は登録商標、以下同じ。日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Aの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
シリカ粒子Bを含む分散液:カタロイドSI−40(日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Bの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
シリカ粒子Cを含む分散液:カタロイドSI−50(日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Cの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
シリカ粒子Dを含む分散液:カタロイドSI−80P(日揮触媒化成株式会社製)に適宜脱イオン水を加え、分散液の全質量に対するシリカ粒子Dの含有量が30質量%となるように調整して上記分散液を作製した。
【0055】
<平均一次粒径の算出>
下記の方法により、シリカ粒子A、B、C及びDの平均一次粒径を算出した。
【0056】
砥粒の分散液のpHを硝酸で3.5に調整した後、n−プロパノールを加えて110℃で18〜24時間乾燥した。乾燥させた砥粒を500℃で1時間焼成した後、室温になるまで放冷して、粒径測定用の砥粒を得た。その後、JIS Z 8830に準じてBET法により砥粒の比表面積を測定した。シリカ粒子A、B、C及びDはいずれも真球状であることから、細孔の無い粒子と仮定して、求めた比表面積とシリカの密度から、下記式(1)により平均一次粒径を算出した。結果を表1に示す。
平均一次粒径(nm)=6000/(比表面積(m
2/g)×シリカ密度(g/cm
3))
・・・式(1)
【0057】
【表1】
【0058】
<実施例1>
(貯蔵液1)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.056質量部とを溶解混合し貯蔵液1を作製した。
【0059】
(研磨液1)
1質量部の貯蔵液1と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液1を3倍に希釈して研磨液1を調製した。研磨液1におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。なお、「含有量」とは研磨液の全質量基準の含有量である(以下同じ)。
【0060】
<実施例2>
(貯蔵液2)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.2質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.053質量部とを溶解混合し貯蔵液2を作製した。
【0061】
(研磨液2)
1質量部の貯蔵液2と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液2を3倍に希釈して研磨液2を調製した。研磨液2におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.030質量%であり、DBUの含有量は0.050質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0062】
<実施例3>
(貯蔵液3)
シリカ粒子Bを含む分散液64質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.056質量部とを溶解混合し貯蔵液3を作製した。
【0063】
(研磨液3)
1質量部の貯蔵液3と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液3を3倍に希釈して研磨液3を調製した。研磨液3におけるシリカ粒子Bの含有量は4.800質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。
【0064】
<実施例4>
(貯蔵液4)
シリカ粒子Bを含む分散液67質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液64質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.057質量部とを溶解混合し貯蔵液4を作製した。
【0065】
(研磨液4)
1質量部の貯蔵液4と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液4を3倍に希釈して研磨液4を調製した。研磨液4におけるシリカ粒子Bの含有量は5.020質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は4.800質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。
【0066】
<実施例5>
(貯蔵液5)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、DBU 0.4質量部と、脱イオン水2質量部とを溶解混合し貯蔵液5を作製した。
【0067】
(研磨液5)
1質量部の貯蔵液5と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液5を3倍に希釈して研磨液5を調製した。研磨液5におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、DBUの含有量は0.100質量%であった。
【0068】
<比較例1>
(貯蔵液X1)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.050質量部とを溶解混合し貯蔵液X1を作製した。
【0069】
(研磨液X1)
1質量部の貯蔵液X1と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X1を3倍に希釈して研磨液X1を調製した。研磨液X1におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.610質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.040質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0070】
<比較例2>
(貯蔵液X2)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、チオ尿素0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.049質量部とを溶解混合し貯蔵液X2を作製した。
【0071】
(研磨液X2)
