(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーン樹脂層の前記ガラス基板の層に対する界面の剥離強度が、前記シリコーン樹脂層の前記支持基材の層に対する界面の剥離強度よりも低い、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス積層体。
前記シリコーン樹脂層の前記ガラス基板の層に対する界面の剥離強度が、前記シリコーン樹脂層の前記支持基材の層に対する界面の剥離強度よりも高い、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス積層体。
前記支持基材が支持ガラス板の層と第2シリコーン樹脂層とを有する積層支持基材であり、前記第2シリコーン樹脂層が前記シリコーン樹脂層に接している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス積層体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0011】
本発明のガラス積層体の特徴点としては、シリコーン樹脂層中のシリコーン樹脂が、後述する式(D)で表されるD単位と、後述する式(Q)で表されるQ単位を有する縮重合物である点が挙げられる。該縮重合物中には、上記Q単位が含まれることにより、シリコーン樹脂層中に3次元架橋構造が形成されて耐熱性が向上し、厚みが厚くなってもシリコーン樹脂層の発泡が抑制されると共に、高温処理条件処理後であってもガラス基板の層との剥離性に優れる。また、上記D単位が含まれることにより、ガラス積層体を構成する各層の積層性が向上していると推測される。ここで、積層性が向上しているとは、得られたガラス積層体の剥がれが少なくなる状態や、端部の浮きが少なくなる状態を言う。
また、ガラス積層体において、シリコーン樹脂層のガラス基板の層に対する界面の剥離強度と、シリコーン樹脂層の支持基材の層に対する界面の剥離強度は、異なることを特徴とする。例えば、第1の実施態様においては、シリコーン樹脂層のガラス基板の層に対する界面の剥離強度がシリコーン樹脂層の支持基材の層に対する界面の剥離強度より低く、シリコーン樹脂層とガラス基板の層とが剥離し、シリコーン樹脂層と支持基材の層との積層体と、ガラス基板の層とに分離する。また、第2の実施態様においては、シリコーン樹脂層のガラス基板の層に対する界面の剥離強度がシリコーン樹脂層の支持基材の層に対する界面の剥離強度より高く、シリコーン樹脂層と支持基材の層とが剥離し、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層との積層体と、支持基材の層とに分離する。
以下では、第1の実施態様および第2の実施態様に分けて、説明する。
【0012】
<第1の実施態様>
図1は、本発明に係るガラス積層体の第1の実施態様の模式的断面図である。
図1に示すように、ガラス積層体10は、支持基材12の層とガラス基板16の層とそれらの間にシリコーン樹脂層14(以後、適宜「第1シリコーン樹脂層14」とも称する)が存在する積層体である。シリコーン樹脂層14は、その一方の面が支持基材12の層に接すると共に、その他方の面がガラス基板16の第1主面16aに接している。
支持基材12の層およびシリコーン樹脂層14からなる2層部分は、液晶パネルなどの電子デバイス用部材を製造する部材形成工程において、ガラス基板16を補強する。なお、ガラス積層体10の製造のためにあらかじめ製造される支持基材12の層およびシリコーン樹脂層14からなる2層部分を樹脂層付き支持基材18という。
【0013】
このガラス積層体10は、後述する部材形成工程まで使用される。即ち、このガラス積層体10は、そのガラス基板16の第2主面16b表面上に液晶表示装置などの電子デバイス用部材が形成されるまで使用される。その後、電子デバイス用部材が形成されたガラス積層体は、樹脂層付き支持基材18と部材付きガラス基板に分離され、樹脂層付き支持基材18は電子デバイスを構成する部分とはならない。樹脂層付き支持基材18は、新たなガラス基板16と積層され、新たなガラス積層体10として再利用することができる。
【0014】
支持基材12とシリコーン樹脂層14の界面は剥離強度(x)を有し、支持基材12とシリコーン樹脂層14との界面に剥離強度(x)を越える引き剥がし方向の応力が加えられると、支持基材12とシリコーン樹脂層14との界面が剥離する。シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面は剥離強度(y)を有し、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面に剥離強度(y)を越える引き剥がし方向の応力が加えられると、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面が剥離する。
ガラス積層体10においては、上記剥離強度(x)は上記剥離強度(y)よりも高い。したがって、ガラス積層体10に支持基材12とガラス基板16とを引き剥がす方向の応力が加えられると、ガラス積層体10は、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面で剥離して、ガラス基板16と樹脂層付き支持基材18とに分離する。
【0015】
剥離強度(x)は、剥離強度(y)と比較して、充分高いことが好ましい。剥離強度(x)を高めることは、支持基材12に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高め、かつ加熱処理後においてガラス基板16に対してよりも相対的に高い付着力を維持できることを意味する。
支持基材12に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高めるためには、例えば、シリコーン樹脂層14を支持基材12上で形成する方法(例えば、後述する硬化性化合物を支持基材12上で硬化させてシリコーン樹脂層14を形成する方法)が好ましい。該方法であれば、シリコーン樹脂層14形成時の硬化の際の接着力で、支持基材12に対して高い結合力で結合したシリコーン樹脂層14を形成することができる。
一方、硬化後のシリコーン樹脂のガラス基板16に対する結合力は、上記硬化時に生じる結合力よりも低いのが通例である。したがって、支持基材12上でシリコーン樹脂層14を形成し、その後シリコーン樹脂層14の面にガラス基板16を積層することにより、ガラス積層体10を製造することができる。
【0016】
以下で、まず、ガラス積層体10を構成する各層(支持基材12、ガラス基板16、シリコーン樹脂層14)について詳述し、その後、ガラス積層体の製造方法について詳述する。
【0017】
[支持基材]
支持基材12は、ガラス基板16を支持して補強し、後述する部材形成工程(電子デバイス用部材を製造する工程)において電子デバイス用部材の製造の際にガラス基板16の変形、傷付き、破損などを防止する。
支持基材12としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、SUS板などの金属板などが用いられる。通常、部材形成工程が熱処理を伴うため、支持基材12はガラス基板16との線膨張係数の差の小さい材料で形成されることが好ましく、ガラス基板16と同一材料で形成されることがより好ましく、支持基材12はガラス板であることが好ましい。特に、支持基材12は、ガラス基板16と同じガラス材料からなるガラス板であることが好ましい。
なお、後述するように支持基材12は、2種以上の層からなる積層体であってもよい。
【0018】
支持基材12の厚さは、ガラス基板16よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。好ましくは、ガラス基板16の厚さ、シリコーン樹脂層14の厚さ、およびガラス積層体10の厚さに基づいて、支持基材12の厚さが選択される。例えば、現行の部材形成工程が厚さ0.5mmの基板を処理するように設計されたものであって、ガラス基板16の厚さとシリコーン樹脂層14の厚さとの和が0.1mmの場合、支持基材12の厚さを0.4mmとする。支持基材12の厚さは、通常の場合、0.2〜5.0mmであることが好ましい。なお、支持基材12が2種以上の層からなる積層体である場合、「支持基材12の厚さ」は全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
【0019】
支持基材12がガラス板の場合、ガラス板の厚さは、扱いやすく、割れにくいなどの理由から、0.08mm以上であることが好ましい。また、ガラス板の厚さは、電子デバイス用部材形成後に剥離する際に、割れずに適度に撓むような剛性が望まれる理由から、1.0mm以下であることが好ましい。
【0020】
支持基材12とガラス基板16との25〜300℃における平均線膨張係数の差は、好ましくは500×10
-7/℃以下であり、より好ましくは300×10
-7/℃以下であり、さらに好ましくは200×10
-7/℃以下である。差が大き過ぎると、部材形成工程における加熱冷却時に、ガラス積層体10が激しく反ったり、支持基材12とガラス基板16とが剥離したりする可能性がある。支持基材12の材料がガラス基板16の材料と同じ場合、このような問題が生じるのを抑制することができる。
【0021】
[ガラス基板]
ガラス基板16は、第1主面16aがシリコーン樹脂層14と接し、シリコーン樹脂層14側とは反対側の第2主面16bに電子デバイス用部材が設けられる。
ガラス基板16の種類は、一般的なものであってよく、例えば、LCD、OLEDといった表示装置用のガラス基板などが挙げられる。ガラス基板16は耐薬品性、耐透湿性に優れ、且つ、熱収縮率が低い。熱収縮率の指標としては、JIS R 3102(1995年改正)に規定されている線膨張係数が用いられる。なお、JIS R 3102(1995年改正)の内容は、ここに参照として取り込まれる。
【0022】
ガラス基板16の線膨張係数が大きいと、部材形成工程は加熱処理を伴うことが多いので、様々な不都合が生じやすい。例えば、ガラス基板16上にTFTを形成する場合、加熱下でTFTが形成されたガラス基板16を冷却すると、ガラス基板16の熱収縮によって、TFTの位置ずれが過大になるおそれがある。
【0023】
ガラス基板16は、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法、フルコール法、ラバース法などが用いられる。また、特に厚さが薄いガラス基板16は、いったん板状に成形したガラスを成形可能温度に加熱し、延伸などの手段で引き伸ばして薄くする方法(リドロー法)で成形して得られる。
【0024】
ガラス基板16のガラスの種類は特に限定されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0025】
ガラス基板16のガラスとしては、電子デバイス用部材の種類やその製造工程に適したガラスが採用される。例えば、液晶パネル用のガラス基板は、アルカリ金属成分の溶出が液晶に影響を与えやすいことから、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)からなる(ただし、通常アルカリ土類金属成分は含まれる)。このように、ガラス基板16のガラスは、適用されるデバイスの種類およびその製造工程に基づいて適宜選択される。
【0026】
ガラス基板16の厚さは、ガラス基板16の薄型化および/または軽量化の観点から、0.3mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.15mm以下である。0.3mm以下の場合、ガラス基板16に良好なフレキシブル性を与えることが可能である。0.15mm以下の場合、ガラス基板16をロール状に巻き取ることが可能である。
また、ガラス基板16の厚さは、ガラス基板16の製造が容易であること、ガラス基板16の取り扱いが容易であることなどの理由から、0.03mm以上であることが好ましい。
【0027】
なお、ガラス基板16は2層以上からなっていてもよく、この場合、各々の層を形成する材料は同種材料であってもよいし、異種材料であってもよい。また、この場合、「ガラス基板16の厚さ」は全ての層の合計の厚さを意味するものとする。
【0028】
[シリコーン樹脂層]
ガラス積層体10において、シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16と支持基材12とを分離する操作が行われるまでガラス基板16の位置ずれを防止すると共に、ガラス基板16などが分離操作によって破損するのを防止する。シリコーン樹脂層14のガラス基板16と接する表面14aは、ガラス基板16の主面16aに剥離可能に密着する。一方、シリコーン樹脂層14は、支持基材12上に固定されている。つまり、シリコーン樹脂層14はガラス基板16の第1主面16aに弱い結合力で結合しており、その界面の剥離強度(y)は、シリコーン樹脂層14と支持基材12との間の界面の剥離強度(x)よりも低い。
すなわち、ガラス基板16と支持基材12とを分離する際には、ガラス基板16の第1主面16aとシリコーン樹脂層14との界面で剥離し、支持基材12とシリコーン樹脂層14との界面では剥離し難い。このため、シリコーン樹脂層14はガラス基板16の第1主面16aと密着するが、ガラス基板16を容易に剥離することができる表面特性を有する。すなわち、シリコーン樹脂層14は、ガラス基板16の第1主面16aに対してある程度の結合力で結合してガラス基板16の位置ずれなどを防止していると同時に、ガラス基板16を剥離する際には、ガラス基板16を破壊することなく、容易に剥離できる程度の結合力で結合している。本発明では、このシリコーン樹脂層14表面の容易に剥離できる性質を易剥離性という。一方、支持基材12の第1主面とシリコーン樹脂層14とは相対的に剥離しがたい結合力で結合している。
なお、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面の結合力は、ガラス積層体10のガラス基板16の面(第2主面16b)上に電子デバイス用部材を形成する前後に変化してもよい(すなわち、剥離強度(x)や剥離強度(y)が変化してもよい)。しかし、電子デバイス用部材を形成した後であっても、剥離強度(y)は、剥離強度(x)よりも低い。
【0029】
シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層とは、弱い接着力やファンデルワールス力に起因する結合力で結合していると考えられる。シリコーン樹脂層14を形成した後その表面にガラス基板16を積層する場合、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂が接着力を示さないほど充分に架橋している場合はファンデルワールス力に起因する結合力で結合していると考えられる。しかし、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂は、ある程度の弱い接着力を有することが少なくない。たとえ接着性が極めて低い場合であっても、ガラス積層体10製造後その積層体上に電子デバイス用部材を形成する際には、加熱操作などにより、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂はガラス基板16面に接着し、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層との間の結合力は上昇すると考えられる。
場合により、積層前のシリコーン樹脂層14の表面や積層前のガラス基板16の第1主面16aに両者間の結合力を弱める処理を行って積層することもできる。積層する面に非接着性処理などを行い、その後積層することにより、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層の界面の結合力を弱め、剥離強度(y)を低くすることができる。
【0030】
また、シリコーン樹脂層14は、接着力や粘着力などの強い結合力で支持基材12表面に結合されており、両者の密着性を高める方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、後述する硬化性化合物を支持基材12表面で硬化させることにより、縮重合物であるシリコーン樹脂を支持基材12表面に接着して、高い結合力を得ることができる。また、支持基材12表面とシリコーン樹脂層14との間に強い結合力を生じさせる処理(例えば、カップリング剤を使用した処理)を施して支持基材12表面とシリコーン樹脂層14との間の結合力を高めることができる。
シリコーン樹脂層14と支持基材12の層とが高い結合力で結合していることは、両者の界面の剥離強度(x)が高いことを意味する。
【0031】
シリコーン樹脂層14の厚さは特に限定されないが、5〜5000nmであることが好ましく、5〜2000nmであることがより好ましく、50〜2000nmであることがさらに好ましく、100〜1000nmであることが特に好ましい。シリコーン樹脂層14の厚さがこのような範囲であると、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との間に気泡や異物が介在することがあっても、ガラス基板16のゆがみ欠陥の発生を抑制することができる。
上記厚さは平均厚さを意図し、5点以上の任意の位置におけるシリコーン樹脂層14の厚みを測定し、それらを算術平均したものである。
シリコーン樹脂層14のガラス基板16側の表面の表面粗さRaは特に制限されないが、ガラス基板16の積層性および剥離性がより優れる点より、0.1〜20nmが好ましく、0.1〜10nmがより好ましい。
なお、表面粗さRaの測定方法としては、JIS B 0601−2001に準じて行われ、任意の5箇所以上の点において測定されたRaを、算術平均した値が上記表面粗さRaに該当する。なお、JIS B 0601−2001の内容は、ここに参照として取り込まれる。
また、シリコーン樹脂層14のガラス基板16側の表面の水接触角は特に制限されないが、ガラス基板16の積層性および剥離性がより優れる点より、70度超105度以下が好ましい。
なお、水接触角の測定方法としては、接触角計(クルス社製、DROP SHAPE ANALYSIS SYSTEM DSA 10Mk2)を用いて、1枚のガラス板の表面に1μLの水滴を静置して水接触角を測定する。
【0032】
(シリコーン樹脂層のシリコーン樹脂)
シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂は、下記式(D)で表されるD単位と下記式(Q)で表されるQ単位とを有する縮重合物である。
【0034】
式(D)中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。
アルキル基中に含まれる炭素数は、シリコーン樹脂層14の耐熱性またはガラス基板16の剥離性がより優れる点で、1〜3が好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
縮重合物においては、D単位とQ単位とのモル比(D単位/Q単位)は、0.02〜2であることが好ましく、0.1〜1.8であることがより好ましい。この範囲であると、耐熱性および剥離性がよい。
なお、縮重合物において、D単位およびQ単位の合計含有量は特に制限されないが、全シロキサン単位に対して、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。なお、シロキサン単位の種類としては、上記D単位およびQ単位以外に、M単位や、T単位が挙げられる。
縮重合物は、後述する式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体(加水分解縮合物)と、後述する式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体(加水分解縮合物)との混合物、または、該混合物の部分縮合物からなる硬化性化合物が縮重合した硬化物であることが好ましい。
ケイ素化合物(X)のR
x基がヒドロキシ基であると、ケイ素化合物(X)の分子同士が縮重合して、多量体となる。ケイ素化合物(X)のR
x基が水素原子および加水分解性基の場合は、水素原子および加水分解性基が加水分解してヒドロキシ基が生成した後、ケイ素化合物(X)の分子同士が縮重合して、多量体となる。ケイ素化合物(Y)の多量体も同様にして得られる。
以下では、ケイ素化合物(X)、ケイ素化合物(Y)の態様について詳述する。
【0035】
(式(X)で表されるケイ素化合物(X))
シリコーン樹脂層14中のシリコーン樹脂の出発原料の一つとして、以下の式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体(以後、単に「ケイ素化合物(X)」とも称する)が用いられることが好ましい。
【0037】
式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表し、R
xは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を表す。複数あるR
xは、同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0038】
R
aおよびR
bは、式(D)におけるR
aおよびR
bとそれぞれ同じである。
R
xは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、または加水分解性基を表す。
加水分解性基としては、アルコキシ基、塩素原子、アミノ基などが挙げられる。アルコキシ基中に含まれる炭素数は特に制限されないが、シリコーン樹脂層14の耐熱性またはガラス基板16の剥離性がより優れる点で、1〜3が好ましい。より具体的には、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。なお、R
xが水素原子の場合は、例えば、所定の酸性触媒下(例えば、60%硝酸水溶液)にて、Si−H基がSi−OH基に変換され、その後、後述するケイ素化合物(Y)との間で加水分解・縮合反応が進行する。
式(X)で表される化合物は多量体でもよく、n量体のnの上限は特に制限されないが、合成のしやすさの点から、1500以下が好ましい。なかでも、シリコーン樹脂層14の耐熱性またはガラス基板16の剥離性がより優れる点で、nは10〜500が好ましい。
【0039】
(式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)(テトラアルコキシシラン化合物))
シリコーン樹脂層14中のシリコーン樹脂の出発原料の一つとして、以下の式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体が用いられることが好ましい。
【0041】
式(Y)中、R
yは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基または加水分解性基を表す。複数あるR
yは、同一の基であっても、異なる基であってもよい。
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。アルコキシ基中のアルキル基に含まれる炭素数は特に制限されないが、シリコーン樹脂層14の耐熱性またはガラス基板16の剥離性がより優れる点で、1〜3が好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
【0042】
式(Y)で表される化合物は多量体でもよく、n量体のnの上限は特に制限されないが、合成のしやすさの点から、1500以下が好ましい。なかでも、シリコーン樹脂層14を形成する際の塗布性、シリコーン樹脂層14の耐熱性またはガラス基板16の剥離性がより優れる点で、nは10〜500が好ましい。
【0043】
ケイ素化合物(X)若しくはその多量体と、ケイ素化合物(Y)若しくはその多量体との混合モル比は特に制限されず、シリコーン樹脂層14の耐熱性により優れ、ガラス基板16の剥離が容易である点から、シリコーン樹脂層14中のシリコーン樹脂に含まれる上記D単位と上記Q単位のモル比(D単位/Q単位)が上述の範囲を達成するように調整されることが好ましい。
【0044】
縮重合物を得るための硬化性化合物としては、上記式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体と、上記式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体との混合物が使用される。
また、硬化性化合物としては、上記式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体と、上記式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体との混合物の部分縮合物を使用することもできる。
部分縮合物を得る方法は特に制限されず、式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体と、式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体との間で、加水分解・縮合反応(いわゆる、ゾル−ゲル反応)を進行させて、製造することができる。
なお、加水分解・縮合反応は、無触媒下で実施されても、触媒(例えば、酸または塩基)下で実施されてもよい。例えば、空気下にて、ケイ素化合物(X)とケイ素化合物(Y)とを混合して攪拌することにより、空気中の水分を触媒として加水分解・縮合反応が進行し、所望の部分縮合物が得られる。
式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体と、式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体との反応は、溶媒下で行っても、無溶媒下で行ってもよい。使用される溶媒の種類は特に制限されず、公知の溶媒(例えば、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒)が使用できる。
【0045】
硬化性化合物を用いたシリコーン樹脂層14の製造条件は、後段で詳述する。
なお、例えば、シリコーン樹脂層14を形成する際、上記式(X)で表されるケイ素化合物(X)若しくはその多量体と、上記式(Y)で表されるケイ素化合物(Y)若しくはその多量体とのを所定の基材上(例えば、支持基材)上に塗布して、基材上で加水分解・縮合反応を進行させて、シリコーン樹脂層14を形成してもよいし、上記混合物の部分縮合物を製造した後、所定の基材上(例えば、支持基材)上に塗布して、シリコーン樹脂層14を形成してもよい。
【0046】
[ガラス積層体およびその製造方法]
本発明のガラス積層体10は、上述したように、支持基材12とガラス基板16とそれらの間にシリコーン樹脂層14が存在する積層体である。
本発明のガラス積層体10の製造方法は特に制限されないが、剥離強度(x)が剥離強度(y)よりも高い積層体を得るために、支持基材12表面上でシリコーン樹脂層14を形成する方法が好ましい。なかでも、上記硬化性化合物を支持基材12の表面に塗布して硬化させ、支持基材12表面上でシリコーン樹脂層14を形成し、次いで、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂面にガラス基板16を積層して、ガラス積層体10を製造する方法が好ましい。
硬化性化合物を支持基材12表面で硬化させると、硬化反応時の支持基材12表面との相互作用により接着し、シリコーン樹脂と支持基材12表面との剥離強度は高くなると考えられる。したがって、ガラス基板16と支持基材12とが同じ材質からなるものであっても、シリコーン樹脂層14と両者間の剥離強度に差を設けることができる。
以下、硬化性化合物の層を支持基材12の表面に形成し、支持基材12表面上でシリコーン樹脂層14を形成する工程を樹脂層形成工程、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂面にガラス基板16を積層してガラス積層体10とする工程を積層工程といい、各工程の手順について詳述する。
【0047】
(樹脂層形成工程)
樹脂層形成工程では、硬化性化合物の層を支持基材12の表面に形成し、支持基材12表面上でシリコーン樹脂層14を形成する。
支持基材12上に硬化性化合物の層を形成するためには、硬化性化合物を溶媒に溶解させたコーティング用組成物を使用し、この組成物を支持基材12上に塗布して溶液の層を形成し、次いで溶媒を除去して硬化性化合物の層とすることが好ましい。組成物中における硬化性化合物の濃度の調整などにより、層の厚さを制御することができる。
