特許第6561841号(P6561841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6561841離型ポリイミドフィルム、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板、積層板、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板及び多層配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6561841
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】離型ポリイミドフィルム、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板、積層板、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板及び多層配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20190808BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190808BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20190808BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20190808BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190808BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20190808BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20190808BHJP
   H05K 3/18 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   B32B27/34
   B32B27/00 L
   B32B7/06
   B32B15/08 J
   C09J7/20
   C09J11/06
   C09J163/00
   H05K1/03 630E
   H05K1/03 630D
   !H05K3/18 A
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-552467(P2015-552467)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2014082587
(87)【国際公開番号】WO2015087884
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-254088(P2013-254088)
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】山田 薫平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 陽一
(72)【発明者】
【氏名】村井 曜
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−302525(JP,A)
【文献】 特開平11−300894(JP,A)
【文献】 特開2000−280408(JP,A)
【文献】 特開2008−213416(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/105755(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/122708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 1/00−201/10
H05K 1/03,3/10−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面上に、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)を含有してなる離型層を有し、前記離型層のポリイミドフィルムの設けられていない面上に接着層を有する、単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記離型層の厚みが0.01〜10μmである請求項1に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムの厚みが10〜100μmである請求項1又は2に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムの前記離型層が形成される側の面の表面粗さ(Ra)が0.2μm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記アミノ樹脂(B)に対する前記アルキド樹脂(A)の比率(A/B)が、固形分質量比で95/5〜10/90である請求項1〜4のいずれか一項に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記接着層が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物を用いてなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルムの接着層側を、プリプレグ又は絶縁層の少なくとも一方の面に積層成形してなる接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板製造用積層板。
【請求項8】
請求項7に記載の単層又は多層配線板製造用積層板の離型ポリイミドフィルムを剥離してなる、単層又は多層配線板製造用積層板。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルムの接着層側をプリプレグ又は絶縁層の一方の面に積層し、プリプレグ又は絶縁層のもう一方の面を回路加工されてなる単層又は多層配線板に積層してなる、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の単層又は多層配線板製造用離型ポリイミドフィルムを単層又は多層配線板に積層することによって、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板を製造する工程、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板から離型ポリイミドフィルムを除去する工程、及び回路加工する工程を含む、多層配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型ポリイミドフィルム、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板、積層板、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板及び多層配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層配線板は、熱プレス工程を経て製造される。この熱プレス工程は、片面又は両面に内層回路を有する回路基板上に、繊維基材に樹脂組成物を含浸、塗工して得られるプリプレグ、又は繊維基材を含まない樹脂フィルムと、銅箔とを積層し、加熱、加圧することによって行われる。また、熱プレス工程は、その生産性の高さから多く用いられている。
【0003】
そして、近年、電子機器の小型化、高集積化に伴い、多層配線板材料の微細配線化が求められている。微細配線を形成する方法としては、回路を形成する面に無電解銅めっきを施した後、必要な部分のみに電解銅めっきを行い、不要な部分の銅めっき層をエッチングによって除去し配線を形成する、セミアディティブ法が好適に用いられる。この方法によれば、エッチング除去する銅層の厚みが薄いほど、つまり、表面粗さのより小さな回路を形成する面にめっき銅層を薄く形成させて除去することによって、さらなる微細配線化が可能となる。