1質量部の貯蔵液X2と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X2を3倍に希釈して研磨液X2を調製した。研磨液X2におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、チオ尿素の含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.012質量%であった。
【0072】
<比較例3>
(貯蔵液X3)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、エチレンチオ尿素0.4質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.058質量部とを溶解混合し貯蔵液X3を作製した。
【0073】
(研磨液X3)
1質量部の貯蔵液X3と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X3を3倍に希釈して研磨液X3を調製した。研磨液X3におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.600質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.020質量%であり、エチレンチオ尿素の含有量は0.100質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.014質量%であった。
【0074】
<比較例4>
(貯蔵液X4)
シリカ粒子Bを含む分散液64質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.051質量部とを溶解混合し貯蔵液X4を作製した。
【0075】
(研磨液X4)
1質量部の貯蔵液X4と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X4を3倍に希釈して研磨液X4を調製した。研磨液X4におけるシリカ粒子Bの含有量は4.810質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.040質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0076】
<比較例5>
(貯蔵液X5)
シリカ粒子Bを含む分散液67質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液64質量部と、脱イオン水2質量部と、リンゴ酸0.052質量部とを溶解混合し貯蔵液X5を作製した。
【0077】
(研磨液X5)
1質量部の貯蔵液X5と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X5を3倍に希釈して研磨液X5を調製した。研磨液X5におけるシリカ粒子Bの含有量は5.040質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は4.810質量%であり、リンゴ酸の含有量は0.013質量%であった。
【0078】
<比較例6>
(貯蔵液X6)
シリカ粒子Aを含む分散液16質量部と、シリカ粒子Cを含む分散液48質量部と、シリカ粒子Dを含む分散液67質量部と、脱イオン水2質量部とを溶解混合し貯蔵液X6を作製した。
【0079】
(研磨液X6)
1質量部の貯蔵液X6と2質量部の脱イオン水とを混合することにより貯蔵液X6を3倍に希釈して研磨液X6を調製した。研磨液X6におけるシリカ粒子Aの含有量は1.200質量%であり、シリカ粒子Cの含有量は3.610質量%であり、シリカ粒子Dの含有量は5.040質量%であった。
【0080】
<研磨液のpH測定>
実施例及び比較例の研磨液の25℃におけるpHを、株式会社堀場製作所製のpHメーター「pH METE F−50」を用いて測定した。具体的には、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、ホウ酸塩pH緩衝液 pH:9.18(25℃))で3点校正した後、電極を研磨液に入れ、2分以上経過して安定した後の値を測定した。評価結果を表2に示す。
【0081】
<CMP評価に用いるサファイア基体>
CMP評価では、サファイア基体として、直径101.6mm(4インチ)、厚さ0.65mmの面方位A面サファイアウエハを使用した。研磨前の平均表面粗さ(Ra)は0.2nmであった。平均表面粗さ(Ra)は、走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製「SPI3800N/SPA500」を用い、測定領域1ミクロンで測定した。
【0082】
<CMPによるサファイア研磨速度及び平均表面粗さ(Ra)の評価>
上記で得た研磨液1〜5、X1〜X6を、定盤に貼り付けたパッドに滴下しながら、下記に示す研磨条件でCMP処理を行い、研磨速度及び平均表面粗さ(Ra)の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0083】
(研磨条件)
研磨装置:不二越機械工業株式会社製、RDP−500
研磨パッド:ローム・アンド・ハース社製、SUBA800 XY−Groove
研磨圧力:500gf/cm
2
研磨液の流量:500ml/min(研磨液1000mlを循環させた。)
研磨時間:20分
サファイア基体:1枚
研磨定盤の回転速度(回転数):110min
−1
【0084】
(研磨速度)
研磨速度は、CMP処理前後のサファイア基体の質量を測定することで、研磨されたサファイアの質量を求め、そこから基体の被研磨面の面積とサファイアの密度3.97g/cm
3とを用いて膜厚に換算し、減少した膜厚と研磨時間との関係から算出した。結果を表2に示す。研磨速度は、1.80μm/h以上を良好であるとした。
【0085】
(平均表面粗さ(Ra))
上記<CMP評価に用いるサファイア基体>に記載した方法と同様の方法で、CMP処理後のサファイア基体における研磨した面の平均表面粗さ(Ra)を測定した。結果を表2に示す。平均表面粗さ(Ra)は0.3nm未満を良好であるとした。
【0086】
【表2】
【0087】
表2の結果から、実施例1〜5の研磨液は、サファイアを含む被研磨面を速い研磨速度で平滑に研磨できることがわかる。
【0088】
実施例1、3及び4の結果から明らかなように、平均一次粒径が60nm以上150nm以下である大きなシリカ粒子(シリカ粒子D)の含有量が、平均一次粒径が40nm以下である小さなシリカ粒子(シリカ粒子A、B及びC)の含有量を超える研磨液、すなわち(シリカ粒子Dの含有量)/(シリカ粒子A、B及びCの合計含有量)が1を超える研磨液では、サファイアを含む被研磨面を更に速い研磨速度で研磨できる。
【0089】
実施例1及び5の結果から明らかなように、研磨液のpHが10.5以下であると、サファイアを含む被研磨面を更に速い研磨速度で研磨できる。