溶媒としては、作業環境下で架橋物を容易に溶解でき、かつ、容易に揮発除去させることのできる溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、THF、クロロホルム等を例示することができる。
【0048】
支持基材12表面上に硬化性化合物を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0049】
次いで、支持基材12上の硬化性化合物を硬化させて、シリコーン樹脂層14を形成する。より具体的には、
図2(A)に示すように、該工程では支持基材12の少なくとも片面の表面上にシリコーン樹脂層14が形成される。
硬化の方法は特に制限されないが、通常、熱硬化処理により行われる。
熱硬化させる温度条件は、シリコーン樹脂層14の耐熱性を向上し、ガラス基板16と積層後の剥離強度(y)を上記のように制御しうる範囲内で特に制限されないが、300〜475℃が好ましく、350〜450℃がより好ましい。また、加熱時間は、通常、10〜300分が好ましく、20〜120分がより好ましい。熱硬化の温度が低すぎると、耐熱性やシリコーン樹脂層14の平坦性が低下し、一方、温度が高すぎると剥離強度(y)が低くなりすぎ、いずれもガラス基板16とシリコーン樹脂層14との密着性が弱くなる場合がある。
【0050】
なお、熱硬化処理においては、プレキュア(予備硬化)を行った後硬化(本硬化)を行って硬化させることが好ましい。プレキュアを行うことにより耐熱性に優れたシリコーン樹脂層14を得ることができる。プレキュアは溶媒の除去に引き続き行うことが好ましく、その場合、層から溶媒を除去して硬化性化合物の層を形成する工程とプレキュアを行う工程とは特に区別されない。溶媒の除去は100℃以上に加熱して行うことが好ましく、150℃以上に加熱することにより引き続きプレキュアを行うことができる。溶媒の除去とプレキュアを行う温度および加熱時間は、100〜420℃、5〜60分が好ましく、150〜300℃、10〜30分がより好ましい。420℃以下であると剥離容易なシリコーン樹脂層が得られる。
【0051】
(積層工程)
積層工程は、上記の樹脂層形成工程で得られたシリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂面上にガラス基板16を積層し、支持基材12の層とシリコーン樹脂層14とガラス基板16の層とをこの順で備えるガラス積層体10を得る工程である。より具体的には、
図2(B)に示すように、シリコーン樹脂層14の支持基材12側とは反対側の表面14aと、第1主面16aおよび第2主面16bを有するガラス基板16の第1主面16aとを積層面として、シリコーン樹脂層14とガラス基板16とを積層し、ガラス積層体10を得る。
【0052】
ガラス基板16をシリコーン樹脂層14上に積層する方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
例えば、常圧環境下でシリコーン樹脂層14の表面上にガラス基板16を重ねる方法が挙げられる。なお、必要に応じて、シリコーン樹脂層14の表面上にガラス基板16を重ねた後、ロールやプレスを用いてシリコーン樹脂層14にガラス基板16を圧着させてもよい。ロールまたはプレスによる圧着により、シリコーン樹脂層14とガラス基板16の層との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
【0053】
真空ラミネート法や真空プレス法により圧着すると、気泡の混入の抑制や良好な密着の確保が行われるのでより好ましい。真空下で圧着することにより、微小な気泡が残存した場合でも、加熱により気泡が成長することがなく、ガラス基板16のゆがみ欠陥につながりにくいという利点もある。
【0054】
ガラス基板16を積層する際には、シリコーン樹脂層14に接触するガラス基板16の表面を十分に洗浄し、クリーン度の高い環境で積層することが好ましい。クリーン度が高いほど、ガラス基板16の平坦性は良好となるので好ましい。
【0055】
なお、ガラス基板16を積層した後、必要に応じて、プレアニール処理(加熱処理)を行ってもよい。該プレアニール処理を行うことにより、積層されたガラス基板16のシリコーン樹脂層14に対する密着性が向上し、適切な剥離強度(y)とすることができ、後述する部材形成工程の際に電子デバイス用部材の位置ずれなどが生じにくくなり、電子デバイスの生産性が向上する。
プレアニール処理の条件は使用されるシリコーン樹脂層14の種類に応じて適宜最適な条件が選択されるが、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14の間の剥離強度(y)をより適切なものとする点から、300℃以上(好ましくは、300〜400℃)で5分間以上(好ましく、5〜30分間)加熱処理を行うことが好ましい。
【0056】
なお、ガラス基板16の第1主面に対する剥離強度と支持基材12の第1主面に対する剥離強度に差を設けたシリコーン樹脂層14の形成は、上記方法に限られるものではない。
例えば、シリコーン樹脂層14表面に対する密着性がガラス基板16よりも高い材質の支持基材12を用いる場合には、上記硬化性化合物を何らかの剥離性表面上で硬化してシリコーン樹脂のフィルムを製造し、このフィルムをガラス基板16と支持基材12との間に介在させ同時に積層することができる。
また、硬化性化合物の硬化による接着性がガラス基板16に対して充分低くかつその接着性が支持基材12に対して充分高い場合は、ガラス基板16と支持基材12の間で硬化性化合物を硬化させてシリコーン樹脂層14を形成することができる。
さらに、支持基材12がガラス基板16と同様のガラス材料からなる場合であっても、支持基材12表面の接着性を高める処理を施してシリコーン樹脂層14に対する剥離強度を高めることもできる。例えば、シランカップリング剤のような化学的に固定力を向上させる化学的方法(プライマー処理)や、フレーム(火炎)処理のように表面活性基を増加させる物理的方法、サンドブラスト処理のように表面の粗度を増加させることにより引っかかりを増加させる機械的処理方法などが例示される。
【0057】
(ガラス積層体)
本発明の第1の態様であるガラス積層体10は、種々の用途に使用することができ、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品を製造する用途などが挙げられる。なお、該用途では、ガラス積層体10が高温条件(例えば、450℃以上)で曝される(例えば、1時間以上)場合が多い。
ここで、表示装置用パネルとは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)シャッターパネル等が含まれる。
【0058】
<第2の実施態様>
図3は、本発明に係るガラス積層体の第2の実施態様の模式的断面図である。
図3に示すように、ガラス積層体100は、支持基材12の層とガラス基板16の層とそれらの間にシリコーン樹脂層14が存在する積層体である。
図3に示すガラス積層体100においては、上述した
図1に示すガラス積層体10とは異なり、シリコーン樹脂層14はガラス基板16上に固定されており、樹脂層付きガラス基板20は、樹脂層付きガラス基板20中のシリコーン樹脂層14が支持基材12に直接接するように、支持基材12上に剥離可能に積層(密着)する。本発明において、該固定と剥離可能な密着は剥離強度(すなわち、剥離に要する応力)に違いがあり、固定は密着に対し剥離強度が高いことを意味する。つまり、ガラス積層体100においては、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面の剥離強度が、シリコーン樹脂層14と支持基材12との界面の剥離強度よりも高い。
【0059】
より具体的には、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14との界面は剥離強度(z)を有し、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14との界面に剥離強度(z)を越える引き剥がし方向の応力が加えられると、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14との界面が剥離する。シリコーン樹脂層14と支持基材12との界面は剥離強度(w)を有し、シリコーン樹脂層14と支持基材12との界面に剥離強度(w)を越える引き剥がし方向の応力が加えられると、シリコーン樹脂層14と支持基材12との界面が剥離する。
ガラス積層体100においては、上記剥離強度(z)は上記剥離強度(w)よりも高い。したがって、ガラス積層体100に支持基材12とガラス基板16とを引き剥がす方向の応力が加えられると、本発明のガラス積層体100は、シリコーン樹脂層14と支持基材12との界面で剥離して、樹脂層付きガラス基板20と支持基材12とに分離する。
【0060】
剥離強度(z)は、剥離強度(w)と比較して、充分高いことが好ましい。剥離強度(z)を高めることは、ガラス基板16に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高め、かつ加熱処理後において支持基材12に対してよりも相対的に高い付着力を維持できることを意味する。
ガラス基板16に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高める方法としては、上記支持基材12に対するシリコーン樹脂層14の付着力を高める方法が挙げられ、例えば、ガラス基板16上でシリコーン樹脂層14を形成する方法などが挙げられる。該方法であれば、硬化の際の接着力で、ガラス基板16に対して高い結合力で結合したシリコーン樹脂層14を形成することができる。
一方、硬化後のシリコーン樹脂層14の支持基材12に対する結合力は、上記形成時に生じる結合力よりも低いのが通例である。したがって、ガラス基板16上でシリコーン樹脂層14を形成し、その後シリコーン樹脂層14の表面に支持基材12を積層することにより、所望の剥離関係を満たすガラス積層体100を製造することができる。
【0061】
ガラス積層体100を構成する各層(支持基材12、ガラス基板16、シリコーン樹脂層14)は、上述したガラス積層体10を構成する各層と同義であり、ここでは説明は省略する。
ただし、シリコーン樹脂層14の支持基材12側の表面の表面粗さRaは特に制限されないが、ガラス基板の積層性および剥離性がより優れる点より、0.1〜20nmが好ましく、0.1〜10nmがより好ましい。
なお、表面粗さRaの測定方法としては、JIS B 0601−2001に準じて行われる。
また、シリコーン樹脂層14の支持基材12側の表面の水接触角は特に制限されないが、ガラス基板の積層性および剥離性がより優れる点より、70度超105度以下が好ましい。
なお、水接触角の測定方法としては、接触角計(クルス社製、DROP SHAPE ANALYSIS SYSTEM DSA 10Mk2)を用いて、1枚のガラス板の表面に1μLの水滴を静置して水接触角を測定する。
【0062】
ガラス積層体100の製造方法は特に制限されないが、上述した、ガラス積層体10の製造方法において、支持基材12の代わりにガラス基板16を用い、ガラス基板16の代わりに支持基材12を用いることにより、所望のガラス積層体100を製造することができる。より具体的には、ガラス基板16上でシリコーン樹脂層14を形成し、次いで、シリコーン樹脂層14上に支持基材12を積層して、ガラス積層体100を製造することができる。
【0063】
(第2の実施形態の変形例)
ガラス積層体の第2の実施態様の変形例として、支持基材の層が、支持ガラス板の層と、支持ガラス板の層上に配置された第2シリコーン樹脂層とを備える積層支持基材である態様が挙げられる。
より具体的には、
図4に示すように、ガラス積層体200においては、上述した
図3に示すガラス積層体100とは異なり、積層支持基材120が、支持ガラス板30と、支持ガラス板30上に配置された第2シリコーン樹脂層32とを備える。ここで、第2の実施形態の変形例においては、ガラス基板側のシリコーン樹脂層を第1シリコーン樹脂層、支持ガラス板側のシリコーン樹脂層を第2シリコーン樹脂層ともいう。なお、第2シリコーン樹脂層32中のシリコーン樹脂は、後述する式(1)で表されるシロキサン単位(A)および式(2)で表されるシロキサン単位(B)を含む硬化性オルガノポリシロキサンの硬化物であることが好ましい。該ガラス積層体200においては、第1シリコーン樹脂層14が第2シリコーン樹脂層32と直接接するように配置され、樹脂層付きガラス基板20が第2シリコーン樹脂層32上に剥離可能に積層(密着)する。
ガラス積層体200においては、第2シリコーン樹脂層32を設けることにより、ガラス積層体自体の耐熱性が高まると共に、高温加熱処理後においてもガラス基板が剥離しやすく、さらにガラス基板の積層性にも優れる(特に、第1シリコーン樹脂層と第2シリコーン樹脂層との積層面での両者(または一方)の表面粗さが粗い場合でも、良好な積層性が得られる。)。
【0064】
上述したように、第2シリコーン樹脂層32は一方の表面で支持ガラス板30上に固定されており、他方の表面で第1シリコーン樹脂層14と剥離可能に密着する。つまり、第2シリコーン樹脂層32と支持ガラス板30との界面の剥離強度(v)は、第2シリコーン樹脂層32と第1シリコーン樹脂層14との界面の剥離強度(w)よりも高い。また、上述したように、第1シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面の剥離強度(z)は、第1シリコーン樹脂層14と積層支持基材120との界面(言い換えれば、第1シリコーン樹脂層14と第2シリコーン樹脂層32との界面)の剥離強度(w)よりも高い。
したがって、ガラス積層体200に支持ガラス板30とガラス基板16とを引き剥がす方向の応力が加えられると、ガラス積層体200は、第1シリコーン樹脂層14と第2シリコーン樹脂層32との界面で剥離して、樹脂層付きガラス基板20と積層支持基材120とに分離する。
【0065】
第2シリコーン樹脂層32は、接着力や粘着力などの強い結合力で支持ガラス板30表面に結合されている。たとえば、後述するように、硬化性オルガノポリシロキサンを支持ガラス板30表面で硬化させることにより、硬化物であるシリコーン樹脂を支持ガラス板30表面に接着して、高い結合力を得ることができる。また、支持ガラス板30表面と第2シリコーン樹脂層32との間に強い結合力を生じさせる処理(例えば、カップリング剤を使用した処理)を施して支持ガラス板30表面と第2シリコーン樹脂層32との間の結合力を高めることができる。