【0004】
しかし、熱プレス工程を用いた多層配線板の製造では、熱プレス工程時に銅箔を回路を形成する面とプレス板の間に積層するため、セミアディティブ法を行うためには、銅箔のエッチング工程が必要であった(例えば、特許文献1参照)。また、多層化する回路を形成する面には銅箔の表面粗さが転写されるため、回路を形成する面の表面粗さは0.3μm程度と大きなものであった。
【0005】
これを解決するために、表面粗さの小さい、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム材料を銅箔の替わりに用いることも検討されている(例えば、特許文献2参照)が、耐熱性の低さや熱変形による樹脂フィルムの硬化物である絶縁層への影響から、さらなる改善の余地があった。
【0006】
また、このようなフィルム材料の離型剤としては、剥離性の優れたシリコーン系離型剤が広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−251739号公報
【特許文献2】特許第5212578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、シリコーン系離型剤を用いた場合、シリコーン組成物中の低分子量成分が絶縁層に移行し、信頼性の低下等を引き起こすという課題があった。
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、銅箔を用いた場合には必要であった熱プレス工程後のエッチングが不要であり、セミアディティブ法に好適な表面粗さの絶縁層が得られ、離型剤成分の絶縁層への移行が少なく、さらに平坦性の良好な多層配線板を製造可能な材料としての離型ポリイミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す離型層を有するポリイミドフィルム、つまり離型ポリイミドフィルムが上記目的に沿うものであることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の材料を提供するものである。
〔1〕ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面上に、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)を含有してなる離型層を有する離型ポリイミドフィルム。
〔2〕前記離型層の厚みが0.01〜10μmである上記〔1〕に記載の離型ポリイミドフィルム。
〔3〕前記ポリイミドフィルムの厚みが10〜100μmである〔1〕又は〔2〕に記載の離型ポリイミドフィルム。
〔4〕前記ポリイミドフィルムの前記離型層が形成される側の面の表面粗さ(Ra)が0.2μm以下である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の離型ポリイミドフィルム。
〔5〕前記離型層のポリイミドフィルムの設けられていない面上に接着層を有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の離型ポリイミドフィルム。
〔6〕前記接着層が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂組成物を用いてなる〔5〕に記載の離型ポリイミドフィルム。
〔7〕〔5〕又は〔6〕に記載の離型ポリイミドフィルムの接着層側を、プリプレグ又は絶縁層の少なくとも一方の面に積層成形してなる接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板。
〔8〕〔7〕に記載の積層板の離型ポリイミドフィルムを剥離してなる積層板。
〔9〕〔5〕又は〔6〕に記載の離型ポリイミドフィルムの接着層側をプリプレグ又は絶縁層の一方の面に積層し、プリプレグ又は絶縁層のもう一方の面を回路加工されてなる単層又は多層配線板に積層してなる、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板。
〔10〕〔5〕又は〔6〕に記載の離型ポリイミドフィルムを単層又は多層配線板に積層することによって、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板を製造する工程、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板から離型ポリイミドフィルムを除去する工程、及び回路加工する工程を含む、多層配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、熱板プレス、ロールラミネータ、ダブルプレス等を用いた成形方法で多層配線板を製造する際において、絶縁層との剥離性に優れ、さらに、例えば200℃以上等の高温での使用においてもフィルムが溶断することのない耐熱強度を併せて有し、離型剤成分の絶縁層への移行が少なく、且つ表面粗さが小さく、表面の平坦性に優れる絶縁層及び多層配線板を得ることが可能な離型ポリイミドフィルム、及びこれを用いた多層配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1において、プレス後に離型ポリイミドフィルムを剥離した後の絶縁層の表面状態を高精度3次元表面形状粗さ測定システムで観察した結果である。
図2】比較例3において、表面の電解銅箔をエッチングにより除去した後の絶縁層の表面状態を高精度3次元表面形状粗さ測定システムで観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[離型ポリイミドフィルム]
まず、本発明の離型ポリイミドフィルムについて説明する。本発明の離型ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面上に、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)を含有してなる離型層を有するものである。
なお、本明細書において、「含有してなる」とは、含有されたものが反応せずそのままの状態で含有されている状態と、含有されたものの少なくとも一部が反応した状態で含有されている状態のいずれであってもよいことを意味する。
本発明の離型ポリイミドフィルムの基材として用いられるポリイミドフィルムとしては、適度な強度を有し、剥離する際に破れ等を引き起こさないものが好適に用いられる。例えば、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドがフィルム強度の点で好ましく、下記式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリイミドがより好ましい。
【0014】
【化1】

(式(I)中、Zは、炭素数6〜18の4価の芳香族炭化水素基であり、Zは、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基である。)
【0015】
が表す炭素数6〜18の4価の芳香族炭化水素基としては、好ましくは、炭素数6〜12の4価の芳香族炭化水素基である。
が表す炭素数6〜18の4価の芳香族炭化水素基としては、例えば、下記の芳香族炭化水素基が好ましく挙げられる。
【化2】
【0016】
また、Zが表す炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、好ましくは、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
が表す炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、下記の芳香族炭化水素基が好ましく挙げられる。
【化3】
【0017】
市販のポリイミドフィルムとしては、例えば、宇部興産株式会社製、商品名:ユーピレックスR、ユーピレックスS、ユーピレックスSGA、東レデュポン株式会社製、商品名:カプトンH、カプトンV、カプトンE、カプトンEN、カプトンENZT、鐘淵化学工業株式会社製、商品名:アピカルAH、アピカルNPI等が挙げられる。離型層との密着性を向上させるため、これらの市販フィルムの表面に、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理等を施してもよい。
【0018】
本発明の離型ポリイミドフィルムの基材として用いるポリイミドフィルムの厚みについては、目的及び用途により選択すればよい。ポリイミドフィルムの追従性と剥離性との観点から、例えば、ポリイミドフィルムの厚みは、10〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0019】
本発明の離型ポリイミドフィルムの基材として用いるポリイミドフィルムの表面粗さ(Ra)は、剥離した後の絶縁層の平坦性を良好なものとする観点から、例えば、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下、さらには0.05μm以下であることが好ましい。なお、ここでいう「ポリイミドフィルムの表面粗さ」は、少なくとも離型層が形成される側の面の表面粗さを示す。
【0020】
本発明に係るポリイミドフィルムは、高温域で熱溶融しない強度を有することから、例えば、150〜300℃で用いることが好ましく、当該範囲で明瞭なガラス転移温度を示さず、さらには貯蔵弾性率(10Hz)が1GPaを超えることが好ましい。
【0021】
(離型層)
本発明の離型ポリイミドフィルムの離型層を形成するための樹脂組成物(以降、離型層用樹脂組成物と呼ぶことがある)は、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)を含むものである。該離型層用樹脂組成物の固形分において、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)の合計含有量(但し、有機溶媒を含有する場合には、固形分の合計含有量である。)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
離型層を、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)を含有してなるものとすることで、離型層中に架橋構造が得られ、シリコーン系離型剤と比較して離型層用樹脂組成物成分の絶縁層への移行が抑制され、且つ良好な剥離性を示す。離型層用樹脂組成物成分の絶縁層への移行が抑制されることで、絶縁層の耐熱性等の低下を抑制するこができる。
離型層の厚さは、例えば、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましく、0.05〜2μmがさらに好ましい。離型層の厚さが0.01〜10μmであることで剥離性が向上する傾向にある。
前記成分(B)に対する前記成分(A)の比率(A/B)が、固形分質量比で、例えば、95/5〜10/90であることが好ましく、90/10〜40/60であることがより好ましい。
アルキド樹脂(A)の比率が95質量%以下(即ち、アミノ樹脂(B)の比率が5質量%以上)であると、離型層中に十分な架橋構造が得られ、剥離性の低下が抑制される傾向にある。また、アルキド樹脂(A)の比率が10質量%以上(即ち、アミノ樹脂(B)の比率が90質量%以下)であると、離型層が硬くなりすぎず、良好な剥離性が得られる傾向にある。
【0022】
本発明において、アルキド樹脂(A)とは、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる合成樹脂をいう。アルキド樹脂(A)としては、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物又は不乾性油脂肪酸で変性した不転化性アルキド、及び二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性アルキドのいずれも使用可能である。
また、本発明において使用されるアルキド樹脂(A)は各種市販のものを用いてもよく、公知の方法に従って合成してもよい。
【0023】
アルキド樹脂(A)の合成方法としては、例えば、多価アルコールと多塩基酸又はこれに変性剤を加えて加熱縮合する方法等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の二価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール;ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、マンニット、ソルビット等の多価アルコールなどを使用できる。
【0024】
また、多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和多塩基酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、イソフタル酸、無水トリメリト酸等の不飽和多塩基酸;シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ−アルダー反応による多塩基酸などを使用できる。なお、安息香酸を併用してもよい。
【0025】
また、変性剤としては、例えば、ヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、及びこれらの脂肪酸、オクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸等を用いることができる。
【0026】
アルキド樹脂(A)の油長(脂肪酸の含有質量比率)は、例えば、0〜60%であることが好ましく、20〜40%であることがより好ましい。
アルキド樹脂(A)の酸価は、例えば、1〜30mgKOH/gであることが好ましく、5〜25mgKOH/gであることがより好ましい。
また、アルキド樹脂(A)の水酸基価は、例えば、50〜300mgKOH/gであることが好ましく、100〜250mgKOH/gであることがより好ましい。
また、これらアルキド樹脂(A)に、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を変性又は混合して使用することも可能である。
【0027】
本発明においてアミノ樹脂(B)とは、アミノ基を含む化合物とアルデヒドとの縮合反応によって得られる樹脂をいい、例えば、メラミン樹脂、アニリンアルデヒド樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
本発明において使用されるアミノ樹脂は、各種市販のアミノ樹脂を用いてもよく、公知の方法に従って合成してもよい。
合成方法としては、例えば、メチロール又はそのエーテルを含むプレポリマーを原料樹脂として合成された各種アミノ樹脂を使用できる。
より具体的には、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル化尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、メチル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等、各種公知のものを使用できる。繰り返し使用性の観点からはメチル化メラミン樹脂、特にメチロール基をトリアジン核あたり1個以上含有するメチル化メラミン樹脂を主成分とするものが好ましい。
本発明において、アミノ樹脂として特に好ましく用いられるメチル化メラミン樹脂は、通常メラミンに塩基性下でホルマリンを付加反応させ、さらに酸性下でメタノールをエーテル反応させることで得られる。ホルマリンの付加量やメタノールのエーテル化量の違いによりアミノ樹脂の官能基であるイミノ基、メチロール基、メチルエーテル基量をコントロールすることができる。
なお、このトリアジン核あたりのメチロール基量は、滴定分析及び機器分析により算出することができ、例えば、核磁気共鳴装置や元素分析装置等で測定することにより算出することができる。
【0028】