一方、硬化性オルガノポリシロキサンの硬化物を含む第2シリコーン樹脂層32のシリコーン樹脂層14に対する結合力は、上記硬化時に生じる結合力よりも低いのが通例である。したがって、支持ガラス板30上で硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させて第2シリコーン樹脂層32を形成し、その後、第2シリコーン樹脂層32と第1シリコーン樹脂層14とが向き合うように、第2シリコーン樹脂層32の面に樹脂層付きガラス基板20を積層して、所望のガラス積層体200を製造することができる。
なお、場合により、積層前の第2シリコーン樹脂層32の表面や積層前の第1シリコーン樹脂層14の表面に両者間の結合力を弱める処理を行って積層することもできる。積層する面に非接着性処理などを行い、その後積層することにより、第2シリコーン樹脂層32と第1シリコーン樹脂層14との界面の結合力を弱め、剥離強度(w)を低くすることができる。
【0066】
図4に示すガラス積層体200は、積層支持基材120を備える点を除いて、
図3に示すガラス積層体100と同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、主として積層支持基材120について説明する。
【0067】
積層支持基材120は、支持ガラス板30と、第2シリコーン樹脂層32とを備える。
支持ガラス板30は、支持基材12がガラス板の場合の態様に該当し、その好適態様は上述の通りである。
【0068】
第2シリコーン樹脂層32中のシリコーン樹脂は、硬化性オルガノポリシロキサンの硬化物からなることが好ましく、特に、後述する式(1)で表されるシロキサン単位(A)および式(2)で表されるシロキサン単位(B)を含む硬化性オルガノポリシロキサンの硬化物であることが好ましい。
以下では、硬化性オルガノポリシロキサンおよびその硬化物の態様について詳述する。
【0069】
(硬化性オルガノポリシロキサンおよびその硬化物)
第2シリコーン樹脂層32中のシリコーン樹脂を得るための硬化性オルガノポリシロキサンとしては、後述する式(1)で表されるシロキサン単位(A)と後述する式(2)で表されるシロキサン単位(B)とを含む硬化性オルガノポリシロキサンが好ましい。
通常、オルガノポリシロキサンの基本構成単位は、メチル基やフェニル基に代表される1価の有機基がケイ素原子に何個結合しているかで分類され、以下に示すD単位と呼ばれる有機基が2つ結合した2官能性のシロキサン単位、T単位と呼ばれる有機基が1つ結合した3官能性のシロキサン単位、M単位と呼ばれる有機基が3つ結合した1官能性のシロキサン単位、Q単位と呼ばれる有機基が1つもない4官能性のシロキサン単位などからなる。なお、Q単位はケイ素原子に結合した有機基(ケイ素原子に結合した炭素原子を有する有機基)を有しない単位であるが、シロキサン単位とみなす。以下の式中、Rはメチル基やフェニル基に代表される1価の有機基を表す。
【0070】
シロキサン単位において、シロキサン結合は2個のケイ素原子が1個の酸素原子を介して結合した結合であることより、シロキサン結合におけるケイ素原子1個当たりの酸素原子は1/2個とみなし、式中O
1/2と表現される。より具体的には、例えば、1つのD単位においては、その1個のケイ素原子は2個の酸素原子と結合し、それぞれの酸素原子は他の単位のケイ素原子と結合していることより、その式は−O
1/2−(R)
2Si−O
1/2−となる。O
1/2が2個存在することより、D単位は(R)
2SiO
2/2と表現されるのが通常である。しかし、本発明では、後述のA単位の表現に合わせて、以下のように、個々の酸素原子についてO
1/2の表現を用い、M単位、D単位、T単位、Q単位を表現した。
なお、重合体鎖の末端の単位がM単位以外の単位である場合、末端単位のO
1/2に結合するケイ素原子以外の原子は1/2個相当の酸素原子であり、合わせて1個の酸素原子となり、水酸基やアルコキシ基などにおける酸素原子を表現する。下記シロキサン単位の表現と同様に表現すれば、例えば末端単位のケイ素原子に結合する水酸基は−O
1/2−Hとなる。
【0072】
後述するシロキサン単位(A)では、2つのケイ素原子のそれぞれが酸素原子と結合し、それぞれの酸素原子は単位外のケイ素原子と結合しているため、式(1)中、O
1/2と表現される。シロキサン単位(A)は2官能性である点から、D単位とみなすことができる。後述するシロキサン単位(B)も同様の理由から、D単位とみなすことができる。以下、本発明においてシロキサン単位(A)およびシロキサン単位(B)はD単位の1種とみなして、硬化性オルガノポリシロキサンを説明する。
【0074】
式(1)のR
1〜R
4は、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。炭素数4以下のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基などが挙げられる。
置換基を有していてもよいフェニル基として、置換基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基などが挙げられる。
【0075】
上記R
1〜R
4としては、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制される点で、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0076】
式(1)中、Arは、置換基を有していてもよいフェニレン基を表す。フェニレン基であると、第1シリコーン樹脂層14に対する密着性および剥離性が優れる点で好ましい。
なお、置換基の種類は特に制限されず、例えば、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
【0077】
硬化性オルガノポリシロキサンは、シロキサン単位として、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)のみを含む重合体であるか、または、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)と他のシロキサン単位とを含む共重合体である。硬化性オルガノポリシロキサンは、線状重合体であることが好ましく、他のシロキサン単位としてはシロキサン単位(A)またはシロキサン単位(B)以外のD単位が好ましい。硬化性オルガノポリシロキサンが線状重合体である場合、硬化性オルガノポリシロキサンはシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)のみを含む重合体、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)と他のD単位とを含む重合体、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)とM単位を含む重合体、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)と他のD単位とM単位を含む重合体がある。ただし、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)、他のD単位、M単位はそれぞれ2種以上存在してもよい。
また、硬化性オルガノポリシロキサンは、少数の分岐を有する非線状の重合体であってもよい。この場合、分岐をもたらすT単位やQ単位を少数有する以外は上記線状重合体におけるD単位や場合によりさらにM単位を有する。
【0078】
式(2)で表されるシロキサン単位(B)において、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基または炭素数3以下のアルケニル基を表す。ただし、シロキサン単位(B)のうちの少なくとも一部は、R
5およびR
6の少なくとも一方が炭素数3以下のアルケニル基であるシロキサン単位である。
R
5およびR
6としては、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制される点で、メチル基またはビニル基であることが好ましい。
【0079】
シロキサン単位(B)の好適態様としては、硬化性オルガノポリシロキサン間での硬化がより進行し、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制される点で、シロキサン単位(B)が、R
5とR
6の少なくとも一方が炭素数3以下のアルケニル基であり該アルケニル基以外の場合は炭素数4以下のアルキル基であるシロキサン単位(B−1)、および、R
5とR
6のいずれも炭素数4以下のアルキル基であるシロキサン単位(B−2)からなる群から選択され、硬化性オルガノポリシロキサン中のシロキサン単位(B)がシロキサン単位(B−1)のみからなるか、または、シロキサン単位(B−1)とシロキサン単位(B−2)からなる態様が挙げられる。
【0080】
シロキサン単位(B−1)中、R
5とR
6の少なくとも一方は、炭素数3以下のアルケニル基であり、好ましくはビニル基である。また、R
5とR
6がアルケニル基以外の場合は、炭素数4以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
なお、シロキサン単位(B−1)の好適態様としては、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制される点で、R
5またはR
6の一方がメチル基で、他方がビニル基である態様が挙げられる。
シロキサン単位(B−2)中、R
5とR
6のいずれも炭素数4以下のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
【0081】
シロキサン単位(B)がシロキサン単位(B−1)とシロキサン単位(B−2)とを含む場合、全シロキサン単位(B)に対するシロキサン単位(B−1)の割合である[シロキサン単位(B−1)]/[シロキサン単位(B−1)+シロキサン単位(B−2)]は特に制限されないが、硬化性オルガノポリシロキサン間での硬化がより進行し、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制されると共に、第2シリコーン樹脂層32の第1シリコーン樹脂層14に対する密着性および剥離性がより優れる点で、30〜80モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましい。
【0082】
なお、硬化性オルガノポリシロキサンは、上述したシロキサン単位(A)およびシロキサン単位(B)以外の他のシロキサン単位(例えば、M単位、T単位、Q単位)を含んでいてもよい。しかし、分岐を有する単位(T単位やQ単位)が多く存在すると硬化物(シリコーン樹脂)の柔軟性が低下し、M単位が多く存在すると数平均分子量の低い重合体となり耐熱性等の物性が低下するおそれがある。したがって、それらの数は少ない方が好ましく、後述のようにD単位(シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B))以外の単位の含有量は、0〜20モル%が好ましく、0〜5モル%がより好ましい。
【0083】
硬化性オルガノポリシロキサンとしてシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)を含むと柔軟性が高く、第1シリコーン樹脂層14に対する第2シリコーン樹脂層32の密着性が良好である。さらに、硬化性が向上し、高温処理条件下における硬化物(シリコーン樹脂)の分解がより抑制される。
【0084】
硬化性オルガノポリシロキサン中におけるシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の合計に対するシロキサン単位(A)の割合は、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制されると共に、第2シリコーン樹脂層32の第1シリコーン樹脂層14に対する密着性および剥離性がより優れる点で、10〜90モル%が好ましく、30〜90モル%がより好ましく、40〜60モル%がさらに好ましい。
また、硬化性オルガノポリシロキサン中の全シロキサン単位に対するシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の合計の割合は、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制されると共に、第2シリコーン樹脂層32の第1シリコーン樹脂層14に対する密着性および剥離性がより優れる点で、80〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましい。
さらに、硬化性オルガノポリシロキサン中におけるシロキサン単位(A)およびシロキサン単位(B)の結合形式は特に制限されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。なかでも、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制される点で、交互共重合体が好ましい。
本発明において、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の交互共重合体とはシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の結合が、シロキサン単位(A)とシロキサン単位(A)の結合およびシロキサン単位(B)とシロキサン単位(B)の結合の合計よりもはるかに多い共重合体を意味する。これら3種の結合は、例えば
1H NMR測定および
29Si NMR測定により区別することができ、その測定によりそれら結合の相対的な数の割合を計算できる。本発明におけるシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の交互共重合体は、少数のランダム結合部分やブロック結合部分を含んでいてもよい。交互共重合体におけるシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の結合の割合は、上記3種の結合の合計に対して、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%がさらに好ましい。なお、交互共重合体であるか否かを区別するものではないが、本発明における硬化性オルガノポリシロキサンが交互共重合体の場合、その交互共重合体におけるシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の合計に対するシロキサン単位(A)の割合は50±5モル%が好ましい。