また、本発明においては離型層用樹脂組成物成分の絶縁層への移行が抑制される範囲で、剥離性の点から、離型層用樹脂組成物にシリコーン樹脂(C)を含有させてもよい。
その場合において、シリコーン樹脂の含有比率は、アルキド樹脂(A)とアミノ樹脂(B)との合計含有量に対するシリコーン樹脂(C)の含有比率(C/(A+B))が、固形分質量比で20/100以下であることが好ましく、10/100以下であることがより好ましい。前記成分(A)と前記成分(B)の合計100質量部に対して、成分(C)が20質量部以下であると、良好な硬化性が得られ、シリコーン樹脂(C)の移行が生じにくい傾向にある。
なお、本発明においてシリコーン樹脂(C)とは、ジメチルポリシロキサンを主成分とする三次元的な網状構造を持ったオルガノポリシロキサン、シリコーンゴム、シリコーン油をいう。本発明で用いられるシリコーン樹脂(C)は各種市販のものを用いてもよく、公知方法に従って合成してもよい。
【0029】
シリコーン樹脂(C)としては、オルガノポリシロキサンが好ましく、耐熱性、光沢、剥離性、表面状態に優れた離型層が得られるものであれば直鎖状、分岐鎖状のいずれの構造であってもよいが、前記アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)との相溶性に優れたものが本発明の離型層用樹脂組成物には好適に使用される。
なお、オルガノポリシロキサンは有機基とケイ素原子のモル比を変化させることにより樹脂の柔軟性、弾性等の性質を変化させることができる。このようなオルガノポリシロキサンとしては具体的には、下記式(1):
【0030】
【化4】
【0031】
(式中、R1の少なくとも1個は、アルキド樹脂及びアミノ樹脂の少なくとも一方(但し、アルキド樹脂とアミノ樹脂との反応物を含む。)と反応性を有する置換基であり、残余が炭素数1〜12の非置換または置換アルキル基であり、Xは15〜500、好ましくは25〜100、Yは15〜500、好ましくは25〜100、X+Yは30〜1000、好ましくは50〜200であり、0.15≦Y/(X+Y)≦0.5である。)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
オルガノポリシロキサン1分子中における、ケイ素原子に結合する有機基は、15〜50mol%がフェニル基であることが好ましく、15〜40mol%であることがさらに好ましい。フェニル基量が15mol%以上であると、アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)との相溶性が良好となる傾向にある。また、フェニル基量が50mol%以下であると剥離性の低下が抑制される傾向にある。
【0032】
離型層に剥離性の性能を十分に持たせるためには、前記フェニル基以外の残りの有機基のうち少なくとも1個がアルキド樹脂及びアミノ樹脂の少なくとも一方と反応性を有する官能基であることが好ましい。アルキド樹脂及びアミノ樹脂の少なくとも一方と反応性を有する官能基としては、水酸基置換有機基、アミノ基置換有機基、カルボキシル基置換有機基、グリシジル基置換有機基等が挙げられる。これらの中でも、アミノアルキド樹脂への導入方法の容易さの観点から水酸基置換有機基が好ましい。
【0033】
水酸基置換有機基を用いた場合は、該水酸基置換有機基はシリコーン樹脂1分子あたり1〜20個含有させることが好ましく、1〜10個含有させることがより好ましい。水酸基置換有機基としては、例えば、下記式(2):
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、nは1〜3の平均値である。)で表される水酸基置換有機基や下記式(3):
【0036】
【化6】
【0037】
(式中、R及びR2は炭素数1〜10の2価炭化水素基、aは0又は1である。)で表される水酸基置換有機基等が挙げられる。
【0038】
このようなアルキド樹脂及びアミノ樹脂の少なくとも一方と反応性を有する置換基を有することにより、アルキド樹脂及びアミノ樹脂の少なくとも一方とシリコーン樹脂が反応し、離型層中で化学的に結合した構造をとり、剥離性の向上と共に絶縁層へのシリコーンの移行を抑制することができる。
【0039】
上記有機基以外の残余の非置換又は置換アルキル基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基が挙げられる。該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等の非置換アルキル基、又はこれら基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロキル基、シアノエチル基等の置換アルキル基などが挙げられる。なお、より高い剥離性を得る観点からは、メチル基であることが好ましい。
【0040】
本発明に用いられる離型層用樹脂組成物には界面活性剤を配合することができる。
本発明において界面活性剤とは、界面現象の調節に用いられる、低濃度でも表面活性を示す物質をいう。界面活性剤としては、活性剤の主体が陰イオンになるアニオン系界面活性剤、活性剤の主体が陽イオンになるカチオン系界面活性剤、活性剤の主体が両性になる両性界面活性剤、電離しないノニオン系界面活性剤があるが、効果の点から帯電防止性を有するカチオン系界面活性剤が好ましい。
【0041】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、第3級アンモニウム塩、アミド第4級アンモニウム塩等が挙げられる。帯電防止の効果をより高めるためには第4級アンモニウム塩が好ましい。第4級アンモニウム塩としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルモルホリニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩、アミドアンモニウム塩、5,5,7,7−テトラメチル−2−オクテニルメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミンの第4級アンモニウム塩、ベンジル・トリ(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリド、ヘキサデシル・トリ(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリド等が挙げられる。
【0042】
カチオン系界面活性剤の添加量は、アルキド樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、及びシリコーン樹脂(C)からなる組成物100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。添加量が0.05質量部以上であると、良好な帯電防止性能が得られる傾向にある。また添加量が10質量部以下であると、良好な塗膜の硬化性が得られ、剥離性の低下が抑制される傾向にある。なお、本発明においては、本発明の効果が発現する範囲で、カチオン系界面活性剤に加えてアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性系界面活性剤を併用することもできる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルフォスフェート塩、アルキルスルホン塩酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシアルキルアミン、アルキルジエタノールアミド等が挙げられる。また、両性系界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。なお、前記カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性系界面活性剤としては、各種市販のものを用いてもよい。
【0043】
また、本発明においては、離型層用樹脂組成物に酸性触媒を含有させることができる。該酸性触媒は、上記アルキド樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の反応の触媒として機能する。酸性触媒を用いることによって、低温での塗工が可能となり、生産性が向上する。酸性触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0044】
離型層用樹脂組成物に上記アルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)の少なくとも一方と反応性を有する官能基を含有するシリコーン樹脂(C)を導入するのは、剥離性を調整するためである。なお、シリコーン樹脂を導入しない場合は、離型層上へ接着層を形成する際の塗工性が良好となる。
なお、アルキド樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、及びアルキド樹脂とアミノ樹脂を反応させた化合物と反応性を有する官能基を有するシリコーン樹脂を含む樹脂組成物(以下、シリコーン含有アミノアルキド樹脂と呼ぶこともある)は、商業的に購入できる。例えば、日立化成ポリマー株式会社製の商品名、テスファイン319、TA31−209E等が挙げられる。
また、アルキド樹脂とアミノ樹脂を含む樹脂組成物(以下、非シリコーン系アミノアルキド樹脂と呼ぶこともある)も、商業的に購入できる。例えば、日立化成ポリマー株式会社製の商品名、テスファイン303、テスファイン305等が挙げられる。
【0045】
離型層用樹脂組成物は、最終的には、各成分が有機溶媒中に溶解もしくは分散されたワニス(以降、離型層用樹脂ワニスと呼ぶことがある)の状態とすることが好ましい。
【0046】
ワニスにする際に用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、例えば、溶解性と塗工時の外観の点から、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、さらには、トルエンとメチルエチルケトン(MEK)との混合溶媒が好ましい。
【0047】
最終的に得られるワニス中の樹脂組成物の含有量(固形分濃度)は、例えば、ワニス全体の1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量(固形分濃度)を1〜40質量%とすることで、塗工時の膜厚の制御が容易となる。
【0048】
また、必要に応じて離型層中に、つまり離型層用樹脂組成物に、易滑剤、帯電防止剤等を添加することも可能である。熱プレス工程では、静電気が頻繁に発生するため、帯電防止剤を添加する方法が好ましく、他にも離型層を形成していない面への塗布によって帯電防止層を形成してもよい。
【0049】
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面上に所望の厚さの離型層を形成する方法としては、ポリイミドフィルム上に、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を用いて、例えば、50℃〜200℃、10秒〜600秒乾燥する方法が挙げられる。
【0050】
(接着層)
本発明の離型ポリイミドフィルムは、該離型層のポリイミドフィルムの設けられていない面上に接着層を有することができる。
前記接着層は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなる樹脂組成物(以降、接着層用樹脂組成物と呼ぶことがある)を用いて、離型層面上に形成されてなることが好ましい。エポキシ樹脂は、耐熱性、耐アルカリ性等に優れる点で好ましい。なお、「エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなる」樹脂組成物は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とを未反応の状態のまま含有していてもよいし、反応した状態で含有していてもよい。
接着層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜8μmがより好ましい。この範囲にすることで、熱板プレス後に、接着層と離型層の界面で離型ポリイミドフィルムを除去することがより容易にできる。
ここで、「エポキシ樹脂」とは、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である。分子中に2つのエポキシ基を有する樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、分子中に、平均で2個よりも大きなエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を使用してもよい。
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂や、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、多官能型エポキシ樹脂としては、例えば、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、めっき銅との接着力の観点から、接着層の多官能型エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル構造を有するものが好ましい。
これらは単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中で、例えば、ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)が好ましい。ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製のNC−3000、NC−3000−H等が挙げられる。
【0051】
また、エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多官能フェノール化合物;ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物などが挙げられる。これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0052】
接着層用樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してなるものであってもよい。硬化促進剤としては、例えば、潜在性の熱硬化剤である各種イミダゾール類、BF3アミン錯体、及びリン系硬化促進剤等が使用できる。
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂の配合量に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。
接着層用樹脂組成物の保存安定性やBステージ状(半硬化状)の接着層用樹脂組成物の取扱性及びはんだ耐熱性の点から、イミダゾール類、リン系硬化促進剤が好ましい。
【0053】
イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−1−メチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン等のイミダゾール化合物;前記イミダゾール化合物とトリメリト酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とイソシアヌル酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物と臭化水素酸との付加反応物;前記イミダゾール化合物とエポキシ樹脂との付加反応物;前記イミダゾール化合物とシアネート樹脂との付加反応物などが挙げられる。これらの中でも、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
【0054】
リン系硬化促進剤としては、リン原子を含有し、エポキシ樹脂の硬化反応を促進させる硬化促進剤が好ましい。例えば、リン系硬化促進剤を単独で用いてもよいし、他の硬化促進剤1種又は2種以上を併用してもよい。リン系硬化促進剤として、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;これら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;第三ホスフィンとキノン類との付加物などが挙げられる。