なお、本発明における交互共重合体は、1種のシリコーン樹脂であってもよく、また2種以上のシリコーン樹脂を混合してシロキサン単位(A)とシロキサン単位(B)の結合の割合が上記の好ましい割合となるように調整して得てもよい。
【0085】
硬化性オルガノポリシロキサンの数平均分子量は特に制限されないが、取扱い性に優れると共に、成膜性にも優れ、高温処理条件下におけるシリコーン樹脂の分解がより抑制される点で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による、ポリスチレン換算の数平均分子量は5,000〜30,000が好ましく、5,000〜15,000がより好ましい。
硬化性オルガノポリシロキサンの数平均分子量の調節は、反応条件を制御することにより行うことができる。例えば、末端基量や種類、またモノマー混合比率を変えることによって分子量を制御することができる。末端基量を多くすると低分子量物が得られ、量を少なくすると高分子量が得られる。また、モノマー比率を偏らせると低分子量物が得られ、比率を等しくすると高分子量物が得られる。
【0086】
上述した式(1)で表されるシロキサン単位(A)および式(2)で表されるシロキサン単位(B)を含む硬化性オルガノポリシロキサンの製造方法は、特に制限されない。例えば、式(3)で表されるシラン化合物および式(4)で表されるシラン化合物を縮合反応や加水分解・縮合反応で重合させて、製造することができる。さらに他のシロキサン単位を有する硬化性オルガノポリシロキサンは、シラノール基や加水分解性基を1個以上有するシラン化合物を使用して製造することができる。重合反応は通常不活性溶媒中で行われ、無触媒下、加熱のみで反応させることできる。必要により、反応触媒を使用することもできる。
上記硬化性オルガノポリシロキサンの製造方法は基本的に公知であり、例えば、日本国特開平9−59387号公報、日本国特開2008−280402号公報に記載されている。本発明における硬化性オルガノポリシロキサンやその製造方法は、このような公知文献記載のものを使用できる。
【0088】
式(3)および式(4)中、R
1〜R
6は、式(1)および式(2)中のR
1〜R
6と同義である。
式(3)中、X、Yは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基(例えば、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基などの1〜3級のアミノ基、ハロゲン基、アルコキシ基等)を表す。
【0089】
交互共重合体は反応性が異なる2種の単量体を重合させることにより得ることができる。例えば、シロキサン単位(A)となる上記式(3)で表されるシラン化合物の重合反応性基であるXとシロキサン単位(B)となる上記式(4)で表されるシラン化合物の重合反応性基であるYの相互の反応性が、X同士の反応性とY同士の反応性のいずれよりも高くなるものを選択して、上記2種のシラン化合物の実質的に等モル量を反応させることにより、交互共重合体を製造することができる。XとYの反応性が、X同士の反応性とY同士の反応性のいずれよりもより高いものとすることにより、ランダム結合部分やブロック結合部分のより少ない交互共重合体が得られる。
交互共重合体を製造する場合、XとYの一方が水酸基であり、他方がアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基などの1〜3級のアミノ基であることが好ましい。特に、一方が水酸基で他方がジアルキルアミノ基であることが好ましく、Xが水酸基でYがジアルキルアミノ基であることがより好ましい。なお、モノアルキルアミノ基やジアルキルアミノ基におけるアルキル基は炭素数4以下のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
オルガノポリシロキサンの交互共重合体やその製造方法は基本的に公知であり、例えば、Macromolecules 1998, 31, 8501またはJournal of Applied Polymer Science, Vol.106, 1007, 2007)にオルガノポリシロキサンの交互共重合体やその製造方法が記載されている。本発明における交互共重合体やその製造方法はこれら公知文献に記載のものを使用することができる。
具体的な製造方法としては、例えば、上記式(3)で表されるシラン化合物(Xが水酸基であるもの)の有機溶媒溶液と上記式(4)で表されるシラン化合物(Yがジメチルアミノ基であるもの)の有機溶媒溶液を両シラン化合物が等モル量となる割合で混合し加熱撹拌しながら反応させる方法、一方の有機溶媒溶液に加熱撹拌下に他方の有機溶媒溶液を分割してまたは連続的に添加しながら反応させる方法などで交互共重合体を製造することができる。
【0090】
硬化性オルガノポリシロキサンは所定の硬化反応を介して、硬化し、シリコーン樹脂である硬化物となる。硬化(架橋)の形式は特に制限されず、硬化性オルガノポリシロキサン中に含まれる硬化性基の種類に応じて適宜公知の形式を採用できる。例えば、ヒドロシリル化反応、シラノール基の縮合反応、または、加熱処理、高エネルギー線処理若しくはラジカル重合開始剤によるラジカル反応などが挙げられる。
より具体的には、硬化性オルガノポリシロキサンがアルケニル基またはアルキニル基などのラジカル反応性基を有する場合、上記ラジカル反応を介したラジカル反応性基同士の反応により架橋して硬化物(シリコーン樹脂)となる。
また、硬化性オルガノポリシロキサンがシラノール基を有する場合、シラノール基同士の縮合反応により架橋して硬化物となる。
さらに、硬化性オルガノポリシロキサンがアルケニル基またはケイ素原子に結合した水素原子を有する場合、ヒドロシリル化触媒(例えば、白金系触媒)の存在下、ヒドロシリル化反応により架橋して硬化物となる。
上記硬化形式のなかでも、反応による副生成物の発生が抑制され、より緻密で耐熱性に優れたシリコーン樹脂が得られる点で、ラジカル反応を介した形式が好ましい。
なお、硬化反応に際しては、2種以上の式(1)で表されるシロキサン単位(A)および式(2)で表されるシロキサン単位(B)を含む硬化性オルガノポリシロキサンを併用してもよく、また、式(1)で表されるシロキサン単位(A)および式(2)で表されるシロキサン単位(B)を含む硬化性オルガノポリシロキサン以外の他の硬化性オルガノポリシロキサンを併用してもよい。
なお、以下、硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させて硬化物であるシリコーン樹脂を形成することを単に硬化性オルガノポリシロキサンの硬化という。
【0091】
(第2シリコーン樹脂層32の製造方法)
第2シリコーン樹脂層32の製造方法は特に制限されないが、上述したように、硬化性オルガノポリシロキサンを支持ガラス板30表面で硬化させると、硬化反応時の支持ガラス板30表面との相互作用により接着し、第2シリコーン樹脂層32と支持ガラス板30表面との剥離強度は高くなると考えられる。
以下、硬化性オルガノポリシロキサンの層を支持ガラス板30の表面に形成し、支持ガラス板30表面上で硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させて第2シリコーン樹脂層32を形成する工程の手順について詳述する。
【0092】
本工程では、硬化性オルガノポリシロキサンの層を支持ガラス板30の表面に形成し、支持ガラス板30表面上で硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させて第2シリコーン樹脂層32を形成する。
支持ガラス板30上に硬化性オルガノポリシロキサンの層を形成するためには、硬化性オルガノポリシロキサンを溶媒に溶解させたコーティング用組成物を使用し、この組成物を支持ガラス板30上に塗布して溶液の層を形成し、次いで溶媒を除去して硬化性オルガノポリシロキサンの層とすることが好ましい。組成物中における硬化性オルガノポリシロキサンの濃度の調整などにより、硬化性オルガノポリシロキサンの層の厚さを制御することができる。
溶媒としては、作業環境下で硬化性オルガノポリシロキサンを容易に溶解でき、かつ、容易に揮発除去させることのできる溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、THF、クロロホルム等を例示することができる。
【0093】
支持ガラス板30表面上に硬化性オルガノポリシロキサンを含む組成物を塗布する方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0094】
次いで、支持ガラス板30上の硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させて、第2シリコーン樹脂層32を形成する。
硬化の方法は、上述したように、硬化性オルガノポリシロキサンの硬化形式(架橋形式)に応じて適宜最適な方法が選択される。なかでも、硬化性オルガノポリシロキサンがラジカル重合性基を有する場合、第1シリコーン樹脂層14に対する密着性および耐熱性に優れるシリコーン樹脂が得られる点で、熱硬化により第2シリコーン樹脂層32を製造することが好ましい。以下、熱硬化の態様について詳述する。
【0095】
硬化性オルガノポリシロキサンを熱硬化させる温度条件は、第2シリコーン樹脂層32の耐熱性を向上し、第2シリコーン樹脂層32と積層後の剥離強度を上記のように制御しうる範囲内で特に制限されないが、300〜475℃が好ましく、350〜450℃がより好ましい。また、加熱時間は、通常、10〜300分が好ましく、20〜120分がより好ましい。
なお、硬化性オルガノポリシロキサンはプレキュア(予備硬化)を行った後硬化(本硬化)を行って硬化させることが好ましい。プレキュアを行うことにより耐熱性に優れた第2シリコーン樹脂層32を得ることができる。プレキュアは溶媒の除去に引き続き行うことが好ましく、その場合、層から溶媒を除去して硬化性オルガノポリシロキサンの層を形成する工程とプレキュアを行う工程とは特に区別されない。溶媒の除去は100℃以上に加熱して行うことが好ましく、150℃以上に加熱することにより引き続きプレキュアを行うことができる。溶媒の除去とプレキュアを行う温度および加熱時間は、100〜420℃、5〜60分が好ましく、150〜300℃、10〜30分がより好ましい。420℃以下であると剥離容易な第2シリコーン樹脂層32が得られる。
【0096】
[部材付きガラス基板およびその製造方法]
本発明においては、上述したガラス積層体(ガラス積層体10、ガラス積層体100、または、ガラス積層体200)を用いて、電子デバイスを製造することができる。
以下では、上述したガラス積層体10を用いた態様について詳述する。
ガラス積層体10を用いることにより、ガラス基板と電子デバイス用部材とを含む部材付きガラス基板(電子デバイス用部材付きガラス基板)が製造される。
該部材付きガラス基板の製造方法は特に限定されないが、電子デバイスの生産性に優れる点から、上記ガラス積層体中のガラス基板上に電子デバイス用部材を形成して電子デバイス用部材付き積層体を製造し、得られた電子デバイス用部材付き積層体からシリコーン樹脂層のガラス基板側界面を剥離面として部材付きガラス基板と樹脂層付き支持基材とに分離する方法が好ましい。
以下、上記ガラス積層体中のガラス基板上に電子デバイス用部材を形成して電子デバイス用部材付き積層体を製造する工程を部材形成工程、電子デバイス用部材付き積層体からシリコーン樹脂層のガラス基板側界面を剥離面として部材付きガラス基板と樹脂層付き支持基材とに分離する工程を分離工程という。
以下に、各工程で使用される材料および手順について詳述する。
【0097】
(部材形成工程)
部材形成工程は、上記積層工程において得られたガラス積層体10中のガラス基板16上に電子デバイス用部材を形成する工程である。より具体的には、
図2(C)に示すように、ガラス基板16の第2主面16b(露出表面)上に電子デバイス用部材22を形成し、電子デバイス用部材付き積層体24を得る。
まず、本工程で使用される電子デバイス用部材22について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0098】
(電子デバイス用部材(機能性素子))
電子デバイス用部材22は、ガラス積層体10中のガラス基板16上に形成され電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。より具体的には、電子デバイス用部材22としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、または、表面に回路が形成された半導体ウェハ等の電子部品などに用いられる部材(例えば、表示装置用部材、太陽電池用部材、薄膜2次電池用部材、電子部品用回路)が挙げられる。
【0099】
例えば、太陽電池用部材としては、シリコン型では、正極の酸化スズなど透明電極、p層/i層/n層で表されるシリコン層、および負極の金属等が挙げられ、その他に、化合物型、色素増感型、量子ドット型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、薄膜2次電池用部材としては、リチウムイオン型では、正極および負極の金属または金属酸化物等の透明電極、電解質層のリチウム化合物、集電層の金属、封止層としての樹脂等が挙げられ、その他に、ニッケル水素型、ポリマー型、セラミックス電解質型などに対応する各種部材等を挙げることができる。
また、電子部品用回路としては、CCDやCMOSでは、導電部の金属、絶縁部の酸化ケイ素や窒化珪素等が挙げられ、その他に圧力センサ・加速度センサなど各種センサやリジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、リジッドフレキシブルプリント基板などに対応する各種部材等を挙げることができる。
【0100】
(工程の手順)