【0055】
さらに、本発明の接着層用樹脂組成物は、その目的に応じ、任意に公知の無機充填材、有機充填剤、熱可塑性樹脂、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を使用できる。
【0056】
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウムのほか、Eガラス、Tガラス、Dガラス等のガラス粉又は中空ガラスビーズ等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
無機充填材の含有量としては、接着層用樹脂組成物中10質量%以下であることが好ましい。配合量が10質量%以下であると、粗化処理後の良好な表面形状を維持することができ、めっき特性及び層間の絶縁信頼性の低下を防ぐことができる。
【0057】
有機充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる均一構造の樹脂粒子;アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂粒子等が挙げられる。
有機充填剤の含有量は、例えば、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.5〜300質量部であることが好ましく、1〜250質量部であることがより好ましい。
【0058】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0059】
難燃剤としては、例えば、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
【0060】
その他、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤等が挙げられる。蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体等が挙げられる。接着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物;シラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤などが挙げられる。
【0061】
接着層用樹脂組成物は、最終的には、各成分が有機溶媒中に溶解もしくは分散されたワニス(以降、接着層用樹脂ワニスと呼ぶことがある)の状態とすることが好ましい。
【0062】
ワニスにする際に用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
これらの有機溶媒は、樹脂の溶解性及び塗工後の外観の観点から適宜選定される。
これらの中で、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ケトン系溶媒と窒素原子含有溶媒との混合系溶媒が、樹脂の溶解性及び塗工後の外観の観点から好ましい。
【0063】
最終的に得られるワニス中の樹脂組成物は、例えば、ワニス全体の1〜60質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量を1〜60質量%とすることが、塗工時の膜厚精度及び外観の観点で好ましい。
【0064】
本発明の接着層は、接着層用樹脂組成物(又はこれを含有するワニス)を離型ポリイミドフィルムの離型層上にリバースコーター、グラビアコーター、エアドクターコーター、ダイコーター、リップコーター等の塗布装置を用いて、例えば80〜230℃で30秒〜600秒乾燥することで得られる。
【0065】
なお、本発明においては、離型ポリイミドフィルムの離型層の設けられていない面上に、接着層を有してもよく、この状態で、熱板プレス工程で使用することもできる。
【0066】
本発明の離型ポリイミドフィルムを用いることによって、熱プレス工程後の絶縁層の表面平坦性が向上する。この表面平坦性は、図1及び図2の絶縁層の表面状態を高精度3次元表面形状粗さ測定システムで観察した結果で示されるとおり、図2に示す銅箔を用いた場合は、表面にうねりが生じているが、本発明の離型ポリイミドフィルムを用いた場合は、図1に示すようにうねりが殆ど見られない。このうねりは、熱膨張率の低い絶縁層と熱膨張率の高い銅箔が熱プレス工程時にその熱膨張率差によって生じるものと推察される。
【0067】
[接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板、積層板の離型ポリイミドフィルムを剥離してなる積層板、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板、及び多層配線板の製造方法]
本発明の接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板は、接着層付き離型ポリイミドフィルムの接着層側を、プリプレグ又は絶縁層の少なくとも一方の面に積層成形してなるものである。
【0068】
本発明の接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板は、接着層付き離型ポリイミドフィルムを、接着層が内側となるようにプリプレグ又は絶縁層の片面又は両面に重ね、さらに外側に鏡板を重ねてプレス成型し、製造できる。
また、本発明の接着層付き離型ポリイミドフィルム付き積層板は、例えば、接着層付き離型ポリイミドフィルムを、接着層が内側となるようにプリプレグ又は絶縁層の片面又は両面に重ね、耐熱性ゴムシートを用いたラミネーターで加熱及び加圧して積層し、積層後に加熱して硬化させ、製造できる。
【0069】
上記プレス成型における加熱温度(熱板の温度)は、150〜260℃とすることが好ましい。加圧時の圧力は0.5〜10MPaとすることが好ましい。また、耐熱性ゴムシートを用いたラミネーターにおける加熱温度は、80〜150℃とすることが好ましい。加圧時の圧力は0.3〜10MPaとすることが好ましい。
いずれの方法においても、積層成形した後に、適宜、離型ポリイミドフィルムを剥離し、積層板を得ることができる。
【0070】
本発明の前記離型ポリイミドフィルム(接着層付き離型ポリイミドフィルム)付き単層又は多層配線板は、接着層付き離型ポリイミドフィルムの接着層側をプリプレグ又は絶縁層の一方の面に積層し、プリプレグ又は絶縁層のもう一方の面を回路加工されてなる単層又は多層配線板に積層してなるものである。該プリプレグは、硬化前のプリプレグであってもよいし、少なくとも一部が硬化したプリプレグであってもよい。
ここで、「回路加工されてなる」とは、回路加工された後に、配線板の製造において通常行われ得る処理が施される場合を含んでおり、具体的には、回路加工された後にめっき処理等が施される場合を含む。また、単層配線板とは、プリプレグ又は絶縁層が片面のみに積層される場合には1層の回路層を有する配線板のことをいい、プリプレグ又は絶縁層が両面に積層される場合にはそれぞれに対して1層の回路層(つまり合計2層の回路層)を有する配線板のことをいう。一方、多層配線板とは、少なくとも一方の面が回路加工されたコアと、該回路加工されたコアの面上に、少なくとも1層のプリプレグ又は絶縁層を積層し、積層されたプリプレグ上又は絶縁層上に回路が加工されているものをいう。
【0071】
本発明の多層配線板の製造方法は、前記接着層を有する離型ポリイミドフィルムを単層又は多層配線板に積層することによって、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板を製造する工程、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板から離型ポリイミドフィルムを除去する工程、及び回路加工する工程を含む。ここで、接着層を有する離型ポリイミドフィルムの製造方法としては、ポリイミドフィルムの一方の面上にアルキド樹脂(A)及びアミノ樹脂(B)を含む離型剤組成物を塗工して離型層を形成する工程(離型ポリイミドフィルム製造工程)、前記離型層のポリイミドフィルムの設けられていない面上に接着層を形成し、接着層を有する離型ポリイミドフィルムを製造する工程(接着層付き離型ポリイミドフィルム製造工程)を含むことが好ましい。