上述した電子デバイス用部材付き積層体24の製造方法は特に限定されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、ガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b表面上に、電子デバイス用部材22を形成する。
なお、電子デバイス用部材22は、ガラス基板16の第2主面16bに最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。シリコーン樹脂層14から剥離された部分部材付きガラス基板を、その後の工程で全部材付きガラス基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。
また、シリコーン樹脂層14から剥離された、全部材付きガラス基板には、その剥離面(第1主面16a)に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。また、全部材付き積層体を組み立て、その後、全部材付き積層体から支持基材12を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。さらに、全部材付き積層体を2枚用いて組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚の支持基材12を剥離して、2枚のガラス基板を有する部材付きガラス基板を製造することもできる。
【0101】
例えば、OLEDを製造する場合を例にとると、ガラス積層体10のガラス基板16のシリコーン樹脂層14側とは反対側の表面上(ガラス基板16の第2主面16bに該当)に有機EL構造体を形成するために、透明電極を形成する、さらに透明電極を形成した面上にホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層等を蒸着する、裏面電極を形成する、封止板を用いて封止する、等の各種の層形成や処理が行われる。これらの層形成や処理として、具体的には、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理等が挙げられる。
【0102】
また、例えば、TFT−LCDを製造する場合は、ガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、レジスト液を用いて、CVD法およびスパッター法など、一般的な成膜法により形成される金属膜および金属酸化膜等にパターン形成して薄膜トランジスタ(TFT)を形成するTFT形成工程と、別のガラス積層体10のガラス基板16の第2主面16b上に、レジスト液をパターン形成に用いてカラーフィルタ(CF)を形成するCF形成工程と、TFT形成工程で得られたTFT付き積層体とCF形成工程で得られたCF付き積層体とを積層する貼合わせ工程等の各種工程を有する。
【0103】
TFT形成工程やCF形成工程では、周知のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術等を用いて、ガラス基板16の第2主面16bにTFTやCFを形成する。この際、パターン形成用のコーティング液としてレジスト液が用いられる。
なお、TFTやCFを形成する前に、必要に応じて、ガラス基板16の第2主面16bを洗浄してもよい。洗浄方法としては、周知のドライ洗浄やウェット洗浄を用いることができる。
【0104】
貼合わせ工程では、TFT付き積層体の薄膜トランジスタ形成面と、CF付き積層体のカラーフィルタ形成面とを対向させて、シール剤(例えば、セル形成用紫外線硬化型シール剤)を用いて貼り合わせる。その後、TFT付き積層体とCF付き積層体とで形成されたセル内に、液晶材を注入する。液晶材を注入する方法としては、例えば、減圧注入法、滴下注入法がある。
【0105】
(分離工程)
分離工程は、
図2(D)に示すように、上記部材形成工程で得られた電子デバイス用部材付き積層体24から、シリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面を剥離面として、電子デバイス用部材22が積層したガラス基板16(部材付きガラス基板)と、シリコーン樹脂層14および支持基材12とに分離して、電子デバイス用部材22およびガラス基板16を含む部材付きガラス基板26を得る工程である。
剥離時のガラス基板16上の電子デバイス用部材22が必要な全構成部材の形成の一部である場合には、分離後、残りの構成部材をガラス基板16上に形成することもできる。
【0106】
部材付きガラス基板26と樹脂層付き支持基材18とを剥離する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14との界面に鋭利な刃物状のものを差し込み、剥離のきっかけを与えた上で、水と圧縮空気との混合流体を吹き付けたりして剥離することができる。好ましくは、電子デバイス用部材付き積層体24の支持基材12が上側、電子デバイス用部材22側が下側となるように定盤上に設置し、電子デバイス用部材22側を定盤上に真空吸着し(両面に支持基材が積層されている場合は順次行う)、この状態でまず刃物をガラス基板16−シリコーン樹脂層14界面に刃物を侵入させる。そして、その後に支持基材12側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物を差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうするとシリコーン樹脂層14とガラス基板16との界面へ空気層が形成され、その空気層が界面全面に広がり、樹脂層付き支持基材18を容易に剥離することができる。
また、樹脂層付き支持基材18は、新たなガラス基板と積層して、本発明のガラス積層体10を製造することができる。
なお、部材付きガラス基板26と樹脂層付き支持基材18とを剥離する際には、ガラス基板16とシリコーン樹脂層14との界面に剥離助剤を吹き付けながら剥離することが好ましい。剥離助剤とは、上述した水などの溶媒を意図する。使用される剥離助剤としては、水や有機溶媒(例えば、エタノール)などまたはそれらの混合物などが挙げられる。
【0107】
なお、電子デバイス用部材付き積層体24から部材付きガラス基板26を分離する際においては、イオナイザによる吹き付けや湿度を制御することにより、シリコーン樹脂層14の欠片が部材付きガラス基板26に静電吸着することをより抑制することができる。
【0108】
上述した部材付きガラス基板26の製造方法は、携帯電話やPDAのようなモバイル端末に使用される小型の表示装置の製造に好適である。表示装置は主としてLCDまたはOLEDであり、LCDとしては、TN型、STN型、FE型、TFT型、MIM型、IPS型、VA型等を含む。基本的にパッシブ駆動型、アクティブ駆動型のいずれの表示装置の場合でも適用することができる。
【0109】
上記方法で製造された部材付きガラス基板26としては、ガラス基板と表示装置用部材を有する表示装置用パネル、ガラス基板と太陽電池用部材を有する太陽電池、ガラス基板と薄膜2次電池用部材を有する薄膜2次電池、ガラス基板と電子デバイス用部材を有する電子部品などが挙げられる。表示装置用パネルとしては、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネルなどを含む。
【0110】
上記においては、ガラス積層体10を用いた態様について詳述したが、ガラス積層体100またはガラス積層体200を用いて上記と同様手順に従って電子デバイスを製造することもできる。
なお、ガラス積層体100を使用した場合は、上記分離工程の際に、支持基材12とシリコーン樹脂層14との界面を剥離面として、支持基材12と、シリコーン樹脂層14、ガラス基板16、および、電子デバイス用部材22を含む電子デバイスとに分離される。
なお、またはガラス積層体200を使用した場合は、上記分離工程の際に、積層支持基材120と第1シリコーン樹脂層14との界面を剥離面として、積層支持基材120と、第1シリコーン樹脂層14、ガラス基板16、および、電子デバイス用部材22を含む電子デバイスとに分離される。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0112】
(合成例1:ゾルゲルAの合成)
硝酸(61%)0.09g、変性エタノール solmix AP-11(日本アルコール販売株式会社)81.78g、および、純水11.85gの混合物を室温で撹拌しながらテトラエトキシシラン7.20gをゆっくり加えた後、さらに1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン0.40gを1時間かけて滴下した。得られた混合液を、温度を10〜20℃に保ちながら3時間撹拌し、所望の混合液(ゾルゲルA)を得た。
得られた混合液中には、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンとテトラエトキシシランとの加水分解縮合物(部分縮重合物)が含まれていた。なお、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンとテトラエトキシシランとの混合モル比(1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンのモル量/テトラエトキシシランのモル量)は、5:95であった。
【0113】
(合成例2:ゾルゲルBの合成)
硝酸(61%)0.09g、変性エタノール solmix AP-11(日本アルコール販売株式会社)81.78g、および、純水11.85gの混合物を室温で撹拌しながらテトラエトキシシラン2.60gをゆっくり加えた後、さらに1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン1.30gを1時間かけて滴下した。得られた混合液を、温度を10〜20℃に保ちながら3時間撹拌し、所望の混合液(ゾルゲルB)を得た。
得られた混合液中には、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンとテトラエトキシシランとの加水分解縮合物(部分縮重合物)が含まれていた。なお、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンとテトラエトキシシランとの混合モル比(1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンのモル量/テトラエトキシシランのモル量)は、33:67であった。
【0114】
(合成例3:ゾルゲルCの合成)
硝酸(61%)0.09g、変性エタノール solmix AP-11(日本アルコール販売株式会社)81.78g、および、純水11.85gの混合物を室温で撹拌しながらテトラエトキシシラン3.10gをゆっくり加えた後、さらに1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン2.40gを1時間かけて滴下した。得られた混合液を、温度を10〜20℃に保ちながら3時間撹拌、所望の混合液(ゾルゲルC)を得た。
得られた混合液中には、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンとテトラエトキシシランとの加水分解縮合物(部分縮重合物)が含まれていた。なお、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンとテトラエトキシシランとの混合モル比(1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルシロキサンのモル量/テトラエトキシシランのモル量)は、43:57であった。
【0115】
(合成例4:硬化性オルガノポリシロキサン(S1)を含む液状物の製造)
窒素雰囲気中、1,4−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼン(35質量部、ゲレスト社製)を、トルエン(90質量部)に加えた。次に、反応溶液を110℃に加熱して、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン(11質量部、ゲレスト社製)およびビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン(12質量部、ゲレスト社製)を溶解させたトルエン(40質量部)溶液を約5分かけて反応溶液に滴下した。その後、反応溶液を110℃で1時間攪拌した。攪拌終了後、反応溶液を室温まで自然冷却し、反応溶液をメタノール(3250質量部)中に加えて再沈殿処理を行った。次に、沈殿物を回収し、真空乾燥することにより、無色透明で液体状の硬化性オルガノポリシロキサン(S1)を得た。
得られた硬化性オルガノポリシロキサン(S1)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による数平均分子量(ポリスチレン換算)が、1.2×10
4であった。また、熱重量分析装置(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、昇温速度15℃/分、窒素雰囲気下(100ml/分)で室温〜700℃まで昇温することにより、硬化性オルガノポリシロキサン(S1)の5%重量減少温度を測定したところ、535℃であった。
【0116】
次に、硬化性オルガノポリシロキサン(S1)(30質量部)をキシレン(70質量部)に溶解させて硬化性オルガノポリシロキサン(S1)を含む液状物を作製した。
【0117】
(実施例1)
初めに縦350mm、横300mm、板厚0.5mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)を支持基材として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。次に、上記で製造したゾルゲルAを、支持基材の清浄化処理を施した面(第1主面)上に縦278mm、横278mmの大きさで、スピンコーターにて塗工した(塗工量15g/m
2)。さらに、350℃にて30分間大気中で加熱硬化して、厚さ0.2μmのシリコーン樹脂層を形成し、支持体Aを得た。
【0118】
次に、支持体Aのシリコーン樹脂層の剥離性表面と、該シリコーン樹脂層と同じサイズで厚さ0.2mmのガラス基板(「AN100」。旭硝子株式会社製)の第1主面とを対向させて、室温下、大気圧下、積層装置にて両基板の重心が重なるように両基板を重ね合わせ、ガラス積層体S1を得た。
なお、得られたガラス積層体S1は上述した
図1のガラス積層体10に該当し、ガラス積層体S1においては、支持基材の層とシリコーン樹脂層の界面の剥離強度(x)が、シリコーン樹脂層とガラス基板の界面の剥離強度(y)よりも高かった。
次に、得られたガラス積層体S1を用いた、以下の測定を実施した。以下の評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0119】
[剥離性評価]
ガラス積層体S1から50mm角のサンプルを切り出し、このサンプルを450℃に加熱した熱風オーブン内に載置し、60分の放置後、取り出した。次いで、ガラス積層体S1のガラス基板の第2主面を定盤に真空吸着させたうえで、ガラス積層体S1の1つのコーナー部のガラス基板とシリコーン樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、上記ガラス基板の第1主面と上記シリコーン樹脂層の剥離性表面との間に剥離のきっかけを与えた。そして、ガラス積層体S1の支持基材の第2主面を90mmピッチで複数の真空吸着パッドで吸着した上で、上記コーナー部に近い吸着パッドから順に上昇させることにより、ガラス基板の第1主面とシリコーン樹脂層の剥離性表面とを剥離した。ガラス積層体S1がガラス基板の割れやシリコーン樹脂層の破壊なく剥離できたかを評価した。また、この処理を行った時の引き上げ最大強度をN/25mm単位で測定した。
なお、実用上、剥離強度としては、10N/25mm以下が好ましい。
【0120】
[耐熱性評価]
ガラス積層体S1から50mm角のサンプルを切り出し、このサンプルを450℃に加熱した熱風オーブン内に載置し、60分の放置後、取り出してサンプル内に発泡現象が確認されたかどうか評価した。
【0121】
[平坦性評価]
ガラス積層体S1の積層面である、シリコーン樹脂層の表面、および、ガラス基板の表面における任意に選択された5点における算術平均粗さRaの平均値をそれぞれ求めた。算術平均粗さRaとは、JIS B 0601−2001に規定されている算術平均粗さRaのことであり、原子間力顕微鏡によって各点における5μm×5μmの測定領域を測定することによって求めた。
【0122】
[膜厚測定]
シリコーン樹脂層の一部を削り、公知の触針式の表面形状測定装置を用いてシリコーン樹脂層の段差を測定する事でシリコーン樹脂層の膜厚を確認した。
【0123】
(実施例2)
初めに縦350mm、横300mm、板厚0.2mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)をガラス基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。次に、ゾルゲルAを、ガラス基板の清浄化処理を施した面(第1主面)上に縦278mm、横278mmの大きさで、スピンコーターにて塗工した(塗工量15g/m
2)。さらに、350℃にて30分間大気中で加熱硬化して、厚さ0.2μmのシリコーン樹脂層を形成し、ガラス基板Bを得た。
【0124】
次に、ガラス基板Bのシリコーン樹脂層の剥離性表面と、該シリコーン樹脂層と同じサイズで厚さ0.5mmの支持基材(「AN100」。旭硝子株式会社製)の第1主面とを対向させて、室温下、大気圧下、積層装置にて両基板の重心が重なるように両基板を重ね合わせ、ガラス積層体S2を得た。
なお、得られたガラス積層体S2は
図3に示すガラス積層体100に該当し、ガラス積層体S2においては、ガラス基板の層とシリコーン樹脂層の界面の剥離強度(z)が、シリコーン樹脂層と支持基材の界面の剥離強度(w)よりも高かった。
次に、得られたガラス積層体S2を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
なお、ガラス積層体S2を用いた[剥離性評価]においては、支持基材とシリコーン樹脂層との間にステンレス製刃物を差し込み、剥離のきっかけを与えた。また、[平坦性評価]においては、ガラス積層体S2の積層面である、シリコーン樹脂層の表面、および、支持基材の表面の表面粗さを測定した。
【0125】
(実施例3)
ゾルゲルAを、支持基材の清浄化処理を施した面(第1主面)上に縦278mm、横278mmの大きさで、スピンコーターにて塗工した(塗工量150g/m
2)以外は、実施例1と同様の手順に従って、ガラス積層体S3を製造した。
なお、形成されるシリコーン樹脂層の厚さは2.0μmであった。
なお、得られたガラス積層体S3は上述した
図1のガラス積層体10に該当し、ガラス積層体S1においては、支持基材の層とシリコーン樹脂層の界面の剥離強度(x)が、シリコーン樹脂層とガラス基板の界面の剥離強度(y)よりも高かった。
次に、得られたガラス積層体S3を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
なお、ガラス積層体S3を用いた[剥離性評価]においては、ガラス基板とシリコーン樹脂層との間にステンレス製刃物を差し込み、剥離のきっかけを与えた。また、[平坦性評価]においては、ガラス積層体S3の積層面である、シリコーン樹脂層の表面、および、ガラス基板の表面の表面粗さを測定した。
【0126】
(実施例4)
初めに縦350mm、横300mm、板厚0.5mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)を支持基材として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。次に、上記で製造した硬化性オルガノポリシロキサン(S1)を、支持基材の清浄化処理を施した面(第1主面)上に縦278mm、横278mmの大きさで、スピンコーターにて塗工した(塗工量120g/m
2)。さらに、350℃にて30分間大気中で加熱硬化して、厚さ6μmの樹脂層X(第2シリコーン樹脂層に該当)を形成し、支持体Cを得た。
【0127】
次に、縦350mm、横300mm、板厚0.2mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)をガラス基板として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。次に、ゾルゲルAを、ガラス基板の清浄化処理を施した面(第1主面)上に縦278mm、横278mmの大きさで、スピンコーターにて塗工した(塗工量15g/m
2)。さらに、350℃にて30分間大気中で加熱硬化して、厚さ0.2μmのシリコーン樹脂層(第1シリコーン樹脂層に該当)を形成し、ガラス基板Cを得た。
支持体C中の樹脂層Xと、ガラス基板C中のシリコーン樹脂層とを対向させて、室温下、大気圧下、積層装置にて両基板の重心が重なるように両基板を重ね合わせ、ガラス積層体S4を得た。
なお、得られたガラス積層体S4は
図4に示すガラス積層体200に該当し、ガラス積層体S4においては、樹脂層Xとシリコーン樹脂層との界面の剥離強度(w)が、シリコーン樹脂層とガラス基板との界面の剥離強度(z)、および、樹脂層Xと支持基材(支持ガラス板)との界面の剥離強度(v)よりも低かった。
次に、得られたガラス積層体S4を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
なお、ガラス積層体S4を用いた[剥離性評価]においては、樹脂層Xとシリコーン樹脂層との間にステンレス製刃物を差し込み、剥離のきっかけを与えた。また、[平坦性評価]においては、ガラス積層体S4の積層面である、樹脂層の表面、および、シリコーン樹脂層の表面の表面粗さを測定した。
【0128】
(実施例5)
ゾルゲルAの代わりにゾルゲルBを用いた以外は、実施例4と同様の手順に従って、ガラス積層体S5を得た。
得られたガラス積層体S5を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
なお、得られたガラス積層体S5は
図4に示すガラス積層体200に該当し、ガラス積層体S5においては、樹脂層Xとシリコーン樹脂層との界面の剥離強度(w)が、シリコーン樹脂層とガラス基板との界面の剥離強度(z)、および、樹脂層Xと支持基材(支持ガラス板)との界面の剥離強度(v)よりも低かった。
【0129】
(実施例6)
ゾルゲルAの代わりにゾルゲルCを用いた以外は、実施例4と同様の手順に従って、ガラス積層体S6を得た。
得られたガラス積層体S6を用いた、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
なお、得られたガラス積層体S6は
図4に示すガラス積層体200に該当し、ガラス積層体S6においては、樹脂層Xとシリコーン樹脂層との界面の剥離強度(w)が、シリコーン樹脂層とガラス基板との界面の剥離強度(z)、および、樹脂層Xと支持基材(支持ガラス板)との界面の剥離強度(v)よりも低かった。
【0130】
(実施例7)
ゾルゲルAを、支持基材の清浄化処理を施した面(第1主面)上に縦278mm、横278mmの大きさで、スピンコーターにて塗工した(塗工量150g/m
2)以外は実施例4と同様にして、厚さ2.0μmのシリコーン樹脂層(第1シリコーン樹脂層に該当)を形成し、ガラス基板Cを得た。
支持体C中の樹脂層Xと、ガラス基板C中のシリコーン樹脂層とを対向させて、室温下、大気圧下、積層装置にて両基板の重心が重なるように両基板を重ね合わせ、ガラス積層体S7を得た。
得られたガラス積層体S7を用いた、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
なお、得られたガラス積層体S7は
図4に示すガラス積層体200に該当し、ガラス積層体S7においては、樹脂層Xとシリコーン樹脂層との界面の剥離強度(w)が、シリコーン樹脂層とガラス基板との界面の剥離強度(z)、および、樹脂層Xと支持基材(支持ガラス板)との界面の剥離強度(v)よりも低かった。
【0131】
(比較例1)
初めに縦350mm、横300mm、板厚0.5mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)を支持基材として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。
次に、支持基材の清浄化処理を施した面(第1主面)と、支持基材と同じサイズで厚さ0.2mmのガラス基板(「AN100」。旭硝子株式会社製)の第1主面とを対向させ、室温下、大気圧下、積層装置にて支持基材とガラス基板との重心が重なるように両者を重ね合わせ、ガラス積層体C1を得た。
得られたガラス積層体C1を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0132】
(比較例2)
初めに縦350mm、横300mm、板厚0.5mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)を支持基材として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。次に、ヘキサメチルジシラザン(関東化学株式会社製、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)が気化したガスを含む雰囲気に上記支持基材を曝して表面処理を行った。
次に、支持基材の表面処理を施した面と、支持基材と同じサイズで厚さ0.2mmのガラス基板(「AN100」。旭硝子株式会社製)の第1主面とを対向させ、室温下、大気圧下、積層装置にて支持基材とガラス基板との重心が重なるように両者を重ね合わせ、ガラス積層体C2を得た。
得られたガラス積層体C2を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0133】
(比較例3)
初めに縦350mm、横300mm、板厚0.5mm、線膨張係数38×10
−7/℃の無アルカリガラス板(旭硝子株式会社製 「AN100」)を支持基材として用意し、純水洗浄、UV洗浄して表面を清浄化した。次に、ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン社製、SH200)をヘプタンで希釈した溶液を、スピンコータ(ミカサ社製、MS−A100)を用いて上記支持基材の第一主面に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、大気中500℃の温度で5分間加熱処理した。このようにして、支持基材の第一主面にシリコーンオイルを焼き付ける表面処理を行った。
次に、表面処理を施した支持基材の第1主面と、支持基材と同じサイズで厚さ0.2mmのガラス基板(「AN100」。旭硝子株式会社製)の第1主面とを対向させ、室温下、大気圧下、積層装置にて支持基材とガラス基板との重心が重なるように両者を重ね合わせ、ガラス積層体C3を得た。
得られたガラス積層体C3を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0134】
(比較例4)
ジメチルポリシロキサン(東レ・ダウシリコーン社製、SH200)をヘプタンで希釈せずに、スピンコータ(ミカサ社製、MS−A100)を用いて上記支持基材の第一主面に塗布した以外は、比較例3と同様の手順により、ガラス積層体C4を得た。
得られたガラス積層体C4を用いて、上記各種測定を実施した。評価結果は、後述する表1にまとめて示す。
【0135】
表1中、「ガラス積層体の構成」欄において、実施例および比較例で使用したガラス積層体の構成層が示され、各層間に示される「//」は、積層面を意図し、剥離性評価において剥離が生じる位置を意図する。
また、「積層面のRaの値」は、「ガラス積層体の構成」欄の「//」の左右に位置する層の表面粗さRaをそれぞれ意図する。例えば、実施例1においてガラス積層体の構成は「ガラス基板//第1シリコーン樹脂層/支持基材」であり、「//」の左側にある「ガラス基板」の第1シリコーン樹脂層側の表面のRaが0.8nmであり、「//」の右側にある「第1シリコーン樹脂層」のガラス基板側の表面のRaが10nmであることを示す。他の実施例および比較例も同様に解釈する。
また、「シリコーン樹脂層の膜厚」は、第1シリコーン樹脂層の厚みを意図する。なお、実施例3〜5においては、「シリコーン樹脂層の膜厚」欄に左側に第1シリコーン樹脂層の厚みを、右側に第2シリコーン樹脂層の厚みを示す。さらに、比較例2〜4においては、HMDSまたはSH200の層の厚みを示す。
さらに、「判定」欄においては、剥離強度の値が10N/25mm以下であり、発泡がない場合を「○」、いずれか一方または両方を満たさない場合を「×」とする。