上記工程のうち、離型ポリイミドフィルム製造工程、接着層付き離型ポリイミドフィルム製造工程については既述のとおりである。
以下では、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板製造工程及び離型ポリイミドフィルム除去工程について説明する。
なお、接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板から離型ポリイミドフィルムを除去した後は、当該接着層は多層配線板の絶縁層として機能する。
【0072】
接着層付き離型ポリイミドフィルム付き単層又は多層配線板製造工程では、例えば、まず、接着層が形成された本発明の離型ポリイミドフィルムを、接着層が内側となるようにプリプレグ又は絶縁層に重ね、これを回路加工されてなる配線板の片面、又は両面に重ねる。さらに外側に鏡板を重ねてプレス成型する。鏡板を取り外すことで、片面、又は両面に本発明の離型ポリイミドフィルムが配置された単層又は多層配線板が製造される。その後、本発明の離型ポリイミドフィルムを剥離除去し(離型ポリイミドフィルム除去工程)、回路加工する工程を経て多層配線板が得られる。
【0073】
上記プレス成型における加熱温度(熱板の温度)は、例えば、180〜300℃とすることが好ましく、200〜250℃とすることがより好ましい。加圧時の圧力は1〜4MPaとすることが好ましい。
【0074】
なお、必要に応じて剥離(離型ポリイミドフィルム除去工程)の前に、ポリイミドフィルムの上面からドリル加工及びレーザー加工を施した後に離型ポリイミドフィルムを除去することも可能である。ポリイミドフィルムの上面から穴あけ加工を行うことで、加工時の樹脂飛散等を防止し、歩留まりが顕著に向上する。
【0075】
ここで、本発明の多層配線板の製造方法において用いられるプリプレグ及び絶縁層の材料としては、特に限定されるものではない一般的に用いられる材料を適用できる。例えば、多官能エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、溶剤及び必要に応じて無機フィラーを混合したものを絶縁層の材料としてもよいし、さらに該材料を積層板用ガラスクロスに含浸又は塗工させて得られるプリプレグを用いてもよい。プリプレグとしては市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、日立化成株式会社製のGEA−67N、GEA−679F、GEA−679GT、GEA−700G等が挙げられる。
【0076】
回路加工されてなる単層配線板又は多層配線板中の内層回路板は、例えば、第一の回路層(内層配線)が表面に形成された内層基板であり、内層基板として、通常の配線板において用いられている公知の積層板、例えば、ガラス布−エポキシ樹脂、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布又はガラス紙−エポキシ樹脂等が使用でき、特に制限はない。また、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含浸させたBT基板、さらにはポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板等も用いることができる。
【0077】
回路を形成する方法については特に制限はない。例えば、めっきプロセスを使用して回路を形成するセミアディティブ法、絶縁基板の必要な個所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、公知の回路の形成方法を用いることができる。
【0078】
本発明の積層板又は単層もしくは多層配線板の接着層上にめっきプロセスで回路加工する場合は、まず、粗化処理を行う。この場合の粗化液としては、例えば、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液等の酸化性粗化液を用いることができる。粗化処理としては、例えば、まず膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルとNaOHとの水溶液を70℃に加温して積層板又は単層もしくは多層配線板を5分間浸漬処理する。次に、粗化液として、KMnOとNaOHとの水溶液を80℃に加温して10分間浸漬処理する。引き続き、中和液、例えば塩化第一錫(SnCl)の塩酸水溶液に室温で5分間浸漬処理して中和する方法が挙げられる。
【0079】
粗化処理後は、パラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行う。めっき触媒処理は、塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬して行われる。次に、無電解めっき液に浸漬してめっきプロセス用プライマー層の表面全面に厚さが0.3〜1.5μmの無電解めっき層(導体層)を析出させる無電解めっき処理と行う。
次にめっきレジストを形成した後に、電気めっき処理を行い所望な箇所に所望の厚みの回路を形成する。無電解めっき処理に使用する無電解めっき液は、公知の無電解めっき液を使用することができ特に制限はない。めっきレジストも公知のめっきレジストを使用することができ、特に制限はない。また、電気めっき処理についても公知の方法によることができ特に制限はない。これらのめっきは銅めっきであることが好ましい。さらに不要な箇所の無電解めっき層をエッチング除去して外層回路を形成することができる。
【0080】
また必要に応じて、回路層の表面を接着性に適した状態に表面処理するがこの手法も、特に制限はない。例えば、次亜塩素酸ナトリウムのアルカリ水溶液により回路層1の表面に酸化銅の針状結晶を形成し、形成した酸化銅の針状結晶をジメチルアミンボラン水溶液に浸漬して還元する等の公知の製造方法を用いることができる。
【0081】
以下、さらに同様の工程を繰り返して層数の多い多層配線板を製造できる。
【実施例】
【0082】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
[接着層用樹脂ワニスの調製]
(調製例1)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日化エポキシ製造株式会社製、商品名:YDCN−700−10)27.5gにフェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製、商品名:XLC−LL)22.5gを加え、シクロヘキサノンを850g加えて攪拌混練した。これにアクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−860P−3、重量平均分子量80万、ガラス転移点:13℃)100g、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.25g加え、攪拌して、接着層用樹脂ワニスA(固形分濃度約15質量%)を得た。
(調製例2)
ポリアミド(日本化薬株式会社製、商品名:BPAM−155)18gに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を159g配合した後、続いてビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC3000H)50g、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:YLH129)20gを加え、更に硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2PZ)0.5gを添加し、DMAc及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈した後、アルミナフィラー(シーアイ化成株式会社製、商品名:NanoTek)5gを加え、分散機(吉田機械興業株式会社製、商品名:ナノマイザー)を用いて接着層用樹脂ワニスB(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0084】