【0136】
【表1】
【0137】
表1に示すように、所定の第1シリコーン樹脂層を含むガラス積層体においては、剥離強度が低く、かつ、シリコーン樹脂層の発泡も抑制された。例えば、実施例3または7に示すように、シリコーン樹脂層(第1シリコーン樹脂層)の厚みが厚い場合でも発泡は生じなかった。
一方、所定の要件を満たさない比較例1〜4においては、所望の効果が得られなかった。例えば、比較例1においては、ガラス基板を剥離することができなかった。また、比較例2および3では、実施例1〜7と比べて剥離強度が高く、剥離性が劣った。
さらに、実施例4〜7で示したガラス積層体は、積層面の表面粗さ(Ra)が大きい場合であっても、良好に積層が可能だった。
【0138】
<実施例8>
本例では、実施例1で得たガラス積層体S1を用いてOLEDを製造する。
まず、ガラス積層体S1におけるガラス基板の第2主面上に、プラズマCVD法により窒化シリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンの順に成膜する。次に、イオンドーピング装置により低濃度のホウ素をアモルファスシリコン層に注入し、窒素雰囲気下、加熱処理し脱水素処理をおこなう。次に、レーザアニール装置によりアモルファスシリコン層の結晶化処理をおこなう。次に、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングおよびイオンドーピング装置より、低濃度のリンをアモルファスシリコン層に注入し、N型およびP型のTFTエリアを形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、プラズマCVD法により酸化シリコン膜を成膜してゲート絶縁膜を形成した後に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成する。次に、フォトリソグラフィ法とイオンドーピング装置により、高濃度のホウ素とリンをN型、P型それぞれの所望のエリアに注入し、ソースエリアおよびドレインエリアを形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、プラズマCVD法による酸化シリコンの成膜で層間絶縁膜を、スパッタリング法によりアルミニウムの成膜およびフォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりTFT電極を形成する。次に、水素雰囲気下、加熱処理し水素化処理をおこなった後に、プラズマCVD法による窒素シリコンの成膜で、パッシベーション層を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、紫外線硬化性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により平坦化層およびコンタクトホールを形成する。次に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより画素電極を形成する。
続いて、蒸着法により、ガラス基板の第2主面側に、正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq
3)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlq
3をこの順に成膜する。次に、スパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基板を貼り合わせて封止する。上記手順によって、ガラス基板上に有機EL構造体を形成する。ガラス基板上に有機EL構造体を有するガラス積層体S1(以下、パネルAという。)が、本発明の電子デバイス用部材付き積層体である。
続いて、パネルAの封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、パネルAのコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板と樹脂層の界面に剥離のきっかけを与える。そして、パネルAの支持基材表面を真空吸着パッドで吸着した上で、吸着パッドを上昇させる。ここで刃物の差し込みは、イオナイザ(キーエンス社製)から除電性流体を当該界面に吹き付けながら行う。次に、形成した空隙へ向けてイオナイザからは引き続き除電性流体を吹き付けながら、かつ、水を剥離前線に差しながら真空吸着パッドを引き上げる。その結果、定盤上に有機EL構造体が形成されたガラス基板のみを残し、樹脂層付き支持基材を剥離することができる。
続いて、分離されたガラス基板をレーザーカッタまたはスクライブ−ブレイク法を用いて切断し、複数のセルに分断した後、有機EL構造体が形成されたガラス基板と対向基板とを組み立てて、モジュール形成工程を実施してOLEDを作製する。こうして得られるOLEDは、特性上問題は生じない。
【0139】
<実施例9>
本例では、実施例1で得たガラス積層体S1を用いてLCDを製造する。
まず、2枚のガラス積層体S1を準備して、片方のガラス積層体S1−1におけるガラス基板の第2主面上に、プラズマCVD法により窒化シリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンの順に成膜する。次に、イオンドーピング装置により低濃度のホウ素をアモルファスシリコン層に注入し、窒素雰囲気下、加熱処理し脱水素処理をおこなう。次に、レーザアニール装置によりアモルファスシリコン層の結晶化処理をおこなう。次に、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングおよびイオンドーピング装置より、低濃度のリンをアモルファスシリコン層に注入し、N型およびP型のTFTエリアを形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、プラズマCVD法により酸化シリコン膜を成膜しゲート絶縁膜を形成した後に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成する。次に、フォトリソグラフィ法とイオンドーピング装置により、高濃度のホウ素とリンをN型、P型それぞれの所望のエリアに注入し、ソースエリアおよびドレインエリアを形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、プラズマCVD法による酸化シリコンの成膜で層間絶縁膜を、スパッタリング法によりアルミニウムの成膜およびフォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりTFT電極を形成する。次に、水素雰囲気下、加熱処理し水素化処理をおこなった後に、プラズマCVD法による窒素シリコンの成膜で、パッシベーション層を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、紫外線硬化性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により平坦化層およびコンタクトホールを形成する。次に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより画素電極を形成する。
次に、もう片方のガラス積層体S1−2を大気雰囲気下、加熱処理する。次に、ガラス積層体S1におけるガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりクロムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより遮光層を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、ダイコート法によりカラーレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化によりカラーフィルタ層を形成する。次に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、対向電極を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、ダイコート法により紫外線硬化樹脂液を塗布し、フォトリソグラフィ法および熱硬化により柱状スペーサを形成する。次に、ロールコート法によりポリイミド樹脂液を塗布し、熱硬化により配向層を形成し、ラビングをおこなう。
次に、ディスペンサ法によりシール用樹脂液を枠状に描画し、枠内にディスペンサ法により液晶を滴下した後に、上記で画素電極が形成されたガラス積層体S1−1を用いて、2枚のガラス積層体S1のガラス基板の第2主面側同士を貼り合わせ、紫外線硬化および熱硬化によりLCDパネルを得る。
【0140】
続いて、ガラス積層体S1−1の支持基材の第2主面を定盤に真空吸着させ、ガラス積層体S1−2のコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面との剥離のきっかけを与える。ここで刃物の差し込みは、イオナイザ(キーエンス社製)から除電性流体を当該界面に吹き付けながら行う。次に、形成した空隙へ向けてイオナイザからは引き続き除電性流体を吹き付けながら、水を剥離前線に差しながら真空吸着パッドを引き上げる。そして、ガラス積層体S1−2の支持基材の第2主面を真空吸着パッドで吸着した上で、吸着パッドを上昇させる。その結果、定盤上に、ガラス積層体S1−1の支持基材が付いたLCDの空セルのみを残し、樹脂層付き支持基材を剥離することができる。
【0141】
次に、第1主面にカラーフィルタが形成されたガラス基板の第2主面を定盤に真空吸着させ、ガラス積層体S1−1のコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板の第1主面と樹脂層の剥離性表面との剥離のきっかけを与える。そして、ガラス積層体S1−1の支持基材の第2主面を真空吸着パッドで吸着した上で、ガラス基板と樹脂層との間に水を吹き付けながら、吸着パッドを上昇させる。その結果、定盤上にLCDセルのみを残し、樹脂層が固定された支持基材を剥離することができる。こうして、厚さ0.1mmのガラス基板で構成される複数のLCDのセルが得られる。
【0142】
続いて、切断する工程により、複数のLCDのセルに分断する。完成された各々のLCDセルに偏光板を貼付する工程を実施し、続いてモジュール形成工程を実施してLCDを得る。こうして得られるLCDは、特性上問題は生じない。
【0143】
<実施例10>
本例では、実施例1で得たガラス積層体S1を用いてOLEDを製造する。
まず、ガラス積層体S1におけるガラス基板の第2主面上に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成する。次に、スパッタリング法により、ガラス基板の第2主面側にさらに酸化アルミニウムを成膜してゲート絶縁膜を形成し、続いてスパッタリング法により酸化インジウムガリウム亜鉛を成膜してフォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより酸化物半導体層を形成する。次に、スパッタリング法により、ガラス基板の第2主面側にさらに酸化アルミニウムを成膜してチャネル保護層を形成し、続いてスパッタリング法によりモリブデンを成膜してフォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりソース電極およびドレイン電極を形成する。
次に、大気中で加熱処理を行う。次に、ガラス基板の第2主面側にさらにスパッタリング法により酸化アルミニウムを成膜してパッシベーション層を形成し、続いてスパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜してフォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、画素電極を形成する。
続いて、蒸着法により、ガラス基板の第2主面側に、正孔注入層として4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン、発光層として8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq
3)に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlq
3をこの順に成膜する。次に、スパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成する。次に、ガラス基板の第2主面側に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基板を貼り合わせて封止する。上記手順によって、ガラス基板上に有機EL構造体を形成する。ガラス基板上に有機EL構造体を有するガラス積層体S1(以下、パネルBという。)が、本発明の電子デバイス用部材付き積層体(支持基材付き表示装置用パネル)である。
続いて、パネルBの封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、パネルBのコーナー部のガラス基板と樹脂層との界面に、厚さ0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ガラス基板と樹脂層の界面に剥離のきっかけを与える。そして、パネルBの支持基材表面を真空吸着パッドで吸着した上で、吸着パッドを上昇させる。ここで刃物の差し込みは、イオナイザ(キーエンス社製)から除電性流体を当該界面に吹き付けながら行う。次に、形成した空隙へ向けてイオナイザからは引き続き除電性流体を吹き付けながら、かつ、水を剥離前線に差しながら真空吸着パッドを引き上げる。その結果、定盤上に有機EL構造体が形成されたガラス基板のみを残し、樹脂層付き支持基材を剥離することができる。
続いて、分離されたガラス基板をレーザーカッタまたはスクライブ−ブレイク法を用いて切断し、複数のセルに分断した後、有機EL構造体が形成されたガラス基板と対向基板とを組み立てて、モジュール形成工程を実施してOLEDを作製する。こうして得られるOLEDは、特性上問題は生じない。
【0144】
本出願は、2013年12月27日出願の日本特許出願2013−273147に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。