[離型層用樹脂ワニスの調製]
(調製例3)
非シリコーン系アミノアルキド樹脂〔テスファイン303、日立化成ポリマー株式会社製、固形分48.7%〕31.5gに、酸性触媒としてp−トルエンスルホン酸〔ドライヤー900、日立化成ポリマー株式会社製、固形分50%〕を1.5g配合し、次いでトルエン1050g、MEK450gで希釈し、離型層用樹脂ワニスAを得た。
(調製例4)
非シリコーン系アミノアルキド樹脂〔テスファイン305、日立化成ポリマー株式会社製、商品名、固形分48.7%〕31.5gに、酸性触媒としてp−トルエンスルホン酸〔ドライヤー900、日立化成ポリマー株式会社製、商品名)、固形分50%〕を1.5g配合し、次いでトルエン1050g、MEK450gで希釈し、離型層用樹脂ワニスBを得た。
(調製例5)
シリコーン含有アミノアルキド樹脂〔テスファイン319、日立化成ポリマー株式会社製、固形分48.7%〕31.5gに、酸性触媒としてp−トルエンスルホン酸〔ドライヤー900、日立化成ポリマー株式会社製、商品名、固形分50%〕を1.5g配合し、次いでトルエン1050g、MEK450gで希釈し、離型層用樹脂ワニスCを得た。
(調製例6)
シリコーン含有アミノアルキド樹脂〔TA31−209E、日立化成ポリマー株式会社製、商品名、固形分48.7%〕31.5gに、酸性触媒としてp−トルエンスルホン酸〔ドライヤー900、日立化成ポリマー株式会社製、商品名、固形分50%〕を1.5g配合し、次いでトルエン1050g、MEK450gで希釈し、離型層用樹脂ワニスDを得た。
【0085】
(実施例1)
・接着層付き離型ポリイミドフィルム:
ポリイミドフィルムとして宇部興産株式会社製、ユーピレックス25SGA(商品名)、厚み25μm、表面粗さRa0.05μm未満を用いた。このポリイミドフィルム上に調製例3で調製した離型層用樹脂ワニスAを、ダイコーターを用いて塗布し、160℃で40秒間乾燥させ、厚み0.2μmの離型層を得た。
得られた離型ポリイミドフィルムの離型層面に調製例1で調製した接着層用樹脂ワニスAを塗布し、140℃で5分間乾燥させ、厚さ5μmの接着層を形成して、接着層付き離型ポリイミドフィルムを得た。
【0086】
・積層板:
プリプレグ(日立化成株式会社製、GEA−700G、商品名、0.10mm厚)を4枚重ね、その上下に上記接着層付き離型ポリイミドフィルムのポリイミドフィルム面が外側になるように重ね、さらに鏡板と、クッション紙を重ねて、プレス機を用いて、3.0MPa、240℃で1時間加熱硬化させ積層板を得た。
【0087】
(実施例2)
ポリイミドフィルムとして、東レ・デュポン株式会社製、カプトン100H(商品名)、厚み25μm、表面粗さRa0.05μm未満を用いた以外、実施例1と同様に接着層付き離型ポリイミドフィルム及び積層板を得た。
【0088】
(実施例3)
離型層として、調製例4で調製した離型層用樹脂ワニスB、接着層として、調製例2で調製した接着層用ワニスBを用いた以外、実施例1と同様に接着層付き離型ポリイミドフィルム及び積層板を得た。
【0089】
(実施例4)
離型層として、調製例5で調製した離型層用樹脂ワニスC、接着層として、調製例2で調製した接着層用ワニスBを用いた以外、実施例1と同様に接着層付き離型ポリイミドフィルム及び積層板を得た。
【0090】
(実施例5)
離型層として、調製例6で調製した離型層用樹脂ワニスD、接着層として、調製例2で調製した接着層用ワニスBを用いた以外、実施例1と同様に接着層付き離型ポリイミドフィルム及び積層板を得た。
【0091】
(比較例1)
離型層付きのポリイミドフィルムの代わりに、離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニピールTR1、ユニチカ株式会社製、商品名、厚さ38μm)を用いた以外は実施例1と同様に、接着層付き離型フィルム及び積層板を得た。
【0092】
(比較例2)
ポリイミドフィルムに離型層を形成しなかった以外は実施例1と同様に、ポリイミドフィルム面上に接着層を塗布形成させ、接着層付き離型フィルム及び積層板を得た。
【0093】
(比較例3)
離型ポリイミドフィルムの代わりに、電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製、GTS−18、厚さ18μm)の光沢面に接着層を塗布形成させ、実施例1と同様に、積層板を得た。
【0094】
(比較例4)
離型層用樹脂ワニスAの代わりにシリコーン系離型剤(信越化学工業株式会社製、KS−774、商品名)を用いた以外は、実施例1と同様に積層板を得た。
【0095】
以上のようにして作製した積層板について、プレス後のフィルム剥離性及び容易に剥離できた剥離後の積層板について、その絶縁層(熱硬化後の接着層)の表面粗さ、非移行性、及び表面平坦性の測定を以下の様に実施した。結果を下記表1及び表2に示す。
【0096】
[プレス後の剥離性]
プレス後に、離型フィルムの変形、融着、破れが起きずにフィルムを単独で剥離することができるかどうかを確認した。さらに、プレス後の積層サンプルから離型フィルムを剥離したときに、離型層との界面で剥離できているかどうかを目視により確認した。
A:界面で容易に剥離できる。
C:界面で容易に剥離できない。
「界面で容易に剥離できない」とは、フィルムを単独で剥離できない場合、又は剥離後、離型フィルムに接着層の樹脂組成物が付着している場合をいう。
【0097】
[表面粗さ]
プレスをし、フィルムを剥離した後の絶縁層の表面粗さは、表面形状測定装置(Veeco社製、商品名:WykoNT9100)を用いて、下記測定条件にて測定した。
−測定条件−
内部レンズ:1倍
外部レンズ:50倍
測定範囲:0.125×0.095mm
測定深度:10μm
測定方式:垂直走査型干渉方式(VSI方式)
【0098】
[非移行性]
プレス後の積層板からポリイミドフィルムを剥離した後、絶縁層上に寺西化学工業株式会社製のマジックインキ(登録商標)No.500(黒)を塗布し、該インキのはじき具合を観察した。インキをはじく現象は、離型層成分の絶縁層への移行を示すため、はじくものを「C」、はじかないものを「A」として評価した。
【0099】
[表面平坦性]
高精度3次元表面形状粗さ測定システム(Veeco社製、WYKO NT9100)を用いて、プレス後の絶縁層の表面形状を観察した。図1及び図2は、X軸:125μm、Y軸:95μmの形状範囲について表面観察した結果を示している。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表1から、本発明の離型ポリイミドフィルム及び接着層付き積層板の特性は、実施例1〜5に示したように、240℃という高温の熱板プレス後に離型ポリイミドフィルムを容易に剥離でき、表面の平坦な絶縁層を得ることができた。
一方、表2から、ポリイミドフィルム以外のフィルムを用いた比較例1ではポリエチレンテレフタレートフィルムが鏡板に融着し、離型フィルム単独容易に剥離できず、良好な表面状態の絶縁層が得られないことが確認できた。さらに、比較例2ではポリイミドフィルムが破れ、ポリイミドフィルムを単独で剥離できないことが確認された。比較例3では銅箔が破れ、銅箔単独では剥離できないことが確認された。比較例4では、絶縁層にマジックインキを塗布すると、インキのはじきが観察され、離型層成分が絶縁層に移行していることが確認された。
また、実施例1の表面平坦性の観察結果を図1に、比較例3の表面平坦性の観察結果を図2に示すが、これらを確認すると、図1の本発明の離型ポリイミドフィルムを用いた絶縁層の方が、表面が平坦であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の離型ポリイミドフィルムは、熱板プレス、ロールラミネータ、ダブルプレス等を用いた成形方法で多層配線板を製造する際の離型フィルムとして有効に利用できる。
図1
図2